説明

ペースト塗布装置及びペースト塗布方法

【課題】 ペーストの温度変化を抑えて、ペーストを精度良く塗布することができるペースト塗布装置及びペースト塗布方法を提供すること。
【解決手段】 シリンダ35内にスクリュー36を回転自在に設け、シリンダ35内のペーストLをノズル33から吐出させて基板31上に塗布するペースト塗布装置10において、スクリュー36に設けられペーストLの温度を調節する温度調節機構49と、温度調節機構49を制御する制御装置56とを備えたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内のスクリューを回転させることにより、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に塗布するペースト塗布装置及びペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダ内に設けたスクリューを駆動するモータの回転速度を一定に維持して、定量の流体をノズルから吐出するスクリュー式吐出装置が開示されている。
【特許文献1】特開平4-49108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなスクリュー式吐出装置を用いて、液晶表示パネルの製造に用いる基板に対してシール剤を一定の塗布量で線状のパターン、例えば、矩形枠状等の閉ループ形状のパターンで塗布するような場合、特許文献1に開示のものでは、次のような問題点がある。
【0004】
スクリューがシリンダ内で回転することにより、スクリューとシール剤との間に摩擦が起こり、スクリューが加熱されるので、スクリューの熱がシール剤に伝わりシール剤の温度が上昇する。シール剤の温度が上昇すると、シール剤の粘度が低くなるので、基板上に塗布されたシール剤が自重によって潰れ易くなり、塗布されたシール剤のうち粘度が低い部分での塗布高さが他の部分の塗布高さよりも低くなることがある。この場合、基板上に塗布されたシール剤の塗布高さが不均一になるという問題が生じる。
【0005】
シール剤の塗布高さが不均一になると、シール剤が塗布された基板と他の基板とが真空中で貼り合わされる工程において、他の基板と塗布高さが低いシール剤との間に充分な接触状態が得られず、他の基板とシール剤との間から液晶が漏れ出すといった不具合が生じる。
【0006】
本発明の課題は、ペーストの温度変化を抑えて、ペーストを精度良く塗布することができるペースト塗布装置及びペースト塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、シリンダ内にスクリューを回転自在に設け、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に線状のパターンで塗布するペースト塗布装置において、スクリューに設けられペーストの温度を調節する温度調節機構と、温度調節機構を制御する制御装置と、を備えたものである。
【0008】
請求項2の発明は、シリンダ内にスクリューを回転自在に設け、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に線状のパターンで塗布するペースト塗布装置において、ペーストの温度を調節する温度調節機構と、スクリューのトルク変動を検出するトルク変動検出手段と、スクリューのトルク変動検出手段の検出結果に基づいてペーストの温度調節機構を制御する制御装置と、を備えたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、トルク変動検出手段は、スクリューを回転駆動するモータに印加された電圧値と、モータに印加する電圧の基準値とを比較することによりスクリューのトルク変動を検出するようにしたものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において更に、制御装置は、モータに印加された電圧値が基準値より小さい場合に温度調節機構を作動させてスクリューを冷却するようにしたものである。
【0011】
請求項5の発明は、シリンダ内のスクリューを回転駆動して、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に線状のパターンで塗布するペースト塗布方法において、スクリューの温度を調節することにより、ペーストの温度を調節するものである。
【0012】
請求項6の発明は、シリンダ内のスクリューを回転駆動して、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に線状のパターンで塗布するペースト塗布方法において、スクリューのトルク変動を検出し、検出結果に基づいてペーストの温度を調節するものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6の発明において更に、スクリューを回転駆動するモータに印加された電圧値と、電圧の基準値と、を比較することによりスクリューのトルク変動を検出するようにしたものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7の発明において更に、モータに印加された電圧値が基準値より小さい場合にスクリューを冷却するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
シリンダ内でスクリューが回転すると、スクリューとシール剤との摩擦によりシール剤の温度変化が生じる。スクリューの温度を調節して、ペーストの温度を調整することにより、ペーストの温度変化を直接、かつ、効率的に抑えることができる。その結果、ペーストの粘度変化による塗布高さのバラツキを抑えて、ペーストを精度良く塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1はシール剤塗布装置を示す斜視図、図2はシール剤の温度調節機構を概略の制御ブロック図とともに示す模式図である。
【0017】
図1に示すシール剤(ペースト)塗布装置10は4つの脚12上に矩形平板状のベース11を有する。ベース11の上面にXテーブルユニット17が設けられる。Xテーブルユニット17は、X軸方向(図1中の左右方向)に移動可能なXテーブル13、Xテーブル13を移動させる移動機構14からなる。Xテーブル13の上面にYテーブルユニット18が設けられる。Yテーブルユニット18は、Y軸方向(図1中の前後方向)に移動可能なYテーブル15、Yテーブル15を移動させる移動機構16からなる。Xテーブルユニット17の移動機構14、Yテーブルユニット18の移動機構16は、それぞれ不図示の送りねじとナットと、送りねじの回転駆動用のサーボモータ24、25からなる。Yテーブル15上には、テーブル30が固定され、テーブル30上には液晶表示パネルの製造に用いられるガラス基板31が保持される。
【0018】
ベース11上には門型のコラム20が固定され、コラム20の梁部20Aの前面部に固定された直線ガイド21上に2つの塗布ヘッド22が左右方向に所定の間隔をおいて設けられる。塗布ヘッド22は、直線ガイド21上をX軸方向(図1中の左右方向)に移動可能なXテーブル27と、Xテーブル27上にZ軸方向(図1中の上下方向)に移動可能に設けられたZテーブルユニット28と、Zテーブルユニット28上に固定して設けられた吐出装置32からなる。
【0019】
Xテーブル27と直線ガイド21との間には、Xテーブル27を直線ガイド21に沿って移動させる移動機構23が設けられる。移動機構23は、それぞれ不図示の送りねじとナットと、送りねじの回転駆動用のサーボモータ26からなり、2つの塗布ヘッド22のX軸方向の間隔を、後述する基板31上に塗布する複数のパターンPのX軸方向における配置間隔に合わせることができるようになっている。
【0020】
Zテーブルユニット28は、不図示のZ軸方向(図1中の上下方向)の移動機構を有し、移動機構は送りねじとナットと、送りねじの回転駆動用のサーボモータからなり、Zテーブルユニット28上の吐出装置32をZ軸方向に移動させる。
【0021】
尚、移動機構14、16、23及び不図示のZ軸方向の移動機構としては直線状の固定子とこの固定子上を移動する可動子からなるリニアモータであっても良い。
【0022】
吐出装置32は、図2に示す如く、ポンプ34と、内部にペーストとしてのシール剤Lを入れる貯留容器37と、シール剤Lを吐出するノズル33を有し、ポンプ34は貯留容器37内から供給されたシール剤Lをノズル33から吐出して基板31上に塗布する。
【0023】
Xテーブルユニット17とYテーブルユニット18のサーボモータ24、25を駆動してテーブル30をX軸方向とY軸方向に移動させ、テーブル30上の基板31をポンプ34のノズル33に対して水平方向に相対移動させる。
【0024】
シール剤塗布装置10は、ノズル33と一体的に設けられた不図示のレーザ変位計等の距離測定器を有する。後述の制御装置56は、この距離測定器による基板31面までの距離の測定値によるフィードバック制御により、不図示のZテーブルユニット28のモータを回転駆動して吐出装置32のノズル33と基板31面との間のギャップを予め設定されたギャップに保つように制御(ギャップ制御)する。
【0025】
ポンプ34は、図2に示す如く、中空円筒状のシリンダ35と、このシリンダ35内に回転自在に設けられステンレス鋼等の金属からなるスクリュー36と、シリンダ35の上端部に固定して設けられたシリンダブロック40と、シリンダブロック40の上端部に取り付けられたモータ41からなる。シリンダ35はZテーブルユニット28上にZ軸方向(上下方向)に取り付けられ、シリンダ35の下端部には、ノズル孔33Aを有するノズル33が一体に形成される。スクリュー36の軸部36Aの外周には螺旋状凸条36Bが一体に形成され、隣接する凸条36Bと凸条36Bとの間に螺旋状の溝36Cが区画される。そして、シリンダ35の内周とスクリュー36の外周との間に螺旋状の溝36Cからなるポンプ室38が形成される。尚、凸条36Bの外周とシリンダ35内周との間には、スクリュー36が回転するために必要な微小な環状隙間が形成される。モータ41はサーボモータからなり、モータ41の回転軸42に連結部材44を介してスクリュー36が連結され、モータ41を回転させるとスクリュー36が回転駆動される。
【0026】
シリンダ35の上部に吸入孔43が、スクリュー36の上部外周のポンプ室38に開口して形成される。ポンプ34に平行して円筒状の貯留容器37が設けられ、貯留容器37の下端部に一体に形成されたパイプ状の配管部37Aが吸入孔43に接続される。貯留容器37内のシール剤Lの上部は気体室45とされ、気体室45は配管46を介して不図示の正圧源に接続され、正圧源から貯留容器37内にシール剤Lの加圧手段としての加圧気体が供給される。
【0027】
ポンプ34のモータ41を回転してスクリュー36を回転させると、貯留容器37内のシール剤Lがシリンダ35の吸入孔43からスクリュー36上部のポンプ室38内に供給され、シール剤Lはスクリュー36の螺旋状の溝36Cに沿って押し出され、シリンダ35の下端部のノズル33から、モータ41の回転量に応じた量のシール剤Lが吐出される。例えば、スクリュー36が一回転すると、凸条36Bのピッチ相当分のシール剤Lがノズル33から吐出される。そして、ノズル33からのシール剤Lの単位時間当たりの吐出量は、ポンプ34のモータ41の回転速度(単位時間当たりの回転量)に比例するので、モータ41の回転速度を変えることでノズル33からのシール剤Lの単位時間当たりの吐出量を変えることができる。ポンプ34は、従来技術の如く、圧力気体によってシール剤Lを押し出すのではなく、スクリュー36外周の凸条36Bによって機械的に液状のシール剤Lを押し出すので、ポンプ34のモータ41の回転量に比例した吐出量を得ることができる。
【0028】
シール剤塗布装置10は制御装置56を備える。制御装置56は、Xテーブルユニット17、Yテーブルユニット18を駆動するモータ24、25に付随するエンコーダからの単位時間あたりの出力パルス数から、基板31のX軸方向の移動速度とY軸方向の移動速度、及び、これらのX軸方向とY軸方向の移動速度を合成した移動速度を検出し、検出された移動速度に基づいて、基板31の水平方向の移動速度を所定の速度に制御する。
【0029】
尚、この実施例では、ノズル33は固定されているので、制御装置56は、基板31の移動速度を制御することで、ノズル33と基板31との水平方向における相対移動速度を制御する。
【0030】
次に、シール剤塗布装置10は、シール剤Lの温度を調節する温度調節機構49を備える。
【0031】
シール剤Lの温度調節機構49は、図2に示す如く、スクリュー36内に形成された内部流路50と、内部流路50に接続されスクリュー36の外部に形成された外部流路51と、内部流路50と外部流路51内を循環し、吸熱及び放熱を行なう熱媒と、外部流路51に設けられ熱媒を冷却する冷却手段としての冷却用熱交換器58又は/及び加熱する加熱手段としての加熱用熱交換器59とからなる。
【0032】
内部流路50は、モータ41の回転軸42の外周に一端を開口し、モータ41の回転軸42とスクリュー36の軸部36A内に軸方向に沿って形成され、スクリュー36内の底部で折り返して、内部流路50の一端から下方に離間した位置に他端を開口する。
【0033】
一方、スクリュー36の外部には、内部流路50と接続して外部流路51が形成される。即ち、モータ41の回転軸42の外周に設けられたシリンダブロック40の内周に、上下方向に離間して2つの環状溝52、53が形成され、2つの環状溝52、53に外部流路51の両端部がそれぞれ開口する。外部流路51はシリンダブロック40に形成された上下の流路部51A、51Bと、上下の流路部51A、51Bに両端部を接続する配管部51Cからなる。そして、2つの環状溝52、53の内周に、スクリュー36内の内部流路50の両端部がそれぞれ開口して、内部流路50と外部流路51が接続される。
【0034】
スクリュー36内の内部流路50とスクリュー36の外部に形成された外部流路51内には、空気等の気体からなる熱媒が気密に封入される。シリンダブロック40内周の2つの環状溝52、53の上下には、モータ41の回転軸42の外周との間を密封するための3つの環状のシール部材54がそれぞれ介装される。
【0035】
外部流路51の配管部51Cには、内部流路50と外部流路51内に熱媒を循環させるためのポンプ57が設けられ、ポンプ57は制御装置56に接続される。
【0036】
外部流路51の配管部51Cのポンプ57の吸い込み側となる部分には、熱媒の冷却手段としての冷却用熱交換器58と熱媒の加熱手段としての加熱用熱交換器59が設けられる。冷却用熱交換器58と加熱用熱交換器59は、それぞれ配管部51Cの一部が蛇行して形成された不図示の熱交換部と、熱交換部に接触して設けられた不図示のペルチェ素子からなり、冷却用熱交換器58にはペルチェ素子の冷却側が接触配置され、加熱用熱交換器59にはペルチェ素子の加熱側が接触配置される。
【0037】
冷却用熱交換器58と加熱用熱交換器59は、それぞれ温度コントローラ62に接続され、温度コントローラ62は制御装置56に接続される。温度コントローラ62は冷却用熱交換器58と加熱用熱交換器59のいずれか一方を選択的に作動させ、シリンダ35内のシール剤Lを冷却する必要がある場合には、冷却用熱交換器58を作動させて熱媒を冷却してスクリュー36を冷却する。逆に、シリンダ35内のシール剤Lを加熱する必要がある場合には、加熱用熱交換器59を作動させて熱媒を加熱してスクリュー36を加熱する。
【0038】
スクリュー36を回転駆動するモータ41には、エンコーダ63が設けられ、エンコーダ63とモータ41はそれぞれサーボコントローラ64に接続される。サーボコントローラ64は、エンコーダ63の出力値からモータ41の回転速度を検出して、モータ41の回転速度が設定された値となるように、モータ41に印加する電圧値をコントロールする。これにより、スクリュー36の回転速度を所定の回転速度に維持する。
【0039】
制御装置56は、サーボコントローラ64とポンプ57と温度コントローラ62を制御する。制御装置56内には、不図示の記憶部と比較部が設けられる。記憶部には、基板31上にシール剤Lを線状のパターン、例えば、矩形枠状等の閉ループ形状のパターンPで塗布描画するときの基板31とノズル33との相対移動速度S0、このときのモータ41の回転速度R0、及びこのときにモータ41に印加する電圧値(電圧の基準値)V0が記憶される。
【0040】
ここで、回転速度R0は、パターンPを形成するに適した粘度のシール剤Lが、基板31とノズル33との相対移動速度=S0においてパターンPを形成するに必要な塗布量で塗布されたときの回転速度であり、電圧の基準値V0はこのときの回転速度R0を得るためにモータ41に印加された電圧値であり、これらの値は実験により求めることができる。比較部は、スクリュー36を駆動するモータ41に印加される電圧値Vxと記憶された電圧の基準値V0を比較してスクリュー36のトルク変動を検出する。比較部はスクリュー36のトルク変動検出手段を構成する。
【0041】
モータ41に印加される電圧値Vxは、サーボコントローラ64がモータ41に与える電圧値を制御装置56によって監視することで検出することができる。
【0042】
制御装置56は、検出されたスクリュー36のトルク変動の結果に基づいて温度調節機構49を作動させる。
【0043】
次に、上記構成からなるシール剤塗布装置10によって、テーブル30上に保持されたガラス基板31にシール剤Lを塗布する動作について、図1、図2を参照して説明する。尚、ここでは、2つの塗布ヘッド22は、同じ塗布パターンPを並行して塗布描画することから、説明を簡単にするために、2つの塗布ヘッド22のうち1つの塗布ヘッド22による塗布動作についてのみ説明する。
【0044】
シール剤塗布装置10は矩形のガラス基板31にシール剤Lを線状に塗布して、矩形状のパターンPを塗布描画する。
【0045】
制御装置56は、Xテーブルユニット17のモータ24とYテーブルユニット18のモータ25を回転させて、基板31をノズル33に対して水平方向に相対移動させるのと同時に、吐出装置32のポンプ34のモータ41を連続回転させて、ノズル33からシール剤Lを吐出させて、基板31上にパターンPを塗布描画する。
【0046】
制御装置56は、パターンPの塗布描画中、基板31とノズル33との水平方向の相対移動速度が記憶部に記憶された相対移動速度S0となるように、Xテーブルユニット17を駆動するモータ24とYテーブルユニット18を駆動するモータ25を制御する。
【0047】
そして、このパターンPを塗布描画する間、サーボコントローラ64は、エンコーダ63の出力値からポンプ34のモータ41の回転速度を検出して、モータ41の回転速度が設定された値(R0)となるようにコントロールする。
【0048】
次に、シール剤Lの温度調節機構49の動作について説明する。
スクリュー36がシリンダ35内で回転すると、スクリュー36とシール剤Lとの間の摩擦により、スクリュー36が加熱されるので、その熱がシール剤Lに伝わりシール剤Lの温度上昇が生じ、シール剤Lの粘度が下がる。シール剤Lの粘度が下がると、スクリュー36の回転抵抗が減少するので、モータ41に印加される電圧値が同じでもモータ41の回転速度が速くなる。そこで、サーボコントローラ64はモータ41の回転速度を設定された値(R0)に保つために、モータ41に印加する電圧を下げる。シール剤Lの粘度が上がった場合は、この逆になる。
【0049】
サーボコントローラ64がモータ41に印加している電圧値Vxは、制御装置56の比較部に入力され、このときの電圧値Vxによりスクリュー36のトルク変動が検出される。そして、比較部は、検出された電圧値Vxを記憶部に記憶された電圧の基準値V0と比較して、スクリュー36のトルク変動を検出する。比較の結果、Vx<V0であれば、ポンプ57と冷却用熱交換器58を作動させて熱媒を冷却し、スクリュー36の内部流路50内に冷却された熱媒を循環させてスクリュー36を冷却する。その結果、スクリュー36と接触するシリンダ35内のシール剤Lが冷却されて粘度が上がる。逆に、Vx>V0であれば、加熱用熱交換器59を作動させて、熱媒を加熱し、スクリュー36の内部流路50内に加熱された熱媒を循環させてスクリュー36を加熱する。その結果、シリンダ35内のシール剤Lが加熱されてシール剤Lの粘度が下がる。
【0050】
ここで、Vx<V0となる場合とは、スクリュー36とシール剤Lとの間の摩擦によってスクリュー36が加熱されたためにその熱がシール剤Lに伝わりシール剤Lの温度上昇が生じ、シール剤Lの粘度が低下した場合がある。
【0051】
また、Vx>V0となる場合とは、貯留容器37が新たな貯留容器37に交換された直後が考えられる。
【0052】
即ち、貯留容器37は、シール剤Lの劣化を防ぐため、冷凍保存されており、交換するときには前もってクリーンルーム内(25℃前後の雰囲気中)に放置されて解凍される。しかしながら、放置される時間のバラツキ等により、交換時点でシール剤Lの温度が塗布に適した温度よりも低いこともある。このような場合、シール剤Lの粘度が塗布に適した粘度よりも高くなるので、スクリュー36の回転抵抗が増大し、Vx>V0となる。
【0053】
尚、上述において、冷却用熱交換器58、或いは加熱用熱交換器59を作動させる際、
他方の熱交換器が作動中である場合は、その熱交換器の作動を停止させる。
【0054】
また、検出された電圧値Vxを電圧の基準値V0と比較したが、電圧の基準値V0は、許容値を含んだ値としても良い。つまり、電圧値Vxが電圧の基準値V0よりも許容値以上小さければ冷却用熱交換器58を作動させ、電圧値Vxが電圧の基準値V0よりも許容値以上大きければ加熱用熱交換器59を作動させるという具合である。
【0055】
スクリュー36のトルク検出は、枠状の塗布パターンPを描画する1サイクルの塗布動作中で連続して検出するようにして、スクリュー36の温度調節をしても良いし、複数サイクル(複数のパターン)毎にスクリュー36のトルクを検出するようにして、スクリュー36の温度調節をするようにしても良い。
【0056】
本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)シリンダ35内でスクリュー36が回転すると、スクリュー36とシール剤Lとの摩擦によりスクリュー36が加熱されるので、この熱によってシール剤Lの温度上昇が生じる。シール剤Lの温度を調節する温度調節機構49をスクリュー36自体に設けることにより、スクリュー36の加熱を防止し、シール剤Lの温度上昇を効率的に抑制することができる。従って、シール剤Lの温度上昇によって生じる粘度低下に起因するシール剤Lの塗布高さのバラツキを抑えて、基板上にシール剤Lを均一な塗布高さで精度良く塗布することができる。また、シール剤Lが熱硬化性を有する場合、シール剤の温度が硬化開始温度まで上昇するとシール剤が熱硬化してしまう。シール剤Lが熱硬化してしまうと、後に基板31がシール剤Lを介して他の基板と貼り合わされたときに、シール剤Lにおける熱硬化した部分と他の基板との間で充分な接合状態が得られず、製造された液晶表示パネルから液晶が漏れだすといった製品不良が生じるおそれがある。しかしながら、温度調節機構49によりシール剤Lの温度を硬化開始温度より低い温度に保つようにスクリュー36の温度を抑制することで、シール剤Lが熱硬化することを防止でき、シール剤Lの塗布作業の信頼性を向上させることができる。
【0057】
(b)シール剤Lの温度上昇はスクリュー36とシール剤Lとの摩擦によりスクリュー36が加熱されることで生じる。スクリュー36のトルク変動を検出してシール剤Lの温度上昇を検出することにより、シール剤Lの温度上昇が発生する一番近い所でシール剤Lの温度変化を検出することができる。その結果、シール剤Lの温度変化の検出遅れを防止することができる。従って、シール剤Lの粘度変化を抑制することができる。また、温度上昇の検出の遅れが防止されるので、シール剤Lの温度が硬化開始温度まで上がってしまうようなことを防ぐことができ、シール剤Lとしての機能を損なうようなことがなくなる。
【0058】
(c)シール剤Lの温度上昇が発生する箇所において温度変化を検出し、熱の発生源であるスクリュー36を直接冷却するようにした。そのため、スクリュー36とシール剤Lとの間の摩擦に起因してシール剤Lに温度上昇が生じたときには、その温度上昇を即座に検出してスクリュー36を冷却することができる。その結果、スクリュー36の回転速度を高速化することが可能となり、液晶表示パネルの生産性を向上させることが可能となる。
【0059】
(d)トルク変動検出手段は、スクリュー36を回転駆動するモータ41に印加された電圧値Vxと、電圧の基準値V0とを比較することで、スクリュー36のトルク変動を検出するので、特別な検出装置を必要とすることなく、安価な構成でスクリュー36のトルク変動を検出することができ、コストアップを招くことがなく、また、装置構成を複雑にすることもない。
【0060】
(e)制御装置56によって検出された、モータ41に印加された電圧値Vxが電圧の基準値V0よりも小さい場合にスクリュー36を冷却するので、シール剤Lの粘度上昇を抑えてシール剤Lの塗布高さのバラツキを抑制することができる。
【0061】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、実施例では、空気等の気体からなる熱媒を使用したが、水等の液体からなる熱媒を使用しても良い。また、温度調節機構として冷却手段のみを設けるものであっても良い。
【0062】
また、実施例では、スクリュー36のトルク変動を検出してスクリュー36を冷却又は加熱するようにしたが、スクリュー36のトルク変動を検出してシリンダ35を冷却又は加熱してシール剤Lを冷却又は加熱するようにしても良い。
【0063】
また、モータ41に印加された電圧値Vxと電圧の基準値V0とを比較してスクリュー36のトルク変動を検出したが、モータ41の回転軸42とスクリュー36の間にトルク検出器を配置し、トルク検出器の出力値を頼りにスクリュー36のトルク変動を検出しても良い。
【0064】
また、温度調節機構49が冷却手段と加熱手段を有する例で説明したが、スクリュー36とシール剤Lとの間の摩擦によって、スクリュー36が専ら加熱されるような場合など加熱する必要のない場合には、冷却手段のみを設けるようにしても良い。
【0065】
また、液晶表示パネルの製造に適用した例で説明したが、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1はシール剤塗布装置を示す斜視図である。
【図2】図2はシール剤の温度調節機構を概略の制御ブロック図とともに示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
10 シール剤(ペースト)塗布装置
31 基板
33 ノズル
34 ポンプ
35 シリンダ
36 スクリュー
41 ポンプのモータ
49 温度調節機構
56 制御装置
L シール剤(ペースト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内にスクリューを回転自在に設け、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に線状のパターンで塗布するペースト塗布装置において、
前記スクリューに設けられ前記ペーストの温度を調節する温度調節機構と、
該温度調節機構を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
シリンダ内にスクリューを回転自在に設け、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に線状のパターンで塗布するペースト塗布装置において、
前記ペーストの温度を調節する温度調節機構と、
前記スクリューのトルク変動を検出するトルク変動検出手段と、
該スクリューのトルク変動検出手段の検出結果に基づいて該ペーストの温度調節機構を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項3】
前記トルク変動検出手段は、前記スクリューを回転駆動するモータに印加された電圧値と、該モータに印加する電圧の基準値と、を比較することにより前記スクリューのトルク変動を検出する請求項2に記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記モータに印加された電圧値が前記基準値より小さい場合に前記温度調節機構を作動させて該スクリューを冷却する請求項3に記載のペースト塗布装置。
【請求項5】
シリンダ内のスクリューを回転駆動して、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に線状のパターンで塗布するペースト塗布方法において、
前記スクリューの温度を調節することにより、前記ペーストの温度を調節することを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項6】
シリンダ内のスクリューを回転駆動して、シリンダ内のペーストをノズルから吐出させて基板上に線状のパターンで塗布するペースト塗布方法において、
前記スクリューのトルク変動を検出し、該検出結果に基づいて前記ペーストの温度を調節することを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項7】
前記スクリューを回転駆動するモータに印加された電圧値と、該モータに印加する電圧の基準値と、を比較することにより前記スクリューのトルク変動を検出する請求項6に記載のペースト塗布方法。
【請求項8】
前記モータに印加された電圧値が前記基準値より小さい場合に前記スクリューを冷却する請求項7に記載のペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−36590(P2008−36590A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217500(P2006−217500)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】