説明

メタロセン触媒系を使用した重合方法

少なくとも1個の弗化物又は弗素含有脱離基を有するメタロセン触媒化合物の存在下にオレフィンを重合させるための方法を提供する。より具体的には、本発明は、改善された反応器性能を有し、触媒組成物及び/又は反応器に汚れ防止用添加剤を添加する必要性を低減させ又は無くす方法及び触媒組成物に関するものである。一具体例では、本発明は、エチレン及び少なくとも1種の共単量体と、少なくとも1個の弗化物イオン又は弗素含有脱離基を含むメタロセン触媒化合物を含む担持触媒系とを接触させることを含むオレフィン重合方法において、担持触媒系が35μm以下の平均粒度及び1〜2cm3/gの細孔容量を有する無機酸化物担体を含むことを特徴とするオレフィン重合方法である。一具体例では、それから得られた重合体生成物は、0.910g/cm3〜0.940g/cm3の範囲の密度、1.8〜4の分子量分布及び0.1dg/分〜10dg/分のI2を有する共重合体であり、しかもフィルムのような物品に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、改良されたメタロセン触媒系を使用した重合方法に関する。該触媒系は、少なくとも1個の弗化物(弗化物イオン)脱離基又は弗素含有脱離基を有するメタロセン化合物を含む。少なくとも1個の脱離基は、メタロセン型化合物をオレフィン重合の触媒として活性にさせるように、該化合物から引き抜かれ得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
重合及び触媒の進歩によって、様々な優れた製品及び用途に有用な改善された物性及び化学的特性を有する多くの新規な重合体を製造することができるようになった。この新規な触媒の開発によって、特定の重合体を製造するための重合方法(溶液、スラリー、高圧又は気相)の選択の幅が大きく広がった。また、重合技術の進歩は、より効率的で、非常に生産性が高く、しかも経済的に向上した方法を提供した。これらの進歩を具体的に例示すると、メタロセン触媒系を使用する技術分野の進歩である。
【0003】
新規な技術分野と同様に、特にポリオレフィン産業においても、コストの僅かな削減は、多くの場合、商業上の努力がなお実現可能かどうかを決める。メタロセン技術の分野におけるこの側面は、コストを削減する新たな方法を探し求めている該産業の関係者の数からみても明らかである。特に、該産業においては、新規で且つ改良されたメタロセン触媒系を開発することに極めて大きな重点が置かれている。いくつかは、新規な重合体を製造するための触媒系を設計することに重点が置かれており、その他は改善された操作性に、そして多くは、さらに触媒の生産性を改良することに重点が置かれている。触媒の生産性、即ち、触媒のグラム当たりに製造される重合体の量は、通常、ポリオレフィン産業における新たな商業上の発展をなし又はそれを伸展させることができる重要な経済的要因である。また、重合用反応器の反応器操作性(汚れ及びシーティングの欠如など)も、ポリオレフィン製造者にとっては大きな関心事である。反応器の汚れの発生を低減させることは、反応器についての停止時間が減少する及びポリオレフィン樹脂の生産量が改善される並びに樹脂の品質が高まるという商業的な利益になる。
【0004】
1980年代初頭における助触媒としてのアルモキサンの利用の発見で始まったメタロセン技術分野の初期の段階から、メタロセン化合物の嵩高配位子上の置換基の発見、それを通じた非配位性陰イオンの開発、そしてそれと共に今日のさらに増加した数の新規なメタロセン嵩高配位子化合物の開発に至るまで、触媒の生産性に主な重点が置かれている。
【0005】
この証拠は、米国特許第4,530,914号、同4,542,199号、同4,769,510号、同4,871,705号、同4,937,299号、同5,017,714号、同5,055,438号、同5,096,867号、同5,130,030号、同5,120,867号、同5,124,418号、同5,198,401号、同5,210,352号、同5,229,478号、同5,264,405号、同5,278,264号、同5,278,119号、同5,304,614号、同5,324,800号、同5,347,025号、同5,350,723号、同5,384,299号、同5,391,790号、同5,391,789号、同5,399,636号、同5,408,017号、同5,491,207号、同5,455,366号、同5,534,473号、同5,539,124号、同5,554,775号、同5,621,126号、同5,684,098号、同5,693,730号、同5,698,634号、同5,710,297号、同5,712,354号、同5,714,427号、同5,714,555号、同5,728,641号、同5,728,839号、同5,753,577号、同5,767,209号、同5,770,753号、同5,770,664号及び同5,814,574号、欧州特許第EP−A−0591756号、EP−A−0520732号、EP−A−0420436号、EP−B10485822号、EP−B10485823号、EP−A2−0743324及びEP−B10518092並びに国際公開第WO91/04257号、WO92/00333号、WO93/08221号、WO93/08199号、WO94/01471号、WO96/20233号、WO97/15582号、WO97/19959号、WO97/46567号、WO98/01455号、WO98/06759及びWO98/011144号に記載された様々なメタロセン触媒化合物及び触媒系を検討している従来技術のこのサブセットに見られ得る。
【0006】
メタロセンの従来技術には多くのさらなる例が存在する。しかしながら、引き抜かれてメタロセン触媒系をオレフィンを重合できるようにし得る配位子である脱離基の重要性を検討するサブセットは少ない。従来技術のいくつか、例えば、米国特許第4,542,199号及び同4,404,344号は、それぞれ、塩化物又はメチル脱離基を使用することを検討している。
【0007】
このメタロセンの従来技術の多くは、一般に脱離基としてハロゲンを使用することを検討している。例えば、EP−A2 0200351号には、可能なもののリストにおいて、EP−A1 0705849号と同様に、弗化物脱離基を有する数種の化合物が記載されている。しかしながら、該従来技術の多くではハロゲンが典型的に検討されているが、主な重点は、脱離基としての塩素に置かれている。
【0008】
弗化物基を有するメタロセン化合物のいくつかの開示及び例示がある。例えば、次のようなものである。
【0009】
E.F.Murphy外,「一連の置換シクロペンタジエニル第4族原子弗化物の合成及び分光分析による特徴付け:アセチルアセトナト錯体[(アセチルアセトナト)2(η5−C5Me5)Zr(μ−F)SnMe3C1]の結晶構造」,DALTON 1983(1996)には、いくつかの弗化一置換及び二置換シクロペンタジエニル第4属原子化合物が記載されている。
【0010】
Herzog外,「(η5−C5Me5)ZrF3、(η5−C5Me4Et)ZrF3、(η5−C5M452ZrF2、(η5−C5Me5)HfF3及び(η5−C5Me5)TaF4とAlMe3との反応。第1ハフニウム−アルミニウム−炭素クラスターの構造」,15 ORGANOMETALLICS 909−917(1996)には、弗化物脱離基を有する様々な化合物とアルミニウム化合物との反応が記載されている。
【0011】
F.Garbassi外,JOURNAL OF MOLECULAR CATALYSIS A:CHEMICAL 101 199−209(1995)には、ジルコニウム化合物上での様々な脱離基の結合エネルギーが例示されている。特に、この文献には、エチレンの重合において二塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムの触媒系が二弗化アナログよりも活性であることが示されている。
【0012】
国際公開第WO97/07141号には、弗化物脱離基を有する多数のメタロセン化合物が記載されている。この文献には、これらのものをスチレンの重合においてメチルアルモキサンと共に使用することが例示され、且つ、非常に低い生産性を有する単一の一弗化ビス(シクロペンタジエニル)チタンが示されている。また、Kaminsky外,「シンジオタクチック特定スチレン重合における触媒としての弗素化半サンドイッチ錯体」,30(25)MACROMOLECULES 1997には、非架橋三弗化モノシクロペンタジエニルチタンが10℃〜70℃の温度範囲でのスチレン重合において塩素化化合物よりも高い活性を有することが記載されている。
【0013】
独国特許出願第DE4332009A1には、ハロゲン化有機金属と弗化錫とを反応させることによって弗化有機金属を作るための方法が記載されている。この文献は、メチルアルモキサン及び二塩化ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの非担持触媒系が70℃で二弗化物の2倍量と比較して低いホモポリエチレンの生産性を有することを示しているように思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の議論を考慮すると、商業的なポリオレフィン方法を実施するために必要な効率を与えることができるさらに高い生産性の触媒系に対する要望がなお存在している。さらに、特に気相流動床方法では、反応器の性能(反応器の汚れ、シーティングなどが存在すること又は存在しないこと)が担持メタロセンを使用するときに問題であることも分かっている。多くの場合、第2の添加剤又は担体である「表面改質剤」を使用して汚れを低減させ、しかして反応器の商業的性能を改善させる。しかしながら、これらの表面改質剤の添加は、重合方法にコストと複雑さを追加する。従って、改善された触媒生産性及び反応器性能でもってポリオレフィンを製造することができる重合方法及び触媒系を得ることが非常に有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明は、少なくとも1個の弗化物又は弗素含有脱離基を有するメタロセン触媒化合物の存在下にオレフィンを重合させるための方法を提供する。より具体的には、本発明は、汚れ防止添加剤を触媒組成物及び/又は反応器に添加する必要性を低減させ又は無くす、改善された反応器性能を有する方法及び触媒組成物に関するものである。
【0016】
一具体例では、本発明は、(a)エチレン及びC4〜C8α−オレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種の共単量体と、(b)少なくとも1個の弗化物イオン又は弗素含有脱離基を含む置換非架橋ビスシクロペンタジエニルジルコノセン触媒化合物からなるメタロセン触媒化合物を含む担持触媒系とを接触させることを含むオレフィンの重合方法において、該担持触媒系が、35μm以下の平均粒度及び1〜2cm3/gの細孔容量を有するシリカ担体を含む、オレフィン重合方法である。それから得られた重合体生成物は、一具体例では、0.910g/cm3〜0.940g/cm3の範囲の密度、1.8〜4の分子量分布及び0.1dg/分〜10dg/分のI2を有する共重合体であり、しかもこれはフィルムのような物品に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
緒言
本発明は、少なくとも1個の弗化物又は弗素含有脱離基を有するメタロセン触媒化合物の存在下にオレフィンを重合させるための方法、好ましくは、少なくとも1個の弗化物脱離基を含む担持メタロセンを使用してエチレンとC3〜C20オレフィンとを重合させるための気相方法であって、該担持「弗化」メタロセンが小さな直径(例えば、35μm以下)の寸法の無機酸化物担体マトリックスをさらに含むことができるものに関する。
【0018】
驚くべきことに、弗化物又は弗素含有脱離基は、改善された活性、生産性及び減少した反応器汚れを有するメタロセン触媒系を生じさせることが分かった。これは、特に驚くべきことである。というのは、弗化物脱離基がハロゲンのうち任意の他のものよりも金属に強く結合することは周知であるからである。これは、弗化物又は弗素含有脱離基を引き抜くことがより困難であり、しかして活性を減少させることを意味する。さらに、典型的には、メタロセン触媒系が担持された形態にあると、該担持触媒系の活性並びに生産性が減少する。驚くべきことに、弗化物又は弗素含有脱離基を有する有機金属触媒化合物を担持させると、その活性及び生産性の損失が減少し又は実質的に無くなる。さらに、これらの弗化メタロセンの部類は、汚れを減少させることによって重合用反応器の操作性を改善させることが分かった。
【0019】
メタロセン触媒化合物
メタロセン触媒化合物としては、1個以上のシクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエニル(「Cp」)にアイソローバルな配位子が少なくとも1個の金属原子に結合し、しかも1個以上の脱離基が該少なくとも1個の金属原子に結合した半(1個のシクロペンタジエニルが金属中心に結合したもの)サンドイッチ化合物及び全(2個のシクロペンタジエニルが金属中心に結合したもの)サンドイッチ化合物が挙げられる。この明細書及び請求の範囲の目的上、用語「脱離基」とは、メタロセン触媒化合物から引き抜かれて1種以上のオレフィンを重合することができるメタロセン触媒陽イオンを形成させることができる任意の配位子である。本発明において、特に有用なメタロセンは、弗化メタロセン、又は、少なくとも1個の弗化物イオン脱離基若しくは弗素含有脱離基を含むメタロセンである。
【0020】
Cp配位子は、一般に、開いた系若しくは環系若しくは縮合系又はそれらの組み合わせであることができるπ結合を含む1個以上の結合系によって表される。これらの環又は環系は、典型的には、第13〜16族原子から選択される原子から構成され、好ましくは、これらの原子は、炭素、窒素、酸素、珪素、硫黄、燐、硼素及びアルミニウム又はそれらの組み合わせから選択される。最も好ましくは、該環又は環系は、シクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエニル型配位子構造(シクロペンタジエニルにアイソローバルな構造)のように、炭素原子から構成されるが、これに限定されない。金属原子は、好ましくは、元素の周期律表の第3〜16族原子及びランタニド又はアクチニド系列から選択され、また別の具体例では第4〜12族の原子から選択され、またさらに特定の具体例では第4、5及び6族原子から選択され、またさらに別の具体例では第4族原子から選択される。
【0021】
一具体例では、本発明のメタロセン触媒化合物は、次式:
ABMQn (I)
(式中、それぞれのLA及びLBは金属中心Mに結合し、そしてそれぞれのQは該金属中心に結合し、nは0又は1〜4の整数であり、好ましくは1又は2、最も好ましくは2である。)
によって表される非架橋ビスシクロペンタジエニルメタロセン化合物である。
【0022】
式(I)において、Mは、一具体例では第3〜12族原子及びランタニド族の原子よりなる群から選択され、またさらに特定の具体例では第3〜10族原子よりなる群から選択され、またさらに特定の具体例ではSc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir及びNiよりなる群から選択され、またさらに特定の具体例では第4、5及び6族原子よりなる群から選択され、またさらに特定の具体例ではTi、Zr、Hf原子から選択され、またさらに特定の具体例ではZr及びHfから選択され、またさらに特定の具体例ではZrである。金属原子「M」の酸化状態は、一具体例では0〜+7の範囲にあることができ、特定の具体例では+1、+2、+3、+4又は+5であり、またさらに特定の具体例では+2、+3又は+4である。金属原子「M」に結合する基は、これらの式及び構造の以下に記載される化合物が、特に示さない限り、電気的に中性であるようなものである。Cp配位子は、金属原子Mと共に少なくとも1個の化学結合を形成して「メタロセン触媒化合物」を形成させる。これらのCp配位子は、これらのものが置換/引抜反応に対してさほど影響を受けないという点で、該触媒化合物に結合する脱離基と区別される。
【0023】
式(I)のLA及びLB基は、シクロアルカジエニル配位子及び複素環式アナログのようなCp配位子である。これらのCp配位子は、典型的には、第13〜16族原子よりなる群から選択される原子を含み、そしてより具体的には、Cp配位子を構成する原子は、炭素、窒素、酸素、珪素、硫黄、燐、ゲルマニウム、硼素及びアルミニウム並びにそれらの組み合わせよりなる群から選択され、ここで、炭素が該環員の少なくとも50%を占める。より具体的には、該Cp配位子は、置換及び非置換シクロペンタジエニル配位子及びシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子よりなる群から選択され、その例としては、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル及びその他の構造が挙げられるが、これらに限定されない。このような配位子のさらなる例としては、シクロペンタジエニル、シクロペンタフェナントレニル、インデニル、ベンズインデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニル、シクロオクタテトラエニル、シクロペンタシクロドデセン、フェナントリンデニル、3,、4−ベンゾフルオレニル、9−フェニルフルオレニル、8−H−シクロペンタアセナフチレニル、7−H−ジベンゾフルオレニル、インデノ[1,2−9]アントレン、チオフェノインデニル、チオフェノフルオレニル、それらの水素化型(例えば、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル又は「H4Ind」)、それらの置換型(以下に詳細に説明されるようなもの)及びそれらの複素環式型が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
独立して、それぞれのLA及びLBは、非置換であり又は置換基Rの組み合わせで置換されていてもよい。置換基Rの例としては、水素又は線状、分岐、環状アルキル基若しくはアルケニル、アルキニル若しくはアリール基或いはそれらの組み合わせよりなる群からの1種以上が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい具体例では、置換基Rは、ハロゲン又はヘテロ原子などで置換されていてもよい50個までの水素でない原子、好ましくは1〜30個の炭素原子を有する。アルキル又はアリール置換基Rの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル又はフェニル基など(それらの異性体、例えば、第三ブチル、イソプロピルなどを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。その他のハロゲン化ヒドロカルビル基としては、フルオルメチル、フルオルエチル、ジフルオルエチル、ヨードプロピル、ブロムヘキシル、クロルベンジル及びヒドロカルビル置換オルガノメタロイド基(トリメチルシリル、トリメチルゲルミル、メチルジエチルシリルなどを含む)、及びハロカルビル置換オルガノメタロイド基(トリス(トリフルオルメチル)シリル、メチルビス(ジフルオルメチル)シリル、ブロムメチルジメチルゲルミルなどを含む)、及び二置換硼素基(例えばジメチル硼素を含む)、及び、二置換第15族原子含有基(ジメチルアミン、ジメチルホスフィン、ジフェニルアミン、メチルフェニルホスフィンを含む)、第16族原子含有基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、フェノキシ、硫化メチル及び硫化エチルを含む)が挙げられる。水素でない置換基Rは、原子である炭素、珪素、硼素、アルミニウム、窒素、燐、酸素、錫、硫黄、ゲルマニウムなどを含み、その例としては、ビニル末端配位子、例えば、3−ブテニル、2−プロペニル、5−ヘキセニルなどを含むオレフィン性不飽和置換基のようなオレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。また、少なくとも2個のR基、好ましくは2個の隣接するR基が結合して、炭素、窒素、酸素、燐、珪素、ゲルマニウム、アルミニウム、硼素又はそれらの組み合わせから選択される3〜30個の原子を有する環構造を形成する。
【0025】
式(I)の脱離基Qは、Mに結合するモノ陰イオン性の不安定な配位子である。金属の酸化状態によって、nについての値は、上記式(I)が中性のメタロセン触媒化合物又は正に荷電した化合物を表すように、0、1又は2である。
【0026】
本発明において、上記式(I)の少なくとも1個のQ、即ち脱離基は、弗化物イオン(F)又は弗素含有配位子であり、好ましくは弗化物イオンである。弗素含有配位子の例としては、弗素化アルキル、弗素化アルコキシド、弗素化アルキルアリール又は弗素化不飽和炭化水素が挙げられる。弗素含有配位子のさらなる例としては、トリフルオルメチル、トリフルオルエチル、ペンタフルオルフェニル、モノフルオルビニルなど又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の最も好ましい具体例では、本発明のメタロセン触媒化合物は、弗化物イオンである少なくとも1個の脱離基Qを有し、好ましくはこれらの脱離基の全てが弗化物イオンである。
【0027】
その他の脱離基Qの例としては、C1〜C10アルキル、アルコキシド、アミン、アルキルアミン、ホスフィン、アルキルホスフィン、エーテル、カルボキシレート、ジエン、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、C7〜C20アリールアルキル、水素化物又はハロゲンイオン(Cl、Br、I)など又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
一具体例では、本発明のメタロセン触媒化合物としては、LA及びLBが架橋性基Aによって互いに架橋した式(I)のものが挙げられる。これらの架橋化合物は、架橋メタロセン触媒化合物と呼ばれ、そして、次式(II):
A(A)LBMQn (II)
(式中、それぞれのLA及びLBは金属中心Mに結合し、それぞれのQは該金属中心に結合し、nは0又は1〜4の整数、好ましくは1又は2、最も好ましくは2であり、これらの基LA、LB、M及びQは式(I)で定義される通りであり、そして2価の架橋性基Aは、少なくとも1個の結合又は2価部分を介してそれぞれLA及びLBの両方に結合する。)
によって表され得る。
【0029】
式(II)からの架橋性基Aの例としては、しばしば2価部分と呼ばれる、少なくとも1個の第13〜16族原子、例えば、限定されないが、炭素、酸素、窒素、珪素、硼素、ゲルマニウム及び錫原子又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含有する2価の架橋性基が挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、架橋性基Aは、炭素、珪素又はゲルマニウム原子を含有し、最も好ましくは、Aは、少なくとも1個の珪素原子又は少なくとも1個の炭素原子を含有する。また、架橋性基Aは、ハロゲンを含む上に定義されるような置換基Rも含有し得る。より具体的には、架橋性基Aの例は、R'2C=、R'2Si=、−(R')2Si(R')2Si−、−(R')2Si(R')2C−、R'2Ge=、−(R')2Si(R')2Ge−、−(R')2Ge(R')2C−、R'N=、R'P=、−(R')2C(R')N−、−(R')2C(R')P−、−(R')2Si(R')N−、−(R')2Si(R')P−、−(R')2Ge(R')N−、−(R')2Ge(R')P−(ここで、R'は、独立して、ヒドリド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、ヒドロカルビル置換オルガノメタロイド、ハロカルビル置換オルガノメタロイド、二置換硼素、二置換第15族原子、置換第16族原子若しくはハロゲンであるラジカル基であり、又は、2個以上のR'は結合して環又は環系を形成することができる。)によって表され、また、それぞれのQは、独立して、同一又は異なるものであり、そして、ヒドリド、1〜30個の炭素原子を有する置換又は非置換の線状、環状又は分岐ヒドロカルビル、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド又は任意の他の1価の陰イオン性配位子或いはそれらの組み合わせである。
【0030】
本発明の別の態様では、本発明の弗化メタロセン触媒化合物は、より具体的には、構造(IIIa)〜(IIIj):
【化1】

【化2】

【化3】

(これらの構造において、
Mは、一具体例では第4〜6族原子よりなる群から選択され、また特定の具体例では第4族原子よりなる群から選択され、またさらに特定の具体例ではZr又はHfであり、またさらに特定の具体例ではZrであり、
Aは構造(II)のAについて上に記載される通りであり、そしてより具体的には、一具体例では化学結合、−O−、−S−、−SO4−、−NR−、=SiR2、=GeR2、=SnR2、−R2SiSiR2−、RP=、C1〜C12アルキレン、置換C1〜C12アルキレン、2価のC4〜C12環状炭化水素及び置換・非置換アリール基よりなる群から選択され、またさらに特定の具体例ではC5〜C8環状炭化水素、−CH2CH2−、=CR2及び=SiR2よりなる群から選択され、ここで、Rは、一具体例ではアルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、フルオルアルキル及びヘテロ原子含有炭化水素よりなる群から選択され、またRは、特定の具体例ではC1〜C6アルキル、置換フェニル、フェニル及びC1〜C6アルコキシよりなる群から選択され、またRは、さらに特定の具体例ではメトキシ、メチル、フェノキシ及びフェニルよりなる群から選択され、
それぞれのQは(I)で記載される通りであり、ここで、少なくとも1個のQは、弗化物イオン又は弗素含有基であり、そして特定の具体例ではそれぞれが弗化物イオンであり、
nは1〜4の整数であり、また別の具体例では1〜3であり、またさらに別の具体例では1又は2であり、
それぞれのR*は、独立して、一具体例では化学結合、ヒドロカルビレン及びヘテロ原子含有ヒドロカルビレンよりなる群から選択され、また別の具体例では化学結合、アルキレン、置換アルキレン及びヘテロ原子含有ヒドロカルビレンよりなる群から選択され、またさらに特定の具体例では化学結合、C1〜C12アルキレン、C1〜C12置換アルキレン及びC1〜C12ヘテロ原子含有ヒドロカルビレンよりなる群から選択され、またさらに特定の具体例では化学結合及びC1〜C4アルキレンよりなる群から選択され、ここで、両方のR*は別の具体例では同一であり、
1〜R14は、独立して、一具体例では水素基、ハロゲン基、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルキレン、C6〜C12アリール、C7〜C20アルキルアリール、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12フルオルアルキル、C6〜C12フルオルアリール、C1〜C12ヘテロ原子含有炭化水素及びそれらの置換誘導体よりなる群から選択され、また特定の具体例では水素基、弗素基、塩素基、臭素基、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C7〜C18アルキルアリール、C1〜C6フルオルアルキル、C2〜C6フルオルアルケニル及びC7〜C18フルオルアルキルアリールよりなる群から選択され、またさらに特定の具体例では水素基、弗素基、塩素基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル及び4−t−ブチルフェニル基よりなる群から選択され、またさらに特定の具体例ではC1〜C4アルキルよりなる群から選択され、ここで、さらに別の具体例では、隣接するR基は、飽和された環、部分的に飽和された環又は完全に飽和された環のいずれかを形成することができる。)
で説明できる。
【0031】
上記構造(I)〜(IIIj)によって包含される具体例は、特定の具体例では非荷電種であり、そして触媒化合物についてゼロの正味電荷を満足するような態様でQによって置換される。別の具体例では、これらの構造は、1価又は正電荷の種を包含し(ここで、該触媒化合物は、例えば、該非荷電触媒化合物と活性剤種との反応生成物である)、そしてそれに関連する陰イオン種としての活性剤の反応生成物を包含し得る。
【0032】
上記のメタロセン触媒化合物には、それらの構造異性体又は光学異性体又は鏡像異性体(ラセミ混合物)が含まれ、そしてこのものは一具体例では純粋な鏡像異性体であることができることが予期される。さらに、本明細書で使用するときに、ラセミ及び/又はメソ異性体を有する単一の架橋された非対称的に置換されたメタロセン触媒化合物は、それ自体、少なくとも2個の異なる架橋メタロセン触媒成分を構成しない。
【0033】
本発明において有用な「メタロセン触媒成分」は、ここに記載される任意の「具体例」の任意の組み合わせ、例えば、LA、LB、M、Q、A及びR(R1〜R14)基の任意の組み合わせを含むことができる。
【0034】
本発明の好ましい具体例では、弗化メタロセン触媒成分は、構造(IIIb)、(IIId)、(IIIf)、(IIIh)及び(IIIj)を含む。
【0035】
メタロセン触媒化合物のための活性剤及び活性化方法
本明細書で使用するときに、用語「活性剤」とは、単一部位触媒化合物(例えば、メタロセン、第15族原子含有触媒など)を、例えば該触媒成分から陽イオン種を創り出すことによって活性化させ得る、担持された又は担持されていない任意の化合物又は化合物の組み合わせであると定義される。典型的には、これは、該触媒成分の金属中心から少なくとも1個の脱離基(上記式/構造におけるX基)を引き抜くことを伴う。しかして、本発明の触媒成分は、このような活性剤を使用してオレフィン重合について活性化される。このような活性剤の具体例としては、環状又はオリゴマーのポリ酸化ヒドロカルビルアルミニウムのようなルイス酸及びいわゆる非配位性活性剤(「NCA」)(或いは、「イオン化性活性剤」又は「化学量論的活性剤」)又は中性のメタロセン触媒成分をオレフィン重合に対して活性なメタロセン陽イオンに変換することができる任意の他の化合物が挙げられる。
【0036】
より具体的には、活性剤としてアルモキサン(例えば、「MAO」)、変性アルモキサン(例えば、「TIBAO」)及びアルキルアルミニウム化合物のようなルイス酸を使用すること、及び/又はここに記載される望ましいメタロセンを活性化させるためにトリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼素及び/又はトリスペルフルオルフェニル硼素メタロイド先駆物質を使用することは、本発明の範囲内にある。MAO及びその他のアルミニウムベースの活性剤は斯界に周知である。イオン化性活性剤は、斯界に周知であり、且つ、触媒成分(例えば、メタロセン)と共に又は該触媒成分とは別に、担体に付随でき又はそれと結合できる。
【0037】
中性イオン化性活性剤の例としては、第13族原子三置換化合物、特に、三置換の硼素、テルル、アルミニウム、ガリウム及びインジウム化合物並びにそれらの混合物が挙げられる。この3個の置換基は、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、ハロゲン化アリール、アルコキシ及びハライドから選択される。一具体例では、これら3個の基は、独立して、ハロゲン、単環式又は多環式(ハロ置換を含む)アリール、アルキル及びアルケニル化合物並びにそれらの混合物から選択される。別の具体例では、これらの3個の基は、1〜20個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基及び3〜20個の炭素原子を有するアリール基(置換アリールを含む)並びにそれらの組み合わせから選択される。さらに別の具体例では、これらの3個の基は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、ナフチル及びそれらの混合物から選択される。さらに別の具体例では、これら3個の基は、1〜4個の炭素原子を有する高度にハロゲン化されたアルキル、高度にハロゲン化されたフェニル及び高度にハロゲン化されたナフチル並びにそれらの混合物から選択される。「高度にハロゲン化された」とは、水素の少なくとも50%が弗素、塩素及び臭素から選択されるハロゲン基によって置換されたことを意味する。さらに別の具体例では、中性化学量論的活性剤は、高度に弗素化されたアリール基(該基は、高度に弗素化されたフェニル及び高度に弗素化されたナフチル基である)を含む三置換第13族原子化合物である。
【0038】
別の具体例では、中性三置換第13族原子化合物は、トリスペルフルオルフェニル硼素、トリスペルフルオルナフチル硼素、トリス(3,5−ジ(トリフルオルメチル)フェニル)硼素、トリス(ジ−t−ブチルメチルシリル)ペルフルオルフェニル硼素及びその他の高度に弗素化されたトリスアリール硼素化合物並びにそれらの組み合わせのような硼素化合物並びにそれらのアルミニウム同等物である。
【0039】
イオン性のイオン化性活性剤の例示としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)硼素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)硼素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)硼素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)硼素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオルフェニル)硼素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオルメチルフェニル)硼素、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオルフェニル)硼素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)硼素などのようなトリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)硼素、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)硼素、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)硼素などのようなN,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジ(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオルフェニル)硼素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)硼素などのようなジアルキルアンモニウム塩、トリフェニルカルボニウムテトラ(フェニル)硼素及びトリフェニルカルボニウムテトラ(ペンタフルオルフェニル)硼素のようなトリアリールカルボニウム塩(トリチル塩)、トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)硼素、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオルフェニル)硼素、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)硼素、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)硼素などのようなトリアリールホスホニウム塩並びにそれらのアルミニウム同等物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の活性剤のさらに別の具体例では、アルキルアルミニウムは、複素環式化合物と併用できる。この複素環式化合物は、少なくとも1個の窒素、酸素及び/又は硫黄原子を含み、また特定の具体例では少なくとも1個の窒素原子を含む。この複素環式化合物は、一具体例では4員環以上を包含し、そして別の具体例では5員環以上を包含する。
【0041】
アルキルアルミニウムと共に活性剤として使用するための複素環式化合物は、非置換であり又は1個の置換基若しくは置換基の組み合わせで置換されていてよい。好適な置換基の例としては、ハロゲン、アルキル、アルケニル若しくはアルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリール置換アルキル基、アシル基、アロイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボモイル基、アルキル若しくはジアルキルカルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。また、これらの置換基は、ハロゲン、特に弗素又は臭素、ヘテロ原子などで置換されていてもよい。
【0042】
炭化水素置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル又はフェニル基など、及びそれらの異性体、例えば、t−ブチル、イソプロピルなどが挙げられるが、これらに限定されない。置換基のその他の例としては、フルオルメチル、フルオルエチル、ジフルオルエチル、ヨードプロピル、ブロムヘキシル又はクロルベンジルが挙げられる。
【0043】
一具体例では、複素環式化合物は非置換である。別の具体例では、該複素環式化合物上の1つ以上の位置がハロゲン原子又はハロゲン原子含有基、例えばハロゲン化アリール基で置換されている。一具体例では、ハロゲンは、塩素、臭素及び弗素から選択され、また別の具体例では弗素及び臭素から選択され、またさらに別の具体例ではハロゲンは弗素である。
【0044】
本発明の活性剤に使用される複素環式化合物の例としては、置換及び非置換のピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピロリン、ピロリジン、プリン、カルバゾール及びインドール、フェニルインドール、2,5−ジメチルピロール、3−ペンタフルオルフェニルピロール、4,5,6,7−テトラフルオルインドール又は3,4−ジフルオルピロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
一具体例では、上記の複素環式化合物をアルキルアルミニウム又はアルモキサンと結合させて、触媒成分、例えばメタロセンとの反応に基づき、活性な重合用触媒を生じさせる活性剤化合物を生じさせる。好適なアルキルアルミニウムの例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリイソオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
その他の活性剤としては、トリス(2,2',2"−ノナフルオルビフェニル)フルオロアルミネートのようなWO98/07515に記載されたものが挙げられる。また、本発明によって、活性剤の組み合わせ、例えば、アルモキサンとイオン化性活性剤の組み合わせも予期される。その他の活性剤としては、アルミニウム/硼素錯体、過塩素酸塩、過沃素酸塩及び沃素酸塩(それらの水和物を含む)、リチウム(2,2'−ビスフェニルジトリメチルシリケート)・4THF、非配位性の相溶性陰イオンと組み合わせてシリリウム塩が挙げられる。また、電離放射線、電子−化学的酸化などを使用するような活性化方法も、中性嵩高配位子メタロセン型触媒化合物又はその先駆物質を、オレフィンを重合することのできる嵩高配位子メタロセン型陽イオンにすることを目的とする活性化方法として予期される。嵩高配位子メタロセン型触媒化合物を活性化させるためのその他の活性剤又は方法は、例えば、米国特許第5849852号、同5859653号及び同5869723号並びにWO98/32775号に記載されている。
【0047】
一般に、活性剤と触媒成分とは、1000:1〜0.1:1の活性剤対触媒成分のモル比で混合され、また別の具体例では300:1〜1:1、またさらに別の具体例では150:1〜1:1、またさらに別の具体例では50:1〜1:1、またさらに別の具体例では10:1〜0.5:1、またさらに別の具体例では3:1〜0.3:1で混合され、ここで、望ましい範囲には、ここに記載される任意の上限モル比と下限モル比との任意の組み合わせが含まれ得る。活性剤が環状又はオリゴマーのポリ酸化ヒドロカルビルアルミニウム(例えば、「MAO」)であるときには、活性剤対触媒成分のモル比は、一具体例では2:1〜100000:1、別の具体例では10:1〜10000:1、さらに別の具体例では50:1〜2000:1の範囲にある。活性剤がアルキル硼素及びアルキル硼素のイオン性の塩のような中性又はイオン性のイオン化性活性剤であるときには、活性剤対触媒成分のモル比は、一具体例では0.5:1〜10:1、別の具体例では1:1〜5:1の範囲にある。
【0048】
担持のための方法
上記のメタロセン触媒化合物及び触媒系は、斯界に周知の又は以下に記載されるような担持方法の一つを使用して1種以上の担体材料又はキャリヤーと混合できる。好ましい具体例では、本発明の方法は、担持された形の重合用触媒を使用する。例えば、最も好ましい具体例では、メタロセン触媒化合物又は触媒系は、担持された形、例えば、担体又はキャリヤー上に沈着し、それと接触し、又はその中に取り込まれ、その上若しくはその中に吸収若しくは吸着された形態にある。
【0049】
用語「担体」又は「キャリヤー」は、区別なく使用され、且つ、任意の担体材料、好ましくは、多孔性担体材料、例えば、タルク、無機酸化物及び無機塩化物である。その他のキャリヤーとしては、ポリスチレンのような樹脂状担体材料、ポリスチレンジビニルベンゼンポリオレフィン又は重合体化合物のような官能化若しくは架橋有機担体又は任意のその他の有機若しくは無機担体材料など或いはそれらの混合物が挙げられる。
【0050】
好ましいキャリヤーは、第2、3、4、5、13又は14族金属の酸化物を含む無機酸化物である。好ましい担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、塩化マグネシウム及びそれらの混合物が挙げられる。その他の有用な担体としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、モンモリロナイト(EP−B1 0511665)及びその他のクレー並びに「ナノクレー」、グラファイト、ゼオライトなどが挙げられる。また、これらの担体材料の組合せ、例えば、シリカ−クロム、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニアなども使用できる。
【0051】
キャリヤー、最も好ましくは無機酸化物は、約10〜約700m2/gの範囲の表面積、約0.1〜約4.0cc/gの範囲の細孔容量及び約5〜約500μmの範囲の平均粒度を有することが好ましい。より好ましくは、キャリヤーの表面積は、約50〜約500m2/gの範囲にあり、細孔容量は約0.5〜約3.5cc/gの範囲にあり、そして平均粒度は約10〜約200μmの範囲にある。最も好ましくは、キャリヤーの表面積は、約100〜約400m2/gの範囲にあり、細孔容量は約0.8〜約3.0cc/gの範囲にあり、そして平均粒度は約5〜約100μmである。本発明のキャリヤーの平均細孔寸法は、典型的には、10〜1000Å、好ましくは50〜約500Å、最も好ましくは75〜350Åの範囲の細孔寸法である。
【0052】
さらに好ましくは、本発明に有用な担体は、一具体例では200〜400m2/g、別の具体例では250〜350m2/g、そしてさらに特定の具体例では275〜325m2/gの表面積を有するシリカ材料である。この好ましいシリカの細孔容量は、一具体例では1〜2cm3/g、別の具体例では1.4〜1.8cm3/g、そしてさらに別の具体例では1.5〜1.7cm3/gの範囲にあり、平均粒度(APS)は、一具体例では35μm以下、別の具体例では30μm以下、さらに特定の具体例では25μm以下、さらに別の具体例では0.1〜35μm、さらに別の具体例では1〜30μm、そしてさらに別の具体例では5〜25μmの範囲にある。ここで使用されるようなシリカは、不活性(酸素及び水なし)雰囲気下で500〜1000℃、望ましくは600〜900℃で加熱することによって脱水又は焼成され得る。
【0053】
一具体例では、本発明のメタロセン触媒化合物は、活性剤と共に同一若しくは別個の担体上に付着でき、又は活性剤は、担持されていない形で使用でき、若しくは本発明の担持メタロセン触媒化合物とは異なる担体に付着でき、或いはそれらの組合せであることができる。
【0054】
斯界には、本発明の重合用触媒化合物又は触媒系を担持させるための様々な他の方法が存在する。例えば、本発明のメタロセン触媒化合物は、米国特許第5473202号及び同5770755号に記載されるような重合体結合配位子を含有することができ、本発明のメタロセン触媒系は、米国特許第5648310号に記載されるように噴霧乾燥でき、本発明のメタロセン触媒系と共に使用される担体は、欧州特許出願EP−A−0802203号に記載されるように官能化され、又は少なくとも1個の置換基若しくは脱離基は、米国特許第5688880号に記載されるように選択される。
【0055】
好ましい具体例では、本発明は、担持触媒系の製造の際に典型的に使用される帯電防止剤又は表面改質剤の使用を制限する担持メタロセン触媒系を提供する。
【0056】
より具体的には、表面改質剤は、有利には、本発明の触媒系、特に担持弗化メタロセン触媒化合物には存在しなくてもよい。ヒドロキシル化アミン及びエトキシル化アミンのような表面改質剤は、汚れを低減させ且つ一般には反応器性能を改善させるために、触媒系に又は重合反応器に直接添加される。本発明の望ましい特徴は、そのような表面改質剤の実質的な非存在下での本発明の弗化メタロセン触媒系及び方法の改善された性能である。ここで使用するときに、「表面改質剤」とは、エトキシル化アミン(例えば、チバ社製ケマミンAS−990)、メルカプタン(例えば、オクチルメルカプタン)、界面活性剤、スルホネート、第1又は2族原子陽イオン、及び例えば、反応器の内部表面上の汚れ若しくはその表面上の重合体のシーティングを減少させ又は発泡による重合体の大きな塊(1〜2cm以上の直径/長さ)の形成を減少させることによって反応器の性能を改善させるために触媒組成物(メタロセン、活性剤及び担体材料)に添加される又は反応器に直接添加されるその他の有機及び無機添加剤である。表面改質剤は、活性剤化合物を遮断し、そして事実、多くの表面改質剤が触媒活性を抑制する。ここで使用されるときに、「実質的に存在しない」とは、該成分が反応器又は触媒系に添加されない、しかして存在しないことであり、又は別の具体例では、少しでも存在する場合には、触媒組成物の重量に対して0.5重量%を超えない又はそれ以下の範囲まで存在することを意味する。
【0057】
本発明の担持メタロセン触媒系を製造するための一方法を次のように説明する:メタロセン触媒化合物を液体に懸濁させてメタロセン溶液を形成させ、そして活性剤及び液体を含有する別個の溶液を形成させる。この液体は、任意の相溶性媒体或いは本発明のメタロセン触媒及び/又は活性剤と共に溶液などを形成することができるその他の液体であることができる。最も好ましい具体例では、この液体は、環状脂肪族又は芳香族炭化水素、最も好ましくはトルエンである。メタロセン触媒化合物及び活性剤の溶液を互いに混合し、そして多孔性担体に添加するか、又は、多孔性担体を、メタロセン触媒化合物溶液及び活性剤溶液若しくはメタロセン触媒化合物及び活性剤溶液の全容量が該多孔性担体の細孔容量の4倍以下、より好ましくは3倍以下、さらに好ましくは2倍以下、好ましい範囲としては1.1倍〜3.5倍の範囲、最も好ましくは1.2〜3倍の範囲であるように、これらの溶液に添加する。この担持メタロセン触媒系は、斯界に知られているその他の好適な方法によって形成できる。
【0058】
活性剤成分の金属対担持メタロセン触媒化合物の金属のモル比は、0.3:1〜1000:1、好ましくは20:1〜800:1、最も好ましくは50:1〜500:1の範囲にある。活性剤が陰イオンのテトラキス(ペンタフルオルフェニル)硼素をベースとするようなイオン化性活性剤である場合には、活性剤成分の金属対メタロセン触媒の金属成分のモル比は、好ましくは0.3:1〜3:1の範囲にある。非担持メタロセン触媒系を使用する場合には、活性剤成分の金属対メタロセン触媒化合物の金属のモル比は、0.3:1〜10000:1、好ましくは100:1〜5000:1、最も好ましくは500:1〜2000:1の範囲内にある。
【0059】
本発明の一具体例では、オレフィン、好ましくはC2〜C30オレフィン若しくはα−オレフィン、好ましくはエチレン若しくはプロピレン又はそれらの組合せを、主重合の前に本発明のメタロセン触媒系の存在下に予備重合させる。この予備重合は、高圧を含め、気相、溶液又はスラリー相中でバッチ式で又連続的に実施できる。予備重合は、任意のオレフィン単量体若しくは組合せで及び/又は水素のような任意の分子量制御剤の存在下に実施できる。予備重合手順の例については、米国特許第4748221号、同4789359号、同4923833号、同4921825号、同5283278号及び同5705578号並びに欧州特許出願EP−B−0279863並びに国際公開WO97/44371号を参照されたい。
【0060】
重合方法
上記の本発明の触媒及び触媒系は、広範囲の温度及び圧力にわたる任意の重合方法に使用するために好適である。温度は、−60℃〜約280℃、好ましくは50℃〜約200℃、またさらに特定の具体例では60℃〜120℃、またさらに別の具体例では70℃〜100℃、またさらに別の具体例では80℃〜95℃の範囲にあることができ、ここで、望ましい温度範囲には、ここに記載される任意の上限値と任意の下限値との任意の組合せが含まれるものとする。
【0061】
重合方法としては、溶液、気相、スラリー相及び高圧方法又はそれらの組合せが挙げられる。特に好ましいのは、1種以上のオレフィンであってそのうちの少なくとも1種がエチレン又はプロピレンであるものの気相又はスラリー相重合であり、そして最も好ましくは、使用される主な単量体はエチレンである。
【0062】
一具体例では、本発明の方法は、2〜30個の炭素原子、好ましくは2〜12個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子を有する1種以上のオレフィン単量体の溶液、高圧、スラリー又は気相重合方法に向けられる。本発明は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン及び1−デセンの2種以上のオレフィン単量体の重合に特によく適合する。
【0063】
本発明の方法において有用なその他の単量体としては、エチレン性不飽和単量体、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン、共役又は非共役ジエン、ポリエン、ビニル単量体及び環状オレフィンが挙げられる。本発明に有用な単量体としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の方法の最も好ましい具体例では、エチレンの共重合体が製造されるが、この場合には、エチレンと、4〜15個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子、最も好ましくは4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のα−オレフィンを有する共単量体とが気相方法で重合される。
【0065】
本発明の方法の別の具体例では、エチレン又はプロピレンを、少なくとも2種の異なる共単量体であって随意としてそのうちの1種がジエンであり得るものと共に重合させて三元共重合体を形成させる。
【0066】
一具体例では、本発明は、プロピレン単独で或いはエチレンを含む1種以上のその他の単量体及び/又は4〜12個の炭素原子を有するその他のオレフィンと共に重合させるための重合方法、特に気相又はスラリー相方法に向けられる。ポリプロピレン重合体は、弗化物イオン(F)又は弗素含有脱離基を有する特に架橋されたメタロセン触媒を使用して製造できる。
【0067】
典型的には、気相重合方法では連続サイクルが使用され、この場合には、反応器系のサイクルの一部分において、循環ガス流れ(さもなくば再循環流れ又は流動性媒体として知られている)が反応器内で重合の熱によって加熱される。この熱は、反応器の外部にある冷却システムによって該サイクルの別の部分で再循環組成物から除去される。一般に、重合体を製造するためのガス流動床方法では、1種以上の単量体を含有するガス状流れが反応条件下で触媒の存在下に流動床を介して連続的に循環する。このガス状流れは、流動床から取り出され、そして反応器に戻して再循環される。同時に、重合体生成物が該反応器から取り出され、そしてこの重合した単量体と交換するために新たな単量体が添加される(例えば、米国特許第4543399号、同4588790号、同5028670号、同5317036号、同5352749号、同5405922号、同5436304号、同5453471号、同5462999号、同5616661号及び同5668228号を参照)。
【0068】
気相方法における反応器の圧力は、一具体例では約大気圧〜約600psig、また別の具体例では100psig(690kPa)〜約500psig(3448kPa)、好ましくは約200psig(1379kPa)〜約400psig(2759kPa)の範囲、より好ましくは約250psig(1724kPa)〜約350psig(2414kPa)の範囲で変更できる。
【0069】
気相方法における反応器の温度は、上記の通りに変更できる:特定の具体例では、約30℃〜約120℃、好ましくは約60℃〜約115℃、より好ましくは約70℃〜110℃の範囲、最も好ましくは約70℃〜約95℃の範囲で変更できる。
【0070】
本発明の方法によって意図されるその他の気相方法としては、米国特許第5627242号、同5665818号及び同5677375号並びに欧州特許出願EP−A−0794200、EP−A−0802202及びEP−B−634421号に記載されたようなものが挙げられる。
【0071】
好ましい具体例では、本発明で使用される反応器及び本発明の方法は、1時間当たり500 lbs(227Kg/時間)以上の重合体〜約200000 lbs/時間(90900Kg/時間)又はそれ以上の重合体、好ましくは1000 lbs/時間(455Kg/時間)以上、より好ましくは10000 lbs/時間(4540Kg/時間)以上、さらに好ましくは25000 lbs/時間(11,300Kg/時間)以上、さらに好ましくは35000 lbs/時間(15900Kg/時間)以上、さらに好ましくは50000 lbs/時間(22700Kg/時間)以上、最も好ましくは65000 lbs/時間(29000Kg/時間)以上〜100000 lbs/時間(45500Kg/時間)以上の重合体を製造することができる。
【0072】
スラリー重合方法は、一般に、約1〜約50気圧及びそれ以上の範囲の圧力並びに0℃〜約120℃の範囲の温度を使用する。スラリー重合体では、固体の粒状重合体の懸濁液を液体重合用希釈媒体中で形成させ、それにエチレンと共単量体及びしばしば水素を触媒と共に添加する。希釈剤を含む懸濁液を断続的に又は連続的に反応器から取り出し、そこで揮発成分を重合体から分離し、そして、随意として蒸留後に反応器に再循環させる。重合媒体に使用される液体希釈剤は、典型的には3〜7個の炭素原子を有するアルカンであり、好ましくは分岐アルカンである。使用される媒体は、重合及び比較的不活性な条件下では液体であるべきである。プロパン媒体が使用されるときには、この方法は、その希釈剤の反応の臨界温度及び圧力以上で操作しなければならない。好ましくは、ヘキサン又はイソブタン媒体が使用される
【0073】
本発明の好ましい重合技術は、粒子形態重合と呼ばれ、又はその温度が重合体が溶液になる温度以下に保持される場合にはスラリー方法と呼ばれる。このような技術は斯界に周知であり、例えば、米国特許第3248179号に記載されている。その他のスラリー方法としては、ループ反応器を使用するもの及び複数の直列、並列又はその組合せの撹拌反応器を使用するものが挙げられる。スラリー方法の例としては、連続ループ又は撹拌タンク方法が挙げられるが、これらに限定されない。また、スラリー方法のその他の例は、米国特許第4613484号に記載されている。
【0074】
ある具体例では、本発明のスラリー方法で使用される反応器及び本発明の方法は、1時間当たり2000 lbs(907Kg/時間)以上の重合体、より好ましくは5000 lbs/時間(2268Kg/時間)以上、最も好ましくは10000 lbs/時間(4540Kg/時間)以上の重合体を製造することができる。別の具体例では、本発明の方法で使用されるスラリー反応器は、1時間当たり15000 lbs(6804Kg/時間)以上の重合体、好ましくは25000 lbs/時間(11340Kg/時間)以上〜約100000 lbs/時間(45500Kg/時間)の重合体を製造する。
【0075】
溶液方法の例は、米国特許第4271060号、同5001205号、同5236998号及び同5589555号に記載されている。
【0076】
本発明の好ましい方法は、その方法、好ましくはスラリー又は気相方法が本発明のメタロセン触媒系の存在下で操作され且つトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム及び塩化ジエチルアルミニウム、ジブチル亜鉛などのような任意の掃去剤の非存在下で又は実質的に非存在下で操作される場合である。この好ましい方法は、国際公開WO96/08520号並びに米国特許第5712352号及び同5763543号に記載されている。
【0077】
本発明の別の好ましい具体例では、この方法は、カルボン酸金属塩を反応器に導入し及び/又はカルボン酸金属塩と本発明のメタロセン触媒系とを反応器への導入前に接触させることによって操作される。カルボン酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム又は酢酸マグネシウムのようなカルボン酸第1、2及び13族金属が挙げられる。これらのカルボン酸金属塩は、一具体例では触媒組成物(シリカ、活性剤及び触媒成分)に対して0.05〜2重量%の量で添加される。さらに別の具体例では、カルボン酸金属塩は、有利には、触媒組成物及び/又は反応器に存在しないが、これは、これらのものが触媒組成物又は重合反応器に添加されないことを意味する。或いは、カルボン酸金属塩は、触媒組成物に対して0.05重量%以下まで存在するような減少量で添加できる。
【0078】
本発明の重合体生成物
本発明の方法によって製造される重合体は、様々な製品及び最終用途に使用できる。本発明の方法によって製造される重合体としては、線状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリプロピレン共重合体が挙げられる。
【0079】
重合体、典型的にはエチレンベース重合体は、0.86g/cm3〜0.97g/cm3の範囲、好ましくは0.88g/cm3〜0.965g/cm3の範囲、より好ましくは0.900g/cm3〜0.96g/cm3の範囲、さらに好ましくは0.905g/cm3〜0.95g/cm3の範囲、さらに好ましくは0.910g/cm3〜0.940g/cm3の範囲、最も好ましくは0.915g/cm3以上、好ましくは0.920g/cm3以上、最も好ましくは0.925g/cm3以上の密度を有する。
【0080】
本発明の方法によって製造される重合体は、典型的には、1.5以上〜約15、具体的には2以上〜約10、より好ましくは約2.2以上〜約8以下、最も好ましくは2.5〜8、さらに好ましくは1.8〜4の重量平均分子量対数平均分子量(Mw/Mn)である分子量分布を有する。
【0081】
また、本発明の重合体は、典型的には、組成分布幅指数(CDBI)によって測定されるときに狭い組成分布を有する。共重合体のCDBIを決定するさらなる詳細は当業者に周知である。例えば、WO93/03093号を参照されたい。一具体例では、本発明のメタロセン触媒重合体は、一般に、50%以上〜100%の範囲、好ましくは99%、好ましくは55%〜85%、より好ましくは60%〜80%の範囲、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上のCDBIを有する。別の具体例では、本発明のメタロセン触媒系を使用して製造された重合体は、50%以下、より好ましくは40%以下、最も好ましくは30%以下のCDBIを有する。
【0082】
一具体例では、本発明の重合体は、ASTM−D−1238−E(190/2.16)によって測定されるときに、0.01dg/分〜1000dg/分、より好ましくは約 0.01dg/分〜約100dg/分、さらに好ましくは約0.1dg/分〜約50dg/分、最も好ましくは約0.1dg/分〜約10dg/分、さらに好ましくは0.1dg/分〜5dg/分の範囲のメルトインデックス(MI)又は(I2)を有する。
【0083】
一具体例では、本発明の重合体は、5〜300、より好ましくは約10〜250未満、また別の具体例では15〜200、またさらに別の具体例では20〜180、またさらに別の具体例では15〜30、またさらに別の具体例では10〜40、またさらに別の具体例では5〜50(ここで、望ましい範囲には、任意の上限値と任意の下限値との任意の組み合わせが含まれる)のメルトインデックス比(I21/I2)(I21は、ASTM−D−1238−F[190/21.6]によって測定される)を有する。
【0084】
さらに別の具体例では、本発明の方法でプロピレンベースの重合体が製造される。これらの重合体としては、アタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、ヘミイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレンが挙げられる。その他のプロピレン重合体としては、プロピレンブロック又は衝撃共重合体が挙げられる。
【0085】
本発明の重合体は、任意の他の重合体とブレンドでき及び/又は同時押出できる。その他の重合体の例としては、慣用のチーグラー・ナッタ及び/又はメタロセン触媒によって製造される線状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高圧低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の方法によって製造された重合体及びそれらのブレンドは、フィルム、シート及び繊維の押出及び同時押出並びに吹込成形、射出成形及び回転成形のような成形操作に有用である。フィルムとしては、収縮フィルム、ラップ、ストレッチフィルム、シール用フィルム、延伸フィルム、スナック用包装、重質袋、買い物袋、加熱及び冷凍食品用包装、医療用包装、工業用ライナー、膜などとして食品接触及び非食品接触用途に有用な同時押出又は積層によって形成されたインフレートフィルム又はキャストフィルムが挙げられる。繊維としては、フィルター、おむつ用繊維、医療用衣類、地盤用シートなどを作るために織物又は非織布の形態で使用するための溶融紡糸、溶液紡糸及び溶融吹込繊維操作が挙げられる。押出物品としては、医療用チューブ、ワイヤー及びケーブル被覆、ジオメンブレン並びにポンドライナーが挙げられる。成形物品としては、ボトル、タンク、大きな中空物品、硬質食品容器及び玩具などの形の単層及び多層構成物が挙げられる。
【実施例】
【0087】
代表的な利点を含めて本発明のよりよい理解を提供するために、次の実施例を提供する。
【0088】
重合体の特性は、次の試験方法によって決定した:密度は、ASTM−D−1238に従って測定し、またその他の方法はここに記載される通りである。
【0089】
実施例セットA:
例1
ラセミ/メソ(rac/meso)−二弗化ビス(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
ラセミ/メソ−二塩化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム[(1,3−MeBuCp)ZrCl2](l.00g、2.31ミリモル、1.00当量)の深緑色のジクロルメタン溶液(10mL)に、弗化トリブチル錫(1.50g、4.85ミリモル、2.10当量)を添加した。この反応物は、迅速に明るくなり、黄緑色になった。この反応物を2時間撹拌して淡い褐色の混合物を与え、そしてこれを濾過して明るい褐色の溶液及び少量の白色の固形物を与えた。次いで、この溶液を、スープ状の褐色の固形物を残して減圧下で蒸発させた。ペンタン(10mL)を添加し、そしてその混合物を−35℃に冷却した。この混合物を濾過し、そして得られた白色の固形物を−35℃に冷却されたペンタン(3×3mL)で洗浄した。この白色の固形物を減圧下で乾燥させて0.70g(76%)の収量を得た。1H NMR(C66):δ0.86(t,6H,CH2CH2CH2CH3)、1.19−1.35(m,4H,CH2CH2CH2CH3)、1.37−1.51(m,4H,CH2CH2CH2CH3)、2.02(s,6H,Me)、2.31−2.43(m,2H,CH2CH2CH2CH3)、2.47−2.59(m,2H,CH2CH2CH2CH3)、5.55(m,2H,Cp−H)、5.63(m,2H,Cp−H)、5.72(br s,2H,Cp−H)。19F NMR(C66):メソ異性体 δ 32.4(d,2J=30)、33.5(d,2J=30);ラセミ異性体 d 33.0(s)。
【0090】
例2
二弗化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
二塩化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウム[(Me4Cp)(PrCp)ZrCl2](1.00g、2.47ミリモル、1.00当量)の黄色いジクロルメタン溶液(10mL)に、弗化トリブチル錫(1.60g、5.18ミリモル、2.09当量)を添加した。この反応体は迅速に明るくなり、少量の弗化トリブチル錫でほぼ無色(まだ目に見える)になった。この反応物を1時間撹拌し、次いで濾過して無色の溶液及び少量の白色の固形物を与えた。この溶液を減圧下で湿気のある白色の固形物を残して蒸発させた。ペンタン(15mL)を添加し、そしてこの混合物を−35℃に冷却させた。この混合物を濾過し、そして得られた白色の固形物を−35℃に冷却されたペンタン(3×3mL)で洗浄した。この白色の固形物を減圧下で乾燥させて0.88g(96%)の収量を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ0.92(t,3H,CH2CH2CH3)、1.55(m,2H,CH2CH2CH3)、1.82(s,6H,Me)、1.99(s,6H,Me)、2.42(t,2H,CH2CH2CH3)、5.93(s,1H,環−H)、5.96(br m,2H,環−H)、6.17(m,2H,環−H)。19F NMR(CD2Cl2):δ17.5(s)。
【0091】
例3
二弗化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
二塩化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウム[(PrCp)2ZrCl2](1.00g、2.66ミリモル、1.00当量)の薄黄色のジクロルメタン溶液(10mL)に、弗化トリブチル錫(1.72g、5.57ミリモル、2.10当量)を添加した。この反応物は迅速に明るくなり、ほぼ無色に変化した。この反応物を1時間撹拌し、次いで濾過して無色の溶液と少量の白色の固形物を与えた。この溶液を減圧下で湿気のある白色の固形物を残して蒸発させた。ペンタン(10mL)を添加し、そしてこの混合物を−35℃に冷却した。この混合物を濾過し、そして得られた白色の固形物を−35℃に冷却されたペンタン(3×3mL)で洗浄した。この白色の固形物を減圧下で乾燥させて0.75g(82%)の収量を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ0.92(t,6H,CH2CH2CH3)、1.56(m,4H,CH2CH2CH3)、2.44(t,4H,CH2CH2CH3)、6.05(m,4H,環−H)、6.30(m,4H,環−H)。19F NMR(CD2Cl2):δ20.4(s)。
【0092】
例4
担持ラセミ/メソ−二弗化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
37.23gの30重量%MAO(メチルアルモキサン)(テネシー州メンフィスのアルベマール社製)のトルエン溶液及び39.00gのトルエンを混合して透明な無色溶液を与えた。この溶液を15分間撹拌し、次いで例1で合成された0.641gのラセミ/メソ−二弗化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム[(1,3−MeBuCp)2ZrF2]を添加した。この溶液は淡い黄色に変化し、そしてこれを15分間撹拌した。次いで、30.00gのダビソン948シリカ(50μ、600℃で乾燥)(W.R.Grace社,ダビソン部門,メリーランド州バルチモアから入手できる)を添加し、そして得られた濃厚な混合物をスパーテルを使用して手で10分間撹拌した。この混合物を20時間減圧下で乾燥させ、41.86gの淡い黄色の易流動性の固形物を得た。
【0093】
例5
担持ラセミ/メソ−二塩化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
例1のラセミ/メソ−二塩化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを例4において使用したのと同様の態様で担持させたが、ただし、37.30gの30重量%MAO及び0.695gのラセミ/メソ−二塩化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用し、これは41.61gの黄色の易流動性の固形物を生じさせた。
【0094】
例6
担持二弗化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
例2で合成された二弗化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを例4において使用したのと同様の態様で担持させたが、ただし、37.15gの30重量%MAO及び0.572gの二弗化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用し、これは41.72gの黄色の易流動性の固形物を生じさせた。
【0095】
例7
担持二塩化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
例2の二塩化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを例4において使用したのと同様の態様で担持させたが、ただし、37.21gの30重量%MAO及び0.626gの二塩化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用し、これは41.79gの黄色の固形物を生じさせた。
【0096】
例8
担持二弗化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
例3で合成された二弗化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを例4で使用したのと同様の態様で担持させたが、ただし、37.12gの30重量%MAO及び0.550gの二弗化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用し、これは41.82gの黄色い易流動性の固形物を生じさせた。
【0097】
例9
担持二塩化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムの製造
例3の二塩化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを例4で使用したのと同様の態様で担持させたが、ただし、37.18gの30重量%MAO及び0.603gの二塩化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用し、これは41.40gの明るい黄色の易流動性の固形物を生じさせた。
【0098】
例10
担持ラセミ/メソ−二弗化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用したスラリー重合
予め加温窒素でパージされ且つ傾斜ブレードインペラー及びバッフルを備えたジャケット付ステンレス鋼製1リットルオートクレーブに、400mLのイソブタン及び15μLのトリエチルアルミニウムを含有する30mLの1−ヘキセンを添加した。このオートクレーブを撹拌し、そして85℃で平衡化させた。例4で製造されたような25mgの担持ラセミ/メソ−二弗化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム触媒をエチレン圧力を使用して該オートクレーブに注入した。この重合を130psi(896kPa)エチレン及び85℃で40分間保持し、次いで、該オートクレーブを抜き、冷却し、そして開放した。重合体を分離し、そして減圧下で一晩60℃で乾燥させた。収量は63.26gであった。同一の条件下での第2の実施は、収量が61.10gであった。
【0099】
例11
担持ラセミ/メソ−二塩化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用したスラリー重合
3種の重合を例10で使用したのと同一の条件下で実施したが、ただし、25mgの例5の担持ラセミ/メソ−二塩化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用した。この重合は、それぞれ、40.87g、35.01g及び37.86gの重合体を生じさせた。
【0100】
例12
担持二弗化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用したスラリー重合
3種の重合を例10で使用したのと同一の条件下で実施したが、ただし、25mgの例6の担持二弗化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用した。この重合は、それぞれ、74.11g、67.74g及び69.56gの重合体を生じさせた。
【0101】
例13
担持二塩化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用したスラリー重合
3種の重合を例10で使用したのと同一の条件下で実施したが、ただし、25mgの例7の担持二塩化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用した。これらの重合は、それぞれ、58.04g、54.99g及び56.89gの重合体を生じさせた。
【0102】
例14
担持二弗化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用したスラリー重合
3種の重合を例10で使用したのと同一の条件下で実施したが、ただし、25mgの例8の担持二弗化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用した。これらの重合は、それぞれ、100.31g、88.20g及び110.57gの重合体を生じさせた。
【0103】
例15
担持二塩化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用したスラリー重合
2種の重合を例10で使用したのと同一の条件下で実施したが、ただし、25mgの例9の担持二塩化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用した。これらの重合は、それぞれ、84.20g及び77.36gの重合体を生じさせた。
【0104】
スラリー重合のデータを以下の表1にまとめる。
【表1】

【0105】
例16
担持ラセミ/メソ−二弗化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用した気相重合
1.03MI、0.9172の密度の共重合体を、例4の担持ラセミ/メソ−二弗化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用して35モル%のエチレン濃度を有する連続流動床気相反応器で300psigの全圧力(2069kPag)及び175°F(79℃)で作った。滞留時間は4.1時間であり、そして触媒生産性は2732g/gであった。
【0106】
例17
担持ラセミ/メソ−二塩化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用した気相重合
1.06MI、0.9173の密度の共重合体を、例5の担持ラセミ/メソ−二塩化(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを使用して35モル%のエチレン濃度を有する連続流動床気相反応器で300psigの全圧力(2069kPag)及び175°F(79℃)で作った。滞留時間は4.8時間であり、そして触媒生産性は2309g/gであった。
【0107】
例18
ラセミ−二弗化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムの製造
暗い黄緑色のラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウム[DMS bis(THI)ZrCl2](1.00g、2.19ミリモル、1.00当量)ジクロルメタン溶液(15mL)に、弗化トリブチル錫(1.42g、4.59ミリモル、2.10当量)を添加した。この反応物は直ちに明るくなった。この反応物を1時間撹拌し、次いで濾過して薄い黄色の溶液及び少量の褐色の固形物を与えた。次いで、この溶液を、マニラ色の濃厚な懸濁液を残して減圧下で蒸発させた。この懸濁液をペンタン(20mL、次いで3×5mL)で洗浄して白色の微結晶質固形物を得た。この固形物を減圧下で乾燥させて0.76g(82%)の収量を得た。1H NMR(CD2Cl2):δ0.80(s,6H,SiMe2,1.45−1.9及び2.4−2.7(br m,16H,脂肪族環−H)、5.61(d,2H,シクロペンタジエニル環−H)、6.27(br s,2H,シクロペンタジエニル環−H)。19F NMR(CD2Cl2):δ19.9(s)。
【0108】
例19
担持ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムの製造
例18のラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを例4に記載されたのと同様の態様で担持させたが、ただし、37.34gの30重量%MAO及び0.735gのラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウム[DMS bis(THI)ZrCl2]を使用し、これは42.09gの黄色の固形物を生じさせた。.
【0109】
例20
担持ラセミ−二弗化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムの製造 例18で合成されたラセミ−二弗化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを例4に記載されたのと同様の態様で担持させたが、ただし、37.28gの30重量%MAO及び0.681gのラセミ−二弗化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウム[DMS bis(THI)ZrF2]を使用し、これは42.28gの黄色い易流動性の固形物を生じさせた。
【0110】
例21
担持ラセミ−二弗化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを使用したエチレンスラリー重合
3種の重合を例10で使用したのと同一の条件下で実施したが、ただし、15mLのヘキセン及び25mgの例20の担持ラセミ−二弗化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを使用した。これらの重合は、それぞれ、42.64g、47.57g及び49.65gの重合体を生じさせた。重合の結果を以下に表2に与えている。
【0111】
例22
担持ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを使用したエチレンスラリー重合
3種の重合を例10で使用したのと同一の条件下で実施したが、ただし、15mLのヘキセン及び25mgの例19の担持ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを使用した。これらの重合は、それぞれ、39.40g、37.16g及び38.18gの重合体を生じさせた。重合の結果を以下の表2に与えている。
【表2】

【0112】
例23
担持ラセミ−二弗化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを使用したプロピレンスラリー重合
予め加温窒素でパージされ且つ傾斜ブレードインペラー及びバッフルを備えたジャケット付ステンレス鋼製1リットルオートクレーブに、500mLの液体プロピレン及び20μLのトリエチルアルミニウムを含有する10mLのペンタンを添加した。このオートクレーブを撹拌し、そして70℃で平衡化させた。50mgの例20の担持ラセミ−二弗化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウム触媒を、100mLの液体プロピレンを使用して該オートクレーブに注入した。この重合を70℃で1時間保持し、次いで、該オートクレーブを抜き、冷却し、そして開放した。重合体を分離し、そして減圧下で一晩60℃で乾燥させた。重合体の収量は31.79gであった。2つの同一の条件下での実施は、それぞれ33.33g及び33.22gの重合体を生じさせた。これらの重合の結果を以下の表3に与える。
【0113】
例24
担持ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを使用したプロピレンスラリー重合
3種の重合を例23で使用したのと同一の条件下で実施したが、ただし、例19の50mgの担持ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムを使用した。これらの重合は、それぞれ、21.76g、22.29g及び23.20gの重合体を生じさせた。これらの重合の結果を以下の表3に与える。
【表3】

【0114】
実施例セットB
少なくとも1種の触媒成分と、活性剤と、担体材料とを含む担持触媒をオレフィン重合方法の対象とする。この実験のセットを、様々なジルコノセン、塩化及び弗化ジルコノセンの両方を使用して担体材料の特性がオレフィンの重合に及ぼす影響を示すように設計した。また、これらの実験は、AS−990のような触媒表面改質剤が存在しないときの汚れの欠如によって、小さなシリカ及び弗化メタロセンを使用する有用性を示す。「APS」、即ち担体の平均粒度は、標準的な技術によって決定した。例えば、APSは、モールバーン器具を使用して決定できるが、該APSは、50百分位数の範囲での材料である。次の実験で使用した担体材料は、次の特性を有する(表4)。
【表4】

【0115】
実施例セットBに記載されるような触媒組成物には、特定されたメタロセン及びアルモキサン活性剤が含まれる(それらの両方は、上記表4のシリカ上に担持された)。特に、触媒組成物及び製造された重合体は、次のように試験及び合成した。
【0116】
試験
代表的な利益を含めて本発明のより良い理解を与えるために、次の試験を実行した:
密度はASTM−D−1238に従って測定する。
2はASTM−D−1238−E(190/2.16)によって測定する。
21はASTM−D−1238−F(190/21.1)によって測定する。
【0117】
以下の表における汚れ指数は、触媒の操作性を例示する。この値が高ければ高いほど、観察される汚れは大きい。ゼロの汚れ指数は、実質的に又は全く目に見える汚れがないことを意味する。1の汚れ指数は、軽度の汚れを示し、この場合には、2リットルスラリーイソブタン重合用反応器の撹拌ブレード上に非常に軽度の部分的な被覆があり及び/又は反応器本体に全くシーティングがない。2の汚れ指数は、軽度以上の汚れを示し、この場合には、撹拌ブレードは、濃厚な塗料様の重合体被覆を有し及び/又は反応器本体は、該反応器の壁部上に1〜2インチ(2.54〜5.08cm)の幅の帯域でいくらかのシーティングを有する。3の汚れ指数は、中程度の汚れとみなされ、この場合には、撹拌ブレードは、該撹拌ブレード上にさらに厚いラテックス様の重合体被覆を有し、反応器内にいくらかの軟質の塊を有し及び/又は反応器の壁部上に2〜3インチ(5.08〜7.62cm)幅の帯域でいくらかの反応器本体シーティングを有する。4の汚れ指数は、中程度以上の汚れを示し、この場合には、撹拌器は、重合体の厚いラテックス様の被覆、いくらかのさらに硬い塊/ボールを有し及び/又は反応器壁部のシーティングの帯域は、3〜4インチ(7.62〜110.2cm)の幅である。以下の表における活性は、1時間での重合用触媒のグラム当たりのポリエチレン(PE)のグラムで測定される(gPE/gCat.h)。
【0118】
例1b〜14bについての重合
窒素パージ下にある2リットルオートクレーブ反応器に0.16ミリモルのトリエチルアルミニウム(TEAL)を装入し、次いで60ccの1−ヘキセン共単量体及び800ccのイソブタン希釈剤を装入した。この反応器の内容物を80℃に加熱し、その後、上記例1〜8で製造した担持重合用触媒の各100mgをそれぞれ次のように別々に重合させた。それぞれの重合用触媒をエチレンと同時に反応器に導入して325psig(2240kPa)の総反応器圧力にした。反応器の温度を85℃に保持し、そして重合を40分間続行させた。40分後に反応器を冷却し、エチレンを抜き出し、そして重合体を乾燥させ、そして秤量して重合体の収量を得た。以下の表5及び6は、重合の結果並びに観察された汚れ特性及び重合体の他の物性を与えている。
【0119】
触媒の製造
例1b
メタロセン触媒を、600℃で脱水された850 lbs(386kg)のシリカ(W.R.Grace948)上に担持させた。このメタロセンは、ジャケット付き混合容器中で製造された商業規模の触媒であった。1675 lbs(760kg)のトルエンの初期装入量を該混合容器に添加した。その後、1060 lbs(481kg)の30重量%メチルアルモキサン(MAO)のトルエン溶液及び92.5 lbs(42kg)の25重量%ビス(1,3−Me・n−BuCp)ZrCl2のトルエン溶液を添加した。さらに216 lbs(98kg)のトルエンを該容器に添加してメタロセン供給用シリンダーをすすぎ、そして該混合物を周囲条件で1時間撹拌した。次いで、乾燥したシリカをMAO/メタロセン溶液に添加し、そして撹拌を別の1時間にわたって続行し、その後、60 lbs(27.2kg)の10重量%ケマミンAS−990(チバ)のトルエン溶液を添加した。さらに108 lbs(49kg)のすすぎ用トルエンを添加し、そしてこの混合物を30分間混合した。得られたスラリーを該ジャケット上で175°Fで易流動性の粉末にまで減圧乾燥させた。乾燥触媒の最終重量は1250 lbs(567kg)であった。
【0120】
例2b
撹拌棒を備え且つ嫌気性条件下にある125mLのガラス瓶に、20mLのトルエン、6.64mLの30重量%メチルアルミノキサン(MAO)溶液(2.25gのMAO、0.039モル)(ルイジアナ州バトンルージュのアルベマール社から入手)を添加した。撹拌しつつ、2mLのトルエンに溶解された0.136gの二塩化ビス(1−メチル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムを該ガラス瓶に添加した。この混合物を室温(25℃)で15分間撹拌し、その後、ダビソン948シリカ(600℃で脱水された)(W.R.Grace社,ダビソン部門,メリーランド州バルチモアから入手)の5gのシリカを該溶液に添加した。次いで、この混合物を15分間撹拌し、その後0.036gのケマミンAS−990(チバ社から入手)添加し、そして15分以上混合を続行した。次いで触媒を該固形物が易流動性になるまで乾燥させた。
【0121】
例3b
EX−2bの触媒と同様に製造したが、ただし、Ineos ES−757シリカ(600℃)をダビソン948シリカの代わりに使用した。
【0122】
例4b
EX−2bの触媒と同様に製造したが、ただし、ダビソンSMR−49−3103(600℃)シリカをダビソン948シリカの代わりに使用した。
【0123】
例5b
EX−3bの触媒と同様に製造したが、だだし、0.105gの(Me4−Cp)(n−Pr−Cp)ZrCl2メタロセンを1,3−(Me・Bu−Cp)2ZrCl2の代わりに使用した。
【0124】
例6b
EX−5bの触媒と同様に製造したが、AS−990添加工程は省略した。
【0125】
例7b
EX−6bの触媒と同様に製造したが、ただし、ダビソン948シリカ(600℃)をIneos ES−757シリカの代わりに使用した。
【0126】
例8b
EX−6bの触媒と同様に製造したが、ただし、ダビソンSMR−49−3103(600℃)シリカをIneos ES−757シリカの代わりに使用した。
【0127】
表5のデータは、様々なタイプのシリカを使用した様々な二塩化ジルコノセンの重合の比較を示している。これらの結果は、担体上の所定のメタロセン装填量に対して、小さなAPS担体が、いかに改善された重合活性を与えるのかを示している。より具体的には、これらの表5のデータは、表面改質剤及び担体材料の影響を実証する。
【0128】
表面改質剤が存在する(+)と、反応器の汚れは減少するが、触媒活性は比較的低い。表面改質剤が存在しない(−)と、触媒活性は増大するが、特に該活性が所定の重合結果について増大するときに、汚れもまた増加する。しかしながら、より小さいAPSシリカを使用して作られた触媒は、その高い活性にかかわらず、表面改質剤の非存在下での汚れが少なかった。例lb〜5b及び7bは比較例であり、そこでは、表面改質剤が所定の量で存在するか及び/又は35μm以上のAPSを有するシリカを使用するかのいずれかである。例6b及び8bから、より小さなAPS無機酸化物担体は、表面改質剤が該系に添加されないときでさえも改善を示すことが分かる。従って、表面改質剤(これは、典型的には触媒活性を減少させるように作用する)を全く有しておらず且つ小さな粒度の無機酸化物担体材料を有するという相乗作用は、活性及び汚れの欠如という両方の点でメタロセン触媒の性能を改善させる。
【表5】

【0129】
例9b−14b
撹拌棒を備え且つ嫌気性条件下にある125mLのガラス瓶に、20mLのトルエン及び6.64mLの30重量%メチルアルミノキサン(MAO)トルエン溶液(2.25gのニートベースMAO、0.039モル)(ルイジアナ州バトンルージュのアルベマール社から入手)を添加した。撹拌しつつ、2mLのトルエンに溶解された適量且つ好適なタイプの弗化メタロセン(表6参照)を、MAO溶液を含有する該ガラス瓶に添加した。この混合物を15分間室温で撹拌し、その後、表6に示されるような5gの600℃脱水シリカを該溶液に添加した。この混合物を15分間撹拌した後に、担持触媒を該固形物が易流動性になるまで窒素流れを使用して75℃で乾燥させた。重合を上記例lb〜8bについて説明した通りに実施した。
【表6】

【0130】
表6のデータは、様々なタイプのシリカを使用した様々な二弗化ジルコノセンの重合の比較を示している。これらの結果は、担体上のメタロセンの所定の装填量について、より小さな(例えば、35μm以下)のAPS担体が、いかに改善された重合活性及び改善された反応器性能(減少した汚れ)を与えるのかを示している。これらの結果は驚くべきものである。というのは、シリカ表面改質剤AS−990が表6の例の全てにおいて存在しておらず、さらに反応器の汚れが観察されないからである。これは、ポリオレフィン重合のために二弗化メタロセンを使用する利点、及び、これとは別に小さなAPSシリカ(例えば、35μm以下)を使用する利点、及び、最後に、弗素化メタロセンと小さなAPSシリカの両方を使用する相乗効果を実証している。
【0131】
これらの予期されない結果を達成するために、本発明の触媒組成物及び方法は、好ましくは、無機酸化物上に担持された非架橋弗化ジルコノセン化合物を含み、そして、さらに好ましくは、例えば35μm以下のAPSを有する無機酸化物が、ポリオレフィンの製造を1以下、好ましくは0の汚れ指数で触媒することができる。さらに好ましくは、本発明の触媒組成物を使用する方法は、表面改質剤の使用なしに又は減少した使用量で低い汚れ指数であることができる。即ち、該表面改質剤は、別の具体例では触媒組成物の総重量に対して0.5重量%以下で存在し、さらに別の具体例では触媒組成物には存在せず、さらに好ましくは、重合中に触媒組成物又は重合用反応器には存在しない。
【0132】
しかして、本発明は、次のものを接触させることを含むオレフィンの重合方法を含む。
【0133】
エチレン及びC4〜C8α−オレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種の共単量体、別の具体例ではエチレン及び1−ブテン又は1−ヘキセンのいずれか。
【0134】
少なくとも1個の弗化物又は弗素含有脱離基を含む置換非架橋ビスシクロペンタジエニルジルコノセン触媒化合物からなるメタロセン触媒化合物を含む触媒系。ここで、この重合方法は、気相方法、好ましくは連続気相方法であり、一具体例では227Kg/時間以上の速度で重合体を製造することができる反応器内で70℃以上の温度で実施される。
【0135】
一具体例では、表面改質剤はこの方法には実質的に存在せず、また別の具体例では触媒組成物の総重量に対して0.5重量%以下まで存在し、そしてここで、特定の具体例では、40℃〜80℃の融点を有するエトキシル化アミン及びグリセリンエステルは本方法及び触媒組成物に存在しない。
【0136】
本発明に有用な非架橋ジルコノセン触媒化合物は、一具体例では、次式:
ABMQn
(式中、Mはジルコニウムであり、LA及びLBはMに結合し、同一又は異なるものであり、そして次の様々な置換型:シクロペンタジエニル配位子、インデニル配位子、テトラヒドロインデニル配位子、ベンズインデニル配位子、フルオレニル配位子及びオクタヒドロフルオレニル配位子よりなる群から選択され、nは1、2又は3であり、QはMに結合するモノ陰イオン性不安定配位子であり、ここで、少なくとも1個のQは弗化物又は弗素含有脱離基である。)
によって表される。一具体例では、全てのQは弗素である。さらに別の具体例では、LA及びLBのそれぞれは同一又は異なるものであり、そして、次の置換型:シクロペンタジエニル配位子及びテトラヒドロインデニル配位子よりなる群から選択され、そして最も好ましくは、シクロペンタジエニルの置換型である。別の具体例では、置換基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びそれらの異性体並びにそれらの組合せよりなる群から選択され、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル及びブチル基及びそれらの異性体並びにそれらの組合せから選択される。別の具体例では、ジルコノセン触媒化合物は、二弗化ビス(l−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、二弗化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウム及び二弗化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムよりなる群から選択される。
【0137】
本発明の触媒組成物は、任意の数のオレフィン重合方法、特に、溶液、スラリー又は気相重合に有用であり、しかも、気相重合方法、より好ましくは流動床気相方法に特に有用である。
【0138】
本発明の一具体例では、触媒系は、アルモキサン活性剤を含み、また別の具体例ではイオン活性剤又はイオン化性活性剤を含む。好ましくは、該活性剤は、ジルコノセンと共に担体材料上に担持される。該担体は、一具体例では無機酸化物、好ましくはシリカである。一具体例では、担体は、35μm以下の平均粒度及び1〜2cm3/gの細孔容量を有する。より好ましくは、平均粒度は30μm以下である。
【0139】
本発明の一具体例では、重合方法は、次の工程:
(a)エチレン及びα−オレフィン単量体を含む再循環流れを反応器に導入し、
(b)担持触媒系を導入し、
(c)該反応器から再循環流れを引き出し、
(d)該再循環流れを冷却し、
(e)該反応器に追加の単量体を導入して重合した単量体と置き換え、
(f)該再循環流れ又はその一部分を該反応器に再導入し、
(g)該反応器から重合体生成物を取り出すこと
を含む連続気相方法である。
【0140】
該重合体生成物は、一具体例では0.900g/cm3〜0.960g/cm3の範囲の密度、2〜10のMWD及び0.1dg/分〜50dg/分のI2を有する共重合体であり、 また好ましい具体例では0.910g/cm3〜0.940g/cm3の範囲の密度、1.8〜4のMWD及び0.1dg/分〜10dg/分のI2を有する共重合体である。この重合体生成物は、一具体例では55%〜85%の範囲のCDBI値を有するが、これはフィルムとして又はフィルム積層体において使用するのに好適である。
【0141】
本発明の触媒系及び本発明の触媒系を使用する方法は、一具体例ではオレフィンの重合を触媒することができるその他の非メタロセン触媒化合物(例えば、塩化チタンのチーグラー・ナッタベース触媒化合物、非メタロセンクロム触媒化合物及び第4〜10族原子アミド及びイミド型化合物)を含むことができ、且つ、少なくとも1個の弗化物又は弗素含有脱離基を含む非架橋ビスシクロペンタジエニルジルコノセン以外のメタロセンの使用を排除することができる。少なくとも1個の弗化物又は弗素含有脱離基を含む望ましい非架橋ビスシクロペンタジエニルジルコノセンとしては、構造(I)、(IIIb)、(IIId)、(IIIf)、(IIIh)及び(IIIj)で表されるものが挙げられる。本発明の方法及び触媒組成物の別の具体例では、触媒組成物は、本質的に35μm以下、最も好ましくは30μm以下の平均粒度及び1〜2cm3/gの細孔容量を有するシリカ担体からなる。このシリカは、アルモキサン、好ましくはメチルアルモキサン活性剤、及び、少なくとも1個の弗化物又は弗素含有脱離基、好ましくは2個の弗化物イオンを含む非架橋ビスシクロペンタジエニルジルコノセンを担持する。
【0142】
本発明を特定の具体例を参照することによって説明且つ例示してきたが、当業者であれば、本発明は、それ自体ここに必ずしも例示されていないものに変更されやすいことを認識するであろう。例えば、本発明のメタロセン触媒化合物を鉱油スラリーで反応器に導入でき、又は、活性又は生産性を増大させるために若しくは単に該方法の操作性を改善させるためにこれを本発明の方法に導入することができることが予期される。しかして、この理由のため、もっぱら本発明の本来の範囲を決定することを目的とした請求の範囲を参照すべきである。
【0143】
全ての優先権書類は、引用によってここに完全に加入するものとする(このような加入が認められる全ての管轄について)。さらに、試験手順を含め、ここで参照した全ての文献は、加入が認められる全ての管轄についてここに完全に加入するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分:
(a)エチレン及びC4〜C8α−オレフィンよりなる群から選択される少なくとも1種の共単量体と、
(b)少なくとも1個の弗化物又は弗素含有脱離基を含む置換非架橋ビスシクロペンタジエニルジルコノセン触媒化合物からなるメタロセン触媒化合物を含む担持触媒系と
を接触させることを含むオレフィン重合方法において、
該重合方法が、227Kg/時間以上の速度で重合体を製造することができる反応器内で70℃以上の温度で実施される気相方法である、オレフィン重合方法。
【請求項2】
メタロセン触媒化合物及び活性剤が無機酸化物担体材料上に担持されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メタロセン触媒化合物が、次式:
ABMQn
(式中、
Mはジルコニウムであり、
A及びLBはMに結合し、同一又は異なるものであり、そして次の置換型:シクロペンタジエニル配位子、インデニル配位子、テトラヒドロインデニル配位子、ベンズインデニル配位子、フルオレニル配位子及びオクタヒドロフルオレニル配位子よりなる群から選択され、
nは1、2又は3であり、
QはMに結合するモノ陰イオン性不安定配位子であり、ここで、少なくとも1個のQは弗化物又は弗素含有脱離基である)
によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Qが弗素である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
A及びLBのそれぞれが同一又は異なるものであり、そして次の置換型:シクロペンタジエニル配位子及びテトラヒドロインデニル配位子よりなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
置換基が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及びそれらの異性体よりなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
ジルコノセン触媒化合物が2個の弗化物脱離基を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ジルコノセン触媒化合物が、二弗化ビス(l−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、二弗化ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウム及び二弗化(テトラメチルシクロペンタジエニル)(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムよりなる群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
触媒系がアルモキサン活性剤を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
担持触媒系が35μm以下の平均粒度及び1〜2cm3/gの細孔容量を有する無機酸化物担体を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
担体の平均粒度が30μm以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
無機酸化物が25μm以下の平均粒度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
気相方法が、次の工程:
(a)エチレン及びα−オレフィン単量体を含む再循環流れを反応器に導入し、
(b)担持触媒系を導入し、
(c)該反応器から該再循環流れを引き出し、
(d)該再循環流れを冷却し、
(e)該反応器に追加の単量体を導入して重合した単量体と置き換え、
(f)該再循環流れ又はその一部分を該反応器に再導入し、
(g)該反応器から重合体生成物を取り出すこと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
重合体生成物が0.900g/cm3〜0.960g/cm3の範囲の密度、2〜10のMWD及び0.1dg/分〜50dg/分のI2を有する共重合体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
汚れ指数が重合用反応器内で0.5以下に保持される、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
表面改質剤が触媒組成物の0.5重量%以下まで存在する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
表面改質剤が存在しない、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
重合体生成物からフィルムを形成する、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2007−533786(P2007−533786A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532322(P2006−532322)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/007594
【国際公開番号】WO2005/005488
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(599168648)ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー (70)
【Fターム(参考)】