説明

プライマー樹脂およびプライマー樹脂層用樹脂組成物

【目的】粗面化処理の施されていない銅箔上と樹脂基材との接着強度に優れた、プライマー樹脂を提供すること。
【解決手段】粗面化処理の施されていない銅箔と樹脂基材との接着性を確保するためのプライマー樹脂層用樹脂であって、下記式(1)
【化1】


(式(1)中Rはグリシジル基を含有する有機基を表し、Rはグリシジル基を含有する有機基またはO、S、F、Nを含んでもよい炭素数1〜6の有機基をそれぞれ表し、R、Rのうち少なくとも一方が、オキシグリシジル基であるものが好ましい)からなるプライマー樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅箔を粗面化処理することなく、銅箔表面に直接ベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂または組成物を薄く塗布、乾燥した銅箔を用いることで、ポリイミドフィルム基板等のフレキシブルプリント配線板用の樹脂基板との良好な接着性を確保することができるプライマー樹脂、該プライマー樹脂からなるプライマー樹脂層付銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ポリイミドフィルムは金属箔(主に銅箔)と張り合わせ、片面、両面フレキシブル銅張積層板として、フレキシブル印刷配線基板用のベース樹脂フィルムや、多層印刷配線基板用層間絶縁樹脂フィルムとして使用される。なかでも2層CCLといわれる銅張積層板は、ポリイミドフィルムと銅箔が接着剤層を介さず直接張り合わせられており、配線の微細化や基板の耐熱性といった点で非常に有用であるが、一方ではポリイミドフィルムと銅箔との接着強度がしばしば問題となる。2層CCLの製造方法は、銅箔上にポリイミド前駆体を塗布し、加熱して得るキャスティング法(特許文献1)の他、熱可塑ポリイミドフィルムと銅箔を加熱圧着して得るラミネート法(特許文献2)や、ポリイミドフィルム表面にスパッタ層を設け、銅箔をメッキして得る方法等があるが、現在キャスティング法が主流となっている。
一方、従来のプリント配線板製造に用いられてきた銅箔は、特許文献1を始め多くの文献に開示されているように、その片面に微細な銅粒を付着させる等により凹凸を形成する粗面化処理が施されている。プリプレグ等の基材樹脂との張り合わせを行う際に、銅箔の粗面化処理の凹凸形状が基材樹脂内に埋まり込みアンカー効果を得ることで、銅箔と基材樹脂との密着性を得てきたのである。しかし、通常銅箔表面には表面処理剤として防錆剤等のアミン化合物、長鎖アルキル化合物や、シリコーン系化合物が塗布されているため、このままキャスティング法でポリイミド前駆体を塗布すると得られる2層CCLの銅箔/ポリイミド樹脂の剥離強度は低下する。また、脱脂工程やソフトエッチングといった煩雑な工程を経て表面処理剤を除去した銅箔表面は、大気やポリイミド前駆体にさらされるため腐食酸化されるといった問題が挙げられる。さらに、粗面化処理や防錆処理等の表面処理を全く施していない未処理の銅箔においては、接着強度が問題となるばかりか、接着強度向上は技術的に困難で、プライマー樹脂に耐熱性エポキシ樹脂組成物を用いた例(特許文献5)はあるが、顕著な改善は見られず、接着強度および耐熱性に問題が残る。
【0003】
【特許文献1】特公昭60−042817号公報
【特許文献2】特公平07−040626号公報
【特許文献3】特公平06−006360号公報
【特許文献4】特公平05−022399号公報
【特許文献5】特開2003−304068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粗面化処理していない銅箔をプリント配線板製造に用いることができれば、銅箔の粗面化処理工程を省略することが可能となり、生産コストの大幅な低減が可能である。また、回路エッチングにおいて粗面化処理部分を溶解するためのオーバーエッチングタイムを設ける必要がなくなりトータルエッチングコストの削減も可能である。
【0005】
また、粗面化処理を施していない銅箔をプリント配線板に用いることは、粗面化部分の厚みが無くなることで、より微細な配線パターンの形成が可能となり、配線表面の電気抵抗も小さくなるため、非常に有用であり、粗面化処理を施していない銅箔をプリント配線板の製造に用いることができれば、製造コストの削減と性能の向上といった両方の面で好ましい。
【0006】
本発明は、銅箔を粗面化処理することなく、キャスティング法で得られるフレキシブルプリント配線板用の樹脂基板において、銅箔/ポリイミド樹脂間の良好な接着性を確保することができるプライマー樹脂、及びプライマー樹脂層付銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究の結果、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は
(1)粗面化処理の施されていない銅箔と樹脂基材との接着性を確保するためのプライマー樹脂層用樹脂であって、下記式(1)
【化1】

(式(1)中Rはグリシジル基を含有する有機基を表し、Rはグリシジル基を含有する1価の有機基またはO、S、F、Nを含んでもよい炭素数1〜6の有機基をそれぞれ表す。)で表されるベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂からなるプライマー樹脂
(2)式(1)におけるR、Rのうち少なくとも一方が、オキシグリシジル基である上記(1)記載のプライマー樹脂
(3)上記(1)または(2)に記載のプライマー樹脂が硬化剤および硬化促進剤を含有してなることを特徴とするプライマー樹脂層用樹脂組成物
(4)上記(1)もしくは(2)に記載のプライマー樹脂、または上記(3)記載のプライマー樹脂層用樹脂組成物がN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはメチルベンゾエートより選ばれる1種以上を含有する溶媒にさせ溶液を調製し、次いでこの溶液を銅箔上に塗布乾燥し、プライマー樹脂層を形成させることを特徴とする、プライマー樹脂層の形成方法
(5)上記(4)記載の形成方法により得られたプライマー樹脂層を備えたフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板
(6)粗面化処理の施されていない銅箔の表面粗さ(Rz)が2μm以下である面に上記(4)記載の形成方法により得られたプライマー樹脂層を備えていることを特徴とするプライマー樹脂層付銅箔
(7)プライマー樹脂層を設けた銅箔の表面が、ニッケル、鉄、亜鉛、金、錫より選ばれる1種以上のメッキ層を備えた面である上記(6)に記載のプライマー樹脂層付銅箔
(8)プライマー樹脂層を設けた銅箔またはメッキの表面が、シランカップリング剤層を備えた面である上記(6)または(7)に記載のプライマー樹脂層付銅箔
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプライマー樹脂は、無機金属である銅箔への接着強度に優れる。また、銅箔を腐食させることなく防錆処理剤としても効果がある。さらにフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板において、ポリイミド前駆体溶液を用い樹脂フィルムを得る場合においても、本発明のプライマー樹脂とポリイミド樹脂フィルムとの接着強度も高くなる。したがって本発明のプライマー樹脂及びプライマー樹脂層付銅箔は、電気基板等、電気材料分野で極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のプライマー樹脂は、下記式(1)
【0011】
【化2】

【0012】
で表されるベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂であれば特に制限はない。式(1)中Rはグリシジル基を含有する有機基を表し、例えばオキシグリシジル基、チオグリシジル基、オキシパーフルオログリシジル記、グリシジルカルボキシレート基、グリシジルアミノ基等が挙げられる。またRはグリシジル基を含有する1価の有機基またはO、S、F、Nを含んでもよい炭素数1〜6の有機基を表し、前記グリシジル基を含有する有機基の他、O、S、F、Nを含んでもよい炭素数1〜6の有機基として、例えばメチル基、エチル基、プルピル基、ブチル基等の鎖状アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロエチル基等のパーフルオロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基が挙げられる。式(1)の化合物において、R、Rのうち少なくとも一方が、オキシグリシジル基である化合物が好ましく、中でも式(2)
【0013】
【化3】

【0014】
より選ばれる1種または2種の化合物が好ましい。
【0015】
本発明のプライマー樹脂は、通常下記式(3)
【0016】
【化4】

【0017】
(式(1)中Rは−OH、−SH、または−NHを有する有機基を表し、Rは−OH、−SH、または−NHを有する有機基またはO、S、F、Nを含んでもよい炭素数1〜6の有機基をそれぞれ表す。)で表されるベンゾトリアゾール化合物と、エピクロロヒドリンとの反応により得られる。反応は通常、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、またはメチルイソブチルケトンより選ばれる1種以上を含有する溶媒中で行うことができる。
【0018】
溶媒中での反応は、ベンゾトリアゾール化合物を溶媒に対し20〜80重量%溶解した溶液に、反応量に対し1.5〜6倍過剰のエピクロロヒドリンを添加し、反応するのが好ましく、このとき発生する塩化水素を中和するため、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機アルカリ成分の他、トリエチルアミン、ピリジン等の塩基性有機化合物を添加するとよい。添加量は発生し得る塩化水素量に対し、1〜1.5モル当量が好ましい。反応温度は、40〜80℃が好ましい。反応時間は1〜5時間が好ましい。
【0019】
反応終了後、発生する塩酸塩等の不溶解分は濾過、水洗等により除去し、分液洗浄後乾燥し、本発明のプライマー樹脂を単離することができる。
【0020】
本発明のプライマー樹脂層用樹脂組成物は、上記ベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂の他に硬化剤および硬化促進剤を含有していれば特に制限は無い。好ましい硬化剤としては、カヤハードGPH65(水酸基当量203g/eq 日本化薬製)、ザイロックXLC−3L(水酸基当量173g/eq 三井化学製)等のフェノール樹脂や、カヤフレックスCPAM−750(水酸基当量5000g/eq 日本化薬製)、カヤフレックスBPAM−250(水酸基当量5000g/eq 日本化薬製)等の反応性芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。その配合量は、プライマー樹脂のエポキシ当量に対し、硬化剤の当量が1.2倍以下となる様、調整するのが好ましい。また、好ましい硬化促進剤として、2−メチルイミダゾール(キュアゾール2MZ、四国化成工業製)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業製)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ−PW、四国化成工業製)等のイミダゾール系促進剤や、トリフェニルホスフィン(TPP、北興化学製)、トリ−o−トリルホスフィン(TOTP、北興化学製)等のりん系促進剤の他、EPCAT−P(活性物質担持量20重量% 日本化薬製)、EPCAT−PS5(活性物質担持量20重量% 日本化薬製)等のマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。その配合量は、プライマー樹脂に対し、イミダゾール系促進剤およびりん系促進剤の場合0.2〜2重量%、マイクロカプセル型潜在性硬化促進剤の場合1〜10重量%が好ましい。
【0021】
本発明のプライマー樹脂組成物は、得られるプライマー樹脂層の銅箔およびポリイミド樹脂への接着強度と、銅箔の防錆効果を損ねない範囲内で、種々の添加剤を加えることができる。これら添加剤としては、例えば、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機添加剤、またはシリカ化合物等の無機添加剤、顔料、染料、ハレーション防止剤、蛍光増白剤、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤、静電防止剤、粘度調整剤、イミド化触媒、促進剤、脱水剤、イミド化遅延剤、光安定剤、光触媒、低誘電体、導電体、磁性体や、熱分解性化合物等が挙げられる。
【0022】
本発明のプライマー樹脂層の形成方法は、粗化処理の施されていない銅箔の片面にプライマー樹脂またはプライマー樹脂層用樹脂組成物を、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはメチルベンゾエートから選ばれる1種以上の溶媒に溶解し、この溶液をプライマー樹脂層として固形分換算厚さが1〜10μmとなる様、塗布乾燥する方法である。例えばベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂他固形分20重量%のプライマー樹脂溶液またはプライマー樹脂層用樹脂組成物溶液を10μm厚に塗布し、80〜200℃で5〜60分、好ましくは130〜150℃で10〜30分乾燥させることにより、およそ2μm厚のプライマー樹脂層が得られる。このように溶媒の使用量は塗布する時の粘度と所望するプライマー樹脂層の厚さにより適宜決定すればよく、前記溶液中の固形分(溶媒以外の成分)濃度が、通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。
乾燥時の熱源は熱風でも遠赤外線ヒーターでもよいが、溶媒蒸気の滞留防止および樹脂内部までの熱伝導の点で、熱風と遠赤外線ヒーターを併用するとよい。乾燥温度は、溶媒を除去するのに必要な温度(プライマー樹脂と硬化剤との硬化反応を伴う場合は、硬化反応に必要な温度)であれば特に制限はなく、通常80〜200℃、好ましくは120〜180℃である。
【0023】
本発明のプライマー樹脂またはプライマー樹脂と硬化剤の反応生成物を主成分とするプライマー樹脂層を備えたフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板は、銅箔と樹脂基板との間に上記プライマー樹脂層が介在するフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板であり、銅箔および樹脂基板双方への接着強度が1N/mmであることが好ましい。
【0024】
本発明のプライマー樹脂層付銅箔は、上記プライマー樹脂層の形成方法において用いる粗面化処理の施されていない銅箔の表面粗さ(Rz)が2μm以下である銅箔、本銅箔表面にニッケル、鉄、亜鉛、金、錫より選ばれる1種以上のメッキ層を備えた銅箔、および/またはシランカップリング剤層を備えた銅箔を用いることによって得られる。
【0025】
銅箔表面のメッキ層はニッケル、鉄、亜鉛、金、錫より選ばれる1種以上がイオン化した溶液中での電解または無電解メッキにより得られ、厚みは10〜300nmが好ましい。用い得るシランカップリング剤は、アミノ系、エポキシ系他、市販されている種々のシランカップリング剤(KBMシリーズ 信越化学製)を用いることで得られ、厚みは1〜50nmが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
なお、実施例中のフィルムの特性測定方法は以下の通りである。
(銅箔との接着強度の測定)
プライマー樹脂層を形成させた銅箔上に、下記式(4)
【0028】
【化5】

【0029】
(式(4)中xは繰り返し数であり、全体の重量平均分子量は81000である。)で表されるポリイミド前駆体をN−メチル−2−ピロリドンおよびN,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒に溶解したKAYAFLEX KPI(ポリイミド前駆体溶液 日本化薬製)を所定の厚さに塗布乾燥後加熱閉環反応を行い、得られた片面銅箔付きフィルムの銅箔側に10mm幅のパターンをマスクして形成させ、フィルム側をボンディングシートにより0.3×70×150mmの鉄板(キャンスーパー パルテック製)に貼り付け、10mm幅の銅箔の端をカッターナイフで樹脂から剥がし、テンシロン試験機(AアンドD:オリエンテック製)を用いて、180°方向での銅箔と樹脂との接着強度を測定した。
【0030】
合成実施例1
温度計、冷却管、撹拌装置を取り付けた4径フラスコにベンゾトリアゾール化合物であるDAINSORB T−0(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール 分子量227.22 水酸基当量113.6g/eq 大和化成製)を113.6g、エピクロルヒドリン463g、およびジメチルスルホキシド(DMSO)232gを仕込み50℃で溶解した、更に撹拌下に窒素ガスを導入しながらフレーク状水酸化ナトリウム(純分99%)42gを2時間で添加した。添加終了後60℃で1時間、70℃で1時間、80℃で30分間反応させた。反応終了後、水300g、30%リン酸水素2ナトリウム水溶液30g加え水洗し、水層は分離除去し、油層を加熱減圧下過剰のエピクロルヒドリンを留去した。次いで420gのメチルイソブチルケトン(MIBK)を加え残留物を溶解させた。
【0031】
このメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し撹拌下、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液7gを添加し1時間反応させた後、水洗を繰り返し、pHを中性とした。更に水層は分離除去し、加熱減圧下過剰のメチルイソブチルケトンを留去し、下記式(5)
【0032】
【化6】


で表される黒色半固形のベンゾトリアゾール型2官能エポキシ樹脂(本発明のプライマー樹脂)161gを得た。エポキシ当量は192g/eq、軟化点49.7℃、150℃に於けるICI粘度0.4Pa・sであった。
【0033】
合成実施例2
温度計、冷却管、撹拌装置を取り付けた4径フラスコにベンゾトリアゾール化合物であるDAINSORB T−1(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール 分子量225.25 水酸基当量225.3g/eq 大和化成製)を225.3g、エピクロルヒドリン463g、ジメチルスルホキシド(DMSO)232gを仕込み50℃で溶解した、更に撹拌下に窒素ガスを導入しながらフレーク状水酸化ナトリウム(純分99%)42gを2時間で添加した。添加終了後60℃で1時間、70℃で1時間、80℃で30分間反応させた。反応終了後、水300g、30%リン酸水素2ナトリウム水溶液30g加え水洗し、水層は分離除去し、油層を加熱減圧下過剰のエピクロルヒドリンを留去した。次いで600gのメチルイソブチルケトン(MIBK)を加え残留物を溶解させた。
【0034】
更に、このメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し撹拌下、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液7gを添加し1時間反応させた後、水洗を繰り返し、pHを中性とした。更に水層は分離除去し、加熱減圧下過剰のメチルイソブチルケトンを留去し、下記式(6)
【0035】
【化7】


で表される黒色液状のベンゾトリアゾール型単官能エポキシ樹脂(本発明のプライマー樹脂)270g得た。エポキシ当量は290g/eq、150℃に於けるICI粘度0.05Pa・sであった。
【0036】
実施例1
合成実施例1で得られたベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂3.48gをN,N−ジメチルホルムアミド50gに溶解させ、硬化剤としてカヤフレックスCPAM−750(水酸基当量5000g/eq 日本化薬製)を30gと、硬化促進剤として2PHZ−PW(イミダゾール系促進剤 四国化成)を0.035g添加し、撹拌溶解させ本発明のプライマー樹脂層用樹脂組成物の溶液を得た。E型粘度計で測定した溶液粘度は、25℃で15000mPa・sであった。
【0037】
実施例2
実施例1で得られたプライマー樹脂組成物溶液50gに、希釈のためN,N−ジメチルホルムアミド50gを加え撹拌し、オートマチックアプリケーター(安田精機製作所製)を用い17μm厚の表面粗さ(Rz)が2μm以下である圧延銅箔上に10μm厚で塗布した後、130℃×10分乾燥し本発明の1.4μm厚のプライマー樹脂層付銅箔を得た。
【0038】
実施例3
合成実施例1で得られたベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂5gをN,N−ジメチルホルムアミド45gに溶解させた溶液を、オートマチックアプリケーター(安田精機製作所製)を用い17μm厚の表面粗さ(Rz)が2μm以下である圧延銅箔上に25μm厚で塗布した後、130℃×10分乾燥し本発明の2.3μm厚のプライマー樹脂層付銅箔を得た。
【0039】
実施例4
実施例3で用いた合成実施例1のベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂の代わりに、合成実施例2で得られたベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂を用いた以外は実施例3と同様にして、本発明の2.2μm厚のプライマー樹脂層付銅箔を得た。
【0040】
実施例5
実施例1で用いた17μm厚の表面粗さ(Rz)が2μm以下である圧延銅箔の代わりに、同銅箔上に170nm厚のニッケルメッキ層が施された銅箔を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明の1.4μm厚のプライマー樹脂層付ニッケルメッキ銅箔を得た。
【0041】
実施例6
実施例2で用いた17μm厚の表面粗さ(Rz)が2μm以下である圧延銅箔の代わりに、同銅箔上に170nm厚のニッケルメッキ層が施された銅箔を用いた以外は実施例2と同様にして、本発明の1.4μm厚のプライマー樹脂層付ニッケルメッキ銅箔を得た。
【0042】
実施例7
実施例2で用いた合成実施例1のベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂の代わりに、合成実施例2で得られたベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂を用いたのと、17μm厚の表面粗さ(Rz)が2μm以下である圧延銅箔の代わりに、同銅箔上に170nm厚のニッケルメッキ層が施された銅箔を用いた以外は実施例2と同様にして、本発明の1.4μm厚のプライマー樹脂層付ニッケルメッキ銅箔を得た。
【0043】
実施例8
実施例2で得られたプライマー樹脂層付銅箔のプライマー樹脂層側に、KAYAFLEX KPI(ポリイミド前駆体溶液 日本化薬製)をオートマチックアプリケーター(安田精機製作所製)を用い100μm厚で塗布した後、130℃×10分乾燥し、次いで窒素雰囲気下で2時間かけて350℃まで昇温し、さらに350℃で2時間保持し、その後、室温まで放冷して本発明のフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板を得た。樹脂層は12μm厚であった。
【0044】
実施例9
実施例3で得られたプライマー樹脂層付銅箔を用い、実施例8と同様にして本発明のフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板を得た。樹脂層は15μm厚であった。
【0045】
実施例10
実施例4で得られたプライマー樹脂層付銅箔を用い、実施例8と同様にして本発明のフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板を得た。樹脂層は13μm厚であった。
【0046】
実施例11
実施例5で得られたプライマー樹脂層付ニッケルメッキ銅箔を用い、実施例8と同様にして本発明のフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板を得た。樹脂層は13μm厚であった。
【0047】
実施例12
実施例6で得られたプライマー樹脂層付ニッケルメッキ銅箔を用い、実施例8と同様にして本発明のフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板を得た。樹脂層は12μm厚であった。
【0048】
実施例13
実施例7で得られたプライマー樹脂層付ニッケルメッキ銅箔を用い、実施例8と同様にして本発明のフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板を得た。樹脂層は14μm厚であった。
【0049】
比較例1
17μm厚の表面粗さ(Rz)が2μm以下である圧延銅箔上にプライマー樹脂層を設けることなく、大気中に暴露した直後と1週間暴露し続けた後とで、表面状態の違いを観測した。
【0050】
比較例2
17μm厚の表面粗さ(Rz)が2μm以下である圧延銅箔上にプライマー樹脂層を設けることなく、KAYAFLEX KPI−100(ポリイミド前駆体溶液 日本化薬製)を、オートマチックアプリケーター(安田精機製作所製)を用い100μm厚で塗布した後、130℃×10分乾燥し、次いで窒素雰囲気下で2時間かけて350℃まで昇温し、さらに350℃で2時間保持し、その後、室温まで放冷して本発明のフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板を得た。樹脂層は11μm厚であった。
【0051】
実施例2〜7および比較例1の銅箔の表面状態を表1に、実施例8〜13および比較例2の接着強度測定値について結果を表2に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面化処理の施されていない銅箔と樹脂基材との接着性を確保するためのプライマー樹脂層用樹脂であって、下記式(1)
【化1】

(式(1)中Rはグリシジル基を含有する有機基を表し、Rはグリシジル基を含有する有機基またはO、S、F、Nを含んでもよい炭素数1〜6の有機基をそれぞれ表す。)で表されるベンゾトリアゾール型エポキシ樹脂からなるプライマー樹脂。
【請求項2】
式(1)におけるR、Rのうち少なくとも一方が、オキシグリシジル基である請求項1記載のプライマー樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプライマー樹脂、硬化剤および硬化促進剤を含有してなることを特徴とするプライマー樹脂層用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1もしくは2に記載のプライマー樹脂、または請求項3記載のプライマー樹脂層用樹脂組成物をN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはメチルベンゾエートより選ばれる1種以上を含有する溶媒に溶解させ溶液を調製し、次いでこの溶液を銅箔上に塗布乾燥し、プライマー樹脂層を形成させることを特徴とする、プライマー樹脂層の形成方法。
【請求項5】
請求項4記載の形成方法により得られたプライマー樹脂層を備えたフレキシブルプリント配線板用の銅張り積層板。
【請求項6】
粗面化処理の施されていない銅箔の表面粗さ(Rz)が2μm以下である面に請求項4記載の形成方法により得られたプライマー樹脂層を備えていることを特徴とするプライマー樹脂層付銅箔。
【請求項7】
プライマー樹脂層を設けた銅箔の表面が、ニッケル、鉄、亜鉛、金、錫より選ばれる1種以上のメッキ層を備えた面である請求項6に記載のプライマー樹脂層付銅箔。
【請求項8】
プライマー樹脂層を設けた銅箔またはメッキの表面が、シランカップリング剤層を備えた面である請求項6または7に記載のプライマー樹脂層付銅箔。

【公開番号】特開2008−13666(P2008−13666A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186592(P2006−186592)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】