説明

マイクロデバイスモジュール及びその製造方法

【課題】機能面にSAW素子などの振動子または可動部などを持つマイクロデバイスが組み込まれてモジュール化され、不要波の減衰を促進して電気的特性を改善したマイクロデバイスモジュール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】パッケージ基板10の凹部11の底面に第1電極12が形成され、その外壁に第2電極13が形成され、機能面に可動部または振動子が形成された機能素子を有するデバイス基板21と機能面側に形成された突起電極23とを有するマイクロデバイス20が、突起電極が第1電極に接続し、機能面が凹部の底面に接しないように、凹部内にマウントされている。機能素子部分を除いてマイクロデバイスを被覆し、機能素子が封止されて中空部分31が構成されるように、凹部を埋め込んで樹脂層30が形成されている。第2電極により実装基板に実装される構成のマイクロデバイスモジュールが構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロデバイスモジュール及びその製造方法に関し、特に、圧電基板上にくし型電極部を有するSAW(Surface Acoustic Wave)素子、あるいは機能面に可動部または振動子を持つMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やF−BAR(Thin Film Bulk Acoustic Wave Resonators)などのマイクロデバイスを内蔵してモジュール化されたマイクロデバイスモジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータに代表されるモバイル機器においては、小型軽量化や多機能および高機能化が進んでおり、これらの機器を構成する部品や基板も同様に小型、薄型、軽量化や高密度実装化が進んでいる。また、半導体等のデバイスの実装に関しても、実装面積の小型化や伝達信号の高速化に伴い、モールドやセラミックパッケージによる実装から、いわゆるフリップチップ実装技術によりデバイスのベアチップを直接基板に実装し、封止する試みがとられている。
【0003】
ところが、このフリップチップによるデバイスのダイレクト実装方法は、例えば、圧電基板の機能面上にくし型電極部を有するSAW素子、あるいは機能面に可動部または振動子を持つMEMSやF−BARなどのマイクロデバイスの場合、機能面を封止材等で覆うことができないため、セラミックや金属、あるいはガラスなどの基板を用いて気密封止するパッケージ構造がとられている。
【0004】
例えば、特許文献1に、圧電基板上にくし型電極部を有するSAWチップを内蔵してパッケージ化した半導体装置が開示されている。
アルミナなどからなり、凹部が設けられたセラミックパッケージの凹部底部上にSAWチップがフリップチップでマウントされ、セラミックリッドによりパッケージの凹部の蓋をして封止された構成となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された半導体装置において、SAWチップはパッケージの凹部とセラミックリードで構成される中空部分において他の部材に触れないようにマウントされており、SAWチップの内部へ励起されたバルク波や不要な表面波である不要波がSAWチップの外部に放散させがたい構造となっている。このように不要波がSAWチップ内でなかなか減衰しにくい場合、電気的特性などの諸特性に悪影響が現れ、具体的には通過帯域における挿入損失や群遅延特性などにおいて顕著なリップルが現れるという問題がある。
【特許文献1】特開2003−198321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、機能面に、SAW素子、あるいはMEMSやF−BARなどの振動子または可動部などを持つマイクロデバイスが組み込まれてモジュール化され、SAW素子などにおける不要波の減衰を促進して電気的特性を改善したマイクロデバイスモジュール及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のマイクロデバイスモジュールは、凹部が形成されたパッケージ基板と、前記凹部の底面に形成された第1電極と、前記パッケージ基板の外壁に形成された第2電極と、機能面に可動部または振動子が形成された機能素子を有するデバイス基板と、前記機能面側に形成された突起電極とを有し、前記突起電極が前記第1電極に接続し、かつ前記機能面が前記凹部の底面に接しないように、前記凹部内にマウントされたマイクロデバイスと、前記機能素子部分を除いて前記マイクロデバイスを被覆し、前記機能素子が封止されて中空部分が構成されるように、前記凹部を埋め込んで形成された樹脂層とを有し、前記第2電極により実装基板に実装される構成である。
【0008】
上記の本発明のマイクロデバイスモジュールは、パッケージ基板の凹部の底面に第1電極が形成され、パッケージ基板の外壁に第2電極が形成され、機能面に可動部または振動子が形成された機能素子を有するデバイス基板と、機能面側に形成された突起電極とを有するマイクロデバイスが、突起電極が第1電極に接続し、かつ機能面が凹部の底面に接しないように、凹部内にマウントされている。
さらに、機能素子部分を除いてマイクロデバイスを被覆し、機能素子が封止されて中空部分が構成されるように、凹部を埋め込んで樹脂層が形成されている。
上記のようにして、第2電極により実装基板に実装される構成のマイクロデバイスモジュールが構成されている。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、本発明のマイクロデバイスモジュールの製造方法は、凹部が形成され、前記凹部の底面に第1電極が形成され、外壁に第2電極が形成されたパッケージ基板の前記凹部内において、機能面に可動部または振動子が形成された機能素子を有するデバイス基板と、前記機能面側に形成された突起電極とを有するマイクロデバイスを、前記突起電極が前記第1電極に接続し、かつ前記機能面が前記凹部の底面に接しないように、マウントする工程と、前記機能素子部分を除いて前記マイクロデバイスを被覆し、前記機能素子を封止して中空部分を構成するように、前記凹部を埋め込んで樹脂層を形成する工程とを有し、前記第2電極により実装基板に実装されるマイクロデバイスのモジュールを製造する。
【0010】
上記の本発明のマイクロデバイスモジュールの製造方法は、凹部が形成され、前記凹部の底面に第1電極が形成され、外壁に第2電極が形成されたパッケージ基板の凹部内において、機能面に可動部または振動子が形成された機能素子を有するデバイス基板と、機能面側に形成された突起電極とを有するマイクロデバイスを、突起電極が第1電極に接続し、かつ機能面が凹部の底面に接しないように、マウントする。
次に、機能素子部分を除いてマイクロデバイスを被覆し、機能素子を封止して中空部分を構成するように、凹部を埋め込んで樹脂層を形成する。
以上のようにして、第2電極により実装基板に実装されるマイクロデバイスのモジュールを製造する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマイクロデバイスモジュールは、機能面にSAW素子あるいはMEMSやF−BARなどの振動子または可動部を持つマイクロデバイスがパッケージ基板の凹部に内蔵されてモジュール化されており、機能素子を除いて被覆して樹脂層が形成されており、SAW素子などにおける不要波が樹脂層を伝達して減衰できる構造となっており、電気的特性が改善される。
【0012】
また、本発明のマイクロデバイスモジュールの製造方法は、機能面にSAW素子あるいはMEMSやF−BARなどの振動子または可動部を持つマイクロデバイスをパッケージ基板の凹部に内蔵してモジュール化する方法において、機能素子を除いて被覆して樹脂層を形成することで、SAW素子などにおける不要波が樹脂層を伝達して減衰可能となり、電気的特性を改善できるマイクロデバイスモジュールを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るマイクロデバイスモジュール及びその製造方法について図面を参照して説明する。
【0014】
第1実施形態
図1は本実施形態に係るマイクロデバイスモジュールの断面図である。
本実施形態に係るマイクロデバイスモジュールは、例えば、SAW素子、MEMSあるいはF−BARなどの可動部または振動子を持つ機能素子を備えたマイクロデバイスが組み込まれてモジュール化されたものである。
【0015】
例えば、樹脂などの有機材料からなるパッケージ基板10にマイクロデバイス用の凹部11が形成されている。
パッケージ基板10の内部には埋め込み配線が形成されており、凹部11の底面に第1電極12が形成され、パッケージ基板10の外壁には第2電極13及び第3電極14が形成されている。凹部の内側面とパッケージ基板の側面との間の部分である基柱10aは、その内部を貫通して、第2電極13に接続する貫通配線が形成された部分となっている。
【0016】
上記の凹部11に、マイクロデバイスとして例えばSAWチップ20がフリップチップでマウントされている。SAWチップ20は、例えばLiTaOなどの圧電基板21の機能面上にくし型電極部22が形成されてSAW素子が構成されており、SAW素子が形成された機能面において、SAW素子の入出力端子などである金スタッドバンプやハンダボールバンプなどのバンプ(突起電極)23が形成された構成である。SAWチップ20は、機能面と凹部11の底面が対向し、上記のバンプ23が第1電極12に接続し、かつ機能面が凹部11の底面に接しないようにマウントされている。
【0017】
さらに、SAW素子部分を除いてSAWチップ20を被覆し、SAW素子が封止されて中空部分31が構成されるように、凹部を埋め込んで樹脂層30が形成されている。樹脂層30は、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。
【0018】
上記の中空部分31は、例えば、真空、減圧、還元雰囲気、あるいは不活性ガス雰囲気に保持されている。
【0019】
また、第3電極14には、トランジスタなどの能動素子や、インダクタ、キャパシタ、電気抵抗素子などの受動素子などの電子部品(40,41,42)がマウントされている。
【0020】
上記の構造の本実施形態に係るマイクロデバイスモジュールは、例えば第2電極13により実装基板に実装されて用いられる。
【0021】
本実施形態のマイクロデバイスモジュールにおける不要波の伝播と減衰について説明する。図1中、矢印はSAWチップからの不要波の伝播を示している。
本実施形態のマイクロデバイスモジュールにおいて、SAWチップ20の内部へ励起されたバルク波や不要な表面波である不要波は、まず樹脂層30へ伝播され、さらに有機のパッケージ基板10へと伝播される。
ここで、樹脂層30とパッケージ基板10の界面において、樹脂層30と有機のパッケージ基板10の音響インピーダンスが近いことから、不要波はほとんど反射しないで透過する。
【0022】
不要波は、パッケージ基板10の端部まで到達すると、音響インピーダンスの差が大きいパッケージ基板10の側面と外部との界面で反射し、SAWチップ20側へ戻ってくる。しかし、SAWチップ20の端部からパッケージ基板10の側面までの距離の2倍の距離を伝播するまでに、不要波はほとんど減衰しており、実際には不要波はSAWチップにほとんど戻ってこない。これにより、電気的特性などの諸特性が改善され、例えば通過帯域における挿入損失や群遅延特性などにおいてリップルの出現が抑制される。
【0023】
例えば、凹部11の内側面とパッケージ基板10の側面との距離(図1においてAで示された距離)が0.3mm以上であることが好ましく、例えば0.5mm程度とする。
有機のパッケージ基板10の基柱10a部分は、内部に貫通配線が形成されていることやパッケージ基板の強度を確保する必要があることから微細化が困難であるが、一方で、上記のように不要波を減衰させるための伝播距離をかせぐことが可能である。従って、図1中Aで示される凹部の内側面とパッケージ基板の側面との距離(基柱10aの幅)を0.3mm以上とすることで、内部に配線を形成し、パッケージ基板の強度を確保し、かつ、不要波の減衰を促進できる。
【0024】
また、例えば、マイクロデバイスの側面と凹部の内側面との距離(図1においてBで示された距離)は、0.3mm以下であることが好ましく、例えば0.15mm程度とする。
上記のように有機のパッケージ基板を採用することで不要波の減衰を促進できるため、マイクロデバイスの側面と凹部の内側面との間の距離を0.3mm以下にまで短くしても、不要波の減衰を十分に達成でき、このようにマイクロデバイスの側面と凹部の内側面との間の間隔を狭くすることでマイクロデバイスモジュールの小型化を実現できる。
【0025】
例えば、凹部11の内側面とパッケージ基板10の側面との距離(図1においてAで示された距離)とマイクロデバイスの側面と凹部の内側面との距離(図1においてBで示された距離)を合わせて0.5mm以上とすると、不要波がSAWチップに戻ってくるまでに伝播される距離は往復で1.0mm以上となるので不要波を大幅に減衰可能であり、さらにAとBを合わせて0.6mm以上とすると、往復の距離で1.2mm以上となり、不要波の十分な減衰を達成できる。
【0026】
上記においてはマイクロデバイスとしてSAWチップをモジュール化した場合について説明しているが、これに限らず、MEMS、F−BARなどの可動部または振動子を持つ機能素子を備えたマイクロデバイスについても同様に適用できる。
【0027】
上記の本実施形態のマイクロデバイスモジュールは、機能面にSAW素子あるいはMEMSやF−BARなどの振動子または可動部を持つマイクロデバイスが有機のパッケージ基板の凹部にマウントされ、さらに凹部の内壁面とマイクロデバイスの間隙が樹脂層で埋め込まれてモジュール化されており、機能素子を除いて被覆して樹脂層が形成されており、SAW素子などにおける不要波が樹脂層を伝達して減衰できる構造となっており、電気的特性が改善されたマイクロデバイスモジュールである。
【0028】
次に、本実施形態に係るマイクロデバイス内蔵基板の製造方法について説明する。
図2〜図4は本実施形態に係るマイクロデバイス内蔵基板の製造方法を説明する断面図である。
【0029】
まず、図2(a)に示すように、まず、例えば、樹脂などの有機材料からなり、マイクロデバイス用の凹部11が形成されたパッケージ基板10を形成する。
例えば、樹脂層の表面や内部に配線パターンの導電層を形成して、それらを積層させ、樹脂の一部を除去することなどにより、凹部11が設けられたパッケージ基板とする。積層された樹脂層に形成された導電層から、第1電極12、第2電極13及び第3電極14と、基柱10aの内部を貫通する貫通配線などの内部配線を形成する。
【0030】
次に、図2(b)に示すように、パッケージ基板10の凹部11に、マイクロデバイスとして、例えば圧電基板21の機能面上にくし型電極部22が形成されてSAW素子が構成されたSAWチップ20をフリップチップでマウントする。即ち、SAWチップ20の機能面と凹部11の底面が対向し、SAW素子が形成された機能面において形成されたバンプ23が第1電極12に接続し、かつ機能面が凹部11の底面に接しないようにマウントする。
【0031】
次に、図3に示すように、SAW素子部分を除いてSAWチップ20を被覆し、SAW素子を封止して中空部分31を構成するように、凹部を埋め込んで樹脂層30を形成する。
【0032】
例えば、上記の中空部分31が真空、減圧、還元雰囲気、あるいは不活性ガス雰囲気に保持されるように、樹脂層を形成する工程を真空、減圧、還元雰囲気、あるいは不活性ガス雰囲気で行う。
【0033】
上記の樹脂層30を形成する工程においては、例えば図4(a)に示すように、ディスペンサ30aを用いて、溶融状態の樹脂を凹部11内に流しいれる方法や、図4(b)に示すように、シート状の樹脂30bを所定サイズに切断して、凹部11に配置させ、上方から加熱加圧して、樹脂が凹部の端までいきわたるように凹部11内に供給する方法などにより行うことができる。
【0034】
次に、必要に応じて、第3電極14に、トランジスタなどの能動素子や、インダクタ、キャパシタ、電気抵抗素子などの受動素子などの電子部品(40,41,42)をマウントする。
以上で、図1に示す構成のマイクロデバイスモジュールを製造することができる。
【0035】
本実施形態のマイクロデバイスモジュールの製造方法において、パッケージ基板として凹部の内側面とパッケージ基板の側面との距離(図1のAで示す部分)が0.3mm以上であるパッケージ基板を用いることが好ましい。
また、マイクロデバイスの側面と凹部の内側面との距離(図1のBで示す部分)が0.3mm以下となるように凹部とマイクロデバイスの大きさを設定することが好ましい。
【0036】
本実施形態のマイクロデバイスモジュールの製造方法によれば、機能面にSAW素子が形成されたマイクロデバイスを有機のパッケージ基板の凹部に内蔵してモジュール化しており、機能素子を除いて被覆して樹脂層を形成することで、SAW素子などにおける不要波が樹脂層と有機のパッケージ基板を伝達して減衰可能となり、電気的特性を改善できるマイクロデバイスモジュールを製造できる。
【0037】
図5は本実施形態に係るマイクロデバイスモジュールが実装基板に実装された状態を示す断面図である。
例えば、複数の絶縁層が積層された絶縁基板50の表面には配線51が形成されており、さらに内部に不図示の配線が形成されて、実装基板が構成されている。
マイクロデバイスモジュールは、例えば、第2電極13により、ハンダ52などを介して配線51に接続され、実装基板に実装されて用いられる。
【0038】
(実施例1)
物質の音響インピーダンスは、物質の密度ρ(kg/m)×物質中音速V(m/s)で表される。
例えば、SAWチップを構成する圧電基板の音響インピーダンスZ1は、7500×3700=27750×10(kg/ms)となる。
また、樹脂層を構成するエポキシ樹脂の音響インピーダンスZ2は、1200×1100=1320×10(kg/ms)となる。
また、パッケージ基板を構成する有機樹脂の音響インピーダンスZ3は、上記のエポキシ樹脂とほぼ同等の値となる。
また、空気の音響インピーダンスZ4は、1.2×340=408(kg/ms)となる。
【0039】
図1に示す構造のマイクロデバイスモジュールを想定する。SAWチップ端部における不要波の反射強度は、[(Z1−Z2)/(Z1+Z2)]×100=82.7%であり、17.3%が樹脂層へと伝播していく。樹脂層へ伝播した不要波は、樹脂層とパッケージ基板の界面ではほとんど反射しないで透過し、パッケージ基板の端部においては99.9%反射してSAWチップ側へ戻ってくるが、往復約1.0〜1.2mmの距離を伝播するうちに減衰し、実質的に不要波はほとんどSAWチップに戻ってこないことになる。
【0040】
従来例として、パッケージ基板としてセラミックパッケージを用い、凹部を樹脂で埋め込まず、凹部をセラミックリッドで蓋をして封止した構造で、SAWチップの外部に空気が存在すると仮定すると、SAWチップ端部における不要波の反射強度は99.99%であり、不要波が外部へ伝播できず、SAWチップ内に残されてしまうことになる。
【0041】
(実施例2)
本実施例として、図1に示す本実施形態のマイクロデバイスモジュールを作成し、所定帯域の挿入損失(dB)を測定した。
また、図1に示す本実施形態のマイクロデバイスモジュールに対して、従来例として、パッケージ基板としてセラミックパッケージを用い、凹部を樹脂で埋め込まず、凹部をセラミックリッドで蓋をして封止した構造のマイクロデバイスモジュールを作成し、上記と同じ帯域の挿入損失(dB)を測定した。
【0042】
結果を図6(a)及び(b)に示す。図6(a)及び(b)中、縦軸は挿入損失(dB)であり、横軸は規格化された周波数を示す。また、図6(a)が従来例の挿入損失を、図6(b)が本実施例の挿入損失を示す。
図6(a)及び(b)に示すように、従来例はリップルが顕著に発生しているが、本実施例ではリップルが大幅に抑制されており、電気的特性が改善された。
【0043】
(実施例3)
実施例2において作成した本実施例と従来例のマイクロデバイスモジュールについて、所定帯域の群遅延時間(ns)を測定した。
結果を図7(a)及び(b)に示す。図7(a)及び(b)中、縦軸は群遅延時間(ns)であり、横軸は規格化された周波数を示す。また、図7(a)が従来例の群遅延特性を、図7(b)が本実施例の群遅延特性を示す。
図7(a)及び(b)に示すように、従来例はリップルが顕著に発生しているが、本実施例ではリップルが大幅に抑制されており、電気的特性が改善された。
【0044】
第2実施形態
図8は本実施形態に係るマイクロデバイスモジュールの断面図である。
実質的に第1実施形態に係るマイクロデバイスモジュールと同様の構成であるが、パッケージ基板10bがアルミナなどのセラミック基板であることが異なる。
【0045】
本実施形態のマイクロデバイスモジュールも、第1実施形態と同様に、機能面にSAW素子あるいはMEMSやF−BARなどの振動子または可動部を持つマイクロデバイスが有機のパッケージ基板の凹部にマウントされ、さらに凹部の内壁面とマイクロデバイスの間隙が樹脂層で埋め込まれてモジュール化された構造となっており、機能素子を除いて被覆して樹脂層が形成されており、SAW素子などにおける不要波が樹脂層を伝達して減衰できる構造となっており、電気的特性が改善されたマイクロデバイスモジュールである。
【0046】
(実施例4)
実施例1と同様に、物質の音響インピーダンスから不要波の反射強度を算出した。
ここで、セラミック基板を構成するアルミナの音響インピーダンスは、3700×2300=8510×10(kg/ms)となる。
【0047】
図7に示す構造のマイクロデバイスモジュールを想定すると、SAWチップ端部における不要波の反射強度は、実施例1と同様に82.7%であり、17.3%が樹脂層へと伝播していく。樹脂層へ伝播した不要波は、樹脂層とパッケージ基板の界面でほぼ71%が反射し、残りの29%がセラミック基板へと透過していく。
上記のようにして、SAWチップで発生した不要波は、樹脂層を介して外部へと伝播し、SAWチップ内に残される不要波を低減して、リップル抑制などの電気的抑制の改善をはかることができる。
【0048】
本発明は上記の実施形態に限定されない。
例えば、SAW素子の他、MEMSやF−BARなどの機能素子を有するマイクロデバイスを内蔵したモジュールとすることも可能である。
パッケージ基板の樹脂層や配線を積層させる層数は実施形態に限らず、何層であってもよい。
その他、本発明の観点を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のマイクロデバイスモジュールは、SAW素子、MEMSあるいはF−BARなどの機能面に可動部または振動子を持つマイクロデバイスをモジュール化したマイクロデバイスモジュールとして、例えば携帯電話の送受信回路などに用いられるフィルターを構成するモジュールなどに適用できる。
本発明のマイクロデバイスモジュールの製造方法は、SAW素子、MEMSあるいはF−BARなどの機能面に可動部または振動子を持つマイクロデバイスをモジュール化したモジュールを製造する方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は本発明の第1実施形態に係るマイクロデバイスモジュールの模式断面図である。
【図2】図2(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係るマイクロデバイスモジュールの製造工程を示す模式断面図である。
【図3】図3は本発明の第1実施形態に係るマイクロデバイスモジュールの製造工程を示す模式断面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係るマイクロデバイスモジュールの製造工程を示す模式断面図である。
【図5】図5は本発明の第1実施形態に係るマイクロデバイスモジュールを実装基板に実装した状態を示す模式断面図である。
【図6】図6(a)及び(b)は本発明の実施例2における挿入損失の測定結果である。
【図7】図7(a)及び(b)は本発明の実施例3における群遅延時間の測定結果である。
【図8】図8は本発明の第2実施形態に係るマイクロデバイスモジュールの模式断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10,10b…パッケージ基板、10a…基柱、11…凹部、12…第1電極、13…第2電極、14…第3電極、20…SAW素子、21…圧電基板、22…くし型電極部、23…突起電極、30…樹脂層、30a…ディスペンサ、30b…シート状の樹脂、31…中空部分、40,41,42…電子部品、50…絶縁基板、51…配線、52…ハンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成されたパッケージ基板と、
前記凹部の底面に形成された第1電極と、
前記パッケージ基板の外壁に形成された第2電極と、
機能面に可動部または振動子が形成された機能素子を有するデバイス基板と、前記機能面側に形成された突起電極とを有し、前記突起電極が前記第1電極に接続し、かつ前記機能面が前記凹部の底面に接しないように、前記凹部内にマウントされたマイクロデバイスと、
前記機能素子部分を除いて前記マイクロデバイスを被覆し、前記機能素子が封止されて中空部分が構成されるように、前記凹部を埋め込んで形成された樹脂層と
を有し、前記第2電極により実装基板に実装される
マイクロデバイスモジュール。
【請求項2】
前記パッケージ基板が有機基板である
請求項1に記載のマイクロデバイスモジュール。
【請求項3】
前記パッケージ基板の外壁に形成された第3電極をさらに有し、
前記第3電極に電子部品がマウントされている
請求項1に記載のマイクロデバイスモジュール。
【請求項4】
前記凹部の内側面と前記パッケージ基板の側面との距離が0.3mm以上である
請求項1に記載のマイクロデバイスモジュール。
【請求項5】
前記マイクロデバイスの側面と前記凹部の内側面との距離が0.3mm以下である
請求項1に記載のマイクロデバイスモジュール。
【請求項6】
前記パッケージ基板がセラミック基板である
請求項1に記載のマイクロデバイスモジュール。
【請求項7】
凹部が形成され、前記凹部の底面に第1電極が形成され、外壁に第2電極が形成されたパッケージ基板の前記凹部内において、機能面に可動部または振動子が形成された機能素子を有するデバイス基板と、前記機能面側に形成された突起電極とを有するマイクロデバイスを、前記突起電極が前記第1電極に接続し、かつ前記機能面が前記凹部の底面に接しないように、マウントする工程と、
前記機能素子部分を除いて前記マイクロデバイスを被覆し、前記機能素子を封止して中空部分を構成するように、前記凹部を埋め込んで樹脂層を形成する工程と
を有し、前記第2電極により実装基板に実装されるマイクロデバイスのモジュールを製造する
マイクロデバイスモジュールの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂層を形成する工程において溶融状態の樹脂を前記凹部内に流しいれる
請求項7に記載のマイクロデバイスモジュールの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂層を形成する工程においてシート状の樹脂を所定サイズに切断して前記凹部に配置させ、加熱加圧して前記樹脂を前記凹部内に供給する
請求項7に記載のマイクロデバイスモジュールの製造方法。
【請求項10】
前記パッケージ基板として有機基板を用いる
請求項7に記載のマイクロデバイスモジュールの製造方法。
【請求項11】
前記パッケージ基板として外壁に形成された第3電極をさらに有するパッケージ基板を用い、
前記第3電極に電子部品をマウントする工程をさらに有する
請求項7に記載のマイクロデバイスモジュールの製造方法。
【請求項12】
前記パッケージ基板として前記凹部の内側面と前記パッケージ基板の側面との距離が0.3mm以上であるパッケージ基板を用いる
請求項7に記載のマイクロデバイスモジュールの製造方法。
【請求項13】
前記マイクロデバイスの側面と前記凹部の内側面との距離が0.3mm以下となるように前記凹部と前記マイクロデバイスの大きさを設定する
請求項7に記載のマイクロデバイスモジュールの製造方法。
【請求項14】
前記パッケージ基板としてセラミック基板を用いる
請求項7に記載のマイクロデバイスモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−273585(P2007−273585A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95205(P2006−95205)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】