説明

ハイブリッド車

【課題】内燃機関を始動する際に運転者に違和感を与えるのを抑制する。
【解決手段】停車中にエンジンを始動する停車始動時において、バッテリの出力制限Woutが閾値Wref未満のときには(S120)、停車始動時の車輪(駆動輪39a,39bや従動輪)の固定に要する最低限の制動力である固定用最低限制動力Flomin以上の制動力の油圧ブレーキによる車輪への付与を伴ってエンジンをモータリングして始動する(S110,S160〜S200)。これにより、バッテリの出力制限Woutが大きく制限されている状態での停車始動時において、運転者に違和感を与えるのを車輪のより確実な固定によって抑制することができると共に、モータMG2の電力消費の抑制によってバッテリからの放電電力を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車に関し、詳しくは、内燃機関と、動力を入出力可能な第1の電動機と、駆動輪に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と第1の電動機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、駆動軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、第1の電動機および第2の電動機と電力をやりとり可能な二次電池と、駆動輪を含む車輪に制動力を付与可能な制動力付与手段と、を備えるハイブリッド車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、エンジンと、第1のモータ(MG1)と、エンジンのクランクシャフト,モータMG1の回転軸,前輪に連結されたリングギヤ軸にそれぞれキャリア,サンギヤ,リングギヤが接続された動力分配統合機構と、動力分配統合機構のサンギヤに接続された第2のモータ(MG2)と、モータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリと、ブレーキペダルポジションに応じた制動力を前輪および後輪に作用させる油圧ブレーキと、を備え、停車中にエンジンの始動が要求されたときにおいて、ブレーキペダルポジションが所定値未満のときにはモータMG2によってリングギヤ軸をロックさせた後にモータMG1によってエンジンをクランキングして始動し、ブレーキペダルポジションが所定値以上のときには油圧ブレーキによってリングギヤ軸側の反力を受け止めながらモータMG1によってエンジンをクランキングして始動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車では、前者の場合、停車時にエンジンを始動する際に車両にショックや揺れが生じるのを抑制し、後者の場合、モータMG2の電力消費を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−081324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド車では、停車中にブレーキペダルポジションが所定値未満でエンジンを始動する際に、バッテリから放電可能な最大電力が比較的小さいときには、モータMG1によるエンジンのクランキングに伴ってリングギヤ軸に作用するトルクをモータMG2や油圧ブレーキによって十分に受け止めることができず、その影響によって運転者に違和感を与えてしまう場合がある。
【0005】
本発明のハイブリッド車は、内燃機関を始動する際に運転者に違和感を与えるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車は、
内燃機関と、動力を入出力可能な第1の電動機と、駆動輪に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記第1の電動機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、前記第1の電動機および前記第2の電動機と電力をやりとり可能な二次電池と、前記駆動輪を含む車輪に制動力を付与可能な制動力付与手段と、を備えるハイブリッド車であって、
前記二次電池の状態に基づいて該二次電池から放電可能な最大電力としての出力制限を設定する出力制限設定手段と、
停車中に前記第1の電動機によって前記内燃機関をモータリングして始動する停車始動時において、前記出力制限が前記停車始動時に前記第1の電動機から出力されて前記駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクを前記第2の電動機から出力可能な電力範囲の下限として定めた所定電力以上のときには、前記第2の電動機からの前記キャンセルトルクの出力を伴って前記内燃機関をモータリングして始動するよう前記内燃機関と前記第1の電動機と前記第2の電動機とを制御し、前記出力制限が前記所定電力未満のときには、前記停車始動時の前記車輪の固定に要する制動力の前記制動力付与手段による付与を伴って前記内燃機関をモータリングして始動するよう前記内燃機関と前記第1の電動機と前記制動力付与手段とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド車では、停車中に第1の電動機によって内燃機関をモータリングして始動する停車始動時において、二次電池の状態に基づいて設定される二次電池から放電可能な最大電力としての出力制限が停車始動時に第1の電動機から出力されて駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクを第2の電動機から出力可能な電力範囲の下限として定めた所定電力以上のときには、第2の電動機からのキャンセルトルクの出力を伴って内燃機関をモータリングして始動するよう内燃機関と第1の電動機と第2の電動機とを制御する。これにより、駆動軸の回転を制限しながら内燃機関を始動することができ、停車始動時に運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。一方、出力制限が所定電力未満のときには、停車始動時の車輪の固定に要する制動力の制動力付与手段による付与を伴って内燃機関をモータリングして始動するよう内燃機関と第1の電動機と制動力付与手段とを制御する。これにより、二次電池の出力制限が大きく制限されている(小さい)状態、特に、二次電池の出力制限が大きく制限されていると共にブレーキ操作量が小さい(ブレーキ操作が行なわれていないときを含む)状態での停車始動時において、運転者に違和感を与えるのを車輪のより確実な固定によって抑制することができると共に、第2の電動機の電力消費の抑制によって二次電池からの放電電力を低減することができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド車において、前記制動力付与手段は、運転者によるブレーキ操作量に対応する制動力であるブレーキ対応制動力を前記車輪に付与すると共に運転者によるブレーキ操作に拘わらずに前記車輪に制動力を付与可能な手段であり、前記制御手段は、前記出力制限が前記所定電力未満であると共に前記ブレーキ対応制動力が前記停車始動時の前記車輪の固定に要する最低限の制動力として定めた固定用最低限制動力未満のときには、該固定用最低限制動力が前記制動力付与手段によって付与されるよう該制動力付与手段を制御する手段である、ものとすることもできる。即ち、出力制限が所定電力未満であると共にブレーキ対応制動力が固定用最低限制動力未満のときには、制動力付与手段により、固定用最低限制動力とブレーキ対応制動力との差分に相当する制動力をブレーキ対応制動力に加算して付与するのである。こうすれば、ブレーキ対応制動力に加算する制動力を最低限必要な制動力にすることができる。この態様の本発明のハイブリッド車において、前記遊星歯車機構は、前記駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記第1の電動機の回転軸とが共線図上で前記駆動軸,前記出力軸,前記回転軸の順に3つの回転要素に接続された機構であり、前記固定用最低限制動力は、路面勾配が上り勾配として大きいほど大きくなる傾向の制動力である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図3】バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図4】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される停車始動時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】トルクマップの一例とエンジン22の回転数Neの変化の様子の一例とを示す説明図である。
【図6】停車始動時の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、駆動輪39a,39bや図示しない従動輪(以下、まとめて車輪と称することがある)のブレーキを制御するためのブレーキアクチュエータ92と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0013】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0014】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構37およびデファレンシャルギヤ38を介して、最終的には車両の駆動輪39a,39bに出力される。
【0015】
ギヤ機構37には、ファイナルギヤ37aに取り付けられたパーキングギヤ62と、パーキングギヤ62と噛み合ってその回転駆動を停止した状態でロックするパーキングロックポール64と、からなるパーキングロック機構60が取り付けられている。パーキングロックポール64は、他のポジションから駐車ポジション(Pポジション)への操作信号または駐車ポジションから他のポジションへの操作信号を入力したハイブリッド用電子制御ユニット70により図示しないアクチュエータが駆動制御されることによって作動し、パーキングギヤ62との噛合およびその解除によりパーキングロックおよびその解除を行なう。ファイナルギヤ37aは機械的に駆動輪39a,39bに接続されているから、パーキングロック機構60は間接的に駆動輪39a,39bをロックしていることになる。
【0016】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モ
ータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0017】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図2に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図3にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。こうして設定される入力制限Winは、電池温度Tbが所定温度Tbref(例えば、0℃やマイナス10℃など)以下の領域で電池温度Tbが低いほど大きく制限される(絶対値が小さい値となる)と共に残容量(SOC)が所定値Shi(例えば、60%など)以上の領域で残容量(SOC)が大きいほど大きく制限され、出力制限Woutは、電池温度Tbが所定温度Tbref以下の領域で電池温度Tbが低いほど大きく制限されると共に残容量(SOC)が所定値Slo(例えば、40%など)以下の領域で残容量(SOC)が小さいほど大きく制限される。
【0018】
ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキペダル85の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ90の圧力(ブレーキ圧)と車速Vとにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動力が車輪(駆動輪39a,39bや従動輪)に作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したり、ブレーキペダル85の踏み込みに無関係に、車輪に制動力が作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したりすることができるように構成されている。以下、ブレーキアクチュエータ92の作動により車輪に作用させる制動力を油圧ブレーキと称することがある。ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)94により制御されている。ブレーキECU94は、図示しない信号ラインにより、車輪(駆動輪39a,39bや従動輪)に取り付けられた図示しない車輪速センサからの車輪速や図示しない操舵角センサからの操舵角などの信号を入力して、運転者がブレーキペダル85を踏み込んだときに駆動輪39a,39bや従動輪のいずれかがロックによりスリップするのを防止するアンチロックブレーキシステム機能(ABS)や運転者がアクセルペダル83を踏み込んだときに駆動輪39a,39bのいずれかが空転によりスリップするのを防止するトラクションコントロール(TRC),車両が旋回走行しているときに姿勢を保持する姿勢保持制御(VSC)なども行なう。ブレーキECU94は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってブレーキアクチュエータ92を駆動制御したり、必要に応じてブレーキアクチュエータ92の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0019】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、パーキングロック機構60の図示しないアクチュエータへの駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションセンサ82により検出するシフトポジションSPとしては、駐車ポジション(Pポジション)や中立ポジション(Nポジション),ドライブポジション(Dポジション),リバースポジション(Rポジション)などがある。
【0020】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0021】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に停車中にエンジン22を始動する停車始動時の動作について説明する。図4はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される停車始動時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、停車中にエンジン22の始動要求がなされたときに実行される。なお、このときにおいて、ブレーキペダル85が踏み込まれているときには、ブレーキECU94は、ブレーキペダル85の踏み込み量(ブレーキペダルポジションBP)に対応する制動力(以下、ブレーキ対応制動力Fbという)が車輪(駆動輪39a,39bや従動輪)に作用するようブレーキアクチュエータ92を制御している。また、シフトポジションSPが駐車ポジションのときには、パーキングロック機構60によって駆動輪39a,39bがロックされている。
【0022】
停車始動時制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、ブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,エンジン22の回転数Ne,モータMG1の回転数Nm1,バッテリ50の出力制限Woutなど制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは、図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1の回転数Nm1は、回転位置検出センサ43により検出されたモータMG1の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の出力制限Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0023】
こうしてデータを入力すると、エンジン22の回転数Neや始動開始時からの経過時間tを用いてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定してこれをモータECU40に送信する(ステップS110)。トルク指令Tm1*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されるようインバータ41のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。また、モータMG1のトルク指令Tm1*は、実施例では、エンジン22の回転数Neや始動開始時からの経過時間tとエンジン22の始動時のトルクマップとを用いて設定するものとした。トルクマップの一例とエンジン22の回転数Neの変化の様子の一例とを図5に示す。実施例のトルクマップは、エンジン22の始動指示がなされた時間t1の直後からレート処理を用いて比較的大きなトルクをトルク指令Tm1*に設定してエンジン22の回転数Neを迅速に増加させる。続いて、エンジン22の回転数Neが共振回転数帯を通過したか共振回転数帯を通過するのに必要な時間以降の時間t2にエンジン22を安定して回転数Nref以上でモータリングすることができるトルクをトルク指令Tm1*に設定し、電力消費や駆動軸としてのリングギヤ軸32aにおける反力を小さくする。そして、エンジン22の回転数Neが回転数Nrefに至った時間t3からレート処理を用いてトルク指令Tm1*を値0とし、エンジン22の完爆が判定された時間t4から発電用のトルクをトルク指令Tm1*に設定する。ここで、回転数Nrefは、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始する回転数である。このようにエンジン22の始動指示がなされた直後に大きなトルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してエンジン22をモータリングすることにより、エンジン22を迅速に回転数Nref以上に回転させて始動させることができる。また、参考のために、停車始動時の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。ここで、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されてリングギヤ軸32aに作用するトルク(−Tm1/ρ)と、モータMG2から出力されて減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルク(Tm2・Gr)とを示す。以下、停車始動時にモータMG1から出力されてリングギヤ軸32aに作用するトルク(−Tm1/ρ)を駆動軸作用トルクTdという。
【0024】
続いて、バッテリ50の出力制限Woutを閾値Wrefと比較する(ステップS120)。ここで、閾値Wrefは、駆動軸作用トルクTdをキャンセルするためのキャンセルトルクTc(=Tm1/(ρ・Gr))をモータMG2から出力可能な電力範囲の下限として定めた電力であり、停車始動時のモータMG1のトルク指令Tm1*の大きさの最大値や駆動軸作用トルクTdの大きさの最大値などに基づいて定めることができる。
【0025】
バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref以上のときには、キャンセルトルクTcをモータMG2から出力可能であると判断し、トルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤ31のギヤ数/リングギヤ32のギヤ数)と減速ギヤ35のギヤ比Grとの積で除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmp(前述のキャンセルトルクTcに相当するトルク)を次式(1)により計算すると共に(ステップS130)、バッテリ50の出力制限WoutとモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力との差分に基づいてモータMG2から出力してもよいトルクの上限としてのトルク制限Tlimを設定し(ステップS140)、仮トルクTm2tmpとトルク制限Tlimとのうち小さい方をモータMG2のトルク指令Tm2*に設定してこれをモータECU40に送信する(ステップS150)。トルク指令Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。また、式(1)は、図6の共線図から容易に導くことができる。さらに、トルク制限Tlimは、バッテリ50からの放電電力がバッテリ50の出力制限Woutを超えないようにするために、差分(Wout−Tm1*・Nm1)が小さくなるほど小さくなる傾向に、即ち、バッテリ50の出力制限Woutが大きく制限されている(小さい)ほど小さくなる傾向でモータMG1のトルク指令Tm1*が大きいほど小さくなる傾向に設定される。実施例では、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref以上のときに駆動軸作用トルクTdをモータMG2からの仮トルクTm2tmp(キャンセルトルクTcに相当するトルク)の出力によってキャンセルできるように、実験や解析などにより、停車始動時のトルク制限Tlimの最小値が仮トルクTm2tmpや駆動軸作用トルクTdの大きさの最大値に等しいかそれよりも大きくなる範囲で前述の閾値Wrefを定めるものとした。
【0026】
Tm2tmp=Tm1*/(ρ・Gr) (1)
【0027】
次に、エンジン22の回転数Neが上述した回転数Nref以上であるか否かを判定し(ステップS180)、エンジン22の回転数Neが回転数Nref未満であるときにはステップS100に戻る。そして、エンジン22の回転数Neが回転数Nref以上に至るまでステップS100〜S150,S180の処理を繰り返し実行し、エンジン22の回転数Neが回転数Nref以上に至ると、エンジン22の燃料噴射や点火を開始する旨の制御信号をエンジンECU24に送信してエンジン22の燃料噴射と点火を開始し(ステップS190)、エンジン22が完爆に至ったか否かを判定し(ステップS200)、完爆に至ると、本ルーチンを終了する。この場合、駆動軸作用トルクTdをモータMG2からのトルクによってキャンセルしながらモータMG1によってエンジン22をモータリングして始動することができる。この結果、エンジン22の始動時に運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。
【0028】
ステップS120でバッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref未満のときには、キャンセルトルクTcをモータMG2から出力できない場合が生じ得ると判断し、ブレーキペダルポジションBPを閾値BPrefと比較する(ステップS160)。ここで、閾値BPrefは、実施例では、ブレーキ対応制動力Fbが停車始動時の車輪(駆動輪39a,39bや従動輪)の固定に要する最低限の制動力(以下、固定用最低限制動力Flominという)となるときのブレーキペダルポジションBPを用いるものとした。そして、固定用最低限制動力Flominは、実施例では、駆動軸作用トルクTdを車輪に作用する駆動力に換算した車輪換算駆動力Twの大きさの最大値に大きさが略等しい制動力を用いるものとした。したがって、ステップS160の処理は、ブレーキ対応制動力Fbを固定用最低限制動力Flominと比較する処理となる。
【0029】
ブレーキペダルポジションBPが閾値BPref以上のときには、ブレーキ対応制動力Fbが固定用最低限制動力Flomin以上であると判断し、モータMG2のトルク指令Tm2*を設定せずに、エンジン22の回転数Neが回転数Nref以上であるか否かを判定し(ステップS180)、エンジン22の回転数Neが回転数Nref未満であるときにはステップS100に戻り、ステップS100〜S120,S160,S180の処理を繰り返し実行してエンジン22の回転数Neが回転数Nref以上に至ると、エンジン22の燃料噴射や点火を開始する旨の制御信号をエンジンECU24に送信してエンジン22の燃料噴射と点火を開始し(ステップS190)、エンジン22が完爆に至るのを待って(ステップS200)、本ルーチンを終了する。この場合、ブレーキアクチュエータ92の作動によって車輪に制動力を作用させる油圧ブレーキにより車輪を固定しながらモータMG1によってエンジン22をモータリングして始動することができる。この結果、出力制限Woutが比較的小さく且つブレーキペダル85が比較的大きく踏み込まれている状態での停車始動時において、運転者に違和感を与えるのを抑制することができると共に、第2の電動機の電力消費の抑制によって二次電池からの放電電力を低減することができる。例えば、シフトポジションSPが駐車ポジションで駆動輪39a,39bがパーキングロック機構60によってロックされているときを考えると、油圧ブレーキによって車輪を固定しながらエンジン22をモータリングして始動することにより、パーキングロック機構60のパーキングギヤ62とパーキングロックポール64との間の隙間によってギヤ機構37のギヤ(ファイナルギヤ37aなど)が回転したとしても、車輪の固定をより確実に保持することができ、停止始動時に運転者に違和感を与えるのを抑制することができる。なお、出力制限Woutが比較的小さいときとしては、図2や図3から分かるように、バッテリ50の温度が低いときや残容量(SOC)が小さいときが考えられる。
【0030】
ステップS160でブレーキペダルポジションBPが閾値BPref未満のときには、ブレーキ対応制動力Fbが固定用最低限制動力Flomin未満であると判断し、閾値BPrefに対応する制動力(固定用最低限制動力Flomin)とブレーキペダルポジションBPに対応する制動力(ブレーキ対応制動力Fb)との差分を、油圧ブレーキによって作用させるべき制動力の補正値としての制動力補正値ΔTbに設定してこれをブレーキECU94に送信し(ステップS170)、モータMG2のトルク指令Tm2*を設定せずに、エンジン22の回転数Neが回転数Nref以上であるか否かを判定し(ステップS180)、エンジン22の回転数Neが回転数Nref未満であるときにはステップS100に戻り、ステップS100〜S120,S160〜S180の処理を繰り返し実行してエンジン22の回転数Neが回転数Nref以上に至ると、エンジン22の燃料噴射や点火を開始する旨の制御信号をエンジンECU24に送信してエンジン22の燃料噴射と点火を開始し(ステップS190)、エンジン22が完爆に至るのを待って(ステップS200)、本ルーチンを終了する。制動力補正値ΔTbを受信したブレーキECU94は、ブレーキ対応制動力Fbに制動力補正値ΔTb(=Flomin−Fb)を加えた制動力(固定用最低限制動力Flominに相当する制動力)が車輪に作用するようブレーキアクチュエータ92を制御する。これにより、バッテリ50の出力制限Woutが比較的小さく、且つ、ブレーキペダル85小さく踏み込まれているかシフトポジションSPが駐車ポジションでブレーキペダル85が踏み込まれていない状態での停車始動時でも、運転者に違和感を与えるのを車輪のより確実な固定によって抑制することができると共に、モータMG2の電力消費の抑制によってバッテリ50からの放電電力を低減することができる。しかも、この場合、固定用最低限制動力Flominに相当する制動力を油圧ブレーキによって車輪に作用させるから、油圧ブレーキによる制動力を最低限必要な制動力にすることができる。
【0031】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、停車中にエンジン22を始動する停車始動時において、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref未満のときには、停車始動時の車輪(駆動輪39a,39bや従動輪)の固定に要する最低限の制動力である固定用最低限制動力Flomin以上の制動力の油圧ブレーキによる車輪への付与を伴ってモータMG1によってエンジン22をモータリングして始動するから、バッテリ50の出力制限Woutが大きく制限されているとき、特に、バッテリ50の出力制限Woutが大きく制限されていると共にブレーキペダル85の踏み込み量が小さい(ブレーキペダル85が踏み込まれていないときを含む)状態での停車始動時において、運転者に違和感を与えるのを車輪のより確実な固定によって抑制することができると共に、モータMG2の電力消費の抑制によってバッテリ50からの放電電力を低減することができる。この結果、バッテリ50の低容量化(小型化)を図りつつエンジン22の始動性を向上させることが可能となる。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20では、停車始動時において、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref未満であると共にブレーキペダルポジションBPが閾値BPref未満(ブレーキ対応制動力Fbが固定用最低限制動力Flomin未満)のときには、固定用最低限制動力Flominに相当する制動力を油圧ブレーキによって車輪に作用させるものとしたが、固定用最低限制動力Flominより大きい制動力、例えば、閾値BPrefより大きい所定値BPref2に相当する制動力や、閾値BPrefに対応する制動力(固定用最低限制動力Flomin)をブレーキ対応制動力Fbに加えた制動力などを油圧ブレーキによって車輪に作用させるものとしてもよい。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動軸作用トルクTdを車輪に作用する駆動力に換算した車輪換算駆動力Twの大きさの最大値に大きさが略等しい制動力を固定用最低限制動力Flominとすると共に、ブレーキ対応制動力Fbが固定用最低限制動力FlominとなるときのブレーキペダルポジションBPを閾値BPrefとして用いるものとしたが、坂路での停車始動時には、路面勾配に応じて車両に作用する車重の車両前後方向の分力(以下、車重分力という)と車輪換算駆動力Twとの和の大きさの最大値に大きさが略等しい制動力、具体的には、路面勾配が上り勾配として大きいほど大きくなる傾向の制動力を固定用最低限制動力Flominとすると共に、ブレーキ対応制動力Fbが固定用最低限制動力FlominとなるときのブレーキペダルポジションBPを閾値BPrefとして用いるものとすればよい。こうすれば、坂路での停車始動時でも、車輪をより確実に固定しながらエンジン22をモータリングして始動することができる。なお、坂路での停車始動時において、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref以上のときには、モータMG2からのトルクや油圧ブレーキによって車重分力をキャンセルできるようにする必要がある。
【0034】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「第1の電動機」に相当し、動力分配統合機構30が「遊星歯車機構」に相当し、モータMG2が「第2の電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、ブレーキアクチュエータ92やブレーキホイールシリンダ96a〜96dが「制動力付与手段」に相当し、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づくバッテリ50の残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50から放電してもよい最大許容電力である出力制限Woutを設定するバッテリECU52が「出力制限設定手段」に相当し、停車中にエンジン22を始動する停車始動時において、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref以上のときには、モータMG2からのキャンセルトルクTcの出力を伴ってエンジン22をモータリングして始動するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref未満のときには、停車始動時の車輪(駆動輪39a,39bや従動輪)の固定に要する最低限の制動力である固定用最低限制動力Flomin以上の制動力の油圧ブレーキによる車輪への付与を伴ってエンジン22をモータリングして始動するようエンジン22とモータMG1とブレーキアクチュエータ92を制御する、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とブレーキECU94とが「制御手段」に相当する。
【0035】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「第1の電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「遊星歯車機構」としては、動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものなど、駆動輪に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と第1の電動機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続されたものであれば如何なるタイプの遊星歯車機構であっても構わない。「第2の電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、第1の電動機や第2の電動機と電力をやりとり可能なものであれば如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「制動力付与手段」としては、ブレーキアクチュエータ92やブレーキホイールシリンダ96a〜96dに限定されるものではなく、駆動輪を含む車輪に制動力を付与可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「出力制限設定手段」としては、バッテリ50の残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50の出力制限Woutを設定するものに限定されるものではなく、残容量(SOC)や電池温度Tbの他に例えばバッテリ50の内部抵抗などに基づいて設定するものなど、二次電池の状態に基づいて二次電池から放電可能な最大電力としての出力制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とブレーキECU94とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、停車中にエンジン22を始動する停車始動時において、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref以上のときには、モータMG2からのキャンセルトルクTcの出力を伴ってエンジン22をモータリングして始動するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、バッテリ50の出力制限Woutが閾値Wref未満のときには、停車始動時の車輪(駆動輪39a,39bや従動輪)の固定に要する最低限の制動力である固定用最低限制動力Flomin以上の制動力の油圧ブレーキによる車輪への付与を伴ってエンジン22をモータリングして始動するようエンジン22とモータMG1とブレーキアクチュエータ92を制御するものに限定されるものではなく、停車中に第1の電動機によって内燃機関をモータリングして始動する停車始動時において、出力制限が停車始動時に第1の電動機から出力されて駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクを第2の電動機から出力可能な電力範囲の下限として定めた所定電力以上のときには、第2の電動機からのキャンセルトルクの出力を伴って内燃機関をモータリングして始動するよう内燃機関と第1の電動機と第2の電動機とを制御し、出力制限が所定電力未満のときには、停車始動時の車輪の固定に要する制動力の制動力付与手段による付与を伴って内燃機関をモータリングして始動するよう内燃機関と第1の電動機と制動力付与手段とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0036】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、37 ギヤ機構、37a ファイナルギヤ、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 パーキングロック機構、62 パーキングギヤ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 ブレーキマスターシリンダ、92 ブレーキアクチュエータ、94 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、96a〜96d ブレーキホイールシリンダ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、動力を入出力可能な第1の電動機と、駆動輪に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記第1の電動機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、前記第1の電動機および前記第2の電動機と電力をやりとり可能な二次電池と、前記駆動輪を含む車輪に制動力を付与可能な制動力付与手段と、を備えるハイブリッド車であって、
前記二次電池の状態に基づいて該二次電池から放電可能な最大電力としての出力制限を設定する出力制限設定手段と、
停車中に前記第1の電動機によって前記内燃機関をモータリングして始動する停車始動時において、前記出力制限が前記停車始動時に前記第1の電動機から出力されて前記駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのキャンセルトルクを前記第2の電動機から出力可能な電力範囲の下限として定めた所定電力以上のときには、前記第2の電動機からの前記キャンセルトルクの出力を伴って前記内燃機関をモータリングして始動するよう前記内燃機関と前記第1の電動機と前記第2の電動機とを制御し、前記出力制限が前記所定電力未満のときには、前記停車始動時の前記車輪の固定に要する制動力の前記制動力付与手段による付与を伴って前記内燃機関をモータリングして始動するよう前記内燃機関と前記第1の電動機と前記制動力付与手段とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記制動力付与手段は、運転者によるブレーキ操作量に対応する制動力であるブレーキ対応制動力を前記車輪に付与すると共に運転者によるブレーキ操作に拘わらずに前記車輪に制動力を付与可能な手段であり、
前記制御手段は、前記出力制限が前記所定電力未満であると共に前記ブレーキ対応制動力が前記停車始動時の前記車輪の固定に要する最低限の制動力として定めた固定用最低限制動力未満のときには、該固定用最低限制動力が前記制動力付与手段によって付与されるよう該制動力付与手段を制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド車であって、
前記遊星歯車機構は、前記駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記第1の電動機の回転軸とが共線図上で前記駆動軸,前記出力軸,前記回転軸の順に3つの回転要素に接続された機構であり、
前記固定用最低限制動力は、路面勾配が上り勾配として大きいほど大きくなる傾向の制動力である、
ハイブリッド車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−25247(P2012−25247A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164771(P2010−164771)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】