説明

マルチクラッド光ファイバーレーザーおよびそれらの製造

【課題】強力な放射を伝達でき、その出力が従来のファイバーより大きい光ファイバーの提供。
【解決手段】屈折率nを有する希土類にドーピングした活性芯、該活性芯を囲む屈折率nを有するポンプ芯、該ポンプ芯を囲む屈折率nを有するガラス内部クラッド層、屈折率nを有する該追加のガラスクラッド層を囲む保護コーティングからなり、そしてnはnより大きく、nはnより大きくそしてnはnより大きい、ファイバーレーザー/ファイバー増幅器として使用するのに好適な高い損傷境界のマルチクラッド光ファイバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強力なレーザーエネルギーの発生および/または増幅および伝達のための光ファイバーの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの応用が、強力なポンプ-光の源の使用を必要とするかまたはそれから利益を得ている。従来のレーザー活性シングルモードファイバーの使用は、強力なポンプ放射を行って強力なレーザー発射を達成するのには不十分である。ファイバーの出力を上げるのに利用できる多数の技術があり、例えば先細りのファイバーチップのような装置を通してファイバーの末端面でのエネルギー密度を低下させる試みがある。この障害を克服する他の通常用いられている技術は、適切ないわゆる二重クラッドファイバーの使用である。二重クラッドファイバーの使用は、ポンプ芯としてしばしば呼ばれる内部のクラッドとポンプ放射とのカップリングを可能にする。ポンプ放射は、保護コーティングとしてそして外側のクラッドとしての両方で働くポリマーコーティングによりその内部に含まれる。ポンプの光は、内部のクラッドとカップリングし、それは内部の芯内に広がりそしてファイバーの芯を通過する。活性芯(すなわちファイバー芯)内のドーピング剤のイオン(好ましくは希土類(RE)イオン)は、エネルギーを吸収し(すなわち、直接の吸収によるかまたはエネルギー移動によるかまたはアップコンバージョンによるかまたは類似の方法によるかの何れかによるポンプ放射)、ポンプ放射が芯内を伝達されるとき放出される。このエネルギーは、レーザービームを強めそしてその出力を増大させるのに働く新しい(レーザー)ホトンに転換される。大直径のマルチモードの内部クラッドの使用は、通常強力なレーザーダイオードシステムによりもたらされるような、高いパワーおよび/または低いビーム品質のポンプ放射とカップリングできる。
【0003】
残念ながら、高いオーダーのモードは、それらが大きなポンプ芯の直径で用いられるとき、活性芯が通常置かれるポンプ芯の中心でわずかなエネルギーを運ぶに過ぎないかまたは全くエネルギーを運ぶことがない。そのため、活性芯の中心を外れた配置、非円形のポンプ芯などのような手段が採られて、活性域内のポンプ放射の吸収を改善しなければならない。
【0004】
ポンプ芯中に送り出すことのできるポンプのパワーを増大させる技術は、いわゆる偏光カップリング技術である。通常、垂直に配向された偏光の方向を有する2つのポンプ光源は、ポンプ芯にカップリングされる。一般に、これは、利用できるポンプのパワーを2倍にする。
【0005】
さらに、波長分割多重化は、ファイバーの透過を改善する選択肢である。(僅かに)異なる波長を有する2つ以上のポンプ光源は、例えば二色ビーム結合器によってポンプ芯へカップリングされる。多重化は、ポンプのパワーが数百ワットまで増加するのを可能にする。しかし、多重化のみでは、活性芯のパワー密度が約数百MW/cmを超える点でファイバーの透過容量を増大するのに不十分であり、それはポリマーコーティング内のポンプ放射のエバネッセントフィールドの残存吸収によるファイバー自身の熱的負荷を生じさせる。
【0006】
二重クラッド構造を用いる光ファイバーの出力を増大させる当該技術の最近のアプローチは、図1に示されている。この図では、高い屈折率を有する活性芯104は、ポンプ芯として働く内部クラッド106により囲まれている。このポンプ芯は、該芯104内でドーピング剤イオンにより放出される芯104内のレーザー放射の導波を可能にする。活性芯104は、例えば希土類にドーピングした(「REにドーピングした」)SiOから製造され、そしてポンプ芯106は、例えば精製シリカから製造される。通常、活性芯104は、シングルモード構造であるが、一方ポンプ芯106は、使用されるポンプレーザー源のビームの特徴(例えば直径および発散)に合致するようにデザインされた(高い)マルチモード構造である。活性芯104は、一般に円形である。それは、ポンプ芯106の中心に配置されるか、または吸収能率を増大するのに有用と思われる中心を外れた位置に配置されるかの何れかである。ポンプ芯106は、円形であるか、または吸収能率を増大するのに有利と思われる任意の他の断面(例えば方形、D字形など)である。2つの芯の構造は、シリコーンのようなポリマーから製造される(保護的)コーティング層102により囲まれる。コーティング102とポンプ芯106との間の屈折率の差がポンプ放射を導くことの原因であることから、コーティング102は、クラッド並びに保護層として機能する。そのため、ポンプ放射のエバネッセントフィールドは、コーティング102中に漏れ出す。これは、ポリマーの損傷境界が通常シリカの損傷境界より遙かに低いために、問題である。これは、しばしば、光学的にポンプされた二重クラッドファイバー特にその末端面のそれを破壊する。
特許文献1は、特定の方法でポンプクラッドを成形し、そして製造相中、応力を導入してモードのミキシングを刺激しそして芯で吸収されたエネルギーを最大にすることによりファイバーのポンピング能力を最大にするようにデザインされた二重クラッドファイバーを記述している。他の二重クラッドファイバーと同じく、この特許文献のファイバーは、より低い率を有するドーピングしたクラッドにより囲まれたドーピングした芯を含む。ドーピングしたクラッドは、次に他のさらに低い率の物質を有するクラッド層により囲まれる。この特許は、この特許を上記のある種の劣化を受ける外側のクラッドの材料としてのポリマーの使用を考慮している。
【0007】
特許文献2は、図1にほぼ記述されている二重クラッドファイバーの他の例である。この特許は、活性内部クラッドおよび第二の外側のクラッドによって囲まれた活性芯を有するファイバーを記述している。内部のクラッドにカップリングされた放射は、モノモード芯中に漏れ出すレーザー放出を生じさせ、それは活性芯のレーザー活性ドーピング剤用のポンプ放射として働く。
【0008】
特許文献3に記述されているように、二重クラッドファイバーは、種々の問題を有する。同心の放射状に対称の層を有する二重クラッドファイバーは、信号を増幅するには不十分な方法であることが立証されている。この結果は、中心を外れた芯または非円形のポンプ芯を有する円形の導波物を生じさせた。これらの形状のファイバーの発生は、一般に、ポリマーが外側にあるクラッドを有する導波物をもたらした。ポリマークラッドは、シリカよりも遙かに低い損傷境界を有し、そしてポンプ放射により容易に損傷される。
【0009】
特許文献3は、ガラス芯、不規則な外部の境界を含む内部のガラスクラッド層およびその内側の境界が内部の層の外部の境界の形状と一致する外部のガラスクラッド層からなる二重クラッド光ファイバーを提供することによってこれらの問題を解決することを報告している。第三のクラッド層は、所望により高次の芯のモードを抑制するために、芯と内部クラッド層との間に設けられてもよい。外部のガラスクラッド層は、ポンプ放射を含むためのクラッドおよびファイバーの外部のカバリングの両者として働く。
【0010】
特許文献4は、円形のポンプ芯、縦の溝を特徴とするポンプクラッド、ポンプクラッドを囲む第二のクラッド、および第二のクラッドを囲む第三のクラッドを有する光ファイバーを記述している。1つの例では、芯、ポンプクラッドおよび第二のクラッドは、シリカガラスであり、そして第三のクラッドはポリマーから作られる。この特許は、ポリマーの第三のクラッドを保護することよりも、エネルギーをポンプクラッド、特に活性芯中に導くことに関しているように見える。
【0011】
特許文献4および5は、希土類にドーピングした芯、非円形の内部クラッド、円形の外部クラッドおよび外部のポリマー層からなる二重クラッドレーザーファイバーを記述している。外部のクラッド層は、内部のクラッドより低く好ましくは可能な限り低い屈折率を有する。一般に、この特許による従来技術では、外部の層は、光を反射して芯中に戻すクラッドとして使用される。
【0012】
従って、複雑な導波プロフィル成形の必要がなくそして導かれる光学的パワーに関して非常に安定なまたは強力なクラッドの必要なしに、強力なレーザー放出を伝達できるマルチクラッド光ファイバーを必要とする。本発明は、この必要性を満足する。
【特許文献1】米国特許6157763
【特許文献2】米国特許5291501
【特許文献3】WO99/30391
【特許文献4】米国特許5966491
【特許文献5】米国特許5949941
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
強力な放射を伝達できる光伝達手段を提供するのが本発明の目的である。
【0014】
その出力が従来のファイバーより大きい光ファイバーを提供するのが本発明の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
簡単に述べれば、本発明は、ファイバーレーザーおよび/またはファイバー増幅器における活性媒体として使用できる光ファイバーを開示しており、精製したまたはドーピングしたシリカクラッド層(「ポンプ芯」)により囲まれた好ましくは希土類にドーピングしたシリカ活性芯(または「ファイバー芯」、「活性芯」または「レーザー芯」ともよばれる)を特徴とする。活性芯は、強力な高光度レーザー放射を提供するようにデザインされる。ポンプ芯は、適切な強力なポンプ光、特にレーザーダイオード、レーザーダイオードバーおよび/またはレーザーダイオードアレイのような強力な低光度ポンプ源の放出の実施を可能にする。ポンプ芯は、ポンプ芯内にポンプ放射を導くためのドーピングしたまたは精製したシリカ内部クラッドによって囲まれる。従って、内部クラッドの屈折率は、ポンプ芯のそれより低い。ファイバーは、例えばポリマー性材料から製造される保護コーティングにより囲まれる。該内部クラッドより低い屈折率を有する1つ以上の追加の外部クラッド層は、所望により、内部クラッドと保護コーティングとの間に置かれて、損傷からポリマーコーティングをさらに保護することもできる。従来の技術とは異なり、保護コーティングは、唯一のクラッドとして働くのではなく、内部クラッドおよび所望の1つ以上の外部クラッドにより助けられる。得られるファイバーは、主としてシリカ層へ放射を制限し、それによりファイバーの損傷境界および適用可能な最大のポンプのパワー(ファイバー中に向けられる)を増大させる。
【0016】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、図面とともに以下の記述を読むことから明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、従来技術において経験されたようなコーティングへの損傷を生ずることなく、高い光学的ポンプのパワーの伝達並びにレーザー放出の発生および/または増幅ができるマルチクラッド光ファイバーを提供する。従来技術のファイバーは、一般に、シリカポンプ芯により囲まれた通常シングルモードである高い率の芯を含む。活性芯およびポンプ芯の両者は、1つ以上のコーティングにより囲まれ、通常、コーティングは、ポンプ芯より低い率を有しそしてファイバーの保護およびポンプ芯内に波を導くコーティングとしての働きの両者に働くポリマーから製造される。しかし、エバネッセントフィールド(特にポンプ放射のエバネッセントフィールド)は、必ず1つ以上の外部コーティングへ漏れだし、それはより高いパワーの放出中破壊される。本発明は、ポンプ芯とコーティングとの間に追加のガラス層を有するファイバーを提供し、従ってエバネッセントフィールドのほとんどをガラスに制限しそして強力な伝達によりコーティングを損傷する危険を緩和する。
【0018】
二重コーティングファイバーは、周知であり、そしてファイバーの伝達能力を増大するのに使用されるが、周知のデザインは、適用可能なポンプのパワーのレベル従って利用できる出力をなお制限する。種々の組成を有する多数の二重クラッドの希土類にドーピングしたシリカファイバーは、エンドポンピングにより50ワットまでの出力によりテストされた。すべての場合に、達成された結果は、適用可能なポンプのパワーにより制限され、そしてファイバーのパラメーターまたはカップリングの光学的特性にはよらない。50ワットより高い出力では、ファイバーの顕著な加熱が観察された。シリコーン外部コーティングの弱体化のために、ファイバーは耐えることのできない温度に加熱された。ポンプ芯の屈折率とコーティングのそれとの間の屈折率を有する、精製したシリカポンプ芯(内部クラッド)とシリコーンゴム外部コーティングとの間への新しいガラス層の追加が、ポンプパワーの分布を変えて外部コーティングへの損傷を防ぐことが判った。
【0019】
本発明を記述するのに使用される以下の用語が、下記に説明される。「活性芯」は、ポンプ放射への暴露によりレーザー放射を放出するかまたはポンプ放射を増幅する光ファイバーのレーザーまたは増幅器のガラス芯をいう。「ポンプ芯」は、ポンプ放射を活性芯中に導くのに働く活性芯を囲むガラス層である。「内部クラッド」は、ポンプ芯を囲むガラス層をいう。「外部クラッド」は、内部クラッドを囲む少なくとも1つの光学的追加ガラス層をいう。「保護コーティング」は、好ましくは、通常内部クラッドまたは外部クラッドの何れかの、最も外部のクラッド層を囲むポリマー層である。
【0020】
活性芯は、(ドーピング剤、ドーピング濃度、芯の直径および屈折率に関して)デザインされて強力かつ高光度のレーザー放射を提供する。
【0021】
また、ポンプ芯は、(直径および屈折率に関して)デザインされて、適切な強力なポンプ光、特にレーザーダイオード、レーザーダイオードバーおよび/またはレーザーダイオードアレイのような強力かつ低光度のポンプ源の放出を開始することを可能にする。この構造により特に新しいガラス層の追加により、ポンプのパワーのほとんどは、ポンプ芯の中心領域に導かれる。追加した層は、ポンプ芯のまわりのクラッドとして働き、そのためポンプの極めて小さい部分が、外部コーティングによりその追加の層に導かれる。従って、ポリマーコーティングの放射の吸収が顕著に低下するため、ポリマー層への熱的負荷は低下して、ファイバーの温度を下げ、従ってファイバーの安定性の増大およびレーザー/増幅器の性能の改善を生じさせる。
【0022】
この構造の他の利点、すなわちポンプ吸収能率の増加が観察された。これは、2つの理由で生ずる。第一に、ポンプパワーの分布の主な部分は、いまや屈折率のプロフィルに従ってポンプ芯の内部の部分に導かれる。第二に、ポンプ芯と外部コーティングとの間の境界におけるポンプのパワーの密度損失は、顕著に低下する。
【0023】
本発明の主な利点は、その相当するエバネッセントフィールドに沿う強力なポンプの放射の大部分が、いまやガラスで行われるという事実から生ずる。ガラスがポリマーよりも高い損傷境界を有しそして少量のポンプパワーのみが外部コーティングで行われるということから、ファイバーは、ファイバーへの損傷が感じられる前に、高い光学的パワーを行うことができる。それゆえ、本発明のファイバーは、従来の二重クラッドファイバーよりも顕著に高いエネルギーの放射を伝達できる。従って、コーティングとクラッドとの界面のポンプパワーが低下し、すなわちコーティングの熱的負荷/ひずみが低下して、より高いレーザー能率を可能にする。熱的負荷は、主にポリマーコーティングの残存吸収による。
【0024】
希土類イオン(「REイオン」)は、ランタノイドの群からの化学元素、すなわちランタン(La、原子番号57)からルテチウム(Lu、原子番号71)の元素のイオンをいう。希土類にドーピングした(「REにドーピングした」)シリカは、ランタノイドの群からの元素のイオンによりドーピングしたシリカをいう。
【0025】
シリカガラスマトリックスをREイオンによりドーピングすることは、追加のドーピング剤例えばAl、Ge、Bおよび/またはPを配合することによって達成できる或る溶解度を要する。1つ以上の種のREイオンおよびそれぞれの共ドーピング剤(Al、Ge、B、P)をシリカ中に配合することは、さらに、それぞれ希土類ドーピングまたはREドーピングとよばれる。
【0026】
本発明では、高い屈折率を有する活性芯は、低い屈折率を有するポンプ芯により囲まれる。活性芯は、好ましくは、希土類にドーピングした(「REにドーピングした」)SiOから製造され、一方ポンプ芯は、好ましくは、活性芯の屈折率がポンプ芯の屈折率より大きくなるように精製シリカ、GeにドーピングしたSiOまたはFにドーピングしたSiOから製造される。これは、ポンプ芯が、放射を活性芯に導くことを助けることによりクラッド並びにポンピング手段として働くことを可能にする。この内部構造(「内部クラッド」)を囲むクラッド層は、好ましくは、その屈折率がポンプ芯の屈折率より低い方法で任意の他の好適な化学元素によりドーピングしたシリカまたは精製シリカ、Fにドーピングしたシリカの何れかから製造される。
【0027】
活性芯は、少なくとも低いモード(「近シングルモード」)の操作を提供するようにデザインされるが、シングルモード操作が好ましい。近シングルモード芯は、典型的では2?4モードを支持できる。近シングルモード芯により典型的に支持できるモードの最大数は、例えば約10である。従って、関係するパラメーター例えば芯の直径および開口数(「NA」)の選択に注意を払うべきである。活性芯のNAは、活性芯とポンプ芯との間の屈折率の差について計算される。
【0028】
従来技術で周知のように、活性芯は、好ましくは、近シングルモード(低モード)またはシングルモードの構造であり、囲んでいるポンプ芯の層は、一次ビームをポンピングするのに使用されるレーザー源のビームの特徴例えば直径および発散に合致するようにデザインされたマルチモード構造である。活性芯は、一般に円形であり、そしてファイバーの中心に配置されるか、または偏心的に配置されるかの何れかで配置される。ポンプ芯は、円形であるか、または吸収能率を改善するのに有利であると思われる任意の好適な形状である。好ましくは、内部クラッド(または追加の外部クラッドまたは外部クラッド)は、保護ポリマーコーティングを有するファイバーをコーティングする工程を容易にするか、または光放射源とのカップリングを容易にするように円形の形状のものであるが、ポンプ芯と同じ形状のものでもよい。外部保護コーティングは、シリコーンまたはフルオロアクリレートのようなポリマー材料から製造される。Geにドーピングしたポンプ芯を使用するとき、ポンプ芯と内部クラッドとの間の屈折率の差が達成されて、0.38以内の高い開口数を生ずる。
【0029】
本発明の好ましい態様は、図2に画かれている。活性ファイバー芯204は、ポンプ芯206により囲まれ、206は活性芯204より低い屈折率(「率」)を有する。ポンプ芯206は、次にシリカクラッド208により囲まれ、後者はポンプ芯206より低い率を有し、ポンプ放射をポンプ芯206およびファイバー芯204に向かって導きそしてポリマーコーティング202を保護するように働く。ポリマー外部保護コーティング202は、最も外部の層でありそして最低の率を有する。
【0030】
他の態様は、クラッド208とコーティング202との間の他のクラッド層(「外部クラッド」)の追加を含む。図3は、この態様を画いている。活性ファイバー芯304は、一次放射を発生および/または増幅および伝達するように働き、ガラス(精製またはドーピングしたシリカ)ポンプ芯306によって囲まれる。ポンプ芯306は、次に内部クラッド308により囲まれる。従来の態様とは異なり、内部クラッド308およびコーティング302は、追加の外部クラッド310により分離されている。この追加のクラッドは、第二のポンピングビームを伝達するかまたは保護コーティング302を損傷からさらに絶縁するのに有用である。
【0031】
図3により表示される好ましい態様では、ファイバー芯304は、nにより表示される屈折率を有しそして好ましくは希土類にドーピングしたシリカから製造され、ポンプ芯306は、好ましくは精製シリカから製造されnの率を有し、内部クラッド308は、好ましくはフッ素にドーピングしたシリカから製造されnの率を有し、そして外部クラッド310は、好ましくはフッ素にドーピングしたシリカから製造されnの率を有し、n>nである。
【0032】
図3により表示される他の態様では、ファイバー芯304は、nで表示される屈折率を有し好ましくは希土類にドーピングしたシリカから製造され、ポンプ芯306は、Geにドーピングしたシリカから製造され、nの率を有し、内部クラッド308は、精製シリカから製造されnの率を有し、そして外部クラッド310は、好ましくはフッ素にドーピングしたシリカから製造されnの率を有する。
【0033】
図3では、それぞれの層は、次第に小さくなる屈折率を有して芯304内の一次放射の全内部反射を生じ、そしてポンプ芯306内にポンプ放射を含む。従ってnはnより大きく、nはnより大きく、そしてnはnより大きい。
【0034】
本発明のさらなる態様は、D字形のポンプ芯を特徴とする。図4は、このようなレーザーファイバーの例を画いている。好ましくは希土類にドーピングしたシリカから製造された活性芯404は、D字形のポンプ芯406により囲まれる。ポンプ芯406は、それ自体内部クラッド408により囲まれ、後者は好ましくはD字形でありそして次に外部クラッド410により囲まれる。ファイバーは、次にポリマー保護コーティング402より囲まれる。屈折率プロフィルは、活性芯404の屈折率が画かれた態様内で最大である点で図3のそれと同様であり、そして屈折率はそれぞれの連続する層とともに減少する。
【0035】
D字形の芯を特徴とする他の態様は、図5に画かれている。活性芯504は、上記の態様におけるように、D字形のポンプ芯506により囲まれ、後者は、次に好ましくはD字形の内部クラッド層508により囲まれる。ポリマーコーティング502は、最も外部の層である。屈折率プロフィルは、活性芯504の屈折率が画かれた態様内で最大である点で図2のそれと同様であり、そして屈折率は、それぞれの連続する層とともに低下する。
【0036】
(前記に記載されそして図4、5に画かれたように)D字形のポンプ芯をポンプ芯の好ましい態様として記述したが、本発明がその特定の構造に制限されないことは明らかである。ポンプ芯の断面(有効なポンプ光吸収を生ずる)の任意の変化および改変は、請求の範囲に規定された本発明の範囲および趣旨から離れることなく、当業者により使用できる。
【0037】
本発明は、また上記のようなマルチクラッドファイバーを製造する方法を提供する。この製造方法は、それが既に周知の製造方法を利用することから、比較的簡単に現存の製造方法に組み込むことができる。活性芯およびポンプ芯(内部クラッド)を含む内部の予備的形成品は、改変化学蒸気溶着(MCVD)によるかまたは溶液法と関連するMCVDによるかまたはプラズマ増強化学蒸気溶着(PCVD)によるかの何れかにより製造される。これらの方法のなかの任意の方法によって、活性芯はポンプ芯になる基体上に溶着される。
【0038】
溶液法に関連するMCVDにより、シリコーンおよびドーピング剤を含む液体は、酸素気体の存在下加熱かつ蒸発される。酸化反応は、加熱されたポンプ芯予備的成型品内で生じ、そして酸化化合物は、煤の形で管の内面に溶着する。シリカマトリックスは、MCVDにより溶着される。希土類ドーピング(「REドーピング」)は、溶液法により達成される。管は次にさらに加熱されて煤をガラス化し、ガラス層が形成される。別の方法として、REドーピングした芯材料は、ポンプ芯になるだろうSiO管の内面にPCVDにより直接溶着できる。何れの場合でも、その内面に溶着された活性芯材料を有する管は、次に加熱されそしてつぶされて固体の棒を形成する。
【0039】
内部クラッドおよび所望の外部クラッドを形成する追加のクラッド層は、PCVD、MCVDまたは外部蒸気溶着(OVD)の何れかによって、内部クラッド材料の外部すなわち既につぶされて固体の予備的成形棒になっていると思われる基体の表面(内部クラッド管状予備的成形品の外面)に溶着される。PCVDは、マイクロ波のエネルギーを使用して、前駆気体をイオン化してプラズマを形成する強い電場を生ずる。プラズマは、基体の表面上に形成されそして基体上にガラス層を溶着させるのに足る熱をもたらす。プラズマは、ガラス層を溶着するために基体に沿って前後にスキャンする。
【0040】
予備的成型品が完成した後、そしてどんな予備的成型方法が適用されたかにかかわらず、活性芯、ポンプ芯材料およびガラスクラッドを含む固体の予備的成形棒を次に通常のシングルモードファイバーが延伸される条件に類似の条件下で所定のファイバーの直径に延伸される。
【0041】
最後の工程は、多数の方法により達成できる好ましくはポリマーの保護コーティング層を適用することである。これらの方法は、予備的成型品上への蒸気溶着、およびファイバー製造の延伸相中の噴霧を含む。予備的成型品は、ファイバーを生ずるために、保護層の適用後またはその間の何れかで延伸される。
【0042】
図2に記述されたような記述された好ましい構造は、2つの主な障害を克服するのに必要とされる。
【0043】
(1)精製シリカより高いおよび低い屈折率を有する両方の層は、精製シリカ基体(通常、一般にポンプ芯となる精製シリカ管、例えば206)上に溶着されねばならない。
【0044】
(2)ほとんどの場合、特にポンプ芯の形状が非円形である場合、層(例えば活性芯材料)は、基体の内面上に溶着されねばならず、そこでは他の層(例えばコーティング材料)は、基体の外面上に必要とされる。
【0045】
高い屈折率の層を精製シリカ管の内面に溶着しそして低い屈折率の層をその外面に溶着する能力は、例えば、強力な境界マルチクラッドファイバーレーザーの能率的な生成を可能にする。
【0046】
記述された製造方法の1つの利点は、製造フロー内の異なる段階として、異なる製造技術(例えば、MCVD、溶液ドーピング法およびPCVD)の組み合わせである。活性芯を希土類イオンによりドーピングし、そしてクラッドをフッ素によりドーピングする既知の方法は、例えば、所望の率のプロフィルを形成するのに使用される。知られている限り、これは、今まで立証されていない。通常、従来技術の方法は、一般に、精製シリカより高い屈折率または低い屈折率の何れかを有する層を溶着するように制限される。
【0047】
異なる製造工程を組み合わせる他の利点は、ガラス基体(通常精製シリカ管)の内面(通常活性芯)上並びにその外面(通常1つ以上のクラッド)上に層を実現する能力である。従来技術の方法は、一般に、管の内面または棒の外面の何れかで1つの溶着領域上に層を溶着するように制限される。
【0048】
通常適用される製造方法が上記の能力を欠いているので、これらは、なぜほとんどの二重クラッドファイバーが外部クラッドとしても機能するコーティングとしてポリマー層を利用するのかの主な理由である。すなわちポンプ光の導波がこのポリマー層により達成される。
【0049】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、それらにより制限されない。
【実施例1】
【0050】
円形芯のファイバーレーザー
円形芯の構造を有するマルチクラッドファイバーレーザーは、12μmの直径およびNA=0.16を有する低モード(近シングルモード)レーザー活性芯からなる。ポンプ芯の直径は、ガラスクラッドに関して400μm、NA=0.24に等しく、ポリマーコーティングに関してNA=0.36に等しい。PCVDにより溶着されたガラスクラッド層は、厚さ20μmであり、シリコーンコーティングにより囲まれている。
【実施例2】
【0051】
D字形の芯のファイバーレーザー
D字形の芯構造を有するマルチクラッディングファイバーレーザーは、実施例1と同じ特徴を有する。しかし、この例では、ポンプ芯の約10%は、1面で除かれており、ガラスクラッドの材料の適用前にD字形を生ずる。
【実施例3】
【0052】
ドーピング濃度
Ybドーピング:0.6モル%Yb、 共ドーピング:4モル%Al
Ndドーピング:0.1モル%Nd、 共ドーピング:4モル%Al
【実施例4】
【0053】
性能の向上
本発明の性能の向上は、約50℃(追加のクラッドなし)から追加のガラスクラッドによるほぼ室温のファイバー温度の低下、追加のクラッドによる約20%のレーザー出力の増加、並びに約15%のスロープ能率の増加を含む。
【0054】
図面を参照しつつ本発明の好ましい態様を記述したが、本発明が細かい態様に制限されず、そして種々の変化および改変が、請求の範囲に規定された本発明の範囲または趣旨から離れることなく当業者によって実施できることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来技術の二重クラッド光ファイバーの断面並びに屈折率の対応するグラフである。
【図2】本発明の態様の断面並びに屈折率のグラフである。
【図3】三重クラッドファイバーの断面および屈折率のグラフである。
【図4】D字形ポンプ芯および内部クラッドを有する三重クラッドファイバーの断面である。屈折率プロフィルは、図3に画かれたものに相当する。
【図5】D字形ポンプ芯および内部クラッドを有する本発明の態様の断面である。屈折率プロフィルは、図2に画かれたものに相当する。
【符号の説明】
【0056】
102 コーティング層
104 活性芯
106 ポンプ芯
202 保護コーティング
204 活性ファイバー芯
206 ポンプ芯
208 クラッド
304 活性ファイバー芯
306 ポンプ芯
308 内部クラッド
310 外部クラッド
404 活性芯
406 ポンプ芯
408 内部クラッド
410 外部クラッド
502 ポリマーコーティング
504 活性芯
506 ポンプ芯
508 内部クラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率nを有する希土類にドーピングした活性芯、
該活性芯を囲む屈折率nを有するポンプ芯、
該ポンプ芯を囲む屈折率nを有するガラス内部クラッド層、
屈折率nを有する該追加のガラスクラッド層を囲む保護コーティングからなり、そしてnはnより大きく、nはnより大きくそしてnはnより大きいことを特徴とするファイバーレーザー/ファイバー増幅器として使用するのに好適な高い損傷境界のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項2】
該活性芯が、レーザー放射の発生および/または増幅並びに伝達に使用され、そして該ポンプ芯が該活性芯内でレーザー活性イオンを励起するのに必要なポンプ放射を伝達するのに使用される請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項3】
該ガラス内部クラッド層が、該保護コーティングの該ポンプ放射のエバネッセントフィールドの量を最低にするのに十分な厚さを有する請求項2のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項4】
該ガラス内部クラッド層が、該保護コーティングへの浸透から該ポンプ放射のエバネッセントフィールドを防ぐのに十分な厚さを有する請求項2のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項5】
該活性芯が、近シングルモードおよびシングルモードからなる群から選ばれる請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項6】
該活性芯が、アルミニウム、ゲルマニウム、硼素およびリンからなる群から選ばれる追加の共ドーピング剤をさらに含む請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項7】
該ポンプ芯が、精製シリカ、ゲルマニウムにドーピングしたシリカおよびフッ素にドーピングしたシリカからなる群から選ばれる物質から製造される請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項8】
該ガラス内部クラッド層が、精製シリカおよびフッ素にドーピングしたシリカからなる群から選ばれる物質から製造される請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項9】
該保護コーティングがポリマーから製造される請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項10】
該ポンプ芯が非円形の断面を有する請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項11】
該ポンプ芯がD字形である請求項10のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項12】
該ガラス内部クラッド層が非円形の断面を有する請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項13】
該ガラス内部クラッド層がD字形である請求項12のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項14】
該保護コーティングがシリコーンおよびフルオロアクリレートからなる群から選ばれる物質から製造される請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項15】
該ガラス内部クラッド層と該保護コーティングとの間に少なくとも1つの追加のガラス外部クラッド層をさらに含み、該外部クラッド層の屈折率がnより小さくそしてnより大きい請求項1のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項16】
該ガラス外部クラッド層がフッ素にドーピングしたシリカから製造される請求項15のマルチクラッド光ファイバー。
【請求項17】
(a)珪素および予め選択されたドーピング剤を含む組成物を蒸発させる工程、
(b)該珪素およびドーピング剤を中空のシリカ棒の内部に溶着させてドーピングしたシリカの内層を形成する工程、
(c)該ドーピングしたシリカの予定された厚さが存在するまで工程(b)を繰り返す工程、
(d)もし必要ならば、予め選択されたドーピング剤を溶液法により内部シリカ層中に組み込む工程、
(e)該中空のシリカ棒を加熱かつつぶして、固体活性芯としての該ドーピングしたシリカを有する固体の棒およびポンプ層としての該中空のシリカ棒を形成する工程、
(f)第二のドーピングしたシリカ層を、プラズマ増強化学蒸気溶着により該固体の棒の外部に溶着させる工程、
(g)該予備的形成品を加熱かつ延伸して該光ファイバーを形成する工程、
(h)ポリマーコーティングを該第二のドーピングしたシリカ層の外部に溶着させて最終の予備的形成品を形成させ、ポリマー層はファイバーの延伸前またはファイバーの延伸工程中の何れかで適用される工程
からなることを特徴とする請求項1の該マルチクラッド光ファイバーの製造方法。
【請求項18】
内部溶着工程(b)が、改変化学蒸気溶着(MCVD)、溶液法と関連したMCVDおよびプラズマ増強化学蒸気溶着(PCVD)からなる群から選ばれる方法によって達成される請求項17の方法。
【請求項19】
工程(a)-(d)の該ドーピング剤が、希土類イオンである請求項17の方法。
【請求項20】
外部溶着工程(f)が、改変化学蒸気溶着(MCVD)、プラズマ増強化学蒸気溶着(PCVD)および外部蒸気溶着(OVD)からなる群から選ばれる方法によって達成される請求項17の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−519495(P2006−519495A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502884(P2006−502884)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/001293
【国際公開番号】WO2004/070431
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505283315)セラムオプテック ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】