説明

ヒートスプレッダとその製造方法

【課題】アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材2の外周面が、高い熱伝導率を有し厚みが小さくかつ均一で、接合強度に優れた被覆層9によって被覆され、面方向のトータルの熱膨張率が小さい上、厚み方向のトータルの熱伝導率にも優れたヒートスプレッダ1とその製造方法を提供する。
【解決手段】ヒートスプレッダ1は、アルミニウム−セラミック複合材料中のアルミニウムの純度を99質量%以上、素子搭載面10を構成する被覆層9の厚みを0.05〜0.5mm、被覆層9を形成するアルミニウム−マグネシウム合金のマグネシウム含量を0.4〜8.5質量%、基材2と被覆層9との接合強度を100MPa以上とした。製造方法は、アルミダイカスト金型内に非酸化性または還元性の加熱ガスを導入して基材を加熱後、密閉状態としてアルミニウム−マグネシウム合金を、圧をかけながら押し込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にパワー半導体素子等の、動作時に大きな発熱を伴う素子からの熱を除去するために好適に用いられるヒートスプレッダと、前記ヒートスプレッダの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記パワー半導体素子等の、動作時に大きな発熱を伴う素子においては、前記熱をできるだけ速やかに除去することが求められる。熱を速やかに除去しないと、素子自体が過熱して誤動作(熱暴走)したり、破損したり、あるいは動作の効率が低下したりするおそれがあるためである。
かかる素子としては、例えば電気自動車やハイブリッド自動車、鉄道車両等において誘導モータを駆動させる際に直流から交流への電力変換をするためのインバータ回路に組み込まれる絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ等のパワー半導体素子、プラズマディスプレイパネル等の画像表示素子、コンピュータのマイクロプロセッサユニット、あるいはレーザーダイオード等が挙げられる。
【0003】
近年、前記各種装置類のより一層の高性能化や高出力化の進展に伴って、前記素子を、一般的なケイ素(Si)系、ガリウム−砒素(GaAs)系、インジウム−燐(InP)系の素子から、炭化ケイ素(SiC)系、窒化ガリウム(GaN)系の素子へと移行することが検討されている。
その場合、素子の動作可能温度を例えばSi系の素子等の120℃前後から、SiC系の素子等の200℃前後まで引き上げることが可能となり、過熱による誤動作や破損、動作効率の低下等をこれまでよりも起こりにくくできると考えられている。しかしこれらの素子においても、熱をできるだけ速やかに除去する必要があることには変わりはない。
【0004】
前記熱を速やかに除去する手段としては、例えば平板状のヒートスプレッダを用いるのが一般的である。
すなわち前記素子を、前記ヒートスプレッダの互いに背向する一対の平板面のうちの一方に直接に、あるいはセラミック基材等を介して、はんだ接合等により搭載する。またもう一方の平板面は、冷却器やヒートシンク、あるいは前記冷却器等への伝熱部材(以下これらを「冷却部材」と総称する場合がある。)と接触させた状態でネジ止めする等して固定する。
【0005】
そうすると素子で発生した熱を、前記ヒートスプレッダを介して速やかに冷却部材に熱伝導させて除去することができる。
前記ヒートスプレッダを、従来はアルミニウムや銅等の金属、もしくは合金によって一体に形成していた。
しかし近時、前記ヒートスプレッダをアルミニウム−セラミック複合材料によって形成することが検討されている。
【0006】
前記アルミニウム−セラミック複合材料は、前記金属や合金と同等程度の熱伝導率を有する上、先に説明した各種材料からなる素子や、あるいは窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)等からなるセラミック基材等と熱膨張率が近い。
そのためヒートスプレッダを前記複合材料によって形成することで、前記素子やセラミック基材等との熱膨張率の差をできるだけ小さくすることができ、素子の動作による発熱と停止後の冷却とを繰り返した際に、熱膨張率の違いに基づいて素子に過剰な応力が加わって前記素子自体が破損したり、あるいははんだ接合が破壊されたりするのを抑制できる。
【0007】
平板状のヒートスプレッダの一方の平板面に、前記素子やセラミック基材等を、熱伝導の妨げになるボイド等を生じることなく良好にはんだ接合するためには、前記平板面を、前記はんだに対する濡れ性、親和性に優れたニッケルめっき膜等で被覆するのが好ましい。
しかしアルミニウム−セラミック複合材料を構成するアルミニウム(純アルミニウムの他、アルミニウムと他の金属との様々な合金を含む。以下「アルミニウム材」と総称する場合がある。)とセラミックとではめっきの条件が大きく異なるため、前記複合材料からなる平板面に直接に、安定で均一なニッケルめっき膜を形成するのは困難である。
【0008】
そこで、アルミニウム−セラミック複合材料からなる平板状の基材の、少なくとも前記平板面を含む外周面(両外周面と側面)を、前記ニッケルめっき等が容易な金属の被覆層で被覆して、前記基材と被覆層との複合構造を有するヒートスプレッダを形成することが検討されている。
アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材の形成方法は、
(1) アルミニウム材の粉末とセラミック粉末とを混合し、型押ししたのち焼結させる粉末成形焼結法、
(2) あらかじめ基材の形状に形成したセラミックのスケルトンに、加圧下で溶融したアルミニウム材を含浸させる加圧含浸法、
(3) 例えば窒素雰囲気下でアルミニウム材を溶融させて、前記セラミックのスケルトンに自発的に(例えば引力により)含浸させる自発溶浸法、
等に大別される。
【0009】
このうち(1)の粉末成形焼結法、および(2)の加圧含浸法によれば、アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材の形成と同時に、その外周面をアルミニウム材の被覆層で被覆することが可能である。
例えば(2)の加圧含浸法では、前記スケルトンを金型の型窩内に収容した状態で、溶融したアルミニウム材を、圧をかけながら前記型窩内に注入することで基材が形成されるが、前記スケルトンと型窩の内周面との間にあらかじめ隙間を設けておくことにより、アルミニウム材の注入による基材の形成と同時に、前記基材の外周面に、前記隙間に対応する厚み分の、アルミニウム材からなる被覆層を形成することができる(特許文献1)。
【0010】
しかしこの場合、アルミニウム−セラミック複合材料を形成するアルミニウム材と、被覆層を形成するアルミニウム材とは、当然ながら同一組成とならざるを得ない。加圧含浸に適したアルミニウム材が、必ずしも被覆層を形成するために適した特性を有しているとは限らない。
アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材の健全性を優先するためには、アルミニウム材を、スケルトンの隙間に含浸させやすいことを優先した組成(例えばアルミニウム−ケイ素合金等)とする必要がある。
【0011】
しかし、かかるアルミニウム−ケイ素合金等のアルミニウム材は一般に熱伝導率が低く、そのためアルミニウム−セラミック複合材料からなる基材の熱伝導率と、前記アルミニウム材からなり、平板面を被覆する被覆層の熱伝導率とを合わせた、ヒートスプレッダの厚み方向のトータルの熱伝導率を向上させることには限界がある。
例えば日本工業規格において規定されたアルミニウム−ケイ素合金AC3A(Al−12Si)の熱伝導率は120W/mKでしかないため、アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材と、前記AC3Aからなる被覆層との、前記厚み方向のトータルの熱伝導率はおよそ170〜180W/mK程度にしかならない。
【0012】
特許文献2には、前記(1)の粉末成形焼結法を応用して、基材の外周面を被覆層で被覆したヒートスプレッダを製造する方法が記載されている。
すなわち、被覆層となるアルミニウム材の板や枠で囲まれた領域内にアルミニウム材の粉末とセラミック粉末との混合物を充填した状態で型押ししたのち焼結することにより、アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材が形成されるとともに、前記基材の外周面が、前記板や枠からなる被覆層で被覆される。
【0013】
この製造方法では、前記板や枠を形成するアルミニウム材として熱伝導率に優れたものを選択して用いることにより、前記ヒートスプレッダの厚み方向のトータルの熱伝導率を、現状より向上することができる。
しかし前記製造方法において、焼結の温度がアルミニウム材の融点以上になると前記板や枠が溶融してしまって被覆層の形状を維持することができない。
【0014】
そのため前記製造方法では焼結の温度をアルミニウム材の融点未満に制限せざるを得ないため、製造されるヒートスプレッダは、基材と被覆層との接合強度が未だ十分とはいえないという問題がある。
特許文献3〜5には、あらかじめ形成したアルミニウム−セラミック複合材料からなる基材の外周面に金属を溶射したり、金属箔や金属粉末を貼り付けたのち加熱、加圧処理をしたりして被覆層を形成することが記載されている。
【0015】
しかしこれらの方法で、例えば厚みが0.5mm以下といった厚みの小さい、しかも前記厚みが均一な被覆層を、特に基材の平板面に形成するのは容易ではない。
厚みが0.5mmを超える場合には、前記被覆層の熱膨張率と、基材の熱膨張率とを合わせた、特にヒートスプレッダの面方向のトータルの熱膨張率が大きくなって、前記基材を、熱膨張率の小さいアルミニウム−セラミック複合材料によって形成することによる利点、すなわち素子やセラミック基材等との熱膨張率の差をできるだけ小さくして、素子の動作による発熱と停止後の冷却とを繰り返した際に、熱膨張率の違いに基づいて素子に過剰な応力が加わって前記素子自体が破損したり、あるいははんだ接合が破壊されたりするのを抑制する効果が失われてしまう。
【0016】
また溶射や金属箔等の貼り付け、加熱、加圧等を大気中で実施した場合には被覆層を形成するアルミニウム材の酸化によって熱伝導率が低下しやすいため、前記トータルの熱伝導率を向上させることにも限界がある。
基材の平板面に厚みが均一な被覆層を形成するために、アルミダイカスト法を採用することが検討される。
【0017】
すなわち、あらかじめ形成したアルミニウム−セラミック複合材料からなる基材を、ヒートスプレッダの立体形状に対応する型窩を備えたアルミダイカスト金型の前記型窩内にセットした状態で、前記型窩内に、被覆層のもとになるアルミニウム材を、圧をかけながら押し込んだのち冷却する工程を経て、前記基材の外周面に被覆層を形成することが考えられる。
【0018】
しかし従来のアルミダイカスト法では、例えば厚みが0.5mm以下といった薄肉の被覆層を基材の平板面に形成するのは困難である。
また形成できたとしても、基材と被覆層との接合強度が十分に得られず、両者間での熱伝導が妨げられる結果、前記基材と被覆層との、ヒートスプレッダの厚み方向のトータルの熱伝導率が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2002−235126号公報
【特許文献2】特許第4382154号公報
【特許文献3】特開2004−91862号公報
【特許文献4】特開2003−253371号公報
【特許文献5】特開平9−174222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材の外周面の略全面が、高い熱伝導率を有する上、特に基材の平板面に対応する素子搭載面において厚みが小さくかつ均一で、しかも基材との接合強度にも優れた被覆層によって被覆されており、前記基材と被覆層とを合わせた面方向のトータルの熱膨張率が小さい上、厚み方向のトータルの熱伝導率にも優れたヒートスプレッダと、前記ヒートスプレッダの製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、アルミニウム−セラミック複合材料からなる平板状の基材、および
前記基材の互いに背向する一対の平板面、および側面の略全面を被覆する、アルミニウム合金からなる被覆層、
を備え、全体が平板状に形成されるとともに、前記基材の一方の平板面側の面が素子搭載面とされたヒートスプレッダであって、
前記基材を形成するアルミニウム−セラミック複合材料中に含まれるアルミニウムは純度99質量%以上のアルミニウム、
前記素子搭載面を構成する被覆層は厚み0.05mm以上、0.5mm以下、
前記被覆層を形成するアルミニウム合金はマグネシウムを0.4質量%以上、8.5質量%以下の範囲で含むアルミニウム−マグネシウム合金であり、かつ
前記基材と前記被覆層との接合強度は100MPa以上であることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、基材が、先に説明したように素子やセラミック基材等と熱膨張率の近いアルミニウム−セラミック複合材料によって形成される上、素子搭載面を構成する被覆層の厚みが0.5mm以下と小さいため、前記基材と被覆層とを合わせた、特にヒートスプレッダの面方向のトータルの熱膨張率を、前記基材単体の場合とほぼ同等程度の小さい範囲に維持することができる。
【0023】
そのためヒートスプレッダと、素子やセラミック基材等との熱膨張率の差をできるだけ小さくして、素子の動作による発熱と停止後の冷却とを繰り返した際に、熱膨張率の違いに基づいて素子に過剰な応力が加わって前記素子自体が破損したり、あるいははんだ接合が破壊されたりするのを抑制できる。
また、前記基材を形成するアルミニウムは純度99質量%以上であって高い熱伝導率を有している。例えば純アルミニウム(Al050)の熱伝導率は225W/mKである。
【0024】
一方、被覆層は、前記のように素子搭載面において厚みが0.5mm以下と小さいため、基材と被覆層とを合わせた、ヒートスプレッダの厚み方向のトータルの熱伝導率に及ぼす影響が小さい。
しかも前記被覆層を形成するアルミニウム−マグネシウム合金中のマグネシウムは、例えば後述する本発明の製造方法において前記被覆層を形成する際に自身が酸化することでアルミニウムの酸化を抑制したり、形成された酸化膜を除去したりする機能を有している。
【0025】
そのため前記機能と、後述する本発明の製造方法において、型窩内に非酸化性または還元性の加熱したガスを導入して基材を加熱するとともに前記型窩内を非酸化性または還元性雰囲気とした状態で密閉した型窩内に、溶融したアルミニウム−マグネシウム合金を、圧をかけながら押し込んだのち冷却することとが相まって、基材と被覆層とが界面において極めて良好に密着されて、前記両者の接合強度が100MPa以上とされる。また被覆層自体の熱伝導率も向上する。
【0026】
したがってこれらの相乗効果によって、本発明のヒートスプレッダは熱伝導率に優れており、特にパワー半導体等の動作時に大きな発熱を伴う素子からの熱を速やかに除去して、前記素子自体が過熱して誤動作(熱暴走)したり、破損したり、あるいは動作の効率が低下したりするのを防止できる。
なお本発明において、基材を形成するアルミニウム−セラミック複合材料中に含まれるアルミニウムの純度が99質量%以上に限定されるのは、純度が前記範囲未満では、基材自体の熱伝導率が低下して、基材と被覆層とを合わせた、ヒートスプレッダの厚み方向のトータルの熱伝導率が低下するためである。
【0027】
また本発明において、素子搭載面を構成する被覆層の厚みが0.05mm以上に限定されるのは、これより厚みが小さくかつ均一で、しかも基材との接合強度に優れた被覆層は、たとえ後述する本発明の製造方法等を採用したとしても、形成することができないためである。
すなわち前記範囲より厚みの小さい被覆層を形成するためには、アルミダイカスト金型の型窩の内面と、基材の平板面等との間の隙間を前記範囲未満にしなければならない。しかしその場合には隙間が小さすぎるため、溶融されて型窩内に押し込まれたアルミニウム−マグネシウム合金の熱がアルミダイカスト金型および基材によって奪われて、前記アルミニウム−マグネシウム合金の流れが悪くなってしまう。そのため、特に前記基材の素子搭載面に対応する平板面に、厚みが小さくかつ均一で、しかも基材との接合強度にも優れた良好な被覆層を形成することはできない。
【0028】
また前記厚みが0.5mm以下に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち、厚みが前記範囲を超える場合には、先に説明したように、被覆層の熱膨張率と基材の熱膨張率とを合わせた、ヒートスプレッダの面方向のトータルの熱膨張率が大きくなって、前記基材を、熱膨張率の小さいアルミニウム−セラミック複合材料によって形成することによる利点、すなわち素子やセラミック基材等との熱膨張率の差をできるだけ小さくして、素子の動作による発熱と停止後の冷却とを繰り返した際に、熱膨張率の違いに基づいて素子に過剰な応力が加わって前記素子自体が破損したり、あるいははんだ接合が破壊されたりするのを抑制する効果が失われてしまう。
【0029】
また本発明において、被覆層を形成するアルミニウム−マグネシウム合金中のマグネシウムの含有割合が0.4質量%以上に限定されるのは、この範囲より含有割合が少ない場合には、先に説明したマグネシウムを含有させることによる、アルミニウムの酸化を抑制したり、形成された酸化膜を除去したりすることで、基材と被覆層とを界面において良好に密着させる効果が得られず、前記基材と被覆層とを合わせた、ヒートスプレッダの厚み方向のトータルの熱伝導率を十分に向上させることができないためである。
【0030】
また前記含有割合が8.5質量%以下に限定されるのは、この範囲よりマグネシウムの含有割合が多い場合にはアルミニウム−マグネシウム合金の溶融時の流動性が低下するため、前記のように厚みが小さくかつ均一で、しかも基材との接合強度に優れた良好な被覆層を形成できないためである。
さらに基材と前記被覆層との接合強度が100MPa以上に限定されるのは、この範囲より接合強度が小さい場合には、前記両者のトータルの熱伝導率が不十分となって、素子からの熱を速やかに逃がすことができない場合を生じたり、実使用中に被覆層が剥離して故障の原因となったりするためである。
【0031】
前記本発明のヒートスプレッダは、略矩形状に形成された素子搭載面の対角線の寸法が50mm以上、500mm以下であるのが好ましい。
対角線の寸法が前記範囲未満では、素子搭載面に搭載できる素子の大きさや数が限られてしまい、特に先に説明したパワー半導体素子等の、大型でしかも動作時に大きな発熱を伴う素子を搭載するのに適さなくなるおそれがある。
【0032】
また、対角線の寸法が前記範囲を超える広い素子搭載面の全面に亘って、前記のように厚みが小さくかつ均一で、しかも基材との接合強度に優れた良好な被覆層を形成するのは容易でない。
基材を形成するアルミニウム−セラミック複合材料中に含まれるセラミックは、先に説明した、基材自体の熱伝導率を金属や合金等からなるものと同等程度に維持しながら、その熱膨張率を素子やセラミック基板等にできるだけ近づけることを考慮すると、炭化ケイ素、窒化ケイ素、およびアルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。中でも、前記効果の点で特に炭化ケイ素が好ましい。
【0033】
本発明は、純度99質量%以上のアルミニウムを含むアルミニウム−セラミック複合材料からなる平板状の基材の互いに背向する一対の平板面、および側面の略全面が、マグネシウムを0.4質量%以上、8.5質量%以下の範囲で含むアルミニウム−マグネシウム合金からなる被覆層で被覆されて全体が平板状に形成されるとともに、前記基材の一方の平板面側の面が素子搭載面とされて、前記素子搭載面を構成する被覆層の厚みが0.05mm以上、0.5mm以下とされたヒートスプレッダを製造するための製造方法であって、
前記ヒートスプレッダの立体形状に対応する型窩を備えるとともに、前記型窩内に非酸化性または還元性のガスを導入するための導入路と、前記導入路を閉鎖して前記型窩内を密閉するための密閉機構とを備えたアルミダイカスト金型を用い、
前記アルミダイカスト金型の型窩内に前記基材をセットした状態で、前記型窩内に、300℃以上、600℃以下に加熱した前記ガスを、前記導入路を通して導入して前記基材を加熱するとともに前記型窩内を非酸化性または還元性雰囲気とする工程と、
前記密閉機構により前記導入路を閉鎖して型窩内を密閉した状態で、溶融させた前記アルミニウム−マグネシウム合金を、圧をかけながら前記型窩内に押し込んだのち冷却することで前記被覆層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、前記各工程を経ることによって、前記基材の特に素子搭載面に対応する平板面に、従来のアルミダイカスト法では困難であった、厚み0.5mm以下という厚みの小さい、しかも前記厚みが均一で、なおかつ基材との界面において極めて良好に密着されて、前記基材に対する接合強度が100MPa以上とされた被覆層を形成することができる。
【0035】
従来のアルミダイカスト法において、例えば薄板を製造する場合、アルミダイカスト金型の、前記薄板の立体形状に対応した型窩の数箇所に湯口を設けるとともに、前記型窩の必要な数箇所にエアベントを設けてエアの抜けをよくした状態で、前記数箇所の湯口から溶融したアルミニウム材を前記型窩内に導入するのが一般的である。
しかし前記従来のアルミダイカスト法を、基材の外周面の略全面を被覆する被覆層の形成に適用しても、先に説明したように厚みが小さくかつ均一で、しかも基材との接合強度にも優れた被覆層を形成することはできない。
【0036】
接合強度を高めるには、基材をあらかじめ加熱すること、基材表面、および型窩内に導入されるアルミニウム材の表面に形成される酸化膜を除去することが必要である。
このうち基材を加熱する方法としては、型窩内にセットする前の基材を、あらかじめ加熱炉内で予備加熱しておくことが考えられるが、予備加熱した基材を酸化雰囲気に曝露することなく型窩内にセットするのが難しい上、高温の基材を型窩内にセットする作業自体が難しいという問題がある。
【0037】
アルミダイカスト金型内にヒータを組み込んでおき、このヒータを使用して基材を加熱することも考えられるが、前記基材は、その外周面の略全面を被覆層で被覆するべく、前記被覆層の厚み分の隙間を隔てて型窩の内面から離れてセットされており、前記アルミダイカスト金型とはごく一部でしか接していないため、前記ヒータによって基材を効率よく加熱することはできない。
【0038】
これに対し本発明では、前記のように型窩内に、あらかじめ300℃以上、600℃以下に加熱した非酸化性または還元性のガスを導入することで、前記型窩内にセットした基材を効率よく加熱することができる。
またそれとともに型窩内から空気を排除して、前記型窩内を非酸化性または還元性の雰囲気とすることができ、かかる状態で、溶融したアルミニウム材を型窩内に導入することにより、前記基材表面、およびアルミニウム材の表面に形成される酸化膜を除去することもできる。
【0039】
しかも本発明では、型窩にエアベントを設けてエアの抜けを良くするのではなく、逆に型窩内を密閉した状態で、溶融したアルミニウム材を、圧をかけながら前記型窩内に押し込むことによって、特に前記型窩の内面と基材の平板面との間のごく狭い隙間に前記アルミニウム材を満遍なく均一に行き渡らせるとともに、基材と良好に密着させることができる。
【0040】
そのため前記アルミニウム材として、アルミニウムの酸化を抑制したり、形成された酸化膜を除去したりする機能を有するマグネシウムを前記所定の割合で含むアルミニウム−マグネシウム合金を用いることと相まって、特に基材の平板面に、厚みが小さくかつ均一で、しかも前記基材との界面において極めて良好に密着されて、基材に対する接合強度が100MPa以上とされた被覆層を形成することができる。
【0041】
したがって、純度99質量%以上のアルミニウムを含むアルミニウム−セラミック複合材料からなる平板状の基材を用いることと相まって、本発明の製造方法によれば、基材と被覆層とを合わせた面方向のトータルの熱膨張率が小さい上、厚み方向のトータルの熱伝導率にも優れた本発明のヒートスプレッダを、効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材の外周面の略全面が、高い熱伝導率を有する上、特に基材の平板面に対応する素子搭載面において厚みが小さくかつ均一で、しかも基材との接合強度にも優れた被覆層によって被覆されており、前記基材と被覆層とを合わせた面方向のトータルの熱膨張率が小さい上、厚み方向のトータルの熱伝導率にも優れたヒートスプレッダと、前記ヒートスプレッダの製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のヒートスプレッダの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の例のヒートスプレッダのもとになる、アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材の斜視図である。
【図3】図1の例のヒートスプレッダのIII−III線断面図である。
【図4】図1の例のヒートスプレッダを本発明の製造方法によって製造するために用いるアルミダイカスト金型の一例を示す断面図である。
【図5】図4の例のアルミダイカスト金型の、型窩の一部を拡大した断面図である。
【図6】図4の例のアルミダイカスト金型を用いてヒートスプレッダを製造する一工程を説明する断面図である。
【図7】本発明の実施例、比較例で製造したヒートスプレッダにおける基材と被覆層との接合強度を測定するために、前記ヒートスプレッダから作製する試験片の一部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明のヒートスプレッダ1の、実施の形態の一例を示す斜視図である。図2は、前記図1の例のヒートスプレッダ1のもとになる、アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材2の斜視図である。図3は、前記図1の例のヒートスプレッダ1の、図1中III−III線断面図である。
図1〜図3を参照して、この例のヒートスプレッダ1は、四隅が切り欠かれた略矩形平板状に形成された、アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材2と、前記基材2の、互いに背向する一対の平板面3、4、および側面5〜8の略全面を被覆する、アルミニウム−マグネシウム合金からなる被覆層9とを備えている。
【0045】
前記ヒートスプレッダ1の全体は、四隅がR形状とされた略矩形平板状に形成されており、基材2の、各図において上側の平板面3側の面が素子搭載面10、下側の平板面4側の面が、冷却部材との接続面11とされている。またヒートスプレッダ1の四隅には、それぞれ前記素子搭載面10から接続面11へかけて前記ヒートスプレッダ1を厚み方向に貫通する断面円形の通孔12が設けられている。
【0046】
前記通孔12は、ヒートスプレッダ1を冷却部材に固定するためのねじ等を挿通するために用いられる。前記通孔12の、前記素子搭載面10側、および接続面11側の開口部には、それぞれ径の大きい拡径部13が設けられている。
基材2は、前記通孔12を避けるため、四隅に切欠14が設けられている。また前記切欠14は、一部が通孔12の内周面を形成するために、前記通孔12の内径と一致するR面とされている。
【0047】
前記基材2は、前記R面が通孔12の内周面において露出されるとともに、前記平板面3、4のうち切欠14のR面の縁辺部が拡径部13の段差面において露出されている以外は、その略全面において被覆層9によって被覆されている。
なお本発明において、前記基材2の、素子搭載面10に対応する平板面3の「略全面」を被覆した状態には、前記平板面3の全面が全て被覆されている状態の他、前記平板面3のうち実際に素子が搭載される領域のみが被覆層9によって被覆され、前記領域外の領域は被覆されずに基材2が露出された状態をも含むこととする。
【0048】
例えば前記平板面3の周縁から2mm以内の幅の領域(例えば前記拡径部13の段差面等)において基材2が露出され、それより面方向内方側の領域は被覆層9によって被覆された状態は、平板面3の「略全面」を被覆した状態に含まれる。
前記基材2の、接続面11に対応する平板面4についても前記平板面3と同様である。平板面4の「略全面」を被覆した状態には、前記平板面4の全面が全て被覆されている状態の他、前記平板面4のうち冷却部材と当接される面方向中央付近の領域のみが被覆層9によって被覆され、前記領域外の領域は被覆されずに基材2が露出された状態をも含むこととする。
【0049】
例えば前記平板面4の周縁から2mm以内の幅の領域(例えば前記拡径部13の段差面等)において基材2が露出され、それより面方向内方側の領域は被覆層9によって被覆された状態は、平板面4の「略全面」を被覆した状態に含まれる。
さらに基材2の側面の「略全面」を被覆した状態には、前記側面の全面が被覆されている状態の他、その一部が露出された状態をも含むこととする。
【0050】
例えば、前記のように通孔12の内周面に臨む切欠14のR面等において基材2が露出され、それ以外の側面は被覆層9によって被覆された状態は、側面の「略全面」を被覆した状態に含まれる。
図3を参照して、前記被覆層9のうち、素子搭載面10を構成する被覆層9aの厚みTは0.05mm以上、0.5mm以下の範囲内とされる。
【0051】
厚みが前記範囲未満で、かつ均一で、しかも基材2との接合強度に優れた被覆層9aは、たとえ本発明の製造方法等を採用したとしても形成することができない。
また厚みが前記範囲を超える場合には、特にヒートスプレッダ1の面方向のトータルの熱膨張率が大きくなって、前記基材2を熱膨張率の小さいアルミニウム−セラミック複合材料によって形成することの利点が失われてしまう。
【0052】
なお、その他の面の被覆層9の厚みは特に限定されないが、前記被覆層9のうち接続面11を構成する被覆層9bの厚みTは、接続面11に、本発明の製造方法により、厚みが小さくかつ均一で、しかも基材2との界面において極めて良好に密着された被覆層9bを形成することや、前記トータルの熱膨張率をできるだけ小さくすることを考慮すると、やはり0.05mm以上、0.5mm以下の範囲内とするのが好ましい。
【0053】
なお前記被覆層9cの厚みTは1mm以上、10mm以下の範囲内とするのが好ましい。
本発明の製造方法によってヒートスプレッダ1を製造する場合、アルミダイカスト金型の型窩の内側面と、基材2の各側面5〜8との間には前記被覆層9cの厚みT分の隙間が形成され、型窩内に押し込まれた溶融したアルミニウム−マグネシウム合金の一部は前記隙間を通して型窩内に行き渡るように充填されて、前記基材2の外周面の略全面に被覆層9が形成される。
【0054】
ところが隙間の厚み、すなわち被覆層9cの厚みTが前記範囲未満では、かかる隙間を通して、アルミニウム−マグネシウム合金をスムースに流すことができないため、型窩内の、前記アルミニウム−マグネシウム合金の流動方向前方側の領域において、厚みが均一で連続した被覆層9を形成できないおそれがある。
一方、被覆層9cの厚みTが前記範囲を超える場合には、特にヒートスプレッダ1の面方向のトータルの熱膨張率が大きくなって、基材2を熱膨張率の小さいアルミニウム−セラミック複合材料によって形成することの利点が失われてしまうおそれがある。
【0055】
図1を参照して、略矩形状に形成された素子搭載面10の対角線の寸法Lは50mm以上、500mm以下であるのが好ましい。
対角線の寸法Lが前記範囲未満では、素子搭載面10に搭載できる素子の大きさや数が限られてしまい、特にパワー半導体素子等の、大型でしかも動作時に大きな発熱を伴う素子を搭載するのに適さなくなるおそれがある。
【0056】
また、対角線の寸法Lが前記範囲を超える広い素子搭載面10の全面に亘って、前記のように厚みが小さくかつ均一で、しかも基材2との接合強度に優れた良好な被覆層9aを形成するのは容易でない。
前記ヒートスプレッダ1の、面方向のトータルの熱膨張率は9ppm以下であるのが好ましい。熱膨張率が前記範囲を超える場合には、前記基材2を熱膨張率の小さいアルミニウム−セラミック複合材料によって形成することの利点が失われてしまう。なお前記トータルの熱膨張率は、前記範囲内でも6ppm以上である。本発明の構成を採用しても、これより熱膨張率を小さくすること困難である。
【0057】
また前記ヒートスプレッダ1の、厚み方向のトータルの熱伝導率は180W/mK以上であるのが好ましい。熱伝導率が前記範囲未満では、素子からの熱を速やかに逃がすことができないおそれがある。なお前記トータルの熱伝導率は、前記範囲内でも270W/mK以下である。本発明の構成を採用しても、これより熱伝導率を大きくすること困難である。
【0058】
また基材2と被覆層9との接合強度は、先に説明した100MPa以上の範囲内でも250MPa以下である。本発明の構成を採用しても、これより接合強度を大きくすること困難である。
前記基材2としては、例えば先に説明した(1)〜(3)等の種々の製造方法によって製造され、アルミニウムとセラミックとを含むアルミニウム−セラミック複合材料からなる任意ものが、いずれも使用可能である。
【0059】
ただし基材2を形成するアルミニウムは、先に説明したように基材2自体の熱伝導率を高めるために、その純度が99質量%以上である必要があり、かかる高純度のアルミニウムを含むアルミニウム−セラミック複合材料からなる基材2は、含浸、溶浸の工程を必要としない(1)の粉末成形焼結法によって形成するのが好ましい。
粉末成形焼結法においては、アルミニウム粉末とセラミック粉末とを所定の割合で混合し、前記混合物を、基材2の形状に対応した型内に充填して圧縮成形して圧粉体を形成したのち、前記圧粉体を、アルミニウムの酸化を防止して純度を低下させないために非酸化性または還元性雰囲気下で焼結することにより基材2が形成される。
【0060】
前記のうちアルミニウム粉末としては、純度99質量%以上のアルミニウム(例えばAl050)からなる粉末がいずれも使用可能である。特に、ガスアトマイズ法によって製造されるアルミニウム粉末が、高純度でかつ形状や粒径が揃っているため好適に使用される。
なおアルミニウム粉末には、例えばセラミックとの親和性を高めるために、必要に応じてSi、Fe、Cu、Mn、Mg、Zn,Cr、Ti等の微量成分を、アルミニウムの純度が前記範囲未満とならない範囲で適宜添加してもよい。
【0061】
アルミニウム粉末の平均粒径は5μm以上であるのが好ましく、50μm以下であるのが好ましい。また前記粒径範囲を有するアルミニウム粉末と組み合わせるセラミック粉末の平均粒径は10μm以上であるのが好ましく、100μm以下であるのが好ましい。
平均粒径が前記範囲内であるアルミニウム粉末とセラミック粉末とを組み合わせることにより、前記セラミック粉末の周りが、焼結後に前記セラミック粉末間を隙間なく充填するバインダとして機能するアルミニウム粉末で取り囲まれた構造を有する圧粉体を形成することができ、前記圧粉体を焼結することで、内部にボイド等がないため熱伝導率に優れる上、機械的強度等にも優れた良好な基材2を形成することができる。
【0062】
前記アルミニウム粉末の具体例としては、例えば東洋アルミニウム(株)製のAC2500〔アルミニウムの純度99.7質量%、平均粒径25μm〕等が挙げられる。
またセラミック粉末を形成するセラミックとしては、基材2自体の熱伝導率を金属や合金等からなるものと同等程度に維持しながら、その熱膨張率を素子やセラミック基板等にできるだけ近づけることを考慮すると、炭化ケイ素、窒化ケイ素、およびアルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、特に炭化ケイ素が好ましい。
【0063】
前記アルミニウム−セラミック複合材料からなる基材2における、アルミニウムの含有割合は20質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下であるのが好ましい。
アルミニウムの含有割合が前記範囲未満では、前記のようにバインダとして機能するアルミニウムの量が不足して、内部にボイド等がないため熱伝導率に優れる上、機械的強度等にも優れた良好な基材2を形成できないおそれがある。
【0064】
また前記範囲を超える場合には、基材2自体の熱膨張率が大きくなってしまって、前記基材2をアルミニウム−セラミック複合材料によって形成することによる先に説明した効果が十分に得られなくなるおそれがある。
アルミニウムの含有割合を前記範囲内とするためには、そのもとになるアルミニウム粉末とセラミック粉末の混合割合を、それに合わせて調整すればよい。
【0065】
基材2は、平板面3、4の表面粗さRa(JIS B0601:2001準拠)が0.1μm以上、特に2μm以上であるのが好ましく、5μm以下、特に4μm以下であるのが好ましい。
表面粗さRaが前記範囲未満では、たとえ本発明の製造方法を採用したとしても、被覆層9の接合強度100MPa以上の範囲を満足できないおそれがある。
【0066】
また前記範囲を超える場合には前記平板面3、4の面粗度が大きくなりすぎて、特に後述するように前記平板面3、4を位置決めの基準面として利用して被覆層9を形成する際に必要な平面度を維持できないおそれがある。
また平板面3、4の平面度は、前記平板面3、4上の直線距離50mmの範囲内での、前記平板面3、4と直交方向の変動量で表して50μm/50mm以下であるのが好ましい。
【0067】
平面度が前記範囲を超える場合には、特に平板面3上に形成される被覆層9aの厚み偏差(ばらつき)が大きくなって、素子搭載面10内の位置によって放熱性に差が生じてしまい、ヒートスプレッダ1としての必要な特性が得られないおそれがある。
前記表面粗さRaおよび平面度を前記範囲内とするため、焼結後の基材2の平板面3、4を、必要に応じて研磨等してもよい。
【0068】
被覆層9は、先に説明したようにマグネシウムを0.4質量%以上、8.5質量%以下の範囲で含むアルミニウム−マグネシウム合金によって形成される。
マグネシウムの含有割合が前記範囲未満では、先に説明したマグネシウムを含有させることによる、アルミニウムの酸化を抑制したり、形成された酸化膜を除去したりすることで、基材と被覆層とを界面において良好に密着させる効果が得られず、前記基材と被覆層とを合わせた、ヒートスプレッダの厚み方向のトータルの熱伝導率を十分に向上させることができない。
【0069】
また前記含有割合を超える場合には、アルミニウム−マグネシウム合金の溶融時の流動性が低下するため、前記のように厚みが小さくかつ均一で、しかも基材との接合強度に優れた良好な被覆層を形成できない。
なお、溶融時の良好な流動性を維持しながら、マグネシウムによる前記効果をさらに向上させることを考慮すると、アルミニウム−マグネシウム合金におけるマグネシウムの含有割合は、前記範囲内でも1質量%以上であるのが好ましく、6質量%以下であるのが好ましい。
【0070】
前記アルミニウム−マグネシウム合金の具体例としては、例えば日本工業規格において規定されたダイカスト用アルミニウム合金のうちADC3(マグネシウム含量0.5質量%、以下数値のみを記載する。)、ADC5(6.0質量%)、ADC6(3.3質量%)、ADC14(0.4質量%)等が挙げられる。特にマグネシウム含量の多いADC5、ADC6が好ましい。
【0071】
図4は、前記図1の例のヒートスプレッダ1を本発明の製造方法によって製造するために用いるアルミダイカスト金型15の一例を示す断面図である。図5は、前記図4の例のアルミダイカスト金型15の、型窩16の一部を拡大した断面図である。さらに図6は、図4の例のアルミダイカスト金型15を用いてヒートスプレッダ1を製造する一工程を説明する断面図である。
【0072】
図1〜図6を参照して、この例の製造方法において用いるアルミダイカスト金型15は、可動型17と固定型18とを備えている。
このうち可動型17は、固定型18と対向する合わせ面19を備え、前記合わせ面19に、前記ヒートスプレッダ1の立体形状に対応する前記型窩16を構成する凹部20が形成されている。
【0073】
また前記合わせ面19には、図示しない供給部から供給される加熱した非酸化性または還元性のガスを前記型窩16内に導くための導入路21となる凹溝と、溶融させたアルミニウム−マグネシウム合金を前記型窩16内に導くための湯口22となる凹溝とが、それぞれ前記凹部20と連通させて形成されている。
凹部20の底面23は、ヒートスプレッダ1の素子搭載面10に対応した賦形面とされている。
【0074】
固定型18は、可動型17と対向する合わせ面24を備え、前記合わせ面24の、前記凹部20に対応する領域は、前記凹部20とともに型窩16を構成し、ヒートスプレッダ1の接続面11に対応した賦形面とされている。
凹部20の底面23の四隅には、それぞれピン25が植設されている。前記ピン25は、前記底面23から可動型17の合わせ面24に向けて突設されている。前記ピン25の先端は、各図に示すように互いの合わせ面19、24を当接させて可動型17と固定型18とを閉じた際に、前記合わせ面24に設けた断面円形の凹部26に嵌め合わされて固定される。
【0075】
前記ピン25は、ヒートスプレッダ1の四隅に通孔12を形成するためのもので、前記通孔12の内径に対応した外径を有する円柱状に形成されている。
またピン25は、基材2を面方向に位置合わせするためにも機能する。
すなわち各ピン25の側面が基材2の四隅の切欠14のR面に当接するように、前記各ピン25の形成位置および間隔が設定されており、かかるピン25をガイドとして基材2を凹部20に挿入することにより、前記基材2が面方向に位置合わせされた状態でセットされる。
【0076】
これにより基材2の各側面5〜8と凹部20の内側面27との間に、前記各側面5〜8を覆う被覆層9cの厚みT分の隙間28が設定される。
各ピン25の、凹部20の底面23側の基部の周囲には、前記ピン25より径が大きい円形で、かつ厚みが一定の膨出部29が設けられている。
また合わせ面24の凹部26の周囲には、前記凹部26を囲んで環状に形成された、厚みが一定の膨出部30が設けられている。
【0077】
前記膨出部29の厚みは、素子搭載面10を構成する被覆層9aの厚みTに設定され、膨出部30の厚みは、接続面11を構成する被覆層9bの厚みTに設定されている。また、互いの合わせ面19、24を当接させて可動型17と固定型18とを閉じた状態での、両膨出部29、30間の間隔は、基材2の厚みに設定されている。
そのため基材2を凹部20にセットした状態で可動型17と固定型18とを閉じることにより、前記基材2が、前記両膨出部29、30によって挟持されて厚み方向に位置合わせされる。
【0078】
これにより、基材2の平板面3と凹部20の底面23との間に、前記被覆層9aの厚みT分の隙間31が設定される。また基材2の平板面4と合わせ面24との間に、前記被覆層9bの厚みT分の隙間32が設定される。
前記膨出部29、30の跡が、ヒートスプレッダ1の通孔12の拡径部13に相当する。
【0079】
固定型18は、可動型17側の導入路21と接続され、型窩16内に、前記導入路21を通して加熱されたガスを供給するための供給路33を備えている。供給路33は、図示しないガスの供給源に接続されている。
また供給路33の途中には密閉機構34が設けられている。前記密閉機構34は、内部に前記供給路33を有する可動部材35によって構成されている。
【0080】
前記可動部材35は、固定型18に対して、図6中に太線の矢印で示すように上下動可能に配設されている。
すなわち可動部材35は、図4に示すように供給路33を導入路21と連通させて、図中に一点鎖線の矢印で示すように供給源から供給された加熱されたガスを、前記供給路33と導入路21とを通して型窩16内に供給する供給位置と、図6に示すように前記連通を遮断することで導入路21を閉鎖して前記型窩16内を密閉する密閉位置との間で上下動される。
【0081】
固定型18は、可動型17側の湯口22と接続され、型窩16内に、前記湯口22を通して溶融したアルミニウム−マグネシウム合金を、圧をかけて押し込むための押込機構36を備えている。
前記押込機構36は、図の例の場合シリンダ37とプランジャ38とを備えている。図4に示すようにプランジャ38を引き出した状態で、供給口39からシリンダ37内に溶融したアルミニウム−マグネシウム合金を供給し、次いで図4、図6中に白矢印で示すようにプランジャ38を一定の応力で押し込むことにより、前記アルミニウムマグネシウム合金を、湯口22を通して型窩16内に、圧をかけて押し込むことができる。
【0082】
前記各部を備えたアルミダイカスト金型15を用いて本発明のヒートスプレッダを製造するには、まず可動型17と固定型18とを開いて凹部20内に基材2をセットしたのち、合わせ面19、24を当接させて可動型17と固定型18とを閉じるとともに、図4、図6中に黒矢印で示すように可動型17を固定型18に対して一定の型締め力で型締めする。
【0083】
次いで密閉機構34を開く。すなわち図4に示すように供給路33を導入路21と連通させて、図中に一点鎖線の矢印で示すように供給源から供給された加熱されたガスを、前記供給路33と導入路21とを通して型窩16内に供給する。
ガスとしては、基材2を構成するアルミニウムの酸化を防止して純度を低下させないために、非酸化性または還元性のガスを用いる。前記ガスの具体例としては、例えば窒素ガスやアルゴンガス、あるいはフォーミングガス(窒素−水素混合ガス)等が挙げられる。
【0084】
ガスの温度は300℃以上、600℃以下とされる。
ガスの温度が前記範囲未満では、基材2を十分に加熱することができないため、前記基材2と被覆層9との接合強度100MPa以上の範囲を満足できない。また加熱に長時間を要し、ヒートスプレッダ1の生産性が低下するおそれもある。
また前記範囲を超える場合には、特に基材2の、直接ガス気流に曝される側の面、すなわち導入路21の出口側に近い側の面において、アルミニウム−セラミック複合材料を構成するアルミニウムが溶融したりする。
【0085】
そしてアルミニウムが溶融することで基材2が変形して、型窩16の内面との間の隙間の間隔を維持できなくなり、結果として被覆層9の厚みが小さすぎたり大きすぎたり、さらには被覆層9で被覆されていない部分を生じたりするおそれがある。
ガスの供給量は、0.1リットル/分以上であるのが好ましく、10リットル/分以下であるのが好ましい。
【0086】
ガスの供給量が前記範囲未満では、基材2を十分に加熱することができないため、前記基材2と被覆層9との接合強度100MPa以上の範囲を満足できないおそれがある。また加熱に長時間を要し、ヒートスプレッダ1の生産性が低下するおそれもある。
また前記範囲を超える場合は、限られた狭い型窩16内に多量のガスを供給することになり、安全面およびコスト面で適切でない。
【0087】
ガスを供給して加熱をする時間は0.5分間以上であるのが好ましく、2分間以下であるのが好ましい。
加熱時間が前記範囲未満では、基材2を十分に加熱することができないため、前記基材2と被覆層9との接合強度100MPa以上の範囲を満足できないおそれがある。
また前記範囲を超えてもそれ以上の加熱効果が得られない上、ヒートスプレッダ1の生産性が低下するおそれもある。
【0088】
次いで密閉機構34を閉じる。すなわち図6に示すように供給路33と導入路21との連通を遮断することで導入路21を閉鎖して型窩16内を密閉する。
そしてこの状態で押込機構36を動作させて、溶融させたアルミニウム−マグネシウム合金を、圧をかけながら前記型窩16内に押し込む。
押し込みの際の圧は、プランジャ38の圧力で表して10MPa以上であるのが好ましく、100MPa以下であるのが好ましい。
【0089】
圧力が前記範囲未満では、アルミニウム−マグネシウム合金を、型窩16内と基材2との間のごく狭い隙間に満遍なく均一に行き渡らせたり、基材2と良好に密着させたりできないおそれがある。また前記範囲を超える場合には、合わせ面19、24において大きなバリが発生するおそれがある。
このあと冷却をし、可動型17と固定型18とを開けば、製造されたヒートスプレッダ1を取り出すことができる。
【0090】
なお本発明の構成は、以上で説明した図の例には限定されない。例えばヒートスプレッダ1は、通孔12を有しない平板状でもよい。アルミダイカスト金型15の構造、および構成は、ヒートスプレッダ1の形状等に応じて任意に変更できる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意の設計変更を施すことができる。
【実施例】
【0091】
〈実施例1〉
(基材の作製)
図2に示す矩形平板状で、一辺の長さが46mmである基材2を、先に説明した粉末成形焼結法によって作製することとし、セラミック粉末としては平均粒径100μmの炭化ケイ素粉末を用意した。
【0092】
またアルミニウム粉末としては東洋アルミニウム(株)製のAC2500〔アルミニウムの純度99.7質量%、平均粒径25μm〕を用い、両粉末を混合して混合物を得た。両粉末の混合割合(質量比)は、アルミニウム粉末:セラミック粉末=30:70とした。
次いで前記混合物を、前記基材2の形状に対応した型内に充填して、厚み方向に6ton/cmの圧力で圧縮成形して圧粉体を形成したのち、前記圧粉体を窒素雰囲気下、650℃で2時間焼成して焼結させることにより、前記の立体形状を有する基材2を作製した。
【0093】
前記基材2におけるアルミニウムの含有割合は30質量%であった。
(ヒートスプレッダの製造)
前記基材2を、図4〜図6に示すアルミダイカスト金型15の凹部20内にセットして可動型17と固定型18とを閉じた。基材2の平板面3と、凹部20の底面23との隙間は0.3mmに設定した。
【0094】
次いで型締めをした状態で密閉機構34を開いて、500℃に加熱された窒素ガスを型窩16内に供給して空気を排除するとともに窒素雰囲気とし、かつ基材2を加熱した。窒素ガスの流量は1リットル/分、加熱時間は1分間とした。
次いで密閉機構34を閉じて型窩16内を密閉した状態で押込機構36を動作させて、溶融させたアルミニウム−マグネシウム合金を、圧をかけながら前記型窩16内に押し込んだ。
【0095】
アルミニウム−マグネシウム合金としてはADC6(マグネシウム含量3.3質量%)を用いた。プランジャ38の圧力は50MPaに設定した。
このあと冷却し、可動型17と固定型18とを開いて、図1に示す立体形状を有するヒートスプレッダ1を取り出した。
前記ヒートスプレッダ1を図3に示す断面でカットして観察したところ、前記断面に現れた、基材の平板面3に対応する素子搭載面10を構成する被覆層9aの厚みは0.3±0.05mmの範囲内に収まっていることが確認された。
【0096】
また前記ヒートスプレッダ1から、基材2と被覆層9aとの接合強度を測定するために、図7に示す試験片40を作製した。
図の試験片40は、厚みtが0.2mm、幅wが5mmとなるようにヒートスプレッダ1をその厚み方向にスライスするとともに幅をカットして作製し、もとの基材2である支持部41の先端面(もとの平板面3)上に、もとの被覆層9aである金属片42が接合された構造を有している。
【0097】
前記試験片40の、支持部41と金属片42との界面での、前記厚みt方向のせん断強度を、前記接合強度として、インストロン社製の5582型万能試験機を用いて測定した。
試験片40は2個作製し、それぞれについて前記測定を実施して得た測定値の平均値をもって接合強度とした。それぞれの測定値は188MPaと182MPaであり、平均値としての接合強度は185MPaであった。
【0098】
またヒートスプレッダ1の厚み方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ205W/mKであった。
さらにヒートスプレッダ1の面方向の熱膨張率を、示差熱膨張計を用いて測定したところ7.8ppmであった。
〈実施例2〜4〉
アルミニウム−マグネシウム合金としてADC3(マグネシウム含量0.5質量%、実施例2)、ADC5(マグネシウム含量6.0質量%、実施例3)、およびADC14(マグネシウム含量0.6質量%、実施例4)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてヒートスプレッダ1を製造し、試験を実施した。
【0099】
〈実施例5、比較例1、2〉
アルミニウム−マグネシウム合金としてマグネシウム含量が1.1質量%(実施例5)、0.3質量%(比較例1)、および10質量%(比較例2)であるものを用いたこと以外は実施例1と同様にしてヒートスプレッダ1を製造し、試験を実施した。
以上の実施例、比較例の結果を、実施例1の結果と併せて表1に示す。
【0100】
【表1】

表より、被覆層9を形成するアルミニウム−マグネシウム合金のマグネシウム含量は0.4質量%以上、8.5質量%以下である必要があることが判った。
〈実施例6〜8、比較例3、4〉
アルミダイカスト金型15の凹部20の寸法、膨出部29の厚み等を変更して、素子搭載面10を構成する被覆層9aの厚みを0.05mm(実施例6)、0.1mm(実施例7)、0.5mm(実施例8)、0.03mm(比較例3)、および0.7mm(比較例4)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてヒートスプレッダ1を製造し、試験を実施した。
【0101】
以上の実施例、比較例の結果を、実施例1の結果と併せて表2に示す。
【0102】
【表2】

表より、素子搭載面10を構成する被覆層9aの厚みは0.05mm以上、0.5mm以下である必要があることが判った。
〈実施例9〜11、比較例5、6〉
型窩16内に導入する窒素ガスの温度を300℃(実施例9)、400℃(実施例10)、600℃(実施例11)、280℃(比較例5)、および620℃(比較例6)に設定したこと以外は実施例1と同様にしてヒートスプレッダ1を製造し、試験を実施した。
【0103】
〈実施例12〉
型窩16内に導入する窒素ガスの温度を300℃に設定したこと以外は実施例2と同様にしてヒートスプレッダ1を製造し、試験を実施した。
以上の実施例、比較例の結果を、実施例1、2の結果と併せて表3に示す。
【0104】
【表3】

表より、型窩16内に導入する窒素ガスの温度は300℃以上、600℃以下である必要があることが判った。
〈実施例13、14〉
アルミニウム粉末とセラミック粉末の混合割合を調整して、基材2におけるアルミニウムの含有割合を25質量%(実施例13)、および28質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてヒートスプレッダ1を製造し、試験を実施した。
【0105】
以上の実施例、比較例の結果を、実施例1の結果と併せて表4に示す。
【0106】
【表4】

表より、基材2におけるアルミニウムの含有割合は20質量%以上であるのが好ましいことが判った。
【符号の説明】
【0107】
1 ヒートスプレッダ
2 基材
3、4 平板面
5〜8 側面
9、9a、9b、9c 被覆層
10 素子搭載面
11 接続面
12 通孔
13 拡径部
14 切欠
15 アルミダイカスト金型
16 型窩
17 可動型
18 固定型
19、24 合わせ面
20 凹部
21 導入路
22 湯口
23 底面
25 ピン
26 凹部
27 内側面
28、31、32 隙間
29、30 膨出部
33 供給路
34 密閉機構
35 可動部材
36 押込機構
37 シリンダ
38 プランジャ
39 供給口
40 試験片
41 支持部
42 金属片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム−セラミック複合材料からなる平板状の基材、および
前記基材の互いに背向する一対の平板面、および側面の略全面を被覆する、アルミニウム合金からなる被覆層、
を備え、全体が平板状に形成されるとともに、前記基材の一方の平板面側の面が素子搭載面とされたヒートスプレッダであって、
前記基材を形成するアルミニウム−セラミック複合材料中に含まれるアルミニウムは純度99質量%以上のアルミニウム、
前記素子搭載面を構成する被覆層は厚み0.05mm以上、0.5mm以下、
前記被覆層を形成するアルミニウム合金はマグネシウムを0.4質量%以上、8.5質量%以下の範囲で含むアルミニウム−マグネシウム合金であり、かつ
前記基材と前記被覆層との接合強度は100MPa以上であることを特徴とするヒートスプレッダ。
【請求項2】
前記素子搭載面は略矩形状に形成され、その対角線の寸法は50mm以上、500mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項3】
前記セラミックは、炭化ケイ素、窒化ケイ素、およびアルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートスプレッダ。
【請求項4】
純度99質量%以上のアルミニウムを含むアルミニウム−セラミック複合材料からなる平板状の基材の互いに背向する一対の平板面、および側面の略全面が、マグネシウムを0.4質量%以上、8.5質量%以下の範囲で含むアルミニウム−マグネシウム合金からなる被覆層で被覆されて全体が平板状に形成されるとともに、前記基材の一方の平板面側の面が素子搭載面とされて、前記素子搭載面を構成する被覆層の厚みが0.05mm以上、0.5mm以下とされたヒートスプレッダを製造するための製造方法であって、
前記ヒートスプレッダの立体形状に対応する型窩を備えるとともに、前記型窩内に非酸化性または還元性のガスを導入するための導入路と、前記導入路を閉鎖して前記型窩内を密閉するための密閉機構とを備えたアルミダイカスト金型を用い、
前記アルミダイカスト金型の型窩内に前記基材をセットした状態で、前記型窩内に、300℃以上、600℃以下に加熱した前記ガスを、前記導入路を通して導入して前記基材を加熱するとともに前記型窩内を非酸化性または還元性雰囲気とする工程と、
前記密閉機構により前記導入路を閉鎖して型窩内を密閉した状態で、溶融させた前記アルミニウム−マグネシウム合金を、圧をかけながら前記型窩内に押し込んだのち冷却することで前記被覆層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするヒートスプレッダの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−49325(P2012−49325A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189809(P2010−189809)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】