説明

プロジェクタ並びにプロジェクタの付属装置

【課題】従来の電子黒板では、信号処理器を取り付けたホワイトボードでしか平面上の座標が取れず、信号処理器を持たないホワイトボードでは座標取得ができない。また、画面4隅を指定するなど座標の初期化が必要である問題点があった。
【解決手段】信号処理器をプロジェクタに設け、またプロジェクタからスクリーンまでの距離を取得する手段をプロジェクタに設ける。これによって、信号処理器を持たないホワイトボードでも座標取得ができる。また、画面4隅を指定するなど座標の初期化が必要ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子黒板機能を有するプロジェクタ並びにプロジェクタに電子黒板機能を付加するプロジェクタの付属装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2つの超音波受信部と1つの赤外光受光部とをもつ信号処理器と、赤外光発光部と超音波発生部を持つ電子ペンとを組み合わせた座標入力装置が見られるようになった。これは前記信号処理器をホワイトボードなどに取り付け、電子ペンから2つの超音波受信部までの距離を測定することで電子ペンの位置を取得し、パソコンで座標として取り込む電子黒板機能の一形態である。
仕組みは、まず前記信号処理部をホワイトボードの隅に取り付け、パソコンの映像をプロジェクタでホワイトボードに投写し、投写映像の特定の位置(例えばボードの4隅)を電子ペンで指定することで投写映像の位置を前記信号処理器に覚えこませ、その後は電子ペンの位置と先に覚えこませた特定の位置を比較することで電子ペンのボード上の座標を算出し、パソコンに算出された座標を渡し、ボードに描いた図形の取り込みやマウスカーソルなどを動かす処理を行うものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3にその典型的な従来例を示し、動作を説明する。
スクリーン1に取り付けられた、信号処理部2には赤外光受光部21、超音波受信部22、超音波受信部23が設けられている。電子ペン3からは、同時に赤外光パルス4と超音波パルス5(ここでパルスとは一瞬だけ出力される信号という意味でつかう)が出力される。そうすると、雷の光が見えてから音が聞こえるまでの時間で雷までの距離がわかる原理を利用し、信号処理部2は赤外光受光部20に赤外光パルス4が入力されてから、超音波受信部21、22に超音波が入力されるまでの時間を測ることで、電子ペン3から超音波受信部21、22までの距離を知ることができる。超音波受光部21、22は信号処理部2に固定されていることから、超音波受信部21、22からみた電子ペン3の位置は三角測量の原理から求めることができる(異なる2点から特定の点への距離が分かればその特定点の位置は算出できる)。
【0004】
そこで、プロジェクタでホワイトボードに映像を投写し、まず、投写映像左上61、投写映像右上62、投写映像左下63、投写映像右下64を電子ペン3で指定し、投写映像6の位置を信号処理部2に記憶させる(座標の初期化)。その後、電子ペン3を投写映像6の中で使用すれば、投写映像の位置と電子ペン3を比較することで、映像のどの位置に電子ペン3があるかを算出でき、その結果、パソコンのマウスカーソルを動かしたり、画面上のアイコンを指定したりということが可能になる。以上が従来例の仕組みである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−331796号公報(第3−5頁、 図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記で説明した従来例では、信号処理器を取り付けたホワイトボードでしか平面上の座標が取れず、信号処理器を持たないホワイトボードでは座標取得ができないこと。また、画面4隅を指定するなど座標の初期化が必要であるという問題点があった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、信号処理器をプロジェクタに設け、またプロジェクタからスクリーンまでの距離を取得する手段をプロジェクタに設けることによって、上記2つの問題点を解決することのできる、電子黒板機能を有するプロジェクタ並びにプロジェクタに電子黒板機能を付加するプロジェクタの付属装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のプロジェクタは、赤外光発光部と超音波発生部を備えスクリーン上で操作される電子ペンの発する前記赤外光を受光する赤外光受光部と、電子ペンの発する超音波を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信部を有し、電子ペンのスクリーン上での位置を取得する機能を備えることを特徴とする。
また別なる本発明のプロジェクタは、赤外光発光部と超音波発生部を備えスクリーン上で操作される電子ペンの発する赤外光を受光する赤外光受光部と、電子ペンの発する超音波を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信部と、スクリーンとの距離を計測する手段を備えることを特徴とする。
プロジェクタは、さらに、赤外光受光部の出力と、超音波受信部の出力と、スクリーンとの距離を計測する手段の出力とから、電子ペンのスクリーン上での位置を取得する手段を備える。
また別なる本発明のプロジェクタは、ライトバルブ上の表示画像をスクリーンへ拡大投写するプロジェクタであって、赤外光発光部と超音波発生部を備えスクリーン上で操作される電子ペンの発する赤外光を受光する赤外光受光部と、電子ペンの発する超音波を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信部と、スクリーンとの距離を計測する手段と、赤外光受光部の出力と、超音波受信部の出力と、スクリーンとの距離を計測する手段の出力とから演算される電子ペンのスクリーン上での位置を、拡大投写される投写矩形画像の辺の長さで正規化した座標データを出力する手段を備えることを特徴とする。
上記プロジェクタは、ミラー投写型プロジェクタである。
【0008】
また、本発明のプロジェクタの付属装置は、赤外光発光部と超音波発生部を備えスクリーン上で操作される電子ペンの発する赤外光を受光する赤外光受光部と、電子ペンの発する超音波を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信部を有し、電子ペンのスクリーン上での位置を取得する機能をプロジェクタに付加することを特徴とする。
別なる本発明のプロジェクタの付属装置は、赤外光発光部と超音波発生部を備えスクリーン上で操作される電子ペンの発する赤外光を受光する赤外光受光部と、電子ペンの発する超音波を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信部と、スクリーンとの距離を計測する手段を備えることを特徴とする。
プロジェクタの付属装置は、さらに、赤外光受光部の出力と、超音波受信部の出力と、スクリーンとの距離を計測する手段の出力とから、電子ペンのスクリーン上での位置を取得する手段を備える。
上記プロジェクタは、ミラー投写型プロジェクタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信号処理器をプロジェクタに設け、またプロジェクタからスクリーンまでの距離を取得する手段をプロジェクタに設けることによって、従来例では、信号処理器を取り付けたホワイトボードでしか平面上の座標が取れず、信号処理器を持たないホワイトボードでは座標取得ができず、また、画面4隅を指定するなど座標の初期化が必要であるという2つの問題点を解決することのできる、電子黒板機能を有するプロジェクタ並びにプロジェクタに電子黒板機能を付加するプロジェクタの付属装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に本発明のプロジェクションシステムの実施の形態を示す。このプロジェクションシステムは、スクリーン1と、スクリーン上で図形を描く電子ペン3と、プロジェクタ7とからなる。電子ペン3は、赤外光発光部と超音波発生部を持つ。
【0011】
また、プロジェクタ7の構成ブロックを図2に示す。
プロジェクタ7は、信号処理部10と、投写光学系40と、CPU30から構成される。信号処理部10は、赤外光受光部70と、超音波受信部71、72と、スクリーンまでの距離測定手段73と、これらの出力から電子ペン3までの距離を算出する距離演算部50から構成される。
【0012】
投写光学系40は、ここでは複数の非球面ミラーによってライトバルブ(図示せず)の表示画像を投写するミラー投写系の場合を示す。この方式のプロジェクタは、超短焦点化が実現でき、プレゼンテータがスクリーンの前面に立っても投写光を遮らないため眩しくならずまた影にならないという電子黒板機能を利用する上での利点を有す。
【0013】
スクリーンまでの距離測定手段73は、ここでは超音波センサで構成されている。
超音波センサは、40〜50KHz程度の振動周波数の圧電屈曲振動子を一定周期のバーストパルスで駆動することによって、空気中に超音波パルスを送出し、スクリーン1からの反射パルスエコーを同じ振動子によって検知するものである。
スクリーンまでの距離測定手段73は、ミリ波の送受波手段であってもよい。ミリ波の連続波をスクリーンに向けて送出すると、スクリーンからの反射波との間で干渉が生じる。干渉の山谷の位置は、発振周波数を掃引すると変化する。周波数の掃引幅と干渉振幅とから、プロジェクタとスクリーンとの距離を検出することができる。
【0014】
距離演算部50は、赤外光受光部70の受光する電子ペン3からの赤外光パルス4と超音波受信部71、72が受信する超音波パルス51、52との時間差、並びに、距離測定手段73が計測するスクリーンまでの距離情報とから、スクリーン上の電子ペン3とプロジェクタ7との三次元座標距離を演算してCPU30に出力する。
【0015】
CPU30は、投写画像入力に必要に応じて投写時の台形歪みを補正する処理等を施して、ライトバルブに出力する。と同時に、距離演算部50の出力から電子ペン3の位置を算出しプロジェクタ外へ出力する。
【0016】
次にプロジェクタの動作を説明する。
プロジェクタ7は、スクリーン1上に入力画像を投写する。
電子ペン3の位置を取得する動作原理は、信号処理器をスクリーン設けた従来例と同様だが、従来例と違って超音波受信部71、72がスクリーン面上になく2次元上での三角測量の原理が使用できない。実際に超音波パルス51、52によって電子ペン3から超音波受信部71、72までの2つの距離がわかっても、超音波受信部による電子ペンの位置8に見られるように2つの超音波受信部71、72を結んだ直線の一部を中心とし直線に垂直な円周上に電子ペン3が位置するということしかわからない。
このため、スクリーン上での電子ペン3の位置を得るためには超音波受信部71、72からスクリーンまでの距離を得る必要がある。この距離がわかれば、超音波受信部による電子ペンの位置8が描く円周とスクリーン面の交点9から電子ペン3の位置が限定できる。面と円周の交点は2点あり電子ペン3が交点90に位置する可能性もあるが現実的には交点9の方だけ考えればよい。
スクリーン上の投影画像の位置は、プロジェクタとスクリーン間の距離よりCPU2にて計算される。この位置を基準にして電子ペン3の位置を正規化し、座標データとして出力する。したがってプロジェクタ7がスクリーン1へ画像を投写しなくても電子ペンの位置は取得できる。
【0017】
本実施例では、画面サイズを可変することを想定して距離取得手段73を用いてスクリーンまでの距離を取得しているが、プロジェクタ本体が固定設置されている場合はスクリーンまでの距離を直接プロジェクタに入力する方法でもよい。
また、信号処理部10は、プロジェクタ7に実装されている場合を説明したが、オプションの一つとして、必要に応じて装備する付属部品とすることもできる。
【0018】
以上の説明ではプロジェクタは、ミラー投写型のプロジェクタの場合について説明したが、レンズ投写型であっても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のプロジェクションシステムの利用形態を説明する図である。
【図2】本発明のプロジェクタの構成を示すブロック図である。
【図3】従来の電子黒板を説明する図である。
【符号の説明】
【0020】
1 スクリーン
2 信号処理器
3 電子ペン
4 赤外光パルス
5 超音波パルス
6 投写映像
7 プロジェクタ
8 位置
9 交点
10 信号処理部
20 赤外光受光部
21、22 超音波受信部
30 CPU
40 投写光学系
50 距離演算部
51、52 超音波パルス
61 投写映像左上
62 投写映像右上
63 投写映像左下
64 投写映像右下
70 赤外光受光部
71、72 超音波受信部
73 距離取得手段
74 スクリーン−プロジェクタ間距離
90 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタであって、
対象物から出力された光を検出する受光手段と、
該対象物から出力された音波を受信する第1及び第2の音波受信手段と、
投写表面までの距離を取得する距離取得手段と、
前記受光手段、前記第1及び第2の音波受信手段、及び前記距離取得手段に接続された距離演算手段と、を有し、
前記距離演算手段が前記受光手段、前記第1及び第2の音波受信手段、並びに前記距離取得手段からの出力に基づいて、前記対象物が前記投写表面上にあるときに、前記対象物の位置を算出することを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、
前記対象物が電子ペンで構成されることを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項3】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、
前記投写表面がスクリーンで構成されることを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項4】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、
前記第1の音波受信手段により受信された前記音波と前記受光手段により検出された前記光との第1の時間差と、
前記第2の音波受信手段により受信された前記音波と前記受光手段により検出された前記光との第2の時間差と、
前記距離取得手段により取得された投写表面までの距離と、
に基づいて前記距離演算手段が前記位置を算出することを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項5】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、
前記受光手段が赤外光受光手段により構成され、
前記光が赤外光により構成されることを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項6】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、
前記光が光パルスにより構成されることを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項7】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、
前記第1の音波受信手段が第1の超音波受信手段により構成され、
前記第2の音波受信手段が第2の超音波受信手段により構成され、
前記音波が超音波により構成されることを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項8】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、
前記音波が音波パルスにより構成されることを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項9】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、
前記距離取得手段が超音波センサ又はミリ波送受波手段により構成されることを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項10】
請求項1に記載されたプロジェクタであって、さらに、
ミラー投写系を有することを特徴とする、プロジェクタ。
【請求項11】
プロジェクタで用いられる、対象物の位置算出方法であって、
対象物から出力された光を光検出手段により検出し
前記対象物から出力された音波を第1及び第2の音波受信手段により受信し、
投写表面までの距離を距離取得手段により取得し、
前記光検出手段、前記第1及び第2の音波受信手段、及び前記距離取得手段からの出力に基づいて、前記対象物が前記投写表面上にあるときに、前記対象物の位置を算出することを特徴とする、位置算出方法。
【請求項12】
プロジェクタの付属装置であって、
対象物から出力された光を検出する受光手段と、
前記対象物から出力された音波を受信する第1及び第2の音波受信手段と、
投写表面までの距離を取得する距離取得手段、
前記受光手段、前記第1及び第2の音波受信手段、及び前記距離取得手段に接続された距離演算手段と、を有し、
前記距離演算手段が前記受光手段、前記第1及び第2の音波受信手段、並びに前記距離取得手段からの出力に基づいて、前記対象物が前記投写表面上にあるときに、前記対象物の位置を算出することを特徴とする、プロジェクタの付属装置。
【請求項13】
プロジェクタシステムであって、
プロジェクタと電子ペンとを有し、
前記プロジェクタは、
前記電子ペンから出力された光を検出する受光手段と、
前記電子ペンから出力された音波を受信する第1及び第2の音波受信手段と、
投写表面までの距離を取得する距離取得手段と、
前記受光手段、前記第1及び第2の音波受信手段、及び前記距離取得手段に接続された距離演算手段と、を有し、
前記距離演算手段が前記受光手段、前記第1及び第2の音波受信手段、並びに前記距離取得手段からの出力に基づいて、前記電子ペンが前記投写表面上にあるときに、前記電子ペンの位置を算出することを特徴とする、プロジェクタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−188511(P2007−188511A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16416(P2007−16416)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【分割の表示】特願2003−352921(P2003−352921)の分割
【原出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】