説明

フォトレジストの除去方法

【課題】汎用の洗浄装置を用いても十分な除去速度を達成することができるフォトレジストの除去方法を提供する。
【解決手段】バッチ処理式洗浄装置10は、大気に開放され、過飽和オゾン水14を貯留する浸漬槽11と、過飽和オゾン水14を浸漬槽11の底部から供給する過飽和オゾン水供給配管12と、過飽和オゾン水供給配管12内を流れる過飽和オゾン水14の流量を調節するニードルバルブ13とを備える。枚葉処理式洗浄装置20は、過飽和オゾン水14を吐出してフォトレジストに吹き付けるためのノズル21と、過飽和オゾン水14をノズル21に供給する過飽和オゾン水供給配管22と、過飽和オゾン水供給配管22内を流れる過飽和オゾン水14の流量を調節するニードルバルブ23と、フォトレジストが表面に形成されたシリコンウェーハ15をノズル21に対向させて載置する載置台24とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、液晶ディスプレイなどの製造工程で用いられるフォトレジストの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、液晶ディスプレイなどの製造工程では、たとえば微細な回路パターンを加工する方法としてフォトリソグラフィ法やエッチング法が用いられる。フォトリソグラフィ法、エッチング法ではいずれも、被処理物の表面にレジスト膜でマスクを形成し、回路パターンを形成する。レジスト膜のマスク自体に微細な加工が必要なため、レジスト膜には、紫外線硬化樹脂などのフォトレジストが用いられる。フォトレジストマスクは、回路パターン形成後には、不要となるため、これを除去する必要がある。
【0003】
フォトレジストの除去は、硫酸と過酸化水素水との混合物等の酸性液体、水酸化ナトリウム等のアルカリ性液体、またはモノエタノールアミン等の有機溶剤(以下、化学薬品と略する)などが用いられる。しかし、近年では地球環境への配慮から、これらの化学薬品の使用を控え、環境負荷のより小さいオゾン水を用いた洗浄方法が提案されている。オゾン水は洗浄処理に用いた後、速やかに水中に溶存しているオゾン分子が酸素分子へ分解するため、環境負荷が小さくなる。
【0004】
しかしながら、従来から使用されてきた一般的な洗浄機を用いてオゾン水洗浄を行うと、フォトレジストの除去速度は低く、実用化は困難である。除去速度が低い原因は、主にオゾン水製造装置から洗浄槽へオゾン水を供給した際にオゾン水の圧力が大気圧近くまで低下することによるオゾン水中のオゾン濃度の低下である。したがって、オゾン水洗浄を適用するためには、オゾン濃度の低下防止対策を講じた専用の洗浄機とオゾン水製造装置との両方が必要となる。このため、従来の化学薬品を用いた洗浄方法からオゾン水洗浄への切り替えは、経済的な負担が大きく、オゾン水洗浄が普及しない原因となっている。
【0005】
オゾン水製造装置と専用の洗浄機との組み合わせの典型例が、特許文献1に記載されている。特許文献1記載のフォトレジスト膜除去方法では、シリコンウェーハ表面でオゾン水の流速をあげるための構造を採用したオゾン水専用の洗浄槽と、オゾン水製造装置とを組み合わせて、実用化に必要なレジスト除去速度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−33300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、オゾン水でフォトレジストを除去しようとした場合に十分な除去速度を確保するために特定の構造を有する洗浄装置を使用する必要があり、汎用の洗浄装置を用いて十分な除去速度を得ることはできない。
【0008】
本発明の目的は、汎用の洗浄装置を用いても十分な除去速度を達成することができるフォトレジストの除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基体表面に形成されたフォトレジストを、オゾンの過飽和水溶液を用いて除去する除去操作を行うことを特徴とするフォトレジストの除去方法である。
【0010】
また本発明は、前記過飽和水溶液のオゾン濃度の低下を抑制した状態で、前記除去操作を行うことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記除去操作は、前記過飽和水溶液を貯留した浸漬槽に、フォトレジストが形成された基体を浸漬する操作であり、
前記浸漬槽は、密閉容器で構成され、前記密閉容器内の圧力が大気圧よりも高い状態で前記基体を浸漬することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記除去操作は、前記過飽和水溶液をノズルから吐出し、前記基体の表面に形成されたフォトレジストに、前記過飽和水溶液を吹き付ける操作であり、
前記ノズルとフォトレジストとの距離を近接させて、前記過飽和水溶液にかかる圧力が大気圧よりも高い状態でフォトレジストに吹き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基体表面に形成されたフォトレジストを、オゾンの過飽和水溶液を用いて除去する除去操作を行う。
【0014】
これにより、汎用の洗浄装置を用いても十分な除去速度を達成することができる。そして、従来の化学薬品を用いた洗浄方法からオゾン水洗浄への切り替えに伴う経済的な負担が小さくなり、環境負荷の小さいオゾン水洗浄を容易に実現できる。
【0015】
また本発明によれば、前記過飽和水溶液のオゾン濃度の低下を抑制した状態で、前記除去操作を行うことで、さらに除去速度を向上させることができる。
【0016】
また本発明によれば、前記除去操作は、前記過飽和水溶液を貯留した浸漬槽に、フォトレジストが形成された基体を浸漬する操作であり、前記浸漬槽は、密閉容器で構成され、前記密閉容器内の圧力が大気圧よりも高い状態で前記基体を浸漬する。
【0017】
これにより、汎用のバッチ処理方式の装置を改良してオゾン濃度の低下を抑制することができる。
【0018】
また本発明によれば、前記除去操作は、前記過飽和水溶液をノズルから吐出し、前記基体の表面に形成されたフォトレジストに、前記過飽和水溶液を吹き付ける操作であり、前記ノズルとフォトレジストとの距離を近接させて、前記過飽和水溶液にかかる圧力が大気圧よりも高い状態でフォトレジストに吹き付ける。
【0019】
これにより、汎用の枚葉処理方式の装置を改良してオゾン濃度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】過飽和オゾン水を製造するオゾン水製造装置1の構成を示す概略図である。
【図2】汎用の洗浄装置の例を示す図である。
【図3】オゾン濃度の低下抑制機能を備える洗浄装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、基体表面に形成されたフォトレジストを、オゾンの過飽和水溶液を用いて除去する除去操作を行うことを特徴とするフォトレジストの除去方法である。
【0022】
フォトレジストが形成される基体は、特に限定されるものではなく、シリコンウェーハ、ガラス基板などフォトリソグラフィ法、エッチング法などでフォトレジストによるマスクが形成される部材のことである。
【0023】
フォトレジストとして用いられる材質としては、主にフェノールノボラック樹脂が用いられ、その他にも(メタ)アクリル酸エステル、ノルボルネン誘導体、およびそれらから誘導されるポリマーなどが用いられる。
【0024】
オゾンの過飽和水溶液とは、オゾンの溶存状態が過飽和状態となる水溶液であり、飽和溶解量を超えて高濃度のオゾンが溶解した水溶液である。なお、以下では、飽和溶解量以下のオゾン濃度である水溶液を通常オゾン水、飽和溶解量を超えて過飽和状態の水溶液を過飽和オゾン水と呼ぶ。過飽和オゾン水は、溶液論的には通常オゾン水とは完全に区分されるべきものである。
【0025】
たとえば、特許文献1に記載された製造条件から判断すると、特許文献1記載の発明で使用されるオゾン水は、通常オゾン水である。
【0026】
特許文献1に示されたオゾン水の製造方法と製造条件を要約すると、次のようになっている。溶質であるオゾンガスはオゾンガス発生器で濃度230g/Nm程度のものを生成し、その後、生成したオゾンガスを濃縮器で800g/Nm程度の濃度まで濃縮している。一方、溶媒である水は超純水を加熱した温度45〜50℃、圧力0.1〜0.2MPaのものが使用されている。この濃縮オゾンガスと加熱純水とを混合することによって、濃度50mg/L(=ppm)程度の加熱オゾン水を製造している。
【0027】
これらの条件から特許文献1に示された加熱オゾン水の飽和溶解濃度を試算すると50℃における飽和溶解濃度は296mg/Lであり、特許文献1に示された濃度は50mg/L程度あるから、加熱オゾン水は、飽和溶解濃度よりも十分に低い通常オゾン水と判断される。
【0028】
ここで、飽和溶解濃度はHenryの法則から求めた。Henryの法則は、揮発性の溶質を含む希薄溶液が気相と平衡にあるとき、気相内の溶質の分圧(p)は溶液中の濃度
(モル分率、x)に比例する。したがって、下記(1)式が成立する。
p=Hx …(1)
【0029】
ここでHはHenry定数である。この式を変形してxを求め、その上でxの値をmg/L単位に変換して飽和溶解濃度を算出した。
【0030】
Hの値は下記(2)式に示したRoth & Sullivan式で求めた近似値を用いた。
H=3.842×10[OH0.035exp(−2428/T)…(2)
【0031】
ここで[OH]は水酸イオンの濃度、Tは液温である。
オゾン水によるフォトレジストの除去が普及しないのは、特定の構造を有する洗浄装置を使用する必要があり、汎用の洗浄装置を用いて十分な除去速度を得ることができないからである。
【0032】
ここで実用的な除去速度とは、浸漬などによるバッチ処理方式で0.2μm/min以上、ノズル吹き付けなどによる枚葉処理方式では1.0μm/min以上である。
【0033】
本発明は、過飽和オゾン水を用いてフォトレジストを除去することで、汎用の洗浄装置を用いて十分な除去速度を実現している。
【0034】
オゾン水によるフォトレジストの除去において、除去速度はオゾン水の溶存オゾン濃度に比例する。また、オゾン濃度の他にオゾン水の水温が除去速度に影響を及ぼし、水温が高くなるほど除去速度は向上する。たとえば、フォトレジストの分解反応による除去がArrhenies則に従うとすると、下記(3)式に示すように、フォトレジストの分解反応の速度定数(k)は、温度の上昇により指数関数的に大きくなる。
k=A exp(−E/RT) …(3)
【0035】
ここでAは頻度因子、Eは活性化エネルギー、Rは気体定数、そしてTは温度である。
しかしながら、オゾン水のように常温・常圧で気体状態にある分子を水中に溶解させるためには、(1)式と(2)式とから明らかなように、低温よりも高温の方が不利になる。すなわち、飽和溶解度は水温が高いと低くなるので、通常オゾン水では高温での高濃度化が難しい。
【0036】
このため、本発明では飽和溶解度を超えた過飽和状態とすることで、高温でも高濃度のオゾン水を用いることができ、高温で高濃度という除去速度を向上する特性を両立したものである。
【0037】
図1は、過飽和オゾン水を製造するオゾン水製造装置1の構成を示す概略図である。オゾン水製造装置1は、オゾナイザー(オゾン製造器)2、循環槽3、循環用ポンプ4、熱交換用温水槽5を含み、CO(二酸化炭素)ガス、O(酸素)ガス、N(窒素)ガスおよび水の各供給源からの導入配管、各配管に設けられたバルブ、流量計などを含む。
【0038】
オゾン水製造装置1では、オゾンガスと水とを混合するための混合器を設けず、循環用ポンプ4を利用して混合し、水中へオゾンを溶解させている。
【0039】
COガスは、循環槽3のバブラー3aに導入され、循環槽3に貯留されるオゾン水へと供給される。COガスをオゾン水へ供給することによって、オゾン水を所望のpHに調整する。オゾン水のpHは、オゾン水の使用目的などによってその最適値が変わるが、概ねpH=4〜6である。
【0040】
COガスの供給量は、供給源とバブラー3aとの間に設けられたバルブV1の開閉および流量計FR1によって流量が調整される。COガスの供給としては、たとえば、供給圧力を0.31〜0.40 MPaとし、流量を100〜1000mL・min−1
する。
【0041】
ガスおよびNガスは、オゾナイザー2に導入され、オゾナイザー2でオゾンを発生させる。発生したオゾンは供給された水と混合されたのち、循環用ポンプ4へと導入される。循環用ポンプ4への水配管に、オゾナイザー2からの配管をT型のユニオン継ぎ手を用いて接続して、水と発生オゾンガスとを混合している。
【0042】
ガスの供給量は、供給源とオゾナイザー2との間に設けられたバルブV2の開閉および流量計FR2によって流量が調整され、Nガスの供給量は、供給源とオゾナイザー2との間に設けられたバルブV3の開閉および流量計FR3によって流量が調整される。Oガスの供給としては、たとえば、供給圧力を0.31〜0.40 MPaとし、流量を1〜10 L・min−1とする。Nガスの供給としては、たとえば、供給圧力を0
.31〜0.40 MPaとし、流量を10〜100mL・min−1とする。
【0043】
水の供給量は、供給源と循環用ポンプ4との間に設けられたバルブV4の開閉および流量計FR4によって流量が調整される。
【0044】
予め混合された水とオゾンガスとは、循環用ポンプ4内部でさらに混合され、オゾンガスを水に溶解させる。オゾン水は、循環用ポンプ4によって循環槽3へと排出され、前述のようにCOガスと混合される。
【0045】
ここで、循環用ポンプ4は、混合機能も兼ね備える必要があり、ベローズポンプやダイヤフラムポンプ等の定容積移動型ポンプを用いることが好ましい。循環用ポンプ4として、渦巻きポンプ等を用いた場合は、水の圧力変動のスピードが速く、力学的なエネルギーによってオゾン分子が酸素に分解されてしまう。また、供給するオゾンガスの量が多くなると正常に送液できなくなるので好ましくない。循環用ポンプ4としては、混合機能を考慮すると、吐出量として約0.5〜5L/サイクル程度の能力が好ましい。
【0046】
循環槽3に貯留されるオゾン水の一部は、水配管へと戻され、発生オゾンガスと混合されたのち循環用ポンプ4へと導入される。オゾン水は、循環槽3から排出され、新たな水とオゾンガスと混合されて循環用ポンプ4へ導入され、循環槽3へと戻る循環ラインを循環することになる。循環槽3からの排出量は、循環槽3と水配管への接続部との間に設けられたバルブV5の開閉によって調整される。
【0047】
循環槽3には、オゾン水を常に2〜20L(リットル)貯溜するようにし、循環液量は、循環槽3からの排出流量(使用量)1〜10L・min−1の4倍以上、すなわち4〜40L・min−1以上とすることが好ましい。
【0048】
循環槽3から排出されるオゾン水は、温水槽5内部に設けられた熱交換器5aと導入され、所定の温度にまで加熱される。温水槽5には、熱交換媒体としての温水が貯留され、ヒータ5bによって適正温度に加熱される。
【0049】
シーズヒーター等によるオゾン水の直接加熱は、局所的に大きな熱エネルギーが加えられ、その余剰な熱エネルギーがオゾン水中のオゾン分子を酸素に分解してしまうので、熱交換器による加熱が好ましい。熱交換器5aは、伝熱管にたとえばPFAまたはチタンを用いたものが好ましい。PFAは、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体である。
【0050】
熱交換器5aによって所定の温度にまで加熱されたオゾン水は、後段の洗浄装置などに供給される。
【0051】
循環槽3の容積は、5〜50Lであり、循環槽内の圧力は、圧力コントロール弁3bによって、たとえば0.30〜0.39MPaになるように調節される。
【0052】
また、この循環槽3はオゾン水中の気液分離のためにも設置されている。オゾン水中に溶解されない余剰のオゾンガスは、循環槽3で溶液から気液分離される。そして、この余剰のオゾンガスのみならず、オゾンガスが時間と共に自己分解した酸素ガスも、前述の圧力コントロール弁3bを介して排気される。なお、大気へ排出される前にオゾン分解器6によって排ガス中のオゾンガスは分解される。
【0053】
上記のようなオゾン水製造装置1で過飽和オゾン水を製造した場合、水温が70℃の高温でも、300mg/L以上の高濃度オゾン水を実現できる。なお、オゾン水製造装置1のオゾン水生成条件に基づいて、(1)式と(2)式とから求めた水温70℃におけるオゾンの飽和溶解濃度は149mg/Lであり、300mg/L以上の濃度のオゾン水は過飽和状態にある過飽和オゾン水である。
【0054】
図2は、汎用の洗浄装置の例を示す図である。図2(a)は、フォトレジストが形成された基体を過飽和オゾン水14に浸漬してフォトレジストを除去するバッチ処理式洗浄装置10の概略図であり、図2(b)はノズルから過飽和オゾン水14を吐出してフォトレジストが形成された基体に吹き付けてフォトレジストを除去する枚葉処理式洗浄装置20の概略図である。
【0055】
バッチ処理式洗浄装置10は、大気に開放され、過飽和オゾン水14を貯留する浸漬槽11と、過飽和オゾン水14を浸漬槽11の底部から供給する過飽和オゾン水供給配管12と、過飽和オゾン水供給配管12内を流れる過飽和オゾン水14の流量を調節するニードルバルブ13とを備える。過飽和オゾン水供給配管12には、オゾン水製造装置1が接続され、オゾン水製造装置1で製造された過飽和オゾン水14が浸漬槽11に供給される。
【0056】
枚葉処理式洗浄装置20は、過飽和オゾン水14を吐出してフォトレジストに吹き付けるためのノズル21と、過飽和オゾン水14をノズル21に供給する過飽和オゾン水供給配管22と、過飽和オゾン水供給配管22内を流れる過飽和オゾン水14の流量を調節するニードルバルブ23と、フォトレジストが表面に形成されたシリコンウェーハ15をノズル21に対向させて載置する載置台24とを備える。過飽和オゾン水供給配管22には、オゾン水製造装置1が接続され、オゾン水製造装置1で製造された過飽和オゾン水14がノズル21に供給される。
【0057】
バッチ処理式洗浄装置10および枚葉処理式洗浄装置20は、汎用の洗浄装置であり、これらの洗浄装置で用いるオゾン水として過飽和オゾン水14を適用する。
【0058】
バッチ処理式洗浄装置10では、浸漬槽11に過飽和オゾン水14を貯留しておき、フォトレジストが表面に形成されたシリコンウェーハ15を複数枚浸漬させる。所定時間浸漬したのちシリコンウェーハ15を引き上げることでフォトレジストが除去される。
【0059】
枚葉処理式洗浄装置20では、ノズル21から過飽和オゾン水14を吐出させ、シリコンウェーハ15の表面に形成されたフォトレジストに過飽和オゾン水14を吹き付けることで、フォトレジストが除去される。
【0060】
汎用の洗浄装置であっても過飽和オゾン水を用いることで、通常オゾン水では、実現不可能な除去速度を実現できる。
【0061】
また、過飽和水溶液のオゾン濃度の低下を抑制した状態で、洗浄を行うことでさらに除去速度を向上させることができる。
【0062】
図3は、オゾン濃度の低下抑制機能を備える洗浄装置の例を示す図である。図3(a)は、バッチ処理式洗浄装置30の概略図であり、図3(b)は枚葉処理式洗浄装置40の概略図である。
【0063】
バッチ処理式洗浄装置30は、密閉可能に構成され、過飽和オゾン水14を貯留する浸漬槽31と、過飽和オゾン水14を浸漬槽31の底部から供給する過飽和オゾン水供給配管32と、過飽和オゾン水14を浸漬槽31から排水するための排水管33と、排水管33内を流れる過飽和オゾン水14の流量を調節するニードルバルブ34とを備える。過飽和オゾン水供給配管32には、オゾン水製造装置1が接続され、オゾン水製造装置1で製造された過飽和オゾン水14が浸漬槽31に供給される。
【0064】
浸漬槽31は、シリコンウェーハ15を複数枚浸漬させた状態で密閉し、排水管33内を流れる過飽和オゾン水14の流量を調節することで浸漬槽31内の圧力を大気圧よりも高い状態とする。これにより、過飽和オゾン水14のオゾン濃度の低下を抑制して浸漬することができる。
【0065】
枚葉処理式洗浄装置40は、過飽和オゾン水14を吐出してフォトレジストに吹き付けるためのノズル41と、過飽和オゾン水14をノズル41に供給する過飽和オゾン水供給配管42と、過飽和オゾン水供給配管42内を流れる過飽和オゾン水14の流量を調節するニードルバルブ43と、フォトレジストが表面に形成されたシリコンウェーハ15をノズル41に対向させて載置する載置台44とを備える。過飽和オゾン水供給配管42には、オゾン水製造装置1が接続され、オゾン水製造装置1で製造された過飽和オゾン水14がノズル41に供給される。
【0066】
汎用の枚葉処理式洗浄装置20では、ノズル21の先端とシリコンウェーハ15との距離が10mm程度となるように載置台24が設置される。これに対して枚葉処理式洗浄装置40では、ノズル41の先端とシリコンウェーハ15との距離が1mm程度となるように載置台44が設置される。これにより、ノズル41とフォトレジストとの距離を近接させて、過飽和水溶液にかかる圧力が大気圧よりも高い状態でフォトレジストに吹き付けることができる。
【0067】
以上のように、過飽和オゾン水のオゾン濃度が低下することを抑制することで、さらに
フォトレジストの除去速度を向上させることができる。
【0068】
(実験例1)
実験例1では、通常オゾン水と過飽和オゾン水とのフォトレジストの除去速度を比較するために、図2に示したバッチ処理式洗浄装置10および枚葉処理式洗浄装置20を用いてフォトレジスト除去を行った。
【0069】
ここで、通常オゾン水は特許文献1に示された温度50℃、濃度50mg/Lのものを使用した。一方、過飽和オゾン水はオゾン水製造装置1により温度70℃、濃度300mg/Lのものを用いた。
【0070】
実験に用いたテストサンプルは、フェノールノボラック樹脂をベースポリマーとしたポジ型の樹脂をシリコン基板上に2μmの厚さで塗布し、その後ベーキングを実施したものである。なお、この実験サンプルには回路パターンはなく、シリコン基板の表面全体がレジストで覆われている。
このサンプルを用いてフォトレジストの除去レートを測定した結果を、表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
バッチ処理方式では過飽和オゾン水を用いた場合の除去速度は0.29μm/minを示し、この速度は通常オゾン水を用いた場合よりも約5倍高くなった。さらにこの速度は実用化の目安となる0.2μm/min以上の速度を達成している。
【0073】
また、枚葉処理方式では過飽和オゾン水を用いた場合の除去速度は2.18μm/minを示し、この速度も通常オゾン水を用いた場合より約3倍高くなった。さらにこの速度も実用化の目安となる1.0μm/min以上の速度を達成している。
【0074】
したがって、これらの結果から過飽和オゾン水を用いたフォトレジストの除去方法の高い有効性が確認できた。
【0075】
(実験例2)
本発明の目的は、環境負荷の小さいオゾン水洗浄を広く普及させるため、従来の洗浄からの切り替えにおける経済的な負担を小さくすることである。しかし、経済的なことよりも、むしろフォトレジストの除去速度を向上させる方が優先される場合には、図3に示すような、オゾン濃度の低下を抑制する機構を備えたバッチ処理式洗浄装置30および枚葉処理式洗浄装置40を用いることが好ましい。
【0076】
バッチ処理式洗浄装置30および枚葉処理式洗浄装置40に過飽和オゾン水(温度:70℃、濃度:300mg/L)を用いてフォトレジストの除去を行い、実験例1と同様に除去速度を測定した。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
改良したバッチ処理方式の場合、除去速度は1.33μm/minを示し、汎用の洗浄装置を用いた場合よりも約5倍高い速度を示した。一方、改良した枚葉処理方式においても除去速度は2.40μm/minまで向上した。
【0079】
したがって、これらの結果からも過飽和オゾン水を用いたフォトレジストの除去方法の高い有効性が確認できた。
【符号の説明】
【0080】
1 オゾン水製造装置
2 オゾナイザー
3 循環槽
3a バブラー
3b 圧力コントロール弁
4 循環用ポンプ
5 熱交換用温水槽
5a 熱交換器
5b ヒータ
6 オゾン分解器
10,30 バッチ処理式洗浄装置
11,31 浸漬槽
12,32 過飽和オゾン水供給配管
13,34 ニードルバルブ
14 過飽和オゾン水
15 シリコンウェーハ
20,40 枚葉処理式洗浄装置
21,41 ノズル
22,42 過飽和オゾン水供給配管
23,43 ニードルバルブ
24,44 載置台
33 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体表面に形成されたフォトレジストを、オゾンの過飽和水溶液を用いて除去する除去操作を行うことを特徴とするフォトレジストの除去方法。
【請求項2】
前記過飽和水溶液のオゾン濃度の低下を抑制した状態で、前記除去操作を行うことを特徴とする請求項1記載のフォトレジストの除去方法。
【請求項3】
前記除去操作は、前記過飽和水溶液を貯留した浸漬槽に、フォトレジストが形成された基体を浸漬する操作であり、
前記浸漬槽は、密閉容器で構成され、前記密閉容器内の圧力が大気圧よりも高い状態で前記基体を浸漬することを特徴とする請求項2記載のフォトレジストの除去方法。
【請求項4】
前記除去操作は、前記過飽和水溶液をノズルから吐出し、前記基体の表面に形成されたフォトレジストに、前記過飽和水溶液を吹き付ける操作であり、
前記ノズルとフォトレジストとの距離を近接させて、前記過飽和水溶液にかかる圧力が大気圧よりも高い状態でフォトレジストに吹き付けることを特徴とする請求項2記載のフォトレジストの除去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−119491(P2012−119491A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267859(P2010−267859)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】