説明

ホログラフィックメモリ装置

【課題】再生対象ホログラムから出射された再生光がポリトピックフィルタを適正に通過するよう制御できるホログラフィックメモリ装置を提供する。
【解決手段】ホログラフィックメモリ10から発せられた再生光の一部がビームスプリッタによって分割される。分割された再生光は、集光レンズ126とシリンドリカルレンズ127によって非点収差が導入された後、4分割PD128によって受光される。4分割PD128からの信号をもとに、演算回路によって、FE信号、RE信号およびTE信号が生成される。そして、これら信号に基づいて、ホログラフィックメモリ10がフォーカス方向、ラジアル方向およびタンジェンシャル方向に駆動され、再生対象ホログラムの位置が適正位置に補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィックメモリから情報を再生するホログラフィックメモリ装置に関するものであり、特に、ポリトピックフィルタにて隣接ホログラム間のクロストークを除去する場合に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホログラフィックメモリは、信号光と参照光を内部で干渉させたときの干渉縞をホログラフィックメモリ材料層に定着させることによって情報の記録が行われる。ここで、信号光は、記録情報に応じて空間光変調されているため、信号光と参照光をホログラフィックメモリに照射すると、ホログラフィックメモリ材料層中に、記録情報に応じた明暗の干渉縞が生じる。かかる干渉縞のうち“明”の領域に、ホログラフィックメモリ材料層中の光重合性の高いモノマーが引き寄せられてポリマー化することで、ホログラフィックメモリ材料層中に、干渉縞に応じた屈折率分布が定着する。これにより、ホログラフィックメモリに対する情報の記録が行われる。
【0003】
情報の再生は、ホログラフィックメモリ材料層中の再生対象領域に参照光を照射することにより行われる。このとき、参照光は、照射領域に定着された干渉縞(ホログラム)によって回折される。この光(信号光)を受光素子にて受光することにより、当該領域に記録された情報が再生される。
【0004】
ホログラフィックメモリに情報を記録する場合には、隣接ホログラム間の間隔を狭めることにより、記録密度を高めることができる。この場合、ホログラム間の間隔を狭めるほど、記録密度が引き上げられる。しかし、ホログラム間の間隔を参照光の幅より小さくすると、参照光が、再生対象ホログラムのみならずこれに隣接するホログラムにも同時に掛かってしまい(クロストーク)、再生信号が不安定になるとの問題が生じる。
【0005】
これに対し、以下の特許文献1には、クロストークを除去するための構成が示されている。この先行発明では、ホログラムメモリと受光素子の間の光学系内に、ポリトピックフィルタが挿入されている。このポリトピックフィルタによって、再生対象ホログラムに隣接するホログラムからの再生光が除去される。
【0006】
図9に、特許文献1に記載の構成を示す。
【0007】
ホログラフィクメモリ1から出射された再生光は、フーリエ変換レンズ2、3によって、ポリトピックフィルタ4の孔の位置に収束される。このとき、再生対象のホログラムに隣接するホログラムからの再生光(図中、破線で示す)は、ポリトピックフィルタ4の孔からずれた位置に収束されるため、ポリトピックフィルタ4によって遮断される。よって、再生対象のホログラムから出射された再生光のみが、フーリエ変換レンズ5を介して検出器6に導かれる。
【特許文献1】特開2004−272268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記先行発明において、ホログラフィックメモリをドライブから取り外した後、再度、そのドライブに装着した場合や、ホログラフィックメモリを別のドライブに装着した場合には、フーリエ変換レンズ2とホログラフィックメモリ1の距離や位置関係が変化することがあり、この場合、上記先行発明の構成では、再生対象ホログラムから出射された再生光が、ポリトピックフィルタ4の孔を適正に通過しなくなるとの問題が生じる。
【0009】
本発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、ホログラフィックメモリをドライブに再装着した場合や別のドライブに装着したような場合にも、再生対象ホログラムから出射された再生光がポリトピックフィルタを適正に通過するよう制御できるホログラフィックメモリ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み本発明は、それぞれ以下の特徴を有する。
【0011】
請求項1の発明は、ホログラフィックメモリ装置において、ホログラフィックメモリから発せられた再生光を収束させるレンズと、前記再生光の収束位置に配されたポリトピックフィルタと、前記ポリトピックフィルタを通過した前記再生光を受光する検出器と、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを検出するための光学系と、前記ポリトピックフィルタに対して前記ホログラフィックメモリを相対的に変位させるアクチュエータと、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれに基づいて前記アクチュエータを駆動し前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを補正する補正回路とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のホログラフィックメモリ装置において、前記光学系は、前記ポリトピックフィルタよりも前段に配され且つ前記ホログラフィックメモリから発せられた再生光の一部を分割する光路分割素子と、該光路分割素子にて分割された再生光を受光する光センサを具備し、該光センサは、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを検出するためのセンサパターンを備え、前記補正回路は、前記光センサから出力される信号を演算して前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを示す信号を生成する演算回路を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載のホログラフィックメモリ装置において、前記光学系は、前記該光路分割素子にて分割された再生光に非点収差を導入する光学素子を備え、前記光センサは、前記非点収差によって生じるビームスポットの変形方向がたすき掛け方向となるように配置された4分割センサによって構成され、前記演算回路は、前記4分割センサから出力される信号を演算して前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの再生光光軸方向の位置ずれを示す信号を生成することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載のホログラフィックメモリ装置において、前記光センサは、直線によって2つの領域に分割されたセンサパターンを備え、前記演算回路は、前記光センサの前記2つの領域から出力される信号を演算して、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの前記再生光の光軸に垂直な方向における位置ずれを示す信号を生成することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4に記載のホログラフィックメモリ装置において、前記ホログラフィックメモリは、ディスク形状を有し、前記光センサは、ディスク径方向に垂直な直線によって2つの領域に分割されたセンサパターンを備え、前記演算回路は、前記光センサの前記2つの領域から出力される信号を演算して、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの前記ディスク径方向における位置ずれを示す信号を生成することを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項4または5に記載のホログラフィックメモリ装置において、前記ホログラフィックメモリは、ディスク形状を有し、前記光センサは、ディスク径方向に平行な直線によって2つの領域に分割されたセンサパターンを備え、前記演算回路は、前記光センサの前記2つの領域から出力される信号を演算して、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの、前記ディスク径方向に垂直で且つ前記ディスク面に平行な方向における位置ずれを示す信号を生成することを特徴とする。
【0017】
なお、上記発明における「光学系」は、以下の実施形態において、ビームスプリッタ121と、集光レンズ126と、シリンドリカルレンズ127と、4分割PD128にて構成される光学系が対応する。また、上記発明における「アクチュエータ」は、以下の実施形態において、3次元アクチュエータ18が対応する。また、上記発明における「補正回路」は、以下の実施形態において、図4に示す演算回路とサーボ回路16が対応する。また、上記発明における「光路分割素子」は、以下の実施形態において、ビームスプリッタ121が対応する。また、上記発明における「光センサ」は、以下の実施形態において、4分割PD128が対応する。また、上記発明における「演算回路」は、以下の実施形態において、図4に示す演算回路が対応する。さらに、上記発明における「光学素子」は、以下の実施形態において、集光レンズ126とシリンドリカルレンズ127が対応する。
【0018】
ただし、以下の実施形態は、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを適宜検出することができ、また、この検出結果に基づいて、再生対象ホログラムの位置を適正位置へと補正することができる。したがって、再生対象ホログラムからの再生光をポリトピックフィルタに適正に導くことができ、また、再生対象ホログラムに隣接するホログラムからの再生光が誤って検出器へと入射されるのを抑制することができる。よって、本発明によれば、隣接ホログラムとのクロストークを抑制しながら、再生対象ホログラムを円滑かつ適正に再生することができる。
【0020】
本発明の特徴ないし効果は、以下に示す実施形態の説明によって更に明らかとなろう。ただし、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0022】
図1および図2に、実施の形態に係るホログラフィックメモリ装置の光学系を示す。なお、同図に示す光学系は、透過型のホログラフィックメモリに対して情報を記録/再生する際に用いられるものである。また、ホログラフィックメモリは、ディスク形状を有している。
【0023】
まず、図1を参照して、半導体レーザ101からホログラフィックメモリ10までの光学系について説明する。
【0024】
図示の如く、この光学系は、半導体レーザ101と、コリメータレンズ102と、シャッター103と、ビームスプリッタ104と、シャッター105と、偏光ビームスプリッタ106と、λ/4板107と、空間光変調器108と、フーリエ変換レンズ109と、ガルバノミラー110と、リレーレンズ111を備えている。
【0025】
半導体レーザ101は、ホログラフィックメモリ10に適した波長のレーザ光を出射する。コリメータレンズ102は、半導体レーザ101から入射されるレーザ光を平行光に変換する。シャッター103は、メカニカルシャッター等によって構成され、制御信号に応じて、レーザ光の通過/遮断を行う。具体的には、記録/再生動作の際の露光時にのみOFF(通過)とされる。OFFとされる時間によってホログラフィックメモリ10に対する露光時間が制御される。ビームスプリッタ104は、コリメータレンズ102からのレーザ光を信号光と参照光に分割する。
【0026】
シャッター105は、メカニカルシャッター等によって構成され、制御信号に応じて、信号光の通過/遮断を行う。具体的には、記録時にはOFF(通過)とされ、再生時にはON(遮断)とされる。
【0027】
偏光ビームスプリッタ106は、シャッター105から入射される信号光を略全透過するとともに、λ/4板107から入射される信号光を略全反射する。λ/4板107は、偏光ビームスプリッタ106から入射される信号光を直線偏光から円偏光に変換するとともに、空間光変調器108から入射される円偏光の信号光を、偏光ビームスプリッタ106からの入射時に比べて直交する直線偏光に変換する。
【0028】
空間光変調器108は、液晶パネルと反射ミラーの組み合わせ等によって構成され、記録信号(1、0の2値化データ)に応じて画素毎に信号光の偏光状態を制御し、これにより、信号光に記録信号に応じた空間光変調を与える。
【0029】
偏光ビームスプリッタ106を透過したP偏光の信号光はλ/4板107で右旋回または左旋回の円偏光となる。ここで、信号光の旋回方向は、λ/4板107の結晶軸の方向によって決まる。たとえば、信号光の旋回方向が右旋回となった場合、信号光は、空間光変調器108の液晶パネルを往復することにより、たとえば、デジタルデータ“1”の画素位置においては右旋回のままとされ、デジタルデータ“0”の画素位置においては左旋回へと変化する。したがって、再度、λ/4板107を通過することにより、信号光は、デジタルデータ“1”の画素位置ではS偏光となり、デジタルデータ“0”の画素位置ではP偏光となる。このうち、デジタルデータ“1”に対するS偏光の光みが、偏光ビームスプリッタ106にて反射され、デジタルデータ“0”に対するP偏光の光は偏光ビームスプリッタ106透過する。
【0030】
フーリエ変換レンズ109は、偏光ビームスプリッタ106から入射された信号光をホログラフィックメモリ10内のホログラフィックメモリ材料層上に収束させる。
【0031】
ガルバノミラー110は、参照光を反射すると共に、制御信号に応じて、信号光と参照光の光軸を含む面の面内方向に回動される。ガルバノミラー110が回動されることにより、記録ブロックに対する参照光の入射角度が調整される。リレーレンズ111は、ガルバノミラー110によって反射された参照光をホログラフィックメモリ10の記録ブロックに導く。
【0032】
記録時において、半導体レーザ101から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ102にて平行光に変換された後、シャッター103を通過し、ビームスプリッタ104によって信号光と参照光に分割される。このうち、信号光は、シャッター105を通過した後、偏光ビームスプリッタ106を透過し、空間光変調器108によって変調される。空間光変調器108にて変調された信号光は、偏光ビームスプリッタ106で反射され、フーリエ変換レンズ109によってホログラフィックメモリ10に収束照射される。また、参照光は、ガルバノミラー110によって反射された後、リレーレンズ111を介してホログラフィックメモリ10の信号光照射位置に入射される。
【0033】
かくして、信号光と参照光は、ホログラフィックメモリ10のホログラフィックメモリ材料層に照射される。これにより、ホログラフィックメモリ材料層のレーザ光照射箇所に干渉縞が生じ、モノマーがこの干渉縞に応じてポリマー化する。しかして、干渉縞に応じた屈折率分布(ホログラム)がホログラム材料層に定着し、ホログラフィックメモリに対する記録が行われる。
【0034】
なお、角度多重による記録時には、ガルバノミラー110が所定角度(ページ送り分)だけ回転され、ホログラフィックメモリ10に対する参照光の入射角度が変更される。このとき、ガルバノミラー110にて反射された参照光は、リレーレンズ111を介することで、ホログラフィックメモリ10上の入射位置を変えることなく、ホログラフィックメモリ10に対する角度のみが変更されて、信号光の照射位置に照射される。また、参照光の角度変更に応じて、空間光変調器108に、次ページ分の記録信号が供給される。
【0035】
かかる参照光の角度変更と空間光変調器108に対する記録信号の変更は、当該記録ブロックに対する多重記録が終了するまで繰り返される。これにより、当該記録ブロックに、参照光の入射角度毎に異なる干渉縞が生じ、その結果、当該記録ブロックに、異なる干渉縞に応じた屈折率分布(ホログラム)が定着する。しかして、当該記録ブロックに、異なる記録信号が角度多重にて記録される。
【0036】
再生時において、半導体レーザ101から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ102にて平行光に変換された後、シャッター103を通過し、ビームスプリッタ104によって信号光と参照光に分割される。このうち、信号光は、シャッター105によって遮断される。一方、参照光は、ガルバノミラー110およびリレーレンズ111を介してホログラフィックメモリ10のホログラフィックメモリ材料層に照射される。
【0037】
しかる後、参照光は、ホログラフィックメモリ材料層に定着されている干渉縞(ホログラム)によって回折され、ホログラフィックメモリ10を透過する。その後、参照光(再生光)は、図2に示す光学系によって検出器125に導かれる。
【0038】
図2に、ホログラフィックメモリ10から検出器125までの光学系を示す。
【0039】
図示の如く、この光学系は、フーリエ変換レンズ120と、ビームスプリッタ121と、フーリエ変換レンズ122と、ポリトピックフィルタ123と、フーリエ変換レンズ124と、検出器125と、集光レンズ126と、シリンドリカルレンズ127と、4分割PD128を備えている。
【0040】
フーリエ変換レンズ120は、ホログラフィックメモリ10から出射される再生光を平行光に変換する。ビームスプリッタ121は、フーリエ変換レンズ120から入射される再生光を一定の割合にて透過および反射する。フーリエ変換レンズ122は、ビームスプリッタ121を透過した再生光を収束させる。
【0041】
ポリトピックフィルタ123には、再生対象ホログラムからの再生光のみを通過させ、再生対象ホログラムに隣接するホログラム(以下、「隣接ホログラム」という)からの再生光を遮断する大きさの孔を、再生光の収束位置に有している。
【0042】
フーリエ変換レンズ124は、ポリトピックフィルタ123を通過した再生光を平行光に変換する。検出器125は、CMOSイメージセンサ等によって構成され、フーリエ変換レンズ124を介して入射された再生光の強度分布に応じた電気信号を信号増幅回路(後述)に出力する。検出器125から出力された電気信号は、信号増幅回路によって増幅された後、デコーダによって復調される。
【0043】
集光レンズ126は、ビームスプリッタ121によって反射された再生光に一様な収束作用を付与する。シリンドリカルレンズ127は、集光レンズ126を介して入射される再生光に一方向の収束作用を付与する。この収束作用によって、再生光に、非点収差が導入される。
【0044】
4分割PD128は、直交する2つの直線にて4つの領域に分割されたセンサパターンを有する。4分割されたそれぞれのセンサは、受光強度に応じた信号を、信号増幅回路(後述)に出力する。
【0045】
なお、図2の構成では、再生対象ホログラムからの再生光とともに隣接ホログラムからの再生光も4分割PD128方向に導かれる。本実施の形態において、4分割PD128は、再生対象ホログラムからの再生光のみを受光する大きさとされている。すなわち、4分割PD128は、隣接ホログラムからの再生光が同時に掛からない程度に小さく設定されている。
【0046】
図3に、4分割PD128上におけるビームスポットの収束状態を示す。
【0047】
なお、同図(a)は、再生対象ホログラムが適正位置からフーリエ変換レンズ120の方向に一定距離だけ接近したときの状態、同図(b)は、再生対象ホログラムが適正位置にあるときの状態、同図(c)は、再生対象ホログラムがフーリエ変換レンズ120に対して適正位置から一定距離だけ離間したときの状態を示している。また、同図(a)(b)(c)の左部には、再生光の軌道(光線追跡法)と4分割PD128の関係が示されている。これらの図中、実線は、シリンドリカルレンズ127によって収束作用を受けた光線の軌道、破線は、シリンドリカルレンズ127によって収束作用を受けない光線の軌道である。また、同図(a)(b)(c)の中央部には、4分割PD128上におけるビームスポットの形状が示されている。
【0048】
図示の如く、4分割PD128から出力される信号(以下、センサA〜Dから出力される信号をA〜Dと表記する)のうち、信号AとDが加算回路201にて加算され、信号BとCが加算回路202にて加算される。そして、加算後の信号が減算回路203にて減算されFE信号が生成される。ここで、FE信号は、再生光の光軸方向(フォーカス方向)における、再生対象ホログラムの適正位置からのずれ方向およびずれ量を表している。
【0049】
図4は、RE信号とTE信号を生成するための演算回路の構成を示す図である。なお、同図には、上記図3に示したFE信号生成用の演算回路が併せて示されている。
【0050】
図示の如く、4分割PD128から出力される信号のうち、信号AとBが加算回路211にて加算され、信号CとDが加算回路212にて加算される。そして、加算後の信号が減算回路213にて減算されRE信号が生成される。再生対象ホログラムが適正位置からディスク径方向(ラジアル方向)にずれると、これに伴って、4分割PD128上のビームスポットが、センター位置から、センサA、B側の領域またはセンサC、D側の領域へとシフトする。よって、RE信号は、ラジアル方向における再生対象ホログラムのずれ方向およびずれ量を表わすこととなる。
【0051】
また、4分割PD128から出力される信号のうち、信号AとCが加算回路221にて加算され、信号BとDが加算回路222にて加算される。そして、加算後の信号が減算回路223にて減算されRE信号が生成される。再生対象ホログラムが適正位置からラジアル方向に垂直で且つディスク面に平行な方向(タンジェンシャル方向)にずれると、これに伴って、4分割PD128上のビームスポットが、センター位置から、センサA、C側の領域またはセンサB、D側の領域へとシフトする。よって、TE信号は、タンジェンシャル方向における再生対象ホログラムのずれ方向およびずれ量を表すこととなる。
【0052】
図2に示す光学系は、再生対象ホログラムからの再生光がポリトピックフィルタ123の孔を通過するときに、FE信号、RE信号およびTE信号が全てゼロとなるよう位置調整されている。すなわち、FE信号、RE信号およびTE信号が全てゼロとなる位置にホログラフィックメモリ10を位置づけることにより、再生対象ホログラムからの再生光がポリトピックフィルタ123の孔を適正に通過するようになる。
【0053】
本実施の形態では、FE信号、RE信号およびTE信号に基づいて、ホログラフィックメモリ10の位置が適正位置(再生対象ホログラムからの再生光がポリトピックフィルタ123の孔を適正に通過する位置)に調整される。具体的には、FE信号、RE信号およびTE信号に基づいて、ホログラフィックメモリ10をフォーカス方向、ラジアル方向およびタンジェンシャル方向に駆動する信号が生成され、この信号が、ホログラフィックメモリ10を3次元駆動するアクチュエータに印加される。これにより、フォーカス方向、ラジアル方向およびタンジェンシャル方向における再生対象ホログラムの位置ずれが補正される。
【0054】
図5は、実施の形態に係るホログラフィックメモリ装置の構成を示す図である。
【0055】
図示の如く、ホログラフィックメモリ装置は、エンコーダ11と、SLMドライバ12と、光学ヘッド13と、信号増幅回路14と、デコーダ15と、サーボ回路16と、スピンドルモータ17と、3次元アクチュエータ18と、コントローラ19を備えている。
【0056】
エンコーダ11は、記録データにエンコード処理を施しSLMドライバ12に送る。SLMドライバ12は、エンコード処理された記録データから空間光変調器108を駆動するための記録信号を生成し、生成した記録信号に応じて、光学ヘッド13中の空間光変調器108を駆動する。
【0057】
光学ヘッド13は、上記図1および図2の光学系を内蔵し、記録再生用の信号光および参照光を、ホログラフィックメモリ10に照射する。光学ヘッド13は、ホログラフィックメモリ10が径方向(ラジアル方向)にステップ送りされるとき、信号光と参照光の照射位置がこの径上を移動するよう配置されている。
【0058】
信号増幅回路14は、上記図4に示す演算回路を備え、4分割PD128から入力される信号をもとに生成したFE信号、RE信号およびTE信号をサーボ回路16に出力する。また、光学ヘッド13内の検出器125から出力される電気信号を増幅し、これをデコーダ15に送る。
【0059】
デコーダ15は、信号増幅回路14から入力された再生信号をデコードして再生データを生成し、これを後段回路に出力する。
【0060】
サーボ回路16は、コントローラ19からの制御指令に応じて、ホログラフィックメモリ10をディスク周方向にステップ送りするためのサーボ信号を生成し、これをスピンドルモータ17に送る。また、コントローラ19からの制御指令に応じて、ホログラフィックメモリ10をラジアル方向にステップ送りするためのサーボ信号を生成し、これを、3次元アクチュエータ18のラジアル送り機構に供給する。さらに、コントローラ19からの制御指令に応じて、光ヘッド13内に配された半導体レーザ101の駆動制御、シャッター103、105のON/OFF制御およびガルバノミラー110の駆動制御を行う。
【0061】
この他、サーボ回路16は、信号増幅回路14から入力されるFE信号、RE信号およびTE信号から、ホログラフィックメモリ10を、スピンドルモータ17の回転軸に平行な方向(上下方向)に駆動する信号(上下駆動信号)と、ラジアル方向およびタンジェンシャル方向に駆動する信号(ラジアル駆動信号およびタンジェンシャル駆動信号)を生成し、これを3次元アクチュエータ18に出力する。これにより、3次元アクチュエータ18が駆動され、ホログラフィックメモリ10中の再生対象ホログラムが適正位置に位置づけられる。
【0062】
なお、スピンドルモータ17の回転軸方向(上下方向)は、通常、再生光の光軸方向(フォーカス方向)から所定角度だけ傾いているため、このように、ホログラフィックメモリ10を3次元アクチュエータ18によって上下方向に駆動すると、上下方向とフォーカス方向の間のずれ角に応じて、ホログラフィックメモリ10中の再生対象ホログラムが、フォーカス方向とともに、ディスク平面方向にも変位し、これにより、再生対象ホログラムの位置が、適正位置からラジアル方向またはタンジェンシャル方向にずれるようになる。
【0063】
この位置ずれを抑制するためには、上下駆動の際に、この位置ずれを抑制するための駆動信号(ラジアル駆動信号またはタンジェンシャル駆動信号)を生成し、この信号を、上下駆動信号とともに、サーボ回路16から3次元アクチュエータ18に出力するようにすればよい。
【0064】
スピンドルモータ17は、サーボ回路16からのサーボ信号に応じて、ホログラフィックメモリ10をディスク周方向にステップ送りする。3次元アクチュエータ18は、サーボ回路16からの駆動信号(上下駆動信号、ラジアル駆動信号およびタンジェンシャル駆動信号)に応じて、スピンドルモータ17を、上下方向、ラジアル方向およびタンジェンシャル方向に駆動する。
【0065】
図6は、3次元アクチュエータ18の構成を示す図である。
【0066】
図示の如く、3次元アクチュエータ18は、スピンドルモータ17をラジアル方向に駆動可能に支持するX軸ステージ30aと、X軸ステージ30aをタンジェンシャル方向に駆動可能に支持するY軸ステージ30bと、Y軸ステージ30bを上下方向に駆動可能に支持するZ軸ステージ30cから構成されている。上記サーボ回路16によって生成された上下駆動信号、ラジアル駆動信号およびタンジェンシャル駆動信号は、それぞれ、Z軸ステージ30c、X軸ステージ30aおよびY軸ステージ30bに入力される。これにより、スピンドルモータ17が、上下方向、ラジアル方向およびタンジェンシャル方向に変位され、ホログラフィックメモリ10中の再生対象ホログラムの位置が調整される。
【0067】
図7は、X軸ステージ30aの構成例である。同図(a)は、X軸ステージ30aの概観斜視図、同図(b)は、同図(a)のA−A’断面図である。なお、Y軸ステージ30bも図7と同様の構成とすることができる。但し、Y軸ステージ30bの駆動ストロークは、X軸ステージ30aほど大きくとる必要はない。
【0068】
X軸ステージ30aは、基部301と、ステージ部302と、摺動部303と、ベアリング304と、ボールネジ306と、ステッピングモータ307から構成されている。
【0069】
基部301は、その上面に凹部が形成されている。この凹部に、ベアリング304を介して摺動部303が水平方向に変位可能に装着されている。摺動部303には、その変位方向に平行なネジ孔305が形成されている。また、その上面に、ステージ部302が固着されている。摺動部303のネジ孔305にはボールネジ306が螺合している。ボールネジ306は、一端が凹部の内壁に軸支され、他端がステッピングモータ307の駆動軸に接合されている。しかして、ステッピングモータ307が駆動されると、ステージ302が、ボールネジ306に沿って水平方向に変位する。
【0070】
図8は、Z軸ステージ30cの構成例である。同図(a)は、Z軸ステージ30cの概観斜視図、同図(b)は、同図(a)のB−B’断面図である。
【0071】
Z軸ステージ30cは、基部311と、ステージ部312と、摺動部313と、ベアリング314と、ボールネジ316と、ステッピングモータ317から構成されている。
【0072】
基部311は、その上面に凹部が形成されている。この凹部に、ベアリング314を介して摺動部313が上下方向に変位可能に装着されている。摺動部313には、その変位方向に平行なネジ孔315が形成されている。また、その上面に、ステージ部312が固着されている。摺動部313のネジ孔315にはボールネジ316が螺合している。ボールネジ316は、一端が孔315の内面に臨み、他端がステッピングモータ317の駆動軸に接合されている。しかして、ステッピングモータ317が駆動されると、ステージ302が、ボールネジ306に沿って上下方向に変位する。
【0073】
3次元アクチュエータ18は、Z軸ステージ30cのステージ部312上にY軸ステージ30bの基部301を固着し、さらに、Y軸ステージ30bのステージ部302上にX軸ステージ30aの基部301を固着して構成される。スピンドルモータ17は、X軸ステージ30aのステージ部302上に装着される。そして、X軸ステージ30a、Y軸ステージ30bおよびZ軸ステージ30cのステッピングモータ307、317に、それぞれ、ラジアル駆動信号、タンジェンシャル駆動信号および上下駆動信号がサーボ回路16から入力され、これにより、ホログラフィックメモリ10がスピンドルモータ17とともに、ラジアル方向、タンジェンシャル方向および上下方向に駆動される。しかして、ホログラフィックメモリ10中の再生対象ホログラムが適正位置に位置づけられる。
【0074】
以上、本実施の形態によれば、4分割PD128からの信号に基づいて再生対象ホログラムの位置ずれが適宜検出され、その検出結果に基づいて、再生対象ホログラムの位置が適正位置へと補正されるため、常に、再生対象ホログラムからの再生光をポリトピックフィルタ123に適正に導くことができる。よって、隣接ホログラムからの再生光が検出器125へと入射される等の不都合を解消することができ、安定した再生動作を実現することができる。
【0075】
なお、本発明の実施形態は、上記に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
【0076】
たとえば、信号光と参照光を発するための光源は、半導体レーザ101に限定されるものではなく、たとえば、SHGレーザであっても良い。
【0077】
また、シャッター103、105はメカニカルシャッターに限定されるものではなく、液晶シャッターであっても良い。
【0078】
また、空間光変調器108は、液晶とミラーを組み合わせたものに限定されるものではなく、DMD(Digital Micro-mirror Device)であっても良い。また、空間光変調器108を液晶のみから構成される光透過型の空間光変調器とすることもできる。この場合、この空間光変調器は、図1の光学系において、シャッター105の後段に配される。
【0079】
また、リレーレンズ111に代えて、ミラーを2枚以上組み合わせて参照光の入射位置を調整することもできる。
【0080】
さらに、光検出器125は、CMOSイメージセンサの他、CCDイメージセンサ等によって構成することもできる。
【0081】
さらに、上記実施の形態では、ホログラフィックメモリ10の方を3次元駆動するようにしたが、光ヘッド13の方を3次元駆動するようにしても良い。さらに、3次元駆動するためのアクチュエータは、上記実施の形態に示されたものに限定されず、他の駆動機構にて構成することもできる。
【0082】
また、上記実施例には、透過型のホログラムメモリを用いるホログラムメモリ装置を示したが、本発明は、反射型のホログラムメモリ装置にも適用可能である。
【0083】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態に係るホログラムメモリ装置の光学系を示す図
【図2】実施の形態に係るホログラムメモリ装置の光学系を示す図
【図3】実施の形態に係るFE信号の生成方法を説明する図
【図4】実施の形態に係るRE信号およびTE信号の生成方法を説明する図
【図5】実施の形態に係るホログラムメモリ装置の構成を示す図
【図6】実施の形態に係る3次元アクチュエータの構成を示す図
【図7】実施の形態に係る3次元アクチュエータの構成を示す図
【図8】実施の形態に係る3次元アクチュエータの構成を示す図
【図9】従来技術を説明する図
【符号の説明】
【0085】
10 ホログラフィックメモリ
14 信号増幅回路
16 サーボ回路
18 3次元アクチュエータ
120 フーリエ変換レンズ
121 ビームスプリッタ
122 フーリエ変換レンズ
123 ポリトピックフィルタ
125 検出器
126 集光レンズ
127 シリンドリカルレンズ
128 4分割PD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィックメモリから発せられた再生光を収束させるレンズと、
前記再生光の収束位置に配されたポリトピックフィルタと、
前記ポリトピックフィルタを通過した前記再生光を受光する検出器と、
前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを検出するための光学系と、
前記ポリトピックフィルタに対して前記ホログラフィックメモリを相対的に変位させるアクチュエータと、
前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれに基づいて前記アクチュエータを駆動し前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを補正する補正回路と、
を有することを特徴とするホログラフィックメモリ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホログラフィックメモリ装置において、
前記光学系は、前記ポリトピックフィルタよりも前段に配され且つ前記ホログラフィックメモリから発せられた再生光の一部を分割する光路分割素子と、該光路分割素子にて分割された再生光を受光する光センサを具備し、
該光センサは、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを検出するためのセンサパターンを備え、
前記補正回路は、前記光センサから出力される信号を演算して前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの位置ずれを示す信号を生成する演算回路を備える、
ことを特徴とするホログラフィックメモリ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のホログラフィックメモリ装置において、
前記光学系は、前記該光路分割素子にて分割された再生光に非点収差を導入する光学素子を備え、
前記光センサは、前記非点収差によって生じるビームスポットの変形方向がたすき掛け方向となるように配置された4分割センサによって構成され、
前記演算回路は、前記4分割センサから出力される信号を演算して前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの再生光光軸方向の位置ずれを示す信号を生成する、
ことを特徴とするホログラフィックメモリ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のホログラフィックメモリ装置において、
前記光センサは、直線によって2つの領域に分割されたセンサパターンを備え、
前記演算回路は、前記光センサの前記2つの領域から出力される信号を演算して、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの前記再生光の光軸に垂直な方向における位置ずれを示す信号を生成する、
ことを特徴とするホログラフィックメモリ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のホログラフィックメモリ装置において、
前記ホログラフィックメモリは、ディスク形状を有し、
前記光センサは、ディスク径方向に垂直な直線によって2つの領域に分割されたセンサパターンを備え、
前記演算回路は、前記光センサの前記2つの領域から出力される信号を演算して、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの前記ディスク径方向における位置ずれを示す信号を生成する、
ことを特徴とするホログラフィックメモリ装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のホログラフィックメモリ装置において、
前記ホログラフィックメモリは、ディスク形状を有し、
前記光センサは、ディスク径方向に平行な直線によって2つの領域に分割されたセンサパターンを備え、
前記演算回路は、前記光センサの前記2つの領域から出力される信号を演算して、前記ポリトピックフィルタに対する再生対象ホログラムの、前記ディスク径方向に垂直で且つ前記ディスク面に平行な方向における位置ずれを示す信号を生成する、
ことを特徴とするホログラフィックメモリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−304263(P2007−304263A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131370(P2006−131370)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】