マルチビーム光源ユニット、光走査装置及び画像形成装置
【課題】大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することができるマルチビーム光源ユニットを提供する。
【解決手段】シングルビーム光源LD1から出射されたTM偏光の光ビームはレンズ1で整形された後、偏光光学素子2に入射する。一方、シングルビーム光源LD2から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ4で整形され、λ/2板5でTE偏光とされた後、回折光学素子3で偏向されて偏光光学素子2に入射する。偏光光学素子2に入射した各光ビームは、互いに同一方向に出射される。これにより、偏光光学素子2に入射する各光ビームの入射方向を任意に設定することができる。
【解決手段】シングルビーム光源LD1から出射されたTM偏光の光ビームはレンズ1で整形された後、偏光光学素子2に入射する。一方、シングルビーム光源LD2から出射されたTM偏光の光ビームは、レンズ4で整形され、λ/2板5でTE偏光とされた後、回折光学素子3で偏向されて偏光光学素子2に入射する。偏光光学素子2に入射した各光ビームは、互いに同一方向に出射される。これにより、偏光光学素子2に入射する各光ビームの入射方向を任意に設定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム光源ユニット、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、複数のビームを出射するマルチビーム光源ユニット、該マルチビーム光源ユニットからの光を用いて被走査面上を走査する光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタやデジタル複写機などの画像形成装置では、画像情報に応じて変調された光源からの光を光偏向器及び走査レンズなどを介して感光体上に集光させるとともに、感光体上を所定の方向(主走査方向)に走査させ、感光体上に潜像(静電潜像)を形成している。そして、その潜像にトナーを付着させることにより、画像情報を顕像化させている。
【0003】
近年、画像形成装置の印字速度の向上、及び書込密度の向上が望まれている。それらの要求を達成する1つの方法として、画像形成装置の一部を構成する光走査装置の光偏向器における偏向速度の高速化がある。しかしながら、この方法には、高速回転に伴う騒音や熱等の問題があり、偏向速度の高速化には限界がある。そこで、1度に複数の光ビームを出射できるマルチビーム光源ユニットを利用して、1度に複数の光ビームを走査させる方法が考案された。
【0004】
上記マルチビーム光源ユニットは、複数の光ビームを発生するレーザアレイ光源(1つのパッケージ内に複数の発光点を持つレーザアレイを用いた光源)を用いることで実現できる。しかしながら、レーザアレイ光源は、製造プロセス上、発光点数を4,8,・・・と増やしていくにつれて技術的難易度が高くなり、非常に高価となる。
【0005】
一方、従来のシングルビーム光源(1つのパッケージ内に1つの発光点を持つレーザを用いた光源)を複数個用いて、マルチビーム光源ユニットとすることが多数提案されている。シングルビーム光源は低コストで大量生産されており、例えば4個のシングルビーム光源と、4つの発光点を持つレーザアレイ光源とでは、前者の方がコスト的に優位である。
【0006】
ところで、マルチビーム光源ユニットを複数のシングルビーム光源を用いて構成するためには、各光源からの光ビームを同一方向の光軸に合わせることが必要となり、そのための光学素子(いわゆるビーム合成素子)が種々提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1には、ビーム合成素子としてハーフミラーを用いたマルチビーム走査装置が開示されている。特許文献2には、ビーム合成素子として偏光ビームスプリッタを用いたマルチ光ビーム走査光学装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている装置では、ハーフミラー及び偏光ビームスプリッタの特性上、これらに入射する2つの光ビームの入射方向は互いに90度異なることが必要とされるため、マルチビーム光源ユニットの設計が制限され、小型化に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、偏光ビームスプリッタでは、三角プリズムが薄膜を介して接合されており、この薄膜は設計された波長及び入射角において用いられる場合には高い特性を示すが、設計値からずれたときの特性劣化が大きいという欠点を持っている。また、偏光ビームスプリッタはその形が示すように製造工程も多く高価な光学素子である。
【0008】
【特許文献1】特開平9−189873号公報
【特許文献2】特開平9−230260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して発生することができるマルチビーム光源ユニットを提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することができる光走査装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第3の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を、高速で形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の観点からすると、偏光方向が互いに異なる光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源を含む複数の光源と;前記第1の光源から出射された光ビームを整形する第1の光学系と;前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の光学系と;前記第2の光学系を介した光ビームを偏向する偏向光学素子と;前記第1の光学系を介した光ビームと前記偏向光学素子を介した光ビームとが入射され、前記第1の光学系を介した光ビームの少なくとも一部及び前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;を備えるマルチビーム光源ユニットである。
【0013】
これによれば、第1の光源及び第2の光源から偏光方向が互いに異なる光ビームが出射され、第1の光源から出射された光ビームは第1の光学系で整形され、第2の光源から出射された光ビームは第2の光学系で整形された後、偏向光学素子で偏向される。そして、第1の光学系で整形された光ビームの少なくとも一部と偏向光学素子で偏向された光ビームの少なくとも一部は偏光回折素子によって互いに同一方向に出射される。従って、偏光回折素子に入射する各光ビームの入射方向を任意に設定することができ、その結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することが可能となる。
【0014】
本発明は、第2の観点からすると、偏光方向が互いに同一の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源を含む複数の光源と;前記第1の光源から出射された光ビームを整形する第1の光学系と;前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の光学系と;前記第2の光学系を介した光ビームを偏向する偏向光学素子と;前記第1の光学系を介した光ビームと前記偏向光学素子を介した光ビームとが入射され、前記第1の光学系を介した光ビームの少なくとも一部及び前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;前記第1の光源と前記偏光回折素子との間の光路上、あるいは前記第2の光源と前記偏光回折素子との間の光路上に配置され、前記偏光回折素子に入射する2つの光ビームの偏光方向が互いに異なるように、入射光の偏光方向を変更する第3の光学系と;を備えるマルチビーム光源ユニットである。
【0015】
これによれば、第1の光源及び第2の光源から偏光方向が互いに等しい光ビームが出射され、第1の光源から出射された光ビームは第1の光学系で整形され、第2の光源から出射された光ビームは第2の光学系で整形された後、偏向光学素子で偏向される。そして、第1の光学系で整形された光ビームの少なくとも一部と偏向光学素子で偏向され光ビームの少なくとも一部は偏光回折素子によって互いに同一方向に出射される。なお、偏光回折素子に入射する第1の光源からの光ビーム及び第2の光源からの光ビームの一方は、偏光回折素子に入射する前に、各光ビームの偏光方向が互いに異なるように、第3の光学系によってその偏光方向が変更される。従って、偏光回折素子に入射する各光ビームの入射方向を任意に設定することができ、その結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することが可能となる。
【0016】
本発明は、第3の観点からすると、画像情報が含まれる複数の光ビームを偏向器で偏向しつつ被走査面上を走査する光走査装置において、前記複数の光ビームは、少なくとも1つの本発明のマルチビーム光源ユニットから出射される複数の光ビームであることを特徴とする光走査装置である。
【0017】
これによれば、少なくとも1つの本発明のマルチビーム光源ユニットを備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することが可能となる。
【0018】
本発明は、第4の観点からすると、少なくとも1つの走査対象物と;前記少なくとも1つの走査対象物に対して複数の光ビームを走査する少なくとも1つの本発明の光走査装置と;前記少なくとも1つの走査対象物に形成された像を転写対象物に転写する転写装置と;を備える画像形成装置である。
【0019】
これによれば、少なくとも1つの本発明の光走査装置を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ100の概略構成が示されている。
【0021】
図1に示されるレーザプリンタ100は、光走査装置900、走査対象物としての感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
【0022】
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902→現像ローラ903→転写チャージャ911→クリーニングブレード905の順に配置されている。
【0023】
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図1における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。
【0024】
帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
【0025】
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。ところで、感光体ドラム901の長手方向(回転軸に沿った方向)は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラム901の回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。また、感光体ドラム901における走査開始位置から走査終了位置までの主走査方向の走査領域のうち、潜像が形成される領域を「有効画像形成領域」ともいう。なお、この光走査装置900の構成については後述する。
【0026】
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903に供給される。このトナーカートリッジ904内のトナー量は、電源投入時や印刷終了時などにチェックされ、残量が少ないときには不図示の表示部に交換を促すメッセージが表示される。
【0027】
現像ローラ903は、回転に伴ってその表面にトナーカートリッジ904から供給されたトナーが帯電されて薄く均一に付着される。また、この現像ローラ903には、感光体ドラム901における帯電している部分(光が照射されなかった部分)と帯電していない部分(光が照射された部分)とで互いに逆方向の電界が生じるような電圧が印加されている。そして、この電圧によって、現像ローラ903の表面に付着しているトナーは、感光体ドラム901の表面の光が照射された部分にだけ付着する。すなわち、現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
【0028】
給紙トレイ906には転写対象物としての記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚づつ取り出し、レジストローラ対908に搬送する。該レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
【0029】
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
【0030】
この定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
【0031】
クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
【0032】
次に、前記光走査装置900の構成及び作用について図2を用いて説明する。
【0033】
この光走査装置900は、光源ユニットLU、シリンドリカルレンズ14、光偏向器15、2枚の走査結像レンズ17、同期センサ18、反射ミラー19、及び処理装置(図2では図示省略)などを備えている。
【0034】
光源ユニットLUは、一例として図3に示されるように、2つのシングルビーム光源(LD1、LD2)、2つのレンズ(1、4)、偏光光学素子2、回折光学素子3、及びλ/2板5などを有している。ここでは、一例として各シングルビーム光源は、いずれもTM偏光の光を出射するものとする(図4参照)。
【0035】
レンズ1は、シングルビーム光源LD1から出射された光を略平行光に整形する。レンズ4は、シングルビーム光源LD2から出射された光を略平行光に整形する。λ/2板5は、レンズ4からの光に1/2波長の光学的位相差を付与する。従って、λ/2板5を通過した光はTE偏光となる。回折光学素子3は、λ/2板5を通過した光を偏向する。偏光光学素子2は、レンズ1からの光及び回折光学素子3からの光を互いに同一方向の光軸に合わせる。なお、偏光光学素子2によって合成されない不要な光は、感光体ドラム901上に光スポットを形成しないように、光走査装置内及び光走査装置外の少なくとも一方において遮光されている。
【0036】
すなわち、シングルビーム光源LD1から出射され、レンズ1、及び偏光光学素子2を介した光(以下、便宜上「第1光ビーム」ともいう)と、シングルビーム光源LD2から出射され、レンズ4、λ/2板5、回折光学素子3、及び偏光光学素子2を介した光(以下、便宜上「第2光ビーム」ともいう)とが、光源ユニットLUから出射される。なお、第1光ビーム及び第2光ビームは、感光体ドラム901の表面において副走査方向に所定の間隔で集光されるように、略同一方向に出射される。
【0037】
偏光光学素子2は、一例として図5に示されるように、構造複屈折を発現する回折格子を有している。構造複屈折は、屈折率の異なる2つの媒質(例えば、一方が空気で、他方が等方性媒質)が、SWS(Subwavelength Structure;サブ波長構造)とも呼ばれる、入射光の波長よりも小さい周期構造をなしている回折格子で発現する。また、構造複屈折は、上記2つの媒質が、入射光の波長程度からその数倍以下の周期構造、いわゆる共鳴領域の周期構造(共鳴構造)をなしている回折格子においても発現することが知られている。
【0038】
そこで、偏光光学素子2の回折格子は、サブ波長構造又は共鳴構造の回折格子である。
【0039】
そして、回折効率は、回折格子のフィルファクタfや深さDで制御することが可能である。なお、実際上では、ミリオーダーの厚さDsの基板(例えば、ガラス基板)に対して、回折格子の周期Λ及び深さDはマイクロメートルオーダーであり、図5では回折格子が誇張して図示されている。
【0040】
偏光光学素子2の光学特性について図5及び図6を用いて説明する。一例として、波長λ=0.633μm、基板の屈折率N=1.456、周期Λ=0.35、フィルファクタf=0.5、深さD=0.75μm、入射光の入射角θ=60°、とし、平面波が入射されたときの、回折角を格子方程式に基づいて求めると、θ0=36.5°、θ−1=−40.3°となる。基板裏面での屈折を考慮すると、0次透過光(0T)の出射角θ´=60°となり、−1次回折光(−1T)の出射角θ" =−70.4°となる。次に、ベクトル回折理論に基づくフーリエモード法を用いて透過光の格子部での回折効率を計算した結果、0次透過光(0T)に対して、TE偏光(紙面に垂直)が入射したときの回折効率は1.4%、TM偏光(紙面に平行)が入射したときの回折効率は98.6%となり、消光比は98.6/1.4=70である。−1次回折光(−1T)に対して、TM偏光が入射したときの回折効率は0.7%、TE偏光が入射したときの回折効率は91.5%となり、消光比は131である。なお、実際には、各シングルビーム光源から出射される光はガウシアン分布を持ち、本実施形態では発散光束中に偏光光学素子2が配置されるため、上記の回折効率とは若干異なるが、それほど大きな差はない。
【0041】
すなわち、偏光光学素子2は、TE偏光が入射した場合には、そのほとんどを−1次光(−1T)として回折し、TM偏光が入射した場合には、そのほとんどを0次光(0T)として透過する偏光依存性の回折素子として振る舞うことが分かる。従って、図7に示されるように、この偏光光学素子2に、入射角θa=60°でTM偏光を入射し、入射角θb=−70.4°でTE偏光を入射すれば、TE偏光及びTM偏光は、いずれも出射角θc=60°で偏光光学素子2から出射されることになる。
【0042】
ところで、シングルビーム光源LD2から出射される光ビームの波長が変化すると、回折光学素子3での回折角が変化する(図8参照)。この回折光学素子3での回折角の変化は、光源ユニットLUから出射される第2光ビームの出射方向の変化を招来する。そこで、本実施形態では、偏光光学素子2と回折光学素子3と適切に組み合わせることによって、光源ユニットLUから出射される第2光ビームの出射方向が、シングルビーム光源LD2から出射される光ビームの波長に依存しないようにしている。これについて、図9を用いて以下に説明する。なお、ここでは、わかりやすくするために、回折光学素子3を薄肉の回折格子とし、入射側及び出射側の屈折率は1とする。また、偏光光学素子2と回折光学素子3とは、互いに平行となるように配置されている。
【0043】
回折光学素子3に入射するシングルビーム光源LD2からの光の入射角をθ2、出射角をθ2´、回折光学素子3での回折次数をm2、回折格子の格子周期をΛ2、偏光光学素子2に入射する回折光学素子3からの光の入射角をθ1、出射角をθ1´、偏光光学素子2での回折次数をm1、回折格子の格子周期をΛ1、とする。シングルビーム光源LD2から出射される光の波長をλとしたときの格子方程式は、次の(1)式及び(2)式で示される。
【0044】
sinθ1+m1λ/Λ1=sinθ1´ ……(1)
sinθ2+m2λ/Λ2=sinθ2´ ……(2)
【0045】
光源LD2から出射される光の波長がλ"に変化すると、回折光学素子3における出射角はθ2"に変化し、偏光光学素子2への入射角もθ1"に変化する。この場合であっても、偏光光学素子2における出射角を変化させないためには、次の(3)式及び(4)式の格子方程式が満足するように、m1、m2、Λ1、及びΛ2を設定すれば良い。
【0046】
sinθ1"+m1λ"/Λ1=sinθ1´ ……(3)
sinθ2+m2λ"/Λ2=sinθ2" ……(4)
【0047】
ここでは、偏光光学素子2と回折光学素子3とが互いに平行であり、θ1=θ2´であるので、上記(1)式と(2)式から、次の(5)式が得られる。
【0048】
sinθ2+λ(m1/Λ1+m2/Λ2)= sinθ1´ ……(5)
【0049】
同様に、θ1"=θ2"であるので、上記(3)式と(4)式から、次の(6)式が得られる。
【0050】
sinθ2+λ"(m1/Λ1+m2/Λ2)= sinθ1´ ……(6)
【0051】
上記(5)式と(6)式から、次の(7)式が満たされると、光源LD2から出射される光の波長に関係なく、θ1´=θ2となる。すなわち、光源LD2から出射される光の波長が変化しても、偏光光学素子2における第2光ビームの出射方向が変化しないようにすることができる。
【0052】
m1/Λ1+m2/Λ2=0 ……(7)
【0053】
また、偏光光学素子2及び回折光学素子3が、いずれも1次回折光を用いるならば、Λ1=Λ2となる。すなわち、偏光光学素子2及び回折光学素子3における回折格子の周期を互いに等しくすれば良い。なお、フィルファクタfや深さDは、回折効率が適切となるように、各々異ならせることができる。
【0054】
ここで、TE偏光の光ビームに着目すれば、偏光光学素子2と回折光学素子3の間の光路の中点に対して、偏光光学素子2と回折光学素子3は点対称な配置となっており、回折光学素子3は、偏光光学素子2と同一の光学特性を有する光学素子を用いることができる。これにより、回折光学素子3と偏光光学素子2とに同一の光学素子を用いることができ、部品管理コストを低減することが可能となる。
【0055】
また、回折光学素子3では、TM偏光の光については考慮する必要はないため、TE偏光のみについて回折効率が大きくなるように設定することが可能である。
【0056】
図2に戻り、光源ユニットLUから出射された各光ビームは、シリンドリカルレンズ14に入射する。このシリンドリカルレンズ14は、各光ビームに対して、主走査方向に対応する方向に細長い線像を、光偏向器15の偏向反射面(ポリゴンミラー面)近傍にそれぞれ結像する。
【0057】
光偏向器15で偏向された各光ビームは、それぞれ走査結像レンズ17によって結像され、感光体ドラム901表面上の、副走査方向に互いに所定の間隔だけ離れた位置に、光スポットとして集光される。
【0058】
なお、光偏向器15は、ポリゴンモータ(不図示)によって一定の速度で回転しており、その回転に伴って偏向反射面近傍に結像された各光ビームは等角速度的に偏向され、感光体ドラム901上の各光スポットは、主走査方向に等速移動する。すなわち、感光体ドラム901上を主走査方向に2ライン同時に走査する。
【0059】
また、走査結像レンズ17を透過して有効画像領域外に向かう光の一部は、反射ミラー19を介して同期センサ18で受光される。同期センサ18は、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。
【0060】
前記処理回路は、図10に示されるように、信号調整回路60、変調データ生成回路30、シリアル信号生成回路35、画像データ生成回路40、及びレーザ駆動回路50などを有している。
【0061】
信号調整回路60は、同期センサ18の出力信号を増幅、反転及び2値化する。
【0062】
画像データ生成回路40は、上位装置からの画像情報に基づいて、画像データを生成する。
【0063】
変調データ生成回路30は、信号調整回路60からの信号及び画像データ生成回路40からの画像データに基づいて変調データを生成する。
【0064】
シリアル信号生成回路35は、変調データ生成回路30からの変調データをシリアル信号に変換する。
【0065】
レーザ駆動回路50は、シリアル信号生成回路35からのシリアル信号に基づいて、シングルビーム光源LD1及びLD2の駆動信号を生成する。ここで生成された各駆動信号は光源ユニットLUに出力される。
【0066】
ここで、サブ波長構造又は共鳴構造の格子(以下、「微細構造格子」ともいう)の作製方法について説明する。
【0067】
微細構造格子は、可視光の波長領域に対して、サブμm〜数μm程度の周期を持つことになる。このような微細構造を作製する方法はそれほど多いわけではなく、一般的にはレーザ(干渉)露光法や電子ビーム露光法が広く用いられている。
【0068】
レーザ干渉露光法では、通常、青〜紫外領域の波長を持つレーザ光を干渉させて感光性の高分子材料(レジスト)に照射し、その干渉パターンを利用して微細構造格子を作製する。この場合、基板上に形成されるレジストに微細構造格子が形成されることになる。一方、電子ビーム露光法では、電子ビームを集光し、レジスト上を走査することによって微細構造格子を作製する。この場合も同様に、基板上に塗布されたレジストに微細構造格子が形成されることになる。
【0069】
これらの方法では、レジスト以外(石英ガラスなどの光学素子材料等)に微細構造格子を作製する場合には、このレジストに形成された微細構造格子を基にして、さらに反応性ドライエッチングやリフトオフなどを用いる必要がある。前記偏光光学素子2は、上記一般的な方法を用いて作製することが可能である。
【0070】
また、レジストにではなく、直接光学素子材料上に微細構造格子を形成することもできる。この方法について図11及び図12を用いて説明する。
【0071】
図11には、光硬化法を用いた例が示されている。光硬化法とは、レーザ光を光硬化性材料中に集光し、多光子吸収過程によってその集光点近傍においてその材料を硬化させ、レーザ光を3次元的に走査することにより微細構造格子を作製する方法である。Nd:YAGレーザやTi:Sapphireレーザなどのレーザ装置から出射されたレーザ光は、1/2波長板とグラントムソンプリズムによってその光強度が調整された後、空間フィルタによって波形整形される。そして、ガルバノミラーによって光路を変えながら、リレーレンズ、結像レンズ、及び対物レンズを介して基板上の光硬化性材料中に集光される。また、集光点はピエゾステージによって基板垂直方向にも移動可能である。このように、ガルバノミラーとピエゾステージの組み合わせにより、3次元的に凹凸の構造を作製することが可能である。このとき光硬化性材料としては、光硬化性樹脂や、光硬化性の有機・無機ハイブリッド材料などがあり、この光硬化性材料がそのまま光学素子として機能できる。なお、この図11に示される加工装置は1例であって、この限りではない。
【0072】
また、レーザアブレーション法を用いた加工法もある。レーザアブレーション法としては、加工に用いるレーザ光を干渉させて、その干渉パターンによって光学素子材料を直接加工する方法や、図12に示されるように、レーザ光を直接加工対象である光学素子材料に照射して、その一部を選択的に除去するような方法がある。以下、図12を用いて説明する。
【0073】
レーザ装置から出射されたレーザ光は、フォトマスクによってレーザ光の一部が透過され、そのレーザ光パターンはミラーを介して集光レンズによって縮小投影され、光学素子材料に照射される。また、光学素子材料はXYZステージ上に設置され、3次元的に移動可能である。もちろん、ミラーの代わりにガルバノミラー等を設けて、レーザ光を走査してもよい。また、フォトマスクには複数のパターン(図12では2種類)が用意され、加工したいパターンや加工対象である光学素子材料などに応じて選択することができる。これらXYZステージの移動やパターンの選択はPC(パソコン)によって制御されている。なお、この図12に示される加工装置は1例であることは言うまでもない。
【0074】
また、上記いずれの加工法においても、レーザ光のパルス幅が10ピコ秒以下である極短パルスレーザを使用することができる。極短パルスレーザの利用により、熱伝播による溶融、ダメージ層の低減、多光子吸収断面積の増加が可能であるといった利点があり、近年用いられるようになってきている。また多光子吸収断面積を増加させることが可能であることから、光硬化法において、より効果的に、低エネルギーで加工を行うことが可能となる。
【0075】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置900では、光源ユニットLUによってマルチビーム光源ユニットが実現されている。そして、シングルビーム光源LD1によって第1の光源が実現され、シングルビーム光源LD2によって第2の光源が実現され、レンズ1によって第1の光学系が実現され、レンズ4によって第2の光学系が実現され、回折光学素子3によって偏向光学素子が実現され、偏光光学素子2によって偏光回折素子が実現され、λ/2板5によって第3の光学系が実現されている。
【0076】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ100では、帯電チャージャ902と現像ローラ903とトナーカートリッジ904と転写チャージャ911とによって転写装置が構成されている。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る光源ユニットLUによると、シングルビーム光源LD1から出射されたTM偏光の光ビームはレンズ1で整形された後、偏光光学素子2に入射する。一方、シングルビーム光源LD2から出射されたTM偏光の光ビームはレンズ4で整形された後、λ/2板5でTE偏光とされ、回折光学素子3で偏向されて、偏光光学素子2に入射する。偏光光学素子2に入射した各光ビームは、互いに同一方向に出射される。従って、偏光光学素子2に入射する各光ビームの入射方向を任意に設定することができ、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源ユニットLUを用いているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ100によると、光走査装置900を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【0080】
なお、上記実施形態において、一例として図13に示されるように、前記偏光光学素子2と前記回折光学素子3を1つの平板状光学素子の両面に配置して、一体化しても良い。これにより、前記偏光光学素子2と前記回折光学素子3を精度良く配置することが容易となる。この場合に、平板状光学素子の入射面での表面反射によるレンズ1からの光の光量ロスを低減するために、レンズ1からの光の入射面にARコートを施したり、あるいは、一例として図14に示されるように、三角突起状のサブ波長構造をなしているAR格子を設けても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、前記λ/2板5を用いて光ビームの偏光状態を変換しているが、これに限定されるものではない。要するに光ビームの偏光方向が90°変更されれば良い。
【0082】
また、上記実施形態では、前記各シングルビーム光源からTM偏光の光が出射される場合について説明したが、これに限らず、前記各シングルビーム光源からTE偏光の光が出射されても良い。但し、この場合には、前記偏光光学素子2に代えて、TM偏光が入射した場合に、そのほとんどを0次光(0T)として透過させ、TE偏光が入射した場合に、そのほとんどを−1次光(−1T)として回折する偏光光学素子が用いられることとなる。
【0083】
また、上記実施形態では、第1の光学系としてレンズ1が用いられる場合について説明したが、これに限らず、例えばミラーが用いられても良い。更に、第1の光学系が複数の光学素子で構成されても良い。
【0084】
また、上記実施形態では、第2の光学系としてレンズ4が用いられる場合について説明したが、これに限らず、例えばミラーが用いられても良い。更に、第2の光学系が複数の光学素子で構成されても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、前記光源ユニットLUは、第1光ビームと第2光ビームとが、略同一方向に出射される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1光ビームと第2光ビームとが互いに異なる方向に出射されるようにしても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、前記レンズ4を介した光の偏光方向をTE偏光に変換する場合について説明したが、これに限らず、前記レンズ1を介した光の偏光方向をTE偏光に変換しても良い。この場合には、前記λ/2板5は、一例として図15に示されるように、前記レンズ1の後方に配置されることとなる。そして、偏光光学素子2は、TM偏光の光を回折するように設定される。
【0087】
このときの偏光光学素子2の光学特性について説明する。一例として、波長λ=0.633μm、基板の屈折率N=1.456、周期Λ=1.5λ、フィルファクタf=0.2、深さD=2.2μm、入射光の入射角θ=19.5°、とし、平面波が入射されたときの、回折角を格子方程式に基づいて求めると、θ0=13.2°、θ−1=−13.2°となる。基板裏面での屈折を考慮すると、0次透過光(0T)の出射角θ´=19.5°となり、−1次回折光(−1T)の出射角θ" =−19.5°となる。次に、ベクトル回折理論に基づくフーリエモード法を用いて透過光の回折効率を計算した結果、0次透過光(0T)に対して、TE偏光が入射したときの回折効率は76.1%、TM偏光が入射したときの回折効率は0.4%となり、消光比は76.1/0.4=190である。−1次回折光(−1T)に対して、TM偏光が入射したときの回折効率は89.7%、TE偏光が入射したときの回折効率は1.2%となり、消光比は75である。なお、実際には、各シングルビーム光源から出射される光はガウシアン分布を持ち、本実施形態では発散光束中に偏光光学素子2が配置されるため、上記の回折効率とは若干異なるが、それほど大きな差はない。
【0088】
すなわち、偏光光学素子2は、TE偏光が入射した場合には、そのほとんどを0次光(0T)として透過させ、TM偏光が入射した場合には、そのほとんどを−1次光(−1T)として回折する偏光依存性の回折素子として振る舞うことが分かる。従って、図15に示されるように、この偏光光学素子2に、入射角θd=19.5°でTE偏光を入射し、入射角θe=−19.5°でTM偏光を入射すれば、TE偏光及びTM偏光は、いずれも出射角θf=19.5°で偏光光学素子2から出射されることになる。
【0089】
この場合においても、一例として図16に示されるように、偏光光学素子2と回折光学素子3を1つの平板状光学素子の両面に配置して、一体化しても良い。さらに、一例として図17に示されるように、この平板状光学素子にλ/2板5を一体化しても良い。ところで、1つの平板上の1つの光学面に、場所に応じて異なる凹凸形状を設けること(マルチパタン化)は可能であり、1つの平板上に異なる機能を持った素子を配置することができる。また、ナノインプリントと呼ばれる複製技術を用いれば、異なる凹凸形状であっても、1回の複製プロセスで形成することができる。このように、平板状光学素子に種々の機能を集約することによる部品点数の削減は、低コスト化、ユニットサイズの小型化、及び配置精度の向上などに大きく寄与する。
【0090】
また、上記実施形態において、一例として図18に示されるように、シングルビーム光源LD2からTE偏光の光を出射しても良い。これにより、前記λ/2板5が不要となる。
【0091】
また、上記実施形態では、画像形成装置がレーザプリンタ100の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置900を備えた画像形成装置であれば、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【0092】
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【0093】
また、画像形成装置として、カラー画像に対応し、画像情報毎に感光ドラムを備えるタンデムカラー機であっても良い。図19には、前記光源ユニットLUを、光偏向器15に対向して2つ配置した光走査装置が示されている。このように構成することによって、1つの光源ユニットLUから2つの光ビームが出射されているので、計4つの光ビームが光偏向器15に向けて出射され、各光ビームが、YMCK各色毎に設けられた感光ドラム上を走査することができる。なお、実際の画像形成装置内では、前記走査結像レンズ17と被走査面との間に折り返しミラーを挿入して、各光ビームを対応する感光体ドラムへ導いているが、ここでは折り返しミラーを省略して図示している。
【0094】
図20には、前記光源ユニットLUを2個、光偏向器15の1つの反射面に対して、角度をつけて配置した光走査装置が示されている。この場合も同様に、計4本の光ビームが光偏向器15に向けて出射され、各光ビームが対応する色の感光ドラム上を走査することができる。
【0095】
なお、前記各シングルビーム光源に代えて、1つのパッケージに2つの発光点を持つレーザアレイ光源を用いることにより、計8本の光ビームが光偏向器15に向けて出射され、各色の感光体ドラムに2本ずつ走査することができる。また、1つのパーケージに4つの発光点を持つレーザアレイ光源を用いることにより、計16本の光ビームが光偏向器15に向けて出射され、各色の感光体ドラムに4本ずつ走査することができる。これにより、更に高速な画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を示す概略図である。
【図3】図2における光源ユニットを説明するための図である。
【図4】図3における各シングルビーム光源から出射される光を説明するための図である。
【図5】図3における偏光光学素子を説明するための図である。
【図6】図5の偏光光学素子の作用を説明するための図(その1)である。
【図7】図5の偏光光学素子の作用を説明するための図(その2)である。
【図8】波長変化による回折光学素子での回折角の変化を説明するための図である。
【図9】偏光光学素子と回折光学素子との関係を説明するための図である。
【図10】処理回路を説明するための図である。
【図11】偏光光学素子の作製方法1を説明するための図である。
【図12】偏光光学素子の作製方法2を説明するための図である。
【図13】偏光光学素子と回折光学素子の一体化を説明するための図(その1)である。
【図14】偏光光学素子と回折光学素子の一体化を説明するための図(その2)である。
【図15】図3の光源ユニットの変形例1を説明するための図である。
【図16】図15の光源ユニットにおける偏光光学素子と回折光学素子の一体化を説明するための図である。
【図17】図15の光源ユニットにおける偏光光学素子と回折光学素子とλ/2板の一体化を説明するための図である。
【図18】図3の光源ユニットの変形例2を説明するための図である。
【図19】タンデムカラー機に用いることができる光走査装置(その1)を説明するための図である。
【図20】タンデムカラー機に用いることができる光走査装置(その2)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0097】
1…レンズ(第1の光学系)、2…偏光光学素子(偏光回折素子)、3…回折光学素子(偏向光学素子)、4…レンズ(第2の光学系)、5…λ/2板(第3の光学系)、100…レーザプリンタ(画像形成装置)、900…光走査装置、901…感光体ドラム(走査対象物)、902…帯電チャージャ(転写装置の一部)、903…現像ローラ(転写装置の一部)、904…トナーカートリッジ(転写装置の一部)、909…定着ローラ(転写装置の一部)、911…転写チャージャ(転写装置の一部)、913…記録紙(転写対象物)、LD1…シングルビーム光源(第1の光源)、LD2…シングルビーム光源(第2の光源)、LU…光源ユニット(マルチビーム光源ユニット)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム光源ユニット、光走査装置及び画像形成装置に係り、更に詳しくは、複数のビームを出射するマルチビーム光源ユニット、該マルチビーム光源ユニットからの光を用いて被走査面上を走査する光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタやデジタル複写機などの画像形成装置では、画像情報に応じて変調された光源からの光を光偏向器及び走査レンズなどを介して感光体上に集光させるとともに、感光体上を所定の方向(主走査方向)に走査させ、感光体上に潜像(静電潜像)を形成している。そして、その潜像にトナーを付着させることにより、画像情報を顕像化させている。
【0003】
近年、画像形成装置の印字速度の向上、及び書込密度の向上が望まれている。それらの要求を達成する1つの方法として、画像形成装置の一部を構成する光走査装置の光偏向器における偏向速度の高速化がある。しかしながら、この方法には、高速回転に伴う騒音や熱等の問題があり、偏向速度の高速化には限界がある。そこで、1度に複数の光ビームを出射できるマルチビーム光源ユニットを利用して、1度に複数の光ビームを走査させる方法が考案された。
【0004】
上記マルチビーム光源ユニットは、複数の光ビームを発生するレーザアレイ光源(1つのパッケージ内に複数の発光点を持つレーザアレイを用いた光源)を用いることで実現できる。しかしながら、レーザアレイ光源は、製造プロセス上、発光点数を4,8,・・・と増やしていくにつれて技術的難易度が高くなり、非常に高価となる。
【0005】
一方、従来のシングルビーム光源(1つのパッケージ内に1つの発光点を持つレーザを用いた光源)を複数個用いて、マルチビーム光源ユニットとすることが多数提案されている。シングルビーム光源は低コストで大量生産されており、例えば4個のシングルビーム光源と、4つの発光点を持つレーザアレイ光源とでは、前者の方がコスト的に優位である。
【0006】
ところで、マルチビーム光源ユニットを複数のシングルビーム光源を用いて構成するためには、各光源からの光ビームを同一方向の光軸に合わせることが必要となり、そのための光学素子(いわゆるビーム合成素子)が種々提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1には、ビーム合成素子としてハーフミラーを用いたマルチビーム走査装置が開示されている。特許文献2には、ビーム合成素子として偏光ビームスプリッタを用いたマルチ光ビーム走査光学装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている装置では、ハーフミラー及び偏光ビームスプリッタの特性上、これらに入射する2つの光ビームの入射方向は互いに90度異なることが必要とされるため、マルチビーム光源ユニットの設計が制限され、小型化に悪影響を及ぼすおそれがあった。また、偏光ビームスプリッタでは、三角プリズムが薄膜を介して接合されており、この薄膜は設計された波長及び入射角において用いられる場合には高い特性を示すが、設計値からずれたときの特性劣化が大きいという欠点を持っている。また、偏光ビームスプリッタはその形が示すように製造工程も多く高価な光学素子である。
【0008】
【特許文献1】特開平9−189873号公報
【特許文献2】特開平9−230260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して発生することができるマルチビーム光源ユニットを提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することができる光走査装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第3の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を、高速で形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の観点からすると、偏光方向が互いに異なる光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源を含む複数の光源と;前記第1の光源から出射された光ビームを整形する第1の光学系と;前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の光学系と;前記第2の光学系を介した光ビームを偏向する偏向光学素子と;前記第1の光学系を介した光ビームと前記偏向光学素子を介した光ビームとが入射され、前記第1の光学系を介した光ビームの少なくとも一部及び前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;を備えるマルチビーム光源ユニットである。
【0013】
これによれば、第1の光源及び第2の光源から偏光方向が互いに異なる光ビームが出射され、第1の光源から出射された光ビームは第1の光学系で整形され、第2の光源から出射された光ビームは第2の光学系で整形された後、偏向光学素子で偏向される。そして、第1の光学系で整形された光ビームの少なくとも一部と偏向光学素子で偏向された光ビームの少なくとも一部は偏光回折素子によって互いに同一方向に出射される。従って、偏光回折素子に入射する各光ビームの入射方向を任意に設定することができ、その結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することが可能となる。
【0014】
本発明は、第2の観点からすると、偏光方向が互いに同一の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源を含む複数の光源と;前記第1の光源から出射された光ビームを整形する第1の光学系と;前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の光学系と;前記第2の光学系を介した光ビームを偏向する偏向光学素子と;前記第1の光学系を介した光ビームと前記偏向光学素子を介した光ビームとが入射され、前記第1の光学系を介した光ビームの少なくとも一部及び前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;前記第1の光源と前記偏光回折素子との間の光路上、あるいは前記第2の光源と前記偏光回折素子との間の光路上に配置され、前記偏光回折素子に入射する2つの光ビームの偏光方向が互いに異なるように、入射光の偏光方向を変更する第3の光学系と;を備えるマルチビーム光源ユニットである。
【0015】
これによれば、第1の光源及び第2の光源から偏光方向が互いに等しい光ビームが出射され、第1の光源から出射された光ビームは第1の光学系で整形され、第2の光源から出射された光ビームは第2の光学系で整形された後、偏向光学素子で偏向される。そして、第1の光学系で整形された光ビームの少なくとも一部と偏向光学素子で偏向され光ビームの少なくとも一部は偏光回折素子によって互いに同一方向に出射される。なお、偏光回折素子に入射する第1の光源からの光ビーム及び第2の光源からの光ビームの一方は、偏光回折素子に入射する前に、各光ビームの偏光方向が互いに異なるように、第3の光学系によってその偏光方向が変更される。従って、偏光回折素子に入射する各光ビームの入射方向を任意に設定することができ、その結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することが可能となる。
【0016】
本発明は、第3の観点からすると、画像情報が含まれる複数の光ビームを偏向器で偏向しつつ被走査面上を走査する光走査装置において、前記複数の光ビームは、少なくとも1つの本発明のマルチビーム光源ユニットから出射される複数の光ビームであることを特徴とする光走査装置である。
【0017】
これによれば、少なくとも1つの本発明のマルチビーム光源ユニットを備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することが可能となる。
【0018】
本発明は、第4の観点からすると、少なくとも1つの走査対象物と;前記少なくとも1つの走査対象物に対して複数の光ビームを走査する少なくとも1つの本発明の光走査装置と;前記少なくとも1つの走査対象物に形成された像を転写対象物に転写する転写装置と;を備える画像形成装置である。
【0019】
これによれば、少なくとも1つの本発明の光走査装置を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ100の概略構成が示されている。
【0021】
図1に示されるレーザプリンタ100は、光走査装置900、走査対象物としての感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
【0022】
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902→現像ローラ903→転写チャージャ911→クリーニングブレード905の順に配置されている。
【0023】
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図1における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。
【0024】
帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
【0025】
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。ところで、感光体ドラム901の長手方向(回転軸に沿った方向)は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラム901の回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。また、感光体ドラム901における走査開始位置から走査終了位置までの主走査方向の走査領域のうち、潜像が形成される領域を「有効画像形成領域」ともいう。なお、この光走査装置900の構成については後述する。
【0026】
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903に供給される。このトナーカートリッジ904内のトナー量は、電源投入時や印刷終了時などにチェックされ、残量が少ないときには不図示の表示部に交換を促すメッセージが表示される。
【0027】
現像ローラ903は、回転に伴ってその表面にトナーカートリッジ904から供給されたトナーが帯電されて薄く均一に付着される。また、この現像ローラ903には、感光体ドラム901における帯電している部分(光が照射されなかった部分)と帯電していない部分(光が照射された部分)とで互いに逆方向の電界が生じるような電圧が印加されている。そして、この電圧によって、現像ローラ903の表面に付着しているトナーは、感光体ドラム901の表面の光が照射された部分にだけ付着する。すなわち、現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
【0028】
給紙トレイ906には転写対象物としての記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚づつ取り出し、レジストローラ対908に搬送する。該レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
【0029】
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
【0030】
この定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
【0031】
クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
【0032】
次に、前記光走査装置900の構成及び作用について図2を用いて説明する。
【0033】
この光走査装置900は、光源ユニットLU、シリンドリカルレンズ14、光偏向器15、2枚の走査結像レンズ17、同期センサ18、反射ミラー19、及び処理装置(図2では図示省略)などを備えている。
【0034】
光源ユニットLUは、一例として図3に示されるように、2つのシングルビーム光源(LD1、LD2)、2つのレンズ(1、4)、偏光光学素子2、回折光学素子3、及びλ/2板5などを有している。ここでは、一例として各シングルビーム光源は、いずれもTM偏光の光を出射するものとする(図4参照)。
【0035】
レンズ1は、シングルビーム光源LD1から出射された光を略平行光に整形する。レンズ4は、シングルビーム光源LD2から出射された光を略平行光に整形する。λ/2板5は、レンズ4からの光に1/2波長の光学的位相差を付与する。従って、λ/2板5を通過した光はTE偏光となる。回折光学素子3は、λ/2板5を通過した光を偏向する。偏光光学素子2は、レンズ1からの光及び回折光学素子3からの光を互いに同一方向の光軸に合わせる。なお、偏光光学素子2によって合成されない不要な光は、感光体ドラム901上に光スポットを形成しないように、光走査装置内及び光走査装置外の少なくとも一方において遮光されている。
【0036】
すなわち、シングルビーム光源LD1から出射され、レンズ1、及び偏光光学素子2を介した光(以下、便宜上「第1光ビーム」ともいう)と、シングルビーム光源LD2から出射され、レンズ4、λ/2板5、回折光学素子3、及び偏光光学素子2を介した光(以下、便宜上「第2光ビーム」ともいう)とが、光源ユニットLUから出射される。なお、第1光ビーム及び第2光ビームは、感光体ドラム901の表面において副走査方向に所定の間隔で集光されるように、略同一方向に出射される。
【0037】
偏光光学素子2は、一例として図5に示されるように、構造複屈折を発現する回折格子を有している。構造複屈折は、屈折率の異なる2つの媒質(例えば、一方が空気で、他方が等方性媒質)が、SWS(Subwavelength Structure;サブ波長構造)とも呼ばれる、入射光の波長よりも小さい周期構造をなしている回折格子で発現する。また、構造複屈折は、上記2つの媒質が、入射光の波長程度からその数倍以下の周期構造、いわゆる共鳴領域の周期構造(共鳴構造)をなしている回折格子においても発現することが知られている。
【0038】
そこで、偏光光学素子2の回折格子は、サブ波長構造又は共鳴構造の回折格子である。
【0039】
そして、回折効率は、回折格子のフィルファクタfや深さDで制御することが可能である。なお、実際上では、ミリオーダーの厚さDsの基板(例えば、ガラス基板)に対して、回折格子の周期Λ及び深さDはマイクロメートルオーダーであり、図5では回折格子が誇張して図示されている。
【0040】
偏光光学素子2の光学特性について図5及び図6を用いて説明する。一例として、波長λ=0.633μm、基板の屈折率N=1.456、周期Λ=0.35、フィルファクタf=0.5、深さD=0.75μm、入射光の入射角θ=60°、とし、平面波が入射されたときの、回折角を格子方程式に基づいて求めると、θ0=36.5°、θ−1=−40.3°となる。基板裏面での屈折を考慮すると、0次透過光(0T)の出射角θ´=60°となり、−1次回折光(−1T)の出射角θ" =−70.4°となる。次に、ベクトル回折理論に基づくフーリエモード法を用いて透過光の格子部での回折効率を計算した結果、0次透過光(0T)に対して、TE偏光(紙面に垂直)が入射したときの回折効率は1.4%、TM偏光(紙面に平行)が入射したときの回折効率は98.6%となり、消光比は98.6/1.4=70である。−1次回折光(−1T)に対して、TM偏光が入射したときの回折効率は0.7%、TE偏光が入射したときの回折効率は91.5%となり、消光比は131である。なお、実際には、各シングルビーム光源から出射される光はガウシアン分布を持ち、本実施形態では発散光束中に偏光光学素子2が配置されるため、上記の回折効率とは若干異なるが、それほど大きな差はない。
【0041】
すなわち、偏光光学素子2は、TE偏光が入射した場合には、そのほとんどを−1次光(−1T)として回折し、TM偏光が入射した場合には、そのほとんどを0次光(0T)として透過する偏光依存性の回折素子として振る舞うことが分かる。従って、図7に示されるように、この偏光光学素子2に、入射角θa=60°でTM偏光を入射し、入射角θb=−70.4°でTE偏光を入射すれば、TE偏光及びTM偏光は、いずれも出射角θc=60°で偏光光学素子2から出射されることになる。
【0042】
ところで、シングルビーム光源LD2から出射される光ビームの波長が変化すると、回折光学素子3での回折角が変化する(図8参照)。この回折光学素子3での回折角の変化は、光源ユニットLUから出射される第2光ビームの出射方向の変化を招来する。そこで、本実施形態では、偏光光学素子2と回折光学素子3と適切に組み合わせることによって、光源ユニットLUから出射される第2光ビームの出射方向が、シングルビーム光源LD2から出射される光ビームの波長に依存しないようにしている。これについて、図9を用いて以下に説明する。なお、ここでは、わかりやすくするために、回折光学素子3を薄肉の回折格子とし、入射側及び出射側の屈折率は1とする。また、偏光光学素子2と回折光学素子3とは、互いに平行となるように配置されている。
【0043】
回折光学素子3に入射するシングルビーム光源LD2からの光の入射角をθ2、出射角をθ2´、回折光学素子3での回折次数をm2、回折格子の格子周期をΛ2、偏光光学素子2に入射する回折光学素子3からの光の入射角をθ1、出射角をθ1´、偏光光学素子2での回折次数をm1、回折格子の格子周期をΛ1、とする。シングルビーム光源LD2から出射される光の波長をλとしたときの格子方程式は、次の(1)式及び(2)式で示される。
【0044】
sinθ1+m1λ/Λ1=sinθ1´ ……(1)
sinθ2+m2λ/Λ2=sinθ2´ ……(2)
【0045】
光源LD2から出射される光の波長がλ"に変化すると、回折光学素子3における出射角はθ2"に変化し、偏光光学素子2への入射角もθ1"に変化する。この場合であっても、偏光光学素子2における出射角を変化させないためには、次の(3)式及び(4)式の格子方程式が満足するように、m1、m2、Λ1、及びΛ2を設定すれば良い。
【0046】
sinθ1"+m1λ"/Λ1=sinθ1´ ……(3)
sinθ2+m2λ"/Λ2=sinθ2" ……(4)
【0047】
ここでは、偏光光学素子2と回折光学素子3とが互いに平行であり、θ1=θ2´であるので、上記(1)式と(2)式から、次の(5)式が得られる。
【0048】
sinθ2+λ(m1/Λ1+m2/Λ2)= sinθ1´ ……(5)
【0049】
同様に、θ1"=θ2"であるので、上記(3)式と(4)式から、次の(6)式が得られる。
【0050】
sinθ2+λ"(m1/Λ1+m2/Λ2)= sinθ1´ ……(6)
【0051】
上記(5)式と(6)式から、次の(7)式が満たされると、光源LD2から出射される光の波長に関係なく、θ1´=θ2となる。すなわち、光源LD2から出射される光の波長が変化しても、偏光光学素子2における第2光ビームの出射方向が変化しないようにすることができる。
【0052】
m1/Λ1+m2/Λ2=0 ……(7)
【0053】
また、偏光光学素子2及び回折光学素子3が、いずれも1次回折光を用いるならば、Λ1=Λ2となる。すなわち、偏光光学素子2及び回折光学素子3における回折格子の周期を互いに等しくすれば良い。なお、フィルファクタfや深さDは、回折効率が適切となるように、各々異ならせることができる。
【0054】
ここで、TE偏光の光ビームに着目すれば、偏光光学素子2と回折光学素子3の間の光路の中点に対して、偏光光学素子2と回折光学素子3は点対称な配置となっており、回折光学素子3は、偏光光学素子2と同一の光学特性を有する光学素子を用いることができる。これにより、回折光学素子3と偏光光学素子2とに同一の光学素子を用いることができ、部品管理コストを低減することが可能となる。
【0055】
また、回折光学素子3では、TM偏光の光については考慮する必要はないため、TE偏光のみについて回折効率が大きくなるように設定することが可能である。
【0056】
図2に戻り、光源ユニットLUから出射された各光ビームは、シリンドリカルレンズ14に入射する。このシリンドリカルレンズ14は、各光ビームに対して、主走査方向に対応する方向に細長い線像を、光偏向器15の偏向反射面(ポリゴンミラー面)近傍にそれぞれ結像する。
【0057】
光偏向器15で偏向された各光ビームは、それぞれ走査結像レンズ17によって結像され、感光体ドラム901表面上の、副走査方向に互いに所定の間隔だけ離れた位置に、光スポットとして集光される。
【0058】
なお、光偏向器15は、ポリゴンモータ(不図示)によって一定の速度で回転しており、その回転に伴って偏向反射面近傍に結像された各光ビームは等角速度的に偏向され、感光体ドラム901上の各光スポットは、主走査方向に等速移動する。すなわち、感光体ドラム901上を主走査方向に2ライン同時に走査する。
【0059】
また、走査結像レンズ17を透過して有効画像領域外に向かう光の一部は、反射ミラー19を介して同期センサ18で受光される。同期センサ18は、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。
【0060】
前記処理回路は、図10に示されるように、信号調整回路60、変調データ生成回路30、シリアル信号生成回路35、画像データ生成回路40、及びレーザ駆動回路50などを有している。
【0061】
信号調整回路60は、同期センサ18の出力信号を増幅、反転及び2値化する。
【0062】
画像データ生成回路40は、上位装置からの画像情報に基づいて、画像データを生成する。
【0063】
変調データ生成回路30は、信号調整回路60からの信号及び画像データ生成回路40からの画像データに基づいて変調データを生成する。
【0064】
シリアル信号生成回路35は、変調データ生成回路30からの変調データをシリアル信号に変換する。
【0065】
レーザ駆動回路50は、シリアル信号生成回路35からのシリアル信号に基づいて、シングルビーム光源LD1及びLD2の駆動信号を生成する。ここで生成された各駆動信号は光源ユニットLUに出力される。
【0066】
ここで、サブ波長構造又は共鳴構造の格子(以下、「微細構造格子」ともいう)の作製方法について説明する。
【0067】
微細構造格子は、可視光の波長領域に対して、サブμm〜数μm程度の周期を持つことになる。このような微細構造を作製する方法はそれほど多いわけではなく、一般的にはレーザ(干渉)露光法や電子ビーム露光法が広く用いられている。
【0068】
レーザ干渉露光法では、通常、青〜紫外領域の波長を持つレーザ光を干渉させて感光性の高分子材料(レジスト)に照射し、その干渉パターンを利用して微細構造格子を作製する。この場合、基板上に形成されるレジストに微細構造格子が形成されることになる。一方、電子ビーム露光法では、電子ビームを集光し、レジスト上を走査することによって微細構造格子を作製する。この場合も同様に、基板上に塗布されたレジストに微細構造格子が形成されることになる。
【0069】
これらの方法では、レジスト以外(石英ガラスなどの光学素子材料等)に微細構造格子を作製する場合には、このレジストに形成された微細構造格子を基にして、さらに反応性ドライエッチングやリフトオフなどを用いる必要がある。前記偏光光学素子2は、上記一般的な方法を用いて作製することが可能である。
【0070】
また、レジストにではなく、直接光学素子材料上に微細構造格子を形成することもできる。この方法について図11及び図12を用いて説明する。
【0071】
図11には、光硬化法を用いた例が示されている。光硬化法とは、レーザ光を光硬化性材料中に集光し、多光子吸収過程によってその集光点近傍においてその材料を硬化させ、レーザ光を3次元的に走査することにより微細構造格子を作製する方法である。Nd:YAGレーザやTi:Sapphireレーザなどのレーザ装置から出射されたレーザ光は、1/2波長板とグラントムソンプリズムによってその光強度が調整された後、空間フィルタによって波形整形される。そして、ガルバノミラーによって光路を変えながら、リレーレンズ、結像レンズ、及び対物レンズを介して基板上の光硬化性材料中に集光される。また、集光点はピエゾステージによって基板垂直方向にも移動可能である。このように、ガルバノミラーとピエゾステージの組み合わせにより、3次元的に凹凸の構造を作製することが可能である。このとき光硬化性材料としては、光硬化性樹脂や、光硬化性の有機・無機ハイブリッド材料などがあり、この光硬化性材料がそのまま光学素子として機能できる。なお、この図11に示される加工装置は1例であって、この限りではない。
【0072】
また、レーザアブレーション法を用いた加工法もある。レーザアブレーション法としては、加工に用いるレーザ光を干渉させて、その干渉パターンによって光学素子材料を直接加工する方法や、図12に示されるように、レーザ光を直接加工対象である光学素子材料に照射して、その一部を選択的に除去するような方法がある。以下、図12を用いて説明する。
【0073】
レーザ装置から出射されたレーザ光は、フォトマスクによってレーザ光の一部が透過され、そのレーザ光パターンはミラーを介して集光レンズによって縮小投影され、光学素子材料に照射される。また、光学素子材料はXYZステージ上に設置され、3次元的に移動可能である。もちろん、ミラーの代わりにガルバノミラー等を設けて、レーザ光を走査してもよい。また、フォトマスクには複数のパターン(図12では2種類)が用意され、加工したいパターンや加工対象である光学素子材料などに応じて選択することができる。これらXYZステージの移動やパターンの選択はPC(パソコン)によって制御されている。なお、この図12に示される加工装置は1例であることは言うまでもない。
【0074】
また、上記いずれの加工法においても、レーザ光のパルス幅が10ピコ秒以下である極短パルスレーザを使用することができる。極短パルスレーザの利用により、熱伝播による溶融、ダメージ層の低減、多光子吸収断面積の増加が可能であるといった利点があり、近年用いられるようになってきている。また多光子吸収断面積を増加させることが可能であることから、光硬化法において、より効果的に、低エネルギーで加工を行うことが可能となる。
【0075】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置900では、光源ユニットLUによってマルチビーム光源ユニットが実現されている。そして、シングルビーム光源LD1によって第1の光源が実現され、シングルビーム光源LD2によって第2の光源が実現され、レンズ1によって第1の光学系が実現され、レンズ4によって第2の光学系が実現され、回折光学素子3によって偏向光学素子が実現され、偏光光学素子2によって偏光回折素子が実現され、λ/2板5によって第3の光学系が実現されている。
【0076】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ100では、帯電チャージャ902と現像ローラ903とトナーカートリッジ904と転写チャージャ911とによって転写装置が構成されている。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る光源ユニットLUによると、シングルビーム光源LD1から出射されたTM偏光の光ビームはレンズ1で整形された後、偏光光学素子2に入射する。一方、シングルビーム光源LD2から出射されたTM偏光の光ビームはレンズ4で整形された後、λ/2板5でTE偏光とされ、回折光学素子3で偏向されて、偏光光学素子2に入射する。偏光光学素子2に入射した各光ビームは、互いに同一方向に出射される。従って、偏光光学素子2に入射する各光ビームの入射方向を任意に設定することができ、大型化及び高コスト化を招くことなく、複数の光ビームを安定して出射することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源ユニットLUを用いているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、精度良く、複数の光を用いて被走査面上を走査することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態に係るレーザプリンタ100によると、光走査装置900を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【0080】
なお、上記実施形態において、一例として図13に示されるように、前記偏光光学素子2と前記回折光学素子3を1つの平板状光学素子の両面に配置して、一体化しても良い。これにより、前記偏光光学素子2と前記回折光学素子3を精度良く配置することが容易となる。この場合に、平板状光学素子の入射面での表面反射によるレンズ1からの光の光量ロスを低減するために、レンズ1からの光の入射面にARコートを施したり、あるいは、一例として図14に示されるように、三角突起状のサブ波長構造をなしているAR格子を設けても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、前記λ/2板5を用いて光ビームの偏光状態を変換しているが、これに限定されるものではない。要するに光ビームの偏光方向が90°変更されれば良い。
【0082】
また、上記実施形態では、前記各シングルビーム光源からTM偏光の光が出射される場合について説明したが、これに限らず、前記各シングルビーム光源からTE偏光の光が出射されても良い。但し、この場合には、前記偏光光学素子2に代えて、TM偏光が入射した場合に、そのほとんどを0次光(0T)として透過させ、TE偏光が入射した場合に、そのほとんどを−1次光(−1T)として回折する偏光光学素子が用いられることとなる。
【0083】
また、上記実施形態では、第1の光学系としてレンズ1が用いられる場合について説明したが、これに限らず、例えばミラーが用いられても良い。更に、第1の光学系が複数の光学素子で構成されても良い。
【0084】
また、上記実施形態では、第2の光学系としてレンズ4が用いられる場合について説明したが、これに限らず、例えばミラーが用いられても良い。更に、第2の光学系が複数の光学素子で構成されても良い。
【0085】
また、上記実施形態では、前記光源ユニットLUは、第1光ビームと第2光ビームとが、略同一方向に出射される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1光ビームと第2光ビームとが互いに異なる方向に出射されるようにしても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、前記レンズ4を介した光の偏光方向をTE偏光に変換する場合について説明したが、これに限らず、前記レンズ1を介した光の偏光方向をTE偏光に変換しても良い。この場合には、前記λ/2板5は、一例として図15に示されるように、前記レンズ1の後方に配置されることとなる。そして、偏光光学素子2は、TM偏光の光を回折するように設定される。
【0087】
このときの偏光光学素子2の光学特性について説明する。一例として、波長λ=0.633μm、基板の屈折率N=1.456、周期Λ=1.5λ、フィルファクタf=0.2、深さD=2.2μm、入射光の入射角θ=19.5°、とし、平面波が入射されたときの、回折角を格子方程式に基づいて求めると、θ0=13.2°、θ−1=−13.2°となる。基板裏面での屈折を考慮すると、0次透過光(0T)の出射角θ´=19.5°となり、−1次回折光(−1T)の出射角θ" =−19.5°となる。次に、ベクトル回折理論に基づくフーリエモード法を用いて透過光の回折効率を計算した結果、0次透過光(0T)に対して、TE偏光が入射したときの回折効率は76.1%、TM偏光が入射したときの回折効率は0.4%となり、消光比は76.1/0.4=190である。−1次回折光(−1T)に対して、TM偏光が入射したときの回折効率は89.7%、TE偏光が入射したときの回折効率は1.2%となり、消光比は75である。なお、実際には、各シングルビーム光源から出射される光はガウシアン分布を持ち、本実施形態では発散光束中に偏光光学素子2が配置されるため、上記の回折効率とは若干異なるが、それほど大きな差はない。
【0088】
すなわち、偏光光学素子2は、TE偏光が入射した場合には、そのほとんどを0次光(0T)として透過させ、TM偏光が入射した場合には、そのほとんどを−1次光(−1T)として回折する偏光依存性の回折素子として振る舞うことが分かる。従って、図15に示されるように、この偏光光学素子2に、入射角θd=19.5°でTE偏光を入射し、入射角θe=−19.5°でTM偏光を入射すれば、TE偏光及びTM偏光は、いずれも出射角θf=19.5°で偏光光学素子2から出射されることになる。
【0089】
この場合においても、一例として図16に示されるように、偏光光学素子2と回折光学素子3を1つの平板状光学素子の両面に配置して、一体化しても良い。さらに、一例として図17に示されるように、この平板状光学素子にλ/2板5を一体化しても良い。ところで、1つの平板上の1つの光学面に、場所に応じて異なる凹凸形状を設けること(マルチパタン化)は可能であり、1つの平板上に異なる機能を持った素子を配置することができる。また、ナノインプリントと呼ばれる複製技術を用いれば、異なる凹凸形状であっても、1回の複製プロセスで形成することができる。このように、平板状光学素子に種々の機能を集約することによる部品点数の削減は、低コスト化、ユニットサイズの小型化、及び配置精度の向上などに大きく寄与する。
【0090】
また、上記実施形態において、一例として図18に示されるように、シングルビーム光源LD2からTE偏光の光を出射しても良い。これにより、前記λ/2板5が不要となる。
【0091】
また、上記実施形態では、画像形成装置がレーザプリンタ100の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置900を備えた画像形成装置であれば、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【0092】
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、大型化及び高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
【0093】
また、画像形成装置として、カラー画像に対応し、画像情報毎に感光ドラムを備えるタンデムカラー機であっても良い。図19には、前記光源ユニットLUを、光偏向器15に対向して2つ配置した光走査装置が示されている。このように構成することによって、1つの光源ユニットLUから2つの光ビームが出射されているので、計4つの光ビームが光偏向器15に向けて出射され、各光ビームが、YMCK各色毎に設けられた感光ドラム上を走査することができる。なお、実際の画像形成装置内では、前記走査結像レンズ17と被走査面との間に折り返しミラーを挿入して、各光ビームを対応する感光体ドラムへ導いているが、ここでは折り返しミラーを省略して図示している。
【0094】
図20には、前記光源ユニットLUを2個、光偏向器15の1つの反射面に対して、角度をつけて配置した光走査装置が示されている。この場合も同様に、計4本の光ビームが光偏向器15に向けて出射され、各光ビームが対応する色の感光ドラム上を走査することができる。
【0095】
なお、前記各シングルビーム光源に代えて、1つのパッケージに2つの発光点を持つレーザアレイ光源を用いることにより、計8本の光ビームが光偏向器15に向けて出射され、各色の感光体ドラムに2本ずつ走査することができる。また、1つのパーケージに4つの発光点を持つレーザアレイ光源を用いることにより、計16本の光ビームが光偏向器15に向けて出射され、各色の感光体ドラムに4本ずつ走査することができる。これにより、更に高速な画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタの概略構成を説明するための図である。
【図2】図1における光走査装置を示す概略図である。
【図3】図2における光源ユニットを説明するための図である。
【図4】図3における各シングルビーム光源から出射される光を説明するための図である。
【図5】図3における偏光光学素子を説明するための図である。
【図6】図5の偏光光学素子の作用を説明するための図(その1)である。
【図7】図5の偏光光学素子の作用を説明するための図(その2)である。
【図8】波長変化による回折光学素子での回折角の変化を説明するための図である。
【図9】偏光光学素子と回折光学素子との関係を説明するための図である。
【図10】処理回路を説明するための図である。
【図11】偏光光学素子の作製方法1を説明するための図である。
【図12】偏光光学素子の作製方法2を説明するための図である。
【図13】偏光光学素子と回折光学素子の一体化を説明するための図(その1)である。
【図14】偏光光学素子と回折光学素子の一体化を説明するための図(その2)である。
【図15】図3の光源ユニットの変形例1を説明するための図である。
【図16】図15の光源ユニットにおける偏光光学素子と回折光学素子の一体化を説明するための図である。
【図17】図15の光源ユニットにおける偏光光学素子と回折光学素子とλ/2板の一体化を説明するための図である。
【図18】図3の光源ユニットの変形例2を説明するための図である。
【図19】タンデムカラー機に用いることができる光走査装置(その1)を説明するための図である。
【図20】タンデムカラー機に用いることができる光走査装置(その2)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0097】
1…レンズ(第1の光学系)、2…偏光光学素子(偏光回折素子)、3…回折光学素子(偏向光学素子)、4…レンズ(第2の光学系)、5…λ/2板(第3の光学系)、100…レーザプリンタ(画像形成装置)、900…光走査装置、901…感光体ドラム(走査対象物)、902…帯電チャージャ(転写装置の一部)、903…現像ローラ(転写装置の一部)、904…トナーカートリッジ(転写装置の一部)、909…定着ローラ(転写装置の一部)、911…転写チャージャ(転写装置の一部)、913…記録紙(転写対象物)、LD1…シングルビーム光源(第1の光源)、LD2…シングルビーム光源(第2の光源)、LU…光源ユニット(マルチビーム光源ユニット)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光方向が互いに異なる光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源を含む複数の光源と;
前記第1の光源から出射された光ビームを整形する第1の光学系と;
前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の光学系と;
前記第2の光学系を介した光ビームを偏向する偏向光学素子と;
前記第1の光学系を介した光ビームと前記偏向光学素子を介した光ビームとが入射され、前記第1の光学系を介した光ビームの少なくとも一部及び前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;を備えるマルチビーム光源ユニット。
【請求項2】
偏光方向が互いに同一の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源を含む複数の光源と;
前記第1の光源から出射された光ビームを整形する第1の光学系と;
前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の光学系と;
前記第2の光学系を介した光ビームを偏向する偏向光学素子と;
前記第1の光学系を介した光ビームと前記偏向光学素子を介した光ビームとが入射され、前記第1の光学系を介した光ビームの少なくとも一部及び前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;
前記第1の光源と前記偏光回折素子との間の光路上、あるいは前記第2の光源と前記偏光回折素子との間の光路上に配置され、前記偏光回折素子に入射する2つの光ビームの偏光方向が互いに異なるように、入射光の偏光方向を変更する第3の光学系と;を備えるマルチビーム光源ユニット。
【請求項3】
前記偏光回折素子は、構造複屈折を発現する回折格子を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項4】
前記偏光回折素子から出射される前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部の出射方向は、該光ビームの波長に依存しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項5】
前記偏向光学素子は、回折光学素子であり、
前記偏向光学素子及び前記偏光回折素子は、回折格子の周期が互いに等しいことを特徴とする請求項4に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項6】
前記偏向光学素子と前記偏光回折素子は、光学特性が互いに等しいことを特徴とする請求項5に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項7】
前記偏向光学素子と前記偏光回折素子は、一体化されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項8】
画像情報が含まれる複数の光ビームを偏向器で偏向しつつ被走査面上を走査する光走査装置において、
前記複数の光ビームは、少なくとも1つの請求項1〜7のいずれか一項に記載のマルチビーム光源ユニットから出射される複数の光ビームであることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
少なくとも1つの走査対象物と;
前記少なくとも1つの走査対象物に対して複数の光ビームを走査する少なくとも1つの請求項8に記載の光走査装置と;
前記少なくとも1つの走査対象物に形成された像を転写対象物に転写する転写装置と;を備える画像形成装置。
【請求項10】
前記画像情報は、カラー画像情報であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項1】
偏光方向が互いに異なる光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源を含む複数の光源と;
前記第1の光源から出射された光ビームを整形する第1の光学系と;
前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の光学系と;
前記第2の光学系を介した光ビームを偏向する偏向光学素子と;
前記第1の光学系を介した光ビームと前記偏向光学素子を介した光ビームとが入射され、前記第1の光学系を介した光ビームの少なくとも一部及び前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;を備えるマルチビーム光源ユニット。
【請求項2】
偏光方向が互いに同一の光ビームを出射する第1の光源及び第2の光源を含む複数の光源と;
前記第1の光源から出射された光ビームを整形する第1の光学系と;
前記第2の光源から出射された光ビームを整形する第2の光学系と;
前記第2の光学系を介した光ビームを偏向する偏向光学素子と;
前記第1の光学系を介した光ビームと前記偏向光学素子を介した光ビームとが入射され、前記第1の光学系を介した光ビームの少なくとも一部及び前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部を互いに同一方向に出射する偏光回折素子と;
前記第1の光源と前記偏光回折素子との間の光路上、あるいは前記第2の光源と前記偏光回折素子との間の光路上に配置され、前記偏光回折素子に入射する2つの光ビームの偏光方向が互いに異なるように、入射光の偏光方向を変更する第3の光学系と;を備えるマルチビーム光源ユニット。
【請求項3】
前記偏光回折素子は、構造複屈折を発現する回折格子を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項4】
前記偏光回折素子から出射される前記偏向光学素子を介した光ビームの少なくとも一部の出射方向は、該光ビームの波長に依存しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項5】
前記偏向光学素子は、回折光学素子であり、
前記偏向光学素子及び前記偏光回折素子は、回折格子の周期が互いに等しいことを特徴とする請求項4に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項6】
前記偏向光学素子と前記偏光回折素子は、光学特性が互いに等しいことを特徴とする請求項5に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項7】
前記偏向光学素子と前記偏光回折素子は、一体化されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のマルチビーム光源ユニット。
【請求項8】
画像情報が含まれる複数の光ビームを偏向器で偏向しつつ被走査面上を走査する光走査装置において、
前記複数の光ビームは、少なくとも1つの請求項1〜7のいずれか一項に記載のマルチビーム光源ユニットから出射される複数の光ビームであることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
少なくとも1つの走査対象物と;
前記少なくとも1つの走査対象物に対して複数の光ビームを走査する少なくとも1つの請求項8に記載の光走査装置と;
前記少なくとも1つの走査対象物に形成された像を転写対象物に転写する転写装置と;を備える画像形成装置。
【請求項10】
前記画像情報は、カラー画像情報であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−214154(P2007−214154A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29104(P2006−29104)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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