説明

プラズマ処理装置及びその処理ガス供給構造

【課題】要求される処理プロセス性能に応じて必要とされる処理ガスの供給状態の実現可能性を増大させることのできるプラズマ処理装置及びその処理ガス供給構造を提供する。
【解決手段】高周波アンテナに高周波電力を印加することにより処理室内に誘導プラズマを励起して、処理室内の載置台に載置された基板に対して所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、処理室内の載置台の上方に位置する空間に、処理室の側壁から処理室の中心に向くように処理室内に突出するとともに、突出方向先端部と側壁部にガス噴出孔を有する複数のガスノズルと、ガスノズルを、夫々突出方向に沿った当該ガスノズルの中心軸の回りに回転させる回転機構とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びその処理ガス供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造分野等においては、半導体ウエハ等の基板に、成膜処理やエッチング処理等の処理を行う装置として、誘導結合プラズマ(ICP)を用いるプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
ICPを用いたプラズマ処理装置の処理ガス供給構造としては、例えば、処理室の内部に配置され複数のノズルを周方向に有するリングを、往復回転運動させ、ノズルの基板に対する噴出位置を変えながら処理ガスを供給するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−248364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ICPを用いたプラズマ処理装置の場合、処理室の外部に設けた高周波アンテナから誘導される電磁界を遮らないように処理ガス供給構造を配設する必要がある。このため、ガスを噴出させる部位は、基本的に基板の中央部および外周部に制約されており、要求される処理プロセス性能に応じて必要とされる処理ガスの供給状態を実現できない場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、要求される処理プロセス性能に応じて必要とされる処理ガスの供給状態の実現可能性を増大させることのできるプラズマ処理装置及びその処理ガス供給構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラズマ処理装置の一態様は、高周波アンテナに高周波電力を印加することにより処理室内に誘導プラズマを励起して、前記処理室内の載置台に載置された基板に対して所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、前記処理室内の前記載置台の上方に位置する空間に、前記処理室の側壁から前記処理室の中心に向くように前記処理室内に突出するとともに、突出方向先端部と側壁部にガス噴出孔を有する複数のガスノズルと、複数の前記ガスノズルを、夫々突出方向に沿った当該ガスノズルの中心軸の回りに回転させる回転機構とを具備したことを特徴とする。
【0008】
本発明のプラズマ処理装置の処理ガス供給構造の一態様は、高周波アンテナに高周波電力を印加することにより処理室内に誘導プラズマを励起して、前記処理室内の載置台に載置された基板に対して所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置の処理ガス供給構造であって、前記処理室内の前記載置台の上方に位置する空間に、前記処理室の側壁から前記処理室の中心に向くように前記処理室内に突出するとともに、突出方向先端部と側壁部にガス噴出孔を有する複数のガスノズルと、複数の前記ガスノズルを、夫々突出方向に沿った当該ガスノズルの中心軸の回りに回転させる回転機構とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、要求される処理プロセス性能に応じて必要とされる処理ガスの供給状態の実現可能性を増大させることのできるプラズマ処理装置及びその処理ガス供給構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態のプラズマエッチング装置の縦断面構成を模式的に示す図。
【図2】図1のプラズマエッチング装置の要部断面構成を模式的に示す図。
【図3】本発明の第2実施形態のプラズマエッチング装置の縦断面構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理装置としてのプラズマエッチング装置100の縦断面概略構成を模式的に示す図である。同図に示すように、プラズマエッチング装置100は、導電性材料、例えば表面を陽極酸化処理されたアルミニウム等から構成され、内部を気密に閉塞可能とされた円筒容器状の処理チャンバー1を具備している。
【0013】
処理チャンバー1の上部には、開口が形成されており、この開口を気密に閉塞するように、上部天板2が配設されている。この上部天板2は、少なくともその一部が石英等の誘電体からなり、誘電体窓を構成している。
【0014】
上部天板2と処理チャンバー1との間には、これらの間を気密に閉塞するとともに、処理チャンバー1に対して上部天板2の上下動を可能とする蛇腹機構3が配設されている。また、上部天板2には、例えば、モータ等からなる上下動駆動源4が接続されており、この上下動駆動源4を動作させることによって、処理チャンバー1に対して上部天板2を上下動させることができるようになっている。
【0015】
上部天板2の上部には、所定形状、例えば円環状とされた高周波アンテナ5が配設されている。この高周波アンテナ5は、所定周波数の高周波電力を供給する高周波電源6に接続されている。また、高周波アンテナ5の周囲は、導体からなるシールドボックス7が配設されており、このシールドボックス7は、接地されている。このシールドボックス7によって、高周波アンテナ5に供給された高周波電力が周囲に漏洩することを防止するようになっている。
【0016】
プラズマ処理中は、高周波電源6からプラズマ生成用の所定周波数の高周波電力、例えば周波数が13.56MHzの高周波電力が高周波アンテナ5へ供給される。高周波アンテナ5に高周波電力が供給されることによって、上部天板2の誘電体窓を介して処理チャンバー1内に誘導電磁界が形成され、この誘導電磁界により、処理チャンバー1内に供給された処理ガスがプラズマ化される。
【0017】
処理チャンバー1の内部には、載置台(サセプタ)8が配設されている。この載置台8は、その上側の載置面に、プラズマ処理を行う基板、例えば半導体ウエハを載置するためのものである。載置台8には、所定周波数、例えば380KHzのバイアスを印加するためのバイアス用高周波電源9が接続されている。このバイアス用高周波電源9は、処理チャンバー1内で励起されたプラズマ中のイオンを効果的に半導体ウエハに引込むために使用される。また、載置台8には、半導体ウエハを固定するための図示しない静電チャック、半導体ウエハを所定温度に調整するための図示しない温度調整機構等が配設されている。
【0018】
処理チャンバー1内の載置台8の上側部分は、ここでプラズマを発生させて半導体ウエハの処理を行う処理空間10とされている。一方、載置台8の周囲には、環状の排気空間11が形成されている。この排気空間11は、処理チャンバー1の底部に設けられた排気口を介して真空ポンプ等の排気機構(図示せず。)に接続されている。そして、この排気機構によって排気を行うことにより、処理チャンバー1内を所定の真空度に維持することができるようになっている。
【0019】
処理チャンバー1の側壁部には、処理チャンバー1内の載置台8に載置された半導体ウエハの上方に位置する処理空間10に、処理チャンバー1の中心に向くように突出するガスノズル20が複数配設されている。このガスノズル20は、載置台8に載置された半導体ウエハの周囲を囲むように均等に、すなわち、周方向に沿って等間隔で配置されている。なお、図1には、ガスノズル20を2つのみ図示してあるが、ガスノズル20の数は、例えば、4〜8など,必要に応じた数とする。
【0020】
図2にも示すように、ガスノズル20は、有底円筒状に形成されており、その先端中央部にガス噴出孔21が配設され、側壁部にもガス噴出孔22が複数(図1,2に示す例では2つ)配設されている。これらのガス噴出孔21,22の数についても、図1,2に示す例に限定されるものではなく、幾つとしてもよい。
【0021】
ガスノズル20の後端部は、処理チャンバー1の側壁の外側に位置し、ここにフランジ状に外周に向かって突出する円環状の回転部材23が配設されている。回転部材23のさらに後端側には、処理チャンバー1の側壁に固定された固定部材24が設けられており、回転部材23は、この固定部材24と処理チャンバー1の側壁との間に狭持されるように支持されている
【0022】
処理チャンバー1の側壁と回転部材23との間、及び固定部材24と回転部材23との間には、回転部材23を回転可能な状態で支持する軸受け機構25aとともにこれらの間を気密に閉塞する磁性流体シール等からなるシール機構25bが配設されている。回転部材23には、ギア、ベルト等からなる回転伝達機構26を介して、モータ等からなる回転駆動源27が接続されている。そして、この回転駆動源27を駆動することによって、ガスノズル20を、その突出方向に沿った中心軸(図1中一点鎖線で示す。)の回りに回転できるように構成されている。
【0023】
固定部材24の後端側には、処理ガス導入部28が配設されている。この処理ガス導入部28には、図示しない処理ガス供給源から所定の処理ガス(エッチングガス)が供給されるようになっており、この処理ガスを、ガスノズル20に配設されたガス噴出孔21,22から、処理チャンバー1内の処理空間10に供給するようになっている。
【0024】
上記構成のガスノズル20では、プラズマ処理中に、ガスノズル20を上記した中心軸の回りに回転させつつ処理ガスを供給することができる。この時の回転は、1方向の回転であっても、双方向への往復回転運動であってもよい。また、側壁部に形成されたガス噴出孔22が所定方向に向くように、予めガスノズル20を回転させてその位置を調整し、プラズマ処理中はガスノズル20を回転させずに固定した状態で処理ガスを供給することができる。これらのガスノズル20の回転の制御は、要求される処理プロセス性能に応じて選択することができ、従来に比べて、処理ガスの供給状態の調整因子が増えたことにより、必要とされる処理ガスの供給状態の実現可能性を増大させることができる。
【0025】
次に、上記構成のプラズマエッチング装置100を用いて、半導体ウエハに対してプラズマエッチング処理を施す場合について説明する。
【0026】
まず、図示しないゲートバルブ等の開閉機構を開けて搬送機構により半導体ウエハを処理チャンバー1内に搬入し、載置台8に載置する。次に、図示しない排気機構によって処理チャンバー1内の排気空間11から排気を行うとともに、ガスノズル20から処理チャンバー1の処理空間10内に所定の処理ガス(エッチングガス)を供給し、処理空間10内を所定の圧力雰囲気に維持する。
【0027】
この時、前述したように、必要に応じてガスノズル20を回転させながら処理ガスを供給する。この時の回転方向は、一方向であっても、往復させるように2方向に回転方向を変えるようにしてもよい。また、必要に応じて予めガスノズル20を回転させてガス噴出孔22が所定方向に向くように設定しておき、処理中はガスノズル20を回転させずに固定した状態で処理ガスを供給するようにしてもよい。
【0028】
次に、高周波電源6から所定周波数(例えば13.56MHz)の高周波電力を高周波アンテナ5に印加することにより、上部天板2の誘電体窓を介して処理空間10内に誘導電磁界を形成する。かかる誘導電磁界により、処理空間10内で処理ガスがプラズマ化され、高密度の誘導結合プラズマが生成される。このようにして生成されたプラズマ中のイオンは、バイアス用高周波電源9から載置台8に対して印加されるバイアス用高周波電力によって、半導体ウエハに効果的に引込まれ、半導体ウエハに対してプラズマエッチング処理が施される。このプラズマエッチング処理においては、ガスノズル20によって処理ガスの供給状態を自在に制御することができ、これによってプラズマエッチングに要求される処理プロセス性能を実現することができる。
【0029】
プラズマエッチング処理が終了すると、高周波電源の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは反対の手順で半導体ウエハが処理チャンバー1内から搬出される。
【0030】
次に、図3を参照して第2実施形態に係るプラズマエッチング装置100aについて説明する。このプラズマエッチング装置100aでは、各ガスノズル20aが、公転ユニット30に配設されており、モータ等からなる公転用駆動源31を駆動することによって、各ガスノズル20aを、処理チャンバー1aの中心(図3中ニ点鎖線で示す。)を公転軸として、公転(回転)させることができるように構成されている。
【0031】
また、ガスノズル20aの側壁部には、側壁面に略垂直に形成されたガス噴出孔22の他に、前端側に向かって斜めに傾斜して形成されたガス噴出孔22aが配設されている。さらに、処理ガス導入部28aは、各ガスノズル20aに対して共通に1つのみ配設されており、この1つの処理ガス導入部28aから各ガスノズル20aに対して処理ガスを供給するようになっている。なお、他の部分については、前述した第1実施形態のプラズマエッチング装置100と同様に構成されているので、対応する部分には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0032】
上記構成の第2実施形態のプラズマエッチング装置100aでは、第1実施形態のプラズマエッチング装置100と同様な作用、効果を得ることができる。これとともに、公転ユニット30及び公転用駆動源31によって各ガスノズル20aを、処理チャンバー1aの中心を公転軸として公転させることができるので、プラズマエッチング中に、各ガスノズル20aを公転させることによって、周方向における処理ガスの供給状態をより均一化することができる。
【0033】
以上、本発明を第1、第2実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1……処理チャンバー、2……上部天板、3……蛇腹機構、5……高周波アンテナ、6……高周波電源、8……載置台、9……バイアス用高周波電源、10……処理空間、20……ガスノズル、21,22……ガス噴出孔、23……回転部材、24……固定部材、25a……軸受け機構、25b……シール機構、26……回転伝達機構、27……回転駆動源、100……プラズマエッチング装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波アンテナに高周波電力を印加することにより処理室内に誘導プラズマを励起して、前記処理室内の載置台に載置された基板に対して所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記処理室内の前記載置台の上方に位置する空間に、前記処理室の側壁から前記処理室の中心に向くように前記処理室内に突出するとともに、突出方向先端部と側壁部にガス噴出孔を有する複数のガスノズルと、
複数の前記ガスノズルを、夫々突出方向に沿った当該ガスノズルの中心軸の回りに回転させる回転機構と
を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記ガスノズルは、前記載置台の周囲を囲むように均等に配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラズマ処理装置であって、
複数の前記ガスノズルを、前記処理室の中心の軸として処理室の周方向に回転させる公転機構を具備した
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記処理室の上部開口を覆い上下動可能とされた天板を具備し、前記高周波アンテナは、前記天板の上部に配設されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
高周波アンテナに高周波電力を印加することにより処理室内に誘導プラズマを励起して、前記処理室内の載置台に載置された基板に対して所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置の処理ガス供給構造であって、
前記処理室内の前記載置台の上方に位置する空間に、前記処理室の側壁から前記処理室の中心に向くように前記処理室内に突出するとともに、突出方向先端部と側壁部にガス噴出孔を有する複数のガスノズルと、
複数の前記ガスノズルを、夫々突出方向に沿った当該ガスノズルの中心軸の回りに回転させる回転機構と
を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置の処理ガス供給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−4196(P2012−4196A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135704(P2010−135704)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】