説明

ポリイミド及びそれを用いた感光性樹脂組成物

【課題】基板などへの圧着が容易で、かつ難燃性を示すポリイミド及び前記ポリイミドを用いたドライフィルム化時の反りの無いポジ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)の構造を有するポリイミド。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド、前記ポリイミドを含有するプリント配線板のカバーレイに好適な感光性樹脂組成物及びそれを用いた感光性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性に優れた絶縁材料、特に半導体プロセスにおいて固体素子の絶縁層や保護層に用いられる材料として、ポリイミドなどの高耐熱性樹脂が注目されている。一般に、ポリイミドは300℃以上の耐熱性と優れた機械特性とを有しており、かつ低誘電率や高絶縁性などの電気特性にも優れている。
【0003】
一般的なポリイミド材料を微細加工する際には、フォトレジストを使用したエッチング処理が行われるため、多くの工程数を必要とする。そこで、絶縁層であるポリイミド自体に直接パタ−ンを形成することのできる感光性ポリイミド材料が注目されてきている。なかでも、作業時の安全性や環境への影響に対する配慮から、アルカリ水溶液での現像処理が可能な感光性樹脂組成物への要望が強くなってきている。一般にネガ型の場合は、その現像液により露光部の膨潤が起こり、高解像度の微細加工を行うことが難しい。そのため、ポジ型の感光システムによる微細加工が強く望まれている。
【0004】
また、従来のスクリーン印刷では溶媒除去のプロセスや両面加工の際には2回のプロセスになるなどの問題があるため、工業プロセスの観点から感光性樹脂組成物をドライフィルム化することが望まれている。
【0005】
ポジ型感光性樹脂組成物として、ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体にキノンジアジド化合物を添加したポジ型感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。前記前駆体タイプは、最終的な膜物性に優れているものの、前駆体の状態で組成物とするため、保存安定性が悪いものもあり、加工上で不都合を生じる場合があった。
【0006】
ポリイミドを含有するポジ型感光性樹脂組成物として、スルホン酸基を含有するポリイミドとナフトキノンジアジド化合物とを含む感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献2)。前記感光性樹脂組成物は、保存安定性は改良されたものの、ポリイミドのTgが高いために、基板などへの圧着が困難である。
【0007】
一方、ポリイミドのTgを下げたポジ型感光性樹脂組成物として、シロキサン骨格を有するポリイミドからなるポジ型感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献3)。この文献における技術のように、ポリイミドはシロキサン骨格を導入することにより、Tgは低下するものの、難燃性が低下する傾向がある。また、前記組成物は可塑性が充分でないため、ドライフィルム化時に反りが発生し、感光性フィルムとして用いることが困難である。
【0008】
また、基板などへの圧着が可能で、良好な接着性を示すポリイミドが提案されている(特許文献4)。前記ポリイミドは、脂肪族直鎖を有する芳香族性ジアミンとシロキサンジアミンとを必須成分として用いることで、電子部品の接着用材料として好適なポリイミドを達成している。しかしながら、前記ポリイミドは基板などへの圧着は容易であるものの、接着用ポリイミド樹脂であるため、ポジ型感光性を発現しうるアルカリ溶解性基を有しておらず、ポジ型感光性樹脂組成物としての使用が困難であった。
【特許文献1】特許3078175号公報
【特許文献2】特開2004−238591号公報
【特許文献3】WO2003/060010号公報
【特許文献4】特開2003−327697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、基板などへの圧着が容易で、かつ難燃性を示すポリイミド及び前記ポリイミドを用いたドライフィルム化時の反りの無いポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポリイミドは、下記一般式(1)の構造を有することを特徴とする。
【化1】

(式中、R、R、Rは4価の有機基を表し、同じであっても異なっていても良い。Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。Rはアルカリ溶解性官能基を少なくとも一つ以上有する2価の有機基を表す。aは3以上20以下の整数を表す。bは1以上10以下の整数を表す。cは1以上20以下の整数を表す。x+y+z=100かつ0.001≦x/(x+y+z)≦0.9、0<y<99.999、0<z<99.999である。)
【0011】
本発明のポリイミドにおいては、前記アルカリ溶解性官能基が、カルボキシル基又は芳香族性水酸基であることが好ましい。
【0012】
本発明のポリイミドにおいては、一般式(1)におけるaが3以上10以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)上記ポリイミドと、(B)感光剤と、を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物においては、(C)可塑剤を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記可塑剤が、(A)成分100重量%に対して30重量%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の感光性フィルムは、上記感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする。
【0017】
本発明の積層フィルムは、キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた上記感光性フィルムと、を具備することを特徴とする。
【0018】
本発明の積層フィルムにおいては、前記感光性フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することが好ましい。
【0019】
本発明のプリント配線板は、配線を有する基材と、前記配線を覆うように前記基材上に形成され、上記感光性フィルム又は積層フィルムから構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリイミドを含むポジ型感光性樹脂組成物によれば、基材などへの圧着が可能な低Tgを示し、ドライフィルム化時の反りも充分に抑制され、密着性、埋め込み性、現像性が良好であり、かつ成膜後に焼成することにより容易に難燃性が高い膜が得られる材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のポリイミドは、一般式(1)で表されるように、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、シリコーンジアミン、及びアルカリ溶解性官能基を有するジアミンと、酸二無水物とを重合、環化させてなるポリイミドである。
【化2】

(式中、R、R、Rは4価の有機基を表し、同じであっても異なっていても良い。Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。Rはアルカリ溶解性官能基を少なくとも一つ以上有する2価の有機基を表す。aは3以上20以下の整数を表す。bは1以上10以下の整数を表す。cは1以上20以下の整数を表す。x+y+z=100かつ0.001≦x/(x+y+z)≦0.9、0<y<99.999、0<z<99.999である。)
【0022】
本発明に係るポリイミドは、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、シリコーンジアミン、及びアルカリ溶解性官能基を有するジアミンと、酸二無水物とを重合、環化させてなるものであり、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカンにより、感光性樹脂組成物から得られた膜の難燃性が向上し、シリコーンジアミンが含まれることにより、感光性樹脂組成物から得られた感光性フィルムの反りが軽減され、Tgが低く、密着性、埋め込み性が向上し、アルカリ溶解性官能基により、感光性樹脂組成物から得られた感光性フィルムがアルカリ現像性を発揮する。
【0023】
本発明に係るポリイミドにおけるジアミンについて説明する。
本発明に係るポリイミドに用いられるジアミンは、一般式(2)で表される1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、一般式(3)で表されるシリコーンジアミン、及びアルカリ溶解性官能基を有するジアミンである。
【化3】

【化4】

【0024】
一般式(2)におけるaは、基板などへの圧着に必要なポリイミドの低Tg化、難燃性を考慮すると、3以上20以下である。その中で、低Tg化及び難燃性のバランスの観点から、3以上10以下が好ましく、3以上5以下が特に好ましい。
【0025】
本発明に係るポリイミドに用いられるシリコーンジアミンの構造は、前記一般式(3)の構造であれば限定されない。
【0026】
一般式(3)において、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基を表し、同じであっても異なっていても良い。bは1以上10以下の整数であり、cは1以上20以下の整数を表す。
【0027】
炭素数1以上20以下の炭化水素基(R)としては、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、環状構造を含む官能基、及びそれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0028】
上記脂肪族飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの第一級炭化水素基、イソブチル基、イソペンチル基などの第二級炭化水素基、t−ブチル基などの第三級炭化水素基などが挙げられる。
【0029】
上記脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル基、アリル基などの二重結合を含む炭化水素基、エチニル基などの三重結合を含む炭化水素基などが挙げられる。
【0030】
上記環状構造を含む官能基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロデシル基、シクロオクチル基などの単環式官能基;ノルボルニル基、アダマンチル基などの多環式官能基;ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、テトラヒドロフラン、ジオキサン構造を有する複素環式官能基;ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環構造を含む芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0031】
前記炭素数1以上20以下の炭化水素基(R)は、ハロゲン原子、ヘテロ原子及び金属原子を含むことができる。本発明におけるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、本発明におけるヘテロ原子には、酸素、硫黄、窒素、リンが挙げられる。また、本発明における金属原子には、ケイ素及びチタンが挙げられる。
【0032】
また、炭素数1以上20以下の炭化水素基(R)がヘテロ原子及び/又は金属原子を含む場合、Rは結合するヘテロ原子及び/又は金属原子に直接結合していても、ヘテロ原子及び/又は金属原子を介して結合していても良い。
【0033】
一般式(3)のRの炭素数は、難燃性を考慮して、1以上20以下が好ましい。生成するポリイミドの溶媒溶解性の観点から、炭素数は1以上10以下が特に好ましい。
【0034】
本発明に係るポリイミドにおいて、溶媒溶解性とは、ポリイミドがγ−ブチロラクトン、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドから選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒に、5重量%以上の濃度で溶媒に溶解する性質を意味する。
【0035】
一般式(3)のbは、難燃性を考慮すると、1以上10以下である。生成するポリイミドの溶媒溶解性の観点から、bは2以上8以下であることが好ましく、3以上6以下がより好ましい。
【0036】
一般式(3)のcは、難燃性を考慮すると、1以上20以下である。生成するポリイミドの溶媒溶解性の観点から、cは1以上15以下であることが好ましく、1以上12以下がより好ましい。
【0037】
本発明に係るポリイミドに用いられるアルカリ溶解性官能基を有するジアミンについて説明する。アルカリ溶解性官能基としては、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホン酸基などのアルカリに溶解する官能基であれば、限定されない。その中で、未露光部の溶解抑止の観点から、カルボキシル基、芳香族性水酸基が好ましい。本発明における芳香族性水酸基とは、水酸基が直接芳香環に結合している化合物に由来する官能基である。具体的には、フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、1−ナフトール、2−ナフトールなどベンゼン環に水酸基が直接結合した化合物に由来する官能基などが挙げられる。
【0038】
芳香族性水酸基を有するジアミンとしては、1,2−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジアミノ−3,5−ジヒドロキシベンゼン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、2−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)エ−テル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)メタン、4−[(2,4−ジアミノ−5−ピリミジニル)メチル]フェノール、p−(3,6−ジアミノ−s−トリアジン−2−イル)フェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタンなどが挙げられる。
【0039】
カルボキシル基を有するジアミンとしては、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下MBAAと略称する)、3,5−ジアミノ安息香酸などが挙げられる。その中でも、アルカリ溶解性及び反応の容易さなどからMBAA、3,5−ジアミノ安息香酸、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
【0040】
本発明に係るポリイミドには、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、シリコーンジアミン及びアルカリ溶解性官能基を有するジアミン以外のジアミンに由来する部分を、ポリイミドの特性に悪影響を及ぼさない範囲で含むことができる。その他ジアミンとしては、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシベンゼン)(以下APBと略称する)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4、4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0041】
また、本発明に係るポリイミドにおいて、その他ジアミンに由来する部位の含有量は、すべてのジアミンに由来する部位を100mol%とした時、難燃性の観点から35mol%以下であることが好ましい。
【0042】
次に、本発明に係るポリイミドに用いられる酸二無水物について説明する。
本発明に係るポリイミドに用いられる酸二無水物は、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、シリコーンジアミン及びアルカリ溶解性官能基を有するジアミンと反応し得る酸二無水物であれば、限定されない。
【0043】
一般式(1)におけるR、R及びRは、下記一般式(4)、(5)及び(6)で表される酸二無水物に由来する4価の有機基であり、同じであっても異なっていても良い。
【化5】

【化6】

【化7】

【0044】
本発明に係るポリイミドに用いられる酸二無水物としては、具体的には無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物(以下ODPAと略称する)、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、メタ−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタトリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)などが挙げられる。
【0045】
これらの中で、ポリイミドの溶媒溶解性、低Tg化の観点から、ODPA、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が好ましい。
【0046】
本発明のポリイミドの末端は、性能に影響を与えない構造であれば、特に限定されない。ポリイミドを製造する際に用いる酸二無水物、ジアミンに由来する末端でも良く、その他の酸無水物、アミン化合物などにより末端を封止しても良い。
【0047】
本発明に係るポリイミドの数平均分子量は、難燃性、ポリイミド含有樹脂組成物の粘度、成型性の観点から、1000以上1000000以下であることが好ましい。ここで、数平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。前記分子量は5000以上500000以下がより好ましく、10000以上300000以下がもっとも好ましい。
【0048】
本発明に係るポリイミドの共重合様式は、ブロック構造でもランダム構造でも良い。
【0049】
本発明における共重合成分を構成するx、y、zは、x+y+z=100かつ0.001≦x/(x+y+z)≦0.9、0<y<99.999、0<z<99.999である。x/(x+y+z)の値が0.001以上であれば、難燃性発現に必要な1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン部分が充分に多いため、難燃性が発現する。また、x/(x+y+z)の値が0.9以下であれば、アルカリ溶解性に必要なアルカリ溶解性官能基を有するジアミンに由来する部分の割合が充分に多いため、アルカリ溶解性が発現する。アルカリ溶解性と難燃性、低Tgのバランスの観点から、x/(x+y+z)の値は0.01以上0.5以下が好ましく、0.02以上0.25以下がより好ましい。
【0050】
次に、本発明に係るポリイミドの製造方法について説明する。
本発明に係るポリイミドは、酸二無水物とジアミンとを反応させ、ポリアミド酸を合成した後に、加熱(加熱イミド化)することによって得ることができる。また、酸二無水物とジアミンとを反応させ、ポリアミド酸を合成し、続いて触媒を添加した後にイミド化(化学的イミド化)させることによっても、得ることができる。この中で、化学的イミド化は、より低温でイミド化を完結できる点で好ましい。
【0051】
以下に酸二無水物とジアミンとを反応させてポリアミド酸を合成する方法について説明し、続いて触媒を添加した後にイミド化させる方法を例に挙げて、本発明に係るポリイミドの製造方法について説明する。
【0052】
本発明に係るポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。より具体的には、以下の方法により得られる。まず、ジアミンを重合溶媒に溶解し、これに酸二無水物粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラを用い、0.5〜96時間、好ましくは0.5〜30時間攪拌する。この際モノマー濃度は0.5重量%以上95重量%以下、好ましくは1重量%以上90重量%以下である。
【0053】
前記ポリアミド酸の製造の際に使用される反応溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数3以上6以下のエステル化合物、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上10以下の含窒素化合物が挙げられる。これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0054】
前記ポリアミド酸の製造の際の反応温度は、0℃以上250℃以下が好ましい。反応開始の観点から、0℃以上が好ましく、副反応などの観点から250℃以下が好ましい。さらに好ましくは15℃以上220℃以下、最も好ましくは20℃以上200℃以下である。
【0055】
前記ポリアミド酸の製造に続いてイミド化を行わずにポリアミド酸として回収する場合は、反応溶液中の溶媒を減圧留去する。ポリアミド酸の精製方法としては、反応溶液中の不溶解な酸二無水物及びジアミンを減圧濾過、加圧濾過などで除去する方法が挙げられる。また、反応溶液を貧溶媒に加え析出させる、いわゆる再沈精製法を実施することができる。さらに特別に高純度なポリアミド酸が必要な場合は二酸化炭素超臨界法による抽出法も可能である。
【0056】
前記ポリアミド酸を用いて、前記ポリアミド酸が均一に溶解及び/又は分散し得る溶媒を含む樹脂組成物を得ることができる。前記樹脂組成物を構成する溶媒は、本ポリイミドに係るポリアミド酸を均一に溶解及び/又は分散させ得るものであれば限定されない。このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテートのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含塩素化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物などが挙げられる。また、必要に応じて、1種あるいは2種以上の混合物であっても良い。
【0057】
前記ポリアミド酸と溶媒とを含む樹脂組成物におけるポリアミド酸の濃度は、前記ポリアミド酸からポリイミドが製造され得る濃度であれば限定されない。その中でも、ポリアミド酸の濃度は、所望の膜厚のポリアミド酸を基材にコートできることや、ポリアミド酸の粘度を低くして均一の膜厚のポリアミド酸を基材にコートできることを考慮して、1重量%以上90重量%以下が好ましい。得られるポリアミド酸の膜厚の観点から、2重量%以上80重量%以下がより好ましい。
【0058】
前記ポリアミド酸と溶媒とを含む樹脂組成物には、必要に応じて公知のイミド化触媒を添加することができる。
【0059】
次に、本発明に係るポリイミドの前駆体であるポリアミド酸にイミド化触媒を添加して(化学的)イミド化し、本発明に係るポリイミドを得る方法について説明する。
本発明に係るポリイミドを製造する際のイミド化触媒は特に制限されないが、無水酢酸のような酸無水物、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−テトロン酸、γ−フタリド、γ−クマリン、γ−フタリド酸のようなラクトン化合物、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、トリエチルアミンのような三級アミンなどが挙げられる。また、必要に応じて1種あるいは2種以上の混合物であっても良い。この中でも特に、反応性の高さの観点からγ−バレロラクトンとピリジンの混合系が特に好ましい。
【0060】
イミド化触媒の添加量は、ポリアミド酸を100重量%とすると、50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0061】
反応溶媒としては、ポリアミド酸の製造に使用したものと同じものを用いることができる。その場合、ポリアミド酸溶液をそのまま用いることができる。また、ポリアミド酸の製造に用いたものと異なる溶媒を用いてもよい。
【0062】
反応溶媒としては、前記ポリアミド酸樹脂組成物を構成する溶媒を用いることができる。特に好ましい溶媒としては、炭素数3以上6以下のエステル化合物、炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上10以下の含窒素化合物が挙げられる。反応溶媒は工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
【0063】
反応温度は反応開始の観点から15℃以上、触媒の失活の観点から250℃以下で実施することが好ましい。より好ましくは20℃以上220℃以下、最も好ましくは20℃以上200℃以下である。
【0064】
反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には30分から30時間の範囲である。
【0065】
製造終了後における、ポリイミドの回収は、反応溶液中の溶媒を減圧留去することにより行うことができる。
【0066】
本発明に係るポリイミドの精製方法としては、反応溶液中の不溶解な酸二無水物及びジアミンを減圧濾過、加圧濾過などで除去する方法が挙げられる。また、反応溶液を貧溶媒に加え析出させる、いわゆる再沈精製法を実施することができる。さらに特別に高純度なポリイミドが必要な場合は二酸化炭素超臨界法による抽出法も可能である。
【0067】
本発明に係るポリイミドを用いて、前記ポリイミドが均一に溶解及び/又は分散し得る溶媒を含む樹脂組成物を得ることができる。本発明に係るポリイミドを含有する樹脂組成物に含まれる溶媒は、本発明のポリイミドを均一に溶解及び/又は分散させ得るものであれば限定されない。このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコ−ルジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテートのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトンのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含塩素化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物などが挙げられる。また、必要に応じて、1種あるいは2種以上の混合物であっても良い。ポリイミドの溶媒溶解性の観点から、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0068】
本発明に係るポリイミドと溶媒とを含む樹脂組成物におけるポリイミドの濃度は、樹脂成型体が製造される濃度であれば、特に制限されない。作製する樹脂成型体の膜厚や膜厚の均一性の観点から、ポリイミドの濃度は1重量%以上90重量%以下が好ましい。また、2重量%以上80重量%以下がより好ましい。
【0069】
本発明に係るポリイミドを用いて、(A)前記ポリイミドと(B)感光剤とを含有する感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0070】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、感光剤とは、光照射により構造が変化し、溶媒に対する溶解性が変化するものなどが挙げられる。このような化合物としては、キノンジアジド構造を含有する化合物などが挙げられる。
【0071】
前記キノンジアジド構造を含有する化合物としては、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類が挙げられる。具体的には、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのトリヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,2’,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのテトラヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのペンタヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのヘキサヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノ−ル−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノ−ル−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどの(ポリヒドロキシフェニル)アルカン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類などが挙げられる。溶解抑止能の観点から、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類が好ましく、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル類が難燃性の観点からより好ましい。なかでも一般式(7)で示される化合物Bが特に好ましい。
【化8】

【化9】

【0072】
一般式(7)において、Qは一般式(8)で表される構造又は水素原子である。本発明に係る感光性樹脂組成物における感光剤として、化合物Bは、一般式(7)における3個のQのうち、平均2.3個が一般式(8)で表される構造になっているものを指す。
【0073】
感光剤の量としては、本発明に係るポリイミドの量を100重量%とした場合、感光性コントラストの観点から、すなわち露光前の溶解抑止が充分であることや、感度が充分に高いことの観点から、1重量%以上50重量%以下が好ましく、5重量%以上30重量%以下がより好ましい。
【0074】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに(C)可塑剤を含有していても良い。(C)可塑剤を含有することにより、組成物のTgが低下するため、ドライフィルム化時の反りが軽減する傾向にあるため好ましい。
【0075】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、可塑剤とは、樹脂組成物に可塑性を与え、組成物のTgを下げ得るものであれば限定されない。このような可塑剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、クラウンエーテルなどのエーテル化合物;テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのメタクリル基含有化合物;テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどのアクリル基含有化合物;ジメチルフタレート、ジエチルフタレートなどのフタル酸エステル;トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテートなどのトリメリット酸エステル;ジメチルアジペート、ジブチルアジペートなどの脂肪族二塩基酸エステル;トリメチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートなどのリン酸エステル;(CO)P(O)OCC(CHOP(O)(OCで表されるような芳香族縮合リン酸エステル;イソシアヌル酸エチレングリコール変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレングリコール変性ジアクリレートなどが挙げられる。この中で、ドライフィルム化時の反り及び硬化体の難燃性の観点から、メタクリル基含有化合物及びイソシアヌル酸エチレングリコール変性ジアクリレートが好ましい。
【0076】
本発明に係る感光性樹脂組成物において可塑剤の添加量は、充分な可塑性を考慮すると、本発明のポリイミドの量を100重量%とした場合、30重量%以下が好ましい。また、硬化体の難燃性の観点から、20重量%以下がより好ましい。
【0077】
本発明に係る感光性樹脂組成物には、必要に応じてポリイミド及び感光剤及び/又は可塑剤が均一に溶解及び/又は分散し得る溶媒を含むことができる。溶媒としては、前述のポリイミド樹脂組成物に用いる溶媒を使用することができる。
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物は感光性フィルムに好適に用いることができる。感光性フィルムを製造するという観点からは、感光性樹脂組成物におけるポリイミドの濃度は、感光性フィルムの膜厚や膜厚の均一性、感光性樹脂組成物の粘度を考慮して、1重量%以上90重量%以下が好ましい。また、得られる感光性フィルムの膜厚の観点から、2重量%以上80重量%以下がより好ましい。
【0079】
次に、本発明に係る感光性フィルムの製造方法について説明する。
まず、本発明に係る感光性樹脂組成物を基材にコートする。前記基材としては、感光性フィルム形成の際に損傷しない基材であれば、限定されない。このような基材としては、シリコーンウエハ、ガラス、セラミック、耐熱性樹脂、キャリアフィルムなどが挙げられる。キャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムが挙げられる。取扱いの良さから、耐熱性樹脂及びキャリアフィルムが好ましく、基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0080】
コート方法としては、バーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などが例示できる。コート後、必要に応じてホットプレートなどによりプリベークと呼ばれる加熱処理を行っても良い。
【0081】
このように、本発明の感光性樹脂組成物で構成された感光性フィルムを用いる場合は、感光性樹脂組成物の溶液を任意の方法で任意の基材上に塗布後乾燥し、ドライフィルム化し、例えばキャリアフィルムと感光性フィルムとを有する積層フィルムとする。また、感光性フィルム上に、任意の防汚用や保護用のカバーフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしても良い。本発明に係る積層フィルムおいて、カバーフィルムとしては、低密度ポリエチレンなど感光性フィルムを保護するフィルムであれば限定されない。
【0082】
次いで、本発明の感光性フィルムを、配線を有する基材に前記配線を覆うように圧着し、アルカリ現像を行い、焼成を行うことによりプリント配線板を得ることができる。
【0083】
本発明に係るプリント配線板における配線を有する基材としては、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板などのような硬質基材、あるいはポリイミドフィルムなどのフレキシブルな基板などが挙げられる。この中で、折り曲げ可能の観点からフレキシブルな基板が好ましい。
【0084】
前記プリント配線板の形成方法においては、前記感光性フィルムが配線を覆うように基材に形成されれば、限定されない。このような形成方法としては、前記配線を有する基材の配線側に本発明の感光性フィルムを接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネートなどを行う方法などが挙げられる。この中で、配線間への感光性フィルムの埋め込みの観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。
【0085】
前記配線を有する基材上に感光性フィルムを積層する際の加熱温度は、感光性フィルムが基材に密着し得る温度であれば限定されない。基材への密着の観点や感光性フィルムの分解や副反応の観点から、30℃以上400℃以下が好ましく、より好ましくは、50℃以上150℃以下である。
【0086】
本発明に係る感光性フィルムは、光照射後、光照射部位をアルカリ現像にて溶解することにより、ポジ型のフォトリソグラフィーが可能である。この場合において、光照射に用いる光源は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザなどが挙げられる。この中で、高圧水銀灯、超高圧水銀灯が好ましい。
【0087】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、光照射部位を溶解し得る溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。現像性の観点から、炭酸ナトリウム水溶液および水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。
【0088】
次いで、本発明の感光性フィルムを圧着したプリント配線板を焼成することによりプリント配線板を形成する。焼成は、溶媒の除去の観点や副反応や分解などの観点から、30℃以上400℃以下の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、100℃以上300℃以下である。
【0089】
前記焼成における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。前記プリント配線板の製造において、前記焼成に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好適には1時間から8時間の範囲で実施される。
【0090】
本発明に係るポリイミドを含有する感光性樹脂組成物をドライフィルム化して得られる感光性フィルムは、反りが充分に抑制され、かつ現像性も良好であり、硬化体とした際に難燃性を示すことから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネルなどに使用されるプリント配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコーンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。
【0091】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(試薬)
実施例及び比較例において、用いた試薬である1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(和歌山精化社製)(以下DA5MGと略称する)、シリコーンジアミン(KF−8010)(信越化学工業社製)、MBAA(和歌山精化社製)、APB(三井化学社製)、ODPA(和光純薬工業社製)、化合物B、テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製、NKエステル4G)、トルエン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ−ブチロラクトン(和光純薬工業社製、特級)、ピリジン(和光純薬工業社製、有機合成用)、γ−バレロラクトン(和光純薬工業社製、一級)は、特別な精製を実施せずに、反応に用いた。
【0092】
(数平均分子量測定)
数平均分子量の測定法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、下記の条件により測定を行った。溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV−2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
また、前記分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作製した。
【0093】
(膜厚測定)
硬化体の膜厚測定は、膜厚計(Mitutoyo社製、ID−C112B)を用いて行った。
【0094】
(コート方法)
本発明に係る感光性樹脂組成物のコート方法は、FILMCOATER(TESTER SANGYO社製、PI1210)を用いるドクターブレード法とした。易剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、DIAFOIL、T100H25)又はカプトン(登録商標)フィルム(東レ・デュポン社製、100EN)に前記感光性樹脂組成物を滴下し、クリアランス200μmでコートを行った。コートした前記フィルムを、乾燥器(ESPEC社製、SPHH−10l)を用いて95℃で30分間乾燥することにより、感光性フィルムを得た。
【0095】
(硬化体製造方法)
硬化体の製造方法においては、前述の方法により前記感光性樹脂組成物をコートしたカプトン(登録商標)フィルムを、焼成炉(光洋リンドバーグ社製)を用いて焼成した。空気雰囲気下で、120℃で60分間、続いて200℃で60分間焼成することにより硬化体を得た。
【0096】
(Tg測定)
Tg測定は、TMA測定装置(TMA EXSTAR6000、SII社製)により行った。測定は、前述のコート方法によって易剥離PETフィルムに感光性樹脂組成物をコートし、95℃で30分間乾燥した後に、感光性フィルムをPETフィルムより剥離し、1cm×0.4cmに切り取り、TMAを測定することにより行った。引っ張り荷重は49.04mN、昇温速度は10℃/分で測定を行った。本発明において、前記測定方法にてTgが100℃未満であるものを、低Tgとする。
【0097】
(難燃性試験)
難燃性試験は以下の手順で行った。前述のコート方法によって、カプトン(登録商標)フィルムの片面に感光性樹脂組成物をコートし、95℃で30分間乾燥し、次いで反対の面に感光性樹脂組成物をコートし、95℃で30分間乾燥させることにより、カプトン(登録商標)フィルムの両面に感光性樹脂組成物をコートした後、前述の硬化体製造方法により硬化体を得た。この硬化体を20cm×5cmに切り取り、UL94 VTM試験により難燃性の評価を行った。
【0098】
(ラミネート条件)
ラミネートは、真空プレス機(名機製作所製)を用いて行った。プレス温度100℃、プレス圧1.23MPa、プレス時間5分間にて行った。
【0099】
(現像性評価)
現像性評価は、銅張積層板上に、感光性フィルム(カバーレイ層の厚さ約25μm)を用いて、上記のラミネート条件でラミネートした後に、ポジ型マスクを用いて照射量1.3J/cmにて露光を行い、次いで3%水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ現像処理と水によるリンスを行い、乾燥後にパターンを光学顕微鏡にて評価することにより行った。マスクには100μm径の円形パターン(間隔100μmピッチ)を用いた。現像により、露光部で銅面が現れており、かつ未露光部のカバーレイ層の膜厚が20μm以上の場合を○とし、それ以外の解像度が劣る場合や膜厚が20μm以下の場合を×とした。
【0100】
(反り評価)
反りの評価は、A4サイズの感光性フィルムを製造した際に、エッジ部分において5mmを上回って持ち上がる部分が無い場合を○とし、上回る部分が発生した場合を×とした。
【0101】
(密着性評価)
密着性評価は、JIS K 5600のクロスカット試験にて評価を行った。銅張積層板に感光性フィルムを用いて、前述のラミネート条件によりラミネートした後に、クロスカット試験を行った。剥離が生じているクロスカット部分が明確に5%を上回ることが無かった場合を○とし、5%を上回った場合を×とした。
【0102】
(真空埋め込み性評価)
銅製回路(50μmの銅ライン幅、ライン間隔は50μm、銅配線の厚み12μm)上に感光性フィルムを用いて、前述のラミネート条件によりラミネートした後に、得られた積層体をカットして断面を電子顕微鏡にて観察した。埋め込みに不十分なところが無く、カバーレイ層の表面の平坦性が良いものを○とした。埋め込みが不十分で空隙が観測された場合を×とした。
【0103】
(実施例1)
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、MBAA(29.97mmol)及びODPA(59.96mmol)、γ−ブチロラクトン(120mL)を入れ、室温で2時間撹拌した。続いて、トルエン(30mL)、ピリジン(34.13mmol)、γ−バレロラクトン(22.47mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、シリコーンジアミン(KF−8010、45.0mmol)及びDA5MG(14.98mmol)を加え、10分間撹拌した後に、ODPA(29.98mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。次いで、トルエン(10mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度30重量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミド(1)のγ−ブチロラクトン溶液を得た。数平均分子量及びx/(x+y+z)の値を下記表1に示す。
【0104】
このポリイミドについてNMR測定を行った。そのNMRスペクトルを図1に示す。なお、NMR測定は、Bruker Biospin Avance600を用い、重溶媒として重ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製)を使用して、重ジメチルホルムアミドの残存水素のピーク(2.91ppm)を基準として行った。重ジメチルホルムアミドは濃度8重量%とし、測定温度は40℃とし、積算回数は256回とした。その結果、DA5MGに由来するピークは、1.6−2.0ppm及び4.1ppmに観測された。
【0105】
次いで、ポリイミド(1)を、前述のコート方法にて易剥離PETフィルムにコートし、95℃で30分間乾燥させることにより得たポリイミドコート易剥離PETフィルムから、易剥離PETフィルムを剥がし、ポリイミドフィルムを得た。このフィルムを前述のTg測定方法にてTgを測定した。その結果を下記表3に示す。
【0106】
ポリイミド(1)100重量%に対して、化合物B20重量%及びテトラエチレングリコールジメタクリレート10重量%を混合し、ポジ型感光性樹脂組成物を調整した。感光性樹脂組成物の組成を下記表2に示す。前記ポジ型感光性樹脂組成物を、前述のコート方法にて易剥離PETフィルムにコートし、95℃で30分間乾燥させることにより、感光性フィルムを得た。反りは○であった。
【0107】
前記ポジ型感光性樹脂組成物を、前述のコート方法にてカプトン(登録商標)にコートし、95℃で30分間乾燥させ、続いて反対の面にコートし、95℃で30分間乾燥させることによって得たポジ型感光性樹脂組成物をコートしたカプトン(登録商標)を、焼成炉にて空気雰囲気下、120℃で60分間、続いて200℃で60分間焼成することにより、硬化体を得た。前記硬化体に対し、UL94 VTM試験による難燃性の評価を行った。その結果を下記表3に示した。
【0108】
上記の感光性フィルムを、銅製回路(50μmの銅ライン幅、ライン間隔は50μm、銅配線の厚み12μm)上に前述のラミネート条件によりラミネートを行った。得られた積層体をカットし、断面を電子顕微鏡にて観察したところ、空隙なく埋め込みができており、カバーレイ層の表面も平坦であった。
【0109】
上記の感光性フィルムを、銅張積層板上に前述のラミネート条件によりラミネートを行った。得られた積層体のPETフィルムを剥がし、クロスカット試験を行ったところ、剥がれはいずれのドライフィルムでも5%未満であり、良好な結果を示した。
【0110】
上記の感光性フィルムを、銅張積層板上に前述のラミネート条件によりラミネートを行った。得られた積層体を、ポジ型マスクを用いて照射量1.3J/cmにて露光を行い、続いて3%水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ現像処理と水によるリンスを行い、乾燥後にパターンを光学顕微鏡にて観察した。それぞれのドライフィルムで露光部で銅面が現れており、かつ未露光部のカバーレイ層の膜厚が20μm以上であった。
【0111】
(実施例2)
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、MBAA(29.97mmol)及びODPA(59.96mmol)、γ−ブチロラクトン(120mL)を入れ、室温で2時間撹拌した。続いて、トルエン(30mL)、ピリジン(34.13mmol)、γ−バレロラクトン(22.47mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、シリコーンジアミン(KF−8010、45.0mmol)及びDA5MG(5.99mmol)及びAPB(8.99mmol)を加え、10分間撹拌した後に、ODPA(29.98mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(10mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度30重量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、実施例(2)のγ−ブチロラクトン溶液を得た。
【0112】
前記ポリイミドを実施例1と同様の方法にてTg、反り、難燃性、埋め込み性、密着性、アルカリ現像性の評価を行った。その結果を下記表3に併記する。
【0113】
(比較例1)
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、MBAA(29.97mmol)及びODPA(59.96mmol)、γ−ブチロラクトン(120mL)を入れ、室温で2時間撹拌した。続いて、トルエン(30mL)、ピリジン(34.13mmol)、γ−バレロラクトン(22.47mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、シリコーンジアミン(KF−8010、45.0mmol)及びAPB(14.98mmol)を加え、10分間撹拌した後に、ODPA(29.98mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(10mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度30重量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、比較例(1)のγ−ブチロラクトン溶液を得た。
【0114】
前記ポリイミドを実施例1と同様の方法にてTg、反り、難燃性、埋め込み性、密着性、アルカリ現像性の評価を行った。その結果を下記表3に併記する。
【0115】
(比較例2)
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、APB(10.0mmol)及びODPA(20.0mmol)、γ−ブチロラクトン(40mL)を入れ、室温で2時間撹拌した。続いて、トルエン(20mL)、ピリジン(11.38mmol)、γ−バレロラクトン(7.49mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、シリコーンジアミン(KF−8010、15.0mmol)及びDA5MG(5.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、ODPA(10.0mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(5mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度30重量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、比較例(2)のγ−ブチロラクトン溶液を得た。
【0116】
前記ポリイミドを実施例1と同様の方法にてTg、反り、難燃性、埋め込み性、密着性、アルカリ現像性の評価を行った。その結果を下記表3に併記する。
【0117】
(比較例3)
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、MBAA(10.0mmol)及びODPA(20.0mmol)、γ−ブチロラクトン(40mL)を入れ、室温で2時間撹拌した。続いて、トルエン(20mL)、ピリジン(11.38mmol)、γ−バレロラクトン(7.49mmol)を加え、ディーンシュタルク装置および還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、APB(15.0mmol)及びDA5MG(5.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、ODPA(10.0mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(5mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度30重量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、比較例(3)のγ−ブチロラクトン溶液を得た。
【0118】
前記ポリイミドについて、実施例1と同様の方法にてTg、反り、難燃性、埋め込み性、密着性、アルカリ現像性の評価を行った。その結果を下記表3に併記する。
【0119】
【表1】

【表2】

【表3】

【0120】
表3の実施例1、実施例2と比較例1との比較から、ジアミンとしてDA5MGを用いた場合は、一般的なジアミンであるAPBのみを用いた場合と比較してTgが低下していることがわかる。また、難燃性については、実施例1、実施例2のポリイミドを用いた感光性樹脂組成物を硬化させた硬化体は、ポリイミドに1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカンが用いられているので、VTM−0と難燃性を示すのに対して、比較例1のポリイミドを用いた感光性樹脂組成物を硬化させた硬化体は、ポリイミドに1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカンが用いられていないので、難燃性を示さないことがわかる。
【0121】
また、実施例1、実施例2の感光性樹脂組成物から構成される感光性フィルムは、ポリイミドにアルカリ溶解性官能基を含有しているので、アルカリ現像性を示すのに対して、比較例2の感光性樹脂組成物から構成される感光性フィルムは、ポリイミドにアルカリ溶解性官能基を有するジアミンを含有していないので、アルカリ現像性を示さないことがわかる。
【0122】
また、実施例1、実施例2の感光性樹脂組成物から構成される感光性フィルムは、ポリイミドにモノマーとしてシリコーンジアミンが用いられているので、反りもなく、ラミネート後の密着性、埋め込み性ともに良好であるのに対し、比較例3の感光性樹脂組成物から構成される感光性フィルムは、ポリイミドにモノマーとしてシリコーンジアミンが用いられていないので、Tgが高く、反り、密着性、埋め込み性が悪いことがわかる。
【0123】
以上のことから、本発明のポリイミドを含有するポジ型感光性樹脂組成物から構成されるフィルムは、低Tgを示し、反りもなく、ラミネート後の密着性、埋め込み性、現像性ともに良好であり、かつ硬化後に難燃性を有することがわかる。
【0124】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態における寸法、材質などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明におけるポリイミドを含む感光性樹脂組成物は、感光性フィルムとして反りが充分に抑制され、かつ現像性も良好であり、硬化体とした際に難燃性を示すことから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネルなどに使用されるプリント配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコーンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】実施例1における本発明に係るポリイミドのNMRスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)の構造を有することを特徴とするポリイミド。
【化1】

(式中、R、R、Rは4価の有機基を表し、同じであっても異なっていても良い。Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。Rはアルカリ溶解性官能基を少なくとも一つ以上有する2価の有機基を表す。aは3以上20以下の整数を表す。bは1以上10以下の整数を表す。cは1以上20以下の整数を表す。x+y+z=100かつ0.001≦x/(x+y+z)≦0.9、0<y<99.999、0<z<99.999である。)
【請求項2】
前記アルカリ溶解性官能基が、カルボキシル基又は芳香族性水酸基であることを特徴とする請求項1記載のポリイミド。
【請求項3】
一般式(1)におけるaが3以上10以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のポリイミド。
【請求項4】
(A)請求項1から請求項3のいずれかに記載のポリイミドと、(B)感光剤と、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(C)可塑剤を含有することを特徴とする請求項4記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記可塑剤が、(A)成分100重量%に対して30重量%以下であることを特徴とする請求項5記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成されることを特徴とする感光性フィルム。
【請求項8】
キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた請求項7記載の感光性フィルムと、を具備することを特徴とする積層フィルム。
【請求項9】
前記感光性フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することを特徴とする請求項8記載の積層フィルム。
【請求項10】
配線を有する基材と、前記配線を覆うように前記基材上に形成され、請求項7から請求項9のいずれかに記載の感光性フィルム又は積層フィルムから構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2008−156425(P2008−156425A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344930(P2006−344930)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】