説明

プラットホームドア装置及びその設置方法

【課題】一対のドアパネルを備えたプラットホームドア装置において、通行の妨げになるのを防止しつつ1台の駆動モータによる一対のドアパネルの同期駆動を可能とする。
【解決手段】1つの駆動モータ55と、駆動モータ55の駆動力を受けて回転する駆動プーリと、従動プーリと、これらプーリ間に巻き掛けられた無端ベルト62とを備える。プラットホームの床面には、乗降通路に跨る範囲に駆動プーリ、従動プーリ及び無端ベルト62を埋設する分だけの深さのピット7を設け、このピット7内に無端ベルト62等を配設する。ピット7は床面パネル3を剥がして形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホームに設置されるプラットホームドア装置及びその設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラットホームにいる乗客の安全を確保する目的で据え付けられるプラットホームドア装置が知られている。この種のプラットホームドア装置は、例えば下記特許文献1に開示されているように、対向設置される一対のドアユニットを備えており、両ドアユニットのドアパネルを両引き式に構成して、この両ドアパネルを戸袋パネルに対して進退移動させることで乗降通路を開閉するものである。
【0003】
前記特許文献1に開示されたプラットホームドア装置では、図10に示すように、一対の戸袋パネル101,201を備えており、この各戸袋パネル101,201にはドアパネル102,202を駆動するための駆動源103,203及びその制御盤104,204がそれぞれ収納されている。また、各戸袋パネル101,201内には、ドア移動方向に延びるネジ105,205が配設されていて、このネジ105,205に螺合されたナットに係合するアダプタ106,206がドアパネル102,202に取り付けられている。そして、駆動源103,203によってネジ105,205を回転させることにより、ナットと係合するアダプタ106,206をドア移動方向に移動させ、これにより各ドアパネル102,202をレール107,207に沿って移動させることで乗降通路を開閉するようになっている。このとき、両制御盤104,204が信号線を通して通信することにより、両ドアパネル102,202の同期を取りながらドア開閉を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−226568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されたプラットホームドア装置では、ドアパネル102,202毎にその駆動源103,203及び制御盤104,204を配設する構成なので、装置全体としてコストが上昇するのが避けられない。そこで、駆動源を一方のドアユニットにだけ設けて、この駆動源によって両ドアユニットのドアパネルを同期駆動する構成とすれば、その分コスト低減を図ることができる。しかしながら、そのような構成を採用するには、両ドアパネルを同期駆動するための駆動連結機構が必要となり、その配設スペースの確保が難しい。すなわち、駆動連結機構は両ドアユニットに跨るので、この駆動連結機構をそのままドア近傍に配置すると通行の妨げになるという問題が生じ、その配設スペースに制約がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一対のドアパネルを備えたプラットホームドア装置において、通行の妨げになるのを防止しつつ1台の駆動源による一対のドアパネルの同期駆動を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、プラットホーム上に対向配置される一対のドアパネルを備え、この両ドアパネルを往復移動させることで乗降通路を開閉するプラットホームドア装置を前提として、駆動源と、前記両ドアパネルを互いに駆動力が伝達するように連結して前記駆動源の駆動により両ドアパネルを同期開閉する駆動力伝達機構とを備え、前記駆動力伝達機構は、前記駆動源の駆動力を受けて回転する駆動車と、従動車と、前記両ドアパネルの下方に配置されてこの両ドアパネルの下端部が結合され且つ前記駆動車及び従動車に巻き掛けられた巻き掛け部材とを有し、前記プラットホームの床面には、前記乗降通路に跨る範囲に前記駆動車、従動車及び巻き掛け部材を収納する分だけの深さのピットが設けられ、このピット内に前記駆動車、従動車及び巻き掛け部材の何れもが収納されている。
【0008】
このプラットホームドア装置によれば、乗降通路に跨る範囲にピットを設け、このピットに駆動車、従動車及び巻き掛け部材を収納する構成としたので、これらが乗降通路での障害物となるのを回避しつつ、駆動源によって一対のドアユニットの同期駆動を可能とすることができる。しかも、ピットの深さを駆動車、従動車及び巻き掛け部材を収納する分だけの深さにしたので、ピットを設けるのに際してプラットホームの構造の制約を受け難くすることができる。したがって、プラットホームに確実にピットを形成することができ、駆動車、従動車及び巻き掛け部材が通行の邪魔になるのを確実に回避することができる。
【0009】
前記プラットホームドア装置において、前記駆動車が、軸方向の幅が直径方向の幅よりも小さな形状をなし且つ前記駆動源の垂直下方に延びる出力軸回りに回転可能に構成され、前記従動車が、軸方向の幅が直径方向の幅よりも小さな形状をなし且つ前記駆動車と水平になるように配置されて垂直軸回りに回転可能に構成されている場合には、巻き掛け部材が垂直軸回りに周回する構成となるので、ピットの深さを最小限に抑えることができる。したがって、プラットホームの構造によらず簡単な工事でピットを設けることができるようになる。
【0010】
前記プラットホームの基礎体上に貼り付けられた床面パネルによって前記プラットホームの床面が形成される場合には、前記プラットホームは、前記床面パネルの無い部分が床面から凹んだ前記ピットとして形成されている構成とすることができる。
【0011】
この場合、床面パネルを剥がす等して床面パネルの存在しないところがピットとして形成されることとなるので、既設の駅舎でも容易にピットを設けることができる。
【0012】
前記プラットホームドア装置の設置方法として、前記プラットホームの基礎体の上に貼り付けられて床面を形成する床面パネルを剥がすことによって前記ピットを形成し、このピット内に前記駆動車、従動車及び巻き掛け部材の何れをも収納する方法としてもよい。
【0013】
この場合、プラットホームの床面パネルを剥がすだけでピットを形成できるので、大掛かりな工事を必要とせずに簡易でしかも短期間の工事で既設の駅舎に容易にプラットホームドア装置を設置することができる。しかも、床面パネルが滑り止め用のパネルの場合には、このパネルを剥がすだけで巻き掛け部材を埋設できる程度の深さのピットを簡単に確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、ピットに駆動車、従動車及び巻き掛け部材の何れも収納する構成としたので、これらが乗降通路での障害物となるのを回避しつつ、1台の駆動源による一対のドアユニットの同期駆動を可能とすることができる。しかも、ピットの深さを駆動車、従動車及び巻き掛け部材を収納する分だけの深さとすることで、種々の構成のプラットホームに確実にピットを設けることができるので、巻き掛け部材等が通行の邪魔になるのを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るプラットホームドア装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1における右側のドアユニットを示す正面図である。
【図3】図1における左側のドアユニットを示す正面図である。
【図4】図2のIV−IV線における一部断面図である。
【図5】図4のV−V線における一部断面図である。
【図6】図1における右側のドアユニットの駆動モータ付近を示す図である。
【図7】図6相当部分を上から見た図である。
【図8】図1における左側のガイドボックスの下端部付近を示す図である。
【図9】図8相当部分を上から見た図である。
【図10】従来のプラットホームドア装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係るプラットホームドア装置10の正面図であり、この図に示すように、本プラットホームドア装置10は、プラットホーム上に設置される一対のドアユニット11,31を備えている。各ドアユニット11,31は、プラットホームに立設されるガイドボックス12,32と、このガイドボックス12,32に支持される引戸式のドアパネル13,33とを備え、いわゆる可動柵として機能するものである。両ドアユニット11,31のガイドボックス12,32は互いに所定の間隔をおいて対向配置されるものであり、両ドアパネル13,33は、互いに逆向きにガイドボックス12,32間を往復移動することでガイドボックス12,32間に形成される乗降通路50を開閉するようになっている。
【0019】
両ドアユニット11,31は、乗降通路50を挟んで左右対称の構成となっている。即ち、図1における右側のドアユニット11では、そのガイドボックス12の左端部からドアパネル13が軌道に沿うように左方向に移動することで乗降通路50を閉じるようになっている。つまり、右側のドアパネル13は左端部が戸先となり且つ右端部が戸尻となっている。一方、図1における左側のドアユニット31では、そのガイドボックス32の右端部からドアパネル33が軌道に沿うように右方向に移動することで乗降通路50を閉じるようになっている。つまり、左側のドアパネル33は右端部が戸先となり且つ左端部が戸尻となっている。
【0020】
プラットホームには、このプラットホームの軌道側縁部に沿ってプラットホームドア装置10が所定間隔をおいて一列に多数配置されることとなるが、この隣り合うプラットホームドア装置10間にはそれぞれ仕切りパネル51が配置され、これにより、プラットホームは、乗降客が待機するホーム側と列車が入線する軌道側とに仕切られることとなる。
【0021】
仕切りパネル51には、透明板51aが取り付けられている。なお、仕切りパネル51は、開き戸式の非常脱出ドアとして構成してもよい。こうすれば、例えば列車の乗降ドアがプラットホームドア装置10のドアパネル13,33に対応しない状態で列車が停止した場合やドアパネル13,33が故障した場合等に避難路を確保することができる。
【0022】
本実施形態では、プラットホームドア装置10の両ドアユニット11,31は、例えば図1における右側のドアユニット11のみにドアパネル11,13の駆動源が配設され、両ガイドボックス12,32間に亘って配設される無端ベルト62によって両ドアパネル13,33を同期開閉するベルト駆動方式のものである。その詳細については後述する。
【0023】
本実施形態では、ガイドボックス12,32のドア開閉方向の長さをドアパネル13,33の長さよりも短い構成としている。このため、ドアパネル13,33が後退移動するとドアパネル13,33の戸尻がガイドボックス12,32から突出し、仕切りパネル51に沿うようになっている。なお、この構成に代え、ガイドボックスは、ドアパネル13,33が後退移動すると完全にガイドボックスに収納される戸袋形式の構成としてもよい。
【0024】
ところで、プラットホームの上部は、コンクリート製の基礎体1の上にノースリットパネル等の床面パネル3が敷設されて構成されている。そして、プラットホームの軌道側縁部においては、床面パネル3は例えば滑り止め用のノースリットパネルによって構成されている。この軌道側縁部の床面パネル3は、軌道に沿って例えば1列配設されており、この軌道側縁部の床面パネル3は、軌道に沿う方向と直交する方向の幅が約350mmで厚みが約50mmの大きさのものであり、その上面に滑り止め加工が施されている。軌道側縁部の床面パネル3の内側(軌道から離れた側)には、例えば図略の点字パネル等が敷設される。
【0025】
床面パネル3はモルタル部5を介在させて基礎体1に貼り合わされている。この床面パネル3を剥がすとプラットホームの基礎体1が露出することになるが、本実施形態に係るプラットホームドア装置10は、軌道側縁部に敷設された床面パネル3を剥がして露出した基礎体1の露出部分に固定されている。
【0026】
具体的に、床面パネル3を例えば軌道側縁部の1列分だけ剥がすことでプラットホーム上には床面FLに対して凹んだピット7が形成されている。このピット7は、その軌道に沿う方向の全体に亘って略一定の深さの矩形凹部であり、その深さが床面FLに対して40〜60mm程度の深さとなっており、幅が約350mmとされている。このピット7は、乗降通路50の位置に対応して設けられる。ピット7の中の両端部にはそれぞれガイドボックス12,32が配設されている。つまり、両ガイドボックス12,32の間の間隙が乗降通路50となり、この乗降通路50を含み、その両側に配置される両ガイドボックス12,32を含む範囲にピット7が形成されている。
【0027】
ピット7内の両端には、図2及び図3に示すように基礎プレート15,35と防振ゴム板16,36とが重ね合わされて配設されている。ガイドボックス12,32は、この基礎プレート15,35及び防振ゴム板16,36の上に載置されている。そして、ガイドボックス12,32の底板17,37をプラットホームの基礎体1に固定されたアンカーボルト53に締結することで、ガイドボックス12,32はプラットホームに固定されている。この状態でガイドボックス12,32の底板17,37は床面FLよりも下方に配置されてピット7内に位置している。
【0028】
ガイドボックス12,32は上下に長い縦長に形成されるともに、乗降通路50に直交する方向(図1における左右方向)にドアパネル13,33が通過可能な門形となっている(図4及び図5参照)。
【0029】
各ガイドボックス12,32の内側には、図2〜図5に示すようにドアパネル13,33を直線移動可能に支持するための支持部材が配設されている。支持部材は、ガイドボックス12,32の底板17,37に固定された支持フレーム19,39と、この支持フレーム19,39に支持された一対のスライド軸受20,40とからなる。
【0030】
支持フレーム19,39は、ガイドボックス12,32の底板17,37に立設された支持脚部19a,39aと、この支持脚部19a,39aの上端部に設けられた平板状の補強板部19b,39bと、ドア開閉方向に所定の間隔を置いて補強板部19b,39bに突設された複数の補強リブ19c,39cと、これら補強リブ19c,39cに架け渡され且つこれら補強リブ19c,39cによって支持された台座部19d,39dとを備えている。この台座部19d,39dの上面にスライド軸受20,40が固定されている。
【0031】
スライド軸受20,40は図4及び図5に示すように、その上面部にガイド溝20a,40aが形成されていて断面略U字状に形成されている。このガイド溝20a,40aは、ドア開閉方向と平行な方向に延びる細長い溝からなる。ガイド溝20a,40aには、その上下方向の中間部において互いに近づくように突出する突出部が形成されている。
【0032】
各ドアユニット11,31のドアパネル13,33は、それぞれ矩形状のドアパネル本体13a,33aを備えている。このドアパネル本体13a,33aの上部には矩形開口が形成されており、この矩形開口には透明板13b,33bが取り付けられている。
【0033】
ドアパネル本体13a,33aには、矩形開口の下方でドア開閉方向に延びる補強部材22,42が固定されている。この補強部材22,42は、ドアパネル本体13a,33aに締結された縦板22a,42aと、この縦板22a,42aに固定された横板22b,42bとからなり、断面T字状に形成されている。
【0034】
補強部材22,42はドアパネル本体13a,33aの戸尻側端部から所定長さだけ延出されている。各ドアパネル13,33の補強部材22,42は、ドアパネル13,33が乗降通路50を開放したときに互いに干渉するのを防止すべく、互いに異なる高さに固定されている。
【0035】
横板22b,42bの下面にはリニアレール23,43が固定されており、ドア開閉方向に延びるように配設されている。このリニアレール23,43は、スライド軸受20,40のガイド溝20a,40aの形状に対応して上下方向の中間部において窪んだ断面形状を有している。そして、リニアレール23,43をガイド溝20a,40aの一方の端部からガイド溝20a,40aに挿入することでリニアレール23,43がガイド溝20a,40aに係合して外れることなくその長さ方向に摺動可能となっている。これにより、ドアパネル13,33はその戸尻側端部においてガイドボックス12,32に片持ち支持されることとなる。この状態で、リニアレール23,43は床面FLよりも上方に配置されている。
【0036】
本プラットホームドア装置10は、両ドアパネル13,33を開閉駆動させる駆動力を発生する駆動源としての駆動モータ55(図2及び図4参照)と、両ドアユニット11,31のドアパネル13,33を互いに駆動力が伝達するように連結して駆動モータ55の駆動により両ドアパネル13,33を同期開閉する駆動力伝達機構56とを備えている。
【0037】
駆動モータ55は図1における右側のガイドボックス12の内側に配設されていて、その下部が前記ピット7内に入り込んだ状態で設置されている。具体的に説明すると、駆動モータ55は、図6にも示すように、ガイドボックス12の底板17に立設されたブラケット57,58によって支持されている。ガイドボックス12の底板17は、図7にも示すように、略矩形状に形成されており、底板17,37の乗降通路50側の端部には矩形状の切欠き17aが形成されている。そして、ブラケット57,58は、駆動モータ55の両端にそれぞれ配置されていて、その内の駆動モータ55の乗降通路50側に配設されたブラケット57は、一対の脚部57aを備えており、この両脚部57aが底板17の切欠き17aに跨るように配設されている。
【0038】
駆動モータ55は、図6に示すように、その出力軸55aが垂直下向きとなるような姿勢で配置されている。つまり、出力軸55aは、駆動モータ55のモータ本体55bから下方に向かって床面FLよりも下まで延びており、その先端部(下端部)がピット7内に入り込んでいる。なお、駆動モータ55は、集中管理システム等から送信された制御信号を受けて、駆動するようになっている。また、駆動モータ55には減速機が含まれている。
【0039】
駆動力伝達機構56は、駆動車の一例としての駆動プーリ60と、従動車の一例としての従動プーリ61と、これらプーリ60,61に巻き掛けられた巻き掛け部材の一例としての無端ベルト62とからなる。本発明の特徴として、これら駆動プーリ60、従動プーリ61及び無端ベルト62は、その何れもがピット7内に収納されている。以下、具体的に説明する。
【0040】
駆動プーリ60は、駆動モータ55の出力軸55aの先端部(下端部)に設けられている。つまり、駆動プーリ60は、乗降通路50に対して図1における右側に配置されている。そして、駆動モータ55は、駆動プーリ60の下部が前記底板17の切欠き17aの内側に位置するように配置されている。この状態で駆動プーリ60は床面FLよりも下方に位置してピット7内に収納されている。
【0041】
従動プーリ61は、図1における左側のガイドボックス32の内側に配設されている。るまり、従動プーリ61は、乗降通路50を挟んで駆動プーリ60とは反対側(図1における左側)に配置されている。この従動プーリ61の支持構造は以下の通りとなっている。すなわち、図8及び図9に示すように、ガイドボックス32内に固定された支持フレーム39の支持脚部39aに水平に延びる一対の平板状の支持プレート65が固定されており、この支持プレート65には調整部材66を挟み込んだ状態で挟持プレート68が締結されている。調整部材66は、断面U字状に形成されるU字部66aを備え、そのU字部66aの両端から延出されるフランジ部66bにはドア開閉方向に細長い形状の長孔66cが形成されている。支持プレート65と挟持プレート68を締結するボルト70はこの長孔66cに挿通されている。この長孔66cは、調整部材66をドア開閉方向の位置調整を可能にするためのものである。U字部66aの下端部には、下方に向かって床面FLよりも下まで鉛直方向に延びる従動軸72が設けられている。この従動軸72の下端部に回転自在に従動プーリ61が設けられている。従動プーリ61は、底板37の切欠き37aの内側に配置されており、この状態で従動プーリ61は床面FLよりも下方に位置してピット7内に収納されている。調整部材66のU字部66aと挟持プレート68との間にコイルばね66dが介在されていて、従動プーリ61は無端ベルト62に適度な張力を与えるように位置調整可能となっている。
【0042】
駆動プーリ60及び従動プーリ61は、それぞれ軸方向の幅が直径方向の幅よりも小さな形状をなしている。両プーリ60,61は垂直軸回りに回転するように配置されているので、両プーリ60,61がこのような形状に構成されることでピット7の深さを最小限に抑えることができるようになっている。
【0043】
無端ベルト62は、乗降通路50を挟んで両側に配置された駆動プーリ60と従動プーリ61との間を床面FLよりも下方の水平面内を周回する。換言すれば、駆動プーリ60及び従動プーリ61は、乗降通路50から両側に外れたピット7内に配置されていて、無端ベルト62は、乗降通路50を跨ぐようにピット7内に配設されている。無端ベルト62は、プーリ60,61の軸方向幅に対応して、ピット7の深さよりも幅の狭いものが用いられている。言い換えると、軌道側縁部の床面パネル3を剥がすだけで、無端ベルト62を収容できるような深さのピット7を形成することができる。
【0044】
無端ベルト62は歯付きベルトからなる。この無端ベルト62には、図7及び図9に示すようにドアパネル13,33に連結された連結金具25,45が固定されている。なお、図7及び図9はドアパネル13,33が開放された状態での連結金具25,45の位置を示している。この連結金具25,45は、ドアパネル13,33の戸先における下端部に取り付けられた金具であり、この連結金具25,45はその戸先下端部から床面FLよりも下方へ延出されている。図7に示すように、右側ドアパネル13に連結された連結金具25は、その下端部において無端ベルト62のホーム側のスパンにクランプされている。そして、右側ドアパネル13の連結金具25は、無端ベルト62の周回によって乗降通路50の中央部と、ガイドボックス12内における駆動プーリ60近傍との間を往復移動する。一方、図9に示すように、左側ドアパネル33に連結された連結金具25は、その下端部において無端ベルト62の軌道側のスパンにクランプされている。そして、左側ドアパネル33の連結金具45は、無端ベルト62の周回によって乗降通路50の中央部とガイドボックス32内における従動プーリ61近傍との間を往復移動する。これにより両ドアパネル13,33は、互いに近づき又は離れる向きに往復移動する。
【0045】
両ガイドボックス12,32間には、ピット7を塞いで乗降通路50の床面FLを形成するためのステップカバー74が配設されている。このステップカバー74は、その上面が床面FLと面一となるように配置されるものであり、図7及び図9に示すように、ステップカバー74は軌道側部74aとホーム側部74bとに分割されている。軌道側部74aとホーム側部74bとの間にはドア開閉方向に延びる隙間80が形成されており、両ドアパネル13,33の連結金具25,45は、この隙間80を移動するようになっている。換言すると、ステップカバー74に隙間80が設けられることにより、床面FL下方に配置された無端ベルト62と床面FL上方に配置されたドアパネル13,33下端部とを連結する連結金具25,45が乗降通路50内を往復移動可能となっている。
【0046】
両連結金具25,45は、図2及び図3に示すように、それぞれ戸先側端部が傾斜状に形成されている。これは、連結金具25,45がステップカバー74の隙間80に挿入される際にステップカバー74と当接することなくスムーズに隙間80に挿入されるようにするためのものである。そして、両連結金具25,45の戸先側端部を同じ向きに傾斜させることで、両ドアパネル13,33が互いに当接したときでも連結金具25,45が干渉し合わないようになっている。
【0047】
ステップカバー74のホーム側部74bは、図6〜図9に示すように、連結部材76を介してアンカー77に締結固定されている。このアンカー77はプラットホームの基礎体1に固定された補強板78に固定されるものである。一方、ステップカバー74の軌道側部74aは、ホーム側部74bと同様にアンカー(図示省略)に支持されているが、軌道側部74aはメンテナンスを考慮して着脱可能となっている。
【0048】
ここで、本実施形態に係るプラットホームドア装置10の運転動作について説明する。
【0049】
まず、列車が入線していない通常時においては、両ドアパネル13,33はガイドボックス12,32から最も前進して両ドアパネル13,33の戸先が互いに当接した閉じ位置となっている。これにより、乗降通路50が閉じられており、プラットホームの乗客は軌道側に出ることはできず、乗客の安全が確保されている。
【0050】
そして、列車が入線すると、集中管理システム等から送信された制御信号を受けて、駆動モータ55が駆動する。これにより、駆動プーリ60が回転し、無端ベルト62は駆動プーリ60と従動プーリ61との間でステップカバー74の下方の水平面内を周回する。これに伴い、無端ベルト62に連結された両ドアパネル13,33の連結金具25,45がステップカバー74の隙間80を後退移動し、これにより、両ドアパネル13,33が互いに離れるように移動し、乗降通路50を開放する。両ドアパネル13,33は戸先がガイドボックス12,32内に入るまで移動し、乗降通路50が完全に開放されると駆動モータ55は停止する。このときドアパネル13,33の戸尻はガイドボックス12,32から突出している。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係るプラットホームドア装置10によれば、プラットホームに設けられたピット7に駆動プーリ60、従動プーリ61及び無端ベルト62を収納する構成としたので、これらが乗降通路50での障害物となるのを回避しつつ、1台の駆動モータ55による一対のドアパネル13,33の同期駆動を可能とすることができる。しかも、ピット7の深さを駆動プーリ60、従動プーリ61及び無端ベルト62を収納する分だけの深さにしたので、ピット7を設けるのに際してプラットホームの構造の制約を受け難くすることができる。したがって、プラットホームに確実にピット7を形成することができ、駆動プーリ60、従動プーリ61及び無端ベルト62が通行の邪魔になるのを確実に回避することができる。
【0052】
また、本実施形態では、駆動プーリ60及び従動プーリ61が軸方向の幅が直径方向の幅よりも小さな形状をなし、両プーリ60,61を垂直軸回りに回動可能に配置したので、ピット7の深さを最小限に抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、軌道側縁部に敷設された滑り止め用の床面パネル3を剥がして床面パネル3の存在しないところをピット7として形成しているので、この床面パネル3を剥がすだけで駆動プーリ60、従動プーリ61及び無端ベルト62を埋設できる程度の深さのピット7を簡単に確保することができ、大掛かりな工事を必要とせずに簡易でしかも短期間の工事で既設の駅舎に容易にプラットホームドア装置10を設置することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、床面パネル3を剥がすことにより床面FLから凹んだピット7を形成するようにしたが、この床面パネル3は、プラットホームの軌道側縁部に敷設された床面パネル3に限られるものではなく、その内側(軌道から離れる側)に敷設された床面パネル3を剥がしてピット7を形成してもよい。要は、駆動車、従動車及び巻き掛け部材を配設できる程度の深さのピット7を形成できるものであれば、どのような床面パネル3を剥がしてピット7を形成してもよい。
【0055】
また、ピット7は、床面パネル3を剥がして形成するものに限られるものではなく、例えばプラットホームの軌道側縁部に予め床面パネル3を貼り付けない部分を設けておき、その部分を床面FLから凹んだピットとする構成としてもよい。また、ピット7は、プラットホームの床面FLを掘削して形成するものであってもよい。
【0056】
また、駆動プーリ60及び従動プーリ61が、軸方向の幅が直径方向の幅よりも大きな形状をなす場合には、両プーリ60,61が水平軸回りに回動する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 基礎体
3 床面パネル
7 ピット
11,31 ドアユニット
13,33 ドアパネル
50 乗降通路
55 駆動モータ(駆動源の一例)
55a 出力軸
56 駆動力伝達機構
60 駆動プーリ(駆動車の一例)
61 従動プーリ(従動車の一例)
62 無端ベルト(巻き掛け部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホーム上に立設される戸袋パネルと、この戸袋パネルに支持されるドアパネルとを備え、前記ドアパネルを往復移動させることで乗降通路を開閉するプラットホームドア装置であって、
駆動源と、
前記ドアパネルに駆動力が伝達するように連結して前記駆動源の駆動によりドアパネルを開閉する駆動力伝達機構とを備え、
前記駆動力伝達機構は、前記駆動源の駆動力を受けて回転する駆動車と、従動車と、前記ドアパネルの下方に配置されて前記ドアパネルの下端部が結合され且つ前記駆動車及び従動車に巻き掛けられた巻き掛け部材とを有し、
前記ドアパネルは、その開閉方向に沿って設けられたリニアレールを有し、
前記戸袋パネルの内側には、前記リニアレールを摺動自在に案内するスライド軸受と、前記ドアパネルに対して直角のリニアレール取付面とが設けられ、前記リニアレール取付面の下側に、前記スライド軸受を固定する台座部とが設けられているプラットホームドア装置。
【請求項2】
前記ドアパネルが、その戸尻側端部において前記戸袋パネルに片持ち支持されている請求項1に記載のプラットホームドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−143567(P2009−143567A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73079(P2009−73079)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【分割の表示】特願2004−238512(P2004−238512)の分割
【原出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】