説明

バルブタイミング制御装置に用いられる制御弁

【課題】ロック機構のロック解除作動を容易かつ確実に行うことができるバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁を提供する。
【解決手段】電磁切換弁のスプール弁体を、ポンプ吐出通路と進角通路及び遅角通路の両方に連通させる共に、ロック通路とドレン通路を連通させる第1ポジションと、吐出通路に進角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、遅角通路とドレン通路を連通させる第2ポジションと、吐出通路に遅角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、進角通路とドレン通路を連通させる第3ポジションと、吐出通路とロック通路を連通させる一方、進角通路と遅角通路の両方を遮断する第4ポジションと、進角通路と遅角通路及びロック通路の全てと吐出通路を連通させる第6ポジションに切り換え可能に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気弁や排気弁である機関弁のバルブタイミングを運転状態に応じて可変制御するバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から内燃機関の始動時に、ロック機構によって最進角位置と最遅角位置の中間位置でベーン部材をロックするベーンタイプのバルブタイミング制御装置が提供されている。
【0003】
前記ロック機構のロックピンによるロックを解除するには、遅角油圧室または進角油圧室の作動油を用いてロックを解除するようになっているが、このような各油圧室のいずれかの作動油を用いてロックを解除しようとすると、カムシャフトから伝達される交番トルクによってベーン部材がばたついて遅角油圧室と進角油圧室内の作動油の油圧が変動して容易に解除することができなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、以下の特許文献1に記載のバルブタイミング制御装置にあっては、進角油圧室と遅角油圧室への給排油通路とは別に、ロック機構専用の油通路を設け、単一の制御弁によって、前記各油圧室への給排油通路への作動油の制御と、ロック機構へのロック、解除の油圧の制御を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−247403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のバルブタイミング制御装置は、ロック機構専用の油通路が設けられているものの、ロックピンによるロックを解除する際に、前記進角油圧室に油圧が供給される一方、遅角油圧室内の作動油を排出するようになっている。
【0007】
このため、前記ベーン部材が進角方向へ回転しようとする状態で、前記ロックピンが解除方向(抜け方向)へ移動することになるため、ロック穴に対してロックピンに剪断方向(径方向)の力が作用してロック穴の孔縁に圧接して容易に解除できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、最進角位置と最遅角位置の間の中間位置にロックさせるロック機構のロック解除作動を容易かつ確実に行うことができるバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、とりわけ、ポンプの吐出通路と前記進角通路及び遅角通路の両方に連通させると共に、前記ロック通路とドレン通路を連通させる第1ポジションと、前記吐出通路に対して前記進角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、前記遅角通路とドレン通路を連通させる第2ポジションと、前記吐出通路に対して前記遅角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、前記進角通路とドレン通路を連通させる第3ポジションと、前記吐出通路とロック通路を連通させると共に、前記吐出通路と前記進角通路及び遅角通路を前記第1ポジションよりも小さな通路面積で連通させるか、もしくは前記進角通路と遅角通路の両方を遮断する第4ポジションと、に切り換え可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、最進角位置と最遅角位置の間の中間位置にロックさせるロック機構のロック解除作動を容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電磁切換弁が適用されるバルブタイミング制御装置を示す全体構成図である。
【図2】本実施形態に供されるベーン部材が中間位相の回転位置に保持された状態を示す図1のA−A線断面図である。
【図3】本実施形態に供されるベーン部材が最遅角位相の位置に回転した状態を示す図1のA−A線断面図である。
【図4】本実施形態に供されるベーン部材が最進角位相の位置に回転した状態を示す図1のA−A線断面図である。
【図5】本実施形態の各ロックピンの作動を示す図2のB−B線断面図及びC−C線断面図である。
【図6】本実施形態の各ロックピンの別の作動を示す図2のB−B線断面図及びC−C線断面図である。
【図7】本実施形態の各ロックピンの別の作動を示す図2のB−B線断面図及びC−C線断面図である。
【図8】本実施形態の各ロックピンの別の作動を示す図2のB−B線断面図及びC−C線断面図である。
【図9】本実施形態の各ロックピンの別の作動を示す図2のB−B線断面図及びC−C線断面図である。
【図10】本実施形態の各ロックピンの別の作動を示す図2のB−B線断面図及びC−C線断面図である。
【図11】本実施形態の電磁切換弁を示す縦断面図である。
【図12】本実施形態における電磁切換弁のスプール弁体の第1ポジションを示す縦断面図である。
【図13】同スプール弁体の第6ポジションを示す縦断面図である。
【図14】同スプール弁体の第2ポジションを示す縦断面図である
【図15】同スプール弁体の第4ポジションを示す縦断面図である
【図16】同スプール弁体の第3ポジションを示す縦断面図である
【図17】同スプール弁体の第5ポジションを示す縦断面図である
【図18】スプール弁体のストローク量(ポジション)と各油圧室及びロック通路への作動油の給排との関係を示す表である。
【図19】本実施形態の電子コントローラによる制御フローチャート図である。
【図20】電磁切換弁の第2実施形態を示し、Aは電磁切換弁の縦断面、Bは同電磁切換弁をAの位置から90°回転させた位置での縦断面図である。
【図21】A,Bは同電磁切換弁のスプール弁体の第1ポジションを示す縦断面図である。
【図22】A,Bは同電磁切換弁のスプール弁体の第6ポジションを示す縦断面図である。
【図23】A,Bは同電磁切換弁のスプール弁体の第2ポジションを示す縦断面図である。
【図24】A,Bは同電磁切換弁のスプール弁体の第4ポジションを示す縦断面図である。
【図25】A,Bは同電磁切換弁のスプール弁体の第3ポジションを示す縦断面図である。
【図26】A,Bは同電磁切換弁のスプール弁体の第5ポジションを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る制御弁が適用される内燃機関のバルブタイミング制御装置を、例えばハイブリット車やアイドルストップ車などの吸気弁側に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
前記バルブタイミング制御装置は、図1〜図4に示すように、機関のクランクシャフトによりタイミングチェーンを介して回転駆動される駆動回転体であるスプロケット1と、機関前後方向に沿って配置されて、前記スプロケット1に対して相対回転可能に設けられた吸気側のカムシャフト2と、前記スプロケット1とカムシャフト2との間に配置されて、該両者の相対回動位相を変換する位相変更機構3と、該位相変更機構3を中間位相位置でロックさせるロック機構である位置保持機構4と、前記位相変更機構3と位置保持機構4をそれぞれ作動させる油圧回路5と、を備えている。
【0014】
前記スプロケット1は、ほぼ肉厚円板状に形成されて、外周に前記タイミングチェーンが巻回された歯車部1aを有していると共に、後述するハウジングの後端開口を閉塞するリアカバーとして構成され、中央には前記カムシャフト2に固定された後述のベーンロータ外周に回転自在に支持される支持孔6が貫通形成されている。
【0015】
前記カムシャフト2は、図外のシリンダヘッドにカム軸受を介して回転自在に支持され、外周面には機関弁である吸気弁を開作動させる複数のカムが軸方向の位置に一体に固定されていると共に、一端部の内部軸心方向に雌ねじ孔2aが形成されている。
【0016】
前記位相変更機構3は、図1及び図2に示すように、前記スプロケット1に軸方向から一体的に設けられたハウジング7と、前記カムシャフト2の一端部の雌ねじ孔2aに螺着するカムボルト8を介して固定され、前記ハウジング7内に回転自在に収容された従動回転体であるベーン部材9と、前記ハウジング7内に形成されて、該ハウジング7の内周面に有する3つのシューである隔壁10とベーン部材9とによって隔成されたそれぞれ3つの遅角油圧室11及び進角油圧室12と、を備えている。
【0017】
前記ハウジング7は、焼結金属によって一体に形成された円筒状のハウジング本体7aと、プレス成形によって形成され、前記ハウジング本体7aの前端開口を閉塞するフロントカバー13と、後端開口を閉塞するリアカバーとしての前記スプロケット1と、から構成されている。前記ハウジング本体7aとフロントカバー13及びスプロケット本体5とは、前記各隔壁10の各ボルト挿通孔10aを貫通する3本のボルト14によって共締め固定されている。前記フロントカバー13は、中央に挿通孔13aが貫通形成されている。
【0018】
前記ベーン部材9は、金属材によって一体に形成され、カムシャフト2の一端部にカムボルト8によって固定されたベーンロータ15と、該ベーンロータ15の外周面に円周方向のほぼ120°等間隔位置に放射状に突設された3つのベーン16a〜16cとから構成されている。
【0019】
前記ベーンロータ15は、前後方向に長いほぼ円筒状に形成され、前端面15bのほぼ中央位置に薄肉な段差小径な円筒状のシール部材挿入ガイド部15aが一体に設けられていると共に、後端部15cがカムシャフト2方向へ延設されている。また、前記ベーンロータ15の前端部から後端部の内部には、円柱状の嵌合溝15dが形成されている。
【0020】
一方、前記ベーン16a〜16cは、それぞれが各隔壁10の間に配置されていると共に、円周方向の巾がそれぞれ異なっており、最大巾のベーン16aと中巾のベーン16bはほぼ扇状に形成されていると共に、最小巾のベーン16cは、厚肉なプレート状に形成されている。前記各ベーン16a〜16cの外周面と隔壁10の先端には、ハウジング本体7aの内面とベーンロータ外周面との間をシールするシール部材17a、17bがそれぞれ設けられている。
【0021】
また、前記ベーン部材9は、図3に示すように、遅角側へ相対回転すると最大巾ベーン16aの一側面16dが対向する前記一つの隔壁10の対向側面に形成された突起面10bに当接して最大遅角側の回転位置が規制され、図4に示すように、進角側へ相対回転すると最大巾ベーン16aの他側面16eが対向する他の隔壁10の突起面10cに当接して最大進角側の回転位置が規制されるようになっている。
【0022】
このとき、他のベーン16b、16cは、両側面が円周方向から対向する各隔壁10の対向面に当接せずに離間状態にある。したがって、ベーン部材9と隔壁10との当接精度が向上すると共に、後述する各油圧室11,12への油圧の供給速度が速くなってベーン部材9の正逆回転応答性が高くなる。
【0023】
前記各ベーン16a〜16cの正逆回転方向の両側面と各隔壁10の両側面との間に、前述した各遅角油圧室11と各進角油圧室12が隔成されており、各遅角油圧室11と各進角油圧室12とは、前記ベーンロータ15の内部にほぼ放射状に形成された第1連通孔11aと第2連通孔12aを介して後述する油圧回路5にそれぞれに連通している。
【0024】
前記位置保持機構4は、ハウジング7に対してベーン部材9を最遅角側の回転位置(図3の位置)と最進角側の回転位置(図4の位置)との間の中間回転位相位置(図2の位置)に保持するものである。
【0025】
すなわち、図5〜図10に示すように、前記スプロケット1の内側面の円周方向の所定位置に設けられた断面ほぼT字形状の2つのロック穴構成部材1a、1bと、該ロック穴構成部材1a、1bにそれぞれ形成されたロック部である第1、第2ロック穴24,25と、前記ベーン部材9の2つのベーン16a,16bの内部に設けられて、前記各ロック穴24,25にそれぞれ係脱する2つのロック部材である第1、第2ロックピン26,27と、該各ロックピン26,27の前記各ロック穴24,25に対する係合を解除させるロック通路28と、から主として構成されている。
【0026】
前記第1ロック穴24は、図2〜図5に示すように、スプロケット1の円周方向に延びた円弧長穴状(繭状)に形成されていると共に、スプロケット1の内側面1cの前記ベーン部材9の最遅角側の回転位置よりも進角側に寄った中間位置に形成されている。また、第1ロック穴24は、その底面が遅角側から進角側に亘って順次低くなる3段の階段状に形成されて、これが第1ロック案内溝になっている。
【0027】
つまり、第1ロック案内溝は、図5〜図10に示すように、スプロケット1の内側面1cを最上段として、これより一段ずつ低くなる第1底面24a、第2底面24b、第3底面24cと順次低くなる階段状に形成され、遅角油圧室11側の内側面24dは垂直に立ち上がった壁面になっている。したがって、前記各底面24a〜24cに順次係合した第1ロックピン26は、ベーン16aを介して先端部26aがスプロケット1の内端面1cから各底面24a〜24cを進角方向へ段階的に下降移動すると、各段差面によって反対方向への移動、つまり、遅角方向への移動が規制される。よって、各底面24a〜24cが一方向クラッチ(ラチェット)として機能するようになっている。
【0028】
前記第1ロックピン26は、先端部26aの側縁が前記内側面24dに当接した時点で進角方向(遅角油圧室11側)への移動が規制されるようになっている(図10参照)。
【0029】
前記第2ロック穴25は、図2〜図5に示すように、第1ロック穴24と同じくスプロケット1の円周方向に延びた長穴状に形成されていると共に、スプロケット1の内側面1cの前記ベーン部材9の最遅角側の回転位置よりも進角側に寄った中間位置に形成されている。また、この第2ロック穴25は、その底面が進角油圧室12側から遅角油圧室11側に亘って順次低くなる2段の階段状に形成されており、これが第2ロック案内溝となっている。
【0030】
すなわち、スプロケット1の内側面1cを最上段として第1底面25a、第2底面25bと順次低くなる階段状に形成され、遅角油圧室11側の内側面25cは垂直に立ち上がった壁面になっている。また、第1底面25aの深さは段差面を介して第1ロック穴の第1底面24aより若干深く形成され、第2底面25bの深さは段差面25cを介して第2底面24bと第3底面24cの深さを合わせた大きな深さに設定されて、全体の深さが前記第1ロック穴24の第3底面24cとほぼ同じ深さに設定されている。したがって、前記各底面25a、25bに係合した第2ロックピン27は、ベーン16aを介して先端部27aが各底面25a、25bを進角側へ段階的に下降移動すると、各段差面によって反対方向への移動、つまり、最遅角方向への移動が規制されている。よって、各底面25a、25bが一方向クラッチ(ラチェット)として機能するようになっている。
【0031】
そして、前記第2ロックピン26は、先端部26aの側縁が第2底面25bの段差面25cに当接した時点で遅角方向(進角油圧室12側)への移動が規制されるようになっている(図10参照)。
【0032】
そして、第1、第2ロック穴24,25の相対的な形成位置の関係は、第1ロックピン26が第1ロック穴24の第1〜第3底面24a〜24cに順次当接係合した段階では、図5〜図8に示すように、第2ロックピン27は先端部27aの先端面が未だスプロケット本体5の内側面5dに当接した状態にある。
【0033】
その後、図9、図10に示すように、第1ロックピン26の先端部が第3底面24c上を僅かに進角側へ移動した時点で初めて第2ロックピン27の先端部27aが第1底面25aに当接係合し、第1ロックピン26が第3底面24cに係合したままさらに進角側へ移動して内側面24dに当接した時点で第2ロックピン27の先端部27aが第2底面25bに当接係合しつつ側縁が段差面25cに当接するように相対位置が設定されている。
【0034】
要するに、ベーン部材9が所定の遅角側位置から進角側位置まで相対回転するにしたがって前記第1ロックピン26が第1底面24a〜第3底面24cに順次段階的に当接係合し、続いて第2ロックピン27が第1底面25aと第2底面25bに順次段階的に当接係合する。これによって、ベーン部材9は、全体として5段階のラチェット作用によって遅角方向への回転を規制されながら進角方向へ相対回転して、最終的に最遅角位相と最進角位相との間の中間位相位置に保持されるようになっている。
【0035】
前記第1ロックピン26は、図1、図5などに示すように、最大巾ベーン16aの内部軸方向に貫通形成された第1ピン孔31a内に摺動自在に配置され、外径が段差径状に形成されて、最小径の前記先端部26aと、該先端部26aより後部側の中径部26bと、該中径部26bの後端側の外周面に大径フランジ状の第1受圧部26cとによって一体に形成されている。
【0036】
前記中径部26bは、先端部26a側が前記第1ピン孔31aの先端側に圧入固定されたスリーブ40の内周面を液密的に摺動するようになっていると共に、後端部26dが第1ピン孔31aに液密的に摺動するようになっている。前記先端部26aは、先端面が前記第1ロック穴24の各底面24a〜24cに密着状態に当接可能な平坦面状に形成されている。
【0037】
また、この第1ロックピン26は、中径部26bの後端側から内部軸方向に形成された凹溝底面とフロントカバー13の内面との間に弾装された付勢部材である第1スプリング29のばね力によって第1ロック穴24に係合する方向へ付勢されている。
【0038】
また、この第1ロックピン26は、先端部26aと後端部26dが前記ベーン16aに形成された前後の油孔45a、45bを介して前記進角油圧室12からの同一油圧が作用するようになっている。
【0039】
つまり、前記一方の油孔45aに臨む前記先端部26aの先端面26fと中径部26bの環状先端面26gとを合わせた受圧面積と、他方の油孔45bに臨む後端部26dの後端面26hとスプリング溝の底面26iとを合わせた受圧面積が同一に設定されて、これらにそれぞれ進角油圧室12の同一の油圧が同時に作用するようになっている。
【0040】
さらに、前記第1受圧部26cは、図中下端面が後述する第1解除受圧室32に臨む第1受圧面26eとして構成されている一方、上端面が前記ベーン16a内部とフロントカバー13内とに連通状態に形成された呼吸孔43を介して大気開放されている。
【0041】
前記第2ロックピン27は、中巾ベーン16bの内部軸方向に貫通形成された第2ピン孔31b内に摺動自在に配置され、第1ロックピン26と同じく、外径が段差径状に形成されて、最小径の先端部27aと、該先端部27aより後部側の中径部27bと、該中径部26bの後端側の外周面に大径フランジ状の第2受圧部27cと、によって一体に形成されている。また、前記中径部27bは、先端部27a側が前記第2ピン孔31bの先端側に圧入固定されたスリーブ41の内周面を液密的に摺動するようになっていると共に、後端部27dが第2ピン孔31bに液密的に摺動するようになっている。前記先端部27aは、先端面が前記第2ロック穴25の各底面25a、25bに密着状態に当接可能な平坦面状に形成されている。
【0042】
また、この第2ロックピン27は、中径部27bの後端側から内部軸方向に形成された凹溝底面とフロントカバー13の内面との間に弾装された付勢部材である第2スプリング30のばね力によって第2ロック穴25に係合する方向へ付勢されている。
【0043】
また、この第2ロックピン27は、先端部27aと後端部27dが前記ベーン16bに形成された前後の油孔46a、46bを介して前記進角油圧室12からの同一油圧が作用するようになっている。つまり、前記一方の油孔46aに臨む前記先端部27aの先端面27fと中径部27bの環状先端面27gとを合わせた受圧面積と、他方の油孔46bに臨む後端部27dの後端面27hとスプリング溝の底面27iとを合わせた受圧面積が、同一に設定されて、これらにそれぞれ進角油圧室12の同一の油圧が同時に作用するようになっている。
【0044】
さらに、前記第2受圧部27cは、図中下端面が後述する第2解除受圧室33に臨む第2受圧面27eとして構成されている一方、上端面が前記ベーン16b内部とフロントカバー13内とに跨って形成された呼吸孔44を介して大気開放されている。
【0045】
前記位相変更機構4は、図1及び図5に示すように、前記第1ピン孔31aの大径段差部と第1ロックピン26の第1受圧部26cとの間に形成された前記第1解除用受圧室32と、第2ピン孔31bの大径段差部と第2ロックピン27の第2受圧部27bとの間に形成された前記第2解除用受圧室33とを有している。
【0046】
この第1、第2解除用受圧室32,33は、内部にそれぞれ供給された油圧を前記第1、第2受圧面26e、27eに作用させて、第1、第2ロックピン26,27を各スプリング29,30のばね力に抗して第1、第2ロック穴24,25から後退させてそれぞれの係合を解除するようになっている。
【0047】
前記油圧回路5は、図1に示すように、前記各遅角油圧室11に対して第1連通路11aを介して油圧を給排する遅角通路18と、各進角油圧室12に対して第2連通路12aを介して油圧を給排する進角通路19と、前記各第1、第2解除用受圧室32,33に対してそれぞれ油圧を供給、排出するロック通路28と、前記各通路18,19に作動油を選択的に供給すると共に、ロック通路28に作動油を供給する流体圧供給源であるオイルポンプ20と、機関運転状態に応じて前記遅角通路18と進角通路19の流路を切り換えると共に、前記ロック通路28に対する作動油の給排を切り換える制御弁である単一の電磁切換弁21と、を備えている。
【0048】
前記遅角通路18と進角通路19とは、それぞれの一端部が前記電磁切換弁21の後述する各ポートに接続されている一方、他端側が前記ベーン部材9のベーンロータ15の内部及び前記シール部材挿入ガイド部15a内に挿通保持されたほぼ円柱状の通路構成部37内に軸方向に沿って平行に形成された通路部18a、19aと前記第1,第2連通路11a、12aとを介して前記各遅角油圧室11と各進角油圧室12にそれぞれ連通している。
【0049】
前記ロック通路28は、一端側が電磁切換弁21の後述するロックポート58に接続されている一方、他端側の通路部28aが前記通路構成部37の内部軸方向から径方向に折曲されて、前記ベーンロータ15内に分岐形成された第1、第2油通路孔38a、38bを介して前記第1、第2解除用受圧室32,33にそれぞれ連通している。
【0050】
前記通路構成部37は、外側の端部が図外のチェーンカバーに固定されて非回転部として構成されており、その内部軸方向には、前記各通路部18a、19aと前記通路孔28aが形成されている。
【0051】
なお、前記通路構成部37は、外周面の軸方向の前後位置に形成された3つの嵌着溝に前記各通路部18a、19a、28aの前後をシールする3つの環状シール部材39がそれぞれ嵌着固定されている。
【0052】
前記オイルポンプ20は、機関のクランクシャフトによって回転駆動するトロコイドポンプなどの一般的なものであって、アウター、インナーロータの回転によってオイルパン23内から吸入通路20bを介して吸入された作動油が吐出通路20aを介して吐出されて、その一部がメインオイルギャラリーM/Gから内燃機関の各摺動部などに供給されると共に、他が前記電磁切換弁21側に供給されるようになっている。なお、吐出通路20aの下流側には、濾過フィルタ50aが設けられていると共に、該吐出通路20aから吐出された過剰な作動油をオイルパン23に排出して適正な流量に制御する流量制御弁50bが設けられている。
【0053】
前記電磁切換弁21は、図1及び図11に示すように、6ポート6位置の比例型弁であって、ほぼ円筒状の軸方向に比較的長いバルブボディ51と、該バルブボディ51内に軸方向へ摺動自在に設けられたスプール弁体52と、バルブボディ51の内部一端側に設けられて、スプール弁体52を図中右方向へ付勢する付勢部材であるバルブスプリング53と、バルブボディ51の一端部に設けられて、前記スプール弁体52をバルブスプリング53のばね力に抗して図中左方向へ移動させる電磁ソレノイド54と、から主として構成されている。
【0054】
前記バルブボディ51は、機関のシリンダブロックに形成されたバルブ収容孔01に挿通配置され、周壁に複数のポートが貫通形成されており、軸方向のほぼ中央位置に配置形成されて、前記オイルポンプ20の吐出通路20aに連通する隣接した一対の第1,第2導入ポート55a、55bと、先端側に形成されて、前記遅角通路18に連通する隣接した一対の第1、第2供給ポート56a、56bと、軸方向のほぼ中央位置に形成されて、前記進角通路19に連通する一つの第3供給ポート57と、基端側である前記電磁ソレノイド54側に配置形成されて、前記ロック通路28に連通するロックポート58と、前記第1、第2導入ポート55a、55bの両側に配置形成されて、前記オイルパン23に接続されたドレン通路22に連通する一対の第1,第2排出ポート59a、59bと、を有している。また、バルブボディ51の電磁ソレノイド54側の基端部外周に前記バルブ収容孔01の内周に密着してシールするオイルシール80が嵌着固定されている。
【0055】
前記スプール弁体52は、有底中空状の内部が作動油を通流させる通路孔60として構成されていると共に、該通路孔60の両端が底壁と栓体61とによって閉止されている。また、このスプール弁体52は、外周面両端側に該スプール弁体52をバルブボディ51の内周面51aに摺動案内する円筒状の2つの第1、第2ガイド部62a、62bが形成されていると共に該両ガイド部62a、62bの間の外周面に5つの第1〜第5ランド部63a〜63eが軸方向へ所定間隔をもって一体に形成されている。
【0056】
前記第1ランド部63aと第1ガイド部62aとの間に、前記第1供給ポート56aと通路孔60とを適宜連通させる第1連通孔64aが径方向に貫通形成されている。また、前記第2ランド部63bと第3ランド部63cとの間に、前記第2導入ポート55bと通路孔60とを適宜連通させる第2連通孔64bが同じく径方向へ貫通形成されている。さらに、前記第2ガイド部62bと第5ランド部63eとの間に、前記ロックポート58と通路孔60を適宜連通させる第3連通孔64cが径方向へ貫通形成されている。
【0057】
また、前記スプール弁体52の外周面、つまり第1ランド部63aと第2ランド部63bとの間の外周面、第3ランド部63cと第4ランド部63dとの間の外周面、第4ランド部63dと第5ランド部63eとの間の外周面に、環状凹部である第1環状通路溝65aと第2環状通路溝65b及び第3環状通路溝65cがそれぞれ形成されている。なお、前記第1〜第3連通孔64a〜64cの外周側には、それぞれ円環状のグルーブ溝が形成されている。
【0058】
前記バルブスプリング53は、一端がバルブボディ51の基端部側に形成された段差面に軸方向から弾接している一方、他端が前記スプール弁体52の基端側に設けられた円環状のリテーナ66に軸方向から弾接して、スプール弁体52を電磁ソレノイド54方向に付勢している。
【0059】
前記電磁ソレノイド54は、円筒状のソレノイドケーシング54aの内部に収容保持されて、電子コントローラ34から制御電流が出力される電磁コイル67と、該電磁コイル67の内周側に固定された有底筒状の固定ヨーク68と、該固定ヨーク68の内部に軸方向へ摺動自在に設けられた可動プランジャ69と、該可動プランジャ69の先端部に一体に形成されて、先端部70aが前記バルブスプリング53のばね力に抗して前記スプール弁体52の基端面を図11中、左方向へ押圧する駆動ロッド70とから主として構成されている。また、前記ソレノイドケーシング54aの後端側には、電子コントローラ34に電気的に接続される端子71aを有する合成樹脂製のコネクタ71が取り付けられている。
【0060】
そして、この電磁切換弁21は、図11〜図17に示すように、電子コントローラ34の制御電流と前記バルブスプリング53との相対的な圧力によって、前記スプール弁体52を前後方向の6つのポジジョンに移動させて、オイルポンプ20の吐出通路20aと前記いずれか一方の油通路18,19と連通させると同時に、他方の油通路18,19とドレン通路22とを連通させるようになっている。また、前記ロック通路28と吐出通路20aあるいはドレン通路22とを選択的に連通させるようになっている。
〔スプール弁体のポジション制御〕
すなわち、以下において、図18に示すスプール弁体52のストローク量と各油圧室11,12や各ロック解除受圧室32,33(ロック通路28)への作動油の給排の関係を示す表を参照しながら、図12〜図17に基づいて前記スプール弁体52のポジション制御を具体的に説明する。
【0061】
まず、スプール弁体52が、図11及び図12に示すように、バルブスプリング53のばね力によって最大右方向に位置している場合(第1ポジジョン)は、第2導入ポート55bと第1供給ポート56が第1連通孔64aと通路孔60を介して連通されると共に、第1導入ポート55aと第3供給ポート57がスプール弁体52の外周面に有する第2環状通路溝65bを介して連通される。と同時に、ロックポート58と第1排出ポート59aが第3環状通路溝65cを介して連通されるようになっている。
【0062】
次に、スプール弁体52が、図13に示すように、電磁ソレノイド54への通電によりバルブスプリング53のばね力に抗して僅かに左方向へ移動した場合(第6ポジション)は、第2導入ポート55bと第1供給ポート56aの連通及び第1導入ポート55aと第3供給ポート57の連通は維持しつつ、ロックポート58が、第1排出ポート59aとの連通が遮断される一方、第2導入ポート55bとの連通が第3連通孔64cと通路孔60を介して確保されるようになっている。
【0063】
スプール弁体52が、図14に示すように、電磁ソレノイド54へのより大きな通電によってさらに僅かに左方向へ移動した場合(第2ポジション)は、前記第1導入ポート55aと第3供給ポート57との連通、並びに第2導入ポート55bとロックポート58との連通が維持されつつ、第1供給ポート56aと第2排出ポート59bが第1環状通路溝65aを介して連通される。
【0064】
スプール弁体52が、図15に示すように、さらに僅かに左方向へ移動した場合(第4ポジション)は、前記第1導入ポート55aと第3供給ポート57並びに第1供給ポート56aと第2排出ポート59bとの連通がそれぞれ遮断されると共に、ロックポート58と第2導入ポート55bとの連通が維持されるようになっている。
【0065】
スプール弁体52が、図16に示すように、さらに僅かに左方向へ移動した場合(第3ポジション)は、第2導入ポート55bとロックポート58との連通が維持され、同時に、第2導入ポート55bと第2供給ポート56bが通路孔60を介して連通すると共に、第3供給ポート57と第1排出ポート59aが第3環状通路溝65cを介して連通されるようになっている。
【0066】
また、スプール弁体52が、図17に示すように、電子ソレノイド54への最大の通電量によって最大左方向へ移動した場合(第5ポジション)は、第2供給ポート56b及びロックポート58が第2排出ポート59bに通路孔60を介して連通すると共に、第3供給ポート57が第1排出ポート59aに連通するようになっている。
【0067】
このように、機関運転状態に応じて、前記スプール弁体52の軸方向の移動位置を変更することによって、各ポートを選択的に切り換えてタイミングスプロケット1に対するベーン部材9の相対回転角度を変化させると共に、両ロックピン26,27のロック穴24,25へのロックとロック解除を選択的に行ってベーン部材9の自由な回転の許容と自由な回転を規制するようになっている。
【0068】
前記電子コントローラ34は、内部のコンピュータが図外のクランク角センサ(機関回転数検出)やエアーフローメータ、機関水温センサ、機関温度センサ、スロットルバルブ開度センサおよびカムシャフト2の現在の回転位相を検出するカム角センサなどの各種センサ類からの情報信号を入力して現在の機関運転状態を検出すると共に、前述したように、前記電磁切換弁21の電磁コイル67に制御パルス電流を出力して前記スプール弁体52の移動位置を制御して、前記各ポートを選択的に切換制御するようになっている。
【0069】
以下、本実施形態のバルブタイミング制御装置の具体的な作動を説明する。
【0070】
まず、車両の通常走行後にイグニッションスイッチをオフ操作して機関を停止した場合には、オイルポンプ20の駆動も停止されることから、いずれかの油圧室11,12や各第1,第2解除用受圧室32,33への作動油の供給が停止される。
【0071】
つまり、機関停止前のアイドリング回転時には、各遅角油圧室11に作動油圧が供給されて、ベーン部材9が進角側の回転位置になっている状態で、イグニッションスイッチがオフ操作されると、機関の停止直前にカムシャフト2に作用する正負の交番トルクが発生する。特に、負のトルクによってベーン部材9が遅角側から進角側へ回転して中間位相位置になると、第1ロックピン26と第2ロックピン27が、図10に示すように、各スプリング29、30のばね力で進出移動して各先端部26a、27aが対応する第1、第2ロック穴24、25に係合する。これによって、ベーン部材9は、図2に示す最進角と最遅角の間の中間位相位置に保持される。
【0072】
すなわち、前記カムシャフト2に作用する負の交番トルクによってベーン部材9が図5、図6に示すように僅かに進角側に回転して前記第1ロックピン26の先端部26aが第1ロック穴24の第1底面24aに当接係合する。この時点で、ベーン部材9に正の交番トルクが作用して遅角側へ回転しようとするが、第1ロックピン26の先端部26aの側縁が第1底面24aの立ち上がり段差面に当接して遅角側への回転が規制される。
【0073】
その後、負のトルクにしたがってベーン部材9が進角側へ回転するに伴い第1ロックピン26が、図7〜図9に示すように、順次階段を下りるように移動して第2底面24b、第3底面24cに当接係合する共に、第3底面24c上を進角方向へラチェット作用を受けながら移動する。これと共に、第2ロックピン27の先端部27aが、図9及び図10に示すように、第2ロック穴25の第1底面25a、第2底面25bに順次ラチェット作用を受けながら当接係合して最終的に第2底面25b位置で係合保持される。
【0074】
この時点での第1ロックピン26は、図10に示すように、先端部26aの側縁が第3底面24cから立ち上がった進角方向(遅角油圧室11側)の前記内側面24dに当接して保持される一方、第2ロックピン27は、先端部27aの側縁が第2底面25bから立ち上がった進角油圧室12側の前記内側面25cに当接してそれぞれが安定的に保持される。
【0075】
また、この状態における電磁切換弁21は、電子コントローラ34から電磁コイル67への通電も停止されることから、スプール弁体52がバルブスプリング53のばね力で図11、図12に示す最大右方向の位置(第1ポジジョン)に保持される。これによって、前述した作動によって、吐出通路20aに対して遅角通路18及び進角通路19の両方を連通させると共に、ロック通路28とドレン通路22を連通させる。
【0076】
その後、機関を始動するために、イグニッションスイッチをオン操作すると、その直後の初爆(クランキング開始)によってオイルポンプ20が駆動し、その吐出油圧が、図12に示すように、遅角通路18と進角通路19を介して各遅角油圧室11と各進角油圧室12にそれぞれ供給される。一方、前記ロック通路28とドレン通路22は連通された状態になっていることから、各ロックピン26,27は各スプリング29,30のばね力によって各ロック穴24,25に係合した状態を維持している。
【0077】
また、前記電磁切換弁21は、油圧などの情報信号を入力して現在の機関運転状態を検出して電子コントローラ34によって制御されているため、オイルポンプ20の吐出油圧の不安定なアイドリング運転時は各ロックピン26,27の係合状態を維持する。
【0078】
続いて、例えば機関低回転低負荷域や高回転高負荷域に移行する直前には、電子コントローラ34から電磁コイル67に制御電流が出力されて、スプール弁体52が、図13に示すように、バルブスプリング53のばね力に抗して僅かに左方向へ移動する(第6ポジション)。これによって、通路孔60を介して吐出通路20aとロック通路28が連通する。また、吐出通路20aに対する遅角通路18と進角通路19との連通が維持される。
【0079】
したがって、ロック通路28を介して第1、第2解除用受圧室32,33に作動油(油圧)が供給されるので、各ロックピン26,27は、各スプリング29,30のばね力に抗して後退移動して先端部26a、27aが各ロック穴24,25から抜け出してそれぞれの係合が解除される。したがって、ベーン部材9の自由な正逆回転が許容される。
【0080】
ここで、従来技術のように、前記いずれか一方の油圧室11,12のみに油圧を供給した場合は、ベーン部材9がいずれか一方に回転しようとして、ベーンロータ15内の第1、第2ピン孔31a、31bと第1,第2ロック穴24,25との間に発生した剪断力を第1、第2ロックピン26,27が受けていわゆる食い込み現象が発生して、速やかな係合解除ができないおそれがある。
【0081】
また、両油圧室11,12のいずれにも油圧が供給されない場合は、前記交番トルクによってベーン部材9がばたついてハウジング7の隔壁10との衝突打音が発生するおそれがある。
【0082】
これに対して本実施形態では、両方の油圧室11,12に油圧を供給していることから、前記ロックピン26.27のロック穴24,25への食い込み現象やばたつき等を十分に抑制できる。
【0083】
そして、その後、例えば機関低回転低負荷域に移行した場合は、電磁切換弁21にさらに大きな制御電流が出力されて、スプール弁体52が、図16に示すように、バルブスプリング53のばね力に抗してさらに左側に移動し(第3ポジション)、吐出通路20aとロック通路28及び遅角通路18の連通状態を維持すると共に、進角通路19とドレン通路22が連通させる。
【0084】
これによって、各ロックピン25,26は、図5に示すように各ロック穴24,25から抜け出た状態が維持される一方、図3に示すように、進角油圧室12の油圧が排出されて低圧になる一方、遅角油圧室11が高圧になっていることから、ベーン部材9をハウジング7に対して最遅角側に回転させる。
【0085】
よって、バルブオーバーラップが小さくなって筒内の残留ガスが減少して燃焼効率が向上し、機関回転の安定化と燃費の向上が図れる。
【0086】
その後、例えば機関高回転高負荷域に移行した場合は、電磁切換弁21に小さな制御電流が供給されて、スプール弁体52が、図14に示すように、右方向へ移動する(第2ポジション)。これによって、遅角通路18とドレン通路22が連通されると共に、吐出通路20aに対してロック通路28が連通状態を維持されていると共に、進角通路19が連通する。
【0087】
したがって、図5に示すように、各ロックピン26,27の係合が解除された状態になっていると共に、遅角油圧室11が低圧になる一方、進角油圧室12が高圧になるため、ベーン部材9は、図4に示すように、ハウジング11に対して最進角側に回転する。これにより、カムシャフト2は、スプロケット1に対して最進角の相対回転位相に変換される。
【0088】
これによって、吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップが大きくなって、吸気充填効率が高くなって機関の出力トルクの向上が図れる。
【0089】
また、前記機関低回転低負荷域や高回転高負荷域からアイドリング運転に移行した場合は、図12に示すように、電子コントローラ34から電磁切換弁21への制御電流の通電が遮断されて、スプール弁体52が図12に示すように、バルブスプリング53のばね力を最大右方向に移動して(第1ポジション)、ロック通路28とドレン通路22を連通させると共に、吐出通路22aが遅角通路18と進角通路19の両方に連通させる。これによって、両油圧室11,12にほぼ均一圧の油圧が作用する。
【0090】
このため、ベーン部材9は、たとえ遅角側位置にあった場合でもカムシャフト2に作用する前記交番トルクによって進角側に回転する。これによって、第1ロックピン26と第2ロックピン27が、各スプリング29、30のばね力で進出移動して、前述した階段状のロック穴24,25にラチェット作用を得ながら係合する。このため、ベーン部材9は、図2に示す最進角と最遅角の間の中間位相位置にロック保持される。
【0091】
また、機関を停止する際も、前述したように、イグニッションスイッチをオフ操作すると、各ロックピン26,27は各ロック穴24,25から抜け出すことなく係合状態を維持する。
【0092】
さらに、所定の運転域が継続されている場合は、電磁切換弁21に通電されて、スプール弁体52が図15に示す軸方向のほぼ中央位置に移動する(第4ポジション)と、前記各第1,第2供給ポート56a、56bと第3供給ポート57が前記ランド63b、63dなどによって閉止されて、吐出通路20aやドレン通路22に対する前記遅角通路18と進角通路19の連通が遮断されると共に、吐出通路20aとロック通路28が連通される。
【0093】
これによって、各遅角油圧室11と各進角油圧室12の内部にそれぞれ作動油が保持された状態になると共に、各ロックピン26,27が各ロック穴24,25から抜け出してロック解除状態が維持される。
【0094】
したがって、ベーン部材9が所望の回転位置に保持されて、カムシャフト2もハウジング7に対して所望の相対回転位置に保持されることから、吸気弁の所定のバルブタイミングに保持される。
【0095】
このように、機関の運転状態に応じて、電子コントローラ34が電磁切換弁21に所定の通電量で通電、あるいは通電を遮断して前記スプール弁体52の軸方向の移動を制御して、前記第1ポジション〜第4ポジションの位置に制御する。これによって、前記位相変換機構と3と位置保持機構4を制御してスプロケット1に対するカムシャフト2の最適相対回転位置に制御することから、バルブタイミングの制御精度の向上が図れる。
【0096】
さらに、機関がエンストなどで異常停止し、あるいは通常の機関停止した後に、再始動した場合において、通電された電磁切換弁21のスプール弁体52が、移動中に作動油に混入した金属粉などのコンタミを前記各ランド部63a〜63eの端縁と各ポートの孔縁との間などに噛み込んでロックし、流路に切り換えができなくなった場合には、以下の作動を行う。
【0097】
すなわち、前記スプール弁体52の移動不能状態によって、ベーン部材9の回転位相制御ができなくなることから、この異常状態をカムシャフト2の回転位置から検出した前記電子コントローラ34が、前記電磁切換弁21の電磁ソレノイド54に最大の通電量の制御電流が出力される。これによって、スプール弁体52は、図17に示すように、左方向へ最大かつ強い力で移動して(第5ポジション)、前記コンタミを切断しつつ遅角通路18と進角通路19及びロック通路28の全てをドレン通路22に連通させる。これによって、各油圧室11,12や各受圧室32,33の作動油がオイルパン23に排出される。
【0098】
このため、ベーン部材9が、例えば中間回転位置よりも遅角側に位置していた場合でも、前述した負の交番トルクによって進角側へ回転して前記各ロックピン26,27がラチェット式に速やかに移動して各ロック穴24,25に係合する。したがって、カムシャフト2は、最遅角と最進角の間の中間回転位相に保持される。
【0099】
図19は前記電子コントローラ34によって電磁切換弁21のスプール弁体52のポジションを制御するフローチャートを示している。
【0100】
まず、ステップ1では、位置保持機構4の前記ロックピン26,27が係合状態(機関停止状態など)にあるか否かを判断し、係合状態にあると判断した場合は、ステップ2に移行する。
【0101】
このステップ2では、機関が通常運転状態になったか否かを判断し、通常運転になっていないと判断した場合は、ステップ2に戻るが、通常運転になったと判断した場合は、ステップ3に移行する。
【0102】
ステップ3では、スプール弁体52を前記第6ポジションとなるように制御して、前述のように、吐出通路20aと全ての通路18,19、28を連通させ、その後、ステップ4に移行する。
【0103】
ステップ4では、スプール弁体52を前記任意の第2〜第4ポジションに制御して、位相変更機構3によってカムシャフト2を所望の位相変換角に制御、保持する。
【0104】
ステップ5では、機関回転数が所定の回転数になったか否かを判断し、所定の回転数になっていないと判断した場合はステップ4に戻るが、所定の回転数になっていると判断した場合は、ステップ6に移行し、ここではスプール弁体52を前記第6ポジションとなるように制御して終了する。
【0105】
前記ステップ1において、ロックピン26,27の係合状態が解除されていると判断した場合は、ステップ7に移行し、ここでは、前述のように、最大電流によってスプール弁体52を強制的に最大左方向へ移動させて、第5ポジションの位置に制御して各通路18,19、28をドレン通路22に連通させる。
【0106】
以上のように、本実施形態では、特に、前記各ロックピン26,27の各ロック穴24,25からの係合を解除する準備段階として、スプール弁体52を図12に示す第1ポジションの位置に制御して、前記第1、第2解除受圧室32,33内の作動油を排出すると同時に、各遅角油圧室11と各進角油圧室12の両方に作動油を供給することから、該両油圧室11,12のほぼ同一の相対油圧によってベーン部材9のばたつきが抑制されると共に、一方向への回転も抑制できる。
【0107】
続いて、スプール弁体52を第6ポジションに移動させることによって前記各受圧室32,33に作動油を供給すると、前記各油圧室11,12への先の作動油の供給によって、前記ロックピン26,27に対する剪断方向の力が作用しないので、ロック穴24、25からの係合解除をスムーズかつ容易に行うことができる。
【0108】
また、本実施形態では、各油圧室11,12への油圧制御用とロック解除受圧室32,33への油圧制御用の2つの機能を単一の電磁切換弁21によって行うようにしたため、機関本体へのレイアウトの自由度が向上すると共に、コストの低減化が図れる。
【0109】
さらに、前記位置保持機構4によってベーン部材9を中間位相位置への保持性が向上すると共に、各ロック穴24、25の階段状のロック案内溝の各底面24a〜24c、25a、25bによって各ロックピン26,27は必ず各ロック穴24,25方向のみに案内移動されることから、かかる案内作用の確実性と安定性を担保できる。
【0110】
また、前記各受圧室32,33に作用する油圧を、前記各油圧室11,12の油圧を用いるのではないことから、各油圧室11,12の油圧を用いる場合に比較して、前記各受圧室32,33に対する油圧の供給応答性が良好になり、各ロックピン26,27の後退移動の応答性が向上する。また、各油圧室11,12から各受圧室32,33間のシール機構が不要になる。
【0111】
さらに、本実施形態では、各ロックピン26,27のスムーズな進退移動を得るために、前記各ロックピン26、27の軸方向両端側に、各油孔45a、45bを介して前記進角油圧室12に連通させて各ロックピン26,27のそれぞれの前後に同一の油圧が掛かるようにして軸方向にバランスさせるようにしたことから、前記各スプリング29,30のばね力と前記第1,第2解除受圧室32、33に供給された油圧との差圧によって各ロックピン26,27を速やかに進退動させることが可能になる。
【0112】
なお、前記各受圧部26c、27cの各受圧面26e、27eと反対側の上端面側を大気開放にする前記各呼吸孔43,44は、各ベーン16a、16bの内部とフロントカバー13内に形成されて、前記進角油圧室12とは全く連通することがないので、ここからの作動油のリークはない。
【0113】
前記ロックピン26,27の軸方向の両端には進角油圧室12内の油圧が供給されるので、各ロックピン26,27の挙動の安定化が図れる。すなわち、機関始動時に前記遅角油圧室11に供給される作動油には、エアーが混入している場合があり、これらをロックピン26,27の両端に供給すると、前記油圧に混入されたエアーによってロックピン26,27の挙動が不安定になって打音等の発生するおそれがある。
【0114】
しかし、機関始動後の定常運転中に進角油圧室12に供給される油圧にはエアーの混入が殆どないことから、前記ロックピン26,27の挙動が安定化して打音などの発生を抑制できるのである。
【0115】
また、第2ロック案内溝の第1,第2底面25a、25bの最下段の段差を高くすることによって、第2ロック穴25を構成する前記段差面25c付近の強度が高くなることから、第2ロック穴25に係合した第2ロックピン27の側縁が段差面25cに繰り返し当接してもその耐久性の向上が図れる。
【0116】
一方、第1ロックピン26が第1ロック穴24に係合した場合は、先端部26aの側縁が最も深い第2底面24cの面積に大きな前記内側面24dに当接することから、この点での耐久性の向上も図れる。
【0117】
また、本実施形態では、位置保持機構4を、第1ロックピン26と第1〜第3底面24a〜24c、並びに第2ロックピン27と第1、第2底面25a、25bとの2つに分けて形成したことによって、各ロック穴24,25が形成される前記スプロケット1の肉厚を小さくすることができる。つまり、例えば、ロックピンを単一とし、階段状の各底面24a〜24c、25a、25bを連続的に形成する場合は、この階段状の高さを確保するために前記スプロケット本体5の肉厚を厚くしなければならないが、前述のように、2つに分けることによってスプロケット本体5の肉厚を小さくできるので、バルブタイミング制御装置の軸方向の長さを短くでき、レイアウトの自由度が向上する。
【0118】
また、前記各ロックピン26,27を、円柱状に形成し、また受圧部26c、27cを単純形状のフランジによって形成したことから、ロックピン26,27全体の製造作業が容易であり、コストの高騰を抑制できる。
〔第2実施形態〕
図20A、Bは本実施形態の電磁切換弁21の第2実施形態を示し、スプール弁体52内部の通路孔60を廃止して、バルブボディ51の外周面に通路孔に代わる通路溝を形成したものである。
【0119】
前記図20Aは電磁切換弁21を所定の角度位置から縦断面したもので、図20Bは同じ電磁切換弁21を図20Aに示す位置から90°の角度位置に回転させて縦断面したものである。
【0120】
すなわち、前記バルブボディ51は、図20Aに示すように、周壁に前記第1実施形態と同じく、吐出通路20aと連通する第1、第2導入ポート55a、55bと、遅角通路18に連通する第1、第2供給ポート56a、56bと、進角通路19と連通する第3供給ポート57がそれぞれ形成されていると共に、ロック通路28に連通するロックポート58が形成され、さらに、図20Bに示すように、前記ドレン通路22と連通する第1、第2排出ポート59a、59bがそれぞれ形成されている。
【0121】
そして、バルブボディ51は、周壁外周面、つまり、前記第1供給ポート56aと第2導入ポート55bの間の周壁外周面には、前記第2導入ポート55bと第1供給ポート56aとを適宜連通させる第1通路溝72が軸方向に沿って形成されている。また、周壁の第1供給ポート56aの側部には、前記第1通路溝72と連通する第1サブポート73aが形成されていると共に、電磁ソレノイド54側には、ロックポート58に適宜連通する第2サブポート73bが貫通形成されている。前記第2サブポート73bと前記第1導入ポート55aとの間の周壁外周面には、前記第1導入ポート55aと第2サブポート73bとを連通する第2通路溝74が軸方向に沿って形成されている。さらに、前記第1供給ポート56aと第1サブポート73aと径方向で対向する周壁には、円環状の第3通路溝77が形成されている。
【0122】
なお、前記第1通路溝72と第2通路溝74及び第3通路溝77は、前記バルブ収容穴01の内周面との間で通路を形成するようになっている。
【0123】
一方、前記スプール弁体52は、図20A、Bに示すように、内部中実に形成されて、図中左側から軸方向に所定間隔をおいてガイド部を含めた9つの第1〜第9ランド部75a〜75iが一体に設けられている。なお、前記各ランド部75a〜75iの軸方向の幅は、各ポートの形成位置に応じて大小異なっている。
【0124】
また、このスプール弁体52の前記各ランド部75a〜75iの間には、図中左側から9つの第1〜第9環状通路溝76a〜76iが形成されている。
〔スプール弁体のポジション制御〕
以下では、前述した図18に示すスプール弁体52のストローク量と各油圧室11,12や各ロック解除受圧室32,33(ロック通路28)への作動油の給排の関係を示す表を参照しながら、図21〜図26に基づいて前記スプール弁体52のポジション制御を具体的に説明する。
【0125】
まず、スプール弁体52が、図20及び図21A、Bに示すように、バルブスプリング53のばね力によって最大右方向に位置している場合(第1ポジジョン)は、第2導入ポート55bと第1供給ポート56aが、第2導入ポート55bと第1通路溝72及び第1サブポート73aを介して連通されると共に、第1導入ポート55aと第3供給ポート57が前記第5環状通路溝76fを介して連通される。と同時に、同図Bに示すように、ロックポート58と第1排出ポート59aが第6環状通路溝76fを介して連通されるようになっている。
【0126】
次に、スプール弁体52が、図22A,Bに示すように、電磁ソレノイド54への通電によりバルブスプリング53のばね力に抗して僅かに左方向へ移動した場合(第6ポジション)は、第1導入ポート55aと第1供給ポート56aの連通及び第1導入ポート55aと第3供給ポート57の連通は維持しつつ、ロックポート58が、第1排出ポート59aとの連通が遮断される一方、第1導入ポート55aとの連通が第2通路溝74と第2サブポート73b、第8環状通路溝76hなどを介して確保されるようになっている。
【0127】
スプール弁体52が、図23A、Bに示すように、電磁ソレノイド54へのより大きな通電によってさらに僅かに左方向へ移動した場合(第2ポジション)は、前記第1導入ポート55aと第3供給ポート57との連通、並びに第1導入ポート55aとロックポート58との連通が維持されつつ、第2供給ポート56bと第2排出ポート59bが第3通路溝77と第3環状通路溝76cなどを介して連通される。
【0128】
スプール弁体52が、図24A、Bに示すように、さらに僅かに左方向へ移動した場合(第4ポジション)は、前記第1導入ポート55aと第3供給ポート57、並びに第1導入ポート55aとロックポート58との連通が維持されるようになっていると共に、第2供給ポート56bと第2排出ポート59bとの連通が遮断される。
【0129】
スプール弁体52が、図25A,Bに示すように、さらに僅かに左方向へ移動した場合(第3ポジション)は、第1導入ポート55aとロックポート58との連通が維持され、同時に、第1導入ポート55aと第1供給ポート56aが第2導入ポート55bと第1通路溝72、第1サブポート73a、第2環状通路溝76bなどを介して連通すると共に、第3供給ポート57と第1排出ポート59aが第6環状通路溝76fを介して連通されるようになっている。
【0130】
また、スプール弁体52が、図26A、Bに示すように、電子ソレノイド54への最大の通電量によって最大左方向へ移動した場合(第5ポジション)は、第1供給ポート56aが第1環状通路溝76aと第3通路溝77などを介して第2排出ポート59bに連通すると共に、ロックポート58と第3供給ポート57が第1排出ポート59aに連通するようになっている。
【0131】
このように、機関運転状態に応じて、前記スプール弁体52の軸方向の移動ポジションを変更することによって、第1実施形態と同様に、各ポートを選択的に切り換えてスプロケット1に対するカムシャフト2(ベーン部材9)の相対回転角度を変化させると共に、両ロックピン26,27のロック穴24,25へのロックとロック解除を選択的に行ってベーン部材9の自由な回転の許容と自由な回転を規制することができるようになっている。また、前記第5ポジションの位置においては、強制的に移動されたスプール弁体52によってコンタミを切断して移動性を確保するようになっている。
【0132】
他の構成や作用については、第1実施形態と同じであるから、該第1実施形態と同様に、前記ロックピン26,27のスムーズかつ容易な係合解除を行うことができるなどの特異な作用効果が得られる。
【0133】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、バルブタイミング制御装置を吸気側ばかりか排気側に適用することも可能である。
【0134】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕
請求項1に記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
内外周を貫通する複数のポートが形成された筒状のバルブボディと、
該バルブボディ内を軸方向に摺動自在に設けられ、軸方向へ移動することによって前記ポートの開口面積を変更する複数のランド部と該ランド部の間に形成された複数の環状凹部とを備えたスプール弁体と、
該スプール弁体を軸方向の一方向へ付勢する付勢部材と、
通電されることによって前記付勢部材の付勢力に抗して前記スプール弁体を他方向へ移動させる電磁ソレノイドと、
を備えることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項b〕
請求項aに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記バルブボディには、前記進角通路または遅角通路のうちのいずれか一方に連通しかつ隣接配置された一対の第1供給ポート及び第2供給ポートと、
前記進角通路または遅角通路のうちのいずれか他方に連通する第3供給ポートと、
前記ロック通路に連通するロックポートと、
前記ポンプ吐出通路に連通する導入ポートと、
オイルパンと連通する第1排出ポートと第2排出ポートと、
がそれぞれ内外周を貫通して形成され、
前記スプール弁体には、少なくとも前記各ポートに対応した数の前記ランド部が形成されていることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項c〕
請求項bに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記第1供給ポートが前記進角通路または遅角通路のうちのいずれか一方に連通している状態では、前記第2供給ポートの開口面積が絞られるか、あるいは閉止される第1供給状態となるように構成され、
前記第2供給ポートが前記進角通路または遅角通路のうちのいずれか一方に連通している状態では、前記第1供給ポートの開口面積が絞られるか、あるいは閉止される第2の供給状態となるように構成され、
前記スプール弁体の移動に伴って、前記第1の供給状態と第2の供給状態が切り換わることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項d〕
請求項cに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記第1ポジションが前記第1の状態である場合は、前記第2ポジションまたは第3ポジションでは前記第2の状態になっていることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項e〕
請求項bに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記スプール弁体は、内部軸方向に形成された通路孔を介して特定の前記環状凹部間を連通することを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項f〕
請求項aに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記電磁ソレノイドに通電していない場合は、前記付勢部材の付勢力によって前記スプール弁体を前記第1ポジションとなるように構成したことを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項g〕
請求項fに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記電磁ソレノイドの通電量を増加するにつれて、前記第2ポジションと第4ポジション及び第3ポジションの順に切り換えように構成したことを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項h〕
請求項gに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記進角通路と遅角通路及びロック通路の全てをドレン通路に連通させる第5ポジションにも切り換え可能になっていると共に、
前記電磁ソレノイドの通電量を増加するにつれて前記第2ポジションと第4ポジション、第3ポジション及び第5ポジションの順で切り換えるように構成したことを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項i〕
請求項gに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記進角通路と遅角通路及びロック通路の全てに前記ポンプから作動油を供給する第6ポジションにも切り換え可能になっていると共に、
前記電磁ソレノイドの通電量を増加するにつれて前記第6ポジションと第2ポジション、第4ポジション及び第3ポジションの順で切り換えるように構成したことを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項j〕
請求項1に記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記各ポジションの変更によって供給状態と排出状態を切り換える際には、連通が一時的に遮断されることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項k〕
クランクシャフトから回転力が伝達される駆動回転体と、
カムシャフトに固定されて、前記駆動回転体との間に進角油圧室と遅角油圧室に隔成する従動回転体と、
駆動回転体に対する従動回転体の最進角位置と最遅角位置の間の位置にロック可能であり、油圧を供給することによって前記ロックが解除されるロック機構と、
前記進角油圧室に連通する進角通路と、
前記遅角油圧室に連通する遅角通路と、
前記ロック機構に油圧を給排するロック通路と、
を備えたバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁であって、
内燃機関によって駆動されるポンプの吐出通路に対して前記進角通路及び遅角通路の両方を連通させると共に、前記ロック通路とドレン通路を連通させる第1ポジションと、
前記吐出通路に対して前記進角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、前記遅角通路とドレン通路を連通させる第2ポジションと、
前記吐出通路と前記遅角通路及びロック通路の両方に連通させ、前記進角通路とドレン通路を連通させる第3ポジションと、
前記吐出通路とロック通路を連通させると共に、前記吐出通路と前記進角通路及び遅角通路を前記第1ポジションよりも小さな通路面積で連通させるか、もしくは前記進角通路と遅角通路の両方を遮断する第4ポジションと、
に切り換え可能であることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
〔請求項l〕
クランクシャフトから回転力が伝達され、内部に作動室が形成されたハウジングと、
カムシャフトに固定され、前記ハウジング内に相対回転自在に収容されて前記作動室を進角油圧室と遅角油圧室に隔成するベーンを有するベーンロータと、
前記ベーンロータの最進角位置と最遅角位置の間の位置にロック可能に設けられ、供給された油圧によってロックが解除されるロック機構と、
前記進角油圧室に連通する進角通路と、
前記遅角油圧室に連通する遅角通路と、
前記ロック機構に油圧を給排するロック通路と、
を備えたバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁を制御するコントローラであって、
内燃機関によって駆動されるポンプの吐出通路に対して前記進角通路及び遅角通路の両方を連通させると共に、前記ロック通路とドレン通路を連通させる第1ポジションと、
前記吐出通路に対して前記進角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、前記遅角通路とドレン通路を連通させる第2ポジションと、
前記吐出通路に対して前記遅角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、前記進角通路とドレン通路を連通させる第3ポジションと、
前記吐出通路とロック通路を連通させると共に、前記吐出通路に対して前記進角通路及び遅角通路を前記第1ポジションよりも小さな通路面積で連通させるか、もしくは前記進角通路と遅角通路の両方を遮断する第4ポジションと、に通電状態によってそれぞれ切り換え制御し、
内燃機関の始動時には前記第1ポジションに制御すると共に、
バルブタイミングを変更する際には、前記第2ポジションまたは第3ポジションを選択的に切り換えて制御し、
バルブタイミングを保持する際には、前記第4ポジションに制御することを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラ。
〔請求項m〕
請求項lに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラにおいて、
前記制御弁は、前記進角通路と遅角通路及びロック通路の全てをドレン通路に連通させる第5ポジションにも切り換え可能になっていると共に、
バルブタイミング制御の指令値と実測値が異なった状態が継続した場合には、前記第5ポジションに切り換えることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラ。
〔請求項n〕
請求項mに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラにおいて、
前記制御弁は、
内外周を貫通する複数のポートが形成された筒状のバルブボディと、
該バルブボディ内を軸方向に摺動自在に設けられ、軸方向へ移動することによって前記ポートの開口面積を変更する複数のランド部と該ランド部の間に形成された複数の環状凹部とを備えたスプール弁体と、
該スプール弁体を軸方向の一方向へ付勢する付勢部材と、
通電されることによって前記付勢部材の付勢力に抗して前記スプール弁体を他方向へ移動させる電磁ソレノイドと、を備え、
前記第5ポジションは、通電して前記スプール弁体を前記付勢部材の付勢力に抗して他方向へ最大に移動させた位置にあることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラ。
〔請求項o〕
請求項nに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラにおいて、
前記制御弁は、前記進角通路と遅角通路及びロック通路の全てを前記吐出通路に連通させる第6ポジションにも切り換え可能になっていると共に、
内燃機関の始動時の初爆後に、バルブタイミング制御装置に指令値を出力する前に前記制御弁を第6ポジションに制御することを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラ。
〔請求項p〕
請求項oに記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラにおいて、
前記制御弁は、内外周を貫通する複数のポートが形成された筒状のバルブボディと、
該バルブボディの内部を軸方向へ摺動自在に設けられ、軸方向に摺動することによって前記ポートの開口面積を変更する複数のランド部と、該ランド部の間に形成された複数の環状凹部と、を有するスプール弁体と、
該スプール弁体を軸方向の一方向へ付勢する付勢部材と、
通電されることによって前記付勢部材の付勢力に抗してスプール弁体を他方向へ移動させる電磁ソレノイドと、を備え、
前記第6ポジションは、前記第2ポジションと第3ポジション及び第4ポジションよりも小さな通電量で切り換えることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁のコントローラ。
【符号の説明】
【0135】
1…スプロケット
2…カムシャフト
3…位相変更機構
4…位置保持機構
5…油圧回路
7…ハウジング
7a…ハウジング本体
9…ベーン部材
10…隔壁部
11…遅角油圧室
12…進角油圧室
16a〜16c…ベーン
18…遅角通路
19…進角通路
20…オイルポンプ
20a…吐出通路
21…電磁切換弁
22…ドレン通路
24…第1ロック穴
25…第2ロック穴
26…第1ロックピン
27…第2ロックピン
28…ロック通路
29・30…スプリング(付勢部材)
31a、31b…第1、第2ピン孔
32・33…第1、第2解除用受圧室
34…電子コントローラ
01…バルブ収容穴
51…バルブボディ
52…スプール弁体
53…バルブスプリング
54…電磁ソレノイド
55a・55b…第1,第2導入ポート
56a、56b…第1,第2供給ポート
57…第3供給ポート
58…ロックポート
59a、59b…第1、第2排出ポート
60…通路孔
63a〜63e…ランド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトから回転力が伝達され、内部に作動室が形成されたハウジングと、
カムシャフトに固定され、前記ハウジング内に相対回転自在に収容されて前記作動室を進角油圧室と遅角油圧室に隔成するベーンを有するベーンロータと、
前記ベーンロータの最進角位置と最遅角位置の間の位置にロック可能に設けられ、供給された油圧によってロックが解除されるロック機構と、
前記進角油圧室に連通する進角通路と、
前記遅角油圧室に連通する遅角通路と、
前記ロック機構に油圧を給排するロック通路と、
を備えたバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁であって、
内燃機関によって駆動されるポンプの吐出通路と前記進角通路及び遅角通路の両方に連通させると共に、前記ロック通路とドレン通路を連通させる第1ポジションと、
前記吐出通路に対して前記進角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、前記遅角通路とドレン通路を連通させる第2ポジションと、
前記吐出通路に対して前記遅角通路及びロック通路の両方を連通させると共に、前記進角通路とドレン通路を連通させる第3ポジションと、
前記吐出通路とロック通路を連通させると共に、前記吐出通路と前記進角通路及び遅角通路を前記第1ポジションよりも小さな通路面積で連通させるか、もしくは前記進角通路と遅角通路の両方を遮断する第4ポジションと、
に切り換え可能であることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記進角通路と遅角通路及びロック通路の全てとドレン通路とを連通させる第5ポジションに切り換え可能であることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。
【請求項3】
請求項1に記載のバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁において、
前記進角通路と遅角通路及びロック通路の全てと前記ポンプ吐出通路を連通させる第6ポジションにも切り換え可能であることを特徴とするバルブタイミング制御装置に用いられる制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−19282(P2013−19282A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151320(P2011−151320)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】