説明

メラニン産生阻害皮膚外用剤

【課題】
メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物と、ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤、抗酸化剤、抗炎症剤、高分子化合物、および多価アルコール類とを有効成分として美白化粧料に配合することで、それぞれの相乗効果により高い美白効果を発揮するメラニン産生阻害皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】
メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物と、ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤、抗酸化剤、抗炎症剤、高分子化合物、および多価アルコール類とを有効成分として配合することによりメラニン産生阻害効果を有する皮膚外用剤の提供が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メラニンの産生阻害作用が相乗的に増強され、日焼け後の色素沈着・しみ・ソバカス・肝斑等の予防及び改善に有効で、皮膚美白効果が著しく改良された安全性の高いメラニン産生阻害皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線による皮膚の黒化や、シミ,ソバカスといった皮膚の色素沈着を改善するため、メラニン産生を阻害する成分または、生成したメラニン色素を還元する作用を有する成分がスクリーニングされ美白化粧料に配合されてきた。例えば、アスコルビン酸,システイン,ハイドロキノン、及びこれらの誘導体、胎盤抽出物、植物,藻類よりの抽出物などが利用されている。
【0003】
しかしながら、アスコルビン酸,システイン,ハイドロキノンは、酸化還元反応を受けやすく不安定であり、胎盤抽出物や植物,藻類よりの抽出物は有効量を配合すると美白化粧料に好ましくない臭いや色を付与する等の問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明においては、上記のような問題点を解決し、強いメラニン産生阻害作用を有し、かつ皮膚刺激性や皮膚感作性といった安全性上の問題もないメラニン産生阻害皮膚外用剤を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するにあたり、種々検討を行ったところ、メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物に、ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤、抗酸化剤、抗炎症剤、高分子化合物、多価アルコール類から選択される1種又は2種以上を併用することにより、メラニン産生抑制効果が相乗的に増強され、しかも皮膚刺激性や皮膚感作性といった安全性上の問題のないメラニン産生抑制皮膚外用剤が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明のメントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物と、ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤、抗酸化剤、抗炎症剤、高分子化合物、および多価アルコール類とを有効成分として含有するメラニン産生阻害皮膚外用剤は、それぞれの相乗効果により、高い美白効果を有するものである。
【発明の実施の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明で用いられるリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸からなる長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルの合成は、大きく分けて無機触媒を用いた化学合成法や、触媒としてリパーゼなどの酵素を用いた合成法が提案されているが、いずれの方法によるものでも限定されるものではない。
【0008】
無機触媒を用いた化学合成は、反応時の着色、劣化臭の発生、触媒除去、生成の煩雑さなどの問題点があり、本発明に用いられるメントール エステルの製造に化学的合成方法を適用することは望ましいものではないが、その利用を制限するものではない。
【0009】
酵素合成に用いる酵素としてはリパーゼが一般的であるが、その起源を特に制限するものではなく、本発明における酵素反応性を有するかぎり各種微生物、動物、植物起源のいずれでもよい。微生物起源のリパーゼとしては、例えばスタフィロコッカス属、シュードモナス属、キャンディダ属、リゾプス属、クロモバクテリウム属等に属する微生物に由来するものが利用できる。動物起源のリパーゼとしては、例えば膵リパーゼ、消化管リパーゼ等があげられ、また植物起源のリパーゼとしては、例えば、米ぬか、なたね種子、パーム果肉、ヒマ種子のリパーゼ等が挙げられる。これらの酵素は市販されたものをそのまま用いてもよいが、目的とする酵素の生産能を有する微生物菌体そのもの、その培養液、該培養液を処理して得られる粗酵素液や酵素を含む組成物等を使用することもできる。
【0010】
本発明で用いられるメントールとしては光学活性および光学不活性の両方を用いることができ、d−またはl−メントール 、ラセミ体、ジアステレオマーが含まれるが、好ましくは1R、3R、4s−体のl−メントールである。
【0011】
また、本発明に用いられるリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の長鎖不飽和脂肪酸は、天然界に存在する高度不飽和脂肪酸が利用できる。天然の油脂原料としては、例えばマグロ、カツオ、イワシ、サバ、サンマ、アジ、イカまたはタラから得られる魚油にエイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸が多く含まれる。また、モルティエラ属糸状菌が生産する油脂または鶏卵の卵黄油はアラキドン酸を多く含む油脂原料として使用できる。さらに、フラックスやキウイの種子油はリノレン酸を多く含む油脂原料として使用できる。これらの含有油脂を、煮取り抽出、溶剤抽出、圧搾抽出などの方法によって抽出し、加水分解して、遊離脂肪酸を得ることができる。
【0012】
本発明で用いられるケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤としては、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドは、その種類,基原を問わず例えば、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及び/又はその誘導体が挙げられる。また、バンザクロ(Psidium)属植物抽出物としては、グアバ(Psidium
guajava L.)葉抽出液、カメリア(Camellia)属植物抽出物としては茶(Camellia sinensis O.kuntze)抽出液、ヘリアンタス(Helianthus)属植物抽出物としては、ひまわり(Helianthus annus L.)種子抽出液、レオントポディウム (Leontopodium)属植物抽出物としては、エーデルワイス(Leontopodium alpinum)抽出液が用いられる。
【0013】
本発明で用いられる抗酸化成分としては、その種類,基原を問わずα-カロテン,β-カロテン,γ-カロテン,リコペン,クリプトキサンチン,ルテイン(キサントフィル)、フラボノイド類として、フラボン,アピゲニン,ルテオリン及びその配糖体、ケンフェロール,クェルセチン,ミリセチン,ルチン及びその配糖体、ダイゼイン,ゲニステイン及びその配糖体、フラバノン,ナリンゲニン,ヘスペレチン及びその配糖体、カルコン及びその配糖体、アントシアン及びその配糖体、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,d-δ-トコフェロール,酢酸トコフェロール,ニコチン酸DL-α-トコフェロール,コハク酸DL-α-トコフェロールの中から選ばれる1種または2種以上の成分が用いられる。
【0014】
本発明で用いられる抗炎症成分としては、その種類,基原を問わずグリチルリチン酸及びグリチルリチン酸ジカリウム,グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸の塩並びに誘導体、グリチルレチン酸及びグリチルレチン酸ステアリル,ステアリン酸グリチルレチニル,3-サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム等のグリチルレチン酸の塩並びに誘導体、アラントイン、アロイン、シコニンの中から選ばれる1種または2種以上の成分が用いられる。
【0015】
本発明で用いられる高分子化合物としてはその種類,基原を問わずヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、アルゲコロイド,キサンタンガム,デキストラン,プルラン,メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)の中から選ばれる1種または2種以上の成分が用いられる。
【0016】
本発明で用いられる多価アルコール類としては、その種類,基原を問わずポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、マルチトール、の中から選ばれる1種または2種以上の成分が用いられる。
【0017】
メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物のメラニン産生抑制皮膚外用剤への配合量は、その効果や添加した際の臭い,色調の点から考え、0.001〜20.0重量%の濃度範囲とすることが望ましく、特に0.1〜5.0重量%の範囲が最適である。 含有量が0.001重量%未満であると充分な効果が発揮されず、20.0重量%以上加えても効果はほぼ一定である。
【0018】
上記ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤として使用される植物抽出液は、抽出するにあたっては種々の適当な有機溶媒を用いてそれぞれの化合物を豊富に含む植物類から低温下及び/又は加温下で抽出された物が使用できる。また、化合物は市販の試薬類をそのまま使用できる。
【0019】
抽出溶媒としては、特に限定はされないが例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチルなどのアルキルエステル;ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素;ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロルメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルカン等の1種または2種以上を用いることが出来る。とりわけ、水、エチルアルコール、1,3-ブチレングリコールの1種または2種以上の混合溶媒が特に好適である。
【0020】
植物エキスの抽出は、そのままあるいは乾燥した植物体を重量比で1〜1000倍量、特に10〜100倍量の溶媒を用い、0℃以上、特に20℃〜40℃で1時間以上、特に3〜7日間行うのが好ましい。抽出部位は、どの部分を用いても良く、また全草を用いることもできる。
【0021】
以上のような条件で得られる植物抽出液は、抽出された溶液のまま用いても良いが、さらに必要により濾過等の処理をして、濃縮、粉末化したものを適宜使い分けて用いることが出来る。
【0022】
本発明の化粧料におけるケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤として使用される還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及び/又はその誘導体、および植物抽出液の配合量は、蒸発乾燥分に換算して一般的に0.0001〜20.0重量%が好ましく、特に0.01〜5.0重量%の範囲が最適である。 含有量が0.0001重量%未満であると充分な効果が発揮されず、20.0重量%以上加えても効果はほぼ一定である。
【0023】
本発明の化粧料における抗酸化剤として使用されるα-カロテン,β-カロテン,γ-カロテン,リコペン,クリプトキサンチン,ルテイン(キサントフィル)、フラボノイド類として、フラボン,アピゲニン,ルテオリン及びその配糖体、ケンフェロール,クェルセチン,ミリセチン,ルチン及びその配糖体、ダイゼイン,ゲニステイン及びその配糖体、フラバノン,ナリンゲニン,ヘスペレチン及びその配糖体、カルコン及びその配糖体、アントシアン及びその配糖体、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,d-δ-トコフェロール,酢酸トコフェロール,ニコチン酸DL-α-トコフェロール,コハク酸DL-α-トコフェロールの配合量は0.0001〜20.0重量%が好ましく、特に0.01〜5.0重量%の範囲が最適である。含有量が0.0001重量%未満であると充分な効果が発揮されず、20.0重量%以上加えても効果はほぼ一定である。
【0024】
本発明の化粧料における抗炎症剤として使用されるグリチルリチン酸及びグリチルリチン酸ジカリウム,グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸の塩並びに誘導体、グリチルレチン酸及びグリチルレチン酸ステアリル,ステアリン酸グリチルレチニル,3-サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム等のグリチルレチン酸の塩並びに誘導体、アラントイン、アロイン、シコニンの配合量は0.0001〜20.0重量%が好ましく、特に0.01〜5.0重量%の範囲が最適である。含有量が0.0001重量%未満であると充分な効果が発揮されず、20.0重量%以上加えても効果はほぼ一定である。
【0025】
本発明の化粧料における高分子化合物のヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、アルゲコロイド,キサンタンガム,デキストラン,プルラン,メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)の配合量は0.0001〜20.0重量%が好ましく、特に0.01〜5.0重量%の範囲が最適である。含有量が0.0001重量%未満であると充分な効果が発揮されず、20.0重量%以上加えても効果はほぼ一定である。
【0026】
本発明の化粧料における多価アルコール類のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、マルチトールの配合量は0.01〜20.0重量%が好ましく、特に0.1〜5.0重量%の範囲が最適である。含有量が0.01重量%未満であると充分な効果が発揮されず、20.0重量%以上加えても効果はほぼ一定である。
【0027】
本発明の化粧料は、上記必須成分のほかの化粧品、医薬部外品、医薬品に用いられる水性成分、油性成分、植物抽出物、動物抽出物、粉末、界面活性剤、油剤、アルコール、PH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、色素、香料等を必要に応じて混合して適宜配合することにより調製される。
本発明の化粧料の剤形は特に限定されず、化粧水、乳液、クリーム、パック、パウダー、スプレー、軟膏、分散液、洗浄料等種々の剤形とすることができる。
【0028】
以下、本発明における有効物質の合成および抽出、メラノサイトにかかわる効果試験、およびヒトでの効果試験の実施例を示す。さらに、その素材を用いた皮膚外用剤への応用処方例等について述べるが、ここに記載された実施例に限定されないのは言うまでもない。
【実施例】
【0029】
(エステル化合物の作製)
各種長鎖不飽和脂肪酸(純度95%以上)とl-メントール(東京化成工業(株)製;純度95%)からなる反応混液24g(モル比3:1)に、シュードモナス・SPが生産するリパーゼ(栗田工業(株)製,KWI-56)
24,000U(反応混液1g当たり800U)を溶解した蒸留水6gを加え、窒素気流下で撹拌しながら35℃で50時間エステル化反応を行った。反応混合物に0.5N水酸化ナトリウム溶液を加え、未反応の脂肪酸を完全に脂肪酸塩に変換した。これにn-ヘキサンを加え、生成したメントールエステルをn-ヘキサンで抽出し、ロータリーエバポレーターにより溶剤を留去することにより、メントールエステルを得た。反応によって消費された酸価からエステル合成率を算出し、結果を表1に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
(実施例2)
(植物抽出液の調製)
バンザクロ(Psidium)属植物として、グアバ(Psidium guajava L.)の葉、カメリア(Camellia)属植物として、茶(Camellia sinensis O.kuntze)、ヘリアンタス(Helianthus)属植物として、ひまわり(Helianthus annus L.)種子、レオントポディウム (Leontopodium)属植物として、エーデルワイス(Leontopodium alpinum)の全草の各種植物体乾燥物それぞれの10gに50%エタノール水溶液100mlを加え、室温でときどき撹拌しながら7日間抽出し、濾過して各抽出液を得た。 これら各抽出液を減圧濃縮し、ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害試験を測定する試料とした。 また、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよびその誘導体の化合物については、市販の試薬を用いた。
【0032】
(実施例3)
抗酸化剤、抗炎症剤、高分子化合物、多価アルコール類は流通している化粧品原料又は試薬を用いた。
【0033】
(実施例4)
(メラニン産生抑制効果の測定)
(メラニン産生細胞の培養)
培養液は牛胎児血清5.0%を加えたダルベッコMEM(D−MEM)培地を用いた。細胞はマウスメラノーマB−16
F−10を使用し、12wellのシャーレに細胞を植え付けた。細胞の植え付け量は4×10/cmとした。細胞を播種した翌日、各種試料を表2の濃度になるように添加し、添加後3日後に試験を終了した。
リノール酸メントールエステルは5倍量のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.)を加えて可溶化したものを添加した。
【0034】
(評価方法)
メラニン量の測定は培養後、細胞を2N-NaOHに溶解し405nmの吸光度を測定した。また、細胞増殖度は2N-NaOHに溶解した細胞溶解液の一部を
BCA法によるタンパク測定法により540nmの吸光度で測定し、タンパク量に換算した。メラニン産生度は、単位タンパク量あたりのメラニン量の割合で計算した。また、美白効果の陽性対照物質としてβ-アルブチンを用いた。
計算式:メラニン産生度(%)=(試料添加区の405nmの吸光度値/試料添加区の540nmの吸光度値)/(無添加区の405nmの吸光度値/無添加区の540nmの吸光度値)×100
【0035】
【表2】

【0036】
表2に、リノール酸メントールエステル、リノール酸、L-メントールのメラニン産生抑制効果を示した。リノール酸メントールエステルは20μM添加で、メラニン産生度が72.7%を示した。これに対しβ-アルブチンは400μM添加で75.5%であり、濃度比較においては本発明のリノール酸メントールエステルが、20倍以上の効果を有していた。また、リノール酸単独では20μM添加でメラニン産生度が80.4%、60μMで72.5%でありメントールエステルの場合が約3倍高い効果を示した。一方、L-メントールは、60μM添加で、メラニン産生度が88.3%を示し、メラニン産生抑制効果はほとんど認められなかった。
【0037】
(実施例5)
ケラチノサイトから産生される情報伝達物質としてチオレドキシン/ADFの産生測定
人ケラチノサイトによるチオレドキシン/ADF産生抑制作用の測定
(1)試料溶液の調製
実施例2で調製したNADPH、グアバ葉エキス、茶抽出液、ヒマワリ種子エキス、エーデルワイス抽出液を、10mg/ml試料濃度に調製したものを試料溶液とした。
【0038】
(2)人ケラチノサイトの培養
無菌的に採取した正常人包皮から真皮、皮下組織をできるだけ削除する。無菌シャーレに、トリプシン/EDTA(0.25%/0.05%)PBS(-)(リン酸緩衝液)を入れ、表皮を上にして室温で1日放置後、ピンセットで表皮と真皮を分離する。表皮細胞を採集し、遠心チューブにPBS(-)10mlを加え、ピペッティングにより細胞を分散させ、1000回転、5分間遠心し、上清をすてる。PBS(-)による細胞の洗浄を3回繰り返す。集まった細胞をケラチノサイト用無血清培地で分散し、コラーゲンコート(1型)シャーレにまき、37℃、5% COインキュベーター中で培養する。

培地 :ブレットキット EGM (改変 MCDB 131 培地)

添加物:牛脳抽出物(BBE) 12μg/ml, h-EGF 0.01μg/ml, ハイドロコーチゾン 1μg/ml, ゲンタマイシン 50mg/ml, アンフォテリシン
50μg/ml
【0039】
(3)人ケラチノサイトによるチオレドキシン/ADF産生量の測定
(a)人ケラチノサイトのチオレドキシン/ADF誘導

人ケラチノサイトを直径36mmシャーレにコンフルーエントになるまで細胞を培養する。 これに(1)で調製した試料を添加し、COインキュベーター中で30分間インキュベートする。 培地を除去し、PBS(-)を0.5ml添加し、UV-B 20mJ/cm2を照射し、チオレドキシン/ADFを誘導させる。 PBS(-)を除去し、ケラチノサイト用無血清培地2mlを添加し、3時間インキュベートしてチオレドキシン/ADFの産生を行う。

インキュベート後、トリプシン/EDTA(0.25%/0.05%)PBS(-)1mlで細胞をはがし、3000回転、5分間で細胞を回収する。 回収した細胞に
lysis buffer (10% NP-40 2.5ml; 100mM Tris-HCl (PH7.5) 5.0ml; 3M−NaCl, 2.5ml; 200mMフェニルメチルスルフォニルフロライド(PMSF)/ジメチルホルムアミド(DMFA)250μl; 0.111 IU/ml アプロチニン 185μl;10%アジ化ナトリウム 100μl; 蒸留水で 50ml) 30μl を添加し、良く撹拌して溶解する。 細胞溶解液を3000回転、5分間、続いて15,000回転、5分間遠心し、上澄みを新しいエッペンチューブに取り、タンパク量を測定する。タンパク量は Bio Rad 社のprotein assay Kit
を用いて行った。
【0040】
(b)タンパク電気泳動(SDS−PAGE)

アクリルアミド15%濃度の lower gelおよび、4.5%濃度の stacking gel
を作成する。 タンパク量30μgの試料に、それと同量の2倍濃度サンプリングバッファー(0.5M-Tr
is-HCl(PH6.8) 2ml; 10%SDS 4ml; β-メルカプトエタノール 1.2ml; グリセロール 2ml; 蒸留水0.8ml;1% BPB, 適量;)を添加し、100℃、5分間加熱し、ゲルに添加する試料を調製する。 Tris塩 30.3g; グリシン 144.0g; SDS
10.0g; 蒸留水で10Lにしたランニングバッファー中で、30mAで電気泳動を行った。
【0041】
(c)ウエスタンブロッティング

電気泳動を行ったゲルと PVDF 膜をトランスファーバッファー(グリシン, 72.25g; Tris-base, 15g; SDS, 3.75g; 蒸留水, 4L)中でセットし、500mAで90分間トランスファーを行った。

トランスファー後、PVDF 膜をブロッキング溶液(10g スキンミルク; 10ml 仔牛血清; 90ml
0.05%Tween20 PBS(-)溶液)に浸し、一晩冷蔵放置する。 その後、ブロッキング溶液を除去し、0.05%Tween20 PBS(-)溶液で洗浄を3回行う。 一次抗体としてADF抗体 (0.35μg/ml)を0.05%Tween20
PBS(-)溶液)で1μl/7mlに希釈し、PVDF膜を一時間処理する。 次に二次抗体として抗マウス抗体 (10μl/6ml
0.05%Tween20 PBS(-)溶液)でPVDF膜を一時間処理する。 その後0.05%Tween20 PBS(-)溶液で5回洗浄後Immuno Star(和光純薬工業株式会社)で発色し、13,000Daのバンドの濃淡でチオレドキシン/ADF量の確認を行った。評価基準および結果は表3に示した。
【0042】
【表3】

【0043】
表3より、UV-B照射時のチオレドキシン/ADF産生量を4、非照射のチオレドキシン/ADF産生量を0とした場合、表3に示した還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADPH)は50μM、グアバ葉抽出物、茶抽出物および、ひまわり種子抽出物はそれぞれ100ppmでADF産生量が2となり、強いチオレドキシン/ADF産生抑制が認められた。 さらに、エーデルワイス抽出物は200ppmでチオレドキシン/ADF産生量が3となり、チオレドキシン/ADF産生抑制効果が認められた。
【0044】
(実施例6)
塗布によるヒトでの効果確認試験 1
被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として0068で示した化粧料を用い、比較品1には0068に示した化粧料からヒマワリ種子エキスと還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを除いた化粧料を、比較品2には0068に示した化粧料からリノール酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。結果は表4に示す。表中の数字は、人数を示している。表4からも明らかなように、ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤としてのヒマワリ種子エキスと還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、および長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルとしてリノール酸メントールエステルを配合した試験品では評価点数が70点であった。一方、ヒマワリ種子エキスと還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドのみからなる比較品2では評価点数が36点であり、またリノール酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が47点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルとケラチノサイトから産生される情報伝達物質を阻害する物質を併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0045】
【表4】

【0046】
(実施例7)
長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと、抗酸化剤とを有効成分として含有することを特徴とする美白化粧料の効果を示す。長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルとしてα-リノレン酸メントールエステルを用い、抗酸化剤としてd-δ-トコフェロールおよび、クエルセチンを併用した場合の効果を実施例7、および実施例8に示す。
【0047】
(実施例7)
塗布によるヒトでの効果確認試験 2
被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として段落0069で示した化粧料を用い、比較品1には段落0069に示した化粧料からd-δ-トコフェロールを除いた化粧料を、比較品2には段落0069に示した化粧料からα-リノレン酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。 結果は表5に示す。表中の数字は、人数を示している。表5からも明らかなように、抗酸化剤としてのd-δ-トコフェロール、およびα-リノレン酸メントールエステルとを配合した試験品では評価点数が69点であった。一方、抗酸化剤としてのd-δ-トコフェロールのみからなる比較品2では評価点数が39点であり、またα-リノレン酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が47点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと抗酸化剤を併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0048】
【表5】

【0049】
(実施例8)
塗布によるヒトでの効果確認試験 3
被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として段落0070で示した化粧料を用い、比較品1には段落0070に示した化粧料からクエルセチンを除いた化粧料を、比較品2には段落0070に示した化粧料からα-リノレン酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。結果は表6に示す。表中の数字は、人数を示している。表6からも明らかなように、抗酸化剤としてのクエルセチン、およびα-リノレン酸メントールエステルとを配合した試験品では評価点数が72点であった。一方、抗酸化剤としてのクエルセチンのみからなる比較品2では評価点数が39点であり、またα-リノレン酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が49点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと抗酸化剤を併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0050】
【表6】

【0051】
長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと、抗炎症剤とを有効成分として含有することを特徴とする美白化粧料の効果を示す。長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルとしてリノール酸メントールエステルを用い、抗炎症剤としてグリチルリチン酸ジカリウムおよびアラントインを併用した場合の効果を実施例9、および実施例10に示す。
【0052】
(実施例9)
ヒトでの効果確認試験 4
リノール酸メントールエステルとグリチルリチン酸ジカリウムを併用することによって美白効果の確認を行った。被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として段落0071で示した化粧料を用い、比較品1には段落0071に示した化粧料からグリチルリチン酸ジカリウムを除いた化粧料を、比較品2には段落0071に示した化粧料からリノール酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。結果は表7に示す。表中の数字は、人数を示している。表7からも明らかなように、抗炎症剤としてのグリチルリチン酸ジカリウム、およびリノール酸メントールエステルとを配合した試験品では評価点数が76点であった。一方、抗炎症剤としてのグリチルリチン酸ジカリウムのみからなる比較品2では評価点数が41点であり、またリノール酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が52点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと抗炎症剤を併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0053】
【表7】

【0054】
(実施例10)
ヒトでの効果確認試験 4
リノール酸メントールエステルとアラントインを併用することによって美白効果の確認を行った。被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として段落0072で示した化粧料を用い、比較品1には段落0072に示した化粧料からアラントインを除いた化粧料を、比較品2には段落0072に示した化粧料からリノール酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。結果は表8に示す。表中の数字は、人数を示している。表8からも明らかなように、抗炎症剤としてのアラントイン、およびリノール酸メントールエステルとを配合した試験品では評価点数が72点であった。一方、抗酸化剤としてのアラントインのみからなる比較品2では評価点数が36点であり、またリノール酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が53点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと抗炎症剤を併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0055】
【表8】

【0056】
長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと、高分子化合物とを有効成分として含有することを特徴とする美白化粧料の効果を示す。長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルとしてアラキドン酸メントールエステルを用い、高分子化合物としてヒアルロン酸およびキサンタンガムを併用した場合の効果を実施例11、および実施例12に示す。
【0057】
(実施例11)
塗布によるヒトでの効果確認試験 5
被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として段落0073で示した化粧料を用い、比較品1には段落0073に示した化粧料からヒアルロン酸を除いた化粧料を、比較品2には段落0073に示した化粧料からアラキドン酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。結果は表9に示す。表中の数字は、人数を示している。表9からも明らかなように、高分子化合物としてのヒアルロン酸、およびアラキドン酸メントールエステルとを配合した試験品では評価点数が74点であった。一方、高分子化合物としてのヒアルロン酸のみからなる比較品2では評価点数が36点であり、またアラキドン酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が55点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと高分子化合物を併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0058】
【表9】

【0059】
(実施例12)
塗布によるヒトでの効果確認試験 6
被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として段落0074で示した化粧料を用い、比較品1には段落0074に示した化粧料からキサンタンガムを除いた化粧料を、比較品2には段落0074に示した化粧料からアラキドン酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。結果は表10に示す。表中の数字は、人数を示している。表10からも明らかなように、高分子化合物としてのキサンタンガム、およびアラキドン酸メントールエステルとを配合した試験品では評価点数が70点であった。一方、高分子化合物としてのキサンタンガムのみからなる比較品2では評価点数が42点であり、またアラキドン酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が50点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと高分子化合物を併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0060】
【表10】

【0061】
長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと、多価アルコールとを有効成分として含有することを特徴とする美白化粧料の効果を示す。長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルとしてエイコサペンタエン酸メントールエステルを用い、多価アルコールとして1,3−ブチレングリコールおよびグリセリンを併用した場合の効果を実施例13、および実施例14に示す。
【0062】
(実施例13)
塗布によるヒトでの効果確認試験 7
被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として段落0075で示した化粧料を用い、比較品1には段落0075に示した化粧料から1,3−ブチレングリコールを除いた化粧料を、比較品2には段落0075に示した化粧料からエイコサペンタエン酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。結果は表11に示す。表中の数字は、人数を示している。表11からも明らかなように、多価アルコールとしての1,3−ブチレングリコール、およびエイコサペンタエン酸メントールエステルとを配合した試験品では評価点数が70点であった。一方、多価アルコールとしての1,3−ブチレングリコールのみからなる比較品2では評価点数が39点であり、またエイコサペンタエン酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が52点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと多価アルコールを併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0063】
【表11】

【0064】
(実施例14)
塗布によるヒトでの効果確認試験 8
被験者として、20〜60歳の女性10名に1日2回(朝、夜)連続2ヵ月間、試験品と比較品1,2のそれぞれを使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。本試験には、試験品として段落0076で示した化粧料を用い、比較品1には段落0076に示した化粧料からグリセリンを除いた化粧料を、比較品2には段落0076に示した化粧料からエイコサペンタエン酸メントールエステルを除いた化粧料を作成し、その使用による効果について調べた。本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日使用しながら肌の美白効果を塗布開始前及び2ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。結果は表12に示す。表中の数字は、人数を示している。表12からも明らかなように、多価アルコールとしてのグリセリン、およびエイコサペンタエン酸メントールエステルとを配合した試験品では評価点数が69点であった。一方、多価アルコールとしてのグリセリンのみからなる比較品2では評価点数が42点であり、またエイコサペンタエン酸メントールエステルのみからなる比較品1では評価点数が47点であった。この結果から明らかなように、長鎖不飽和脂肪酸のメントールエステルと多価アルコールを併用することによって高い美白効果が得られることが認められた。
【0065】
【表12】

【0066】
次に、本発明の各種成分を配合した化粧料の処方例の例を示すが、本発明はこれに限定されるものでない。
【0067】
化粧料の処方例を以下に示す。
【0068】
(1)化粧用クリーム
(重量%)
a)ミツロウ
2.0
b) リノール酸メントールエステル
5.0
c)ステアリン酸
8.0
d)スクワラン
10.0
e)自己乳化型グリセリルモノステアレート
3.0
f)ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)
1.0
g)ヒマワリ種子エキス
2.0
h)水酸化カリウム
0.3
i)防腐剤・酸化防止剤
適量
j)精製水
残部
k)還元型ニコチンアミト゛アテ゛ニンシ゛ヌクレオチト゛ 0.1
製法 a)〜f)までを加熱溶解し、80℃に保つ。g)〜j)までを加熱溶解し、80℃に保ち、a)〜f)に加えて乳化する。50℃でk)を添加し、40℃まで撹拌しながら冷却する。
【0069】
(2)乳液
(重量%)
a)ミツロウ
0.5
b)ワセリン
2.0
c)スクワラン
8.0
d)ソルビタンセスキオレエート
0.8
e)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.2
f)d-δ-トコフェロール

0.2
g)α-リノレン酸メントールエステル
2.0
h)精製水
残部
i)防腐剤・酸化防止剤
適量
j)エタノール
7.0
製法 a)〜g)までを加熱溶解し、80℃に保つ。h)〜i)までを加熱溶解し、80℃に保ち、a)〜g)に加えて乳化し、50℃まで撹拌しながら冷却する。50℃でj)を添加し、40℃まで攪拌冷却する。
【0070】
(2)乳液
(重量%)
a)ミツロウ
0.5
b)ワセリン
2.0
c)スクワラン
8.0
d)ソルビタンセスキオレエート
0.8
e)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.2
f)クエルセチン

0.2
g)α-リノレン酸メントールエステル
2.0
h)精製水
残部
i)防腐剤・酸化防止剤
適量
j)エタノール
7.0
製法 a)〜g)までを加熱溶解し、80℃に保つ。h)〜i)までを加熱溶解し、80℃に保ち、a)〜g)に加えて乳化し、50℃まで撹拌しながら冷却する。50℃でj)を添加し、40℃まで攪拌冷却する。
【0071】
(3)乳液
(重量%)
a)ミツロウ
0.5
b)ワセリン
2.0
c)スクワラン
8.0
d)ソルビタンセスキオレエート
0.8
e)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.2
f)リノール酸メントールエステル
3.0
g)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
h)精製水

残部
i)防腐剤・酸化防止剤

適量
j)エタノール
7.0
製法 a)〜f)までを加熱溶解し、80℃に保つ。g)〜i)までを加熱溶解し、80℃に保ち、a)〜f)に加えて乳化し、50℃まで撹拌しながら冷却する。50℃でj)を添加し、40℃まで攪拌冷却する。
【0072】
(3)乳液
(重量%)
a)ミツロウ
0.5
b)ワセリン
2.0
c)スクワラン
8.0
d)ソルビタンセスキオレエート
0.8
e)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.2
f)リノール酸メントールエステル
3.0
g)アラントイン 0.1
h)精製水

残部
i)防腐剤・酸化防止剤
適量
j)エタノール
7.0
製法 a)〜f)までを加熱溶解し、80℃に保つ。g)〜i)までを加熱溶解し、80℃に保ち、a)〜f)に加えて乳化し、50℃まで撹拌しながら冷却する。50℃でj)を添加し、40℃まで攪拌冷却する。
【0073】
(4)化粧水
(重量%)
a)アラキドン酸メントールエステル 0.5
b)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O.) 2.0
c)エタノール
6.0
d)香料
適量
e)防腐剤・酸化防止剤
適量
f)精製水
残部
g)ヒアルロン酸 0.1
製法 a)〜e)を均一に混合する。f)、g)を均一に混合し、a)〜e)混合物に加える。
【0074】
(4)化粧水
(重量%)
a)アラキドン酸メントールエステル
0.5
b)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O.) 2.0
c)エタノール
6.0
d)香料
適量
e)防腐剤・酸化防止剤
適量
f)精製水
残部
g)キサンタンガム 0.1
製法 a)〜e)を均一に混合する。f)、g)を均一に混合し、a)〜e)混合物に加える。
【0075】
(5)化粧水
(重量%)
a)エイコサペンタエン酸メントールエステル
0.1
b)1,3−ブチレングリコール
8.0
c)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O.) 1.0
d)エタノール
6.0
e)香料
適量
f)防腐剤・酸化防止剤
適量
g)精製水
残部
製法 a)、c)、d)、e)、f)を均一に混合した後b)、g)を均一に混合したものを加える。
【0076】
(5)化粧水
(重量%)
a)エイコサペンタエン酸メントールエステル
0.1
b)グリセリン
8.0
c)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O.) 1.0
d)エタノール
6.0
e)香料 適量
f)防腐剤・酸化防止剤
適量
g)精製水
残部
製法 a)、c)、d)、e)、f)を均一に混合した後b)、g)を均一に混合したものを加える。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のメラニン産生阻害皮膚外用剤は、メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物と、ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤、抗酸化剤、抗炎症剤、高分子化合物、および多価アルコール類とを有効成分として含有し、それぞれの相乗効果により、高い美白効果を有するため、広く皮膚外用剤に応用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物とケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤とを含有することを特徴とするメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項2】
炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸が、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸であることを特徴とする請求項1記載のメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項3】
ケラチノサイトから産生される情報伝達物質阻害剤が、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド及び/又はその誘導体、バンザクロ(Psidium)属植物抽出物、カメリア(Camellia)属植物抽出物、ヘリアンタス(Helianthus)属植物抽出物、レオントポディウム (Leontopodium)属植物抽出物の中から選ばれる1種又は2種以上の成分であることを特徴とする請求項1記載のメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項4】
メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物と抗酸化剤とを有効成分として含有することを特徴とするメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項5】
抗酸化剤がα-カロテン,β-カロテン,γ-カロテン,リコペン,クリプトキサンチン,ルテイン(キサントフィル)、フラボノイド類として、フラボン,アピゲニン,ルテオリン及びその配糖体、ケンフェロール,クェルセチン,ミリセチン,ルチン及びその配糖体、ダイゼイン,ゲニステイン及びその配糖体、フラバノン,ナリンゲニン,ヘスペレチン及びその配糖体、カルコン及びその配糖体、アントシアン及びその配糖体、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,d-δ-トコフェロール,酢酸トコフェロール,ニコチン酸DL-α-トコフェロール,コハク酸DL-α-トコフェロールの中から選ばれる1種または2種以上の成分であることを特徴とする請求項4記載のメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項6】
メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物と抗炎症剤とを有効成分として含有することを特徴とするメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項7】
抗炎症剤がグリチルリチン酸及びグリチルリチン酸ジカリウム,グリチルリチン酸モノアンモニウム等のグリチルリチン酸の塩並びに誘導体、グリチルレチン酸及びグリチルレチン酸ステアリル,ステアリン酸グリチルレチニル,3-サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム等のグリチルレチン酸の塩並びに誘導体、アラントイン、アロイン、シコニンの中から選ばれる1種または2種以上の成分であることを特徴とする請求項6記載のメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項8】
メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物と高分子化合物とを有効成分として含有することを特徴とするメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項9】
高分子化合物がヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、アルゲコロイド,キサンタンガム,デキストラン,プルラン,メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)の中から選ばれる1種または2種以上の成分であることを特徴とする請求項8記載のメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項10】
メントールと炭素数18以上の長鎖不飽和脂肪酸のエステルからなる化合物と多価アルコール類とを有効成分として含有することを特徴とするメラニン産生阻害皮膚外用剤。
【請求項11】
多価アルコール類がポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、マルチトールの中から選ばれる1種または2種以上の成分であることを特徴とする請求項10記載のメラニン産生阻害皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−161591(P2007−161591A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355769(P2005−355769)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】