説明

ペレット及びその製造方法

【課題】 シクロオレフィン硬化樹脂を含む繊維強化樹脂成形品を再利用して品質が安定化されたペレット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 シクロオレフィン硬化樹脂および強化繊維を含む繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とを含むペレットを用いる。該ペレットは、シクロオレフィン硬化樹脂および強化繊維を含む繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とを溶融混練して得られるストランドを切断して得ることができる。該ペレットは、高分子材料やセメント材料への配合材として好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィン硬化樹脂を含む繊維強化樹脂成形品の再利用に適したペレット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジシクロペンタジエン樹脂等のシクロオレフィン硬化樹脂を炭素繊維等で強化した繊維強化樹脂は、機械特性に優れるため、釣竿やゴルフクラブ用シャフトなどのスポーツ用途から自動車や航空機等の乗物用構造体用途、包装、家電の筐体、建築基材等の一般産業用途までの幅広い用途で期待されている。しかしながら、容器包装リサイクル法、家電製品リサイクル法などの各種法令対応、自動車部材のリサイクル比率向上等の業界の大きな動きの中で、リサイクル技術の開発が大きな問題になっており、特に、廃棄品を再利用した場合の品質安定性が課題になっている。
【0003】
特許文献1には、シクロオレフィン樹脂成形体の廃材をペレットとして再利用する方法が開示されている。しかしここで開示されるシクロオレフィン樹脂は熱可塑性樹脂であり、シクロオレフィン硬化樹脂を効率よくペレットとして再利用することは困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−71249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シクロオレフィン硬化樹脂を含む繊維強化樹脂成形品を再利用して品質が安定化されたペレット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、炭素繊維等の強化繊維中でシクロオレフィンポリマーを硬化した繊維強化樹脂の成形品を回収し、粉砕機等で粉砕した粉砕物は、その比重が強化繊維/樹脂組成の変動で大きく変化するが(例えば、炭素繊維の比重1.8、ジシクロペンタジエン樹脂等のシクロオレフィン硬化樹脂の比重1.0)、この回収品の比重の変化に合わせて加える熱可塑性樹脂量を変えることで、これを用いて得られるペレット比重を所定量に調整でき、該ペレットを樹脂やコンクリートなどに配合することで得られる製品の品質が安定することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
かくして本発明によれば、シクロオレフィン硬化樹脂および強化繊維を含む繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とを含むペレットが提供される。
本発明によれば、また、シクロオレフィン硬化樹脂および強化繊維を含む繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とを溶融混練して得られるストランドを切断するペレットの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回収した繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とからなるペレットを用いることで回収品を加えた製品の品質を容易に安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(繊維強化樹脂成形品)
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品は、シクロオレフィン硬化樹脂および強化繊維を含む。その製法、形状等は格別な限定はないが、例えば、射出成形方法等により成形されたOA機器、家電製品、乗物構造部材やプリプレグを積層し硬化した積層体などの部材として使用された後、回収されたものや、その部材の成形時に発生するスプールランナー等の端品が含まれる。
【0010】
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品に含まれる強化繊維としては、格別な限定はないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維、ガラス繊維、および炭素繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。特に、炭素繊維は、シクロオレフィンポリマーとの相溶性に優れ好適である。
【0011】
本発明においては、使用される繊維強化樹脂成形品のマトリックス樹脂が、シクロオレフィン硬化樹脂であることを特徴とする。シクロオレフィン硬化樹脂としては、シクロオレフィンポリマーを硬化したものであれば格別な限定はない。シクロオレフィンポリマーとしては、公知のシクロオレフィンモノマーの重合体を格別な限定がなく用いることができる。具体的には、シクロオレフィンモノマーの開環重合体、シクロオレフィンモノマーの付加重合体、シクロオレフィンモノマーと鎖状オレフィンとの付加共重合体、およびこれらの水素化物が挙げられる。
【0012】
シクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その例として、ノルボルネン系モノマーおよび単環シクロオレフィンモノマーなどが挙げられ、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーとしては、格別な限定はないが、例えば、2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、フェニルテトラシクロドデセンなどの四環体、トリシクロペンタジエンなどの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの 七環体、及びこれらのアルキル置換体(メチル、エチル、プロピル、ブチル置換体など)、アルキリデン置換体(例えば、エチリデン置換体)、アリール置換体(例えば、フェニル、トリル置換体)、並びにエポキシ基、メタクリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン基、エーテル基、エステル結合含有基などの極性基を有する誘導体などが挙げられる。
【0013】
単環シクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィン及び置換基を有するそれらの誘導体が挙げられる。
【0014】
シクロオレフィン硬化樹脂は、上記シクロオレフィンポリマーを硬化したものであり、溶媒に溶解しないことで定義される。一方、未硬化のシクロオレフィンポリマーは、溶媒に溶解する。かかる溶解試験に用いる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素などの溶媒から未硬化のシクロオレフィンポリマーを溶解できるものが選択される。また、シクロオレフィンポリマーの硬化方法は、ラジカル架橋やイオン架橋などの公知の方法をいずれも採用することができ、ラジカル架橋が好ましい。
【0015】
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品は、上記強化樹脂とシクロオレフィン硬化樹脂を含んでなり、必要に応じてその他の配合剤を含むことができる。その他の配合剤としては、使用目的に応じて適宜選択されるが、エラストマー材料、充填剤、老化防止剤、難燃剤、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤、高分子改質剤などを挙げることができる。
【0016】
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品の強化繊維含有量は、使用目的および強化繊維の種類により適宜選択されるが、通常5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%の範囲である。
【0017】
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品は、粉砕物として使われる。粉砕の方法は、格別な限定はないが、破砕機や粉砕機を用いて小片化することにより繊維強化樹脂成形品の粉砕物を作製する。破砕機や粉砕機には、剪断式、衝撃式、切断式など各種方式を採用することができる。
【0018】
具体的には、破砕機により、通常、粒子径10mm程度に破砕し、次いで、粉砕機で、粒子径1〜500μm、好ましくは5〜250μm、より好ましくは10〜100μmの粉体として用いることができる。また、破砕機、粉砕機の具体的な装置としては、例えば、シュレッター、ジョーククラッシャー、ジャイレトリクラッシャー、コーンクラッシャー、ハンマークラッシャー、衝撃破砕機などの粗砕機、ロールクラッシャー、ロールミル、スタンプミル、エッジランナー、カッターミル、ロッドミルなどの中砕機、グラインダー、エロフォールミル、カスケードミルなどの粉砕機などを挙げることができる。
【0019】
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品の粉砕物は、上記粉砕後にふるい分けして用いることができる。ふるい分けは、例えば、気流分級法等によって、通常500μm以下、好ましくは250μm以下、より好ましくは100μm以下の粉体のみをふるい分け、それより大きな粒径の粉体は破砕機、粉砕機で再度粉砕される。
【0020】
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品の粉砕物は、比重に基づき分けて用いるのが好適である。例えば、強化繊維が炭素繊維の場合その比重は1.8であり、一方シクロオレフィン硬化樹脂がジシクロペンタジエン樹脂の場合その比重は1.0であるので、比重の違いにより炭素繊維の多い粉砕物、樹脂成分の多い粉砕物と分けて使うことができる。比重による分別は、液体を用いた分離方式または遠心分離方式による方法などにより行なうことができる。遠心分離方式は、回転板上に粉砕物を投入し、所定の遠心力が生じる程度に当該回転板を回転させることにより行なわれ、回転板から飛散された粉砕物が大きな比重のもの、回転板上に残量した粉砕物が小さい比重のものとして分別される。また、サイクロンによる遠心分離方法を用いて行なうこともできる。
【0021】
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品の粉砕物の比重は、使用目的により適宜選択されるが、通常1.10〜1.70、好ましくは1.20〜1.75、より好ましくは1.30〜1.70の範囲である。
【0022】
本発明に使用される繊維強化樹脂成形品の粉砕物は、水分量が通常、0.1重量%以下で用いられる。また、本発明に使用される繊維強化樹脂成形品の粉砕物は、磁石等を用いて金属異物を除去したものを用いることが好ましい。
【0023】
これらの繊維強化樹脂成形品の粉砕物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
(熱可塑性樹脂)
本発明に使用される熱可塑性樹脂としては、使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステルなどのポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリシクロオレフィンなどのポリオレフィン;ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチレンメタクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどを挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィンやポリスチレンなどの炭化水素樹脂が好ましく、ポリオレフィンが特に好ましい。
【0025】
これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性樹脂の使用量は、前記繊維強化樹脂成形品の粉砕物の比重に応じて適宜選択されるが、繊維強化樹脂成形品の粉砕物/熱可塑性樹脂の重量比で、通常10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20の範囲である。
【0026】
(ペレット)
本発明のペレットは、上記繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とを必須成分として含み、必要に応じて、その他の添加剤を配合することができる。その他の添加剤としては、老化防止剤、充填剤、難燃剤、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤、高分子改質剤などを挙げることができる。
【0027】
老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤が特に好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。
【0028】
フェノール系老化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0029】
アミン系老化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−3,5−ジ−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などが挙げられる。
【0030】
リン系老化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)などが挙げられる。
【0031】
イオウ系老化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0032】
充填剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく、無機充填剤や有機充填剤のいずれも用いることができる。難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。
【0033】
これらのその他の添加剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0034】
本発明のペレットの製造方法は、格別な限定はないが、上記繊維強化樹脂成形品の粉砕物、熱可塑性樹脂及び必要に応じてその他の配合剤を加えて溶融混練してストランドを製造して、次いで該ストランドを所定の任意長さに切断することで容易に行なうことができる。
【0035】
繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とは所望の比重(強化繊維/樹脂)になるように押出し機に供給され、また必要に応じてその他の添加剤を加えられ、熱可塑性樹脂を溶融させるとともにスクリューで混練しながら線状のストランドを押出成形し、固化した後に、所望の長さに切断されペレットを得ることができる。尚、押出し機には、スクリューを1本装備した1軸方式のものと、2本装備した2軸方式のものとがあるが、2軸方式のものの方が大きなせん断力が得られ好適である。また、ストランドの切断は、常法に従えばよく、通常はペレタイザーを用いて行なうことができる。
【0036】
かくして得られる本発明のペレットの長さは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1〜50mm、好ましくは2〜20mm、より好ましくは3〜15mmの範囲である。
【0037】
(ペレットの利用)
本発明のペレットは、様々な材料に加えて用いることができ、例えば、高分子材料やセメント材料などの改質材として用いることができる。本発明のペレットの高分子材料やセメント材料への配合量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、[本発明のペレット]/[高分子材料またはセメント材料]の重量比で、通常1/99〜90/10、好ましくは5/95〜75/25、より好ましくは10/90〜60/40の範囲である。
【0038】
本発明のペレットを配合する高分子材料としては、格別な限定はないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーなどを挙げることができ、その配合方法及び配合した材料の成形方法などは高分子材料の種類に応じて適宜選択される。
【0039】
熱可塑性樹脂としては、前記本発明のペレットに含まれる熱可塑性樹脂として例示したものをいずれも用いることができる。かかる熱可塑性樹脂の種類は、本発明のペレットに含まれる熱可塑性樹脂と同じでも異なっていてもよい。本発明のペレットの熱可塑性樹脂への配合方法及び成形方法は、熱可塑性樹脂に一般に適用される方法に従えばよく、通常、押出し機を用いて両者を溶融混練して新たなペレットを作製し、次いで射出成形機等で成形できる。
【0040】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾキシサジン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などのシクロオレフィンポリマー硬化樹脂などが挙げられる。本発明のペレットを熱硬化性樹脂に配合する方法及び配合した材料の成形方法は、熱硬化性樹脂の種類に応じた常法に従って行なうことができる。
【0041】
エラストマー材料としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの水素添加物が挙げられる。本発明のペレットをエラストマー材料に配合する方法及び成形方法は、常法に従えばよく、通常ロール、ニーダー等の混練機を用いて行なうことができる。
【0042】
本発明のペレットを配合するセメント材料としては、格別な限定はなく、公知のものを用いることができる。例えば、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、白色セメント、アルミナセメント、スラグセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、ローマセメント、天然セメント、高炉セメント、微粒子セメント、発泡セメントなどの特殊セメントなどが挙げられる。本発明のペレットを上記セメントに配合した材料の成形方法は、常法に従えばよく、これを水と混練した後に、型枠に流し込む成形法、噴きつけて成形する方法など公知の成形法が利用できる。
【0043】
本発明のペレットを配合した高分子材料の成形品は、機械特性や耐熱に優れるので、例えば、例えば、OAやAV機器、自動車や鉄道などの車両用構造体材、航空機内装部品などをはじめとして、ゴルフシャフトや釣竿等のスポーツ用途、その他一般産業用途に好適に用いられる。具体的の用途としては、例えば、釣竿、ゴルフクラブ用シャフト、テニスラケット、スキーストック等のスポーツ用途;ディスプレー、FDDキャリッジ、シャーシ、HDD、MO、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、ポータブルMD、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの電気・電子機器;電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、アイロン、ヘアドライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、掃除機、トイレタリー用品、レザーディスク、コンパクトディスク、照明、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどのオフィスオートメーション機器および家電機器;アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ドライブシャフト、ホイール、ホイールカバー、フェンダー、ドアミラー、ルームミラー、フェシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、トランクフード、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スピラーおよび各種モジュールなどの自動車部品;ランディングギアポッド、ウイングレッド、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリングなどの航空機部品およびパネルなどの建材などに好適にもちいることができる。
【0044】
本発明のペレットを配合したセメント材料の成形品は、機械特性や粘着特性が優れるので、壁材、屋根材、床材、セメント瓦、本瓦等の家屋屋根及び外壁等の建設部材などの建築用部材、植木鉢、花壇柵、庭敷板などの園芸用品、テトラポット、護岸壁等の海洋構造物などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0046】
実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定、評価した。
(1)外観評価:得られた成形品の外観を観察し、下記基準で評価した。
◎:形状崩れ、粉落ち等が認められない
△:形状崩れ、粉落ち等が僅かに認められる
×:形状崩れ、粉落ち等が激しく認められる
【0047】
(2)機械特性評価(樹脂成形品):樹脂成形品のアイゾット衝撃強度試験をUeshima U−F Impact Testeを用いて振り上げ角127度で実施し、比較例1(樹脂ブランク成形品)を100とし、下記基準で判断した。
◎:110超える
△:100超える、110以下
×:100以下
【0048】
(3)機械特性評価(セメント成形品):セメント成形品の3点曲げ強度をJIS A1106に準じて測定し、比較例1(セメントブランク製景品)を100として、下記基準で評価した。
◎:150超える
○:130超える、150以下
△:100超える、130以下
×:100以下
【0049】
製造例1(繊維強化樹脂成形品Aの製造)
ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、ジシクロペンタジエン(DCP)100部、連鎖移動剤としてアリルメタクリレート0.74部、架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド(1分間半減期温度186℃)1.2部、フェノール系老化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール1.0部を加え混合してモノマー液を調製した。ここに上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mlの割合で加えて撹拌して重合性組成物を調製した。
【0050】
一方、炭素繊維(繊維目付量:190g/m、繊維引張強度4,900MPa、繊維引張弾性率:294GPa、厚み0.1mm)を6枚積層したものを金型内に置き、型締めを行なった。次いで、上記調製した重合性組成物を型内に注入し、200℃×15分間で硬化させて繊維強化樹脂成形品A(炭素繊維含有量71%)を得た
【0051】
製造例2(繊維強化樹脂成形品Bの製造)
製造例1と同様に行い、炭素繊維含有量66%の繊維強化樹脂成形品Bを得た。
【0052】
実施例1
製造例1で得た繊維強化樹脂成形品Aを一軸衝撃破砕機で破砕(消費エネルギー700kJ/kg)した後、グラインダー(粒度#80)で粉砕し粉砕物を得た。得られた粉砕物の粒子径は約20μm、比重は1.68であった。次いで、得られた粉砕物とポリプロピレンを押出し機にて溶融混練して長さ5mmのペレット(比重1.55)を製造し、改質材Aとした。
【0053】
実施例2
製造例2で得た繊維強化樹脂成形品Bを用い、ペレットの比重を1.55になるようにポリプロピレン量を調整する以外は実施例1と同様に行い長さ5mmのペレットを製造し、改質材Bとした。
【0054】
実施例3〜4(樹脂配合例)
ポリプロピレン100部と実施例1で製造した改質材A60部、または実施例2で製造した改質材B60部を150℃×90秒間射出成形し10cm角、厚さ3mmの樹脂成形品を得た。得られた樹脂成形品の外観及び機械特性を評価し、その結果を表1に示した。尚、機械特性の改質材A、Bの違いによる差は殆ど見られなかった。
【0055】
【表1】

【0056】
比較例1
改質材を用いない以外は実施例3と同様に行い、ブランクの樹脂成形品を得、各特性を評価して、それらの結果を表1に示した。
【0057】
実施例5〜6(セメント配合例)
普通ポルトランドセメント100部、標準砂100部、、減水剤3部、水60部及び改質材A100部または改質材B100部をミキサーで混ぜ合わせた後、養生してセメント板(30cm×30cm、厚さ20cm)を得た。得られたセメント板の外観評価を行なった後、試験片(95×60×20cm)を切り出しての3点曲げ試験を行い、それらの結果を表1に示した。尚、機械特性は、改質材A、Bの違いによる差が殆ど認められなかった。
【0058】
比較例2
改質材を用いない以外は実施例5と同様に行い、ブランクのセメント成形品を得、各特性を評価して、それらの結果を表1に示した。
【0059】
以上本発明のペレットを樹脂配合剤として用いると、外観および機械特性に優れる樹脂成形品を得ることができた(実施例3,4)。また、セメント配合剤として用いると、外観および機械特性に優れるセメント成形品を得ることができた(実施例5,6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィン硬化樹脂および強化繊維を含む繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とを含むペレット。
【請求項2】
熱可塑性樹脂が、炭化水素樹脂である請求項1記載のペレット。
【請求項3】
シクロオレフィン硬化樹脂および強化繊維を含む繊維強化樹脂成形品の粉砕物と熱可塑性樹脂とを溶融混練して得られるストランドを切断するペレットの製造方法。
【請求項4】
粉砕物の比重に応じて熱可塑性樹脂配合量を変化させペレット比重を所定量に調整する請求項3記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−197107(P2009−197107A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39325(P2008−39325)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】