説明

パネルの製造方法

【課題】 パネルの製造時に減圧しなくても、基板同士を正確に張り合わせることが可能であり、しかも、製造後のパネルの変形等も良好に抑制し得るパネルの製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明のパネルの製造方法は、一対の基板と、その間に配置された発光素子又は液晶材料とを備えるパネルの製造方法であって、一対の基板のうち、一方の基板上に、少なくとも一部において不連続な部位を有するように接着剤を環状に塗布する工程、及び、接着剤を介して他方の基板を配置し、基板同士を張り合わせる工程とを含むものであり、一対の基板のうちのいずれか一方の基板上には発光素子が形成されており、一対の基板同士を張り合わせる工程において、一対の基板及び前記接着剤に囲まれた領域に前記発光素子を配置させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの製造方法、詳しくは、ディスプレイや照明に好適に用いられるパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(Electro luminescence)や液晶等の表示素子は、薄型、低電力消費等といった優れた特性を有するディスプレイ等としての利用が盛んに検討されている。例えば、有機ELは、自発光型の素子であり、ディスプレイや照明等への応用が期待されている。これらの用途において、有機ELは、表示素子である有機ELの構造体を外気(例えば、湿気等)から保護するため、一対の基板間に密封したパネルの形態で用いられることが多い。
【0003】
これらのパネルにおいて、基板同士の接着は、樹脂等によって構成される接着剤からなる接着部を介してなされるのが一般的である。そして、このようなパネルは、一方の基板上に有機ELの構造体を形成した後、その周囲を囲むように接着剤を塗布し、この上から他方の基板を被せて、これらを大気圧下で加圧しながら張り合わせることによって製造されている。
【0004】
ところが、上述した製造方法によりパネルを製造する場合には、例えば、以下に示すような不都合が生じ易い傾向にあった。すなわち、まず、パネルの製造時において、基板同士を大気圧下で加圧しているため、張り合わせの際に基板間に存在する空気が外部に抜けようとして、接着剤が所望の位置よりも外側に流れ出たり、場合によっては接着剤が破裂したりして、正確な張り合わせを行うのが困難となる場合があった。
【0005】
また、上記製造方法では、基板及び接着部に囲まれた領域に存在する空気を十分に抜くことが困難であるため、このパネルを備えるディスプレイ等の周辺温度が上昇すると、パネル内部の空気が膨張して基板が外側に膨れ上がってしまうといった不都合を生じる場合もあった。こうなると、ディスプレイ等としての性能が低下する傾向にある。
【0006】
そこで、これらの不都合を解消するために、上述したパネルの製造方法において、一対の基板の張り合わせを減圧下で行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような方法によれば、減圧下で張り合わせを行っているため、基板同士を張り合わせる際に外部に抜ける空気が少なくなり、そのため接着剤の流動や破裂が生じ難くなる。また、得られたパネルはその内部の空気圧が低いことから、上述したような温度変化に基づく変形も起こり難くなる。
【特許文献1】特許3139462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術のパネルの製造方法は、基板同士の張り合わせを減圧下で行う必要があるため、例えば、真空装置のような気密空間で作業を行う必要があり、大掛かりな装置等が必要となることから、作業性が悪く、また、パネルの製造コストが増大してしまうという問題を有していた。
【0008】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、パネルの製造時に減圧しなくても、基板同士を正確に張り合わせることが可能であり、しかも、製造後のパネルの変形等も良好に抑制し得るパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のパネルの製造方法は、互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に配置された発光素子とを備えるパネルの製造方法であって、一対の基板のうちの一方の基板上に、少なくとも一部において不連続な部位を有するように接着剤を環状に塗布する工程と、接着剤を介して上記一方の基板と対向するように、一対の基板のうちの他方の基板を配置し、厚さ方向に加圧しながら一対の基板同士を張り合わせる工程とを含み、一対の基板のうちのいずれか一方の基板上には、発光素子が形成されており、且つ、上記一対の基板同士を張り合わせる工程においては、一対の基板及び接着剤に囲まれた領域に発光素子を配置させることを特徴とする。
【0010】
上記パネルの製造方法においては、一対の基板同士を張り合わせる際、加圧した当初は塗布された接着剤に不連続な部位が形成されているため、基板間の空気が当該部位を通って容易に外部に排出される。そして、加圧を続けると、接着剤はある程度の軟性を有しているため、上述した不連続な部位を塞ぐように移動(流動)する。これにより、発光素子を収容している一対の基板及び接着部に囲まれた空間が密閉される。
【0011】
このように、本発明のパネルの製造方法によれば、基板間の空気を外部に排出しつつ、接着剤を介して一対の基板同士を接着することができる。このため、基板同士を張り合わせる際に減圧を行わなくても、基板間に存在する空気の排出に伴って接着剤が外側に流動することが極めて少なく、正確な張り合わせを実施することが容易となる。また、得られたパネルにおいて、基板及び接着剤に囲まれた空間は、十分に空気が抜けた状態となっていることから、かかるパネルをディスプレイ等に適用した場合に周辺温度が上昇したとしても、パネル内部の空気の膨張が極めて小さく、これに伴う基板の変形も生じ難くなる。
【0012】
また、上述のように基板同士を接着剤を介して接着する場合には、通常、基板間の距離が近づくほど接着剤の見かけ上の粘性が増大する傾向にある。このため、上記本発明のパネルの製造方法においては、基板同士を接着する際に加圧する力が大きくても、接着剤における上記不連続な部位が急激に閉じられることは少なく、十分に基板間の空気を抜くことができる。したがって、本発明のパネルの製造方法は、基板同士を接着するために加圧の程度を厳密に制御する必要がなく、極めて作業性に優れるものとなる。
【0013】
このようなパネルの製造方法は、一対の基板間に液晶層が設けられた構造を有する液晶パネルの製造方法にも適用できる。すなわち、本発明のパネルの製造方法は、互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に配置された液晶材料とを備えるパネルの製造方法であって、一対の基板のうちの一方の基板上に、少なくとも一部において不連続な部位を有するように接着剤を環状に塗布する工程と、上記一方の基板上の接着剤に囲まれた領域に液晶材料を配置する工程と、接着剤及び液晶材料を介して一方の基板と対向するように、一対の基板のうちの他方の基板を配置し、厚さ方向に加圧しながら一対の基板同士を接着剤を介して張り合わせる工程とを含むことを特徴としてもよい。
【0014】
上述したパネルの製造方法は、基板同士を張り合わせる工程において、所定温度以上に加熱するとともに厚さ方向に加圧しながら、一対の基板同士を接着剤を介して張り合わせた後、上記所定温度よりも低い温度とする工程を更に含むと好ましい。
【0015】
このように、一対の基板同士を張り合わせる際、加圧だけでなく加熱を行うと、基板間に存在する空気が膨張した状態で張り合わせが行われることになる。そして、その後、得られた張り合わせ体の温度を低下させることによって、基板及び接着剤に囲まれた空間内の空気が収縮する。これにより、この空間内の圧力は、その周囲に比べて小さい状態となる。その結果、得られたパネルをディスプレイ等に適用した場合に温度上昇等が生じたとしても、パネル内部が十分に減圧されていることから、パネル内の空気の膨張に基づく基板等の変形が一層生じ難くなる。また、張り合わせの際に加熱を行うことにより、接着剤の流動性が高めることができ、その結果、接着剤における不連続な部位を更に容易に閉じることができるようになる。
【0016】
さらに、接着剤を塗布する工程においては、接着剤を、多角形状に、且つ、その角部のそれぞれに上述した不連続な部位を有するように塗布することが好ましい。こうすれば、上記不連続な部位を複数有するように接着剤が塗布されることになり、張り合わせの際の空気の排出が更に容易となる。また、この場合、接着剤における不連続な部位は、多角形の各角部に設けられているため、張り合わせ工程の際には、接着剤がこの多角形の外側に向かって流動し易い傾向にある。このため、接着剤は、発光素子又は液晶材料が配置されている領域に侵入することが極めて少なくなる。その結果、パネルにおける発光素子等を形成可能なエリアを広く確保できるようになるほか、接着剤の接触による発光素子等の特性低下等が生じる心配も極めて少なくなる。
【0017】
また、本発明の他のパネルの製造方法は、互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に配置された発光素子とを備えるパネルの製造方法であって、一対の基板のうちの一方の基板上に接着剤を環状に塗布する工程と、接着剤を介して上記一方の基板と対向するように、一対の基板のうちの他方の基板を配置し、所定温度以上に加熱しながら一対の基板同士を張り合わせた後、上記所定温度よりも低い温度とする工程とを含み、一対の基板のうちのいずれか一方の基板上には発光素子が形成されており、且つ、一対の基板同士を張り合わせる工程において、一対の基板及び接着剤に囲まれた領域に前記発光素子を配置させることを特徴とする。
【0018】
さらに、液晶パネルの製造方法としては、互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に配置された液晶材料とを備えるパネルの製造方法であって、一対の基板のうちの一方の基板上に、環状に接着剤を塗布する工程と、一方の基板上の接着剤に囲まれた領域に液晶材料を配置する工程と、接着剤を介して一対の基板と対向するように、一対の基板のうちの他方の基板を配置し、所定温度以上に加熱しながら、一対の基板同士を張り合わせた後、所定温度よりも低い温度とする工程とを含むことを特徴としてもよい。
【0019】
これらのパネルの製造方法においては、加熱状態で基板同士が張り合わされ、その後、得られた張り合わせ体が冷却されている。このため、一対の基板間に存在する空気は、張り合わせ時に膨張し、また、冷却に伴って収縮することになる。つまり、張り合わせの温度を低下させる工程においては、一対の基板に挟まれた空間の圧力がその外側の圧力よりも小さい状態となるため、これらの基板は、外部の圧力によって互いに押し付けられるように加圧されることになる。したがって、これらのパネルの製造方法においては、特段の加圧を行わなくても一対の基板同士を十分に接着することができる。その結果、本発明のパネルの製造方法によれば、上記従来技術のような減圧及び加圧の両方の手段を省略することができ、作業性が極めて良好となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、パネルの製造時に減圧しなくても、基板同士を正確に張り合わせることが可能であり、しかも、製造後のパネルの変形等も良好に抑制し得るパネルの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、全図において同一の要素には同一の符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
[有機ELパネルの製造方法]
【0022】
まず、本発明のパネルの製造方法の一例として、有機ELパネルの製造方法について説明する。
【0023】
(有機ELパネル)
図1は、好適な実施形態に係る製造方法により得られた有機ELパネルの断面構造を模式的に示す図である。
【0024】
有機ELパネル10は、基板12と封止板14とが接着部20を介して接着された構造を有している。この接着部20は、基板12と封止板14との間において、これらの張り合わせ方向からみて環状となるように形成されている。なお、環状とは、所定の領域をとり囲むような形状をいい、円形状や多角形状を含むものとする。具体的には、後述するように、接着部20は長方形状となっている。
【0025】
基板12と封止板14との間には、発光素子であるEL素子部16が基板12側に、カラーフィルタ18が封止板14側にそれぞれ設けられている。このEL素子部16及びカラーフィルタ18は、基板12、封止板14及び接着部20に囲まれた空間に密封された状態となっている。
【0026】
基板12としては、有機EL素子用の基板として通常用いられるものが適用でき、例えば、ガラス基板、シリコン基板、フィルム基板、樹脂基板に代表される有機基板等が挙げられる。また、封止板14としては、EL素子部16からの発光を外部に取り出すため、ガラス等の透明材料からなるものが挙げられる。さらに、カラーフィルタ18としては、液晶パネル等において通常用いられているようなRGBセルを備えるものを好適に適用できる。なお、有機ELパネル10を照明等として用いる場合には、このカラーフィルタ18を設ける必要はない。
【0027】
接着部20は、樹脂材料等からなる接着剤により構成されており、この樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子ビーム(EB)硬化樹脂等を適用できる。また、接着部20は、基板12と封止板14との間を所望の間隔に保つためのスペーサを含有していてもよい。スペーサとしては、金属酸化物(例えばSiO)、ガラス、プラスチックからなる粒子やファイバー等が挙げられる。
【0028】
ここで、図2を参照して、有機ELパネル10に搭載されたEL素子部16について説明する。図2は、EL素子部の要部の断面構造を模式的に示す図である。
【0029】
EL素子部16は、基板12上に、陽極30、ホール注入層32、ホール輸送層34、発光層36、電子輸送層38、電子注入層40及び陰極42が順に形成されたものである。このEL素子部16は、発光層36からの発光を、基板12と反対側の端面から取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL素子である。
【0030】
EL素子部16において、陽極30は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極でも構わないが、金属等の反射型電極とすることが好ましい。一方、陰極42は、発光層36からの光を取り出すためにITO等の透明電極とする必要がある。
【0031】
ホール注入層32、ホール輸送層34、電子輸送層38及び電子注入層40としては、有機ELにおいてこれらの用途に適用される公知の材料からなるものが適用できる。また、発光層36は、低分子系、高分子系のいずれの発光材料であってもよい。なお、発光層36には、所望の有機材料等がドーピングされていてもよい。
【0032】
なお、有機ELパネル10は、上述の如く封止板14側から光を取り出す形態に限定されず、例えば、基板12を透明材料により構成し、当該基板12側から光を取り出すようにしてもよい。この場合、EL素子部16としては、いわゆるボトムエミッション型の素子を採用する。そして、この場合、封止板14側には、カラーフィルタ18を設ける必要はない。
【0033】
(有機ELパネル10の製造方法;第1の形態)
次に、図3及び4を参照して、上述した構成を有する有機ELパネル10の製造方法の第1の形態について説明する。
【0034】
有機ELパネル10の製造においては、まず、図3に示されるような構造体80を準備する。図3は、基板上にEL素子部及び接着剤を有する構造体の第1の形態を模式的に示す平面図である。
【0035】
構造体80の準備においては、まず、基板12を用意し、この上に、上述したEL素子部16を構成する各層を積層する。各層の形成方法は任意であり、例えば、無機材料や低分子の有機材料からなる層を形成する場合には蒸着法が、また、高分子の有機材料からなる層を形成する場合には公知の塗布法や印刷法がそれぞれ適用できる。
【0036】
続いて、基板12上に、接着部20を形成するための接着剤を、EL素子部16を囲むように長方形状に塗布して接着剤層21を形成し、構造体80を得る。このとき、接着剤は、この長方形における角部のそれぞれに不連続な部位が形成されるように塗布し、接着剤層21を構成する各辺の端部同士が互いに接触しないようにする。これにより、接着剤は、一部に隙間を有するように塗布される。なお、接着剤層21中には、基板12と封止板14との間の所望の間隔が得やすいように、スペーサ44(図4参照)が含まれている。
【0037】
ここで、接着剤の塗布量は、後述する張り合わせ工程において基板12と封止板14とを張り合わせた後に、これらの間隔が所望の値となるように調整する。また、後述する張り合わせ工程において、接着剤層21に設けられた隙間を確実に封止する観点からは、上記不連続な部位の幅は、接着剤の流動(移動)が確実に生じ得る程度に調整することが好ましい。なお、接着剤の塗布量や不連続な部位の幅の好適値は、接着剤の粘度等によっても大きく変わることから、これらの条件に応じて適宜調整することが望ましい。
【0038】
有機ELパネル10の製造においては、上記構造体80を製造するとともに、カラーフィルタ18が設けられた封止板14を準備する。封止板14にカラーフィルタ18を形成する方法としては、封止板14の上に、フォトリソグラフ法等によりR、G及びBの各色のフィルタを順に形成する手法が挙げられる。
【0039】
次に、得られた構造体80と、カラーフィルタ18が設けられた封止板14とを張り合わせ、張り合わせ体90(図5参照)を得る(以下、「張り合わせ工程」という)。張り合わせ工程においては、まず、構造体80に対して、封止板14を、これらのEL素子部16とカラーフィルタ18とが向き合うように配置する。続いて、所定温度以上に加熱しつつ、基板12及び封止板14をこれらの外側から加圧し、これにより両者を押し付ける。このとき、加圧は、例えば平板プレスにより行うことができる。また、加熱は、例えば、周辺の温度を上記所定温度以上に設定するか、又は、プレスにより加圧する場合は、このプレス部分の温度を上記所定温度以上に設定することにより行うことができる。
【0040】
ここで、図4を参照して張り合わせ工程について具体的に説明する。図4は、張り合わせ工程を模式的に示す図であり、図3に示した構造体80に対して封止板14を配置した場合における、図3中のIV−IV線に沿う断面構造を示す図である。
【0041】
図示されるように、加圧により、接着剤層21を構成する接着剤は、接着剤層21に設けられた不連続な部位に向かって徐々に流動(移動)する。そして、加圧を続けることにより、最終的には、流動した接着剤によって上記不連続な部位が封止され、その結果、環状(長方形状)の接着剤層21が形成される。こうして、基板12、封止板14及び接着剤層21に囲まれた空間が密閉される。なお、接着剤層21にはスペーサ44が含まれているため、少々過度の力で加圧を行ったとしても、このスペーサ44によって基板12と封止板14との間隔は好適な値に保たれる。
【0042】
張り合わせ工程における上記所定温度は、例えば、少なくとも有機ELパネル10の使用時に想定される温度よりも高い温度とすることが好ましい。より具体的には、有機ELパネル10は、通常、ディスプレイ等に適用されて室温下で用いられることから、上記所定温度は、少なくとも室温よりも高い温度とすることが好ましい。これにより、使用時における有機ELパネル10内部の圧力を、外部の圧力(通常は大気圧)よりも確実に小さくすることができるようになる。その結果、有機ELパネル10内部の空気の膨張に伴う当該パネル10の変形が極めて生じ難くなる。
【0043】
また、上述したように接着剤として熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂を用いる場合、上記所定温度は、これらの樹脂の軟化が生じる温度以上とすることが好ましい。こうすれば、張り合わせの際の接着剤の流動がより容易に生じるようになり、上述した接着剤層21における不連続な部位を塞いで内部を密封することが更に容易となる。
【0044】
一方、有機ELパネル10におけるEL素子部16は、過度に熱をかけると発光層36等を構成する有機材料層が劣化してしまうおそれがあるため、上記所定温度の上限は、かかる劣化が生じない程度とすることが望ましい。これらの点を全て考慮すると、有機ELパネル10を製造する際の張り合わせ工程における加熱温度(上記所定温度)は、好ましくは50〜1500℃であり、より好ましくは50〜100℃である。
【0045】
なお、この張り合わせ工程においては、必ずしも上述したように加熱及び加圧の両方を行う必要はなく、加熱を行わずに加圧のみを行ってもよい。張り合わせ工程において加圧のみを行う場合であっても、接着剤層21に設けられた隙間により基板12と封止板14との間の空気を十分に排出することができる。また、加圧のみであっても、接着剤の流動は十分に生じ得るため、接着剤層21の隙間を封止することができる。
【0046】
そして、張り合わせ工程においては、さらに、加熱された状態の張り合わせ体90を、上述した所定温度以下に冷却する。冷却は、例えば、室温を超える温度で加熱を行った場合には、張り合わせ体90を大気中に放置することにより行うことができる。この冷却の際には、かかる冷却に伴って張り合わせ体90の内部の空気が収縮することから、内部よりも外部の圧力(大気圧)のほうが大きい状態となる。したがって、特段の加圧を行わなくても基板12と封止板14とが押し付けられて、これらが一層強固に接着される。なお、上述したように、張り合わせ工程において加熱を行わない場合には、このような冷却を行う必要はない。
【0047】
その後、例えば、図5に示すようにして接着剤層21から接着部20を形成する(以下、「接着部形成工程」という)ことにより、有機ELパネル10を得る。図5は、接着部形成工程の一例を示す図であり、接着剤として紫外線硬化樹脂を用いた例を示している。図示されるように、接着部形成工程においては、例えば、張り合わせ体90における接着剤層21の形成領域に対し、封止板14を通して紫外光を照射し、接着剤層21を硬化させることにより、接着部20を形成する。
【0048】
また、接着剤として、例えば、熱硬化性樹脂を用いる場合には、接着部形成工程において張り合わせ体90を加熱すれば、接着剤層21を硬化することができる。さらに、接着剤が溶媒の揮発等によって接着性を発揮し得る材料である場合には、張り合わせ体90を加熱したり、または大気中に放置したりといった溶媒揮発のための所要の操作を行えばよい。なお、接着剤が加圧のみで十分な接着力を発揮し得る場合には、このような接着部形成工程は必ずしも必要とされない。
【0049】
(有機ELパネル10の製造方法;第2の形態)
次に、有機ELパネル10を製造するための第2の形態について、図6及び図7を参照して説明する。
【0050】
本実施形態においては、まず、図6に示すような構造体100を準備する。図6は、基板上にEL素子部及び接着剤を有する構造体の第2の形態を模式的に示す平面図である。この構造体100は、まず、EL素子部16が形成された基板12を第1の形態と同様にして用意した後、基板12上に、EL素子部16を囲むように長方形状に接着剤を塗布して接着剤層22を形成することにより得ることができる。これにより、基板12上には、不連続な部位を有しないように環状(長方形状)に接着剤が塗布される。接着剤層22中には、上記間隔を好適に保持するためのスペーサが含まれていてもよい。
【0051】
次に、構造体100に対し、第1の形態と同様にして、カラーフィルタ18が形成された封止板14を張り合わせ、張り合わせ体90(図7参照)を得る(張り合わせ工程)。この張り合わせ工程においては、構造体100及び封止板14を、所定温度以上に加熱しながら重ねることにより、これらを張り合わせる。この際、第1の形態のような加圧を行う必要はなく、基板12と封止板14とが接着剤層22を介して接触する程度とすればよい。これにより、基板12、封止板14及び接着剤層22に囲まれた空間が密封された状態となる。この張り合わせ工程における所定温度としては、第1の形態の張り合わせ工程における上記所定温度と同様の温度を採用することができる。
【0052】
この張り合わせ工程においては、続いて、得られた張り合わせ体90を上記所定温度よりも低い温度に冷却する。この冷却は、第1の形態と同様に行うことができ、例えば、張り合わせ工程において室温よりも高温に加熱した場合には、得られた張り合わせ体90を大気中に放置する。
【0053】
ここで、冷却の際に張り合わせ体に生じる現象について図7を参照して説明する。図7は、冷却時の張り合わせ体を模式的に示す図である。張り合わせ体90は、上記所定温度以上で張り合わされたものであるため、かかる冷却において温度が低下すると、基板12、封止板14及び接着剤層22に囲まれた空間内の空気が体積収縮を生じることになる。したがって、張り合わせ体90内の圧力は、その外側の圧力(通常は大気圧)と比較して小さいものとなる。その結果、冷却の際には、張り合わせ体90が、外部の圧力によって、図7において矢印で示した方向に加圧され、これにより、基板12と封止板14とが互いに強く押し付けられる。このように、第2の形態においては、この冷却により、基板12と封止板14とが接着剤層22を介して互いに強く接着されることから、張り合わせ工程等において特段の加圧を行う必要がない。
【0054】
そして、第2の形態においては、張り合わせ体90に対し、必要に応じて上記第1の形態と同様の接着部形成工程を行うことで、接着剤層22から接着部20を形成し、有機ELパネル10を得る。
【0055】
以上、有機ELパネル10の好適な製造方法について、第1及び第2の形態を例に挙げて説明したが、必ずしも上述した形態に限定されず、各種の応用が可能である。
【0056】
例えば、構造体80又は100において、EL素子部16は、それぞれ接着剤層21又は22に囲まれた領域の中央に位置するように設けられているが、必ずしもこのように形成しなくてもよい。具体的には、EL素子部16と外部機器との導通を図るために、当該素子部16における陽極30及び陰極42が、基板12に沿って接着剤層21,22の外側に引き出された形態であってもよい。この場合、接着剤層21,22は、EL素子部16から引き出された陽極30及び陰極42の上に形成されることになる。なお、基板12上に薄膜トランジスタ(TFT)等の他の素子を設ける場合は、これらの素子を搭載するためのスペースを更に設けてもよい。
【0057】
また、接着剤層21,22は、上述したような長方形状に限られず、EL素子部16の形状に併せて、他の多角形や円形等、種々の形状を採用することができる。さらに、接着剤層21における上記不連続な部位は、必ずしも上述した4つに限られず、1つのみ形成してもよく、また4つ以上形成してもよい。なお、接着剤層21,22が多角形状を有している場合には、その角部のそれぞれに上記不連続な部位を設けることが好ましい。
【0058】
さらに、接着剤層21,22として、上述の如くスペーサ44を含有する例を挙げたが、例えば、接着剤層21,22を構成する接着剤が、基板12と封止板14との間が所定の間隔となったときに加圧の力に対して十分な抵抗力を発揮し得る場合には、このスペーサ44は必ずしも必要とされない。
【0059】
さらにまた、上述した実施形態においては、接着剤層の硬化(接着部形成工程)を、張り合わせ体90の冷却後に行っているが、これに限定されない。例えば、冷却と同時に紫外光を照射してもよく、また、接着剤として熱硬化性樹脂を用いる場合には、張り合わせ工程時の加熱によって、冷却よりも先に接着剤層の硬化が生じていてもよい。後者の場合、接着剤層21,22においては、上記不連続な部位が封止されつつ接着剤の硬化が生じることになる。
【0060】
またさらに、上述した形態においては、基板12上に発光素子であるEL素子部16と接着剤層21,22の両方が設けられている(構造体80,100)が、これに限定されず、例えば、EL素子部16を有する基板12と、接着剤層21又は22が設けられた封止板14を準備し、これらを張り合わせることによってELパネル10を形成することもできる。
[液晶パネルの製造方法]
【0061】
次に、本発明のパネルの製造方法の他の例である液晶パネルの製造方法について説明する。
【0062】
(液晶パネル)
図8は、好適な実施形態の製造方法により得られた液晶パネルの断面構造を模式的に示す図である。
【0063】
液晶パネル50は、基板52、電極54及び配向膜56がこの順に積層されてなる一対の複合基板57と、これらの間に配置された液晶材料58と、この液晶材料58を囲むように配置され、当該液晶材料58を密封する接着部60とから構成されている。
【0064】
一対の複合基板57は、互いの配向膜56が向き合うように配置されており、これらは、上記接着部60を介して張り合わされた状態となっている。この接着部60は、一対の複合基板57間において、これらの張り合わせ方向からみて環状となるように形成されている。なお、「環状」の定義は、上述の有機ELパネルの説明においてしたのと同様である。
【0065】
複合基板57を構成する基板52としては、液晶パネル50における光の透過を可能とするような透明材料を用いる必要があり、例えば、ガラス基板等が好ましい。同様の観点から、電極54も透明電極である必要があり、各種のパネルに用いられる透明電極が適用できる。代表的には、ITOが挙げられる。
【0066】
また、配向膜としては、例えば、ポリイミド等の高分子膜であって、液晶材料58との接触面にラビング処理等が施されたものが適用できる。さらに、液晶材料58を構成する液晶材料としては、各種のモード(TN、STN等)を有するものを特に制限なく適用できる。
【0067】
接着部60は、有機ELパネルと同様に、樹脂材料等からなる接着剤により構成されており、この樹脂材料としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、EB硬化樹脂等を適用できる。なお、図示しないが、この接着部60は、一対の複合基板57の間を所望の間隔に保つためのスペーサを含有している。スペーサとしては、金属や金属酸化物からなる粒子等が挙げられる。
【0068】
このような構成を有する液晶パネル50においては、一対の電極54から液晶材料58に電圧を印加することによって、液晶材料の配向を変化させることが可能である。そしてかかる液晶パネル50は、バックライト、偏向膜、カラーフィルタ等の公知の部品とともに、液晶ディスプレイを構成し得る。
【0069】
(液晶パネルの製造方法;第1の形態)
次に、図9を参照しながら、上述した構成を有する液晶パネル50の製造方法の第1の形態について説明する。
【0070】
液晶パネル50の製造においては、まず、図9に示される構造体110を準備する。ここで、図9は、複合基板上に液晶材料及び接着剤層が配置された構造体の第1の形態を模式的に示す平面図である。
【0071】
この構造体110の製造に際しては、まず、複合基板57を用意する。複合基板57は、例えば、ガラス基板等の基板52上に蒸着等の公知の方法により電極54を形成した後、その上に印刷法等により高分子材料等の薄膜からなる配向膜56を形成し、さらに、この配向膜56の表面に公知のラビング処理を施すことによって得ることができる。
【0072】
次に、この複合基板57における上記配向膜56上に、接着部60を形成するための接着剤を長方形状に塗布して接着剤層61を形成する。このとき、接着剤は、この長方形における角部のそれぞれに不連続な部位が形成されるように塗布して、接着剤層61を構成する各辺の端部同士が互いに接触しないようにする。これにより、環状(長方形状)に塗布された接着剤の一部に隙間が形成される。
【0073】
また、接着剤層61は、複合基板57上における液晶材料58からなる層を形成させるべき領域を囲むように形成する。これにより、液晶材料58が広がる範囲を接着剤層61によって規定でき、複合基板57上の正確な位置に液晶材料58からなる層を形成できるようになる。
【0074】
続いて、複合基板57上の接着剤層61に囲まれた領域に液晶材料58を滴下するなどして、当該領域中に液晶材料58を配置する。液晶材料58の滴下量は、後述する張り合わせ工程において、当該材料58が、一対の複合基板57と接着剤層61に囲まれた領域に隙間なく充填される程度に調整することが好ましい。
【0075】
液晶パネル50の製造においては、このようにして得られた構造体110に対し、上記と同様にして得られた他の複合基板57を、配向膜56同士が向き合うようにして配置し、所定温度以上に加熱するとともに加圧しながら、これらを張り合わせて張り合わせ体を得る(張り合わせ工程)。この加圧及び加熱は、上記有機ELパネルの製造方法と同様にして行うことができる。
【0076】
張り合わせ工程においては、上述した加圧によって、接着剤層61を構成する接着剤が、当該層61に設けられた上記不連続な部位に向かって徐々に流動(移動)する。そして、加圧を続けることにより、この流動した接着剤によって、上記不連続な部位が封止され、その結果、環状(長方形状)の接着剤層21が形成される。同時に、液晶材料58は、この加圧によって押しつぶされ、一対の複合基板57及び接着部60に囲まれた領域内に充填されるように流動する。
【0077】
こうして、張り合わせ工程においては、隙間のない環状の接着剤層61が形成されるとともに、一対の複合基板57及び接着剤層61に囲まれた空間内に液晶材料58が充填される。なお、接着剤中にはスペーサが含まれていることから、張り合わせ工程において少々過度の力で加圧を行ったとしても、このスペーサによって一対の複合基板57の間隔を好適な値に保つことができる。
【0078】
張り合わせ工程における上記所定温度は、液晶パネルの使用環境において通常想定される温度よりも高い温度とすることが好ましく、例えば、液晶ディスプレイが通常用いられる室温よりも高い温度とすることが好ましい。これにより、液晶パネル50の使用時には、当該パネル50における複合基板57及び接着部60に囲まれた空間内の圧力を、外部の圧力(通常は大気圧)よりも小さくできる。その結果、温度上昇に伴う液晶パネル50内部の空気の膨張が生じ難くなり、これによる当該パネル50の変形を抑制できる。
【0079】
また、上記所定温度は、接着剤層61を構成する接着剤が軟化を生じ得る温度以上とするとより好ましい。こうすれば、張り合わせにおける樹脂の流動が生じ易くなり、上記不連続な部位の封止が更に容易となる。なお、張り合わせ工程における加熱温度の上限は、液晶材料58や接着剤の熱による劣化を防ぐために、これらの耐熱温度以下に設定することが好ましい。これらの観点から、液晶パネル50を製造する際の張り合わせ工程における上記所定温度は、50〜150℃とすることが好ましく、50〜100℃とすることがより好ましい。
【0080】
なお、この張り合わせ工程においては、必ずしも加熱及び加圧の両方を行う必要はなく、加熱を行わずに加圧のみを行ってもよい。加圧のみであっても、上述した有機ELパネルの製造における張り合わせ工程と同様、複合基板57間の空気を十分に排出でき、また、上記不連続な部位の封止を十分に行うことができる。
【0081】
そして、必要に応じて、有機ELパネルの製造方法と同様にして、張り合わせ体の冷却や接着部形成工程を行い、液晶パネル50を得る。前者の冷却を行う場合には、加熱された張り合わせ体の温度が低下するのに伴い、張り合わせ体内部の空気が収縮するため、当該内部よりも外部の圧力のほうが大きくなる傾向にある。このため、温度の低下とともに一対の複合基板57はこれらの外側から徐々に加圧される。このように、冷却によって、一対の複合基板57同士が更に強固に接着される。
【0082】
(液晶パネルの製造方法;第2の形態)
次に、図10を参照しながら、液晶パネル50の製造方法の第2の形態について説明する。
【0083】
液晶パネル50の製造方法の第2の形態においては、まず、図10に示される構造体120を準備する(準備工程)。図10は、複合基板57上に液晶材料及び接着剤層が配置された構造体の第2の形態を模式的に示す平面図である。
【0084】
構造体120は、第1の形態と同様にして複合基板57を用意した後、得られた複合基板57における配向膜56上に、接着部60を形成するための接着剤を長方形状に塗布して接着剤層62を形成する。接着剤は、上述した第1の形態とは異なり、角部等に隙間が形成されないように長方形状に塗布する。つまり、本実施形態においては、一部に不連続な部位を有しないように環状(長方形状)に接着剤を塗布する。また、接着剤層62は、複合基板57上における液晶材料58からなる層を形成させるべき領域を囲むように形成する。これにより、液晶材料58が広がる範囲を規定できる。
【0085】
次に、複合基板57上の接着剤層62が形成された領域内に、第1の形態と同様にして液晶材料58を配置し、構造体120を得る。それから、得られた構造体120に対し、他の複合基板57を、互いの配向膜56同士が向き合うように配置した後、これらを所定温度以上に加熱しながら張り合わせ、張り合わせ体を得る(張り合わせ工程)。
【0086】
これにより、一対の複合基板57が接着剤層62を介して接着され、張り合わせ体における複合基板57及び接着剤層62に囲まれた領域が密封される。張り合わせ工程における上記所定温度としては、上記第1の形態における張り合わせ工程の所定温度と同様の温度を採用することができる。なお、後述する冷却の際に十分な加圧が行われることから、この張り合わせ工程においては、第1の形態のような加圧は行わずに、一対の複合基板57同士が接着剤層62を介して軽く接触する程度に張り合わせを行えばよい。
【0087】
その後、得られた張り合わせ体を、第1の形態と同様にして上記所定温度以下の温度まで冷却する。上述の如く、張り合わせ工程は、上記所定温度以上で行われていることから、張り合わせ体内部の液晶材料も当該所定温度以上となっている。したがって、この冷却の際には、温度の低下に伴って液晶材料も冷却され、多くの場合、この液晶材料が体積収縮を生じるようになる。その結果、一対の複合基板同士には、互いに押し付け合うような力が加わることになる。こうして、冷却においては、温度の低下とともに張り合わせ体が加圧されて、一対の複合基板57同士が強く接着される。
【0088】
そして、本実施形態においても、得られた張り合わせ体に対して、必要に応じて第1の形態と同様の接着部形成工程を行うことで接着剤層62から接着部60を形成して、液晶パネル50を得る。
【0089】
以上、液晶パネル50の好適な製造方法について、第1及び第2の形態を例に挙げて説明したが、必ずしも上述した形態に限定されず、各種の応用が可能である。例えば、有機ELパネルの製造と同様、接着剤層61,62は、上述したような長方形状以外に、円形や他の多角形状とすることができる。また、接着剤層61における上記不連続な部位は、4つ以外の数としてもよい。
【0090】
以上説明したように、本発明によれば、有機ELパネルや液晶パネルといった薄型のディスプレイや照明等に適用可能なパネルを好適に製造することができる。そして、本発明のパネルの製造方法は、上記のものに限定されず、例えば、無機ELパネル、プラズマパネルディスプレイ(PDP)用のパネルや電解放出ディスプレイ(FED)用のパネル、或いは電子ペーパーといった、同様の用途を有する他のパネルの製造に適用可能である。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)
まず、基板上にEL素子部が形成された素子基板を準備した。また、これとともに、封止板に対して、紫外線硬化樹脂を、ディスペンサーを用いて4隅に不連続な部位が形成されるように長方形状に塗布した。次に、素子基板と封止板とを、これらの間にEL素子部が配置されるように対向して配置し、平板プレスを用いて、80℃、5分の加熱及び加圧を行い、張り合わせ体を得た。この際、素子基板上のEL素子部は、基板、封止板及び接着剤に囲まれた領域に配置されるようにした。得られた張り合わせ体を観察したところ、塗布時に設けた接着剤の不連続な部位が塞がれていることが確認された。
【0093】
次に、得られた張り合わせ体を大気中に放置して室温まで冷却した。この段階の張り合わせ体において、光干渉式膜厚計を用いて張り合わせギャップを測定したところ、4隅の張り合わせギャップがそれぞれ6.1、8.0、7.0、7.9であり、中心部の張り合わせギャップが5.4であった。
【0094】
そして、張り合わせ体における紫外線硬化樹脂に対し紫外光を照射して、当該樹脂を硬化させて、有機ELパネルを完成させた。得られたパネルにおいては、EL素子部が、基板、封止板及び接着剤によって密封されていることが確認された。また、接着部は、所望の位置に正確に形成されていた。
【0095】
(比較例1)
まず、実施例1と同様にして素子基板を準備した。また、これとともに、封止板に対して、紫外線硬化樹脂を、ディスペンサーを用いて不連続な部位が形成されないように長方形状に塗布した。次いで、素子基板と封止板とを、これらの間にEL素子部が配置されるように対向して配置し、平板プレスを用いて、室温で加圧を行った。この際、加圧により、両者の間の気体が外側に逃げようとして、接着剤層の一部において破裂が生じ、内部に密閉された空間を有する張り合わせ体を得ることができなかった。
【0096】
(比較例2)
まず、実施例1と同様にして素子基板を準備した。また、これとともに、封止板に対して、紫外線硬化樹脂を、ディスペンサーを用いて不連続な部位が形成されないように長方形状に塗布した。次いで、素子基板と封止板とを、これらの間にEL素子部が配置されるように対向して配置し、室温で加圧を行うことにより張り合わせ体を得た。この張り合わせの際には、接着剤層の破裂が生じないような弱い力で徐々に加圧を行った。
【0097】
得られた張り合わせ体を、室温よりも高い温度に加熱したところ、内部の空気が膨張して、素子基板と封止板の両方が外側に膨らむように変形する結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】好適な実施形態の製造方法により得られた有機ELパネルの断面構造を模式的に示す図である。
【図2】EL素子部の要部の断面構造を模式的に示す図である。
【図3】基板上にEL素子部及び接着剤を有する構造体の第1の形態を模式的に示す平面図である。
【図4】張り合わせ工程を模式的に示す図である。
【図5】接着部形成工程の一例を示す図である。
【図6】基板上にEL素子部及び接着剤を有する構造体の第2の形態を模式的に示す平面図である。
【図7】冷却時の張り合わせ体の断面構造を模式的に示す図である。
【図8】好適な実施形態の製造方法により得られた液晶パネルの断面構造を模式的に示す図である
【図9】複合基板上に液晶材料及び接着剤層が配置された構造体の第1の形態を模式的に示す平面図である。
【図10】複合基板上に液晶材料及び接着剤層が配置された構造体の第2の形態を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0099】
10…有機ELパネル、12…基板、14…封止板、16…EL素子部、18…カラーフィルタ、20…接着部、21,22…接着剤層、30…陽極、32…ホール注入層、34…ホール輸送層、36…発光層、38…電子輸送層、40…電子注入層、42…陰極、44…スペーサ、50…液晶パネル、52…基板、54…電極、56…配向膜、57…複合基板、58…液晶材料、60…接着部、61,62…接着剤層、80…構造体、90…張り合わせ体、100,110,120…構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に配置された発光素子と、を備えるパネルの製造方法であって、
前記一対の基板のうち、一方の基板上に、少なくとも一部において不連続な部位を有するように接着剤を環状に塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記一方の基板と対向するように、前記一対の基板のうちの他方の基板を配置し、厚さ方向に加圧しながら前記一対の基板同士を張り合わせる工程と、を含み、
前記一対の基板のうちのいずれか一方の基板上に、前記発光素子が形成されており、且つ、
前記一対の基板同士を張り合わせる工程において、前記一対の基板及び前記接着剤に囲まれた領域に前記発光素子を配置させる、
ことを特徴とするパネルの製造方法。
【請求項2】
互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に配置された液晶材料と、を備えるパネルの製造方法であって、
前記一対の基板のうち、一方の基板上に、少なくとも一部において不連続な部位を有するように接着剤を環状に塗布する工程と、
前記一方の基板上の前記接着剤に囲まれた領域に前記液晶材料を配置する工程と、
前記接着剤及び前記液晶材料を介して前記一方の基板と対向するように、前記一対の基板のうちの他方の基板を配置し、厚さ方向に加圧しながら前記一対の基板同士を張り合わせる工程と、
を含むことを特徴とするパネルの製造方法。
【請求項3】
前記一対の基板同士を張り合わせる工程において、所定温度以上に加熱するとともに厚さ方向に加圧しながら、前記一対の基板同士を張り合わせた後、前記所定温度よりも低い温度とすることを特徴とする請求項1又は2記載のパネルの製造方法。
【請求項4】
前記接着剤を、多角形状に、且つ、その角部のそれぞれに前記不連続な部位を有するように塗布することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のパネルの製造方法。
【請求項5】
互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に配置された発光素子と、を備えるパネルの製造方法であって、
前記一対の基板のうち、一方の基板上に、接着剤を環状に塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記一方の基板と対向するように、前記一対の基板のうちの他方の基板を配置し、所定温度以上に加熱しながら前記一対の基板同士を張り合わせた後、前記所定温度よりも低い温度とする工程と、を含み、
前記一対の基板のうちのいずれか一方の基板上に、前記発光素子が形成されており、且つ、
前記一対の基板同士を張り合わせる工程において、前記一対の基板及び前記接着剤に囲まれた領域に前記発光素子を配置させる、
ことを特徴とするパネルの製造方法。
【請求項6】
互いに対向して配置された一対の基板と、一対の基板間に配置された液晶材料と、を備えるパネルの製造方法であって、
前記一対の基板のうち、一方の基板上に、接着剤を環状に塗布する工程と、
前記一方の基板上の前記接着剤に囲まれた領域に、前記液晶材料を配置する工程と、
前記接着剤及び前記液晶材料を介して前記一対の基板と対向するように、前記一対の基板のうちの他方の基板を配置し、所定温度以上に加熱しながら、前記一対の基板同士を張り合わせた後、前記所定温度よりも低い温度とする工程と、
を含むことを特徴とするパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−106036(P2006−106036A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288401(P2004−288401)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】