説明

モータ駆動回路とモータ駆動方法およびカメラ

【課題】簡単な構成で負荷に対応したモータ制御を行う。
【解決手段】制御部40は、駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御して、内蔵されているモータ例えばアイリスモータ19を駆動して、アイリス12の開口径を制御する。操作部23のユーザ操作によって設定された撮影モードや露出モード、姿勢検出部29による姿勢検出結果、温度検出部30の温度検出結果等に基づき、アイリスモータ19の負荷が重くなる動作モードであると判別したとき、制御部40はアイリスモータ19で大きいトルクを発生するように駆動パラメータに対する補正を行う。負荷が重くなるときには大きいトルクを発生するように補正が行われるので高精度にアイリス12を制御できる。常に大きなトルクを発生するものでないことから、消費電力を削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ駆動回路とモータ駆動方法およびカメラに関する。詳しくは、駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御してモータを駆動する際に、モータが用いられる機器の動作モードに応じて駆動パラメータに対する補正を行ってモータを駆動するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低振動で低騒音な高速モータ駆動を行うことができるように、特許文献1の発明では、パルス幅変調駆動を行い、パルスのデューティ比を変化させてモータを駆動する技術が開示されている。また、特許文献2の発明では、モーター各相に流れている電流値を検出し、検出出力に応じて高精度にデューティ比制御を行うことが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−54590号公報
【特許文献2】特開平3−57838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パルス幅変調駆動を行いパルスのデューティ比を変化させるものとしたとき、例えば駆動する部材の負荷が軽くなっているとトルクが大きすぎたり、駆動する部材の負荷が重くなっているとトルクが小さすぎたりして、負荷に適したトルクとならない場合が生じる。また、電流値の検出結果に基づいてデューティ比を制御するクローズドループ制御を行うものとすると、回路構成が複雑となりコストが高くなってしまう。
【0005】
そこで、この発明では、簡単な構成で負荷に対応したモータ制御を行うことができるモータ駆動回路とモータ駆動方法およびカメラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るモータ駆動回路は、駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御してモータを駆動するモータ駆動回路において、モータが用いられる機器の動作モードに応じて駆動パラメータに対し補正を行う駆動補正手段を設けたものである。
【0007】
また、この発明に係るモータ駆動方法は、駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御してモータを駆動するモータ駆動方法において、モータが用いられる機器の動作モードに応じて駆動パラメータに対し補正を行うものである。
【0008】
さらに、この発明に係るカメラは、モータを内蔵したカメラにおいて、駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御してモータを駆動するモータ駆動手段と、モータを駆動する際に、カメラの動作モードに応じて、前記駆動パラメータに対し補正を行う駆動補正手段とを有するものである。
【0009】
この発明においては、駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御して、例えばカメラに内蔵されたモータを駆動する際に、カメラの動作モードに応じて駆動パラメータに対する補正が行われる。例えばアイリスが第1の方向である小絞り位置の方向に制御される撮影モードに設定されたとき、アイリスが第2の方向である開放位置の方向に制御される撮影モードよりも、アイリスモータのトルクが大きくなるように駆動パラメータに対して補正が行われる。また、露出精度が必要とされる露出モードに設定されたとき、露出精度が必要とされない露出モードよりもアイリスモータのトルクが大きくなるように駆動パラメータに対して補正が行われる。さらに、温度検出結果に基づきモータの負荷の増加を検出したときや、姿勢検出結果に基づきモータの負荷を増加させる姿勢であることを検出したときには、モータのトルクが大きくなるように駆動パラメータに対して補正が行われる。また、バッテリー残量が予め設定した残量よりも少なくなったことを検出したとき、カメラの消費電流を抑えるように駆動パラメータに対して補正が行われる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御してモータを駆動する際に、モータが用いられる機器の動作モードに応じて駆動パラメータに対する補正が行われる。このため、動作モードに応じてモータの負荷が変動しても、モータを最適に駆動することができる。また、モータを最適に駆動することができるので、不必要に大きなトルクを発生させる必要がなく、駆動電流が最適化されて、消費電流を削減できる。
【0011】
また、カメラに内蔵されたモータ、例えばアイリスモータを駆動する際に、設定された撮影モードに応じて駆動パラメータに対する補正が行われる。例えばアイリスが小絞り方向に制御される撮影モードに設定されたとき、アイリスが開放方向に制御される撮影モードよりも、アイリスモータのトルクが大きくなるように補正される。また、設定された露出モードに応じて駆動パラメータに対する補正が行われる。例えば露出精度が必要とされる露出モードに設定されたとき、アイリスモータのトルクが大きくなるように補正される。このため、精度良くアイリスを駆動できる。また、常に大きなトルクをアイリスモータで発生させる必要がないことから消費電流を削減できる。
【0012】
また、温度検出結果に基づきモータの負荷を増加させる使用温度であることを検出したときや、姿勢検出結果に基づきモータの負荷を増加させる姿勢であることを検出したときは、モータのトルクが大きくなるように補正が行われる。このため、使用状態が変化に応じてモータのトルクを適正に制御することが可能となる。
【0013】
さらに、バッテリー残量が予め設定した残量よりも少なくなったことを検出したとき、カメラの消費電流を抑えてモータで所望のトルクを発生できるように補正が行われるので、カメラの動作可能時間を長くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図を参照しながら、この発明の実施の一形態について説明する。図1は、モータを内蔵したカメラ10の概略構成を示すブロック図である。レンズ群11は、複数のレンズで構成されており、焦点距離が固定あるいは可変のものが用いられる。このレンズ群11は、後述するレンズモータ部18のフォーカスモータによって駆動されて、フォーカス調整動作が行われる。また、焦点距離が可変できるようになされている場合、レンズモータ部18のズームモータによって駆動されて、画角調整動作が行われる。アイリス12は、後述するアイリスモータ19によって駆動されて、開口径が例えば連続的に可変できるようになされている。メカシャッタ13は、撮像部14の入射光路に進退自在な遮光板から成り、後述する制御部40によって制御される。なお、レンズモータ部18やアイリスモータ19に、例えばステッピングモータを用いるものとすれば、可変速制御や位置決め制御を容易に行うことができる。
【0015】
撮像部14は、光電変換素子(フォトセンサ)が2次元的に配列された撮像素子、例えばCCD(Charge Coupled Device)型やMOS(Metal Oxide Semiconductor)型などの撮像素子が用いられる。この撮像素子は、各センサで生成した電荷をシャッターゲートパルスによって掃き捨てて、電荷の蓄積時間を制御できる、所謂電子シャッタ機能を有している。レンズ群11やアイリス12,メカシャッタ13を介して光が入射されて、撮像素子の撮像面に被写体像が結像されと、撮像部14では被写体像に応じた撮像信号を生成してアナログ信号処理部15に供給する。この撮像部14は、後述するタイミングジェネレータ20によって駆動される。
【0016】
アナログ信号処理部15は、撮像部14から供給された撮像信号の増幅やダイナミックレンジの圧縮処理等を行い、A/D変換部16に供給する。A/D変換部16は、アナログ信号処理部15で信号処理が行われた撮像信号をディジタル信号に変換して画像データとしてディジタル信号処理部17に供給する。
【0017】
ディジタル信号処理部17は、供給された画像データに対して、シャープネスやコントラストおよび彩度等調整する画質調整処理、ホワイトバランス調整処理、撮影画像の画像サイズ調整等を行う。このディジタル信号処理部17で得られた画像データは、制御部40を介して後述する表示部24に供給される。なお、表示部24がアナログ信号に基づいて表示を行う場合、画像データはアナログ信号に変換されて表示部24に供給される。また、ディジタル信号処理部17は、撮影画像を後述する記録メディア50に記録したり、外部インタフェース(I/F)36から出力する際に、データ量を少なくするためデータ圧縮処理を行う。さらに、データ圧縮された撮影画像を確認できるようにデータ伸長処理を行い、データ伸長後の画像データを表示部24に供給する。
【0018】
レンズモータ部18は、制御部40からのズームフォーカス制御信号に基づきレンズ群11を駆動して、画角調整動作やフォーカス調整動作を行う。アイリスモータ19は、制御部40からのアイリス駆動信号に基づきアイリス12を駆動して開口径を制御することにより、撮像部14に入射される光量を調整する。タイミングジェネレータ(TG)20は、制御部40から供給された撮像制御信号に基づき、撮像部14で必要とされる種々のタイミング信号を生成して撮像部14に供給して、撮像信号の生成動作を制御する。また、電子シャッタ動作を行う。
【0019】
AF/測光部21は、被写体が暗くてフォーカス調整を行うことが出来ないとき、制御部40からの補助光制御信号に基づき、明るさを補うための補助光を照射する。また、正しく露光制御を行うことができるように、被写体の明るさを測定して測定結果を制御部40に供給する。ストロボ部22は、制御部40からの発光制御信号に基づき、シャッタのタイミングに合わせて発光を行う。
【0020】
操作部23は、ユーザ操作に応じた操作信号を制御部40に供給して、カメラ10の設定、例えば撮影モードや露出モードの設定、撮影画像を記録する際の条件設定、撮影画像の再生指示等を行う。また操作部23には、シャッタスイッチが設けられており、シャッタスイッチの操作に応じた操作信号を制御部40に供給して、被写体の撮影を行う。
【0021】
表示部24は、ディジタル信号処理部17から供給された画像データに基づき画像表示を行い、被写体を撮影するときの構図などを確認するためのモニタ画像や、シャッタスイッチ操作によって撮影された静止画像を表示する。また、記録メディア50に記録された撮影画像を表示して、記録された撮影画像の確認を可能とする。さらに、表示部24は、種々のメニュー表示を行い、メニュー表示に基づいて操作部23を操作することにより、カメラ10の種々の設定を容易に行うことを可能とする。
【0022】
メディアインタフェース(メディアI/F)25は、カメラ10と記録メディア50を接続するためのインタフェースであり、メディアI/F20を介して撮影画像を記録メディア50に記録する。また、記録メディア50に記録されている静止画像を、メディアI/F20を介して読み出し可能とする。記録メディア50は、半導体素子を用いて構成された記録メディアや磁気ディスク等を用いて構成した記録メディアなど種々の形態の記録メディアが用いられる。外部インタフェース(外部I/F)26は、カメラ10に外部機器、例えばコンピュータ装置やプリンタ等の画像出力装置を接続するためのインタフェースである。
【0023】
ROM(Read Only Memory)27は、カメラ10を動作させるためのプログラムを記憶する。また、ROM27として書き換え可能な不揮発性メモリ、例えばEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等が用いられているときには、ユーザが設定した種々の設定情報等を記憶する。
【0024】
RAM(Random Access Memory)28は、撮影画像の画像データを一時格納したり、カメラ10の動作中に用いられる種々のデータ等を一時格納するためのワークメモリである。
【0025】
姿勢検出部29は、傾斜センサ等を用いて構成されており、カメラ10がどのような向きの状態で使用されているかを検出して、検出結果を示す姿勢検出信号を生成して制御部40に供給する。
【0026】
温度検出部30は、モータによって駆動される部材の温度、例えばレンズモータ部18で駆動するレンズ群11やアイリスモータ19で駆動するアイリス12の温度を検出して、検出結果を示す温度検出信号を制御部40に供給する。
【0027】
電源部31は、内蔵されたバッテリーあるいは外部から供給された電力を用いて、カメラ10の各部に対して電源供給を行う。また、電源部31は、バッテリーの残量を検出して検出結果を示す残量検出信号を制御部40に供給する。
【0028】
制御部40は、操作部23からの操作信号に基づいて各部を制御することにより、ユーザ操作に応じてカメラ10を動作させる。例えば、操作部23によって動作開始操作が行われたとき、制御部40はメカシャッタ13によって入射光路を開放して撮像部14を駆動し、表示部24にモニタ画像を表示させる。また、撮影モードや露出モードに応じてアイリス12の制御を切り換える。その後、操作部23のシャッタスイッチが半押し状態とされたときは、レンズ群11を制御してフォーカス調整を行い、被写体に焦点を合わせる。シャッタスイッチが深押し状態とされたときは、撮像部14で電子シャッタによる電荷蓄積を開始して、シャッタ速度に応じた露光期間経過後にメカシャッタ13によって入射光路を遮断する。この露光期間中に蓄積された電荷に基づき撮像信号を生成して、信号処理を行い、得られた撮像画像の画像データを記録メディア50に記録させる。また、制御部40は、AF/測光部21で測定された被写体の明るさに基づき、アイリス12や撮像部14の電子シャッタ機能を制御して、露出が適正となるように露光制御を行う。なお、被写体の明るさは、撮影画像の1画面分の画像データから算出することもできる。
【0029】
また、制御部40は、駆動パラメータを制御してモータを駆動するモータ駆動手段、および、モータを駆動する際にカメラ10の動作モードに応じて、駆動パラメータに対し補正を行う駆動補正手段であり、レンズモータ部18やアイリスモータ19を駆動するための駆動信号を生成するだけでなく、カメラの動作モードに応じて駆動パラメータに対し補正を行って出力する。例えば、ユーザによって設定された撮影モードや露出モードおよびカメラの動作温度や姿勢等に基づき、モータの駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミング等の駆動パラメータに対する補正を行い、モータの駆動動作を動作モードに応じて高精度に制御する。
【0030】
次に、制御部40によるモータ駆動動作、例えばアイリスモータ19を駆動する場合の動作について図2を用いて説明する。図2Aは画像周期を示しており、画像周期FTaでモニタ画像の更新を行うものとする。制御部40は、アイリスモータ19によってアイリス12を駆動する際に、動作モードに応じて駆動パラメータに対する補正を行いアイリスモータ19を駆動する。
【0031】
アイリスモータ19にかかる負荷は、アイリス12の絞り羽根の位置により変化する。例えば開口径を小さくすると絞り羽根間の摩擦等が大きくなり負荷が重くなる。また、アイリス12を駆動したときのばらつきの影響は、開口径が小さい場合に顕著となる。すなわち、開口径が大きいとき、アイリス12の駆動のばらつきにより絞り羽根の位置が変化しても、開口部の面積の変化率が小さい。このため、アイリス12の駆動のばらつきが生じても、撮像部14に入射される光の光量は大きく変化しない。しかし、開口径が小さいときに、アイリス12の駆動のばらつきにより絞り羽根の位置が変化すると、開口部の面積の変化率は大きい。このため、アイリス12の駆動のばらつきによって、撮像部14に入射される光の光量が大きく変化する。このように、開口径が小さくなる小絞り位置では、開口径が大きい開放位置に比べて、負荷が大きくなるだけでなくモータ駆動精度も必要となる。このため、制御部40は、アイリス12が第1の方向すなわち上述のように開口径が小さくなると負荷が大きくなり駆動精度も必要となる小絞り位置の方向となるように制御されるとき、アイリス12が第2の方向すなわち上述のように開口径が大きくなると負荷が小さくなり駆動精度も重視されない開放位置の方向となるように制御されるときよりもトルクを大きくして、精度良くアイリス12を制御できるように駆動パラメータに対して補正を行う。また、制御部40は、アイリス12が開放位置となるように制御されるときは、アイリス12が小絞り位置となるように制御されるときよりもトルクを小さくして消費電流が少なくなるように駆動パラメータに対して補正を行う。
【0032】
ここで、図2Bに示すようにアイリス12が開放位置となるように制御されるときは、図2Cに示すように、駆動パラメータである駆動電圧を「Va」,駆動デューティ比を「DUb」としてアイリスモータ19を駆動する。また、アイリス12が小絞り位置となるように制御されるときは、駆動デューティ比「DUb」よりも大きい駆動デューティ比「DUc」として、アイリスモータ19のオン期間の割合を長くして、アイリスモータ19に通電させる平均電流を増加させる。すなわち、アイリスモータ19のトルクを大きくする。なお、アイリス12を開放位置から小絞り位置に駆動するときには、駆動電圧や駆動デューティ比を大きくすれば、速やかにアイリス12を小絞り位置とすることができる。また、小絞り位置から開放位置に駆動する場合、負荷が小さくなることから、駆動電圧や駆動デューティ比を小さくしても速やかにアイリス12を開放位置とすることができる。
【0033】
図3は、動作モードと駆動パラメータの関係を示している。ユーザによって設定された撮影モードが「ポートレート」に設定された場合、制御部40は被写界深度を浅くして被写体だけにピントが合うように、自動的にアイリス12の開口径が大きくされる。また、「夜景」に設定された場合、カメラ10は撮像部14に入射される光の光量が大きくなるように、自動的にアイリス12の開口径が大きいものとされる。さらに、「夜景+人物」に設定された場合も同様に自動的にアイリス12の開口径が大きいものとされる。一方、「風景」に設定された場合、制御部40は被写界深度を深くして撮影範囲全体にピントが合うよう自動的にアイリス12の開口径が小さいものとされる。また、「AUTO」に設定された場合、撮像部14に入射される光の光量に応じてアイリス12の開口径が自動的に大きくあるいは小さくされる。このため、アイリス12の開口径が大きいものとされる「ポートレート」「夜景」「夜景+人物」のときには駆動デューティ比「DU1」に設定し、アイリス12の開口径が小さくなるような「風景」「AUTO」のときには、駆動デューティ比を「DU1」よりもアイリスモータ19のオン期間が長い駆動デューティ比「DU3」に設定する。このように、アイリス12の開口径が小さくなるような撮影モードのときには、アイリス12の開口径が大きいものとされる撮影モードのときに比べて、トルクが大きくなるように補正を行う。
【0034】
また、ユーザによって設定された露出モードが「A優先(露出優先)」「マニュアル」に設定された場合、ユーザによって設定された露出で撮影が行われる。すなわち、アイリス12は開放位置から小絞り位置の範囲で設定されて露出精度も必要とされる。このため、制御部40は、露出操作に応じてアイリス12の開口径を精度良く速やかに制御できるように、駆動デューティ比を「DU3」とするだけでなく、駆動電圧「V1」よりも高い電圧である駆動電圧「V2」に補正してアイリスモータ19を駆動する。
【0035】
また、制御部40は、ユーザによって設定された撮影モードや露出モードで動作モードを規定したが、カメラ10の使用状態に基づいて動作モードを規定するものとしても良い。例えば、撮影の向きやカメラ10の使用温度で動作モードを規定したときの動作モードと駆動パラメータの関係を図4に示している。なお、アイリスモータ19の負荷は、カメラ10を横向きとして撮影する場合に比べて、縦向きとして撮影する場合の方が大きくなるものとして以下の説明を行う。
【0036】
制御部40は、姿勢検出部29からの姿勢検出信号に基づき、横向き撮影か縦向き撮影かを判別して、負荷が大きい縦向き撮影であるときは、横向き撮影での駆動デューティ比「DU3」よりもアイリスモータ19のオン期間が長い駆動デューティ比「DU4」とする。また、カメラ10の使用温度が高いとき、アイリス12を構成する部材の熱膨張により、アイリスモータの負荷は増大する。このため、制御部40は、温度検出部30からの温度検出信号に基づき高温状態での使用であると判別したときは、高温状態でない(低温下)使用であるときの駆動デューティ比「DU3」よりもアイリスモータ19のオン期間が長い駆動デューティ比「DU4」とする。
【0037】
また、AF/測光部21で補助光の発光を行う場合、補助光の発光タイミングとアイリスモータ19の駆動タイミングが一致すると、カメラ10における消費電流のピーク値が大きくなってしまう。このため、制御部40は、補助光の発光動作を含めた動作モードに応じて駆動パラメータの補正を行い、補助光の発光タイミングとアイリスモータ19の駆動タイミングが一致しないように、アイリスモータ19の駆動動作を制御する。
【0038】
図5は、補助光の発光タイミングとアイリスモータ19の駆動タイミングの関係を示している。なお、図5Aは画像周期を示している。制御部40は、ユーザ操作に基づき補助光の発光が必要と判別したときは、図5Bに示すように、画像周期で発光パルス信号を生成してAF/測光部21に供給する。AF/測光部21は発光パルス信号がハイレベル「H」とされる期間で補助光の発光を行う。また、制御部40は、図5Cに示すように、発光パルス信号がハイレベル「H」とされている期間(ハッチング部分)を除いて、アイリスモータ19を駆動する。すなわち、駆動デューティ比「DUb」よりも小さい駆動デューティ比「DUc」として、アイリスモータ19のオン期間の割合を短くして、発光パルス信号がハイレベル「H」とされる期間が、アイリスモータ19のオフ期間に含まれるようにする。また、駆動デューティ比を低くすると、アイリスモータ19に通電させる平均電流が減少してトルクが小さくなってしまう。このため、補助光の発光が行われるときは、所望のトルクを得ることができるように駆動電圧「Va」よりも高い駆動電圧「Vb」とする。
【0039】
図6は、補助光の発光タイミングとアイリスモータ19の駆動タイミングが一致しないように制御するときの動作モードと駆動パラメータの関係を示している。補助光の発光を行う場合、制御部40は、補助光の発光が行われる期間がアイリスモータ19のオフ期間に含まれるように、補助光の発光が行われない場合の駆動デューティ比「DU3」よりも低い駆動デューティ比「DU2」とする。また、所望のトルクを得ることができるように、補助光の発光が行われない場合の駆動電圧「V1」よりも高い駆動電圧「V2」とする。
【0040】
また、カメラ10の使用温度が高くなったときには、補助光の発光が行われている期間がアイリスモータ19の駆動オフ期間に含まれるように、駆動デューティ比「DU2」に保ち、駆動電圧「V2」より高い駆動電圧「V3」とする。さらに、カメラ10が縦向き撮影とされたときには、駆動デューティ比「DU2」に保ち、駆動電圧「V3」より高い駆動電圧「V4」とする。
【0041】
また、制御部40は、電源部31に設けられた電池から電力供給が行われている場合、電源部31からの電池残量通知によって電池残量が少なくなったことが示されたとき、カメラの消費電流を抑えてモータで所望のトルクを発生できるように駆動パラメータに対する補正を行うものとしても良い。例えば電池残量が少なくなって電源電圧が低下しているときには駆動デューティ比を大きくして所望のトルクを得るものとする。また、消費電流が大きいために電源部31から供給される電力の電圧低下が大きくなってしまうことがないように駆動タイミングを制御する。このように駆動パラメータの補正を行うものとすれば、カメラ10の動作時間を長くできる。
【0042】
さらに、制御部40は、動作モードに応じて駆動パラメータに対する補正をどのように行うかを示す補正制御情報や、動作モードに応じて補正された設定値を予めROM27に記憶しておくものとすれば、制御部40は、動作モードに応じて補正制御情報あるいは設定値を読み出すだけで、容易にアイリスモータ19を最適に駆動することができる。
【0043】
なお、上述の実施の形態では、アイリスモータ19を駆動する場合について説明したが、レンズモータ部18を駆動する場合にも、アイリスモータ19を駆動する場合と同様に動作モードに応じて、駆動パラメータに対する補正を行うことで、精度良く高効率にレンズ群11を駆動できる。例えば、カメラの向きによってフォーカスモータやズームモータの負荷が変化するとき、姿勢検出信号に基づき駆動パラメータの補正を行うことで、フォーカスモータやズームモータのトルクを最適化することができる。また、常に大きなトルクを発生させておく必要がないので、消費電力の削減が可能となり、効率よくレンズ群11を駆動できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係るモータ駆動回路とモータ駆動方法およびカメラは、負荷に応じてモータ例えばアイリスモータ等を簡単な構成で最適に駆動するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】モータを内蔵したカメラの概略構成を示す図である。
【図2】アイリスモータの駆動動作を説明するための図である。
【図3】動作モードと駆動パラメータの関係(その1)を示す図である。
【図4】動作モードと駆動パラメータの関係(その2)を示す図である。
【図5】発光タイミングと駆動タイミングを説明するための図である。
【図6】動作モードと駆動パラメータの関係(その3)を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10・・・カメラ、11・・・レンズ群、12・・・アイリス、13・・・メカシャッタ、14・・・撮像部、15・・・アナログ信号処理部、16・・・A/D変換部、17・・・ディジタル信号処理部、18・・・レンズモータ部、19・・・アイリスモータ、20・・・タイミングジェネレータ(TG)、21・・・AF/測光部、22・・・ストロボ部、23・・・操作部、24・・・表示部、25・・・メディアインタフェース、26・・・外部インタフェース、27・・・ROM、28・・・RAM、29・・・姿勢検出部、30・・・温度検出部、31・・・電源部、40・・・制御部、50・・・記録メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御してモータを駆動するモータ駆動回路において、
前記モータが用いられる機器の動作モードに応じて前記駆動パラメータに対し補正を行う駆動補正手段を設けた
ことを特徴とするモータ駆動回路。
【請求項2】
駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御してモータを駆動するモータ駆動方法において、
前記モータが用いられる機器の動作モードに応じて前記駆動パラメータに対し補正を行う
ことを特徴とするモータ駆動方法。
【請求項3】
モータを内蔵したカメラにおいて、
駆動電圧や駆動デューティ比および駆動タイミングの少なくとも何れかの駆動パラメータを制御して前記モータを駆動するモータ駆動手段と、
前記モータを駆動する際に、前記カメラの動作モードに応じて、前記駆動パラメータに対し補正を行う駆動補正手段とを有する
ことを特徴とするカメラ。
【請求項4】
前記カメラの動作設定操作が行われる操作手段を備え、
前記モータ駆動手段は、アイリスモータを駆動し、
前記駆動補正手段は、前記操作手段によって設定された撮影モードに応じた補正を行う
ことを特徴とする請求項3記載のカメラ。
【請求項5】
前記駆動補正手段は、前記操作手段によってアイリスが第1の方向に制御される撮影モードに設定されたとき、前記アイリスが第2の方向に制御される撮影モードよりも、前記アイリスモータのトルクが大きくなるように補正を行う
ことを特徴とする請求項4記載のカメラ。
【請求項6】
前記カメラの動作設定操作が行われる操作手段を備え、
前記モータ駆動手段は、アイリスモータを駆動し、
前記駆動補正手段は、前記操作手段によって設定された露出モードに応じた補正を行う
ことを特徴とする請求項3記載のカメラ。
【請求項7】
前記駆動補正手段は、前記操作手段によって露出精度が必要とされる露出モードに設定されたとき、前記アイリスモータのトルクが大きくなるように補正を行う
ことを特徴とする請求項6記載のカメラ。
【請求項8】
温度検出手段を設け、
前記駆動補正手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づき前記モータの負荷を増加させる使用温度であることを検出したとき、前記モータのトルクが大きくなるように補正を行う
ことを特徴とする請求項3記載のカメラ。
【請求項9】
姿勢検出手段を設け、
前記駆動補正手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づき前記モータの負荷を増加させる姿勢であることを検出したとき、前記モータのトルクが大きくなるように補正を行う
ことを特徴とする請求項3記載のカメラ。
【請求項10】
バッテリー残量検出手段を設け、
前記駆動補正手段は、前記バッテリー残量検出手段の検出結果に基づき、前記バッテリー残量が予め設定した残量よりも少なくなったことを検出したとき、前記カメラの消費電流を抑えて前記モータで所望のトルクを発生できるように補正を行う
ことを特徴とする請求項3記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−42439(P2006−42439A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216032(P2004−216032)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】