ポリ乳酸系組成物、その組成物からなる成形品
【課題】
本発明は、特定の熱特性、ガスバリア性を有するポリ乳酸系組成物を提供し、さらに、表面平滑性、透明性、耐熱性、靭性に優れたポリ乳酸系延伸フィルム及びその他成形品を成すPLLAとPDLAとのポリ乳酸系組成物を得ることを目的とする。
【解決手段】
DSC測定において250℃で10分経過した後、降温(cooling)(10℃/分)時のピークが30mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物であって、さらに好ましくはDSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=150〜180℃のピーク(ピーク1)とTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5以下であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
なし
本発明は、特定の熱特性、ガスバリア性を有するポリ乳酸系組成物を提供し、さらに、表面平滑性、透明性、耐熱性、靭性に優れたポリ乳酸系延伸フィルム及びその他成形品を成すPLLAとPDLAとのポリ乳酸系組成物を得ることを目的とする。
【解決手段】
DSC測定において250℃で10分経過した後、降温(cooling)(10℃/分)時のピークが30mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物であって、さらに好ましくはDSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=150〜180℃のピーク(ピーク1)とTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5以下であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
なし
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の熱特性を有するポリ乳酸系組成物に関する。さらに、本発明はポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との組成物からなる組成物に関し、その組成物からなる耐熱性、ガスバリア性、靭性、表面平滑性に優れた延伸フィルム等のフィルム、インジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出成形その他成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解可能なプラスチックとして、汎用性の高い脂肪族ポリエステルが注目されており、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリカプロラクトン(PCL)などが上市されている。
これら生分解性脂肪族ポリエステルの用途の一つとして包装用、農業用、食品用などのフィルム分野があり、用途に応じた高強度、耐熱性、ガスバリア性および生分解性が基本性能として要求されている。
上記脂肪族ポリエステルのうちPLAは、ポリ−L−乳酸(PLLA)やポリ−D−乳酸(PDLA)からなり、その単独結晶(α晶)の融点は約170℃であり、ポリエチレンテレフタレート等と比較すると耐熱性が不十分な場合もあり、その改良が求められている。
一方、PLAの耐熱性を更に改良する方法として、ポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−D−乳酸(PDLA)とをブレンドしてステレオコンプレックスを形成させる方法が多数提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4、非特許文献1)。
このステレオコンプレックス(SC)は、ポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−D−乳酸(PDLA)の共晶であり、その結晶の融点はα晶よりも約50℃高く、それを利用することが期待されている。
しかしながら、PLLAとPDLAを単に溶融混練して得た組成物をフィルムに成形しても容易にステレオコンプレックスは形成されず、また、形成されたフィルムは、耐熱性は改良されるものの、脆く、包装用フィルム等として使い難い。
そこでPLLAとPDLAを溶融混練して得た組成物を特定の条件下で少なくとも一軸方向に延伸することにより耐熱性、靭性に優れた延伸フィルムが得られることを発明者らは提案した(特願2004−146239号)。
この延伸フィルムは広角X線回折による回折ピーク(2θ)が16°近辺〔以下、かかる領域に検出されるピークを(PPL)と呼ぶ場合がある。〕にあり、且つ12°近辺、21°近辺及び24°近辺の回折ピーク(2θ)〔以下、かかる領域に検出されるピークを併せて(PSC)と呼ぶ場合がある。〕の総面積(SSC)が、16°近辺の回折ピーク(PPL)の面積(SPL)と(SSC)との合計量に対して10%未満の延伸フィルムである。
そのため延伸フィルム中のSC晶はPLLA及びPDLA単体の結晶に比べ稀少である。
更に本発明者らはかかる延伸フィルムに特定の熱処理を行い、広角X線回折による主たる回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺にあり、主にSC晶からなる延伸フィルムの製造方法を提案した(特願2004−146240号)。
またポリ乳酸系二軸延伸フィルムのガスバリア性を改善する方法として無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物の層をもうける方法が提案されている(特許文献5)。しかしかかる蒸着等方法は行程が複雑なため費用がかかり、また蒸着膜は非常に薄いものなのでバリア性能の管理等に課題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−207041号公報
【特許文献2】特開平8−198955号公報
【特許文献3】特開平9−25400号公報
【特許文献4】特開2000−17164号公報
【特許文献5】特開平10−24518号公報
【非特許文献1】Macromoleculs,20,904(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特定の熱特性を有するポリ乳酸系組成物に関し、さらに、本発明は、表面平滑性、透明性、耐熱性、バリア性能、靭性に優れた延伸フィルム等のフィルム、インジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出成形その他の成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討した結果、ポリ−L−乳酸(PLLA)とPDLAとを特定の条件下で溶融混練することにより得られるポリ乳酸系組成物が結晶化の過程でステレオコンプレックス構造を選択的に作りやすく、その組成物からなる延伸フィルム等のフィルム、インジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出成形品が表面平滑性、透明性に優れ、かつ耐熱性、ガスバリア性能、靭性に優れていることを見出し本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明はDSC測定において250℃で10分経過後の降温(cooling)時(10℃/分)のピークが30mJ/mg,好ましくは45mJ/mg以上、特に好ましくは50mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物に関する。
さらに、本発明の好適な組成物は、DSCの第二回昇温時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=150〜180℃のピーク(ピーク1)とTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5以下、好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。
また、本発明はDSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)が35mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物である。
これらの乳酸系組成物は、またポリ−L−乳酸を25〜75重量部、好ましくは35〜65重量部、特に好ましくは45〜55重量部及びポリ−D−乳酸75〜25重量部、好ましく65〜35重量部、特に好ましくは55〜45重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部とする)から構成されていること、すなわち調製されていることが好適である。
このような組成物は、例えば、ポリ−L−乳酸25〜75重量部、好ましくは35〜65重量部う、特に好ましくは45〜55重量部及びポリ−D−乳酸75〜25重量部、好ましく65〜35重量部、特に好ましくは55〜45重量部とのポリ乳酸系組成物を230〜260℃で混練することにより、好ましくは二軸押出機により溶融混練エネルギーを与えることにより得ることができる。溶融混練の時間はブラベンダーのようなバッチ式の低剪断の混練機では、通常10分以上、好ましくは15分以上であり、長くとも60分以下、好ましくは40分以下である。また、二軸押出機などの高剪断の機器を用いる場合は、一般に2分以上、特に4分以上であり、長くとも15分以下が通常である。
本発明の混練においては、原料を十分に乾燥し、また窒素シール等を行った条件で、得られる組成物の重量平均分子量が、利用するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のそれぞれの重量平均分子量を加重平均して得られる重量平均分子量の数値の0.3〜0.6倍、さらに好ましくは0.4〜0.6倍の範囲となるように負荷を与えて、溶融混練することが望ましい。これにより得られる組成物ではポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が極めて微細に融合している状態となる。
【0007】
また、本発明は、当該組成物からなる成形品に関し、インジェクション(射出)、ブロー(吹き込み)、押出成形、真空成形、圧空成形また紡糸された種々の成形品に関する。
中でも、少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム、更に140〜220℃で1秒以上熱処理して得られ表面平滑性、透明性、耐熱性、ガスバリア性、靭性に優れることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は特定の熱特性を有している。これは、ステレオコンプレックス構造物を有しているものと考えられ、本発明ではこの構造を選択的に形成することができる。さらに、本組成物によれば、耐熱性及びガスバリア性、靭性に優れ、更に表面平滑性、透明性に優れたポリ乳酸系の延伸フィルムなどの種々の成形品が得られる。
本発明の組成物によれば、非晶状態から結晶化する際にステレオコンプレックス構造物を選択的に形成するものと考えられ、耐熱性に優れ、更に結晶化の処理が容易な種々の成形品を得ることができる。
本発明によれば、比較的高分子量であり成形品として十分な強度があり、かつ高い融点を持ち耐熱性のある成形品となる生分解性のポリマーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ポリ−L−乳酸
本発明においてポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性、ガスバリア性、その他成形品の耐熱性が劣る虞がある。
PLLAの分子量は後述のポリ−D−乳酸と混合したポリ乳酸系組成物がフィルムなどの形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜100万の範囲にある。本発明では、重量平均分子量が6千〜50万のポリ−L乳酸が好適である。なお、フィルム分野では、重量平均分子量が6万未満のものは得られる延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、100万を越えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣る虞がある。
【0010】
ポリ−D−乳酸
本発明においてポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られる延伸フィルム、その他成形品の耐熱性が劣る虞がある。
PDLAの分子量は前述のPLLAと混合したポリ乳酸系組成物がフィルム形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜100万の範囲にある。本発明では、重量平均分子量が6千〜50万のポリ−D乳酸が好適である。なお、フィルム分野では、重量平均分子量が6万未満のものは得られる延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、100万を越えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣る虞がある。
【0011】
本発明においてPLLA及びPDLAには、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
【0012】
ポリ乳酸系組成物
本発明のポリ乳酸系組成物は、DSC測定において250℃で10分経過後の降温(cooling)時(10℃/分)のピークが30mJ/mg以上、好ましくは45mJ/mg以上、特に好ましくは50mJ/mg以上であることを特徴とする。
さらに、本発明の好適な組成物は、そのDSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=150〜180℃のピーク(ピーク1)とTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5以下、好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下であるという熱特性を有することが望ましい。これは、この組成物がステレオコンプレックス晶を選択的に形成しているためと考えられる。
ピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5より大きいと、結晶化後にPLLA、PDLA単体結晶の形成量が大きく、上記混練が十分でない虞がある。
またピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5より大きい組成物からなる成形品は結晶化後のα晶(PLLAあるいはPDLAの単独結晶)の形成量が大きいため、耐熱性に劣る虞がある。
また、本発明はDSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)が35mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物である。
このようなポリ乳酸系組成物は、前記PLLAを25〜75重量部、好ましくは35〜65重量部、特に好ましくは45〜55重量部、その中でも好ましくは47〜53重量部及びPDLAを75〜25重量部、好ましくは65〜35重量部、特に好ましくは55〜45重量部、その中でも好ましくは53〜47重量部(PLLA+PDLA=100重量部)から構成されている、即ち調製されていることが好ましい。
これらの組成物は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の重量平均分子量が、いずれも6,000〜500,000の範囲内であり、かつ、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方の重量平均分子量が30,000〜500,000であるポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸から混練により調製することが望ましい。
また、本発明のポリ乳酸系組成物は、例えば、これらPLLAとPDLAを、230〜260℃で二軸押出機、二軸混練機、バンバリーミキサー、プラストミルなどで溶融混練することにより得ることができる。
PLLAの量が75〜25重量部、特に65〜35重量部、その中でも特に55重量部を超える組成物及び45重量部未満の組成物は上述の方法で混練しても、得られる組成物の耐熱性が十分でない場合がある。得られる組成物からなる成形品がα晶の結晶体を含み、耐熱性が不十分となるおそれがある。ステレオコンプレックス構造はPLLAとPDLAの等量から構成されるためあると考えられる。
一方、PLLAとPDLAを溶融混練するときの温度は好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
また、本発明のポリ乳酸系組成物を調製する際に、PLLAとPDLAを十分に溶融混練することが望ましい。
本発明に係る組成物は、ステレオコンプレックスの結晶化が早く、かつステレオコンプレックス結晶化可能領域も大きいので、PLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いと考えられる。
更に本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCによる250℃で10分経過後の降温(cooling)時での測定(10℃/分)において結晶化によるピークが、30mJ/mg以上、好ましくは45mJ/mg以上、特に好ましくは50mJ/mg以上であり、ポリ乳酸系組成物の結晶化が速やかに起こる。
また結晶化によるピークが30mJ/mgより小さいと結晶化速度が小さく、上記混練が十分でない虞がある。
さらにDSCの250℃で10分経過後の降温(cooling)時での測定(10℃/分)において結晶化によるピークが30mJ/mgより小さい、さらには成形品の分野によっては45mJ/mgより小さい組成物からなる成形品は結晶化速度が小さく、成形品の結晶化後の結晶体の形成量が小さいため、耐熱性に劣る虞がある。
本発明のDSC測定は、昇温および降温速度10℃/分で行う。なお、一般には昇温および降温速度が遅くなるほど結晶化熱量(測定値)は大きくなる。例えば、実施例17aの1st cooling 61.7J/g(降温速度10℃/分)の試料は、降温速度5℃/分の測定では、70.6J/gであった。DSCによる結晶化熱量(測定値)を比較する場合は、その昇温、降温速度が同一の場合の測定値を比較しなければならない。
本発明のポリ乳酸系の組成物の重量平均分子量は特に限定されるものではない、しかしながら、本発明の組成物の重量平均分子量は10,000〜300,000の範囲にあることが好ましい。また、フィルム分野では重量平均分子量が100,000〜150,000の範囲にあることが望ましい。上記範囲を高分子側に外れるとステレオコンプレックス化が十分でなく耐熱性が得られない虞があり、また低分子側に外れると得られるフィルムの強度が十分でない虞がある。
また、本発明の組成物を調製する方法として、得られる組成物の重量平均分子量が、利用するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の重量平均分子量を加重平均して得られる重量平均分子量の数値の0.3〜0.6倍、特に好ましくは0.4〜0.6倍の範囲となるように、溶融混練して調製する方法が好ましい。 本発明により得られる組成物では、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が極めて微細に融合している状態にある。例えば、ポリ−D−乳酸の重量平均分子量がポリ−L−乳酸の重量平均分子量より大きい場合、中でも重量平均分子量が150,000〜200,000のポリ−L−乳酸および重量平均分子量が200,000〜350,000のポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸=45/55〜55/45の重量比で用いる場合のように、これらを混練により、特に望ましくは二軸押出機または二軸混練機を用いた混練により得られる組成物は、以下に示すようにポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が微細に融合した状態である
即ち、当該組成物を240〜260℃でプレス後0〜30℃で急冷して得られるプレスシートを用いて、ポリ−L−乳酸を分解する酵素を利用して、ポリ−L−乳酸を分解して除去した48日後のプレスシートを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察すると、微細な孔が形成されており、直径5μm以上の孔は観測されないことを特徴とする。このような微細な孔は通常直径0.1〜3μm程度であり、5μm×5μm当たり20〜200個有していることからそれが明らかである。これは、ポリ−L−乳酸単体からなる部分が無いか、またあるとしても極めて少ないため、酵素による分解除去が起きにくいためである。
ポリ乳酸用結晶核剤
また上述のように本発明に係わるポリ乳酸系組成物は結晶化促進性に優れ、ポリ乳酸系ポリマーの結晶核剤としての機能を有する。従って、本発明のポリ乳酸系組成物からなるポリ乳酸用結晶核剤を1〜90重量部およびポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸99〜10重量部を溶融混練してなる組成物は、結晶化が促進されるため、各種成形品の原料として好適である。ポリ乳酸系組成物からなるポリ乳酸用結晶核剤の量が1重量部未満では結晶核剤としての機能が不十分である虞がある。
また本発明に係わるポリ乳酸系組成物を結晶化核剤として用いる場合は、予め上記条件でポリ乳酸系組成物1〜90重量部を製造して後にポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸99〜10重量部と溶融混練しても良い。
【0013】
ポリ乳酸系延伸フィルム
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ乳酸系組成物からなり、熱処理後の広角X線回折による回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺(SSC)にあり、且つ回折ピークの面積(SSC)が16°近辺の回折ピークの面積(SPL)との合計量(総面積)に対して90%以上({SSC/(SSC +SPL)}×100)である。かかる広角X線回折における16°近辺のピーク(PPL)はPLLA及びPDLAの結晶に基づくピークであり、12°近辺、21°近辺及び24°近辺のピークはPLLAとPDLAとが共結晶した所謂ステレオコンプレックスの結晶に基づくピーク(PSC)である。
即ち、PLLAとPDLAとが均一に溶融混練されたポリ乳酸系組成物からなる延伸フィルムであるため、ポリ乳酸の結晶(α晶)が形成されていないか、形成されたとしても少量であり、ほとんどはステレオコンプレックス構造を形成しているものと考えられる。
本発明のポリ乳酸系組成物はPLLAとPDLAを十分に溶融混練し均一な構成になっているので、得られる延伸フィルムは表面平滑性、透明性に優れ、また加熱時の伸縮挙動も一定し、融点が230℃近傍のステレオコンプレックス構造の特性を活かし、優れた耐熱性を有している。
即ち、熱機械分析による熱変形試験で200℃での変形が10%以下であり、当然200℃において溶融しない。
またPLLA及びPDLAの結晶(α晶)の融解を経ずにステレオコンプレックス構造になるため熱処理後も配向した状態を保ち延伸方向の伸びが10%以上、延伸方向の破断エネルギーが0.1mJ以上と靭性の優れたフィルムである。
なお、本発明において広角X線回折による回折ピーク(2θ)はX線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200)を用いて、シート若しくはフィルムにX線ターゲットとしてCu K―α、出力:1/40kV×40mAで照射し、回転角:4.0°/分、ステップ:0.02°、走査範囲:10〜30°で測定して検出される回折ピークの角度(°)である。
また、夫々の回折ピーク面積は、(SPL)は16°近辺の回折ピーク(2θ)、(SSC)は12°、21°及び24°近辺の回折ピーク(2θ)各々の面積をチャート紙から切り出し、その重量を測定することにより算出した。
但し空気中のX線散乱による面積部分は削除して求めた。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、好ましくは熱機械分析による熱変形試験で200℃での変形が10%以下である。
本発明における熱変形試験は、熱分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 熱・応用・歪測定装置 TMA/SS120)を用いてフィルムから幅4mmの試験片を切り出し、チャック間10mmで試験片に荷重0.25MPaをかけ、30℃(開始温度)から5℃/分で昇温し、各温度における試験片の変形(伸びまたは収縮)を測定した。変形は、試験片の変形率で表示した。変形率(%)は、変形量(伸び方向)/チャック間距離×100(%)で算出した。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、延伸方向における伸び(引張り破断点伸び)が好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、また、延伸方向における破断エネルギーが好ましくは0.1mJ以上、より好ましくは0.2mJ以上である。
本発明における破断エネルギー(mJ)は、引張り試験機(オリエンテック社製、テンシロン万能試験機 RTC―1225)を用いて、長さ:50mm、幅:15mmの試験片をチャック間距離20mmで、引張り速度300mm/分で測定して得た引張応力―ひずみ曲線図から、引張応力―ひずみ曲線と横軸(ひずみ)で囲まれた面積を切り取り、その重量(W−1)を測定した。
次いで、引張強さ(MPa)と伸び(%)で囲まれた面積を切り取りその重量(W−2)を測定し、(W−1)と(W−2)の比から破断エネルギー(mJ)を求めた。なお、破断エネルギー(mJ)を求めるために、伸び(%)を破壊に要した距離(mm)に換算した。
【0014】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、さらに好ましくは3〜6倍延伸されてなる。延伸倍率は2倍未満の延伸フィルムは耐熱性が改良されない虞がある。一方、延伸倍率に上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、さらに好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸されてなる。一方向の延伸倍率が2倍未満の二軸延伸フィルムは耐熱性が改良されない虞がある。一方、延伸倍率に上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、7倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの厚さは用途により種々決め得るが、通常5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲にある。
【0015】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは種々用途により、他の基材と積層してもよい。他の基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の生分解性ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、若しくはガラス、金属、アルミニューム箔、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂からなるフィルムは無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。
例えば、 本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面にシリコーン樹脂層が積層されてなる多層フィルムは、離型フィルムなどの用途に好適である。このような多層フィルムは、厚さ1〜300μmのポリ乳酸系延伸フィルム、厚さ0.1〜5μmの硬化樹脂層および厚さ0.01〜5μmのシリコーン樹脂層からなる。
【0016】
ポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法は、前記ポリ乳酸系組成物からなるシートを、通常50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で一方向に2倍以上、好ましくは3〜12倍に延伸して得られる延伸フィルムを通常140〜220℃、好ましくは150〜200℃で、1秒以上、好ましくは3秒〜60秒、より好ましくは3〜20秒熱処理してポリ乳酸系延伸フィルムとする方法である。
延伸倍率が2倍未満では、耐熱性に優れた延伸フィルムが得られない虞があり、一方、延伸倍率の上限は特に限定はされないが、12倍を超えると安定して延伸できない虞がある。延伸温度が50℃未満では、安定して延伸できない虞があり、また、得られる延伸フィルムの透明性、平滑性が劣る虞がある。
一方、110℃を超えるとフィルムが加熱ロールに付着し、フィルム表面が汚れ、また安定して延伸ができない虞があり、得られる延伸フィルムの靭性が劣る虞がある。熱処理時間が1秒未満では延伸フィルムに熱が伝わらず、熱処理の効果が発現されない虞がある。
また、予熱時間は長くても問題はないが、工程上60秒以下が好ましい。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルム製造方法の他の態様は、前記ポリ乳酸系組成物からなるシートを、通常50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、さらに好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸して得られる延伸フィルムを、通常140〜220℃、好ましくは150〜200℃で、1秒以上、好ましくは3秒〜60秒、より好ましくは3〜20秒熱処理してポリ乳酸系延伸フィルムとする方法である。
熱処理時間が1秒未満では延伸フィルムに熱が伝わらず、熱処理の効果が発現されない虞がある。また、予熱時間は長くても問題はないが、工程上60秒以下が好ましい。二軸延伸は、同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でもよい。
更に好ましく効率的な製造プロセスは、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を配合し、二軸押出機の先端にギヤポンプを経て/若しくは経ずにTダイより押し出し、チルロールで急冷することでシートを成形し、倍率3×3〜5×5に連続して延伸するものである。
【0017】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの製造にあたっては、前記ポリ乳酸系組成物からなり、広角X線回折による回折ピークが12°近辺、21°近辺及び24°近辺には検出されない〔(PSC)が検出されない〕原料シート或いはフィルムを用いることが好ましい。
広角X線回折による回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺に検出されるシート、即ちステレオコンプレックスが形成されたシートを用いた場合は、その形成量にもよるが、得られる延伸フィルムの透明性が劣り、又、靭性にも劣る虞がある。
ポリ乳酸系組成物からなるシートあるいはフィルムを広角X線回折による回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺には検出されない〔(PSC)が検出されない〕状態にする方法としては、例えば、前記のポリ乳酸系組成物をステレオコンプレックスの融点である220℃以上、好ましくは230〜260℃の範囲で溶融した後、5〜30℃で急冷してシートあるいはフィルムとする方法を採ることにより、ステレオコンプレックスの形成を抑えることができる。
本発明二軸延伸フィルムの製造方法としては、重量平均分子量が150,000〜200,000のポリ−L−乳酸及び重量平均分子量が200,000〜350,000のポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸=45/55〜55/45の重量比で用い、押出温度245〜255℃の二軸押出機の先端にギヤポンプを経て/若しくは経ずにTダイより押出し、0〜30℃のチルロールで急冷することによりシートを成形し、次いで、延伸温度50〜80℃で少なくとも2倍以上に逐次二軸または同時二軸により延伸することが望ましい。
その他の成形品
本発明のポリ乳酸系組成物はインジェクション(射出)、ブロー(吹き込み)、押出成形、真空成形、圧空成形、1.1〜1.5倍に弱延伸した後の真空成形、圧空成形および種々の成形方法により種々の成形品として用いられる。
射出成形には、一般に採用される射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト成形法を採用でされる。さらに、二色成形、インモールド成形、ガスプレス成形を利用することもできる。また、シリンダー内の樹脂温度は結晶化および熱分解を避けるため200℃を越えることが望ましく、200℃〜250℃とすることが通常である。
中でも、本発明では、シリンダー先端部分の温度が少なくとも1ゾーン以上が、200〜240℃中でも210〜220℃であることが望ましく、またホッパー側(供給側)のゾーンが230〜250℃である射出成形機を用いることが望ましい。なお、一旦融解された本発明の組成物をステレオコンプレックス構造ポリ乳酸の融点近傍で射出することが望ましい。
さらに、金型温度を100〜160℃とし、型内での保持時間を10秒〜3分とすることにより、結晶化を促進させることができるので、望ましい。
インジェクション成形品には、熱処理を施し結晶化させてもよい。このように成形品を結晶化させることにより、成形品の耐熱性をさらに向上させることができる。結晶化処理は、成形時の金型内、及び/又は、金型から取り出した後に行うことができる。生産性の面からは、射出成形品を形成する樹脂組成物の結晶化速度が遅い場合には、金型から取り出した後に結晶化処理を行うことが好ましく、一方、結晶化速度が速い場合には、金型内で結晶化処理を行ってもよい。
金型から成形品を取り出した後に結晶化処理を行う場合、熱処理の温度は60〜180℃の範囲であることが好ましい。熱処理温度が60℃未満では、成形工程において結晶化が進行しないことがあり、180℃より高いと、成形品を冷却する際に変形や収縮が生じることがある。加熱時間は射出成形品を構成する樹脂の組成、及び熱処理温度によって適宜決められるが、例えば、熱処理温度が70℃の場合には15分〜5時間熱処理を行う。また、熱処理温度が130℃の場合には10秒〜30分間熱処理を行う。
これらのインジェクション成形品の中でも、透明性が3mm厚さで全光線透過率(TT)が60%以上であることが容器等に利用される場合に、内容物が透視できるので望ましい。
また、真空/圧空成形の際に、シートを成形型に接触させる方法としては、得られる容器の品位が高い、生産効率が高い等の理由から、真空成形法、圧空成形法およびプレス成形法などが好ましい。
真空成形においては、プラスチック成形用の汎用成形機を良好に使用可能であり、熱板または熱風を用いてシートをシート作製時にシート表面温度を110〜150℃に予熱して、キャビティ温度100〜150℃でキャビティに密着させることが好ましい。キャビティには、多数の細孔を設けてキャビティ内を減圧することで成形を行い、型の再現性の良好な容器を得ることができる。
また、真空成形法において、プラグと称する押し込み装置を備えて用いることにより、シートの局所的な引き延ばしによる薄肉化を防止することができる。
圧空成形においても、プラスチック成形用の汎用成形機を良好に使用可能であり、熱板によるシートの可塑化後、熱板全体に設けられた多数の細孔からシート表面に空気圧を作用することで、シートの押し込み成形を行い、型の再現性の良好な成形品を得ることができる。
このようにして得られた真空/圧空成形品の中でも、熱湯(98℃)によっても変形しない耐熱性に優れた成形品が望ましい。
これらの射出成形品、ブロー成形品、真空/圧空成形品、押出成形品は、電気電子用品の部品、外装品、自動車の内装品、産業用、食品用の種々の包装用途にシート、フィルム、糸、テープ、織布、不織布、発泡成形品等の種々の成形品とすることができる。さらに紡糸には複合紡糸、スパンバンド法紡糸など従来公知の種々の紡糸方法がある。
本発明の成形品、例えばフィルム等には、必要に応じて他の材料を積層することも行われる。例えば、ポリオレフィンや他の生分解性プラスチックの層、無機物薄膜層などがある。
中でも、アクリル酸などの不飽和カルボン酸やその誘導体のポリマーや無機物薄膜層を設けてガスバリア性に優れた積層体を設けることも行われる。不飽和カルボン酸およびその誘導体からなるポリマー アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸やその金属塩、例えば、ストロンチウム、マグネシウム、亜鉛などの金属塩を重合して得られるポリマーや、それらのモノマーがポリビニルアルコールなどのポリマーの存在下に重合させて得られる耐ガスバリア性の層がある。
無機物薄膜層
無機物薄膜層には、金属または金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等の無機物を、フィルム上に薄い被膜を形成させたものがあり、その被膜がフィルムに対してガスバリア性を付与することができるものであれば、特に制限されるものではない。金属の具体例としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、銅、金、白金等を挙げることができ、金属酸化物の具体例としては酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることができる。
金属または金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物の具体的な材料を選択するに当たり、積層フィルム求められる物性や両層間の密着性を総合的に判断して行う。例えば、高いガスバリア性目的にする時には、アルミニウムが適切である。しかし、同時に高い透明性をも要求される場合には、無機酸化物、特に酸化珪素や酸化アルミニウムが好都合である。さらに、フィルム基材層との密着性を上げるために各種接着剤をアンカーコートすることができる。
また珪素酸化物はSiOやSiO2で表される化合物だけでなく、組成式SiOX(Xは1.0〜2.0)で表される組成物であってもよい。例えば、SiOとSiO2との1:1の組成物を使用することができる。これらの無機薄膜は、蒸着、スパッタリング、Cat−CVDなどの従来公知の種々の方法で形成することができる。
本発明のフィルムに、上記のようなガスバリア性層を積層した積層フィルムは、種々の用途に用いることができる。例えば、乾燥食品、水物。ボイル・レトルト食品、サプリメント食品等の包装材料、シャンプー、洗剤、入浴剤、芳香剤などのトイレタリー製品の包装材、粉体、顆粒体、錠剤などの医薬品の包装材、輸液バッグをはじめとする液体の医薬品の包装材、医療用具の包装袋、ハードディスク、配線基盤、プリント基盤などの電子部品の包装材、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機・有機ELディスプレイ、電子ペーパー等のバリア層の材料、その他の電子材料用のバリア材、真空断熱材用のバリア材、インクカートリッジ用等の工業製品の包装材、太陽電池、燃料電池用のバリア材、バックシートとして利用される。
【実施例】
【0018】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例で使用したポリ乳酸は次の通りである。
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA―1):
D体量:1.9% Mw:183000(222000)(g/モル)、Tm:162.9℃及びTg:58.1℃。
(ロ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―1):
D体量:100.0% Mw:323000(404000)(g/モル)、Tm:178.4℃及びTg:59.2℃
(ハ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―2):
D体量:100.0% Mw:223000(298000)(g/モル)、Tm:176.0℃及びTg:58.2℃
【0019】
本発明における測定方法は以下のとおりである。
(1−1)重量平均分子量(Mw)
下記の測定は一般的な高分子の分子量測定方法であり、この測定結果はカッコ書きで示した。
試料20mgに、GPC溶離液10mlを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm―PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC―25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置 Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置 データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器 示差屈折検出器(RI)
カラム Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度 40℃
溶離液 クロロホルム
流 速 1.0ml/分
注入量 200μL
分子量校正 単分散ポリスチレン
(1−2)重量平均分子量(Mw)
下記の測定は特にポリ乳酸ステレオコンプレックス構造物の測定に適しており、この測定結果はカッコ書きなしで示した。
試料20mgを移動相に溶解し(濃度0.5%)、0.45μmの親水性PTFEフィルター(Millex−LH;日本ミリポア)でろ過し、GPC試料溶液とした。
カラム:PL HFIPgel(300×7.5mm) 2本(Polymer laboratories)
カラム温度:40℃
移動相:HFIP+5mM TFANa
流量:1.0ml/分
検出:RI
注入量:50μL
測定装置:510高圧ポンプ、U6K注水装置、410示差屈折計(日本ウオーターズ)
分子量校正:単分散PMMA(Easi Cal PM−1;Polymer laboratories)
(2)DSC測定
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して試料を一旦融解させた後、250℃に10分間維持し、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させた後、再度、加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して熱融解曲線を得、得られた熱融解曲線から、試料の融点(Tm)及び融点の第2回昇温(2nd-heating)時のピーク高さ、ガラス転位点(Tg)、降温時での結晶化温度(Tc)及び熱量(Hc)を求めた。
なお、ピーク高さは、65℃〜75℃付近のベースラインと240℃〜250℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
(3)透明性
日本電色工業社製 ヘイズメーター300Aを用いてフィルムのヘイズ(HZ)及び平行光光線透過率(PT)を測定した。
(4)表面粗さ
株式会社小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE−30Kを用いてフィルム表面の中心面平均粗さ(SRa)を測定した。
(5)引張り試験
フィルムからMD方向(一軸延伸フィルムは延伸方向のみ採取)及びTD方向に、夫々短冊状の試験片(長さ:50mm、幅:15mm)を採取して、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、チャック間距離:20mmあるいは100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。
なお、破断エネルギー(mJ)は前記記載の方法で求めた。
ただし、実施例1〜4、比較例1、2、参考例1〜3は、チャック間距離20mmとしたが、実施例7〜18、29〜34、比較例4〜9、20〜23、参考例1、3、6は、チャック間距離は100mmとした。
【0020】
(6)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。
(7)酸素透過度
JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。
(8)耐熱性
延伸フィルムの耐熱性は前記した如く、熱機械分析による熱変形試験により測定した。
(9)軟化温度
JISK7196記載の方法で測定した。軟化温度の針入度測定は、装置TMA(線膨張率測定は圧縮タイプ)を用い、軟化温度測定条件は以下の通りである。
昇温速度 : 5℃/分
荷重 : 50g
針の先端形状 : 先端直径1mmφ×長さ2mm、直径3mmφの円柱(石英)
(10)酵素によるポリ−L−乳酸の分解
Blend of aliphatic polymers:V Non-enzymatic and enzymatic hydrolysis of blends from hydrophobic poly(L-lactide) and hydrophobic poly(vinyl alcohol);Polymer Degradation and Stability 71(2001) 403-413,Hideto Tuji, et al の記載に基づいて、1mol/lTris−HCl(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン HCl )緩衝溶液(ナカライテスク社製)を蒸留水で5倍に希釈し、更に希釈液300mlに対して60mgの試薬特級アジ化ナトリウム、60mgのプロティナーゼK(ナカライテスク社製 活性比:30u/mg solid)を攪拌しながら溶解した。
上記によって得られた酵素溶液10ccと下記実験で得られたプレスシート片(厚さ約500μm×10mm×10mm、重量:約70mg)を試験管に入れ、40℃下でTOHMAS KAGAKU社製の恒温振動槽Thomastat T−N225に入れ約10cmの行路を周期15Hzで振動した。
実験開始から13日目と26日目に酵素溶液の交換を行い、13日目と38日目(終了)に重量測定及び走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察を行った。
(11)走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察
エイコー・エンジニアリング社製IB−2型イオンコーターを用いて金をコートし、更に日本電子データム社製JED−2300型走査型電子顕微鏡を用いて倍率×1500、×5000で表面観察を行った。
(12)インジェクション成形の加工性(型開き性) 射出充填後金型を開いた際に成形品が固化しているものを、型開き性良好とした。また成形品が軟化しており、取り出した後形が崩れてしまうもの、またゼットピンで取り出せず、スプルーが金型内に残ってしまうものを、型開き性不良とした。
(13)真空成形品の耐熱性
真空成形品(容器)の耐熱性を98℃の熱湯を底から6cmまで入れて容器の変形が起きるか確認することで測定した。
但し、実施例35は浅底のため底から3cmとした。
○:変形なし
△:軽微な変形有り(主に底部の変形)
×:変形が大きい(容器が傾く、湯がこぼれるような状況)
(14)面配向度
以下の方法で測定した屈折率(Nx(MD平行)、Ny(TD平行)、Nz(厚さ))を用いて面配向度=(Nx+Ny)/2−Nz で計算した。
試験方法:アッベ法(A法) 試験装置:アッベ屈折計 DR−M2型((株)アタゴ製)
試験温度:23℃/50%RH
試験波長:D線(589nm)
測定方法:Nx(MD平行)、Ny(TD平行)、Nz(厚さ)
試験数 :n=3
【0021】
実施例1
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量%)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて250℃、60rpmの条件下で15分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物―1)を得た。
<プレスシートの製造>
組成物―1を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:250℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:5分(圧力10kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−1)を得た。
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシート−1を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(東洋精機製作所、ヘビー型)を用いて60℃ホットエアーで50秒予熱した後、5m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後に直ちに延伸フィルムを扇風機で冷却し、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
次いで、得られたニ軸延伸フィルム金枠にクリップで固定し、180℃×30秒の条件でヒートセット(熱処理)した後、室温で十分冷やしてポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0022】
実施例2
実施例1の二軸延伸フィルムのヒートセット条件に代えて、200℃×30分とした以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す。
【0023】
実施例3
実施例1の延伸温度に代えて85℃とした以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す。
【0024】
実施例4
実施例1の延伸倍率に代えて1×4とした以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す
【0025】
比較例1
実施例1のポリ乳酸系組成物の製造条件に代えて、混練時間を3分とした以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す。
【0026】
比較例2
比較例1の熱処理条件に代えて、200℃×30分とした以外は、比較例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す。
【0027】
参考例1
実施例1のポリ乳酸系組成物に代えて、PLLA−1を混練せずに用いた以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す
参考例2
実施例2のポリ乳酸系組成物に代えて、PLLA−1を混練せずに用いた以外は、実施例2と同様に行った。
結果を表1および表2に示す
参考例3
実施例1のポリ乳酸系組成物に代えて、PDLA−1を混練せずに用いた以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表1および表2から明らかなように、DSC測定において10分経過後の降温時(10℃/分)のピークが45mJ/mg以上であり、第二回昇温でTm=150〜180℃のピークがない組成物−1からなる実施例1〜4の延伸フィルムはいずれも表面粗さ(SRa)が0.1μm以下と表面平滑性に優れヘイズが10%と透明性に優れている。
また熱変形測定の結果から、特に高温で熱処理を行った実施例2は比較例1,2に比べると温度による変形が小さく、また安定している。
さらにガスバリア性に着目すると、同じくDSC測定において10分経過後の降温時(10℃/分)のピークが45mJ/mg以上であり、第二回昇温でTm=150〜180℃のピークがない組成物−1からなる実施例2の延伸フィルムは、PLLA単体である参考例1に比べると透湿度で1/3、酸素透過度で1/10にガスバリア性が改善しているのが分かる。
PLLAまたはPDLA単体からなる参考例1、3は表面平滑性、透明性は優れるもの、実施例1〜4と比べると熱変形は大きく、180℃で融解してしまうのが分かる。また、参考例2は熱処理においてフィルムが融解するため得られなかった。
【0031】
実施例5
<ポリ乳酸組系成物の製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量%)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(二軸混練機)を用いて250℃、60rpmの条件下で15分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物―2)を得た。
<プレスシートの製造>
組成物―1を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:240℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:室温下で金枠内で徐冷、の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−2)を得た。
【0032】
実施例6
実施例5のポリ乳酸系組成物(組成物―2)をPLLA−1:PDLA−1=60:40とした以外は、実施例5と同様に行った。
結果を表3に示す。
比較例3
実施例5のポリ乳酸系組成物(組成物―2)をPLLA−1:PDLA−1=100:0とした以外は、実施例5と同様に行った。
結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
表3から明らかなように、DSC測定結果より2nd heatingでTm=150〜180℃のピークがなく、またcoolingの結晶化熱量が50(J/g)以上である組成物−2からなる実施例5の徐冷プレスシートは217℃と高い耐熱温度であった。またPLDAを70%含む構成の実施例6の徐冷プレスシートは174℃と高い耐熱温度であった。
【0035】
実施例7
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA―1:PDLA―2を50:50(重量%)の比で計量し、フィード速度30g/分で、東芝機械株式会社製 同方向回転二軸混練押出機(TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(l/d):42、スクリュパターン(i)(スクリュ部:1144mm、ミキシング部:382mm)を用いてC1〜C12:250℃、400rpmの条件下で混練押出し、ポリ乳酸系組成物(組成物―7)を得た。
<プレスシートの製造>
組成物―7を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:250℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:5分(圧力10kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−7)を得た。
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシート−7を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製、KARO4)を用いて70℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後に200℃で1分間のヒートセットを行い、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表4に示す。
【0036】
実施例8
実施例7のフィード速度条件に代えて、60g/分とした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0037】
実施例9
実施例7の二軸押出スクリュパターンをタイプ(ii)(スクリュ部:994mm、ミキシング部:532mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0038】
実施例10
実施例7のフィード速度条件に代えて、60g/分とし、また二軸押出スクリュパターンをタイプ(ii)(スクリュ部:994mm、ミキシング部:532mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0039】
実施例11
実施例7の二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0040】
実施例12
実施例7のフィード速度条件に代えて、60g/分とし、また二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0041】
実施例13
実施例7のPDLA−2に代えてPDLA−1とし、また二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0042】
実施例14
実施例7のPDLA−2に代えてPDLA−1とし、フィード速度を60g/分とし、また二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0043】
実施例15
実施例7の二軸押出シリンダー温度パターンをC1〜C6/C7〜12=250℃/200℃、二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0044】
比較例4
実施例7のフィード速度条件に代えて、160g/分とした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0045】
比較例5
実施例7のフィード速度条件に代えて、340g/分とした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0046】
比較例6
実施例7のフィード速度を340g/分とし、スクリュ回転数を200rpmとした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0047】
比較例7
実施例7のフィード速度を160g/分とし、二軸押出スクリュパターンをタイプ(ii)(スクリュ部:994mm、ミキシング部:532mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0048】
比較例8
実施例7のフィード速度を340g/分とし、二軸押出スクリュパターンをタイプ(ii)(スクリュ部:994mm、ミキシング部:532mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0049】
比較例9
実施例7のフィード速度を160g/分とし、二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0050】
参考例4
PLLA−1をそのままDSCで評価し、プレスシートの製造を行った。二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0051】
参考例5
PDLA−2をそのままDSCで評価し、プレスシートの製造を行った。二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
(表4−2)
【0054】
(表4−3)
【0055】
(表4−4)
【0056】
(表4−5)
【0057】
(表4−6)
【0058】
表4から明らかなように、混練により分子量が120,000以下に低下した実施例7〜15はDSCによる組成物の評価結果で2nd heatingでのΔHscが35mJ/mg以上であり、またTm=150〜180℃(ピーク1)とTm=200〜250℃(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であり、それを外れている比較例4〜9に比べてステレオコンプレックス構造物を作りやすい組成物であることが分かる。
また実施例7、8のプレスシートを48日間酵素で分解した後にSEMで観察したところ、マトリックスの島相が溶出し径0.1〜1.0μm程度の小さな孔が空いておりPLLAとPDLAが十分分散しているのに対して、比較例4のプレスシートはマトリックスの海相が溶出し径1〜200μm程度のマトリックスの島相(PDLAと推定される)が浮き出ておりPLLAとPDLAが十分分散していないのが分かる。
【0059】
更に実施例7〜9と比較例4〜6の二軸延伸フィルムの比較を行うと実施例7〜9の方はヘイズが比較例4〜6より小さいため透明性が高く、かつ耐熱温度が高く、200℃でも伸びきらず測定限界に達しないフィルムとなっている。
【0060】
実施例16
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量%)の比で計量し、フィード速度120g/分で、東芝機械株式会社製 同方向回転二軸混練押出機(TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(l/d):42、スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mmからなるスクリュパターン)を用いてC1〜C12:250℃、430rpmの条件下で混練押出し、次にその先端に一軸混練押出機(SE−50C スクリュ径:50mm、スクリュ長(l/d):28)を用いて、更に幅400mmのコートハンガー型Tダイのリップに0.5mm厚さのスズ合金板を挿入固定し幅280mmとして用い、鏡面処理したチルロール(水温:15℃)で1.0m/分の速度で成形を行い、厚さ約300μmの無延伸シートとした。
【0061】
この無延伸シートをブルックナー社製二軸延伸機を用いて延伸、ヒートセット処理した。本延伸機のMDO(縦延伸工程)前に繰り出し機を設置し、連続的に無延伸シートを繰り出した。この二軸延伸機は押出機〜ダイスを具備しているが二軸押出機はないため、上記の工程で別途成形した無延伸シートを移動して用いた。
また繰り出し速度は2m/分とし、MDOは温度65℃で3倍にTDO(横延伸工程)は温度70℃で3倍に延伸した後にテンター内で200℃で約40秒間のヒートセットを行い、厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
結果を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
ダイスから出てきた無延伸シートのDSCを測定した。2nd−heatingのピーク高さを見るとTm=200〜250℃のピークしかなく、選択的にステレオコンプレックス晶を生成する組成物となっていることが分かる。
また本組成物を上記のように連続成形して出来た延伸フィルムは(実施例16)は透明性が高く、実用的に十分な靱性があり、かつ200℃以上の耐熱性を有している。
【0064】
実施例17a
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量%)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて250℃、60rpmの条件下で15分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物―8)を得た。
【0065】
<プレスシートの製造>
組成物―8を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:250℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:5分(圧力10kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−2)を得た。
【0066】
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシート−2を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(東洋精機製作所、ヘビー型)を用いて60℃ホットエアーで50秒予熱した後、5m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後に直ちに延伸フィルムを扇風機で冷却し、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
次いで、得られたニ軸延伸フィルム金枠にクリップで固定し、200℃×30分の条件でヒートセット(熱処理)した後、室温で十分冷やしてポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
【0067】
実施例17b
混練時間を3分にした以外は実施例17aと同様に行った。
得られたポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表6に示す。
【0068】
(表6)
【0069】
表6から明らかなように、プレスシートのDSC測定において10分経過後の降温時(10℃/分)のピークが45J/g以上であり、第二回昇温でTm=150〜180℃のピークがないプレスシート−2からなる実施例17aの延伸フィルムが表面粗さ(SRa)が0.1μm以下と表面平滑性に優れヘイズが3%と透明性に優れている。
一方、実施例17bは延伸後200℃×30分熱処理をした後のDSC測定ではΔHm2が56J/gと大きくピーク高さ比も0.1以下とステレオコンプレックス結晶が多く生成していることが伺えるが、フィルムの物性を実施例17bに比べ17aのほうがフィルム強度、ヘイズ、表面粗さ、耐熱性に優れている。
本実施例17bのプレスシートのDSC測定では1st coolingのΔHcが15J/gと小さく、ピーク高さも1.2以上と大きい。これはもともとステレオコンプレックス結晶を作りにくい組成物であったものをその後の延伸、200℃×30分熱処理の工程でステレオコンプレックス結晶化したため、配向の緩和、非結晶部の増大が起きているためと推定される。即ち、ステレオコンプレックス結晶を作りにくいPLLAとPDLAの混練が不十分な組成物でも後処理(延伸、熱処理)によってステレオコンプレックス結晶を生じるが、成形品の物性はPLLAとPDLAを十分混練して得た成形品には及ばないことを示している。
【0070】
実施例18
<インジェクション成形用チップの製造>
実施例16で作製した厚さ約300μmのシートを粉砕した後にプレス成形機で250℃×5分で約1mm厚でプレス成形し、カットしたものを原料とした。
<インジェクション成形>
東洋機械金属インジェクション成形機Ti−80を用い下記条件で成形した。金型は3mm厚のスペシメン用を使用した。
シリンダー温度:C1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=215/215/215/215/235(℃)
金型温度:130(℃)
型内結晶化時間:1(分)
切替位置0〜40mmの速度:50(%)、圧力:30(kgf)、タイマー:5(秒)
切替位置40〜40mmの速度:50(%)、圧力:30(kgf)、タイマー:10(秒)
切替位置40〜70mmの速度:50(%)、圧力:30(kgf)、タイマー:4(秒)
チャージ位置70mmの速度 :50(%)、タイマー:10(秒)
サックバック(位置0mm) :50(%)、タイマー:170(秒)
【0071】
実施例19
金型温度を120(℃)とした以外は、実施例18と同様に行った。
実施例20
金型温度を120(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
実施例21
金型温度を110(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0072】
比較例10
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を60(℃)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例11
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を80(℃)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0073】
比較例12
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を80(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例13
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を90(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0074】
比較例14
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例15
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=230/230/230/250/250(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0075】
比較例16
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=225/225/225/235/235(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例17
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=225/225/225/235/235(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を1(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0076】
比較例18
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=225/225/225/235/235(℃)
金型温度を80(℃)、型内結晶化時間を1(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例19
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=225/225/225/235/235(℃)
金型温度を20(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0077】
比較例20
PLLA―1:PDLA―1=50:50(重量%)からなる無延伸シートを粉砕してプレスし更にカットしものの代わりにPLLA―1を単体で用い、
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=200/200/200/200/200(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を1(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例21
比較例20においてオーブンで120℃×5分加熱した例を示す。
【0078】
比較例22
PLLA―1:PDLA―1=50:50(重量比)からなる無延伸シートを粉砕してプレスし更にカットしものの代わりにPLLA―1:タルク(日本タルク社製P4)=70:30(重量比)を予め二軸押出機で混練して作ったペレットを用い、
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=200/200/200/200/200(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を1(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0079】
比較例23
比較例22においてさらにオーブンで120℃×5分加熱した例を示す。
【0080】
(表7)
(表7−1)
(表7−2)
(表7−3)
(表7−4)
結果を表7に示す。表から明らかなように、PLLA―1とPDLA―1を50:50(重量%)で予め十分混練したシートを原料として用い、且つシリンダー温度C1〜C4が220℃以下の実施例18〜21は金型内で結晶化が進んでいるため、型開き性が良好であった。また成形品は実施例18のようにDSC測定において、第一回昇温で結晶化のピークが現れずほとんど結晶化しており、且つTm=150〜180℃の融解のピークが現れず、Tm=200〜250℃の融解ピークのみであることから、成形品の中の結晶構造はステレオコンプレックス晶化している。PLLA−1に炭酸カルシウムを30重量%配合した比較例22、23に比べても透明性が優れている。
比較例23は、比較例22において更に120℃×5分の熱処理を行ったものであり、DSCの測定により1st heatingのΔHcが減少していることから、熱処理で結晶化が進み耐熱性が改善することが予想されるが、熱処理が別工程のためコストがかかる。
【0081】
実施例22
<真空成形用シートの製造>
実施例16で作製した厚さ約300μmのシートを原料とした。
<真空成形>
株式会社浅野研究所製カットシートテスト成形機FKS−0631−20を用いて下記条件で成形した。金型は上面径82mm、下面径55mm、絞り深さ60mmのプリン型を用いた。
【0082】
(1)時間設定
上テーブル下降遅れ:0.0(秒)
真空遅れ :0.8(秒)
圧空遅れ :1.2(秒)
下テーブル上昇遅れ:0.2(秒)
冷却エア遅れ :0.0(秒)
冷却時間 :60.0(秒)
型締遅れ :0.5(秒)
離型1時間 :0.5(秒)
排気時間 :0.5(秒)
離型2時間 :0.0(秒)
排気時間 :0.5(秒)
型締切遅れ :60.0(秒)
圧空圧力 :0.5(秒)
【0083】
(2)上テーブル
オープンハイト :250.0(mm)
下降低速位置 :157.0(mm)
シャットハイト : 94.0(mm)
下降高速 :100 (%)
下降低速 :100 (%)
上昇高速 :100 (%)
上昇低速 : 3 (%)
上昇高速位置 :150.0(mm)
【0084】
(3)下テーブル
シャットハイト :115.0(mm)
上昇低速位置 :220.0(mm)
オープンハイト :300.0(mm)
上昇高速 :100 (%)
上昇低速 :100 (%)
下降高速 : 20 (%)
上昇低速 :100 (%)
上昇高速位置 :200.0(mm)
【0085】
本装置は(1)予熱部、(2)成形部と分かれているバッチ式である。まず(1)予熱部で遠赤外ヒーターによりシートが加熱させ放射温度計によりシート表面の温度が設定値に予熱されると、(2)成形部に移動しキャビティ/プラグ間で成形される。
予熱ヒーター温度を300℃にし、シート表面温度が140℃に上昇したところで成形を行った。予熱時間は21秒であった。またキャビティの設定温度は100℃、プラグの設定温度は100℃、成形時間(型内保持時間)は60秒とした。
実施例23
キャビティ設定温度を140℃とする以外は実施例22と同様に行った。
【0086】
実施例24
予熱ヒーター温度を400℃にし、シート表面温度が80℃に上昇したところで成形を行い、またキャビティの設定温度は130℃、プラグの設定温度は130℃とした以外は実施例22と同様に行った。
比較例25
予熱ヒーター温度を400℃にし、シート表面温度が100℃に上昇したところで成形をした以外は実施例22と同様に行った。
【0087】
比較例26
予熱ヒーター温度を400℃にし、シート表面温度が100℃に上昇したところで成形を行い、またキャビティの設定温度は120℃、プラグの設定温度は120℃とした以外は実施例22と同様に行った。
比較例27
PLLA―1:PDLA―1=50:50(重量%)からなるシートを用いる代わりにPLLA―1単体からなるシートを用いた以外は実施例22と同様に行った。
【0088】
比較例28
PLLA―1:PDLA―1=50:50(重量%)からなるシートを用いる代わりにPLLA―1単体からなるシートを用い、またキャビティの設定温度を40℃、プラグの設定温度を40℃とした以外は実施例22と同様に行った。
結果を表8に示す。
【0089】
(表8)
【0090】
表8から明らかなように、PLLA―1とPDLA―1を50:50(重量%)で予め十分混練したシートを原料として用い、且つ予熱に時間をかけてシートで一部結晶させた実施例22、実施例23はヘイズはやや上がるものの成形性、耐熱性ともに優れていた。一方PLLA−1単体からなる比較例26は同一条件ではキャビティ内で成形品が軟化して貼りついてしまい成形できず、成形するためにキャビティ、プラグ温度を常温まで下げた比較例27では耐熱性が得られなかった。
また予熱ヒーター温度を上げて予熱時間が短い条件とした実施例24は成形性は不安定ながらもヘイズの低いサンプルが得られた。熱湯を入れても大きな変形はなく、耐熱性に優れたサンプルであった。
【0091】
実施例25
<溶液(X)の作製>
アクリル酸亜鉛(アクリル酸のZn塩)水溶液〔浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、Zn成分10重量%)〕と、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をモル分率でそれぞれ98.5%、1.2%、0.3%となるように混合し、アクリル酸Zn塩溶液(X)からなる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩溶液を作製した。
【0092】
《シリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3)》
(7)シリル基変性ビニルアルコール系重合体;重合度,鹸化度%、クラレ社製、商品名;R−1130(B3−1)
【0093】
<バリアコートフィルムの作製>
上記アクリル酸Zn塩溶液(X)を実施例16の二軸延伸フィルムのコロナ処理面に、メイヤーバーで塗布量が固形分で3.5g/m2になるように塗布し、熱風乾燥器を用いて乾燥した。この後、速やかに塗布面を上にしてステンレス板に固定し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度180mW/cm2、積算光量180mJ/cm2の条件で紫外線を照射して重合しガスバリア性膜を積層したガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの透湿度、酸素透過度を測定した。結果を表9に示す。
【0094】
実施例26
実施例16の二軸延伸フィルムに、厚さ100nmのアルミナ被膜を成形させた。その際、電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、蒸着源として酸化アルミナを使用し、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。
実施例27
実施例16の二軸延伸フィルムに、厚さ300nmのアルミニウム被膜を成形させた。その際、電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、蒸着源としてアルミニウムを使用し、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。
【0095】
実施例28
実施例16の二軸延伸フィルムに、厚さ100nmの酸化珪素被膜を成形させた。その際、電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、蒸着源としてSiO:SiO2=1:2混合物を使用し、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。
結果を表9に示す。
【0096】
(表9)
【0097】
表9から明らかなように実施例16にバリア膜を施した各フィルムは更にバリア性能が向上し、食品包装等バリア性能が必要な用途にも問題ないレベルにまでなっていることが分かる。
【0098】
実施例29
<延伸成形用シートの製造>
実施例16で作製した厚さ約300μmのシート(無延伸)を原料とした。
<二軸延伸フィルムの製造>
厚さ約300μmのシート(無延伸)を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製)を用いて65℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後に室温下で30秒冷却し、厚さ約30μmの二軸延伸フィルムを得た。
実施例30
予熱時のホットエアーを70℃とした以外は実施例29と同様に行った。
実施例31
予熱時のホットエアーを75℃とした以外は実施例29と同様に行った。
実施例32
予熱時のホットエアーを80℃とした以外は実施例29と同様に行った。
実施例33
予熱時のホットエアーを85℃とした以外は実施例29と同様に行った。
実施例34
予熱時のホットエアーを90℃とした以外は実施例29と同様に行った。
参考例6
実施例16で作製したさいに合わせて厚さ約30μmの無延伸シートを成形した。それをそのまま評価した。
結果を表10に示す。
【0099】
(表10)
【0100】
表10から明らかなように延伸を行った実施例29〜34は配向度が0.006〜0.011であるが、無延伸である参考例1は配向度が0.0001である。一方、フィルム物性は面配向度が大きいほど、即ちこの範囲では延伸予熱温度が低いほど、フィルムの破断点応力、伸度及びヤング率が高くなる傾向にあった。
実施例35
<真空成形用シートの製造>
実施例16で作製した厚み約300μmのシート(無延伸)を原料とした。
<真空成形>
大森機械工業株式会社製真空成形機を用いて下記条件で成型した。金型は内径100mm、絞り深さ40mmの円筒型を用いた。
予熱時間:5.0(秒)
予熱温度:100(℃)
キャビティの加温はなし(15℃程度)
<熱処理>
上記成形品をアルミ製治具に固定しオーブン内で200℃×15分熱処理を行った。
また熱処理後は速やかに冷却するため20℃の水中に治具ごと投入した。
得られた成形品は98℃の熱湯を注いでも変形しなかった。またHZ:3.9(%)、
TT:91.4(%)、PT:87.9(%)と透明性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の組成物は特定の熱特性を有する。これは、容易にステレオコンプレックス構造物を選択的に、かつ均一の形成するためと考えられる。そのため本組成物からなる延伸フィルムなどの各種成形品は、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸の単体からなる成形品に比べ、耐熱性及びガスバリア性、靭性に優れており、更に表面平滑性、透明性に優れている。またインジェクション等の成形品は従来に比べて加工性(型開き性)、透明性に優れている。
このように本発明の組成物からなるインジェクション(射出)、ブロー(吹き込み)、押出および紡糸などの種々の成形方法によって得られるフィルム、シート、糸などの成形品も優れた耐熱性を有する。これは、非晶状態から結晶化する際に選択的にステレオコンプレックス構造物を形成するためであり、また本発明の組成物によれば結晶化の処理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例1で得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図2】実施例1で得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図3】実施例2で得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図4】実施例2で得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。 これらのDSCの測定は10℃/分で0℃から250℃まで第1回昇温し(1st−heating)、250℃で10分経た後、10℃/分で0℃まで第1回降温し(1st−cooling )、0℃から250℃まで第2回昇温(2nd−heating)して測定した。
【図5】実施例7における酵素分解13日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図6】実施例7における酵素分解48日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図7】実施例8における酵素分解48日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図8】比較例4における酵素分解13日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図9】比較例4における酵素分解48日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図10】参考例4における酵素分解13日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図11】参考例5における酵素分解13日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図12】実施例17aのプレスシートの第1回昇温(1st−heating)のDSC測定結果を示す。
【図13】実施例17aのプレスシートの第1回降温(1st−cooling)のDSC測定結果を示す。
【図14】実施例17aのプレスシートの第2回昇温(2nd−heating)のDSC測定結果を示す。
【図15】実施例17aの延伸フィルムの第1回昇温(1st−heating)のDSC測定結果を示す。
【図16】実施例17bのプレスシートの第1回昇温(1st−heating)のDSC測定結果を示す。
【図17】実施例17bのプレスシートの第1回降温(1st−cooling)のDSC測定結果を示す。
【図18】実施例17bのプレスシートの第2回昇温(2nd−heating)のDSC測定結果を示す。
【図19】実施例17bの延伸フィルムの第1回昇温(1st−heating)のDSC測定結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の熱特性を有するポリ乳酸系組成物に関する。さらに、本発明はポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸との組成物からなる組成物に関し、その組成物からなる耐熱性、ガスバリア性、靭性、表面平滑性に優れた延伸フィルム等のフィルム、インジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出成形その他成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解可能なプラスチックとして、汎用性の高い脂肪族ポリエステルが注目されており、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリカプロラクトン(PCL)などが上市されている。
これら生分解性脂肪族ポリエステルの用途の一つとして包装用、農業用、食品用などのフィルム分野があり、用途に応じた高強度、耐熱性、ガスバリア性および生分解性が基本性能として要求されている。
上記脂肪族ポリエステルのうちPLAは、ポリ−L−乳酸(PLLA)やポリ−D−乳酸(PDLA)からなり、その単独結晶(α晶)の融点は約170℃であり、ポリエチレンテレフタレート等と比較すると耐熱性が不十分な場合もあり、その改良が求められている。
一方、PLAの耐熱性を更に改良する方法として、ポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−D−乳酸(PDLA)とをブレンドしてステレオコンプレックスを形成させる方法が多数提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4、非特許文献1)。
このステレオコンプレックス(SC)は、ポリ−L−乳酸(PLLA)とポリ−D−乳酸(PDLA)の共晶であり、その結晶の融点はα晶よりも約50℃高く、それを利用することが期待されている。
しかしながら、PLLAとPDLAを単に溶融混練して得た組成物をフィルムに成形しても容易にステレオコンプレックスは形成されず、また、形成されたフィルムは、耐熱性は改良されるものの、脆く、包装用フィルム等として使い難い。
そこでPLLAとPDLAを溶融混練して得た組成物を特定の条件下で少なくとも一軸方向に延伸することにより耐熱性、靭性に優れた延伸フィルムが得られることを発明者らは提案した(特願2004−146239号)。
この延伸フィルムは広角X線回折による回折ピーク(2θ)が16°近辺〔以下、かかる領域に検出されるピークを(PPL)と呼ぶ場合がある。〕にあり、且つ12°近辺、21°近辺及び24°近辺の回折ピーク(2θ)〔以下、かかる領域に検出されるピークを併せて(PSC)と呼ぶ場合がある。〕の総面積(SSC)が、16°近辺の回折ピーク(PPL)の面積(SPL)と(SSC)との合計量に対して10%未満の延伸フィルムである。
そのため延伸フィルム中のSC晶はPLLA及びPDLA単体の結晶に比べ稀少である。
更に本発明者らはかかる延伸フィルムに特定の熱処理を行い、広角X線回折による主たる回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺にあり、主にSC晶からなる延伸フィルムの製造方法を提案した(特願2004−146240号)。
またポリ乳酸系二軸延伸フィルムのガスバリア性を改善する方法として無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物の層をもうける方法が提案されている(特許文献5)。しかしかかる蒸着等方法は行程が複雑なため費用がかかり、また蒸着膜は非常に薄いものなのでバリア性能の管理等に課題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−207041号公報
【特許文献2】特開平8−198955号公報
【特許文献3】特開平9−25400号公報
【特許文献4】特開2000−17164号公報
【特許文献5】特開平10−24518号公報
【非特許文献1】Macromoleculs,20,904(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特定の熱特性を有するポリ乳酸系組成物に関し、さらに、本発明は、表面平滑性、透明性、耐熱性、バリア性能、靭性に優れた延伸フィルム等のフィルム、インジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出成形その他の成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討した結果、ポリ−L−乳酸(PLLA)とPDLAとを特定の条件下で溶融混練することにより得られるポリ乳酸系組成物が結晶化の過程でステレオコンプレックス構造を選択的に作りやすく、その組成物からなる延伸フィルム等のフィルム、インジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出成形品が表面平滑性、透明性に優れ、かつ耐熱性、ガスバリア性能、靭性に優れていることを見出し本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明はDSC測定において250℃で10分経過後の降温(cooling)時(10℃/分)のピークが30mJ/mg,好ましくは45mJ/mg以上、特に好ましくは50mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物に関する。
さらに、本発明の好適な組成物は、DSCの第二回昇温時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=150〜180℃のピーク(ピーク1)とTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5以下、好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。
また、本発明はDSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)が35mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物である。
これらの乳酸系組成物は、またポリ−L−乳酸を25〜75重量部、好ましくは35〜65重量部、特に好ましくは45〜55重量部及びポリ−D−乳酸75〜25重量部、好ましく65〜35重量部、特に好ましくは55〜45重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部とする)から構成されていること、すなわち調製されていることが好適である。
このような組成物は、例えば、ポリ−L−乳酸25〜75重量部、好ましくは35〜65重量部う、特に好ましくは45〜55重量部及びポリ−D−乳酸75〜25重量部、好ましく65〜35重量部、特に好ましくは55〜45重量部とのポリ乳酸系組成物を230〜260℃で混練することにより、好ましくは二軸押出機により溶融混練エネルギーを与えることにより得ることができる。溶融混練の時間はブラベンダーのようなバッチ式の低剪断の混練機では、通常10分以上、好ましくは15分以上であり、長くとも60分以下、好ましくは40分以下である。また、二軸押出機などの高剪断の機器を用いる場合は、一般に2分以上、特に4分以上であり、長くとも15分以下が通常である。
本発明の混練においては、原料を十分に乾燥し、また窒素シール等を行った条件で、得られる組成物の重量平均分子量が、利用するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のそれぞれの重量平均分子量を加重平均して得られる重量平均分子量の数値の0.3〜0.6倍、さらに好ましくは0.4〜0.6倍の範囲となるように負荷を与えて、溶融混練することが望ましい。これにより得られる組成物ではポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が極めて微細に融合している状態となる。
【0007】
また、本発明は、当該組成物からなる成形品に関し、インジェクション(射出)、ブロー(吹き込み)、押出成形、真空成形、圧空成形また紡糸された種々の成形品に関する。
中でも、少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム、更に140〜220℃で1秒以上熱処理して得られ表面平滑性、透明性、耐熱性、ガスバリア性、靭性に優れることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は特定の熱特性を有している。これは、ステレオコンプレックス構造物を有しているものと考えられ、本発明ではこの構造を選択的に形成することができる。さらに、本組成物によれば、耐熱性及びガスバリア性、靭性に優れ、更に表面平滑性、透明性に優れたポリ乳酸系の延伸フィルムなどの種々の成形品が得られる。
本発明の組成物によれば、非晶状態から結晶化する際にステレオコンプレックス構造物を選択的に形成するものと考えられ、耐熱性に優れ、更に結晶化の処理が容易な種々の成形品を得ることができる。
本発明によれば、比較的高分子量であり成形品として十分な強度があり、かつ高い融点を持ち耐熱性のある成形品となる生分解性のポリマーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ポリ−L−乳酸
本発明においてポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られる延伸フィルムの耐熱性、ガスバリア性、その他成形品の耐熱性が劣る虞がある。
PLLAの分子量は後述のポリ−D−乳酸と混合したポリ乳酸系組成物がフィルムなどの形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜100万の範囲にある。本発明では、重量平均分子量が6千〜50万のポリ−L乳酸が好適である。なお、フィルム分野では、重量平均分子量が6万未満のものは得られる延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、100万を越えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣る虞がある。
【0010】
ポリ−D−乳酸
本発明においてポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られる延伸フィルム、その他成形品の耐熱性が劣る虞がある。
PDLAの分子量は前述のPLLAと混合したポリ乳酸系組成物がフィルム形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜100万の範囲にある。本発明では、重量平均分子量が6千〜50万のポリ−D乳酸が好適である。なお、フィルム分野では、重量平均分子量が6万未満のものは得られる延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、100万を越えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣る虞がある。
【0011】
本発明においてPLLA及びPDLAには、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
【0012】
ポリ乳酸系組成物
本発明のポリ乳酸系組成物は、DSC測定において250℃で10分経過後の降温(cooling)時(10℃/分)のピークが30mJ/mg以上、好ましくは45mJ/mg以上、特に好ましくは50mJ/mg以上であることを特徴とする。
さらに、本発明の好適な組成物は、そのDSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=150〜180℃のピーク(ピーク1)とTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5以下、好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下であるという熱特性を有することが望ましい。これは、この組成物がステレオコンプレックス晶を選択的に形成しているためと考えられる。
ピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5より大きいと、結晶化後にPLLA、PDLA単体結晶の形成量が大きく、上記混練が十分でない虞がある。
またピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5より大きい組成物からなる成形品は結晶化後のα晶(PLLAあるいはPDLAの単独結晶)の形成量が大きいため、耐熱性に劣る虞がある。
また、本発明はDSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)が35mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物である。
このようなポリ乳酸系組成物は、前記PLLAを25〜75重量部、好ましくは35〜65重量部、特に好ましくは45〜55重量部、その中でも好ましくは47〜53重量部及びPDLAを75〜25重量部、好ましくは65〜35重量部、特に好ましくは55〜45重量部、その中でも好ましくは53〜47重量部(PLLA+PDLA=100重量部)から構成されている、即ち調製されていることが好ましい。
これらの組成物は、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の重量平均分子量が、いずれも6,000〜500,000の範囲内であり、かつ、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方の重量平均分子量が30,000〜500,000であるポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸から混練により調製することが望ましい。
また、本発明のポリ乳酸系組成物は、例えば、これらPLLAとPDLAを、230〜260℃で二軸押出機、二軸混練機、バンバリーミキサー、プラストミルなどで溶融混練することにより得ることができる。
PLLAの量が75〜25重量部、特に65〜35重量部、その中でも特に55重量部を超える組成物及び45重量部未満の組成物は上述の方法で混練しても、得られる組成物の耐熱性が十分でない場合がある。得られる組成物からなる成形品がα晶の結晶体を含み、耐熱性が不十分となるおそれがある。ステレオコンプレックス構造はPLLAとPDLAの等量から構成されるためあると考えられる。
一方、PLLAとPDLAを溶融混練するときの温度は好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
また、本発明のポリ乳酸系組成物を調製する際に、PLLAとPDLAを十分に溶融混練することが望ましい。
本発明に係る組成物は、ステレオコンプレックスの結晶化が早く、かつステレオコンプレックス結晶化可能領域も大きいので、PLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いと考えられる。
更に本発明に係わるポリ乳酸系組成物は、DSCによる250℃で10分経過後の降温(cooling)時での測定(10℃/分)において結晶化によるピークが、30mJ/mg以上、好ましくは45mJ/mg以上、特に好ましくは50mJ/mg以上であり、ポリ乳酸系組成物の結晶化が速やかに起こる。
また結晶化によるピークが30mJ/mgより小さいと結晶化速度が小さく、上記混練が十分でない虞がある。
さらにDSCの250℃で10分経過後の降温(cooling)時での測定(10℃/分)において結晶化によるピークが30mJ/mgより小さい、さらには成形品の分野によっては45mJ/mgより小さい組成物からなる成形品は結晶化速度が小さく、成形品の結晶化後の結晶体の形成量が小さいため、耐熱性に劣る虞がある。
本発明のDSC測定は、昇温および降温速度10℃/分で行う。なお、一般には昇温および降温速度が遅くなるほど結晶化熱量(測定値)は大きくなる。例えば、実施例17aの1st cooling 61.7J/g(降温速度10℃/分)の試料は、降温速度5℃/分の測定では、70.6J/gであった。DSCによる結晶化熱量(測定値)を比較する場合は、その昇温、降温速度が同一の場合の測定値を比較しなければならない。
本発明のポリ乳酸系の組成物の重量平均分子量は特に限定されるものではない、しかしながら、本発明の組成物の重量平均分子量は10,000〜300,000の範囲にあることが好ましい。また、フィルム分野では重量平均分子量が100,000〜150,000の範囲にあることが望ましい。上記範囲を高分子側に外れるとステレオコンプレックス化が十分でなく耐熱性が得られない虞があり、また低分子側に外れると得られるフィルムの強度が十分でない虞がある。
また、本発明の組成物を調製する方法として、得られる組成物の重量平均分子量が、利用するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の重量平均分子量を加重平均して得られる重量平均分子量の数値の0.3〜0.6倍、特に好ましくは0.4〜0.6倍の範囲となるように、溶融混練して調製する方法が好ましい。 本発明により得られる組成物では、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が極めて微細に融合している状態にある。例えば、ポリ−D−乳酸の重量平均分子量がポリ−L−乳酸の重量平均分子量より大きい場合、中でも重量平均分子量が150,000〜200,000のポリ−L−乳酸および重量平均分子量が200,000〜350,000のポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸=45/55〜55/45の重量比で用いる場合のように、これらを混練により、特に望ましくは二軸押出機または二軸混練機を用いた混練により得られる組成物は、以下に示すようにポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸が微細に融合した状態である
即ち、当該組成物を240〜260℃でプレス後0〜30℃で急冷して得られるプレスシートを用いて、ポリ−L−乳酸を分解する酵素を利用して、ポリ−L−乳酸を分解して除去した48日後のプレスシートを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察すると、微細な孔が形成されており、直径5μm以上の孔は観測されないことを特徴とする。このような微細な孔は通常直径0.1〜3μm程度であり、5μm×5μm当たり20〜200個有していることからそれが明らかである。これは、ポリ−L−乳酸単体からなる部分が無いか、またあるとしても極めて少ないため、酵素による分解除去が起きにくいためである。
ポリ乳酸用結晶核剤
また上述のように本発明に係わるポリ乳酸系組成物は結晶化促進性に優れ、ポリ乳酸系ポリマーの結晶核剤としての機能を有する。従って、本発明のポリ乳酸系組成物からなるポリ乳酸用結晶核剤を1〜90重量部およびポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸99〜10重量部を溶融混練してなる組成物は、結晶化が促進されるため、各種成形品の原料として好適である。ポリ乳酸系組成物からなるポリ乳酸用結晶核剤の量が1重量部未満では結晶核剤としての機能が不十分である虞がある。
また本発明に係わるポリ乳酸系組成物を結晶化核剤として用いる場合は、予め上記条件でポリ乳酸系組成物1〜90重量部を製造して後にポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸99〜10重量部と溶融混練しても良い。
【0013】
ポリ乳酸系延伸フィルム
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ乳酸系組成物からなり、熱処理後の広角X線回折による回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺(SSC)にあり、且つ回折ピークの面積(SSC)が16°近辺の回折ピークの面積(SPL)との合計量(総面積)に対して90%以上({SSC/(SSC +SPL)}×100)である。かかる広角X線回折における16°近辺のピーク(PPL)はPLLA及びPDLAの結晶に基づくピークであり、12°近辺、21°近辺及び24°近辺のピークはPLLAとPDLAとが共結晶した所謂ステレオコンプレックスの結晶に基づくピーク(PSC)である。
即ち、PLLAとPDLAとが均一に溶融混練されたポリ乳酸系組成物からなる延伸フィルムであるため、ポリ乳酸の結晶(α晶)が形成されていないか、形成されたとしても少量であり、ほとんどはステレオコンプレックス構造を形成しているものと考えられる。
本発明のポリ乳酸系組成物はPLLAとPDLAを十分に溶融混練し均一な構成になっているので、得られる延伸フィルムは表面平滑性、透明性に優れ、また加熱時の伸縮挙動も一定し、融点が230℃近傍のステレオコンプレックス構造の特性を活かし、優れた耐熱性を有している。
即ち、熱機械分析による熱変形試験で200℃での変形が10%以下であり、当然200℃において溶融しない。
またPLLA及びPDLAの結晶(α晶)の融解を経ずにステレオコンプレックス構造になるため熱処理後も配向した状態を保ち延伸方向の伸びが10%以上、延伸方向の破断エネルギーが0.1mJ以上と靭性の優れたフィルムである。
なお、本発明において広角X線回折による回折ピーク(2θ)はX線回折装置(株式会社リガク製 自動X線回折装置RINT−2200)を用いて、シート若しくはフィルムにX線ターゲットとしてCu K―α、出力:1/40kV×40mAで照射し、回転角:4.0°/分、ステップ:0.02°、走査範囲:10〜30°で測定して検出される回折ピークの角度(°)である。
また、夫々の回折ピーク面積は、(SPL)は16°近辺の回折ピーク(2θ)、(SSC)は12°、21°及び24°近辺の回折ピーク(2θ)各々の面積をチャート紙から切り出し、その重量を測定することにより算出した。
但し空気中のX線散乱による面積部分は削除して求めた。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、好ましくは熱機械分析による熱変形試験で200℃での変形が10%以下である。
本発明における熱変形試験は、熱分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 熱・応用・歪測定装置 TMA/SS120)を用いてフィルムから幅4mmの試験片を切り出し、チャック間10mmで試験片に荷重0.25MPaをかけ、30℃(開始温度)から5℃/分で昇温し、各温度における試験片の変形(伸びまたは収縮)を測定した。変形は、試験片の変形率で表示した。変形率(%)は、変形量(伸び方向)/チャック間距離×100(%)で算出した。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、延伸方向における伸び(引張り破断点伸び)が好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、また、延伸方向における破断エネルギーが好ましくは0.1mJ以上、より好ましくは0.2mJ以上である。
本発明における破断エネルギー(mJ)は、引張り試験機(オリエンテック社製、テンシロン万能試験機 RTC―1225)を用いて、長さ:50mm、幅:15mmの試験片をチャック間距離20mmで、引張り速度300mm/分で測定して得た引張応力―ひずみ曲線図から、引張応力―ひずみ曲線と横軸(ひずみ)で囲まれた面積を切り取り、その重量(W−1)を測定した。
次いで、引張強さ(MPa)と伸び(%)で囲まれた面積を切り取りその重量(W−2)を測定し、(W−1)と(W−2)の比から破断エネルギー(mJ)を求めた。なお、破断エネルギー(mJ)を求めるために、伸び(%)を破壊に要した距離(mm)に換算した。
【0014】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、さらに好ましくは3〜6倍延伸されてなる。延伸倍率は2倍未満の延伸フィルムは耐熱性が改良されない虞がある。一方、延伸倍率に上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、さらに好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸されてなる。一方向の延伸倍率が2倍未満の二軸延伸フィルムは耐熱性が改良されない虞がある。一方、延伸倍率に上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、7倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの厚さは用途により種々決め得るが、通常5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲にある。
【0015】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは種々用途により、他の基材と積層してもよい。他の基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の生分解性ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、若しくはガラス、金属、アルミニューム箔、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂からなるフィルムは無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。
例えば、 本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面にシリコーン樹脂層が積層されてなる多層フィルムは、離型フィルムなどの用途に好適である。このような多層フィルムは、厚さ1〜300μmのポリ乳酸系延伸フィルム、厚さ0.1〜5μmの硬化樹脂層および厚さ0.01〜5μmのシリコーン樹脂層からなる。
【0016】
ポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法は、前記ポリ乳酸系組成物からなるシートを、通常50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で一方向に2倍以上、好ましくは3〜12倍に延伸して得られる延伸フィルムを通常140〜220℃、好ましくは150〜200℃で、1秒以上、好ましくは3秒〜60秒、より好ましくは3〜20秒熱処理してポリ乳酸系延伸フィルムとする方法である。
延伸倍率が2倍未満では、耐熱性に優れた延伸フィルムが得られない虞があり、一方、延伸倍率の上限は特に限定はされないが、12倍を超えると安定して延伸できない虞がある。延伸温度が50℃未満では、安定して延伸できない虞があり、また、得られる延伸フィルムの透明性、平滑性が劣る虞がある。
一方、110℃を超えるとフィルムが加熱ロールに付着し、フィルム表面が汚れ、また安定して延伸ができない虞があり、得られる延伸フィルムの靭性が劣る虞がある。熱処理時間が1秒未満では延伸フィルムに熱が伝わらず、熱処理の効果が発現されない虞がある。
また、予熱時間は長くても問題はないが、工程上60秒以下が好ましい。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルム製造方法の他の態様は、前記ポリ乳酸系組成物からなるシートを、通常50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、さらに好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸して得られる延伸フィルムを、通常140〜220℃、好ましくは150〜200℃で、1秒以上、好ましくは3秒〜60秒、より好ましくは3〜20秒熱処理してポリ乳酸系延伸フィルムとする方法である。
熱処理時間が1秒未満では延伸フィルムに熱が伝わらず、熱処理の効果が発現されない虞がある。また、予熱時間は長くても問題はないが、工程上60秒以下が好ましい。二軸延伸は、同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でもよい。
更に好ましく効率的な製造プロセスは、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を配合し、二軸押出機の先端にギヤポンプを経て/若しくは経ずにTダイより押し出し、チルロールで急冷することでシートを成形し、倍率3×3〜5×5に連続して延伸するものである。
【0017】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの製造にあたっては、前記ポリ乳酸系組成物からなり、広角X線回折による回折ピークが12°近辺、21°近辺及び24°近辺には検出されない〔(PSC)が検出されない〕原料シート或いはフィルムを用いることが好ましい。
広角X線回折による回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺に検出されるシート、即ちステレオコンプレックスが形成されたシートを用いた場合は、その形成量にもよるが、得られる延伸フィルムの透明性が劣り、又、靭性にも劣る虞がある。
ポリ乳酸系組成物からなるシートあるいはフィルムを広角X線回折による回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺には検出されない〔(PSC)が検出されない〕状態にする方法としては、例えば、前記のポリ乳酸系組成物をステレオコンプレックスの融点である220℃以上、好ましくは230〜260℃の範囲で溶融した後、5〜30℃で急冷してシートあるいはフィルムとする方法を採ることにより、ステレオコンプレックスの形成を抑えることができる。
本発明二軸延伸フィルムの製造方法としては、重量平均分子量が150,000〜200,000のポリ−L−乳酸及び重量平均分子量が200,000〜350,000のポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸=45/55〜55/45の重量比で用い、押出温度245〜255℃の二軸押出機の先端にギヤポンプを経て/若しくは経ずにTダイより押出し、0〜30℃のチルロールで急冷することによりシートを成形し、次いで、延伸温度50〜80℃で少なくとも2倍以上に逐次二軸または同時二軸により延伸することが望ましい。
その他の成形品
本発明のポリ乳酸系組成物はインジェクション(射出)、ブロー(吹き込み)、押出成形、真空成形、圧空成形、1.1〜1.5倍に弱延伸した後の真空成形、圧空成形および種々の成形方法により種々の成形品として用いられる。
射出成形には、一般に採用される射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト成形法を採用でされる。さらに、二色成形、インモールド成形、ガスプレス成形を利用することもできる。また、シリンダー内の樹脂温度は結晶化および熱分解を避けるため200℃を越えることが望ましく、200℃〜250℃とすることが通常である。
中でも、本発明では、シリンダー先端部分の温度が少なくとも1ゾーン以上が、200〜240℃中でも210〜220℃であることが望ましく、またホッパー側(供給側)のゾーンが230〜250℃である射出成形機を用いることが望ましい。なお、一旦融解された本発明の組成物をステレオコンプレックス構造ポリ乳酸の融点近傍で射出することが望ましい。
さらに、金型温度を100〜160℃とし、型内での保持時間を10秒〜3分とすることにより、結晶化を促進させることができるので、望ましい。
インジェクション成形品には、熱処理を施し結晶化させてもよい。このように成形品を結晶化させることにより、成形品の耐熱性をさらに向上させることができる。結晶化処理は、成形時の金型内、及び/又は、金型から取り出した後に行うことができる。生産性の面からは、射出成形品を形成する樹脂組成物の結晶化速度が遅い場合には、金型から取り出した後に結晶化処理を行うことが好ましく、一方、結晶化速度が速い場合には、金型内で結晶化処理を行ってもよい。
金型から成形品を取り出した後に結晶化処理を行う場合、熱処理の温度は60〜180℃の範囲であることが好ましい。熱処理温度が60℃未満では、成形工程において結晶化が進行しないことがあり、180℃より高いと、成形品を冷却する際に変形や収縮が生じることがある。加熱時間は射出成形品を構成する樹脂の組成、及び熱処理温度によって適宜決められるが、例えば、熱処理温度が70℃の場合には15分〜5時間熱処理を行う。また、熱処理温度が130℃の場合には10秒〜30分間熱処理を行う。
これらのインジェクション成形品の中でも、透明性が3mm厚さで全光線透過率(TT)が60%以上であることが容器等に利用される場合に、内容物が透視できるので望ましい。
また、真空/圧空成形の際に、シートを成形型に接触させる方法としては、得られる容器の品位が高い、生産効率が高い等の理由から、真空成形法、圧空成形法およびプレス成形法などが好ましい。
真空成形においては、プラスチック成形用の汎用成形機を良好に使用可能であり、熱板または熱風を用いてシートをシート作製時にシート表面温度を110〜150℃に予熱して、キャビティ温度100〜150℃でキャビティに密着させることが好ましい。キャビティには、多数の細孔を設けてキャビティ内を減圧することで成形を行い、型の再現性の良好な容器を得ることができる。
また、真空成形法において、プラグと称する押し込み装置を備えて用いることにより、シートの局所的な引き延ばしによる薄肉化を防止することができる。
圧空成形においても、プラスチック成形用の汎用成形機を良好に使用可能であり、熱板によるシートの可塑化後、熱板全体に設けられた多数の細孔からシート表面に空気圧を作用することで、シートの押し込み成形を行い、型の再現性の良好な成形品を得ることができる。
このようにして得られた真空/圧空成形品の中でも、熱湯(98℃)によっても変形しない耐熱性に優れた成形品が望ましい。
これらの射出成形品、ブロー成形品、真空/圧空成形品、押出成形品は、電気電子用品の部品、外装品、自動車の内装品、産業用、食品用の種々の包装用途にシート、フィルム、糸、テープ、織布、不織布、発泡成形品等の種々の成形品とすることができる。さらに紡糸には複合紡糸、スパンバンド法紡糸など従来公知の種々の紡糸方法がある。
本発明の成形品、例えばフィルム等には、必要に応じて他の材料を積層することも行われる。例えば、ポリオレフィンや他の生分解性プラスチックの層、無機物薄膜層などがある。
中でも、アクリル酸などの不飽和カルボン酸やその誘導体のポリマーや無機物薄膜層を設けてガスバリア性に優れた積層体を設けることも行われる。不飽和カルボン酸およびその誘導体からなるポリマー アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸やその金属塩、例えば、ストロンチウム、マグネシウム、亜鉛などの金属塩を重合して得られるポリマーや、それらのモノマーがポリビニルアルコールなどのポリマーの存在下に重合させて得られる耐ガスバリア性の層がある。
無機物薄膜層
無機物薄膜層には、金属または金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等の無機物を、フィルム上に薄い被膜を形成させたものがあり、その被膜がフィルムに対してガスバリア性を付与することができるものであれば、特に制限されるものではない。金属の具体例としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、銅、金、白金等を挙げることができ、金属酸化物の具体例としては酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることができる。
金属または金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物の具体的な材料を選択するに当たり、積層フィルム求められる物性や両層間の密着性を総合的に判断して行う。例えば、高いガスバリア性目的にする時には、アルミニウムが適切である。しかし、同時に高い透明性をも要求される場合には、無機酸化物、特に酸化珪素や酸化アルミニウムが好都合である。さらに、フィルム基材層との密着性を上げるために各種接着剤をアンカーコートすることができる。
また珪素酸化物はSiOやSiO2で表される化合物だけでなく、組成式SiOX(Xは1.0〜2.0)で表される組成物であってもよい。例えば、SiOとSiO2との1:1の組成物を使用することができる。これらの無機薄膜は、蒸着、スパッタリング、Cat−CVDなどの従来公知の種々の方法で形成することができる。
本発明のフィルムに、上記のようなガスバリア性層を積層した積層フィルムは、種々の用途に用いることができる。例えば、乾燥食品、水物。ボイル・レトルト食品、サプリメント食品等の包装材料、シャンプー、洗剤、入浴剤、芳香剤などのトイレタリー製品の包装材、粉体、顆粒体、錠剤などの医薬品の包装材、輸液バッグをはじめとする液体の医薬品の包装材、医療用具の包装袋、ハードディスク、配線基盤、プリント基盤などの電子部品の包装材、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機・有機ELディスプレイ、電子ペーパー等のバリア層の材料、その他の電子材料用のバリア材、真空断熱材用のバリア材、インクカートリッジ用等の工業製品の包装材、太陽電池、燃料電池用のバリア材、バックシートとして利用される。
【実施例】
【0018】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
実施例及び比較例で使用したポリ乳酸は次の通りである。
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA―1):
D体量:1.9% Mw:183000(222000)(g/モル)、Tm:162.9℃及びTg:58.1℃。
(ロ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―1):
D体量:100.0% Mw:323000(404000)(g/モル)、Tm:178.4℃及びTg:59.2℃
(ハ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―2):
D体量:100.0% Mw:223000(298000)(g/モル)、Tm:176.0℃及びTg:58.2℃
【0019】
本発明における測定方法は以下のとおりである。
(1−1)重量平均分子量(Mw)
下記の測定は一般的な高分子の分子量測定方法であり、この測定結果はカッコ書きで示した。
試料20mgに、GPC溶離液10mlを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm―PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC―25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置 Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置 データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器 示差屈折検出器(RI)
カラム Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度 40℃
溶離液 クロロホルム
流 速 1.0ml/分
注入量 200μL
分子量校正 単分散ポリスチレン
(1−2)重量平均分子量(Mw)
下記の測定は特にポリ乳酸ステレオコンプレックス構造物の測定に適しており、この測定結果はカッコ書きなしで示した。
試料20mgを移動相に溶解し(濃度0.5%)、0.45μmの親水性PTFEフィルター(Millex−LH;日本ミリポア)でろ過し、GPC試料溶液とした。
カラム:PL HFIPgel(300×7.5mm) 2本(Polymer laboratories)
カラム温度:40℃
移動相:HFIP+5mM TFANa
流量:1.0ml/分
検出:RI
注入量:50μL
測定装置:510高圧ポンプ、U6K注水装置、410示差屈折計(日本ウオーターズ)
分子量校正:単分散PMMA(Easi Cal PM−1;Polymer laboratories)
(2)DSC測定
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して試料を一旦融解させた後、250℃に10分間維持し、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させた後、再度、加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して熱融解曲線を得、得られた熱融解曲線から、試料の融点(Tm)及び融点の第2回昇温(2nd-heating)時のピーク高さ、ガラス転位点(Tg)、降温時での結晶化温度(Tc)及び熱量(Hc)を求めた。
なお、ピーク高さは、65℃〜75℃付近のベースラインと240℃〜250℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
(3)透明性
日本電色工業社製 ヘイズメーター300Aを用いてフィルムのヘイズ(HZ)及び平行光光線透過率(PT)を測定した。
(4)表面粗さ
株式会社小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE−30Kを用いてフィルム表面の中心面平均粗さ(SRa)を測定した。
(5)引張り試験
フィルムからMD方向(一軸延伸フィルムは延伸方向のみ採取)及びTD方向に、夫々短冊状の試験片(長さ:50mm、幅:15mm)を採取して、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、チャック間距離:20mmあるいは100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。
なお、破断エネルギー(mJ)は前記記載の方法で求めた。
ただし、実施例1〜4、比較例1、2、参考例1〜3は、チャック間距離20mmとしたが、実施例7〜18、29〜34、比較例4〜9、20〜23、参考例1、3、6は、チャック間距離は100mmとした。
【0020】
(6)透湿度(水蒸気透過度)
JIS Z0208 に準拠して求めた。フィルムを採取して、表面積が約100cm2の袋を作り、塩化カルシウムを適量入れた後、密封した。これを40℃、90%RH(相対湿度)の雰囲気中に3日間放置し、重量増加から透湿度(水蒸気透過度)を求めた。
(7)酸素透過度
JIS K7126に基づいて20℃湿度0%RH(相対湿度)の条件で、酸素透過測定器(MOCON社製、OXTRAN2/21 ML)を使用して測定した。
(8)耐熱性
延伸フィルムの耐熱性は前記した如く、熱機械分析による熱変形試験により測定した。
(9)軟化温度
JISK7196記載の方法で測定した。軟化温度の針入度測定は、装置TMA(線膨張率測定は圧縮タイプ)を用い、軟化温度測定条件は以下の通りである。
昇温速度 : 5℃/分
荷重 : 50g
針の先端形状 : 先端直径1mmφ×長さ2mm、直径3mmφの円柱(石英)
(10)酵素によるポリ−L−乳酸の分解
Blend of aliphatic polymers:V Non-enzymatic and enzymatic hydrolysis of blends from hydrophobic poly(L-lactide) and hydrophobic poly(vinyl alcohol);Polymer Degradation and Stability 71(2001) 403-413,Hideto Tuji, et al の記載に基づいて、1mol/lTris−HCl(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン HCl )緩衝溶液(ナカライテスク社製)を蒸留水で5倍に希釈し、更に希釈液300mlに対して60mgの試薬特級アジ化ナトリウム、60mgのプロティナーゼK(ナカライテスク社製 活性比:30u/mg solid)を攪拌しながら溶解した。
上記によって得られた酵素溶液10ccと下記実験で得られたプレスシート片(厚さ約500μm×10mm×10mm、重量:約70mg)を試験管に入れ、40℃下でTOHMAS KAGAKU社製の恒温振動槽Thomastat T−N225に入れ約10cmの行路を周期15Hzで振動した。
実験開始から13日目と26日目に酵素溶液の交換を行い、13日目と38日目(終了)に重量測定及び走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察を行った。
(11)走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察
エイコー・エンジニアリング社製IB−2型イオンコーターを用いて金をコートし、更に日本電子データム社製JED−2300型走査型電子顕微鏡を用いて倍率×1500、×5000で表面観察を行った。
(12)インジェクション成形の加工性(型開き性) 射出充填後金型を開いた際に成形品が固化しているものを、型開き性良好とした。また成形品が軟化しており、取り出した後形が崩れてしまうもの、またゼットピンで取り出せず、スプルーが金型内に残ってしまうものを、型開き性不良とした。
(13)真空成形品の耐熱性
真空成形品(容器)の耐熱性を98℃の熱湯を底から6cmまで入れて容器の変形が起きるか確認することで測定した。
但し、実施例35は浅底のため底から3cmとした。
○:変形なし
△:軽微な変形有り(主に底部の変形)
×:変形が大きい(容器が傾く、湯がこぼれるような状況)
(14)面配向度
以下の方法で測定した屈折率(Nx(MD平行)、Ny(TD平行)、Nz(厚さ))を用いて面配向度=(Nx+Ny)/2−Nz で計算した。
試験方法:アッベ法(A法) 試験装置:アッベ屈折計 DR−M2型((株)アタゴ製)
試験温度:23℃/50%RH
試験波長:D線(589nm)
測定方法:Nx(MD平行)、Ny(TD平行)、Nz(厚さ)
試験数 :n=3
【0021】
実施例1
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量%)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて250℃、60rpmの条件下で15分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物―1)を得た。
<プレスシートの製造>
組成物―1を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:250℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:5分(圧力10kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−1)を得た。
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシート−1を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(東洋精機製作所、ヘビー型)を用いて60℃ホットエアーで50秒予熱した後、5m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後に直ちに延伸フィルムを扇風機で冷却し、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
次いで、得られたニ軸延伸フィルム金枠にクリップで固定し、180℃×30秒の条件でヒートセット(熱処理)した後、室温で十分冷やしてポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0022】
実施例2
実施例1の二軸延伸フィルムのヒートセット条件に代えて、200℃×30分とした以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す。
【0023】
実施例3
実施例1の延伸温度に代えて85℃とした以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す。
【0024】
実施例4
実施例1の延伸倍率に代えて1×4とした以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す
【0025】
比較例1
実施例1のポリ乳酸系組成物の製造条件に代えて、混練時間を3分とした以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す。
【0026】
比較例2
比較例1の熱処理条件に代えて、200℃×30分とした以外は、比較例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す。
【0027】
参考例1
実施例1のポリ乳酸系組成物に代えて、PLLA−1を混練せずに用いた以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す
参考例2
実施例2のポリ乳酸系組成物に代えて、PLLA−1を混練せずに用いた以外は、実施例2と同様に行った。
結果を表1および表2に示す
参考例3
実施例1のポリ乳酸系組成物に代えて、PDLA−1を混練せずに用いた以外は、実施例1と同様に行った。
結果を表1および表2に示す
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表1および表2から明らかなように、DSC測定において10分経過後の降温時(10℃/分)のピークが45mJ/mg以上であり、第二回昇温でTm=150〜180℃のピークがない組成物−1からなる実施例1〜4の延伸フィルムはいずれも表面粗さ(SRa)が0.1μm以下と表面平滑性に優れヘイズが10%と透明性に優れている。
また熱変形測定の結果から、特に高温で熱処理を行った実施例2は比較例1,2に比べると温度による変形が小さく、また安定している。
さらにガスバリア性に着目すると、同じくDSC測定において10分経過後の降温時(10℃/分)のピークが45mJ/mg以上であり、第二回昇温でTm=150〜180℃のピークがない組成物−1からなる実施例2の延伸フィルムは、PLLA単体である参考例1に比べると透湿度で1/3、酸素透過度で1/10にガスバリア性が改善しているのが分かる。
PLLAまたはPDLA単体からなる参考例1、3は表面平滑性、透明性は優れるもの、実施例1〜4と比べると熱変形は大きく、180℃で融解してしまうのが分かる。また、参考例2は熱処理においてフィルムが融解するため得られなかった。
【0031】
実施例5
<ポリ乳酸組系成物の製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量%)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(二軸混練機)を用いて250℃、60rpmの条件下で15分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物―2)を得た。
<プレスシートの製造>
組成物―1を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:240℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:室温下で金枠内で徐冷、の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−2)を得た。
【0032】
実施例6
実施例5のポリ乳酸系組成物(組成物―2)をPLLA−1:PDLA−1=60:40とした以外は、実施例5と同様に行った。
結果を表3に示す。
比較例3
実施例5のポリ乳酸系組成物(組成物―2)をPLLA−1:PDLA−1=100:0とした以外は、実施例5と同様に行った。
結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
表3から明らかなように、DSC測定結果より2nd heatingでTm=150〜180℃のピークがなく、またcoolingの結晶化熱量が50(J/g)以上である組成物−2からなる実施例5の徐冷プレスシートは217℃と高い耐熱温度であった。またPLDAを70%含む構成の実施例6の徐冷プレスシートは174℃と高い耐熱温度であった。
【0035】
実施例7
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA―1:PDLA―2を50:50(重量%)の比で計量し、フィード速度30g/分で、東芝機械株式会社製 同方向回転二軸混練押出機(TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(l/d):42、スクリュパターン(i)(スクリュ部:1144mm、ミキシング部:382mm)を用いてC1〜C12:250℃、400rpmの条件下で混練押出し、ポリ乳酸系組成物(組成物―7)を得た。
<プレスシートの製造>
組成物―7を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:250℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:5分(圧力10kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−7)を得た。
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシート−7を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製、KARO4)を用いて70℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後に200℃で1分間のヒートセットを行い、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表4に示す。
【0036】
実施例8
実施例7のフィード速度条件に代えて、60g/分とした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0037】
実施例9
実施例7の二軸押出スクリュパターンをタイプ(ii)(スクリュ部:994mm、ミキシング部:532mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0038】
実施例10
実施例7のフィード速度条件に代えて、60g/分とし、また二軸押出スクリュパターンをタイプ(ii)(スクリュ部:994mm、ミキシング部:532mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0039】
実施例11
実施例7の二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0040】
実施例12
実施例7のフィード速度条件に代えて、60g/分とし、また二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0041】
実施例13
実施例7のPDLA−2に代えてPDLA−1とし、また二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0042】
実施例14
実施例7のPDLA−2に代えてPDLA−1とし、フィード速度を60g/分とし、また二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0043】
実施例15
実施例7の二軸押出シリンダー温度パターンをC1〜C6/C7〜12=250℃/200℃、二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0044】
比較例4
実施例7のフィード速度条件に代えて、160g/分とした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0045】
比較例5
実施例7のフィード速度条件に代えて、340g/分とした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0046】
比較例6
実施例7のフィード速度を340g/分とし、スクリュ回転数を200rpmとした以外は、実施例7と同様に行った。
結果を表4に示す。
【0047】
比較例7
実施例7のフィード速度を160g/分とし、二軸押出スクリュパターンをタイプ(ii)(スクリュ部:994mm、ミキシング部:532mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0048】
比較例8
実施例7のフィード速度を340g/分とし、二軸押出スクリュパターンをタイプ(ii)(スクリュ部:994mm、ミキシング部:532mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0049】
比較例9
実施例7のフィード速度を160g/分とし、二軸押出スクリュパターンをタイプ(iii)(スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mm)とした以外は、実施例7と同様に行った。
また組成物のDSCによる評価だけ行い、プレスシートの製造、二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0050】
参考例4
PLLA−1をそのままDSCで評価し、プレスシートの製造を行った。二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0051】
参考例5
PDLA−2をそのままDSCで評価し、プレスシートの製造を行った。二軸延伸フィルムの製造は行わなかった。
結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
(表4−2)
【0054】
(表4−3)
【0055】
(表4−4)
【0056】
(表4−5)
【0057】
(表4−6)
【0058】
表4から明らかなように、混練により分子量が120,000以下に低下した実施例7〜15はDSCによる組成物の評価結果で2nd heatingでのΔHscが35mJ/mg以上であり、またTm=150〜180℃(ピーク1)とTm=200〜250℃(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であり、それを外れている比較例4〜9に比べてステレオコンプレックス構造物を作りやすい組成物であることが分かる。
また実施例7、8のプレスシートを48日間酵素で分解した後にSEMで観察したところ、マトリックスの島相が溶出し径0.1〜1.0μm程度の小さな孔が空いておりPLLAとPDLAが十分分散しているのに対して、比較例4のプレスシートはマトリックスの海相が溶出し径1〜200μm程度のマトリックスの島相(PDLAと推定される)が浮き出ておりPLLAとPDLAが十分分散していないのが分かる。
【0059】
更に実施例7〜9と比較例4〜6の二軸延伸フィルムの比較を行うと実施例7〜9の方はヘイズが比較例4〜6より小さいため透明性が高く、かつ耐熱温度が高く、200℃でも伸びきらず測定限界に達しないフィルムとなっている。
【0060】
実施例16
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量%)の比で計量し、フィード速度120g/分で、東芝機械株式会社製 同方向回転二軸混練押出機(TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(l/d):42、スクリュ部:882mm、ミキシング部:644mmからなるスクリュパターン)を用いてC1〜C12:250℃、430rpmの条件下で混練押出し、次にその先端に一軸混練押出機(SE−50C スクリュ径:50mm、スクリュ長(l/d):28)を用いて、更に幅400mmのコートハンガー型Tダイのリップに0.5mm厚さのスズ合金板を挿入固定し幅280mmとして用い、鏡面処理したチルロール(水温:15℃)で1.0m/分の速度で成形を行い、厚さ約300μmの無延伸シートとした。
【0061】
この無延伸シートをブルックナー社製二軸延伸機を用いて延伸、ヒートセット処理した。本延伸機のMDO(縦延伸工程)前に繰り出し機を設置し、連続的に無延伸シートを繰り出した。この二軸延伸機は押出機〜ダイスを具備しているが二軸押出機はないため、上記の工程で別途成形した無延伸シートを移動して用いた。
また繰り出し速度は2m/分とし、MDOは温度65℃で3倍にTDO(横延伸工程)は温度70℃で3倍に延伸した後にテンター内で200℃で約40秒間のヒートセットを行い、厚さ30μmの延伸フィルムを得た。
結果を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
ダイスから出てきた無延伸シートのDSCを測定した。2nd−heatingのピーク高さを見るとTm=200〜250℃のピークしかなく、選択的にステレオコンプレックス晶を生成する組成物となっていることが分かる。
また本組成物を上記のように連続成形して出来た延伸フィルムは(実施例16)は透明性が高く、実用的に十分な靱性があり、かつ200℃以上の耐熱性を有している。
【0064】
実施例17a
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA―1:PDLA―1を50:50(重量%)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて250℃、60rpmの条件下で15分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物―8)を得た。
【0065】
<プレスシートの製造>
組成物―8を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:250℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:5分(圧力10kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−2)を得た。
【0066】
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシート−2を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(東洋精機製作所、ヘビー型)を用いて60℃ホットエアーで50秒予熱した後、5m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後に直ちに延伸フィルムを扇風機で冷却し、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
次いで、得られたニ軸延伸フィルム金枠にクリップで固定し、200℃×30分の条件でヒートセット(熱処理)した後、室温で十分冷やしてポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを得た。
【0067】
実施例17b
混練時間を3分にした以外は実施例17aと同様に行った。
得られたポリ乳酸系ニ軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表6に示す。
【0068】
(表6)
【0069】
表6から明らかなように、プレスシートのDSC測定において10分経過後の降温時(10℃/分)のピークが45J/g以上であり、第二回昇温でTm=150〜180℃のピークがないプレスシート−2からなる実施例17aの延伸フィルムが表面粗さ(SRa)が0.1μm以下と表面平滑性に優れヘイズが3%と透明性に優れている。
一方、実施例17bは延伸後200℃×30分熱処理をした後のDSC測定ではΔHm2が56J/gと大きくピーク高さ比も0.1以下とステレオコンプレックス結晶が多く生成していることが伺えるが、フィルムの物性を実施例17bに比べ17aのほうがフィルム強度、ヘイズ、表面粗さ、耐熱性に優れている。
本実施例17bのプレスシートのDSC測定では1st coolingのΔHcが15J/gと小さく、ピーク高さも1.2以上と大きい。これはもともとステレオコンプレックス結晶を作りにくい組成物であったものをその後の延伸、200℃×30分熱処理の工程でステレオコンプレックス結晶化したため、配向の緩和、非結晶部の増大が起きているためと推定される。即ち、ステレオコンプレックス結晶を作りにくいPLLAとPDLAの混練が不十分な組成物でも後処理(延伸、熱処理)によってステレオコンプレックス結晶を生じるが、成形品の物性はPLLAとPDLAを十分混練して得た成形品には及ばないことを示している。
【0070】
実施例18
<インジェクション成形用チップの製造>
実施例16で作製した厚さ約300μmのシートを粉砕した後にプレス成形機で250℃×5分で約1mm厚でプレス成形し、カットしたものを原料とした。
<インジェクション成形>
東洋機械金属インジェクション成形機Ti−80を用い下記条件で成形した。金型は3mm厚のスペシメン用を使用した。
シリンダー温度:C1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=215/215/215/215/235(℃)
金型温度:130(℃)
型内結晶化時間:1(分)
切替位置0〜40mmの速度:50(%)、圧力:30(kgf)、タイマー:5(秒)
切替位置40〜40mmの速度:50(%)、圧力:30(kgf)、タイマー:10(秒)
切替位置40〜70mmの速度:50(%)、圧力:30(kgf)、タイマー:4(秒)
チャージ位置70mmの速度 :50(%)、タイマー:10(秒)
サックバック(位置0mm) :50(%)、タイマー:170(秒)
【0071】
実施例19
金型温度を120(℃)とした以外は、実施例18と同様に行った。
実施例20
金型温度を120(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
実施例21
金型温度を110(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0072】
比較例10
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を60(℃)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例11
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を80(℃)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0073】
比較例12
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を80(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例13
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を90(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0074】
比較例14
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=250/250/250/250/250(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例15
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=230/230/230/250/250(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0075】
比較例16
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=225/225/225/235/235(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例17
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=225/225/225/235/235(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を1(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0076】
比較例18
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=225/225/225/235/235(℃)
金型温度を80(℃)、型内結晶化時間を1(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例19
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=225/225/225/235/235(℃)
金型温度を20(℃)、型内結晶化時間を3(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0077】
比較例20
PLLA―1:PDLA―1=50:50(重量%)からなる無延伸シートを粉砕してプレスし更にカットしものの代わりにPLLA―1を単体で用い、
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=200/200/200/200/200(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を1(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
比較例21
比較例20においてオーブンで120℃×5分加熱した例を示す。
【0078】
比較例22
PLLA―1:PDLA―1=50:50(重量比)からなる無延伸シートを粉砕してプレスし更にカットしものの代わりにPLLA―1:タルク(日本タルク社製P4)=70:30(重量比)を予め二軸押出機で混練して作ったペレットを用い、
シリンダー温度をC1(先端)/C2/C3/C4/C5(ホッパー側)
=200/200/200/200/200(℃)
金型温度を100(℃)、型内結晶化時間を1(分)とした以外は、実施例18と同様に行った。
【0079】
比較例23
比較例22においてさらにオーブンで120℃×5分加熱した例を示す。
【0080】
(表7)
(表7−1)
(表7−2)
(表7−3)
(表7−4)
結果を表7に示す。表から明らかなように、PLLA―1とPDLA―1を50:50(重量%)で予め十分混練したシートを原料として用い、且つシリンダー温度C1〜C4が220℃以下の実施例18〜21は金型内で結晶化が進んでいるため、型開き性が良好であった。また成形品は実施例18のようにDSC測定において、第一回昇温で結晶化のピークが現れずほとんど結晶化しており、且つTm=150〜180℃の融解のピークが現れず、Tm=200〜250℃の融解ピークのみであることから、成形品の中の結晶構造はステレオコンプレックス晶化している。PLLA−1に炭酸カルシウムを30重量%配合した比較例22、23に比べても透明性が優れている。
比較例23は、比較例22において更に120℃×5分の熱処理を行ったものであり、DSCの測定により1st heatingのΔHcが減少していることから、熱処理で結晶化が進み耐熱性が改善することが予想されるが、熱処理が別工程のためコストがかかる。
【0081】
実施例22
<真空成形用シートの製造>
実施例16で作製した厚さ約300μmのシートを原料とした。
<真空成形>
株式会社浅野研究所製カットシートテスト成形機FKS−0631−20を用いて下記条件で成形した。金型は上面径82mm、下面径55mm、絞り深さ60mmのプリン型を用いた。
【0082】
(1)時間設定
上テーブル下降遅れ:0.0(秒)
真空遅れ :0.8(秒)
圧空遅れ :1.2(秒)
下テーブル上昇遅れ:0.2(秒)
冷却エア遅れ :0.0(秒)
冷却時間 :60.0(秒)
型締遅れ :0.5(秒)
離型1時間 :0.5(秒)
排気時間 :0.5(秒)
離型2時間 :0.0(秒)
排気時間 :0.5(秒)
型締切遅れ :60.0(秒)
圧空圧力 :0.5(秒)
【0083】
(2)上テーブル
オープンハイト :250.0(mm)
下降低速位置 :157.0(mm)
シャットハイト : 94.0(mm)
下降高速 :100 (%)
下降低速 :100 (%)
上昇高速 :100 (%)
上昇低速 : 3 (%)
上昇高速位置 :150.0(mm)
【0084】
(3)下テーブル
シャットハイト :115.0(mm)
上昇低速位置 :220.0(mm)
オープンハイト :300.0(mm)
上昇高速 :100 (%)
上昇低速 :100 (%)
下降高速 : 20 (%)
上昇低速 :100 (%)
上昇高速位置 :200.0(mm)
【0085】
本装置は(1)予熱部、(2)成形部と分かれているバッチ式である。まず(1)予熱部で遠赤外ヒーターによりシートが加熱させ放射温度計によりシート表面の温度が設定値に予熱されると、(2)成形部に移動しキャビティ/プラグ間で成形される。
予熱ヒーター温度を300℃にし、シート表面温度が140℃に上昇したところで成形を行った。予熱時間は21秒であった。またキャビティの設定温度は100℃、プラグの設定温度は100℃、成形時間(型内保持時間)は60秒とした。
実施例23
キャビティ設定温度を140℃とする以外は実施例22と同様に行った。
【0086】
実施例24
予熱ヒーター温度を400℃にし、シート表面温度が80℃に上昇したところで成形を行い、またキャビティの設定温度は130℃、プラグの設定温度は130℃とした以外は実施例22と同様に行った。
比較例25
予熱ヒーター温度を400℃にし、シート表面温度が100℃に上昇したところで成形をした以外は実施例22と同様に行った。
【0087】
比較例26
予熱ヒーター温度を400℃にし、シート表面温度が100℃に上昇したところで成形を行い、またキャビティの設定温度は120℃、プラグの設定温度は120℃とした以外は実施例22と同様に行った。
比較例27
PLLA―1:PDLA―1=50:50(重量%)からなるシートを用いる代わりにPLLA―1単体からなるシートを用いた以外は実施例22と同様に行った。
【0088】
比較例28
PLLA―1:PDLA―1=50:50(重量%)からなるシートを用いる代わりにPLLA―1単体からなるシートを用い、またキャビティの設定温度を40℃、プラグの設定温度を40℃とした以外は実施例22と同様に行った。
結果を表8に示す。
【0089】
(表8)
【0090】
表8から明らかなように、PLLA―1とPDLA―1を50:50(重量%)で予め十分混練したシートを原料として用い、且つ予熱に時間をかけてシートで一部結晶させた実施例22、実施例23はヘイズはやや上がるものの成形性、耐熱性ともに優れていた。一方PLLA−1単体からなる比較例26は同一条件ではキャビティ内で成形品が軟化して貼りついてしまい成形できず、成形するためにキャビティ、プラグ温度を常温まで下げた比較例27では耐熱性が得られなかった。
また予熱ヒーター温度を上げて予熱時間が短い条件とした実施例24は成形性は不安定ながらもヘイズの低いサンプルが得られた。熱湯を入れても大きな変形はなく、耐熱性に優れたサンプルであった。
【0091】
実施例25
<溶液(X)の作製>
アクリル酸亜鉛(アクリル酸のZn塩)水溶液〔浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、Zn成分10重量%)〕と、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をモル分率でそれぞれ98.5%、1.2%、0.3%となるように混合し、アクリル酸Zn塩溶液(X)からなる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩溶液を作製した。
【0092】
《シリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3)》
(7)シリル基変性ビニルアルコール系重合体;重合度,鹸化度%、クラレ社製、商品名;R−1130(B3−1)
【0093】
<バリアコートフィルムの作製>
上記アクリル酸Zn塩溶液(X)を実施例16の二軸延伸フィルムのコロナ処理面に、メイヤーバーで塗布量が固形分で3.5g/m2になるように塗布し、熱風乾燥器を用いて乾燥した。この後、速やかに塗布面を上にしてステンレス板に固定し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度180mW/cm2、積算光量180mJ/cm2の条件で紫外線を照射して重合しガスバリア性膜を積層したガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムの透湿度、酸素透過度を測定した。結果を表9に示す。
【0094】
実施例26
実施例16の二軸延伸フィルムに、厚さ100nmのアルミナ被膜を成形させた。その際、電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、蒸着源として酸化アルミナを使用し、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。
実施例27
実施例16の二軸延伸フィルムに、厚さ300nmのアルミニウム被膜を成形させた。その際、電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、蒸着源としてアルミニウムを使用し、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。
【0095】
実施例28
実施例16の二軸延伸フィルムに、厚さ100nmの酸化珪素被膜を成形させた。その際、電子ビーム加熱方式真空蒸着装置を用い、蒸着源としてSiO:SiO2=1:2混合物を使用し、真空容器内を0.001Torr以下の真空度に維持しながら蒸着処理を行った。
結果を表9に示す。
【0096】
(表9)
【0097】
表9から明らかなように実施例16にバリア膜を施した各フィルムは更にバリア性能が向上し、食品包装等バリア性能が必要な用途にも問題ないレベルにまでなっていることが分かる。
【0098】
実施例29
<延伸成形用シートの製造>
実施例16で作製した厚さ約300μmのシート(無延伸)を原料とした。
<二軸延伸フィルムの製造>
厚さ約300μmのシート(無延伸)を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製)を用いて65℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後に室温下で30秒冷却し、厚さ約30μmの二軸延伸フィルムを得た。
実施例30
予熱時のホットエアーを70℃とした以外は実施例29と同様に行った。
実施例31
予熱時のホットエアーを75℃とした以外は実施例29と同様に行った。
実施例32
予熱時のホットエアーを80℃とした以外は実施例29と同様に行った。
実施例33
予熱時のホットエアーを85℃とした以外は実施例29と同様に行った。
実施例34
予熱時のホットエアーを90℃とした以外は実施例29と同様に行った。
参考例6
実施例16で作製したさいに合わせて厚さ約30μmの無延伸シートを成形した。それをそのまま評価した。
結果を表10に示す。
【0099】
(表10)
【0100】
表10から明らかなように延伸を行った実施例29〜34は配向度が0.006〜0.011であるが、無延伸である参考例1は配向度が0.0001である。一方、フィルム物性は面配向度が大きいほど、即ちこの範囲では延伸予熱温度が低いほど、フィルムの破断点応力、伸度及びヤング率が高くなる傾向にあった。
実施例35
<真空成形用シートの製造>
実施例16で作製した厚み約300μmのシート(無延伸)を原料とした。
<真空成形>
大森機械工業株式会社製真空成形機を用いて下記条件で成型した。金型は内径100mm、絞り深さ40mmの円筒型を用いた。
予熱時間:5.0(秒)
予熱温度:100(℃)
キャビティの加温はなし(15℃程度)
<熱処理>
上記成形品をアルミ製治具に固定しオーブン内で200℃×15分熱処理を行った。
また熱処理後は速やかに冷却するため20℃の水中に治具ごと投入した。
得られた成形品は98℃の熱湯を注いでも変形しなかった。またHZ:3.9(%)、
TT:91.4(%)、PT:87.9(%)と透明性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の組成物は特定の熱特性を有する。これは、容易にステレオコンプレックス構造物を選択的に、かつ均一の形成するためと考えられる。そのため本組成物からなる延伸フィルムなどの各種成形品は、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸の単体からなる成形品に比べ、耐熱性及びガスバリア性、靭性に優れており、更に表面平滑性、透明性に優れている。またインジェクション等の成形品は従来に比べて加工性(型開き性)、透明性に優れている。
このように本発明の組成物からなるインジェクション(射出)、ブロー(吹き込み)、押出および紡糸などの種々の成形方法によって得られるフィルム、シート、糸などの成形品も優れた耐熱性を有する。これは、非晶状態から結晶化する際に選択的にステレオコンプレックス構造物を形成するためであり、また本発明の組成物によれば結晶化の処理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例1で得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図2】実施例1で得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図3】実施例2で得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図4】実施例2で得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。 これらのDSCの測定は10℃/分で0℃から250℃まで第1回昇温し(1st−heating)、250℃で10分経た後、10℃/分で0℃まで第1回降温し(1st−cooling )、0℃から250℃まで第2回昇温(2nd−heating)して測定した。
【図5】実施例7における酵素分解13日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図6】実施例7における酵素分解48日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図7】実施例8における酵素分解48日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図8】比較例4における酵素分解13日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図9】比較例4における酵素分解48日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図10】参考例4における酵素分解13日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図11】参考例5における酵素分解13日後における走査型電子顕微鏡(SEM)による表面を示す。
【図12】実施例17aのプレスシートの第1回昇温(1st−heating)のDSC測定結果を示す。
【図13】実施例17aのプレスシートの第1回降温(1st−cooling)のDSC測定結果を示す。
【図14】実施例17aのプレスシートの第2回昇温(2nd−heating)のDSC測定結果を示す。
【図15】実施例17aの延伸フィルムの第1回昇温(1st−heating)のDSC測定結果を示す。
【図16】実施例17bのプレスシートの第1回昇温(1st−heating)のDSC測定結果を示す。
【図17】実施例17bのプレスシートの第1回降温(1st−cooling)のDSC測定結果を示す。
【図18】実施例17bのプレスシートの第2回昇温(2nd−heating)のDSC測定結果を示す。
【図19】実施例17bの延伸フィルムの第1回昇温(1st−heating)のDSC測定結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSC測定において250℃で10分経過した後の降温(cooling)時(10℃/分)のピークが30mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
【請求項2】
DSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=150〜180℃のピーク(ピーク1)とTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5以下であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
【請求項3】
DSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)が35mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
【請求項4】
ポリ−L−乳酸75〜25重量部及びポリ−D−乳酸25〜75重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部)から調製されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
重量平均分子量が10,000〜300,000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物から成形された成形品。
【請求項7】
請求項6に記載のインジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出により成形された成形品。
【請求項8】
少なくとも一方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムであることを特徴とする請求項6に記載のフィルム成形品。
【請求項9】
縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムであることを特徴とする請求項8に記載のフィルム成形品。
【請求項10】
140〜220℃で1秒以上熱処理してなることを特徴とする請求項8または9に記載の延伸フィルム。
【請求項11】
広角X線回折による回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺にあり、且つこの回折ピークの面積(SSC)と16°近辺の回折ピークの面積(SPL)の合計量(総面積)に対する面積(SSC)の割合が、90%以上であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項12】
熱機械分析による熱変形試験で200℃での変形が10%以下である請求項8〜11のいずれかに記載の組成物からなる延伸フィルム。
【請求項13】
200℃において溶融しないことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項14】
延伸方向の伸びが10%以上である請求項8〜13のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項15】
延伸方向の破断エネルギーが0.1mJ以上である請求項8〜14のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項16】
縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸して得られる二軸延伸フィルムの表面粗さ(SRa)が0.1μm以下であることを特徴とする請求項8〜15のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項17】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物からなるポリ乳酸系樹脂用結晶化促進剤。
【請求項18】
請求項17の結晶化促進剤1〜90重量部およびポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸99〜10重量部を混練してなる結晶化促進性に優れた組成物。
【請求項19】
請求項18の組成物から成形されてなる成形品。
【請求項20】
インジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出により成形されてなる請求項19に記載の成形品。
【請求項21】
少なくとも一方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムであることを特徴とする請求項19に記載のフィルム成形品。
【請求項22】
140〜220℃で1秒以上熱処理してなることを特徴とする請求項21に記載の延伸フィルム。
【請求項23】
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の重量平均分子量が、いずれも6,000〜500,000の範囲内であり、かつ、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方の重量平均分子量が30,000〜500,000であるポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸から混練により調製されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
重量平均分子量が150,000〜350,000のポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸(但し、ポリ−D−乳酸の重量平均分子量はポリ−L−乳酸の重量平均分子量より大きい)を、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸=75/25〜25/75の重量比で用い、混練により得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
請求項24記載の組成物であって、当該組成物を240〜260℃でプレス後0〜30℃で急冷して得られるプレスシートを用いて、ポリ−L−乳酸を分解する酵素を利用して、ポリ−L−乳酸を分解して除去した後のプレスシートを走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により、直径5μmの孔が観測されないことを特徴とする請求項24記載の組成物。
【請求項26】
請求項25記載の混練が二軸混練機または二軸押出機を用いた混練であることを特徴とする組成物。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれかに記載の混練により、得られる組成物の重量平均分子量が、利用するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のそれぞれの重量平均分子量を加重平均して得られる重量平均分子量の数値の0.3から0.6倍の範囲となるように溶融混練することにより得られることを特徴とする請求項24から26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
重量平均分子量が150,000〜350,000のポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸=75/25〜25/75の重量比で用い、押出温度245〜255℃の二軸押出機を経てTダイより押出し、0〜30℃のチルロールで急冷することによりシートを成形し、次いで、延伸温度50〜80℃で少なくとも2倍以上に逐次二軸または同時二軸で延伸することを特徴とする二軸フィルムの製造方法。
【請求項29】
請求項10〜16のいずれかに記載の延伸フィルムの少なくとも片面にシリコーン樹脂層が積層されてなる多層フィルム。
【請求項30】
厚さ1〜300μmの延伸フィルム、厚さ0.1〜5μmの硬化樹脂層および厚さ0.01〜5μmのシリコーン樹脂層からなることを特徴とする請求項29に記載の多層フィルム。
【請求項31】
インジェクション成形品の透明性が3mm厚さで全光線透過率(TT)が60%以上であることを特徴とする7または20に記載のインジェクション成形品。
【請求項32】
請求項7または20に記載の熱湯によっても変形しない耐熱性を有することを特徴とする真空/圧空成形品。
【請求項33】
不飽和カルボン酸またはその誘導体のポリマーからなる層を有することを特徴とする請求項6〜16のいずれかに記載の成形品またはフィルム。
【請求項34】
無機物薄膜層を有することを特徴とする請求項6〜16および19〜22のいずれかに記載の成形品またはフィルム。
【請求項35】
アッべ法により測定した面配向度が0.001以上である請求項8〜16、21、および22の何れかに記載の延伸フィルム。
【請求項1】
DSC測定において250℃で10分経過した後の降温(cooling)時(10℃/分)のピークが30mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
【請求項2】
DSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=150〜180℃のピーク(ピーク1)とTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)のピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.5以下であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
【請求項3】
DSCの第2回昇温(2nd-heating)時の測定(250℃で10分経た後に10℃/分で降温を行い、0℃から再度10℃/分で昇温)においてTm=200〜240℃のピーク(ピーク2)が35mJ/mg以上であることを特徴とするポリ乳酸系組成物。
【請求項4】
ポリ−L−乳酸75〜25重量部及びポリ−D−乳酸25〜75重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部)から調製されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
重量平均分子量が10,000〜300,000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物から成形された成形品。
【請求項7】
請求項6に記載のインジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出により成形された成形品。
【請求項8】
少なくとも一方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムであることを特徴とする請求項6に記載のフィルム成形品。
【請求項9】
縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムであることを特徴とする請求項8に記載のフィルム成形品。
【請求項10】
140〜220℃で1秒以上熱処理してなることを特徴とする請求項8または9に記載の延伸フィルム。
【請求項11】
広角X線回折による回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺にあり、且つこの回折ピークの面積(SSC)と16°近辺の回折ピークの面積(SPL)の合計量(総面積)に対する面積(SSC)の割合が、90%以上であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項12】
熱機械分析による熱変形試験で200℃での変形が10%以下である請求項8〜11のいずれかに記載の組成物からなる延伸フィルム。
【請求項13】
200℃において溶融しないことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項14】
延伸方向の伸びが10%以上である請求項8〜13のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項15】
延伸方向の破断エネルギーが0.1mJ以上である請求項8〜14のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項16】
縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸して得られる二軸延伸フィルムの表面粗さ(SRa)が0.1μm以下であることを特徴とする請求項8〜15のいずれかに記載の延伸フィルム。
【請求項17】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物からなるポリ乳酸系樹脂用結晶化促進剤。
【請求項18】
請求項17の結晶化促進剤1〜90重量部およびポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸99〜10重量部を混練してなる結晶化促進性に優れた組成物。
【請求項19】
請求項18の組成物から成形されてなる成形品。
【請求項20】
インジェクション、ブロー、真空/圧空成形または押出により成形されてなる請求項19に記載の成形品。
【請求項21】
少なくとも一方向に2倍以上延伸されてなる延伸フィルムであることを特徴とする請求項19に記載のフィルム成形品。
【請求項22】
140〜220℃で1秒以上熱処理してなることを特徴とする請求項21に記載の延伸フィルム。
【請求項23】
ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸の重量平均分子量が、いずれも6,000〜500,000の範囲内であり、かつ、ポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸のいずれか一方の重量平均分子量が30,000〜500,000であるポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸から混練により調製されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
重量平均分子量が150,000〜350,000のポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸(但し、ポリ−D−乳酸の重量平均分子量はポリ−L−乳酸の重量平均分子量より大きい)を、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸=75/25〜25/75の重量比で用い、混練により得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
請求項24記載の組成物であって、当該組成物を240〜260℃でプレス後0〜30℃で急冷して得られるプレスシートを用いて、ポリ−L−乳酸を分解する酵素を利用して、ポリ−L−乳酸を分解して除去した後のプレスシートを走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により、直径5μmの孔が観測されないことを特徴とする請求項24記載の組成物。
【請求項26】
請求項25記載の混練が二軸混練機または二軸押出機を用いた混練であることを特徴とする組成物。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれかに記載の混練により、得られる組成物の重量平均分子量が、利用するポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のそれぞれの重量平均分子量を加重平均して得られる重量平均分子量の数値の0.3から0.6倍の範囲となるように溶融混練することにより得られることを特徴とする請求項24から26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
重量平均分子量が150,000〜350,000のポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸を、ポリ−L−乳酸/ポリ−D−乳酸=75/25〜25/75の重量比で用い、押出温度245〜255℃の二軸押出機を経てTダイより押出し、0〜30℃のチルロールで急冷することによりシートを成形し、次いで、延伸温度50〜80℃で少なくとも2倍以上に逐次二軸または同時二軸で延伸することを特徴とする二軸フィルムの製造方法。
【請求項29】
請求項10〜16のいずれかに記載の延伸フィルムの少なくとも片面にシリコーン樹脂層が積層されてなる多層フィルム。
【請求項30】
厚さ1〜300μmの延伸フィルム、厚さ0.1〜5μmの硬化樹脂層および厚さ0.01〜5μmのシリコーン樹脂層からなることを特徴とする請求項29に記載の多層フィルム。
【請求項31】
インジェクション成形品の透明性が3mm厚さで全光線透過率(TT)が60%以上であることを特徴とする7または20に記載のインジェクション成形品。
【請求項32】
請求項7または20に記載の熱湯によっても変形しない耐熱性を有することを特徴とする真空/圧空成形品。
【請求項33】
不飽和カルボン酸またはその誘導体のポリマーからなる層を有することを特徴とする請求項6〜16のいずれかに記載の成形品またはフィルム。
【請求項34】
無機物薄膜層を有することを特徴とする請求項6〜16および19〜22のいずれかに記載の成形品またはフィルム。
【請求項35】
アッべ法により測定した面配向度が0.001以上である請求項8〜16、21、および22の何れかに記載の延伸フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−204727(P2007−204727A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63349(P2006−63349)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】
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