説明

フィルタ、マイクロリアクターとその製造方法、マイクロリアクター並設構造体及び分析装置

【課題】非常に短時間で分子のふるいや分子拡散が可能なフィルタと、該フィルタを用いたマイクロリアクターとその製造方法、該マイクロリアクターを用いて、試料の大量分析が可能な並設構造体及び分析装置を提供する。
【解決手段】細孔を複数備え、液体中の分子のふるいや分離に用いられるフィルタであって、前記細孔の直径をDaμmとしたとき、0.001μm≦Daμm≦100μmの関係を満たすフィルタである。該フィルタを用いたマイクロリアクターと、LIGA製法等を用いたマイクロリアクターの製造方法、該マイクロリアクターを用いて、試料の大量分析が可能な並設構造体及び分析装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタと、該フィルタを用いたマイクロリアクター及びその製造方法と、該マイクロリアクターを用いたマイクロリアクター並設構造体及び分析装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルタやフィルタを用いた分析装置は公知となっている。例えば、下記特許文献1〜3に開示されるものがある。特許文献1には、基板に形成された孔内に電気収縮性のフィルム状の高分子ゲルをその周囲を固定した状態で設け、この高分子ゲルに直流電圧を連続的に変化させて印加し、高分子ゲルを収縮させることにより、前記高分子ゲルに微量の流体を通過させる任意の微孔を形成することを特徴とするイオンまたは分子フィルタが開示されている。
特許文献2には、液液界面反応を制御するための平面マイクロチップ流路が開示されている。
特許文献3には、単一機能を達成するマイクロチップを構成し、この構成したチップの中から異なる単一機能を有するチップを複数取り出し、これらチップ同士を組合わせることにより目的とする三次元の化学反応経路を構成することを特徴とするバイオケミカルICが開示されている。
【特許文献1】特開2000−180313号公報
【特許文献2】特開2002−326963号公報
【特許文献3】特開2001−158000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1のフィルタは、微孔の孔径に応じたイオンや分子を通過させることができ、試料液体中のイオンや分子を容易に、かつ、従来に比べ短時間でふるいに掛けることができるが、それでも微量の流体しか送液できない。
また、特許文献2のマイクロチップでは、反応・検出の単位操作ステップ毎に平面流路が必要となり、このマイクロチップを用いた分析装置において一定以上に高集積化する事は困難である。さらに、このマイクロチップは、平面上に配列された流路を有するものであるため、検出感度や速度の向上の点においても一定以上のものにすることは困難である。
また、特許文献3のバイオケミカルICでは、1つの反応系の高さが6mm以上、幅が5mm程度と大きく、この大きさではマイクロリットルレベルの微量分析能力が求められる環境分析への対応は困難である。
【0004】
そこで、本発明の目的は、流体を速く送液でき、かつ、分子のふるいや分子拡散が可能なフィルタと、該フィルタを用いたマイクロリアクターとその製造方法、該マイクロリアクターを用いたマイクロリアクター並設構造体及び試料液体の大量分析が可能な分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
本発明のフィルタは、細孔を複数備え、液体中の分子のふるいや分離に用いられるフィルタであって、前記細孔の直径をDaμmとしたとき、0.001μm≦Daμm≦100μmの関係を満たすものである。
上記構成により、フィルタ上表面に液体が存在しても、一定の力(圧力等)が加えられない限り、液体の表面張力に対して細孔の大きさを選択する事で液体の表面張力により細孔を通り抜けることを防止することができる。なお、細孔の直径Daは、細孔の長さよりも小さいことが好ましい。
【0006】
本発明のフィルタは、前記分子の拡散速度をVmμm/秒、前記液体のフィルタ通過時間をTf秒としたとき、Da≦Tf・Vmの関係を満たすことが好ましい。
上記構成により、分子拡散による分子同士の衝突頻度を向上できる。その結果として、例えば、液体試薬を用いた場合、従来のものに比べ、試薬の反応時間を大幅に短縮することができる。
【0007】
本発明のフィルタは、ハニカム形状に並列してなる細孔を複数備え、液体中の分子のふるいや分離に用いられるフィルタであって、前記細孔の一辺をDbμmとしたとき、0.0005μm≦Dbμm≦50μmの関係を満たすものである。
上記構成により、フィルタ上表面に液体が存在しても、一定の力(圧力等)が加えられない限り、液体の表面張力に対して細孔の大きさを選択する事で液体の表面張力により細孔を通り抜けることを防止することができる。なお、Dbは、細孔の長さよりも小さいことが好ましい。
【0008】
本発明のフィルタは、前記分子の拡散速度をVmμm/秒、前記液体のフィルタ通過時間をTf秒としたとき、2Db≦Tf・Vmの関係を満たすことが好ましい。
上記構成により、分子拡散による分子同士の衝突頻度を向上できる。その結果として、例えば、液体試薬を用いた場合、従来のものに比べ、試薬の反応時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
本発明のフィルタは、絶縁材、X線リソグラフィー法で加工された金属、絶縁材の順、絶縁材、ヒーター線、絶縁材の順、絶縁材、X線リソグラフィー法で加工された金属、絶縁材、X線リソグラフィー法で加工された金属、絶縁材の順、又は、絶縁材、X線リソグラフィー法で加工された金属、ヒーター線を絶縁体で挟み込んだヒーター層、X線リソグラフィー法で加工された金属、絶縁材の順に積層された積層体からなるものであることが好ましい。
絶縁材、金属、絶縁材の積層体とすることにより、中間の金属材のみに電圧印可することができ、金属材に電極の機能を付加することが可能となる。また、金属の層を2つ有するフィルタ上部に電解質の流体が存在する場合、金属の層の間に電圧を印加すれば、電気泳動又は電気浸透流により流体中の特定のイオンのみをフィルタ下部に送り出すことができる。さらに、ヒーター機能を有するフィルタであれば、フィルタ内部を流れる流体を加熱して、常温以上で起こる化学反応を誘起することもできる。
【0010】
本発明のマイクロリアクターは、筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って複数の反応槽を形成する少なくとも1つの上記フィルタのいずれかとを備えるマイクロリアクターであって、前記複数の反応槽のうち最初に液体試料が投入される第1反応槽内を加圧する加圧装置を前記筒状の槽の外部にさらに備えるものであることが好ましい。
上記構成により、上記フィルタを用いているので、液体の表面張力に対して細孔の大きさを選択する事で試薬等の液体の表面張力により液体を槽内に保持することができる。そのため、加圧装置によって表面張力を無効にしてしまう圧力まで反応槽内が加圧されれば、試薬等の液体が細孔を透過して下方の別の反応槽内に送液される。したがって、内部にバルブやポンプ等が必要なく、構造が簡便で微小な多層構造体を提供できる。なお、このとき、分子拡散による分子同士の衝突頻度を向上できるので、以下の効果をも奏する。まず、試料が少なくてすむので、従来のリアクターに比べ、反応所要時間を飛躍的に短縮できる。また、試料を検査するのに用いる場合、検査試薬の量が少なくてすむため、コストを低減できる。
【0011】
本発明のマイクロリアクターは、筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って第1、第2及び第3反応槽を形成する各槽の仕切りに設けられた上記フィルタのいずれかとを備えるマイクロリアクターであって、液体試料が投入される前記第1反応槽内と試薬を反応させる前記第2反応槽と蛍光・吸光分析を行なう前記第3反応槽の検出槽の各々に加圧装置を設けて、前記第1反応槽内から前記第2反応槽へ、前記第2反応槽から前記第3反応槽の検出槽へと液体試料を任意に移動させるものであることが好ましい。
上記構成により、上記フィルタを用いているので、液体の表面張力に対して細孔の大きさを選択する事で試薬等の液体の表面張力により液体を槽内に保持することができる。そのため、加圧装置によって表面張力を無効にしてしまう圧力まで反応槽内が加圧されれば、試薬等の液体が細孔を透過して下方の別の反応槽内に送液される。したがって、内部にバルブやポンプ等が必要なく、構造が簡便で微小な多層構造体を提供できる。なお、このとき、分子拡散による分子同士の衝突頻度を向上できるので、以下の効果をも奏する。まず、試料が少なくてすむので、従来のリアクターに比べ、反応所要時間を飛躍的に短縮できる。また、試料を検査するのに用いる場合、検査試薬の量が少なくてすむため、コストを低減できる。
【0012】
本発明のマイクロリアクターは、筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って複数の反応槽を形成する少なくとも1つの上記の積層体からなるフィルタと、前記筒状の槽の外部に設けられた反応槽内を加圧する加圧装置とを備えるものである。
絶縁材、金属、絶縁材の積層体とすることにより、中間の金属材のみに電圧印可することができ、金属材に電極の機能を付加することが可能となる。また、金属の層を2つ有するフィルタ上部に電解質の流体が存在する場合、金属の層の間に電圧を印加すれば、電気泳動又は電気浸透流により流体中の特定のイオンのみをフィルタ下部に送り出すことができる。さらに、ヒーター機能を有するフィルタによって、加圧装置によりフィルタ内部に流される流体を加熱して、常温以上で起こる化学反応を誘起することもできる。
【0013】
本発明のマイクロリアクターは、筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って複数の反応槽を形成する少なくとも1つの上記の積層体からなるフィルタを備えるマイクロリアクターであって、試料が投入される第1反応槽内と試薬を反応させる第2反応槽と蛍光・吸光分析を行なう第3の槽の検出槽の各々に加圧装置を設けて、第1反応槽内から第2反応槽へ第2反応槽から第3の槽の検出槽へと検体試料液体を任意に移動させるものである。
このとき、液体の表面張力とフィルタの細孔の大きさを選択して組み合わせする必要は無くなり任意の表面張力の液体とフィルタの細孔の大きさの組み合わせが可能と成る。
絶縁材、金属、絶縁材の積層体とすることにより、中間の金属材のみに電圧印可することができ、金属材に電極の機能を付加することが可能となる。また、金属の層を2つ有するフィルタ上部に電解質の流体が存在する場合、金属の層の間に電圧を印加すれば、電気泳動又は電気浸透流により流体中の特定のイオンのみをフィルタ下部に送り出すことができる。さらに、フィルタの孔が微小であるため、フィルタの比表面積は大きいものであるため、フィルタの熱レスポンスが高くなるので、フィルタにヒーターを備えさせて所定温度まで加温すれば、加圧装置によって送り出される流体のフィルタ通過時間が短くても反応を集結させることができる。
【0014】
本発明のマイクロリアクターは、筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って複数の反応槽を形成する少なくとも1つのメソポーラス体とを備えるマイクロリアクターであって、前記複数の反応槽のうち最初に液体試料が投入される第1反応槽内を加圧する加圧装置を前記筒状の槽の外部にさらに備えるものである。
上記構成により、上記メソポーラス体を用いているので、液体の表面張力に対して上記メソポーラス体の細孔の大きさを選択する事で試薬等の液体の表面張力により液体を槽内に保持することができる。そのため、加圧装置によって表面張力を無効にしてしまう圧力まで反応槽内が加圧されれば、試薬等の液体が細孔を透過して下方の別の反応槽内に送液される。したがって、内部にバルブやポンプ等が必要なく、構造が簡便で微小な多層構造体を提供できる。なお、このとき、分子拡散による分子同士の衝突頻度を向上できるので、以下の効果をも奏する。まず、試料が少なくてすむので、従来のリアクターに比べ、反応所要時間を飛躍的に短縮できる。また、試料を検査するのに用いる場合、検査試薬の量が少なくてすむため、コストを低減できる。
【0015】
本発明のマイクロリアクターは、筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って第1、第2及び第3反応槽を形成する少なくとも1つのメソポーラス体とを備えるマイクロリアクターであって、試料が投入される前記第1反応槽内と試薬を反応させる前記第2反応槽と蛍光・吸光分析を行なう前記第3反応槽の検出槽の各々に加圧装置を設けて、前記第1反応槽内から前記第2反応槽へ、前記第2反応槽から前記第3反応槽の検出槽へと液体試料を任意に移動させるものである。このとき、液体の表面張力とメソポーラス体の細孔の大きさを選択して組み合わせする必要は無くなり、任意の表面張力の液体とメソポーラス体の細孔の大きさの組み合わせが可能と成る。なお、このとき、分子拡散による分子同士の衝突頻度を向上できるので、以下の効果をも奏する。まず、試料が少なくてすむので、従来のリアクターに比べ、反応所要時間を飛躍的に短縮できる。また、試料を検査するのに用いる場合、検査試薬の量が少なくてすむため、コストを低減できる。
【0016】
本発明のマイクロリアクターは、前記フィルタの温度を検出する温度センサをさらに備えるものであることが好ましい。
上記構成により、フィルタの温度を測定しながら所望する温度まで加温することが可能となる。
【0017】
本発明のマイクロリアクターは、前記複数の反応槽と前記フィルタとの接合部分に、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、又は金属薄膜を備えるものであることが好ましい。
上記構成により、反応槽とフィルタとの接合を強固にするため、機械的強度に優れたマイクロリアクターとすることができる。
【0018】
本発明のマイクロリアクターは、前記メソポーラス体がヒーターを備えるものであることが好ましい。また、前記メソポーラス体の温度を検出する温度センサをさらに備えるものであることが好ましい。
メソポーラス体の孔が微小であるため、メソポーラス体の比表面積は大きいものである。そのため、メソポーラス体の熱レスポンスが高くなるので、メソポーラス体にヒーターを備えさせて所定温度まで加温すれば、メソポーラス体を通過する時間が短くても反応を集結させることができる。
【0019】
本発明のマイクロリアクターは、前記複数の反応槽それぞれの内部圧力を検出する圧力センサをさらに備えるものであることが好ましい。
上記構成により、複数の反応槽内の圧力を測定しながら、所望する圧力まで加圧することが可能となる。
【0020】
本発明のマイクロリアクターは、前記第1反応槽の下流側に形成された反応槽の少なくとも1つに、表面に所定の抗体又は酵素が固定された多数の微粒子が封入されているものであることが好ましい。
上記構成の表面に所定の抗体又は酵素が固定された微粒子により、生化学反応の効率と選択性とを向上させることができる。
【0021】
本発明のマイクロリアクターは、前記反応槽内を攪拌する攪拌型アクチュエーターをさらに備えるものであることが好ましい。
上記構成により、例えば、試料液体、試薬、及び、抗体又は酵素が固定された多数の微粒子を均一に分散できるので、部分的な試薬や微粒子の偏在を防止することができる。
【0022】
本発明のマイクロリアクターは、前記筒状の槽の外部に設けられ、所定の前記反応槽とそれぞれ管を介して連通している複数の液体貯溜槽と、それぞれの前記液体貯溜槽から所定の前記反応槽内部に液体を送液するポンプとをさらに備えるものであることが好ましい。
上記構成により、精度よく所定量の液体を送液できる。
【0023】
本発明のマイクロリアクターは、前記フィルタが前記筒状の槽に複数設けられている際、前記フィルタ間に電位を印加するための導線が外部電源から前記フィルタそれぞれに設けられているものであることが好ましい。
上記構成により、電気泳動を行うことができるので、反応を促進させたり、目的物のみを下流の反応槽へ流下させたりすることが可能となる。
【0024】
本発明のマイクロリアクター並設構造体は、複数の上記のいずれかに記載のマイクロリアクターが、前記筒状の槽の中心軸を平行にして並設されるものであることが好ましい。
上記構成により、一度に様々な試料の分析が可能となる。
【0025】
本発明の分析装置は、複数の上記のいずれかに記載のマイクロリアクターが、前記筒状の槽の中心軸を平行にして、円盤に円状、径の異なる複数の円状(同心円上)、又は螺旋状に並設され、前記円盤が中心を軸として回転自在であり、各マイクロリアクターで反応が終了した試料に対し、前記円盤の任意の位置で、蛍光分析及び吸光分析が可能なものであることが好ましい。また、発光分光(赤外・可視・紫外・X線など)、ラマン分光、円偏光二色性・旋光分散、光音響分光、磁気共鳴、近接場分光、非線形レーザー分光、X線分光、光電子分光、光イオン化分光、質量分析、表面プラズモン共鳴などの他の機器分析も適宜装置に組み込めば可能である。
上記構成により、一度に様々な試料の分析(多検体分析)が可能となるのみならず、一度に2種類の分析方法(多項目分析)の実施が可能となるので、飛躍的に分析速度を向上できる装置を提供できる。
【0026】
本発明のマイクロリアクターの製造方法は、精密機械加工、X線、紫外線又は電子線を用いた電磁波加工、若しくは成形加工によって筒状の槽を作製する工程と、前記精密機械加工、X線、紫外光又は電子線を用いた前記電磁波加工、若しくは前記成形加工によって上記フィルタを作製する工程と、筒状の槽と上記フィルタとを熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、又は金属薄膜によって接合する工程とを含むものであることが好ましい。
上記構成により、液体の表面張力に対して細孔の大きさを選択する事でフィルタ上表面に液体が存在しても、一定の力(圧力等)が加えられない限り、表面張力により細孔を通り抜けることを防止することができ、分子拡散による分子同士の衝突頻度を向上できるフィルタを有するマイクロリアクターを提供できる。したがって、例えば、液体試薬を用いた場合、従来のものに比べ、試薬の反応時間を大幅に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、図を参照しながら、本発明の実施形態に係るフィルタ及びマイクロリアクターについて説明する。まず、マイクロリアクターの全体構成を述べ、その中でフィルタについても説明していくことにする。図1は、本発明の実施形態に係るフィルタを用いたマイクロリアクターの模式構成図である。
【0028】
マイクロリアクター1は、筒状の槽2と、槽2内部を径方向に仕切って第1反応槽3、第2反応槽4及び第3反応槽5を形成する各槽の仕切りに設けられたフィルタ6a、6b(図1における斜線部)と、液体試料が投入される第1反応槽3内と試薬を反応させる第2反応槽4と蛍光・吸光分析を行なう第3反応槽5(検出槽)の各々に接続して設けられた加圧装置7a、7b、7c及び圧力センサ8a、8b、8cと、圧力センサ8a、8b、8cからの信号を受けて加圧装置7a、7b、7cを制御する圧力制御装置9とを備えるものである。さらに、マイクロリアクター1は、試料液体を一時的に溜めて第1反応槽3に適時送液可能な試料液体貯溜槽10と、試薬A、Bを一時的に溜めて第1反応槽3に適時送液可能な試薬貯溜槽11a、11bと、試薬C、Dを一時的に溜めて第2反応槽4に適時送液可能な試薬貯溜槽12a、12bと、試薬E、Fを一時的に溜めて第3反応槽5に適時送液可能な試薬貯溜槽13a、13bと、各槽で不要となった廃液を溜める廃液貯溜槽14とを備えてなる。
【0029】
第1反応槽3は、試料液体貯溜槽10と管15を介して接続されている。また、試薬貯溜槽11a、11bとも管16a、16bを介して接続されている。なお、図示しないが、試料液体貯溜槽10や試薬貯溜槽11a、11b内にポンプを設けて、所定量の送液ができるように構成してもよい。以下で説明する各試薬貯溜槽においても同様である。このような構成を有するため、第1反応槽3は、試薬を混合したり、複数の試薬を反応させて別の試薬を調合したりできるものである。以下で説明する第2反応槽4及び第3反応槽5でも同様である。
【0030】
第2反応槽4は、試薬貯溜槽12a、12bと管17a、17bを介して接続されている。この第2反応槽4は、分析したい検体を反応させたり吸着させたりするものであり、第2反応槽4の中には、表面に所定の抗体又は酵素が固定された多数の微粒子20が封入されている。なお、抗体としては、アルキルフェノール(alkylphenol)、アルキルフェノールエトキシレート(alkylphenol ethoxylate)、ビスフェノールA(bisphenol A)、エストラジオール(estradiol)、有機スズなどの内分泌攪乱物質に対する抗体、PCB、ダイオキシン等の環境汚染物質に対する抗体、CEA、AFP等の腫瘍マーカーに対する抗体、HBV、HCV、HIV等の抗ウイルス抗体、臨床検査における疾患特異的マーカーに対する抗体、抗細菌抗体(ヘリコバクターピロリ、レジオネラ等に対する抗体)および、ポストゲノム解析で明らかにされた各種新規生体物質に対する抗体等が挙げられる。さらに、抗体が固定される微粒子としては、ポリスチレンラテックスやゼラチン粒子等が挙げられる。また、酵素としては、有用物質生産(アミノ酸、ヌクレオチド、アクリルアミドなどのアミド化合物、ステロイド、フェノール化合物、アルカロイド、色素、油脂、モノクローナル抗体の生産など)、医薬品(抗生物質、ホルモン類、抗がん剤、インターロイキン、エリスロポエチン、L−ドーパ、ビタミンなどの生理活性物質の生産)、各種分析(臨床分析、環境分析など)、環境保全(フェノール、シアン、内分泌攪乱物質などの分解)、およびエネルギ生成(アルコール、メタン、水素生産など)に関係する各種酵素が挙げられる。さらに、酵素が固定される微粒子としては、p−アミノベンジルセルロース等の多糖類誘導体、ポリアクリルアミド誘導体、多孔質ガラスのアミノシラン誘導体、DEAE−セルロース、TEAE−セルロース、DEAE−セファデックス、CM−セファデックス、DEAE−セファロース等に代表されるイオン交換基を持つ担体などが挙げられる。
【0031】
第3反応槽5は、試薬貯溜槽13a、13bと管18a、18bを介して接続されている。この第3反応槽5は、検出槽であり、第2反応槽4で反応等させた試料液体を貯溜し、必要に応じてさらに反応を行った上で、下部からレーザー光を受けての蛍光・吸光分析が可能な部分である。
【0032】
なお、図示しないが、第1反応槽3、第2反応槽4、第3反応槽5は、反応槽内を攪拌するための攪拌型アクチュエーターを備えるものであってもよい。
【0033】
フィルタ6a、6bは、図2に示す走査型電子顕微鏡で撮った写真のように、複数の細孔がハニカム形状に並列してなるものであり、細孔の一辺をDbμmとしたとき、0.0005μm≦Dbμm≦50μmの関係を満たすものである。また、分子の拡散速度をVmμm/秒、液体のフィルタ通過時間をTf秒としたとき、2Db≦Tf・Vmの関係を満たすものであることが好ましい。
なお、細孔の形状はハニカム形状に限られるものではなく、ハニカム形状のものと同様の効果を得ることができるフィルタであれば、断面が円形、楕円形、三角形、四角形等でもよい。例えば、円形であれば、直径をDaとしたとき、0.001μm≦Daμm≦100μmの関係を満たすものであればよい。また、分子の拡散速度をVmμm/秒、液体のフィルタ通過時間をTf秒としたとき、Da≦Tf・Vmの関係を満たすものであることが好ましい。
【0034】
また、フィルタ6aは、第1反応槽3及び第2反応槽4との接合部において、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂又は金属薄膜によってシールされている。フィルタ6bにおいても同様に、第2反応槽4及び第3反応槽5との接合部において、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、又は金属薄膜によってシールされている。
【0035】
フィルタ6a、6bは、(1)絶縁材、後述するX線リソグラフィー法を用いるLIGA(Lithographite Galvanoformung and Abformung)プロセスで加工された金属、絶縁材の順、(2)絶縁材、孔と重ならないように配線され、外部電源から導かれたヒーター線、絶縁材の順、(3)絶縁材、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属、絶縁材、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属、絶縁材の順、又は、(4)図6に示すように、絶縁材23、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属電極24、ヒーター層25、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属電極24、絶縁材23の順、に積層された積層体のいずれかからなる。ここで用いられる金属としては、銅、アルミニウム、白金、金等が挙げられる。絶縁材としては、電気・熱を絶縁するガラス、ポリジメチルシロキサン、アクリル樹脂等が挙げられる。ヒーター線としては、チタン、金、白金、タングステン、モリブデン等が挙げられる。
なお、ヒーターは、孔と重ならないように配線され、外部電源から導かれたヒーター線を絶縁体23で挟み込んだものとしてもよい。また、ヒーター線の代わりに中空のパイプを用い、その中に熱媒体を流すことによって、加温・冷却も可能となる。
【0036】
また、フィルタ6a、6bの温度を検出する温度センサが、フィルタ6a、6bの表面に設けられている。この温度センサは、一例として、チタンなどの金属線をフィルタ6a、6bの表面に形成もしくは全面に接触させて接合することによって形成できる。この金属線の抵抗変化の温度特性から温度を見積もることができる。
【0037】
上述したヒーター及び温度センサは、圧力制御装置9に接続され、温度センサの信号を受けてヒーターの加熱量が制御されるようになっている。
【0038】
さらに、図示しないが、フィルタ6a、6bそれぞれが上述した金属の層を2層有するものである場合には、フィルタ6a、6bそれぞれに電位を印加して電気泳動を行う又は電気浸透流を作り出すための導線が、外部電源からフィルタ6a、6bのそれぞれに設けられている。
【0039】
なお、フィルタ6a、6bの代わりに、シリカ多孔体等のメソポーラス体をフィルタとして用いてもよい。このメソポーラス体においても、メソポーラス体を加熱するヒーターやメソポーラス体の温度を検出する温度センサを備えるものであることが好ましい。加熱ヒーターは、一例として、メソポーラス体フィルタ上面にタングステン等の高抵抗発熱体薄膜をメッキ法やCVD法等で貼り付け、電流を制御して通電することで所定の温度に調整する。なお、UVフォトプロセスを用いて、金や白金、チタンの厚めの蒸着薄膜をパターニングしてヒーターパターンとすることとしてもよい。温度センサは、一例として、チタンなどの金属線をフィルタ6a、6bの表面に形成もしくは全面に接触させて接合することによって形成できる。この金属線の抵抗変化の温度特性から温度を見積もることができる。
【0040】
加圧装置7a、7b、7cはそれぞれ、第1反応槽3、第2反応槽4、第3反応槽5内を加圧するものである。加圧装置7a、7bは、圧力を負荷することにより、下流側にある反応槽にフィルタを通過させて送液したり、廃液貯溜槽14に廃液したりするのに使用され、加圧装置7cは、廃液貯溜槽14に廃液することにのみ使用される。
【0041】
廃液貯溜槽14は、管19を介して第1反応槽3、第2反応槽4、第3反応槽5と接続されていて、各反応槽の廃液を回収できるようになっている。なお、管19と第1反応槽3、第2反応槽4、第3反応槽5との接続部付近には図示しない自動弁が設けられており、下流側の反応槽に試料液体を送液中は閉じられている。この自動弁は、圧力制御装置9に接続され、制御できるようになっている。
【0042】
次に、マイクロリアクター1の動作について説明する。まず、第1反応槽3に、試料液体貯溜槽10から試料液体、試薬貯溜槽13a、13bからそれぞれ試薬A、Bを投入し、攪拌型アクチュエーターを用いて混合する。このとき、試薬A、Bが混合されると反応するものであるとき、試薬貯溜槽13a、13bからそれぞれ試薬A、Bのみを投入し、攪拌型アクチュエーターで混合させながら、反応させ、その後試料液体を投入することとしてもよい。
次に、圧力制御装置9によって、圧力センサ8aで測定した圧力値をもとに、第1反応槽3内が所定圧力となるよう自動的に加圧装置7aを制御し、第1反応槽3内の試薬が混合された試料液体を第2反応槽4内に送液する。ここで、フィルタ6aを通過できなかった液体は、廃液貯溜槽14へと送液・回収される。
第2反応槽4内に送液された試料液体は、第2反応槽4内の微粒子20とともに攪拌型アクチュエーターで攪拌され、微粒子20の表面に存在する抗体又は酵素との反応が促進される。このとき、必要に応じて試薬C、Dをさらに投入してもよい。
そして、圧力制御装置9によって、圧力センサ8bで測定した圧力値をもとに、第2反応槽4内が所定圧力となるよう自動的に加圧装置7bを制御し、抗体又は酵素と反応した試料液体を第3反応槽5内に送液する。ここで、フィルタ6bを通過できなかった液体は、廃液貯溜槽14へと送液・回収される。
第3反応槽5内に送液された試料液体に、必要に応じて試薬E、Fを投入した後、レーザーを照射し、蛍光分析又は吸光分析を行う。分析後、試料液体は、廃液貯溜槽14へと送液・回収される。
【0043】
上記実施形態のマイクロリアクターによれば、化学的操作が同一の反応容器内で短時間に精度よく行うことができるので、試料分析工程の短縮化が可能となる。
【0044】
次に、マイクロリアクター1の本体(槽2とフィルタ6a、6b)の製造方法について説明する。マイクロリアクター1の本体は、槽2の部分と、フィルタ6a、6bとが別々に作製される。また、筒状の槽2は、さらに第1反応槽3の円筒部分と、第2反応槽4の円筒部分と、第3反応槽5の円筒部分とに分けて作製される。その場合、各反応槽とフィルタ6a、6bとは、後述する精密機械加工、X線、紫外線又は電子線を用いた電磁波加工、若しくは成形加工によって作製される。これら作製されたものを用いて、第1反応槽3の部分と第2反応槽4の部分との間にフィルタ6aが挟まれるように、また、第2反応槽4の部分と第3反応槽5の部分との間にフィルタ6bが挟まれるように、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂によって接合、又は、金属表面を活性化処理することによって、金属表面の原子の未結合手が表面に露出するので、この未結合手と接着しようとする各槽を構成する原子が結合するという表面活性化接合がなされ、マイクロリアクター1が形成される。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品などが挙げられる。なお、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などどれでもよく、硬化するものであればよい。以下に、上述の精密機械加工、X線、紫外線又は電子線を用いた電磁波加工、成形加工について具体的に説明する。
【0045】
精密機械加工は、種にNC精密機械加工(数値制御精密機械加工)を用いて、コンピュータによって数値制御された切削刃物を用いて所望の円筒形状(槽2の円筒部分)に加工する。また、槽2の上下の面の蓋部分も別に加工し、その後にそれぞれを接合する。接合には、上述の熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用いる。
【0046】
フィルタ6a、6bの加工は、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスにより行う。図4は、フィルタを作成するLIGAプロセスの第一工程に必要なX線マスクの製造工程の断面模式図を示す。X線透過部分の形状が所望形状であるX線マスクの作製手順を各工程別に図示している。以下、具体的に説明する。
まず、銅基板41に感光剤42(フォトレジスト)を塗布する(図4(a))。
次に、感光剤42の所望位置を感光させるために、紫外線を所望部分で吸収する紫外線リソグラフィーパターンマスク43を紫外線(UV)照射側に配置する。なお、図示しないが、本発明においては、紫外線リソグラフィーパターンマスク43の紫外線の透過部分が、細孔の直径をDaμmとしたとき、0.001μm≦Daμm≦100μmの円形状、又は、細孔の一辺をDbμmとしたとき、0.0005μm≦Dbμm≦50μmのハニカム形状に形成するものである。そして、紫外線を紫外線リソグラフィーパターンマスク43側から銅基板41側に照射し、感光剤42を感光させる(図4(b))。
そして、紫外線照射後の銅基板41及び感光剤42をリソグラフィー用現像液に浸漬することによって、感光剤42の感光部位を溶解させ、凹形状部分44aを有するフォトレジストパターン44を作製する(図4(c))。なお、リソグラフィー用現像液としては、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)系、HMDS(1,1,1,3,3,3−hexamethyldisilazane)系、無機系のもの等が挙げられる。
次に、フォトレジストパターン44の凹形状部分44aのみを例えば金でメッキ処理し、X線吸収体44bを設ける(図4(d))。
次に、フォトレジストパターン44に残っていた感光剤42を有機溶媒等で除去する(図4(e))。その後、X線吸収体44bを被覆するように基板41の上にポリイミド等からなるX線透過材層45を形成する(図4(f))。
そして、基板41をエッチングで除去することにより、細孔の直径をDaμmとしたとき、0.001μm≦Daμm≦100μmの円形状、又は、細孔の一辺をDbμmとしたとき、0.0005μm≦Dbμm≦50μmのハニカム形状のX線吸収体44bを有するX線マスク46が完成する(図4(g))。
【0047】
次に、図5に、X線マスク46を使ってLIGAプロセスでフィルタ作製用の金型を作り、この金型を使ってエンボス成形加工法で製造する工程の断面模式図を示す。以下、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスを具体的に説明する。
まず、X線マスク46を介して放射光(X線と同様の波長を有する)を樹脂層51(感光性樹脂であるポリメタアクリル酸メチル)に露光する(図5(a))。
次に、例えば、現像液であるジエチレングリコール、モルフォリン、エタノールアミン、純水の混合液で、感光された部分を溶解させることで、所望する形状51a(細孔の直径をDaμmとしたとき、0.001μm≦Daμm≦100μmの円形状、又は、細孔の一辺をDbμmとしたとき、0.0005μm≦Dbμm≦50μmのハニカム形状)を有する樹脂51を成形(現像)する(図5(b))。
この成形された樹脂層51の一端の面に金属基板52を貼り付ける(図5(c))。
その後、図5(c)の形成物を電鋳し、金属を所定量堆積させ、金属製の所望する形状を有する金属微細構造金型53を形成する(図5(d))。
次に、金属基板52をエッチングで除去し、感光されなかった部分の樹脂層51をアセトン等の有機溶媒で溶解させることにより、金属微細構造金型53が完成する(図5(e))。
そして、この金属微細構造金型53を用いて樹脂層54のエンボス成形加工を行い(図5(f)、(g))、所望する大きさ、形状(細孔の直径をDaμmとしたとき、0.001μm≦Daμm≦100μmの円形状、又は、細孔の一辺をDbμmとしたとき、0.0005μm≦Dbμm≦50μmのハニカム形状)のフィルタ成形品55を量産する(図5(h))。
【0048】
紫外線又は電磁線を用いた加工では、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂に、紫外線又は電磁線の照射方向等をコンピュータ制御で調整することで、所望する大きさ、形状に硬化させた成形品を作製することができる。
【0049】
成形加工では、常温の金型に200度から500度に加熱溶解した樹脂を注入して凝固させる射出成形方法や、常温の樹脂基板に100度から400度に加熱した金型を一定圧力で押し込んで成形するホットエンボッシング法等を用いる。絶縁材はフィルタの反転パターンを有する金属微細構造金型を用いて成形し、孔を開ける。このようにすることにより、金属微細構造金型と同じ孔の位置・形状の絶縁材の積層体を形成することができる。一方、金属電極となるフィルタと絶縁材からなるフィルタとの積層体は孔の位置・形状が同じであるため、アライメント用の穴や、アライメントマークを付与し、これを利用することで、積層してもお互いの孔の位置がずれることはない。なお、絶縁材からなるフィルタの上面にメッキ法やCVD法等で金属薄膜を形成して電極を形成してもよい。また、フィルタのヒーターも同様に、絶縁物からなるフィルタの上面にメッキ法やCVD法等でタングステン等の高抵抗金属薄膜を形成することで、板状ヒーターを形成できるので、この場合は、フィルタの孔の位置合わせや形状の微調整は必要ない。
【0050】
このような加工方法を用いることにより、細孔がハニカム形状である場合の1辺が0.0005μm≦Dbμm≦50μm、細孔が円形状である場合の直径が0.001μm≦Daμm≦100μmのフィルタ6a、6bと、大きさが15mm×15mm×50mm以下の微細構造体であるマイクロリアクター1の本体とを作製することができる。
【0051】
次に、マイクロリアクター1の製造方法について説明する。
上述したマイクロリアクター1の本体の各槽に各管の取付けを行う。なお、上述したマイクロリアクター1の本体の各槽の円筒部分を作製する際に、あらかじめ送液用、加圧用、センサ用の配管の一部分を作り込んでおき、槽外部の各配管と連通させる。
【0052】
このようにして作製されたマイクロリアクター1であれば、筒状の槽2の中心軸を平行にして平面上に複数並設して集積化した図3に示すようなマイクロリアクター並設構造体の実現も可能となり、一度に多数の試料液体を分析することも可能となる。
【0053】
特に、図3に示す模式構成図のように、各反応検出槽が円盤30に同心円状または螺旋状に並設され、円盤30が中心を軸として回転自在な装置(装置全体は図示せず)を作製すれば、各マイクロリアクター1で反応が終了した試料に対し、円盤30の任意の位置で、円盤の下部または上部から光を当てての蛍光分析及び吸光分析が可能となり、一度に様々な試料の分析(多検体分析)が可能となるのみならず、様々な機器を取り付けることにより、一度に2種類以上の項目の同時分析すなわち発光分光(赤外・可視・紫外・X線など)、ラマン分光、円偏光二色性・旋光分散、光音響分光、磁気共鳴、近接場分光、非線形レーザー分光、X線分光、光電子分光、光イオン化分光、質量分析、表面プラズモン共鳴などの多項目分析の実施が可能となるので、飛躍的に分析速度を向上できる。なお、例えば、試料の位置をパルス的に回転させて、短時間静止させ、試料分析を行うとともに、蛍光・吸光分析位置に対して相対的位置関係が明らかな部位において、別途、レーザー光等を用いた試料の識別を行い、常に分析位置にある試料を照合させることとしてもよい。このとき、各分析装置や位置識別装置は、各マイクロリアクター1の配列に応じて移動できるように設けられている。
【0054】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、アミノ酸等や抗体等の有用な物質の生産や、食品工業、医療、医薬品、分析、分離・精製、環境保全、エネルギ生成等の分野においての利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る流体フィルタを用いたマイクロリアクターの模式構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る流体フィルタを示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の実施形態に係る多検体・多項目同時分析システムの模式構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフィルタをLIGAプロセスで成形するための金型を作成するのに用いるX線マスクの作製工程を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係るフィルタを図4のX線マスクを用いたLIGAプロセスで作製する工程を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る積層体からなるフィルタの一例を示す分解図である。
【符号の説明】
【0057】
1 マイクロリアクター
2 槽
3、4、5 反応槽
6a、6b フィルタ
7a、7b、7c 加圧装置
8a、8b、8c 圧力センサ
9 圧力制御装置
10 試料液体貯溜槽
11a、12a、13a 試薬貯溜槽
14 廃液貯溜槽
15、16a、16b、16c、19 管
20 微粒子
23 絶縁材(フィルタ)
24 金属電極(フィルタ)
25 ヒーター(フィルタ)
30 円盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を複数備え、液体中の分子のふるいや分離に用いられるフィルタであって、前記細孔の直径をDaμmとしたとき、0.001μm≦Daμm≦100μmの関係を満たすフィルタ。
【請求項2】
前記分子の拡散速度をVmμm/秒、前記液体のフィルタ通過時間をTf秒としたとき、Da≦Tf・Vmの関係を満たす請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
ハニカム形状に並列してなる細孔を複数備え、液体中の分子のふるいや分離に用いられるフィルタであって、前記細孔の一辺をDbμmとしたとき、0.0005μm≦Dbμm≦50μmの関係を満たすフィルタ。
【請求項4】
前記分子の拡散速度をVmμm/秒、前記液体のフィルタ通過時間をTf秒としたとき、2Db≦Tf・Vmの関係を満たす請求項3に記載のフィルタ。
【請求項5】
絶縁材、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属、絶縁材の順、絶縁材、ヒーター線、絶縁材の順、絶縁材、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属、絶縁材、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属、絶縁材の順、又は、絶縁材、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属、ヒーター線を絶縁体で挟み込んだヒーター層、X線リソグラフィー法を用いるLIGAプロセスで加工された金属、絶縁材の順に積層された積層体からなる請求項1〜4のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項6】
筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って複数の反応槽を形成する少なくとも1つの請求項1〜5のいずれかに記載のフィルタとを備えるマイクロリアクターであって、
前記複数の反応槽を加圧する加圧装置を前記筒状の槽の外部にさらに備えるマイクロリアクター。
【請求項7】
筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って第1、第2及び第3反応槽を形成する各槽の仕切りに設けられた請求項1〜5のいずれかに記載のフィルタとを備えるマイクロリアクターであって、
液体試料が投入される前記第1反応槽内と試薬を反応させる前記第2反応槽と蛍光・吸光分析を行なう前記第3反応槽の検出槽の各々に加圧装置を設けて、前記第1反応槽内から前記第2反応槽へ、前記第2反応槽から前記第3反応槽の検出槽へと液体試料を任意に移動させるマイクロリアクター。
【請求項8】
筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って複数の反応槽を形成する少なくとも1つの請求項5記載のフィルタと、前記筒状の槽の外部に設けられた反応槽内を加圧する加圧装置を備えるマイクロリアクター。
【請求項9】
筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って複数の反応槽を形成する少なくとも1つの請求項5記載のフィルタを備えるマイクロリアクターであって、試料が投入される第1反応槽内と試薬を反応させる第2反応槽と蛍光・吸光分析を行なう第3の槽の検出槽の各々に加圧装置を設けて、第1反応槽内から第2反応槽へ第2反応槽から第3の槽の検出槽へと検体試料液体を任意に移動させるマイクロリアクター。
【請求項10】
筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って複数の反応槽を形成する少なくとも1つのメソポーラス体とを備えるマイクロリアクターであって、前記複数の反応槽のうち最初に液体試料が投入される第1反応槽内を加圧する加圧装置を前記筒状の槽の外部にさらに備えるマイクロリアクター。
【請求項11】
筒状の槽と、前記槽内部を径方向に仕切って第1、第2及び第3反応槽を形成する少なくとも1つのメソポーラス体とを備えるマイクロリアクターであって、試料が投入される前記第1反応槽内と試薬を反応させる前記第2反応槽と蛍光・吸光分析を行なう前記第3反応槽の検出槽の各々に加圧装置を設けて、前記第1反応槽内から前記第2反応槽へ、前記第2反応槽から前記第3反応槽の検出槽へと液体試料を任意に移動させるマイクロリアクター。
【請求項12】
前記メソポーラス体がヒーターを備えるものである請求項10又は11に記載のマイクロリアクター。
【請求項13】
前記フィルタの温度を検出する温度センサをさらに備える請求項6〜9のいずれかに記載のマイクロリアクター。
【請求項14】
前記メソポーラス体の温度を検出する温度センサをさらに備える請求項12に記載のマイクロリアクター。
【請求項15】
前記複数の反応槽と前記フィルタとの接合部分に、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、又は金属薄膜を備える請求項6〜11、13のいずれかに記載のマイクロリアクター。
【請求項16】
前記複数の反応槽それぞれの内部圧力を検出する圧力センサをさらに備える請求項6〜15のいずれかに記載のマイクロリアクター。
【請求項17】
前記第1反応槽の下流側に形成された反応槽の少なくとも1つに、表面に所定の抗体又は酵素が固定された多数の微粒子が封入されている請求項6〜16のいずれかに記載のマイクロリアクター。
【請求項18】
前記反応槽内を攪拌する攪拌型アクチュエーターをさらに備える請求項6〜17のいずれかに記載のマイクロリアクター。
【請求項19】
前記筒状の槽の外部に設けられ、所定の前記反応槽とそれぞれ管を介して連通している複数の液体貯溜槽と、それぞれの前記液体貯溜槽から所定の前記反応槽内部に液体を送液するポンプとをさらに備える請求項6〜18のいずれかに記載のマイクロリアクター。
【請求項20】
前記フィルタが前記筒状の槽に複数設けられている際、前記フィルタ間に電位を印加するための導線が外部電源から前記フィルタそれぞれに設けられている請求項6〜19のいずれかに記載のマイクロリアクター。
【請求項21】
複数の請求項6〜20のいずれかに記載のマイクロリアクターが、前記筒状の槽の中心軸を平行にして並設されるマイクロリアクター並設構造体。
【請求項22】
複数の請求項6〜20のいずれかに記載のマイクロリアクターが、前記筒状の槽の中心軸を平行にして円盤に円状、径の異なる複数の同心円状、又は螺旋状に並設され、前記円盤が中心を軸として回転自在であり、各マイクロリアクターで反応が終了した試料に対し、前記円盤の任意の位置で、複数の機器分析が可能な分析装置。
【請求項23】
精密機械加工、X線、紫外線又は電子線を用いた電磁波加工、若しくは成形加工によって筒状の槽を作製する工程と、前記精密機械加工、X線、紫外光又は電子線を用いた前記電磁波加工、若しくは前記成形加工によって請求項1〜5のいずれかに記載のフィルタを作製する工程と、筒状の槽と請求項1〜5のいずれかに記載のフィルタとを、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、又は金属薄膜によって接合する工程とを含むマイクロリアクターの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−68699(P2006−68699A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258159(P2004−258159)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月22日 日本経済新聞社、日経産業消費研究所発行の「ナノテク専門ニューズレター 日経先端技術58」に発表
【出願人】(800000057)財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】