説明

ブラシレス直流電動機

【課題】燃料ポンプと共に使用するためのブラシレス直流電動機を提供する。
【解決手段】ブラシレス直流電動機は、ハウジング(10)と、ハウジング内の固定子(13)及び回転子(11)と、上記固定子上の巻線と、上記固定子に対する上記回転子の位置を検知するセンサと、上記センサからの出力に応答して上記巻線内の電流をスイッチさせ、上記回転子を上記固定子に対して回転させる電子回路とを備えている。上記センサと、上記電子回路の少なくとも一部は、電気絶縁性の、且つ燃料に対して抵抗性の材料で上記ハウジング内のコンテナ内にカプセル封じされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシレス直流電動機に関し、特定的には、限定するものではないが、燃料ポンプと共に使用するかかる電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の永久磁石直流(PMDC)電動機は、伝統的に、コミュテータ及びブラシ/リーフシステムからなる比較的高価なコミュテーティング部品を用いて設計されている。多くの特定応用の場合、これらのブラシ型電動機は、特にそれらの適用範囲の下端においてそれらの重要性を保持している。
【0003】
一方、異なる電圧の種々の自動車応用からプロフェッショナルなパワーツールまで、電子制御システムへの依存性が高まりつつある。また、長寿命、効率、信頼性、低い電磁気干渉及び雑音のようなパラメータの重要性が大きくなりつつある。
【0004】
ブラシレス直流(BLDC)電動機技術は、これらの要求の達成を可能にする。ブラシに関連する問題が排除される。MOSFET及び表面マウント技術の進歩によって、電圧降下は低下し(熱シンキングの低下を伴う)、必要な空間が小さくなり、そして価格が低下する傾向がもたらされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の面によれば、ブラシレス直流電動機が提供される。この電動機は、ハウジングと、ハウジング内の固定子及び回転子と、固定子または回転子上の巻線と、固定子に対する回転子の位置を検知するセンサと、センサからの出力に応答して巻線内の電流をスイッチさせ、回転子を固定子に対して回転させる電子回路とを備え、センサと、電子回路の少なくとも一部とは、電気絶縁性の材料でハウジング内のコンテナ内にカプセル封じされる。
【0006】
本発明の第2の面によれば、ブラシレス直流電動機が提供される。この電動機は、巻線型固定子と永久磁石回転子とを備え、回転子はラミネートされたコアを有し、且つ磁化可能な材料でオーバーモールドされており、この磁化可能な材料はモールディングの後に磁化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図示したブラシレス直流電動機は、深く絞り加工された外側ハウジング10と、ハウジング10の閉じた端から突き出ている方の端に平坦部12aを有するシャフト12を含む回転子11と、回転子11を取り巻いている巻線型固定子13と、ハウジング10の開いた端を閉じているエンドキャップ14と、ハウジング10内にあってセンサ及び電子回路のためのコンテナ16とを備えている。巻線型固定子13は、固定子ラミネーション30のスタックの周囲に巻かれている固定子巻線19を含んでいる。
【0008】
電動機は、コミュテータ及びブラシ/リーフシステムを含むコミュテーティング部品を有する普通の永久磁石直流電動機と類似した総合外観を有している。電動機は、燃料ポンプ電動機として特定の応用を有しているが、他の用途をも有している。
【0009】
図3乃至5を参照する。コンテナ16は円筒形のボウル17を含み、ボウル17のベースから、それと一体のスリーブ18が直立している。コンテナは、典型的にはポリアセタル(POM)で作られており、センサ及び電子回路を収容している。センサは、典型的には固定子13に対する回転子11の位置を検知する、典型的にはホール効果センサの形状のセンサである。電子回路は、直立スリーブ18に嵌め込まれる環状印刷回路基板20上に取付けられている。理想的には、ホール効果センサは印刷回路基板20上に平らに(寝かせて)配置する。これは組立てが容易で、且つ燃料及び完全にカプセル封じされた後の振動に対してより高い信頼性を与えるので、普通に“立たせて”配置されたホールセンサに比して有利である。またこれにより、センサと永久磁石回転子の平らな上面との間の距離を短縮することができる。回路は、センサからの出力に応答して公知の技法で固定子巻線内の電流をスイッチさせ、回転子を固定子に対して回転させる。センサ及び電子回路は、典型的にはエポキシ樹脂である電気絶縁性材料内にカプセル封じされる。この電気絶縁性材料は、コンテナ16内に充填、または実質的に充填される。スリーブ18は、回転子シャフト12がそれを通って伸びることができるような、また燃料ポンプからの燃料がそれを通って流れることができるような寸法である。
【0010】
センサ、及び全導電性部品を含む殆どの電子成分は、完全にカプセル封じされる。例えば、電気端子及び/または大きいコンデンサのような部品だけは、完全にカプセル封じされないであろう。
【0011】
図5に示すように、ボウル17のベースの下側は、固定子13の巻線に直接接続するようになっている4つの絶縁変位コネクタ21を有している。コンテナ16及びその内容は、それを電動機内へ“プラグイン”させることができるように、予め組立てておくことができる。
【0012】
スリーブ18を通過する燃料が冷却効果を呈するので、カプセル封じ用材料の熱伝導率はそれ程重要ではない。
【0013】
図6は、固定子上に配置される前側絶縁体22の詳細を示しており、固定子巻線及びコンテナ16上の絶縁変位コネクタ21を受入れる同数のスロット23(この例では、4つ)を有している。
【0014】
センサ及び電子回路を印刷回路基盤上に取付ける代わりに、コンテナ16の内側底面に導電性パターンの刷り込みを有することができる。これは、熱・プレススタンプを用いて付着させた熱・プレス箔の形状を取ることができる。全ての電子成分をボウルの内面上に自動的に組立て、その後にカプセル封じすることができる。この技術の別の利点は、ホールセンサと回転子磁石の平らな上面との間の距離が更に短縮されることであり、それによって位置検出のための磁場の強さが増加することである。
【0015】
電動機は、前側絶縁体22と類似しているが同一ではない後側絶縁体24を更に有している。
【0016】
エンドキャップ14は、ハウジング10の縁を、2つの位置においてエンドキャップ上に折曲げる等によってハウジング10に接続される。このエンドキャップ14は、回転子シャフト12のための軸受を支持、もしくは限定し、また顧客の燃料ポンプに必要な一体のフィーチャをも含む。外部の源に接続するための端子26がエンドキャップ14上に設けられている。
【0017】
電動機の他方の端にはスリーブ15が設けられている。スリーブ15は、典型的にはポリフェニレンスルフィド(PPS)で作られる。この材料は、高い熱寸法安定性と、低い伸びと、全ての種類の攻撃的な燃料に対して極めて良好な抵抗性を有している。スリーブ15は、回転子シャフト12のための軸受を支持、もしくは限定し、また燃料ポンプの孔の中に圧入することによって顧客の燃料ポンプへ取付けるようにもなっている。従来は、スリーブ15はポンプハウジングの一部であった。本発明ではこれは電動機の一部になっている。これは、2つの目的、即ち回転子シャフト12のための軸受を支持、もしくは限定し、及びポンプハウジングの接続/位置合わせとして役立ち、また電動機を顧客に引渡す前に完全に試験できることから有利である。
【0018】
ブラシレス直流電動機を普通のコミュテータ電動機とは全く異なって使用することにより、電動機の半径方向及び軸方向の寸法を減少させることができる。
【0019】
図7乃至11を参照する。回転子は、回転子シャフト12及び磁化可能な材料33でオーバーモールドされているラミネートされたコア27からなり、材料33はモールディングの後に磁化される。
【0020】
ラミネートされたコア27は、複数の回転子ラミネーション29からなる。図9に示すように、これらのラミネーションはシートから打抜かれ、多分、固定子ラミネーション30と同時に打抜かれる。回転子ラミネーション29は3つの等角に離間し、半径方向内向きに伸びるスロット31と、回転子シャフト12上にラミネーションを取付けるための中心アパーチャ32とを有している。これらのラミネーション30のスタックは、典型的には熱可塑的に結合されたNdFeB化合物である磁化可能な材料33でオーバーモールドされ、この(等方性)材料33はモールディングの後に磁化される(図7に示すように)。オーバーモールディングは、軸方向に高い磁場強度を与えるために(ホールセンサのために必要)エンコーディングディスクのようにチャージできる一体リング34を含むこともできる。
【0021】
このように作られた回転子は、何らの糊付けも必要とせず、また組立てが簡単である。更に、バランシングも不要である。モールディング材料33は、スロット31をも充填する。
【0022】
図10は、6つのアパーチャ35を有する代替回転子ラミネーションを示している。これらのアパーチャ35は等角に離間し、これらのアパーチャの3つは他の3つよりも大きい。これは回転子コア27の重量を軽減するが、好ましくは燃料ポンプ回転子パンチ損(即ち、流体内の回転子の乱流による損失)を回避するために、端ラミネーションにはこれらのアパーチャ35は設けないことが好ましい。
【0023】
図11は、スロット31は有していないが、滑らかではなくぎざぎざした周縁表面と、同一寸法の6つのアパーチャ35’とを有する更に別の回転子ラミネーションを示している。
【0024】
図9に示す固定子ラミネーション30は、回転子ラミネーションと同じように打抜かれており、外側リング36と、4つの等角に離間し、半径方向内向きに伸びる磁極片37(それらの周りに巻線(図示してない)が巻かれる)と、磁極片37の間の4つの磁束片38を含む。これらのラミネーションのスタックは、磁極シュー37と磁束片38との間の間隙が小さいために、線を巻くことが困難である。また、磁極片の周りに外部コイルを巻付け、その後に外側リング上に挿入することは、小型電動機の場合には推奨されない。
【0025】
本発明の1つの面においては、そして図12及び13に示すように、代替固定子13’は、外側リング36’と、等角に離間し外側リング36’から半径方向内向きに伸びる複数の磁極片37’と、磁極片37’の間の複数の磁束片38’とを有している。磁束片38’は、リング36’及び磁極片37’から分離しており、磁極片37’への巻線の後に外側リング36’によって限定されているスロット39内に滑り込ませることが可能である。これは、巻線プロセスを簡易化し、また磁束片38を最適形状にすることを可能にする。
【0026】
リング36’及び磁極片37’は一体に形成され、打抜かれたラミネーションをレーザ溶接/パッケージパンチング等によって互いに固着し合うように形成することも、または、より好ましくは、軟磁性焼結材料をモールディングすることによって単一構造に形成することもできる。
【0027】
以上の実施の形態の説明は単なる例示に過ぎず、当業者ならば、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更が可能であろう。例えば、より特定的に、ファンモータまたはストレージドライブとして使用する場合に、回転子が固定子を取り巻くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるブラシレス直流電動機の一実施の形態の斜視図である。
【図2】図1に示す電動機の部分切除図である。
【図3】図1及び2に示す電動機の電子回路を収容するためのコンテナの分解斜視図である。
【図4】固定子上に取付けられた図3の電子回路を収容するためのコンテナの斜視図である。
【図5】図3に示すコンテナの下方からの斜視図である。
【図6】電動機の前側絶縁体の斜視図である。
【図7】電動機の回転子の斜視図である。
【図8】図7に示す回転子の部分切除図である。
【図9】電動機の回転子及び固定子ラミネーションの平面図である。
【図10】変更された回転子ラミネーションの第2の実施の形態の平面図である。
【図11】別の変更された回転子ラミネーションの平面図である。
【図12】代替固定子の部分斜視図である。
【図13】図13に示す固定子に磁束片を追加した斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 外側ハウジング
12 シャフト
12a 平坦部
13 固定子
14 エンドキャップ
15 スリーブ
16 コンテナ
17 ボウル
18 スリーブ
19 固定子巻線
20 印刷回路基板
21 コネクタ
22 前側絶縁体
24 後側絶縁体
26 端子
27 回転子コア
29 回転子ラミネーション
30 固定子ラミネーション
31 スロット
32 中心アパーチャ
33 磁化可能なモールディング材料
34 リング
35 アパーチャ
36 外側リング
37 磁極片
38 磁束片
39 スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレス直流電動機であって、巻線型固定子(13)と、永久磁石回転子(11)と、上記固定子に対する上記回転子の位置を検知するセンサと、上記センサからの出力に応答して上記巻線内の電流をスイッチさせ、上記回転子を上記固定子に対して回転させる電子回路とを備え、上記回転子(11)はラミネートされたコア(27)を有し、且つ材料(33)でオーバーモールドされており、上記材料はモールディングの後に磁化されるようになっており、さらに上記オーバーモールディングは、上記ラミネートされたコア(27)の軸端に上記センサに隣接して設けられた一体リング34を含むことを特徴とするブラシレス直流電動機。
【請求項2】
上記回転子のコアは、等角に離間して上記コアの外縁表面から内向きに伸びる複数のスロット(31)を有していることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
上記ラミネーション(29)の少なくとも若干は、複数の離間したアパーチャ(35)を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
上記ラミネーション(29)の外縁表面は滑らかではないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の電動機。
【請求項5】
上記ラミネーション(29)の外縁表面はぎざぎざしていることを特徴とする請求項4に記載の電動機。
【請求項6】
上記固定子に対する上記回転子の位置を検知するセンサと、上記センサからの出力に応答して上記固定子巻線内の電流をスイッチさせ、上記回転子を上記固定子に対して回転させる電子回路とを更に備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の電動機。
【請求項7】
上記電動機の一方の端にスリーブ(15)を更に備え、上記スリーブは上記回転子のための軸受を支持、または限定し、且つ燃料ポンプへ取付けるためのものであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の電動機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−33968(P2009−33968A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290127(P2008−290127)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【分割の表示】特願2002−367754(P2002−367754)の分割
【原出願日】平成14年12月19日(2002.12.19)
【出願人】(502458039)ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム (90)
【Fターム(参考)】