説明

プロセスカートリッジに用いられる離間部材の位相合わせ組立方法

【課題】 クリーナユニットへの離間カムの位相合わせ組立の作業性を向上する。
【解決手段】 離間カム21と駆動ギア23端部カップリング23bの位相が所望のものとなった際に、離間カムギア22、および駆動ギア23のフランジ22a、23aに設けられた切り欠きが、アイドラギア25の中心に向かって対向するように構成する。さらに、切り欠きは、アイドラギア25歯先円より大きくなるように構成する。切り欠きが対向した位相状態で、切り欠きから挿入する形でアイドラギア25を組付けることによって、離間カム21とカップリング23bの位相を合わせて組立てることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能なプロセスカートリッジに関するものである。ここで、電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて、記録媒体に画像を形成するものである。そして、画像形成装置の例としては、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えばレーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)ファクシミリ装置およびワードプロセッサ等が含まれる。
【0002】
また、プロセスカートリッジとは、帯電手段、クリーニング手段または、現像手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを電子写真画像形成装置本体に対して着脱可能とするものである。および、帯電手段、クリーニング手段、現像手段のうちの少なくとも1つと電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを電子写真画像形成装置本体に対して着脱するものである。さらに、少なくとも現像手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを電子写真画像形成装置本体に対して着脱可能とするものを言う。
【背景技術】
【0003】
従来、複写機等の画像形成装置においては、その使用が長時間に及ぶと、電子写真感光体ドラムの交換、現像器の交換または現像剤であるトナーの補給、帯電器の清掃、廃トナーが溜まったクリーニング容器の交換、その他感光体ドラム周りの調整が必要であった。
【0004】
そこで、電子写真画像形成プロセスを用いた電子写真画像形成装置においては、電子写真感光体及びそれに作用するプロセス手段を一体的にカートリッジ化して、このカートリッジを電子写真画像形成装置に着脱可能とするプロセスカートリッジ方式が採用されている。この方式によれば、電子写真画像形成装置のメンテナンスを使用者自身が行うことができるので、格段に操作性を向上させることができた。
【0005】
このようなプロセスカートリッジにあって、初期画像状態の更なる品位向上のため、電子写真感光体と現像手段とを、カムによって接離可能なものが開発されている。
【0006】
離間を行うカム動作の制御は、組立時にカムに係合されるギアと、画像形成装置から駆動を受け取るギアを所定の位相関係となる様に接続しておくことによってなされていた。
【0007】
このような位相合わせ組立作業にあっては、ギア側面に位相合わせ用のマーキングがなされ、作業者がそれを目印にしてギアの組立を行う方式が取られていた。
【特許文献1】特開平2000-120720
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は従来の技術を更に発展させたものである。
【0009】
従来の組立作業では、位相合わせを作業者の目視によって微調整するため、作業性の向上が望まれていた。
【0010】
また、組立が正常に行われたかどうかの確認工程が必要であり、工程の更なる簡略化が望まれていた。
【0011】
本発明は、組立性を向上させ、組立時の微調整や、組立後の確認が不要であるプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第1の発明は、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、電子写真感光体と、前記電子写真感光体を支持する感光体ユニットと、前記電子写真感光体に作用する現像ローラを支持する現像ユニットと、を有し、現像ユニットと感光体ユニットは、前記電子写真感光体と現像ローラが相互に接離可能になるように結合される。前記感光体ユニットには、前記接離動作を行うカムと、カムを動作させる第1のギアと、画像形成装置本体からの駆動を受ける第2のギアと、第2のギアからの駆動を第1のギアに伝達する第3のギアと、が備えられており、前記第1のギアと前記第2のギアには組付け時挿入方向上流側にフランジが形成され、その一部が切り欠かれている。前記第1のギアと第2のギアの切り欠きが、略対向した位相状態において、第3のギアの挿入が行われ、前記カムの位相が前記第2のギアの位相に対して一意に定められるように、位相合わせ組立が行われることを特徴としている。
【0013】
本発明に係る第2の発明は、前記第2のギアの歯数に対する、前記第1のギアの歯数は1以上の整数倍となることを特徴とする第1の発明に記載のプロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0014】
本出願に係る第1の発明により、駆動伝達部材列と離間カムとを、正規の位置で(回転の位相を合わせて)組立、係合することができる。
【0015】
本出願に係る第1の発明により、駆動部材の組立が完了した時点で位相合わせが完了している為、駆動部材の組立後に組立ミスの有無を確認する必要がない。
【0016】
よって従来の手段よりも組立性が向上し、組立後のチェックが不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。
【0018】
図2は本発明を適用できるプロセスカートリッジと電子写真画像形成装置(レーザビームプリンタ)の一部を示した図である。
【0019】
プロセスカートリッジ7は、像担持体であるドラム状の電子写真感光体、すなわち感光ドラム1と、帯電手段及びクリーニング手段を備えた感光体ユニット5、及び感光ドラム1上の静電潜像を現像する現像手段を有する現像ユニット4に分かれている。
【0020】
感光体ユニット5は、感光ドラム1がクリーニング枠体6に回転自在に取り付けられて構成されている。そして図示後方の一方端に図示しない駆動モータの駆動力を伝達することにより、感光ドラム1を画像形成動作に応じて図示反時計回りに回転駆動させる。感光ドラム1の周上には、感光ドラム1の表面を一様に帯電させるための帯電手段2、及び感光ドラム上に残った現像剤(トナー)を除去するためのクリーニング手段3が配置されている。そして、クリーニング手段3によって感光ドラム1表面から除去された残留トナーは、クリーニング枠体後方に設けられた廃トナー室8に順次送られる。
【0021】
帯電手段2としては、接触帯電方式のものを使用することができる。図示の画像形成装置にあっては、帯電手段はローラ状に形成された導電性ローラである。このローラを感光ドラム1表面に当接させるとともに、このローラに帯電バイアス電圧を印加することにより、感光ドラム1表面を一様に帯電させるものである。
【0022】
スキャナユニット9は、感光ドラム1の略垂直方向に配置され、レーザダイオード(不図示)によって画像信号に対応する画像光が、帯電済みの感光ドラム1表面を選択的に露光して静電潜像を形成するように構成している。
【0023】
現像ユニット4は、感光体ドラム1と接触して矢印Y方向に回転する現像ローラ10、及びトナーが収容されたトナー容器11と現像枠体12とから構成される。現像ローラ10は回転自在に現像枠体12に支持され、また現像ローラ10の周上には、現像ローラ10と接触して矢印Z方向に回転するトナー供給ローラ13と現像ブレード14がそれぞれ配置されている。さらにトナー容器11内には収容されたトナーを攪拌するとともにトナー供給ローラ13に搬送するためのトナー搬送機構20が設けられている。
【0024】
そして現像ユニット4は、現像ユニット4の両端に取り付けられた軸受部材19にそれぞれ設けられた支持軸15を中心に、ピン15aによって現像ユニット4全体が感光体ユニット5に対して揺動自在に支持された吊り構造となっている。そして、プロセスカートリッジ7単体(プリンタ本体に装着しない)状態においては、支持軸15を中心に回転モーメントにより現像ローラ10が感光ドラム1に接触するよう、加圧ばね16a、16bによって現像ユニット4が常に付勢されている。さらに現像枠体12には、現像ローラ10を感光ドラム1から離間させる際に感光体ユニット5に取り付けられた離間カム22が当接するための受け部27が一体的に設けられている。
【0025】
現像時には、トナー攪拌機構20によって収納されたトナーがトナー供給ローラ13へ搬送される。そして、矢印Y方向に回転するトナー供給ローラ13が、そのトナーを矢印Z方向に回転する現像ローラ10と摺擦することによって現像ローラ10に供給して、トナーを現像ローラ10上に担持させる。現像ローラ10上に担持されたトナーは、現像ローラ10の回転にともない現像ブレード14に至る。そして、現像ブレード14がトナーを規制して所望の帯電電荷量を付与するとともに、所定のトナー薄層に形成する。規制されたトナーは、現像ローラ10の回転につれて、感光ドラム1と現像ローラ10とが接触した現像部に搬送される。そして、現像部において、図示しない電源から現像ローラ10に印加した直流現像バイアスにより、感光ドラム1の表面に形成されている静電潜像に付着して、潜像を現像する。現像に寄与せずに現像ローラ10の表面に残留したトナーは、現像ローラ10の回転にともない現像器内に戻され、トナー供給ローラ13との摺擦部で現像ローラ10から剥離、回収される。回収されたトナーは、トナー攪拌機構20により残りのトナーと攪拌混合される。
【0026】
一方、画像形成装置内では感光ドラム1に対向し、接するように循環移動する静電転写ベルト17が配設される。静電転写ベルト17は、転写材Sを静電吸着して上記感光ドラム1に転写材Sを接触させるべく循環移動する。これにより、転写材Sは静電転写ベルト17により、不図示の給紙部から転写位置まで搬送され、感光ドラム1上のトナー像を転写される。
【0027】
この静電転写ベルト17の内部に当接し、感光ドラム1に対向した位置に転写ローラ18が並設される。転写ローラ18から正極性の電荷が静電転写ベルト17を介して転写材Sに印可される。この電荷による電界により、感光ドラム1に接触中の転写材Sに、感光ドラム1上の負極性のトナー像が転写される。
【0028】
そして、転写材Sは不図示の定着部まで搬送され、転写されたトナー像を加熱定着された後、画像形成装置本体から排出される。
【0029】
本実施例で示すようなプロセスカートリッジ7にあって、感光ドラム1と現像ローラ10が接触して現像を行う接触現像方式においては、感光ドラム1は剛体とされ、これに使用する現像ローラ10は弾性体を有するローラとすることが好ましい。
【0030】
プロセスカートリッジ7の使用前は感光ドラム1と現像ローラ10を離間状態とし、使用時に当接させる構成とすることで、長期保管での弾性ローラの変形を防止し、初期画像品位を更に向上することができる。
【0031】
また、現像時以外は感光ドラム1と現像ローラ10を離間させておくことによって、現像部における余分な摺擦を減らし、トナーや現像ローラ、現像ブレードをより良好な状態に保つことができる。これによって、プロセスカートリッジ7を更に長期間良好な状態で使用することができる。
【0032】
このため、本実施例で示すようなプロセスカートリッジ7には、感光体ユニット5に、現像ローラ10が感光体ドラム1に対して接離自在となるように、現像ユニット4を押圧する離間カム21が備えられている。
【0033】
さらに、離間カム21はこれを回転駆動する手段である離間カムギア22に対して係合されており、これらは一体的に回転する。
【0034】
また、感光体ユニット5には画像形成装置からの駆動を受ける駆動ギア23が設けられている。駆動ギア23の端部には、駆動カップリング23bが一体的に形成され、画像形成装置本体に設けられた本体カップリング24によって駆動される。この駆動カップリング23bと画像形成装置本体側の本体カップリング24は、ある特定の位相のみで係合状態となり、駆動することが可能となる。
【0035】
そして、離間カムギア22と、駆動ギア23は、アイドラギア25を介して連結されている。
【0036】
離間カム21は、画像形成装置本体からの駆動入力によって回転し、現像ユニット4に設けられた受け部27を押圧し、現像ローラ10と電子写真感光体1を離間させる構成となっている。
【0037】
また、画像形成装置本体には、本体カップリング24の位相を検知するセンサ(不図示)が具備されており、画像形成装置本体が動作する間、常に本体カップリング24の位相を検知することが可能である。
【0038】
このようなプロセスカートリッジ7において、現像ローラ10と感光ドラム1の接離を制御できないと、画像形成プロセスに影響を及ぼす。このため、離間カム21の位相を自在かつ的確に制御することが必要である。
【0039】
ここで、本発明の実施例で示すようなアイドラギア25で連結された構成では、駆動ギア23と離間カムギア21の歯数が整数比でない場合、本体カップリング24回転に伴って、離間カム21の位相が把握できない。
【0040】
さらに、組立時に両者が連結された際の位相関係が一定で無い場合も、同様に駆動ギア23の位相に対して、離間カム21の位相は把握できない。
【0041】
これに対して、本実施例で示すプロセスカートリッジ7にあっては、駆動ギア23の一回転を1とした場合の離間カムギア22の回転量は1以上の整数となっており、駆動ギア23の位相状態から、離間カム21位相が把握できるように構成されている。
【0042】
また、駆動ギア23と、離間カムギア22は、組立時に常に一定の位相関係となるように位相組み(後述)され、両者の位相関係は組立時に決定されるように構成する。
【0043】
以上の構成に加えて、画像形成装置本体側の本体カップリング24と駆動ギア23端部のカップリング23bは、特定の位相でのみ係合するから、離間カム21の位相は、本体カップリング24の位相を検知するセンサによって常に明らかであり、当接、離間状態を自在に制御し得る。
【0044】
一方、離間カムギア22と駆動ギア23の組立時の挿入方向端部には、フランジ22a、23aが一体的に設けられており、このフランジ22a、23aにはアイドラギア25の歯形よりも大きい切り欠き形状が設けられている。
【0045】
この切り欠きの形状は、アイドラギア25の歯先円よりも大きい円や、その円に外接する多角形、またはアイドラギア25の歯形に添うような形で設けられている。
【0046】
離間カムギア22のフランジ22aに設けられた切り欠きの位置は、離間カムギア22に一体的に係合される離間カム21の位相と対応している。
【0047】
駆動ギア23のフランジ23aに設けられた切り欠きは、駆動ギア23端部のカップリング23bの位相と対応している。
【0048】
離間カムギア22の切り欠きと、駆動ギア23の切り欠きは、駆動ギア23端部のカップリング23bと、離間カム21の位相が所望の状態となったとき、両者の切り欠きがアイドラギア25の中心に向かって対向し、アイドラギア25が挿入可能となるような位置、および形状で設けられている。
【0049】
作業者は離間カムギア22と駆動ギア23の位相を調整し、アイドラギア25を切り欠きから挿入するようにして、組立てる(図1)。
【0050】
もしくは、離間カムギア22、駆動ギア23を感光体ユニット5に組み付けた状態で、アイドラギア25を挿入し、アイドラギア25を組付け方向に付勢した状態で離間カムギア22と駆動ギア23を回転し、アイドラギア25を両者に係合させても良い。
【0051】
仮に離間カム21と、駆動ギアカップリング23bの位相のいずれかが所望のものでない場合は、アイドラギア25はいずれかのフランジと干渉し、感光体ユニットへの取り付けは不可能となる。
【0052】
アイドラギア25は、離間カム21、駆動ギア23端部のカップリング23bの位相が合致した状態でなければ組付けることは不可能であるため、所望の位相が得られているか、組立時に目視によって確認をする必要が無い。
【0053】
この組立作業が完了した段階で、離間カム21、駆動ギア23端部のカップリング23bの位相は所望のものとなっており、組立後の位相確認も不要である。
【0054】
これにより、組立性が向上し、組立後の確認工程を省略することが出来るから、プロセスカートリッジの生産性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を用いた位相合わせ組立の説明図である。
【図2】本発明を適用できるプロセスカートリッジと、電子写真画像形成装置の一部を示したものである。
【図3】本発明を適用できるプロセスカートリッジの断面を示したものである。
【図4】離間カムギア、アイドラギア、駆動ギアの側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 感光ドラム
2 帯電手段(帯電ローラ)
3 クリーニング手段(クリーニングブレード)
4 現像ユニット
5 感光体ユニット
6 クリーニング枠体
7 プロセスカートリッジ
8 廃トナー室
9 スキャナユニット
10 現像ローラ
11 トナー容器
12 現像枠体
13 トナー供給ローラ
14 現像ブレード
15 支持軸
15a 支持ピン
16a、16b 加圧ばね
17 静電転写ベルト
18 転写ローラ
19 軸受
20 トナー攪拌機構
21 離間カム
22 離間カムギア
22a 離間カムギアフランジ
23 駆動ギア
23a 駆動ギアフランジ
23b 駆動ギアカップリング
24 本体カップリング
25 アイドラギア
27 カム受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、
電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を支持する感光体ユニットと、
前記電子写真感光体に作用する現像ローラを支持する現像ユニットと、を有し、
現像ユニットと感光体ユニットは、
前記電子写真感光体と現像ローラが相互に接離可能になるように結合される。
前記感光体ユニットには、
前記接離動作を行うカムと、
カムを動作させる第1のギアと、
画像形成装置本体からの駆動を受ける第2のギアと、
第2のギアからの駆動を第1のギアに伝達する第3のギアと、
が備えられており、
前記第1のギアと前記第2のギアには組付け時挿入方向上流側にフランジが形成され、その一部が切り欠かれている。
前記第1のギアと第2のギアの切り欠きが、略対向した位相状態において、
第3のギアの挿入が行われ、
前記カムの位相が前記第2のギアの位相に対して一意に定められるように、
位相合わせ組立が行われることを特徴としたプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記第2のギアの歯数に対する、前記第1のギアの歯数は1以上の整数倍となることを特徴とする請求項1記載のプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−47298(P2007−47298A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229718(P2005−229718)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】