説明

プラズマ処理装置、プラズマ処理方法および半導体素子の製造方法

【課題】導電体の熱断線の発生を抑制することができるプラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】反応性ガスが導入される密封可能なチャンバーと、前記チャンバー内に対向状に配置されたカソード電極およびアノード電極を有し前記カソード電極と前記アノード電極の間でプラズマ放電を発生する放電部と、前記カソード電極に電力を供給する電源と、前記電源と前記カソード電極とを電気的に接続する導電体と、前記導電体を冷却する空冷手段とを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置、プラズマ処理方法およびそれらによる半導体素子の製造方法に関し、詳しくは、プラズマ処理装置の給電構造に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性ガスが導入される密封可能なチャンバーと、前記チャンバー内に対向状に配置されてプラズマ放電を発生させるカソード電極とアノード電極の組からなる放電部と、放電部に高周波電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ処理装置としては、カソード・アノード電極を垂直方向に配置した縦型(例えば、特許文献1参照)と、カソード・アノード電極を水平方向に配置した横型(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
これらのプラズマ処理装置は、カソード電極と高周波電源とが導電体にて電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−196681号公報
【特許文献2】特開平5−21394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電体において、カソード電極との接続部分はチャンバー内に挿入されており、プラズマ処理時に反応性ガス雰囲気下で高温にさらされるため、耐熱性および耐腐食性の高い導電性材料で導電体を保護した構造である電力導入端子が用いられている。
一方、チャンバー外において導電体における電力導入端子と高周波電源部との間には高導電性材料からなる電力導入線が用いられており、別体である電力導入端子と電力導入線とが接続部品を用いて互いに接触した状態で固定されることで電気的に接続されている。また、電力導入線を分岐させたり曲げたりする為に、電力導入線が異なる複数の配線を接続することで構成される場合もある。これらの接続部は接触抵抗により局所的に発熱しやすくなっている。
そのため、供給電力を増加させていくと、電力導入線部分よりも接続部が高温になり、その熱によって接続部品が劣化して接触不良や熱断線を発生しやすいという課題を、発明者らは新たに見出した。
より詳しく説明すると、前記接続部の導電体接触面が発熱による温度上昇によって接触部の導電体や接続部品が熱による影響(熱変形など)を受け、導電体同士の接触面積が減少することによって接触不良が生じる。熱による影響が大きくなり完全に導電体同士が離間することで熱断線が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして、本発明によれば、反応性ガスが導入される密封可能なチャンバーと、前記チャンバー内に対向状に配置されたカソード電極およびアノード電極を有し前記カソード電極と前記アノード電極の間でプラズマ放電を発生する放電部と、前記カソード電極に電力を供給する電源と、前記電源と前記カソード電極とを電気的に接続する導電体と、前記導電体を冷却する空冷手段とを備えたプラズマ処理装置が提供される。
【0006】
また、本発明の別の観点によれば、前記プラズマ処理装置における前記放電部に基板を設置して前記基板の表面に半導体膜を積層するか、あるいは表面に半導体膜を有する基板を前記放電部に設置して前記基板上の前記半導体膜をエッチングするプラズマ処理方法が提供される。
また、本発明のさらに別の観点によれば、前記プラズマ処理方法を用いて前記基板上に半導体素子を形成する半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のプラズマ処理装置によれば、空冷手段にて導電体を冷却することができるため、発熱による導電体の断線を抑制することができる。
特に、導電体が異なる配線を接続することで構成されている場合、通電時には異なる配線同士の接続部が接触抵抗により高温となって断線し易いため、接続部を冷却することにより断線を抑制するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のプラズマ処理装置の実施形態1を示す概略構成図である。
【図2】実施形態1のプラズマ処理装置の部分正面図である。
【図3】実施形態1のプラズマ処理装置の部分背面図である。
【図4】実施形態1のプラズマ処理装置の導電体およびケースを示す構成図である。
【図5】実施形態1における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
【図6】本発明の実施形態2のプラズマ処理装置の部分背面図である。
【図7】実施形態2における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
【図8】本発明の実施形態3のプラズマ処理装置の部分背面図である。
【図9】本発明の実施形態4における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
【図10】本発明の実施形態5における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
【図11】本発明の実施形態6における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプラズマ処理装置は、反応性ガスが導入される密封可能なチャンバーと、前記チャンバー内に対向状に配置されたカソード電極およびアノード電極を有し前記カソード電極と前記アノード電極の間でプラズマ放電を発生する放電部と、前記カソード電極に電力を供給する電源と、前記電源と前記カソード電極とを電気的に接続する導電体と、前記導電体を冷却する空冷手段とを備える。
空冷手段としては、エアーフローを発生して導電体を空冷することができるものであれば特に限定されず、例えば、冷却ファン、コンプレッサーからの圧縮エアーをホースを介して噴出するエアー噴出装置等を用いることができる。
【0010】
本発明によるプラズマ処理装置は、カソードおよびアノードの各電極を水平方向に配置した横型プラズマ処理装置、各電極を垂直方向に配置した縦型プラズマ処理装置、基板上に膜(例えば、半導体素子を構成する半導体膜)を成膜する成膜型プラズマ処理装置および基板上の膜(例えば、半導体素子を構成する半導体膜)をエッチングするエッチング型プラズマ処理装置に適用可能である。
本発明は、特に、電源として、AC10MHz〜60MHzの周波数で1kW〜30kWの高周波電力を供給する高周波電源を備え、さらには、放電部が複数備えられており、導電体が高温になり易いプラズマ処理装置に好適である。
本発明のプラズマ処理装置は次のように構成されてもよい。
【0011】
(1)前記導電体を収納する金属製ケースをさらに備え、
前記空冷手段が、前記ケースの壁面に取り付けられて前記ケースの内部を通気させる冷却ファンである。
このようにすれば、ケースにて通電時の導電体に作業者が接触する事故の防止を行えると共に、導電体からの電磁波の外部漏洩を抑制することができる。
さらに、ケースが冷却ファンの支持構造体として利用することができると共に、導電体周辺のみにエアーフローを形成することができて好都合となる。
この場合、ケースは、完全な密閉型ではなく、例えば、ケースを構成するプレート材同士の接合部位に隙間が形成されていることが、ケースの内外で空気の流通が容易となる上で好ましい。
【0012】
(2)前記導電体が、前記カソード電極と電気的に接続される一端を有する電力導入端子と、前記電力導入端子の他端と電気的に接続される一端および前記高周波電源と電気的に接続される他端とを有する電力導入線とを有してなり、
前記冷却ファンが、前記電力導入端子と前記電力導入線との接続部を冷却するようこの接続部の近傍に配置されている。
このようにすれば、接触抵抗により特に高温となって断線し易い導電体の接続部を局所的に冷却することができ、冷却効果および断線抑止効果を高めることができる。
【0013】
(3)前記電力導入線が、複数の異なる導線を電気的に接続してなり、
前記異なる導電線同士の接続部を冷却するようこの接続部の近傍にさらに別の空冷ファンが配置されている。
このようにすれば、前記(2)と同様の効果が得られると共に、導電体の設計の自由度を大きくすることができるという利点もある。
【0014】
(4)前記(2)および(3)の場合、前記ケースの壁面における前記接続部の近傍に、前記ケース内の空気を排出または導入するための通気口が形成されていることが好ましい。
このようにすれば、導電体の接続部周囲のエアーフローを効率よく行うことができ、より一層冷却効果および断線抑止効果を高めることができる。
【0015】
(5)前記通気口が、小孔の集合体からなる。
このようにすれば、ケースの強度を高めることができる。
【0016】
(6)前記冷却ファンが、外部の空気を前記ケース内へ導入するように前記ケースの壁面に取り付けられ、
前記冷却ファンの吸気側に防塵フィルタが設けられている。
このようにすれば、外部の空気中に浮遊する塵や埃が導電体に付着することを抑制できる。特に、プラズマ処理装置が設置された工場内では半導体の原料微粒子が浮遊している場合があり、半導体の原料微粒子が導電体に付着すると、導電体が腐食し電気抵抗が増加して、電力供給効率が低下したり、導電体の発熱によって引火して電気火災が発生するおそれがあるため、このような事故の発生を防止することができる。
【0017】
(7)前記冷却ファンが、前記ケース内の空気を外部に排出するよう前記ケースの壁面に取り付けられ、
前記通気口に防塵フィルタが設けられている。
このようにしても、前記(6)と同様の効果が得られる。
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明のプラズマ処理装置を詳説する。なお、本発明は図示した実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(実施形態1)
図1は本発明のプラズマ処理装置の実施形態1を示す概略構成図であり、図2は実施形態1のプラズマ処理装置の部分正面図であり、図3は実施形態1のプラズマ処理装置の部分背面図である。
【0020】
実施形態1のプラズマ処理装置P1は、縦型プラズマ処理装置であって、密封可能なチャンバー1と、チャンバー1に反応ガスを導入する図示しないガス導入部と、チャンバー1から反応ガスを排気する排気部15と、チャンバー1内に垂直かつ対向状に配置されてプラズマ放電させるカソード電極2とアノード電極3の組からなる4組の放電部4と、各放電部4に電力を供給する電源Eと、電源Eと各放電部4のカソード電極2とをマッチングボックスMを介して電気的に接続する導電体10と、導電体10を収納する金属製ケース20と、導電体を冷却する冷却ファン30とを備え、各放電部4のアノード電極3に基板Sを設置し、基板Sの表面に半導体膜を積層して半導体素子を形成することができる。
【0021】
チャンバー1は、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム合金といった電気伝導体からなり、接地されている。
チャンバー1は、正面側に開閉扉(図示省略)する横長箱型であり、その上下の内壁面には各カソード電極2と各アノード電極3を一定間隔をもって支持する支持片(図示省略)が設けられると共に、チャンバー1の所定の壁面に排気部15が接続されている。なお、一の放電部4のアノード電極3と隣接する他の放電部4のカソード電極2との間も一定間隔に設定されている。
チャンバー1の上壁外部には、導電体10を収納するように、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の電気伝導体からなるケース20が配置されている。
【0022】
図4は実施形態1のプラズマ処理装置の導電体およびケースを示す構成図である。なお、図4において、アノード電極は図示省略している。
図1〜図4に示すように、ケース20は、チャンバー1上に並んで設置された2つの直方体形の第1部分21と、2つの第1部分21上に設置された直方体形の第2部分22とからなり、チャンバー1と各第1部分21との連結部分および各第1部分21と第2部分22との連結部分には導電体10を挿通させる挿通孔が形成されている。
また、マッチングボックスMはケース20の第2部分上に設置されており、それらの連結部分にも導電体10を挿通させる挿通孔が形成されている。
なお、導電体10およびケース20についてさらに詳しくは後述する。
【0023】
各カソード電極2はそれぞれ同じ構成を有し、各アノード電極3はそれぞれ同じ構成を有している。
カソード電極2は、ステンレス鋼やアルミニウム合金などから作製される。カソード電極2の寸法は、成膜される基板Sの寸法に合わせて適当な値に設定され、アノード電極3と略同じ寸法(平面サイズおよび厚み)で設計されることが好ましい。
カソード電極2は、内部が空洞であると共に、対向するアノード電極3に面するプラズマ放電面には前記空洞部と導通した多数の貫通穴が穴開け加工により開けられている。この穴開け加工は、直径0.1mm〜2mmの円形穴を数mm〜数cmピッチで行うのが望ましい。
【0024】
また、カソード電極2の一端面には、図示しないガス導入部としてのガス導入管が接続されており、図示しないガス供給源とガス導入部とは接続パイプにて接続されており、反応ガスがガス供給源からカソード電極2の内部に形成された前記空洞に供給され、前記多数の貫通穴からアノード電極3にて保持された基板Sの表面に向かって反応ガスが均一に噴出するように構成されている。
なお、成膜用の反応ガス(原料ガス)は、成膜する膜の材質に応じたものを使用する。例えば、不純物をドーピングしたシリコン系半導体膜を成膜する場合は、H2で希釈したSiH4(モノシラン)ガスとともに、PH3(ホスフィン)ガス、B26(ジボラン)ガス、CO2ガスなどが使用される。
また、エッチング用の反応ガス(エッチングガス)についても、エッチングする膜の材質に応じたものを使用する。例えば、シリコン系半導体膜をエッチングする場合は、CF4、C26、CHF3、NF3、Cl2などの含ハロゲン化合物からなるエッチングガスが使用される。プラズマ処理装置のチャンバー内に付着した半導体膜をエッチングガスを用いたプラズマクリーニングにより除去することができる。
【0025】
アノード電極3は、内部にヒータ5を有すると共に、対となるカソード電極2に面した側の側面上に基板Sが設置され、プラズマ放電下の成膜時に基板Sを加熱する。なお、基板Sは、半導体基板(例えば、シリコン基板)やガラス基板などが一般的であるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、アノード電極3は、ステンレス鋼、アルミニウム合金、カーボンなどの、導電性および耐熱性を備えた材料で製作されている。
アノード電極3の寸法は、薄膜を形成するための基板Sの寸法に合わせて適当な値に決定されている。例えば、アノード電極3上に一枚の基板Sを設置する場合、基板Sの寸法900〜1200mm×400〜900mmに対して、アノード電極3の寸法を1000〜1500mm×600〜1000mmにして設計される。また、複数の基板Sをアノード電極3上に設置する場合は、設置する基板の配列と合計寸法に基づいて、アノード電極3の寸法を適当に設定することが好ましい。
【0026】
アノード電極3に内蔵されたヒータ5は、アノード電極3を室温〜300℃に加熱制御するものであり、例えば、アルミニウム合金中にシースヒータなどの密閉型加熱装置と熱電対などの密閉型温度センサとを内蔵したものを用いることができる。
また、本発明の実施形態ではヒータ5はアノード電極3に内蔵されているが、ヒータ5とアノード電極3が分離されて設置されている構成でもよい。その場合、ヒータ5は基板Sを面内均一に加熱できるように構成されていることが好ましい。例えば、アノード電極3の基板Sを設置した面の裏面側に、プレート状のヒータを設置して用いることができる。
【0027】
図1では、カソード電極2とアノード電極3が一対一に対応しているが、本発明はそれに限られず、例えば、図1の変形として、カソード電極2に対してアノード電極3が左右両側に設置され、カソード電極2一つに対して二つのアノード電極3が設置された装置構成を取ることもできる。
【0028】
導電体10は、カソード電極2と電気的に接続される一端を有する電力導入端子11と、電力導入端子11の他端と電源Eとを電気的に接続する電力導入線12とを有してなり、電力導入電12は、複数の異なる第1〜第4導線12a〜12dを電気的に接続してなる。
なお、導電体10を構成する電力導入端子11および第1〜第4導線12a〜12dを「配線」と称する場合がある。
【0029】
電力導入端子11は、例えば、無酸素銅からなる金属棒であり、その一端はケース20の第1部分21およびチャンバー1を貫通する挿通孔を通ってチャンバー1内のカソード電極2に電気的に接続されている。なお、電力導入端子11は、ケース20の第1部分21およびチャンバー1に対して、セラミック碍子などの絶縁体を介在させることで電気的に絶縁されている。
この導電体10の場合、4つのカソード電極2と接続される4つの電力導入端子11を有している。
なお、全てのアノード電極3は接地されている。
【0030】
第1導線12aは、例えば、無酸素銅に錫メッキしたU字形の金属棒または金属プレートであり、その両端がそれぞれ、隣接する2つの電力導入端子11の他端に金属製の締結部品aによって接触した状態で固定されることで電気的に接続されている。
例えば、第1導線12aの端部に電力導入端子11の他端が挿入できる孔部が設けられており、孔部に挿入されることで第1導線12aと電力導入端子11とが互いに接触されており、締結部品aは、第1導線12aと電力導入端子11の接触部近傍を外周より接触して覆うことができる2つの挟持部材と、2つの挟持部材を互いに締結できるボルト部材とで構成され、第1導線12aと電力導入端子11が、その接触部近傍をボルト部材で締結した挟持部材で圧接して固定されることで互いに電気的に接続される。
【0031】
第2導線12bは、例えば、無酸素銅に錫メッキしたU字形の金属棒または金属プレートであり、その両端が、ケース20の第1・第2部分21、22を貫通する挿通孔を通って2つの第1導線12aに金属製の締結部品bを介して電気的に接続されている。なお、第2導線12bと第1導電12aとの接続箇所は、第1導線12aの両端から等距離の点が好ましい。
締結部品bは、例えば、一対のL字形金具およびネジを有してなり、L字形金具は両端付近にネジ挿通孔を有している。
第1および第2導電12a、12bの接続箇所近傍にはそれぞれネジ孔が形成されており、一対のL字形金具を第1および第2導電12a、12bに沿わせてネジをそれぞれのネジ挿通孔に挿通させ、かつネジ孔に螺合させることにより、第1および第2導電12a、12bが接触した状態で固定されることで電気的に接続される。
【0032】
第3導線12cは、例えば、無酸素銅に錫メッキした金属棒または金属プレートであり、その一端は、ケース20の第2部分を貫通する挿通孔を通って第2導線12bと金属製の締結部品cを介して電気的に接続され、他端はマッチングボックスMの出力側端子と電気的に接続されている。なお、第3導線12cと第2導電12bとの接続箇所は、第2導線12bの両端から等距離の点が好ましい。
締結部品cおよび第2・第3導線12b、12cの接続は、締結部品bおよび第1・第2導線12a、12bの接続と同様である。
なお、図1および図4において、締結部品a〜cを簡略化して図示している。また、導電体10における締結部品a〜cおよび接続方法は、前記の例に限定されない。
【0033】
締結部の材質は、ある程度の耐熱性と強度があるものであればよいが、より好ましくは、配線と同じ材質か、もしくは熱膨張率が同等の材質を用いる。それによって、配線と締結部の熱膨張が略同じとなることで、熱膨張の差による接続部での負荷の発生を低減することができ、断線する可能性をより低減することができる。
【0034】
第4導線12dは、例えば、中心導体を絶縁層、導電層および絶縁層でこの順に被覆する同軸ケーブルからなり、その両端は、マッチングボックスMの入力側端子と電源Eの出力端子に電気的に接続されている。
【0035】
排気部15は、真空ポンプ15a、真空ポンプ15aとチャンバー1の内部(反応室)とを接続する排気管15bおよび排気管15bにおけるチャンバー1と真空ポンプ15aとの間に配置された圧力制御器15cとを備えてなる。
本実施形態では、排気部15はチャンバー1の側壁に1箇所接続された構成であるが、排気部15の接続面は側壁に限られず、また、複数の排気部15を備えていてもよい。例えば、チャンバー1の左右の側壁2箇所に排気部15を設けることができる。左右2箇所に排気部15を設けることで、チャンバー1内部の左部および右部の雰囲気をそれぞれ効率よく排気することが可能となる。
【0036】
マッチングボックスMは電源Eと各カソード電極2との間のインピーダンスを整合するためのものである。
電源Eは、高周波発生器と、高周波発生器からの高周波電力を増幅してカソード電極2に供給する増幅器とを備えてなるプラズマ励起電源であり、例えば、AC1.00MHz〜60MHzの周波数で10W〜100kWの高周波電力を供給することができ、本発明においては、特に、AC10MHz〜60MHzで1kW〜30kWの高周波電力を各カソード電極2に供給することを想定している。
【0037】
ケース20は、電源Eからの高周波電力が導電体10を通電することにより生じる電磁波(高周波)が外部に漏れないように遮断する機能と、作業者が導電体10に接触して感電しないようにする安全カバーの機能とを有している。
ケース20の第1・第2部分21、22は、電気伝導体から構成され、チャンバー1の構成部品と同じ材質(一般的にはステンレス鋼)から構成されることが好ましい。
【0038】
第1部分21は、正面側および背面側の壁面における電力導入端子11と第1導線12aとの接続部および第1・第2導電12a、12bの接続部の近傍位置に、窓部21aおよび通気口21bが形成されている。
また、第2部分22は、正面側および背面側の壁面における第2・第3導電12b、12cの接続部の近傍位置に、窓部22aおよび通気口22bが形成されている。
【0039】
このケース20の場合、各第1部21に窓部21aと通気口21bが相互に対向する位置に3箇所形成され、第2部22に窓部22aと通気口22bが相互に対向する位置に1箇所形成されている。
通気口21b、22bの大きさおよび形状は、ケース20内から電磁波が漏洩しないよう、使用する高周波電力の波長を考慮した大きさおよび形状である。
本発明の場合、電源Eの最も波長が小さい60MHzの高周波電力を使用する場合の波長は5mであるため、一辺または直径が5mを超えない形状の通気口21b、22bであれば問題ない。
【0040】
図5は実施形態1における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
冷却ファン30は、回転軸およびそれを回転させるモータ(図示省略)と、回転軸に一体化された羽根31と、回転軸およびモータを支持する枠部32とを有し、枠部32がケース20の各第1部分21の窓部21aおよび第2部分22の窓部22aに取り付けられている。
このとき、冷却ファン30は、ケース20内に外気を送風するように窓部21a、22aに取り付けられる。なお、図5において、矢印AおよびBは風が流れる方向を示している。
【0041】
前記のように、導電体10は、異なる配線同士が前記締結部品a〜cによって互いに接触して固定されることで電気的に接続された接続部を有し、各接触部における配線・配線間には接触抵抗が存在している。そのため、導電体10に高周波電力を通電すると、各接触部は接触抵抗により配線が一体となっている部分よりも発熱しやすくなっている。
本発明のプラズマ処理装置P1は、そのプラズマ処理時に、締結部品a〜cが接触部で発生した熱により破断して各接続部が熱断線しないよう、各冷却ファン30を駆動させてケース20内に外気を送風して、各接続部を特に集中的に空冷するように構成されている(図5参照)。なお、ケース20内の加熱された空気は通気口21b、22bから排出される。
本発明のプラズマ処理装置によれば、導電体10の熱断線しやすい接続部を局所的に効率よく冷却することができるため、接続部の熱断線を効果的に抑制することができる。
したがって、カソード電極2により高い電力を供給することが可能となり、半導体素子の製造プロセス時間を短縮することができると共に、導電体10の温度上昇による電気抵抗の上昇を抑制できるため、電力の供給効率向上も期待できる。
【0042】
例えば、本発明のように空冷手段を有さない従来のプラズマ処理装置の場合、本発明のような1kW以上の電力値の高周波電力をカソード電極に印加すると、配線同士の接触部から発生する熱で導電体の各接続部の温度は300℃以上となり、耐熱温度300℃程度の締結部品は熱によって膨張し、電力を切ると温度が低下して収縮する。本発明者らは、このようにプラズマ処理装置の運転を繰り返すことで、締結部品が膨張変形と収縮変形を繰り返すため最終的に破断してしまい、配線同士が離間して導電体が断線したことを確認している。
【0043】
また、本発明者らは、本発明のプラズマ処理装置P1を前記と同様に繰り返し運転した場合、冷却ファン30による冷却効果により導電体10の各接続部の温度が最大230℃で留まり、締結部品の膨張変形および収縮変形は抑制され、熱断線の発生を抑えることができたことも確認している。
このように、本発明のプラズマ処理装置は、空冷手段によって導電体10の熱断線しやすい接続部を冷却することができるため、冷媒を流動するような大掛かりな冷却手段と比較して、空冷手段を簡単な構成かつ低コストで作製することができ、イニシャルコスト、ランニングコストおよびメンテナンス性の面で優れている。
【0044】
(実施形態2)
図6は実施形態2のプラズマ処理装置の部分背面図であり、図7は実施形態2における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
実施形態2のプラズマ処理装置P2は、ケース120の第1および第2部分121、12の通気口121b、122bが実施形態1と異なる以外は、実施形態1と同様である。なお、図6において、図3中の要素と同様の要素には同一の符合を付し、図7中の矢印は空気が流れる方向を表している。
実施形態2の場合、通気口121b、122bは小孔の集合体からなる。
【0045】
小孔の集合体からなる通気口121b、122bは、例えば、金網、金属製の格子または柵(フィンガード)、パンチングメタルプレート等を実施形態1における通気口21b、22bに取り付ける、あるいはケース120の第1および第2部分121、122を構成する金属プレートに直接穿孔することにより形成することができる。図6では金網または金属製の格子にて通気口121b、122bを形成した場合を例示している。
通気口121b、122bの開口率については、実施するプラズマ処理の内、最も導電体の温度が高くなるプロセス条件を実施する際の配線温度上昇を抑えられ、かつケース120が変形しない強度を保つように、開口率を設定することが好ましい。
【0046】
このように、通気口121b、122bが小孔の集合体から構成されることにより、作業者が誤って導電体に接触する事故の可能性を低減できると共に、ケース120の強度を高めることができる。
この場合、小孔の大きさは実施形態1の通気口よりも小さいため、ケース120内から電磁波が漏洩することはない。
また、通気口を横断面円形または楕円形のファンガードにて構成すれば、空気の流れに対する抵抗を低減できるため、大きなエアーフローを確保する必要がある場合に好適である。
【0047】
(実施形態3)
図8は実施形態3のプラズマ処理装置の部分背面図である。なお、図8において、図6中の要素と同様の要素には同一の符合を付している。
実施形態3のプラズマ処理装置P3の場合、ケース220の第1部分221の通気口221bは、実施形態2における第1部分221の3つの通気口121bが一体化したものである。また、実施形態3におけるケース220の第2部分222の通気口222bは、実施形態2における第2部分122の通気口122bよりも拡大している。
実施形態3において、その他の構成は実施形態2と同様である。
【0048】
このように通気口221b、222bの範囲を大きくすることにより、ケース220内の加熱された空気を排気する際の排気抵抗が減少するため、ケース220内の空気滞留を低減することができ、更なる冷却効率の向上が期待できる。
この場合、ケース220の強度が低下しない程度の開口率に設定することが好ましく、さらに、ケース220を構成する金属プレートについて一部または全体の厚みを増加して強度を高めるようにしてもよい。
【0049】
(実施形態4)
図9は実施形態4における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
実施形態4のプラズマ処理装置は、実施形態1〜3における冷却ファン30の吸気側にさらに防塵フィルタ40が備えられている。なお、図9では、実施形態2と同様の通気口121bを有するプラズマ処理装置の場合を代表的に例示しており、図9における図7中の要素と同様の要素には同一の符合を付し、図9中の矢印は空気が流れる方向を表している。
実施形態4において、その他の構成は実施形態1〜3と同様である。
【0050】
一般的に、プラズマ処理装置が設置されている場所の周辺環境によっては、空冷手段による外気の吸気と共に、周囲から塵埃がケース内に吸い込まれ、ケース内部や配線表面に塵埃が付着する。
また、成膜処理を行うプラズマ処理装置においては、チャンバー内に粉状の半導体膜が付着し、メンテナンスなどでチャンバーを開放した際に半導体が粉塵となって外部に流出し、その粉塵が前記塵埃と同様にケース内に吸引されて付着する。
付着した塵埃や粉塵によって、配線が腐食し電気抵抗が増加して、電力供給効率が低下する。また、塵埃や粉塵が配線の発熱によって引火し、電気火災が発生するおそれがある。
【0051】
実施形態4のプラズマ処理装置では、ケース内に送風する冷却ファン30の吸気側に防塵フィルタ40を設置することで、ケース内への塵埃や粉塵の侵入を抑制でき、塵埃や粉塵がケース内壁や配線表面に付着することを抑制できる。
防塵フィルタ40を用いる場合、塵埃や粉塵が防塵フィルタ40に溜まっていくことで目詰まりを発生し、徐々にエアフローが低下していくため、定期的に防塵フィルタ40の清掃や交換が必要となる。この場合、風量計などで、エアフローの状態を定期的にモニタリングすることで、正確な交換周期を管理することができる。
【0052】
(実施形態5)
図10は実施形態5における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。
実施形態1〜4では、ケース内に送風できるように冷却ファン30設けた場合を例示したが、実施形態5のようにケース内の空気を外部へ排出するよう冷却ファン30を設けてもよい。
【0053】
この場合、冷却ファン30が排気側となり、通気口121b側が吸気口となる。
通気口121bは、実施形態2または3のように小孔の集合体から構成されてもよく、実施形態1のような大きな1つの開口から構成されてもよい。
なお、図10では、実施形態2と同様の通気口121bを有するプラズマ処理装置の場合を代表的に例示しており、図10における図7中の要素と同様の要素には同一の符合を付し、図10中の矢印は空気が流れる方向を表している。
実施形態5において、その他の構成は実施形態1〜4と同様である。
実施形態5の場合、冷却ファン30がケース内で加熱された空気を外部へ排気し、空気の排気によって気圧が低下したケース内に、通気口121bから外気が吸気されて導電体の接続部が冷却される。
【0054】
(実施形態6)
図11は実施形態6における冷却ファンのケースへの取付構造を説明する断面図である。図11における図7中の要素と同様の要素には同一の符合を付し、図11中の矢印は空気が流れる方向を表している。
実施形態6の場合、実施形態5における通気口121bに防塵フィルタ40が設けられている。
なお、図11では、実施形態2と同様の通気口121bを有するプラズマ処理装置の場合を代表的に例示しており、通気口は実施形態1または3のような構成でもよい。
このようにすれば、防塵フィルタ30によってケース外部からの塵埃や粉塵の侵入を抑制できる。
【0055】
(他の実施形態)
1.実施形態1〜6については、導電体を収納する金属ケースを備えたプラズマ処理装置の場合を例示しているが、中心導体を絶縁層、導電層および絶縁層でこの順に被覆する同軸ケーブルを導電体の電力導入線として用いた場合は、金属ケースが不要となる。この場合、異なる同軸ケーブル同士の接続部のみを露出させて接続部に冷却風を吹き付けることができる。なお、同軸ケーブルを使用する場合は、同軸ケーブルの温度がそれほど上昇しない設定条件(低パワー、低電流、低周波数等)での運転が主流となるため、空冷手段により同軸ケーブルの冷却を行う必要性は実施形態1〜6の場合に比べて低下する。したがって、本発明は、特に、導電体が高温となり易い設定条件(高パワー、高電流、高周波数等)で運転するプラズマ処理装置に好適である。
【0056】
2.実施形態1〜6で説明した金属製ケースの代わりに、筒形の金属メッシュで導電体を覆うように構成することも可能である。この場合、空冷手段により発生したエアーフローが金属メッシュの孔を通して金属メッシュ内外に流通可能である。なお、この場合、例えば、冷却ファンを支持台または支持脚を用いて支持すればよい。
3.実施形態1〜6ではケースにおける導電体の接続部近傍に通気口を配置した場合を例示したが、ケース全体に分散状に小孔を配置してなる通気口を設けてもよい。あるいは、ケース壁面に通気口を形成するのではなく、ケースを構成する金属プレート同士の接合部に隙間を設けることにより、この隙間を通気口の代わりに利用してもよい。
【0057】
4.実施形態1〜6については、電極設置方向が垂直の縦型プラズマ処理装置の場合を例示しているが、本発明は電極設置方向が水平の横型プラズマ処理装置にも適用可能である。
【0058】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明におけるプラズマ処理装置によれば、半導体薄膜または光学的薄膜を用いた、太陽電池、TFT、感光体などの半導体素子について、安定した装置稼働率で高速な製造プロセスの実施に貢献できる。
【符号の説明】
【0060】
1 チャンバー
2 カソード電極
3 アノード電極
4 放電部
E 高周波電源
10 導電体
30 空冷手段(冷却ファン)
11 電力導入端子
12 電力導入線
20 金属製ケース
21a、22a 窓部
21b、22b 通気口
40 防塵フィルタ
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性ガスが導入される密封可能なチャンバーと、
前記チャンバー内に対向状に配置されたカソード電極およびアノード電極を有し前記カソード電極と前記アノード電極の間でプラズマ放電を発生する放電部と、
前記カソード電極に電力を供給する電源と、
前記電源と前記カソード電極とを電気的に接続する導電体と、
前記導電体を冷却する空冷手段と、
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記導電体を収納する金属製ケースをさらに備え、
前記空冷手段が、前記ケースの壁面に取り付けられて前記ケースの内部を通気させる冷却ファンである請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記導電体が、前記カソード電極と電気的に接続される一端を有する電力導入端子と、前記電力導入端子の他端と電気的に接続される一端および前記高周波電源と電気的に接続される他端とを有する電力導入線とを有してなり、
前記冷却ファンが、前記電力導入端子と前記電力導入線との接続部を冷却するようこの接続部の近傍に配置された請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記電力導入線が、複数の異なる導電線を電気的に接続してなり、
前記異なる導電線同士の接続部を冷却するようこの接続部の近傍にさらに別の空冷ファンが配置された請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記ケースの壁面における前記接続部の近傍に、前記ケース内の空気を排出または導入するための通気口が形成されている請求項3または4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記通気口が、小孔の集合体からなる請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記冷却ファンが、外部の空気を前記ケース内へ導入するように前記ケースの壁面に取り付けられ、
前記冷却ファンの吸気側に防塵フィルタが設けられている請求項2〜6のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記冷却ファンが、前記ケース内の空気を外部に排出するよう前記ケースの壁面に取り付けられ、
前記通気口に防塵フィルタが設けられている請求項5または6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記電源が、AC10MHz〜60MHzの周波数で1kW〜30kWの高周波電力を供給する高周波電源である請求項1〜8のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
放電部が複数備えられている請求項1〜9のいずれか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載されたプラズマ処理装置における前記放電部に基板を設置して前記基板の表面に半導体膜を積層するか、あるいは表面に半導体膜を有する基板を前記放電部に設置して前記基板上の前記半導体膜をエッチングするプラズマ処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載のプラズマ処理方法を用いて前記基板上に半導体素子を形成する半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−228133(P2011−228133A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97119(P2010−97119)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】