説明

プレス成形方法およびその成形体

【課題】強化繊維とマトリックス樹脂からなる成形材料の成形体製造時における、工程の簡略化および作業性に優れるプレス成形方法を提供する。
【解決手段】強化繊維とマトリックス樹脂からなる成形材料7をプレス成形する方法において、開口部を有する凹部の型5と、該凹部に対応する凸部を有し、該凹部の型5との間でキャビティが構成される凸部の型2からなるプレス成形型であって、動力源として、プレス成形型を稼働させる加圧装置の型締め力および/または型開き力を用い、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構3、4と、成形材料7を加圧し、プレス成形をする機構とを併せ持った構成を有する成形型1内にて実施するプレス成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維と、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂といったマトリックス樹脂とからなる成形材料を用いたプレス成形方法、および前記プレス成形方法で得られた成形体に関するものであり、特に、成形体製造時における工程の簡略化および作業性に優れるプレス成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金属材料のプレス成形にて製造されていた自動車、電気・電子機器、家電製品などの各種部品・部材に代表される産業用部品が、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料に代替されている。これは、このような成形材料を用いた成形体が高い強度を有し、軽量である点にある。ここで、プレス成形とは、加工機械および型、工具等を用いて金属、プラスチック材料、セラミックス材料などに例示される各種材料に曲げ、剪断、圧縮等の変形を与え、成形、加工をおこなう方法である。また、プレス成形は、比較的、再現性に優れた製品を多量に生産できることが特徴であり、多量生産をおこなうために高速化、高精度化、品質の安定化などの要求が高く、また、それらを実現するために作業性、成形性の向上および成形コスト低下に関する市場の要求は非常に高い。
【0003】
特に、従来の強化繊維とマトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いた成形材料の成形方法において、熱可塑性樹脂の溶融温度以上に予備加熱して可塑化状態にある成形材料を雌雄一対からなる金型間に供給し、次いで加圧冷却をして所望の形状の成形体を得るプレス成形方法は広く知られているものの、繊維強化された熱可塑性樹脂成形材料のプレス成形では、金型キャビティの形状からはみ出した余肉部分、バリ等の除去および成形体に他の部材を設置するために必要な穴部分の打ち抜き加工など二〜三段階の加工が別工程として必要であり、プレス成形法自体は生産コストに優れるものの、結果として、作業性に起因する得られた成形体の高コスト化に関する問題があった。
【0004】
また、強化繊維と、マトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を用いた成形材料の成形方法において、該成形材料を雌雄一対からなる金型を熱硬化性樹脂が硬化可能な温度に温度調節し、該金型間に成形材料を供給し、次いで加圧をして所望の形状の成形体を得るプレス成形方法は広く知られている。該成形材料のプレス成形においても、熱可塑性樹脂を用いた成形材料と同様に、余肉部分、バリ等の除去および成形体に他の部材を設置するために必要な穴部分の打ち抜き加工など二〜三段階の加工が別工程として必要であり、プレス成形法自体は生産コストに優れるものの、結果として、作業性に起因する得られた成形体の高コスト化に関する問題があった。
【0005】
かかる問題に対し、プレス成形における工程簡略化を行い、成形体のコストダウンを目的とした、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料の開口穴を形成せしめるプレス成形方法が開示されている(特許文献1)。これは、プレス成形により開口部を有する成形体を得る方法であり、プレス成形に用いる雌雄一対からなる成形型の片面に、成形体の開口部に対応した突き出し稼働が可能な機構を設けておき、さらに、該成形材料には開口部に対応した穴を予め形成しておくという成形する方法である。
【0006】
しかしながら、上記方法では、成形体はプレス成形のみの1工程で得られるものの、予め、成形材料への開口作業を実施しなければならず、実質的に、成形体を得るためには2工程以上の工程が必要である。また、成形体にバリなどの余肉部分の加工までには言及されておらず、繊維強化された熱可塑性樹脂成形材料の成形、とりわけ作業性に関し、根本的な解決にはなっていない。
【0007】
さらに、熱可塑性樹脂の発泡体と表皮材からなる成形材料のプレス成形方法において、得られる成形体の端部外観の改善およびコストダウンを目的に提案されている技術として、熱可塑性樹脂からなる成形体の外周部を、油圧式シリンダーを駆動源にしたスライドカム、もしくはカット刃を使用し、切断もしくは巻き込み加工を加圧圧縮工程と一体化した方法が開示されている(特許文献2)。これは、発泡体という成形材料を比較的、加工しやすい材料を用いていることと、油圧式シリンダーを駆動源にスライドカムを稼働させているため、油圧設備の導入による設備コストのアップおよび、成形型自体の巨大化を招いてしまい、結果的に装置導入、作業スペースが広くとらなければならない等、作業性ひいては経済性に著しく劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−100175号公報
【特許文献2】特開2004−106598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、強化繊維とマトリックス樹脂からなる成形材料を用いたプレス成形方法、および前記プレス成形方法で得られた成形体に関するものであり、かかる従来技術の問題点を解消し、特に、成形体製造時における工程の簡略化および作業性に優れるプレス成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
(1)強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料をプレス成形方法は、以下の工程(I)〜(V)を含んでなり、かつ、以下の工程(III)〜(V)を同一の成形型(a)内にて実施するプレス成形方法である。
成形型(a):開口部を有する凹部の型と、該凹部に対応する凸部を有し、該凹部の型との間でキャビティが構成される凸部の型からなるプレス成形型であって、動力源として、プレス成形型を稼働させる加圧装置の型締め力および/または型開き力を用い、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構と、成形材料を加圧し、プレス成形をする機構とを併せ持った構成を有する成形型。
工程(I):成形材料を構成する熱可塑性樹脂の可塑化温度まで、該成形材料を加熱する工程。
工程(II):可塑化温度まで加熱せしめた成形材料を搬送し、解放された成形型(a)へ配置する工程。
工程(III):成形型(a)を型締めすることにより、可塑化温度まで加熱せしめた成形材料を加圧冷却する工程。
工程(IV):加圧冷却後、成形型(a)内において、成形材料にかける加圧力を保持しながら、剪断力により余肉部分を加工、除去する工程。
工程(V):成形型(a)を解放し、成形体を成形型(a)から取り出す工程。
(2)強化繊維と熱硬化性樹脂からなる成形材料をプレス成形する方法において、以下の工程(VI)〜(IX)を含んでなり、かつ、以下の工程(VII)〜(IX)を同一の成形型(a)内にて実施するプレス成形方法。
成形型(a):開口部を有する凹部の型と、該凹部に対応する凸部を有し、該凹部の型との間でキャビティが構成される凸部の型からなるプレス成形型であって、動力源として、プレス成形型を稼働させる加圧装置の型締め力および/または型開き力を用い、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構と、成形材料を加圧し、プレス成形をする機構とを併せ持った構成を有する成形型。
工程(VI):成形材料を搬送し、予め硬化可能な温度まで加熱せしめた、解放された成形型(a)へ配置する工程。
工程(VII):成形型(a)を型締めすることにより、成形材料を加圧する工程。
工程(VIII):加圧冷却後、成形型(a)内において、成形材料にかける加圧力を保持しながら、剪断力により余肉部分を加工、除去する工程。
工程(IX):成形型(a)を解放し、成形体を成形型(a)から取り出す工程。
(3)前記成形型(a)は、少なくとも成形材料を加圧冷却する加圧冷却機構、成形材料にかける加圧力を保持する加圧力保持機構、ならびに、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構を併せ持った構成を有する、(1)または(2)に記載のプレス成形方法。
(4)成形材料にかける加圧力を保持する加圧力保持機構が成形型(a)に具備されており、かつ、該加圧力保持機構が、少なくとも、エア、ガス、オイル、およびバネ要素から選択されるいずれかの機構である(1)〜(3)のいずれかに記載のプレス成形方法。
(5)剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構が成形型(a)に具備されており、かつ、該剪断加工機構が、スライドカム構造、ピン構造、およびパンチ構造から選択されるいずれかの構造を用いた機構である(1)〜(4)のいずれかに記載のプレス成形方法。
(6)前記工程(IV)および前記工程(VIII)において、剪断力により余肉部分を加工、除去する工程が、前記成形材料の固化および硬化する温度以下にて実施される(1)〜(5)のいずれかに記載のプレス成形方法。
(7)前記工程(III)および前記工程(VII)において、成形型(a)の凹部のキャビティの投影面積にかかる加圧力が10〜50MPaの範囲内である(1)〜(6)のいずれかに記載のプレス成形方法。
(8)前記工程(IV)が、工程(III)から工程(V)に移行されるタイミングで実施される(1)または(3)〜(7)のいずれかに記載のプレス成形方法。
(9)前記工程(VIII)が、工程(VII)から工程(IX)に移行されるタイミングで実施される(2)、(3)〜(6)、または(8)のいずれかに記載のプレス成形方法。
(10)前記工程(II)〜(IV)において、金型温度が成形材料を構成する熱可塑性樹脂の固化温度より20℃〜100℃低い温度の範囲内で行われる、(1)、(3)〜(8)のいずれかに記載のプレス成形方法。
(11)前記成形材料が以下の成分(A)、成分(B)を有してなる、(1)、(3)〜(8)、または(10)のいずれかに記載のプレス成形方法。
成分(A):強化繊維:25〜80質量%
成分(B):ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリアセタール樹脂の群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂:20〜75質量%
(12)前記成分(B)が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルイミド樹脂から選択される少なくとも1種である、(11)に記載のプレス成形方法。
(13)前記成形材料が以下の成分(A)、成分(C)を有してなる、(2)、(3)〜(6)、または(9)のいずれかに記載のプレス成形方法。
成分(A):強化繊維:25〜80質量%
成分(C):不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール(レゾール型)樹脂、ユリア・メラミン樹脂および熱硬化ポリイミドの群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂:20〜75質量%。
(14)前記成分(C)が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種である(13)に記載のプレス成形方法。
(15)前記強化繊維(成分(A))が、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、鉱物繊維から選択される少なくとも1種である、(1)〜(14)のいずれかに記載のプレス成形方法。
(16)前記強化繊維(成分(A))の質量平均繊維長が1〜50mmの範囲内である、(15)に記載のプレス成形方法。
(17)自動車、電気・電子機器、家電製品、または、航空機の用途に用いられる部品・部材である、(1)〜(16)のいずれかに記載のプレス成形方法により得られた成形体、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料を用いたプレス成形方法は、煩雑な工程を踏む必要がないため、成形体製造時における工程の簡略化および作業性に優れ、結果、成形体製造時におけるコストダウンを図ることができる。さらに、本発明のプレス成形方法により得られる成形体は経済性、作業性に優れることから、自動車、電気・電子機器、家電製品、または、航空機の用途に用いられる部品・部材に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1−a】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様における、成形材料がプレス成形される様子を示した簡略図である。
【図1−b】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様における、成形材料がプレス成形される様子を示した簡略図である。
【図1−c】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様における、成形材料がプレス成形される様子を示した簡略図である。
【図1−d】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様における、成形材料がプレス成形と剪断加工が実施される様子を示した簡略図である。
【図1−e】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様における、成形材料がプレス成形と剪断加工が実施される様子を示した簡略図である。
【図2】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様の簡略図である。
【図3−a】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様において、図2のC部分を拡大し、稼働する様子を示した簡略図である。
【図3−b】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様において、図2のC部分を拡大し、稼働する様子を示した簡略図である。
【図4−a】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施態様において、図2のD−DD断面を拡大し、稼働する様子を示した簡略図である。
【図4−b】本発明のプレス成形方法に用いる成形型(a)の一実施例において、D−DD断面を拡大し、稼働する様子を示した簡略図である。
【図5−a】加熱装置内における成形材料の温度測定点を平面方向から示した簡略図である。
【図5−b】加熱装置内における成形材料の温度測定点を厚み方向から示した簡略図である。
【図6】成形型のキャビティを、プレス装置の開閉方向から示した簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のプレス成形方法について、好ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0014】
本発明の強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料をプレス成形する方法は、下記する工程(I)〜(V)を含んでなり、かつ、下記する工程(III)〜(V)を同一の成形型(a)内にて実施するプレス成形方法である。
【0015】
また、本発明の強化繊維と熱硬化性樹脂からなる成形材料をプレス成形する方法は、下記する工程(VI)〜(IX)を含んでなり、かつ、下記する工程(VII)〜(IX)を同一の成形型(a)内にて実施するプレス成形方法である。
【0016】
すなわち、いずれも、開口部を有する凹部の型と、該凹部に対応する凸部を有し、該凹部の型との間でキャビティが構成される凸部の型からなるプレス成形型であって、動力源として、プレス成形型を稼働させる加圧装置の型締め力および/または型開き力を用い、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構と、成形材料を加圧し、プレス成形をする機構とを併せ持った構成を有する成形型内にて実施するプレス成形方法である。
【0017】
ここで、プレス成形とは、加工機械および型、工具等を用いて金属、プラスチック材料、セラミックス材料などに例示される各種材料に曲げ、剪断、圧縮等の変形を与えて成形体を得る方法であるが、その成形形態として絞り、深絞り、フランジ、コールゲート、エッジカーリング、型打ちなどが例示される。また、プレス成形方法に関しては、本発明の範囲を逸脱しなければ特に制限はなく、プラスチックを使用した成形材料では、得られる成形体の量産性の観点から加熱加圧法、コールドプレス成形法(スタンピングプレス成形法)、射出プレス成形法が好ましく用いられる。
【0018】
本発明に用いられる成形型(a)とは、図1−aに示されるように、開口部を有する凹部の型(5)と、該凹部に対応する凸部(2)を有し、該凹部の型との間でキャビティ(8)が構成される凸部の型からなるプレス成形型であって、動力源として、プレス成形型を稼働させる加圧装置(図示せず)の型締め力および/または型開き力を用い、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構(3、4)と、成形材料を加圧し、プレス成形をする機構とを併せ持った構成を有する成形型である。また、これらの成形型は本発明のプレス成形方法により製造される成形体の形状に応じたキャビティ面を有している。ここで、キャビティとは、該成形型を型締した際の隙間部分を指し、得られる成形体の形状に対応する部分である。
【0019】
次いで、以下にマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた成形材料を使用する場合である、上記工程(I)〜(V)を記す。
【0020】
工程(I)は、成形材料を構成する熱可塑性樹脂の可塑化温度まで、該成形材料を加熱する工程である。強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料においては、予め該成形材料を、前記熱可塑性樹脂の可塑化温度以上に加熱する必要があるため、遠赤外線ヒーター、加熱板、高温オーブン、誘電加熱などに例示される加熱装置で加熱し、熱可塑性樹脂を溶融、軟化させた状態(可塑化)とする工程である。
【0021】
工程(II)は、可塑化温度まで加熱せしめた成形材料を搬送し、解放された成形型(a)へ配置する工程である。加熱された成形材料は人手、ロボットなどで搬送し、解放された成形型へ配置される。搬送に際しては、作業上の安全面や、プレス成形が行われる成形型への成形材料の配置精度の観点から、適宜、人手やロボットが選択される。
【0022】
工程(III)は、成形型(a)を型締めすることにより、可塑化温度まで加熱せしめた成形材料を加圧冷却する工程である。ここで、図1−b〜図1−cに、加圧冷却工程の一連の動作を示す。図1−bは、加熱、配置された成形材料が、成形型(a)を型締めすることにより、成形型のキャビティ内(図1−a、8)に押し込まれる状態を図示している。この際、図1−bの3に図示する剪断加工機構を構成する部材は、横方向にスライドをし、図1−bの4が成形型の上型凸部(図1−bの6−a)に接触しないように構成させている。ついで、図1−cは、プレス装置の型締め動作により、予め設定された成形型キャビティ厚みまで型締めがおこなわれ、成形材料が賦型されている様子を図示している。その際、剪断加工機構は、該機構を構成する部材である図1−cの3が、図1−cの4の下側まで噛み込み、続く工程(IV)や工程(VIII)に備えた状態となる。 工程(IV)は、加圧冷却後、成形型(a)内において、成形材料にかける加圧力を保持しながら、剪断力により余肉部分を加工、除去する工程である。工程(IV)の具体的な態様について、一連の動作を図1−c〜図1−dに示す。図1−cにて加圧冷却により、成形材料の成形型への賦型を完了し、ついで、プレス装置の動力を用いて図1−dに示すように成形型を解放する動作に移行されるが、その際に成形材料には、加圧力保持機構(図1−d、6−a)により成形型の下型である、5に押さえつけられ、加圧力が保持された状態となる。前記加圧力を保持された状態を維持しつつ、図1−dの3により図1−dの4が、成形体の余肉部分を剪断力により除去するように稼働し、図1−dに示すように、余肉部分が除去される。
【0023】
工程(V)は、図1−eに示すように、成形型(a)を解放し、成形体を成形型(a)から取り出す工程である。
【0024】
ここで、前記成形型(a)には、少なくとも成形材料を加圧冷却する加圧冷却機構、成形材料にかける加圧力を保持する加圧力保持機構、ならびに、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構を併せ持った構成を有することが好ましい。成形型(a)がこれらの機構を備えることにより、成形材料を成形体の形状に賦型する工程、賦型された成形材料を加圧しながら固化させ、成形体とする工程を経ることによって発生する成形体の余肉部分を、成形型から取り出さずに除去することができ、製品となる成形体において不要となる箇所の除去、加工の作業性を向上させることができる。
【0025】
かかる成形材料を加圧冷却する加圧冷却機構は、成形型の内部に冷却オイルや冷却水の流路を設けてある構造を有すること、加圧機構としてプレス成形機の耐荷重以上の荷重を受け持つことができる素材、構造を併せ持つことが、成形サイクルを短サイクルとすることができる点で好ましい。
【0026】
かかる成形材料にかける加圧力を保持する加圧力保持機構は、成形型(a)(例えば、図1−a)に具備されており、特に、加圧力保持機構が、少なくとも、エア、ガス、オイル、およびバネ要素から選択されるいずれかの機構である場合に、剪断加工時に成形体を押さえ込みながら剪断加工を効果的に行うことができるため、加工精度の向上、加工面の美麗さの観点から好ましい。また、加圧保持機構は、必要とされる加圧保持力により適宜選択されるが、とりわけ、ガス要素を用いたガススプリングを用いることが、高い加圧力を再現性よく発現、保持させることができるため好ましく用いることができる。
【0027】
かかる剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構は、成形型(a)(例えば、図1−a)に具備されており、特に、剪断加工機構が、スライドカム構造、ピン構造、およびパンチ構造から選択されるいずれかの構造を用いた機構であることが、成形型の省スペース化、余肉部分除去の加工性の観点から好ましい。なお、剪断加工機構として、スライドカム構造、ピン構造、およびパンチ構造から適宜必要な形状に併せて選択することができる。比較的広範囲の剪断加工であるならば、スライドカム構造、円形形状や比較的小部品の穿孔などには、パンチ構造、ピン構造が該構造の耐久性の観点から好適に用いることができる。
【0028】
前記工程(IV)が、工程(III)から工程(V)に移行されるタイミングで実施されることが、工程の簡略化が可能にするため、成形体のコストダウンの観点から好ましい。このタイミングで実施されることにより、成形材料が成形型のキャビティ内で十分に固化した後に、工程(IV)に移行されるため、余肉部分を除去した後の切断面の仕上がりが美麗となるためである。
【0029】
次に、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた成形材料を使用する場合である上記工程(VI)〜(IX)を記す。
【0030】
工程(VI)は、成形材料を搬送し、予め硬化可能な温度まで加熱せしめた、解放された成形型(a)へ配置する工程である。予め所望の厚みとなるように積層せしめた成形材料を搬送し、解放された成形型(a)へ配置する工程である。加熱された成形材料は人手、ロボットなどで搬送し、解放された成形型へ配置される。搬送に際しては、作業上の安全面や、プレス成形が行われる成形型への成形材料の配置精度の観点から、適宜、人手やロボットが選択される。
【0031】
工程(VII)は、成形型(a)を型締めすることにより、成形材料を加圧する工程であり、成形型(a)を型締めすることにより、前記成形材料を加圧しながら硬化する工程である。ここで、上述のマトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を用いた場合の工程(III)と同様に図を用いて説明する。図1−b〜図1−cに、加圧しながら硬化する工程の一連の動作を示す。図1−bは、積層、配置された成形材料が、成形型(a)を型締めすることにより、成形型のキャビティ内(図1−a、8)に押し込まれる状態を図示している。この際、図1−bの3に図示する剪断加工機構を構成する部材は、横方向にスライドをし、図1−bの4が成形型の上型凸部(図1−bの6−a)に接触しないように構成させている。ついで、図1−cは、プレス装置の型締め動作により、予め設定された成形型キャビティ厚みまで型締めがおこなわれ、成形材料が賦型されている様子を図示している。その際、剪断加工機構は、該機構を構成する部材である図1−cの3が、図1−cの4の下側まで噛み込み、続く工程(VIII)へと移行される。
【0032】
工程(VIII)は前記工程(IV)と同様であり、工程(IX)は前記工程(V)と同様である。
【0033】
工程(VIII)が、工程(VII)から工程(IX)から工程(VIII)に移行されるタイミングで実施されることが、工程の簡略化が可能にするため、成形体のコストダウンの観点から好ましい。このタイミングで実施されることにより、成形材料が成形型のキャビティ内で十分に固化した後に、工程(VIII)に移行されるため、余肉部分を除去した後の切断面の仕上がりが美麗となるためである。
【0034】
前記工程(IV)や工程(VIII)において、剪断力により余肉部分を加工、除去する工程が、前記成形材料の固化する温度以下にて実施されることが成形体の成形収縮の影響を受けにくいため寸法精度が向上および工程の簡略化が可能であるため成形体のコストダウンの観点から好ましい。前記成形材料の固化する温度は、DSC(Differntial Scanning Calorimetry)により求めことができる。昇温速度10℃/minで測定し、得られたDSC曲線における融解ピークの立ち上がりの点を固化温度とする。
【0035】
前記工程(III)や前記工程(VII)において、成形型(a)の凹部のキャビティの投影面積にかかる加圧力が10〜50MPaの範囲内であることが、可塑化した成形材料の賦形のしやすさや、成形体の厚み制御のしやすさの観点から好ましい。とりわけ、15MPa〜30MPaの範囲内がプレス成形機の設備コストの観点から好ましい。ここで、成形型(a)の凹部のキャビティの投影面積とは成形型の開閉方向からみた2次元での平面積であって、図6における斜線部分(8)に例示され、キャビティが複雑な凹凸形状を有している場合は、実成形品の展開面積より小さくなる。
【0036】
前記工程(II)〜(IV)において、成形型の温度が成形材料を構成する熱可塑性樹脂の固化温度より20℃〜100℃低い温度の範囲内で行われることが可塑化した成形材料の賦形のしやすさや、成形体の表面外観の観点から好ましい。例えば、マトリックス樹脂(成分(B))としてポリアミド6樹脂を用いる場合は、120℃〜160℃の範囲内、ポリプロピレン樹脂を用いる場合は80℃〜120℃の範囲内が好ましい態様として例示できる。
【0037】
さらに、工程(III)〜(V)を同一の成形型(a)内にて実施するためには、少なくとも、冷却加圧工程にて、成形材料を加圧しながら該成形材料を構成する熱可塑性樹脂(成分(B))の固化温度以下まで冷却することが、その後の工程(IV)における、剪断加工工程の加工のしやすさ、剪断加工ジグの耐久性の向上、さらに、成形体の表面外観の美麗さが向上するため好ましい。さらには、工程(III)〜(V)を同一の成形型(a)内にて実施することにより、従来、冷却加圧工程と剪断加工工程とが別工程となっていたものを一工程とすることができるため、工程の簡略化および省設備化により、結果として成形体をコストダウンできる。
【0038】
前記工程(VII)から工程(IX)において、同一の成形型(a)内にて実施することにより、従来、加圧工程と剪断加工工程とが別工程となっていたものを一工程とすることができるため、工程の簡略化および省設備化により、結果として成形体をコストダウンできる。
【0039】
なお、本発明のプレス成形方法は、さらに、工程(V)や工程(IX)を補助するエジェクタを動作させる工程が含まれていた場合、成形作業の簡素化、成形トラブルなどを防止できるという点で好ましい。また、エジェクタは、圧縮空気をブローする方式、機械的な構造部材により突き上げる方式のいずれも好ましく用いることができる。
強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料とは、強化繊維で補強された熱可塑性樹脂であれば特に制限されず、例えば、複数本のストランド状強化繊維に針を突き刺し、互いに繊維を絡まり合わせたマット状ストランド強化繊維に熱可塑性樹脂を積層し、これを加熱、加圧して得られる成形材料、強化繊維束に溶融熱可塑性樹脂を付着させ、加圧して得られる成形材料、強化繊維のみ、あるいは粉末形状、繊維形状の熱可塑性樹脂を分散させ、これを加熱、加圧して得られる成形材料、強化繊維と粉末形状、繊維形状の熱可塑性樹脂を水中に分散、混合した懸濁液から抄造して得られる不織材料を加熱、加圧して得られる成形材料、強化繊維のみを水中に分散した懸濁液から抄造して得られる不織材料に粉末形状、繊維形状、フィルム形状、不織布形状の熱可塑性樹脂を加熱、加圧して、抄造して得られた該強化繊維の不織布材料に該熱可塑性樹脂を接着してなる成形材料などの公知の成形材料が挙げられる。これらのなかでも、該強化繊維の不織布材料に該熱可塑性樹脂を接着してなる成形材料が、強化繊維の分散性および熱可塑性樹脂の形態の自由性や、製造方法の経済性の観点から好ましく用いることができる。
同様に強化繊維と熱硬化性樹脂からなる成形材料とは、強化繊維で補強された熱硬化性樹脂であれば特に制限されず、例えば、複数本のストランド状強化繊維に熱硬化性樹脂を積層して得られる成形材料、ストランド状強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた後、5〜50mmにカットし、ランダムとなるように配置し、加圧することにより得られる成形材料、強化繊維束を織物状製織したものに熱硬化性樹脂を含浸させ得られる成形材料、強化繊維を水中に分散、混合した懸濁液から抄造して得られる不織材料に熱硬化性樹脂を加圧、含浸して得られる成形材料などが挙げられる。これらのなかでも、該強化繊維の不織布材料に該熱硬化性樹脂を含浸してなる成形材料、ストランド状強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた後、強化繊維をカットし、ランダムとなるように配置した成形材料が製造方法の容易さ、経済性の観点から好ましく用いることができる。
【0040】
また、前記成分(A)は、強化繊維による補強効果が大きく期待できる、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、鉱物繊維から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ガラス繊維は低コストで、炭素繊維は高い補強効果が得られるためさらに好ましく、とりわけ好ましくは、強化繊維によるマトリックス樹脂への補強効果が大きい炭素繊維である。
【0041】
さらに、該成分(A)は、25〜80質量%の割合で含有されていることが好ましい。本発明により得られる成形体の機械的特性を鑑みると、30〜75質量%の割合で含有されていることがさらに好ましく、35〜70質量%の割合で含有されていることがとりわけ好ましい。炭素繊維の質量含有量が25質量%以上であることにより、本発明のプレス成形方法により得られる成形体の強化繊維による補強効果が発現するため、構造部材として用いた場合に必要な曲げ強度を発揮できる。また、炭素繊維の質量含有率が80質量%以下であることにより、強化繊維とマトリックス樹脂の該繊維間へのマトリックスの含浸を満たすことができ、成形性が確保できる。
【0042】
さらに、前記成分(A)の質量平均繊維長が1〜50mmであることが好ましい。強化繊維の質量平均繊維長は、より好ましくは1.5〜26mmであり、さらに好ましくは2〜6.5mmである。強化繊維の質量平均繊維長が1mmより長いと、繊維補強効果が大きく、構造部材として使用する際に好適である。また、強化繊維の質量平均繊維長が50mmより短いと、該強化繊維の絡み合いによる立体障害を小さくすることができるため、本発明のプレス成形方法より得られる成形体内に欠点の発生を抑えることができるため好ましい。また、強化繊維の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0043】
強化繊維は、複数の強化繊維の単糸が合わさった強化繊維束として含まれていても良い。この場合、強化繊維束の単糸数には、特に制限はなく、100〜350,000本の範囲内で使用することができ、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内で使用することが好ましい。また強化繊維の生産性の観点からは、単糸数が多いものが好ましく、20,000〜100,000本の範囲内で使用することが好ましい。強化繊維が強化繊維束として含まれる場合には、強化繊維束に集束性をもたせ、取り扱い性を高めるためにウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などの組成物を適宜付与したものであってもよい。さらに、強化繊維の分散を良好にするために、強化繊維束をカットしたものを用いても良い。また、強化繊維の形態は、力学的に等方性を有するものを得る観点からは、強化繊維がランダムに配向したウェブまたはマット状のシート形態をとることも好ましい。
【0044】
また、前記成分(B)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィンや、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、液晶ポリマーなどの結晶性樹脂、スチレン系樹脂の他や、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレートなどの非晶性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系、およびアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体および変性体等から選ばれる熱可塑性樹脂が挙げられる。本発明においては、これらの少なくとも1種を熱可塑性樹脂として採用することができる。好ましくは、経済性の観点から、前記成分(B)は、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリアセタール樹脂の群より選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂であり、さらに好ましくは、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルイミド樹脂から選択される少なくとも1種である。これは、強化繊維間へ熱可塑性樹脂を含浸させる成形性の観点からである。
【0045】
さらに、前記成分(B)の配合量は、20〜75質量%の割合であることが好ましい。上記強化繊維の含有量の観点と同様に、25〜70質量%の割合で含有されていることがさらに好ましく、30〜65質量%の割合で含有されていることがとりわけ好ましい。
また、前記成分(C)としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミドなどや、これらの共重合体、変性体、および、2種類以上ブレンドした樹脂などを使用することができる。さらに、耐衝撃性向上のために、上記熱硬化性樹脂にエラストマーもしくはゴム成分を添加してもよい。この中でも特に成形品の剛性、強度の観点からエポキシ樹脂が好ましい。さらに、前記成分(C)の配合量は、20〜75質量%の割合であることが好ましい。上記強化繊維の含有量の観点と同様に、25〜70質量%の割合で含有されていることがさらに好ましく、30〜65質量%の割合で含有されていることがとりわけ好ましい。
【0046】
また、上記成分(B)については、必要に応じて上記した熱可塑性樹脂の混合物あるいはこれらの熱可塑性樹脂を使用したポリマーアロイおよびこれらの変性物を挙げることができ、本発明において熱可塑性樹脂とはこれらを全て包含するものである。このような熱可塑性樹脂中には安定剤、顔料、充填剤などの通常配合される各種の配合剤が任意に含まれていてもよい。さらに上記成分(C)についても、安定剤、顔料、充填剤などの通常配合される各種の配合剤が任意に含まれていてもよい。
【0047】
本発明のプレス成形方法より得られた成形体は、種々の用途に展開できる。特にインストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール等の自動車・二輪車用部品、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、プラズマディスプレーなどの電気・電子部品、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品、土木・建築用部品、航空機用部品等の各種用途に用いることができ、なかでも電子機器部品、自動車部品により好ましく用いられる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例に用いた原料は以下のとおりである。
【0049】
(参考例1)
成分(A)強化繊維(PAN系炭素繊維)
強化繊維であるPAN系炭素繊維は、下記のようにして製造した。
【0050】
アクリロニトリル(AN)99.4モル%とメタクリル酸0.6モル%からなる共重合体を用いて、乾湿式紡糸方法により単繊維デニール1d、フィラメント数24,000のアクリル系繊維束を得た。得られたアクリル系繊維束を240〜280℃の温度の空気中で、延伸比1.05で加熱し、耐炎化繊維に転換し、次いで窒素雰囲気中300〜900℃の温度領域での昇温速度を200℃/分とし10%の延伸を行った後、1,300℃の温度まで昇温し焼成した。この炭素繊維束に硫酸を電解質とした水溶液で、炭素繊維1gあたり3クーロンの電解表面処理を行い、120℃の温度の加熱空気中で乾燥しPAN系炭素繊維束を得た。
総フィラメント数:24,000本
単繊維直径:7μm
単位長さ当たりの質量:0.8g/m
比重:1.8g/cm
引張強度(注1):4.2GPa
引張弾性率(注2):230GPa。
(注1)引張強度、(注2)引張弾性率の測定条件
【0051】
日本工業規格(JIS)−R−7601「樹脂含浸ストランド試験法」に記載された手法により、求めた。ただし、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、“BAKELITE”(登録商標)ERL4221(100質量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3質量部)/アセトン(4質量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて形成した。また、ストランドの測定本数は、6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の引張強度、引張弾性率とした。
【0052】
(参考例2)
成分(B−1)熱可塑性樹脂として未変性ポリプロピレン樹脂、(プライムポリマー(株)製、“プライムポリプロ(登録商標)”J105G、比重:0.91、可塑化温度:160℃)を用いた。
【0053】
200℃の温度に加熱された上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の熱盤面間に、離型シートとしてテフロン(登録商標)シート(厚さ1mm)を用い、ポリプロピレン樹脂を挟み込むように配置した。ポリプロピレン樹脂を投入し、偏りが無いように配置した。ついで、3MPaでプレスした。次に、30℃の温度に温度制御された、上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の冷却盤間に配置し、3MPaで冷却プレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.13mmのポリプロピレンフィルム(以下PPと略す)を得た。
【0054】
(参考例3)
成分(B−2)熱可塑性樹脂としてポリアミド6樹脂(東レ(株)製、“アミラン(登録商標)”CM1001、比重:1.13、可塑化温度:225℃)を用いた。
【0055】
240℃の温度に加熱された上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の熱盤面間に、離型シートとしてテフロン(登録商標)シート(厚さ1mm)を用い、ポリアミド6樹脂を挟み込むように配置した。ポリアミド6樹脂を投入し、偏りが無いように配置した。ついで、3MPaでプレスした。次に、30℃の温度に温度制御された、上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の冷却盤間に配置し、3MPaで冷却プレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.1mmのポリアミドフィルム(以下PAと略す)を得た。
【0056】
(参考例4)
成分(A)として、参考例1で得られた炭素繊維連続束を、カートリッジカッターでカットし、繊維長6.4mmのチョップド糸を得た。界面活性剤(和光純薬工業(株)社製、「n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム」(製品名)の1.5wt%水溶液100リットルを攪拌し、予め泡立てた分散液を作製した。この分散液に、得られたチョップド糸100gを投入し、10分間撹拌した後、長さ1000mm×幅1000mmの抄紙面を有する抄紙機に流し込み、吸引により脱水して、その後、150℃の温度で2時間乾燥し、炭素繊維からなる不織布(以下CFと略す)を得た。
【0057】
(参考例5)
参考例4で得られた炭素繊維からなる不織布1枚を、参考例2で得られたPPを前記炭素繊維からなる不織布の両面に挟み込み、[PP/CF/PP]の構成のシートとした。また、離型シートとしてテフロン(登録商標)シート(厚さ1mm)を用い、該シートを挟み込むように配置した。ついで、200℃の温度に加熱された上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の熱盤面間に配置し、5MPaでプレスした。次に、30℃の温度に温度制御された冷却盤間に配置し、5MPaで冷却プレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.31mmの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料を得た。
【0058】
(参考例6)
参考例4で得られた炭素繊維からなる不織布1枚を、参考例3で得られたPAを前記炭素繊維からなる不織布の両面に1枚ずつ挟み込み、[PA/CF/PA]の構成のシートとした。また、離型シートとしてテフロン(登録商標)シート(厚さ1mm)を用い、該シートを挟み込むように配置した。ついで、240℃の温度に加熱された上下の熱盤面から構成される油圧式プレス機の熱盤面間に配置し、5MPaでプレスした。次に、30℃の温度に温度制御された冷却盤間に配置し、5MPaで冷却プレスし、長さ1000mm、幅1000mm、厚み0.26mmの強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料を得た。
【0059】
(参考例7)
成分(A)として東レ(株)製炭素繊維(“トレカ(登録商標)”M46J(引張強度4200MPa、引張弾性率436GPa、フィラメント数6000本、繊維目付0.2g/m))に、成分(C)として130℃硬化タイプエポキシ樹脂からなるプリプレグの炭素繊維目付が116g/m、樹脂含有量(Wr)が30%の一方向(UD)プリプレグ(東レ(株)製“トレカ(登録商標)”プリプレグP6053−12)を用いた。これを表4の条件となるように繊維方向を0°として、繊維方向が上から45°、−45°、90°、90°、−45°、45°となるように6枚のプリプレグを積層し、成形材料を得た。
【0060】
(参考例8)
成分(A)として、強化繊維として東レ(株)製炭素繊維(“トレカ(登録商標)”T300B(引張強度3500MPa、引張弾性率230GPa、フィラメント数3000本、繊維目付0.2g/m))を縦糸および横糸として用い、これら縦糸、横糸を5本/cmとなるように平織とされた炭素繊維織物に、成分(C)として130℃硬化タイプエポキシ樹脂からなる炭素繊維目付が198g/m、樹脂含有量(Wr)が40%のクロスプリプレグ(東レ(株)製“トレカ(登録商標)”プリプレグF6343B−05)を用いた。これを表4の条件となるように積層し、成形材料を得た。(参考例9)
参考例7記載の一方向(UD)プリプレグ(東レ(株)製“トレカ(登録商標)”プリプレグP6053−12)を用い、これを、カッターナイフを用いて、繊維方向に250mm、繊維と直行方向に12mmとなるように裁断した。これをSUS製の平板に裁断したプリプレグがランダムに配置されるように手によりばらまき、さらに成形材料の成形後の厚みが表4に記載の厚みとなるように分量を調整することにより成形材料を得た。
【0061】
各実施例で得られる評価基準は次の通りである。
【0062】
(参考例10)
図5−aおよび図5−bに示すように、成形材料(7)の平面上の中心点と、成形材料の厚み方向の中心点の交差する点(11)を厚み方向の中心とした。計測はKタイプの熱電対を用い、キーエンス社製データロガー“NR600”を用い、1秒間隔で計測をおこなった。K熱電対は成形材料に挟み込み、温度測定中にはずれてしまわない様に注意深く、加熱装置内に配置した。
【0063】
(評価1)剪断加工性の評価
プレス成形方法により得られた成形体の剪断面を目視により観察し、以下の基準で判定した。
A:剪断面の追加加工する必要が無く、剪断面に成分(A)、成分(B)また成分(C)の切りカスが付着していない。
B:剪断面の追加加工する必要は無いものの、剪断面に成分(A)、成分(B)また成分(C)の切りカスが付着している。
C:剪断面の追加加工する必要がある。
【0064】
(評価2)作業性の評価
プレス成形方法により得られた成形体の剪断面を目視により観察し、以下の基準で判定した。
A:冷却加工工程と剪断加工工程が1工程で終了する。
B:冷却加工工程と剪断加工工程が1工程で終了するものの、剪断加工時に成形体にぶれが見られる。
C:冷却加工工程と剪断加工工程が1工程では終了しない。
いずれの評価においてもA、Bは可とし、Cは不可とした。
【0065】
(実施例1)
強化繊維に成分(A)、熱可塑性樹脂に成分(B−1)を用いて、参考例5に記載の要領で得たシート状成形材料を表1に記載の条件となるように積層を行い調整した。余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型(図1−a)をもちいた。また、成形型温度は120℃にオイルを用いて、図1−aの5および6−bを温調した。その後、参考例7に記載の要領で該成形材料の厚み方向に中心が235℃になるまで遠赤外線ヒーターを具備したオーブン中で500秒間予熱した。ついで、図1−aの7に示す様に、該成形材料を金型キャビティ面の凹部の投影面に該成形材料を配置した。その後、直ちに20mm/秒の速度で成形型の凸型を降下させ、図1−b、図1−cに示す状態に連続的に移行させながら、該成形材料をキャビティ内で充填させつつ、図1−cに示すキャビティの厚みが1.2mmになるまで型締をおこなった。その後、この状態を維持するように50秒間加圧、冷却し、その後、図1−d、図1−eに示すように連続的に成形型を開くとともに、余肉部分を除去するとともに成形体を得た。余肉部分の除去加工に際し、各構造の稼働の様子を図3−a、図3−b、図4−a、図4−bに示した。評価条件および結果は表1にまとめた。
【0066】
(実施例2)
余肉除去を行う剪断加工機構として、ポンチ構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型をもちいた以外は実施例1と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表1にまとめた。
【0067】
(実施例3)
余肉除去を行う剪断加工機構として、ピン構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型をもちいた以外は実施例1と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表1にまとめた。
【0068】
(実施例4)
余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造とポンチ構造を併用し、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型をもちいた以外は実施例1と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表1にまとめた。
【0069】
(実施例5)
余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造とピン構造を併用し、加圧保持機構としてエアスプリングを具備した成形型をもちいた以外は実施例1と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表1にまとめた。
【0070】
(実施例6)
余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造とピン構造を併用し、加圧保持機構としてバネを具備した成形型をもちいた以外は実施例1と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表1にまとめた。
【0071】
(比較例1)
余肉除去を行う剪断加工機構、加圧保持機構の具備しない成形型をもちいた以外は実施例1と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表1にまとめた。
【0072】
(比較例2)
余肉除去を行う剪断加工機構として別装置である油圧式シリンダーを用いたスライドカム、加圧保持機構は具備しない成形型をもちいた以外は実施例1と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表1にまとめた。
【0073】
(実施例7)
強化繊維に成分(A)、熱可塑性樹脂に成分(B−2)を用いて、参考例5に記載の要領で得たシート状成形材料を表2に記載の条件となるように積層を行い調整した。余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型(図1−a)をもちいた。また、成形型温度は150℃にオイルを用いて、図1−aの5および6−bを温調した。その後、参考例7に記載の要領で該成形材料の厚み方向に中心が270℃になるまで遠赤外線ヒーターを具備したオーブン中で500秒間予熱した。ついで該成形材料を金型キャビティ面の凹部に該成形材料を配置した。その後、直ちに20mm/秒の速度で成形型の凸型を降下させ、図1−b、図1−cに示す状態に連続的に移行させながら、該成形材料をキャビティ内で充填させつつ、図1−cに示すキャビティの厚みが1.3mmになるまで型締をおこなった。その後、この状態を維持するように50秒間加圧、冷却し、その後、図1−d、図1−eに示すように連続的に成形型を開くとともに、余肉部分を除去するとともに成形体を得た。余肉部分の除去加工に際し、各構造の稼働の様子を図3−a、図3−b、図4−a、図4−bに示した。評価条件および結果は表2にまとめた。
【0074】
(実施例8)
余肉除去を行う剪断加工機構として、ポンチ構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型をもちいた以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表2にまとめた。
【0075】
(実施例9)
余肉除去を行う剪断加工機構として、ピン構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型をもちいた以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表2にまとめた。
【0076】
(実施例10)
余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造とポンチ構造を併用し、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型をもちいた以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表2にまとめた。
【0077】
(実施例11)
余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造とピン構造を併用し、加圧保持機構としてエアスプリングを具備した成形型をもちいた以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表2にまとめた。
【0078】
(実施例12)
余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造とピン構造を併用し、加圧保持機構としてバネを具備した成形型をもちいた以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表2にまとめた。
【0079】
(比較例3)
余肉除去を行う剪断加工機構、加圧保持機構の具備しない成形型をもちいた以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表2にまとめた。
【0080】
(比較例4)
余肉除去を行う剪断加工機構として別装置である油圧式シリンダーを用いたスライドカム、加圧保持機構は具備しない成形型をもちいた以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価結果は表2にまとめた。
【0081】
(実施例13)
強化繊維に成分(A)、熱可塑性樹脂に成分(B−2)を用いて、参考例5に記載の要領で得たシート状成形材料を表3に記載の条件となるように積層を行い調整した。余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型(図1−a)をもちいた。また、成形型温度は150℃にオイルを用いて、図1−aの5および6−bを温調した。その後、参考例7に記載の要領で該成形材料の厚み方向に中心が270℃になるまで遠赤外線ヒーターを具備したオーブン中で500秒間予熱した。ついで該成形材料を金型キャビティ面の凹部に該成形材料を配置した。その後、直ちに20mm/秒の速度で該凸型を降下させ、図1−b、図1−cに示す状態に連続的に移行させながら、該成形材料をキャビティ内で充填させつつ、図1−cに示すキャビティの厚みが1.1mmになるまで型締をおこなった。その後、この状態を維持するように50秒間加圧、冷却し、その後、図1−d、図1−eに示すように連続的に成形型を開くとともに、余肉部分を除去するとともに成形体を得た。余肉部分の除去加工に際し、各構造の稼働の様子を図3−a、図3−b、図4−a、図4−bに示した。評価条件および結果は表3にまとめた。
【0082】
(実施例14)
余肉除去を行う剪断加工機構として、ポンチ構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型をもちい、キャビティの厚みを1.2mmとした以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表3にまとめた。
【0083】
(実施例15)
余肉除去を行う剪断加工機構として、ピン構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型をもちい、キャビティの厚みを1.1mmとした以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表3にまとめた。
【0084】
(比較例5)
余肉除去を行う剪断加工機構、加圧保持機構の具備しない成形型をもちい、キャビティの厚みを0.8mmとした以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表3にまとめた。
【0085】
(比較例6)
余肉除去を行う剪断加工機構として別装置である油圧式シリンダーを用いたスライドカム、加圧保持機構は具備しない成形型をもちい、キャビティの厚みを1.2mmとした以外は実施例7と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表3にまとめた。
【0086】
(実施例16)
参考例7で得たシート状成形材料を用いた。余肉除去を行う剪断加工機構として、スライドカム構造、ポンチ構造、加圧保持機構としてガススプリングを具備した成形型(図1−a)をもちいた。また、成形型温度は130℃にオイルを用いて、図1−aの5および6−bを温調した。ついで、図1−aの7に示す様に、該成形材料を金型キャビティ面の凹部の投影面に該成形材料を配置した。その後、直ちに20mm/秒の速度で成形型の凸型を降下させ、図1−b、図1−cに示す状態に連続的に移行させながら、該成形材料をキャビティ内で充填させつつ、図1−cに示すように型締をおこなった。その後、この状態を維持するように1時間加圧し、その後、図1−d、図1−eに示すように連続的に成形型を開くとともに、余肉部分を除去するとともに成形体を得た。余肉部分の除去加工に際し、各構造の稼働の様子を図3−a、図3−b、図4−a、図4−bに示した。評価条件および結果は表4にまとめた。
【0087】
(実施例17)
参考例8で得たシート状成形材料を用いた以外は、実施例16と同様の方法にて成形体を得て、評価に供した。その条件および結果は表4にまとめた。
【0088】
(実施例18)
参考例9で得たシート状成形材料を用いた以外は、実施例16と同様の方法にて成形体を得て、評価に供した。その条件および結果は表4にまとめた。
【0089】
(比較例7)
余肉除去を行う剪断加工機構、加圧保持機構の具備しない成形型をもちいた以外は実施例16と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表4にまとめた。
【0090】
(比較例8)
余肉除去を行う剪断加工機構として別装置である油圧式シリンダーを用いたスライドカム、加圧保持機構は具備しない成形型をもちいた以外は実施例17と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表4にまとめた。
【0091】
(比較例9)
余肉除去を行う剪断加工機構として別装置である油圧式シリンダーを用いたスライドカム、加圧保持機構は具備しない成形型をもちいた以外は実施例18と同様の方法で成形体を得た。評価条件および結果は表4にまとめた。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
以上のように、実施例1〜18においては、剪断加工性、作業性ともに優れたプレス成形方法を得ることができた。また実施例4〜6、10〜12、15〜18のプレス成形方法では、2種類の剪断加工機構を併せ持った形状の成形体を作製することが可能であるという成形コストにも優れる良好な結果が得られた。
【0097】
一方、比較例1、3では、冷却加圧機構、剪断加工機構がないため、プレス成形方法として作業性、すなわち成形コストに劣る結果となった。比較例2、4、7〜8では、加圧保持機構がなく、剪断加工機構が別装置であるため、プレス成形方法として作業性に劣り、かつ、装置コストが高くなり、すなわち成形コストに劣る結果となった。また、比較例5、6では、強化繊維と熱可塑性樹脂の含有量が低すぎる場合および高すぎる場合にも、剪断加工が不可能であるという結果となった。
【符号の説明】
【0098】
1 成形型(a)
2 成形型(a)の凸部の型
3 成形型(a)に具備される剪断加工機構の一部分(スライドカム稼働部材)
4 成形型(a)に具備される剪断加工機構の一部分(スライドカム)
5 成形型(a)の凹部の型
6−a 成形型(a)に具備される加圧力保持機構(ガススプリング)
6−b 成形型(a)の凸部
7 成形材料
8 キャビティ
9 剪断加工がなされた成形体の余肉部分
10 成形体
11 成形材料の厚み方向の中心温度の計測点
C 成形型(a)に具備される剪断加工機構の一部分の拡大箇所
D 成形型(a)に具備される剪断加工機構の一部分の拡大箇所
DD 成形型(a)に具備される剪断加工機構の一部分の拡大箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形材料をプレス成形する方法において、以下の工程(I)〜(V)を含んでなり、かつ、以下の工程(III)〜(V)を同一の成形型(a)内にて実施するプレス成形方法。
成形型(a):開口部を有する凹部の型と、該凹部に対応する凸部を有し、該凹部の型との間でキャビティが構成される凸部の型からなるプレス成形型であって、動力源として、プレス成形型を稼働させる加圧装置の型締め力および/または型開き力を用い、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構と、成形材料を加圧し、プレス成形をする機構とを併せ持った構成を有する成形型。
工程(I):成形材料を構成する熱可塑性樹脂の可塑化温度まで、該成形材料を加熱する工程。
工程(II):可塑化温度まで加熱せしめた成形材料を搬送し、解放された成形型(a)へ配置する工程。
工程(III):成形型(a)を型締めすることにより、可塑化温度まで加熱せしめた成形材料を加圧冷却する工程。
工程(IV):加圧冷却後、成形型(a)内において、成形材料にかける加圧力を保持しながら、剪断力により余肉部分を加工、除去する工程。
工程(V):成形型(a)を解放し、成形体を成形型(a)から取り出す工程。
【請求項2】
強化繊維と熱硬化性樹脂からなる成形材料をプレス成形する方法において、以下の工程(VI)〜(IX)を含んでなり、かつ、以下の工程(VII)〜(IX)を同一の成形型(a)内にて実施するプレス成形方法。
成形型(a):開口部を有する凹部の型と、該凹部に対応する凸部を有し、該凹部の型との間でキャビティが構成される凸部の型からなるプレス成形型であって、動力源として、プレス成形型を稼働させる加圧装置の型締め力および/または型開き力を用い、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構と、成形材料を加圧し、プレス成形をする機構とを併せ持った構成を有する成形型。
工程(VI):成形材料を搬送し、予め硬化可能な温度まで加熱せしめた、解放された成形型(a)へ配置する工程。
工程(VII):成形型(a)を型締めすることにより、成形材料を加圧する工程。
工程(VIII):加圧冷却後、成形型(a)内において、成形材料にかける加圧力を保持しながら、剪断力により余肉部分を加工、除去する工程。
工程(IX):成形型(a)を解放し、成形体を成形型(a)から取り出す工程。
【請求項3】
前記成形型(a)は、少なくとも成形材料を加圧冷却する加圧冷却機構、成形材料にかける加圧力を保持する加圧力保持機構、ならびに、剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構を併せ持った構成を有する、請求項1または2に記載のプレス成形方法。
【請求項4】
成形材料にかける加圧力を保持する加圧力保持機構が成形型(a)に具備されており、かつ、該加圧力保持機構が、少なくとも、エア、ガス、オイル、およびバネ要素から選択されるいずれかの機構である、請求項1〜3のいずれかに記載のプレス成形方法。
【請求項5】
剪断力により余肉部分を除去する剪断加工機構が成形型(a)に具備されており、かつ、該剪断加工機構が、スライドカム構造、ピン構造、およびパンチ構造から選択されるいずれかの構造を用いた機構である、請求項1〜4のいずれかに記載のプレス成形方法。
【請求項6】
前記工程(IV)および前記工程(VIII)において、剪断力により余肉部分を加工、除去する工程が、前記成形材料の固化および硬化する温度以下にて実施される、請求項1〜5のいずれかに記載のプレス成形方法。
【請求項7】
前記工程(III)および前記工程(VII)において、成形型(a)の凹部のキャビティの投影面積にかかる加圧力が10〜50MPaの範囲内である、請求項1〜6のいずれかに記載のプレス成形方法。
【請求項8】
前記工程(IV)が、工程(III)から工程(V)に移行されるタイミングで実施される、請求項1または3〜7のいずれかに記載のプレス成形方法。
【請求項9】
前記工程(VIII)が、工程(VII)から工程(IX)に移行されるタイミングで実施される、請求項2、3〜6、または8のいずれかに記載のプレス成形方法。
【請求項10】
前記工程(II)〜(IV)において、金型温度が成形材料を構成する熱可塑性樹脂の固化温度より20℃〜100℃低い温度の範囲内で行われる、請求項1または3〜8のいずれかに記載のプレス成形方法。
【請求項11】
前記成形材料が以下の成分(A)、成分(B)を有してなる、請求項1、3〜8または10のいずれかに記載のプレス成形方法。
成分(A):強化繊維:25〜80質量%
成分(B):ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリアセタール樹脂の群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂:20〜75質量%
【請求項12】
前記成分(B)が、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルイミド樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項11に記載のプレス成形方法。
【請求項13】
前記成形材料が以下の成分(A)、成分(C)を有してなる、請求項2、3〜6または9のいずれかに記載のプレス成形方法。
成分(A):強化繊維:25〜80質量%
成分(C):不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール(レゾール型)樹脂、ユリア・メラミン樹脂および熱硬化ポリイミドの群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂:20〜75質量%。
【請求項14】
前記成分(C)が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載のプレス成形方法。
【請求項15】
前記強化繊維(成分(A))が、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、鉱物繊維から選択される少なくとも1種である、請求項1〜14のいずれかに記載のプレス成形方法。
【請求項16】
前記強化繊維(成分(A))の質量平均繊維長が1〜50mmの範囲内である、請求項15に記載のプレス成形方法。
【請求項17】
自動車、電気・電子機器、家電製品、または、航空機の用途に用いられる部品・部材である、請求項1〜16のいずれかに記載のプレス成形方法により得られた成形体、

【図1−a】
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【図1−b】
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【図1−c】
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【図1−d】
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【図1−e】
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【図2】
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【図3−a】
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【図3−b】
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【図4−a】
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【図4−b】
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【図5−a】
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【図5−b】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218798(P2011−218798A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60157(P2011−60157)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「サステナブルハイパーコンポジット技術の開発」、 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】