説明

ラップドVベルトの加硫方法及びラップドVベルトの加硫装置

【課題】リング金型の組立及び解体という高負荷の作業を廃止し、作業負荷の飛躍的な軽減と製造効率の飛躍的な向上とを図る。
【解決手段】外被布で周囲が覆われた環状のベルト100を加硫してラップドVベルトを製造する。ベルト装着領域50aでは、駆動ドラム11aの外周において軸方向に沿って螺旋状に連続して延びるよう形成されたV状溝26に対して未加硫状態のベルト100が嵌め込まれ、一対のドラム11にベルト100が架け渡されるように装着される。一対のドラム11の軸間距離が調整され、ベルト100に張力が付与される。加硫領域50bでは、駆動手段16によって駆動ドラム11aが回転駆動されて軸方向に移動するベルト100が、加熱手段14によって加熱されて加硫される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外被布で周囲が覆われた環状のベルトを加硫してラップドVベルトを製造する、ラップドVベルトの加硫方法及びラップドVベルトの加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップドVベルトは、外被布で周囲が覆われた環状のベルトを加硫して製造する必要があるため、加硫に際しては、ベルトが収容されるV状断面に形成されたV状溝が設けられた金型が用いられる。このような金型を用いてラップドVベルトの製造を行うラップドVベルトの加硫方法及び加硫装置として、特許文献1に開示された加硫方法及び加硫装置が知られている。特許文献1においては、リング金型を並べて配置するとともに隣接するリング金型の外周部に形成されたV状溝に未加硫状態のベルトを収容し、この作業を繰り返して順次積み重ねたリング金型を固定し、この状態で加硫缶内において加硫することで、ラップドVベルトの加硫を行う加硫方法及び加硫装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−36242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたラップドVベルトの加硫方法及び加硫装置では、上述のように、複数のリング金型を並べて組み立てるとともに隣接するリング金型の外周部に形成されたV状溝に未加硫状態のベルトを1本1本取り付ける作業が必要となる。このため、加硫に際しては、ベルトを取り付けながらリング金型を組み立てるという負荷の高い作業が必要となり、相当な手間や作業時間を要し、工数の増大を招いてしまうことになる。そして、加硫が終了した後においても、組み立てたリング金型を解体するとともに加硫されたラップドVベルトを1本1本取り外すという負荷の高い作業が発生し、相当な手間や作業時間を要し、更なる工数の増大を招いてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、リング金型の組立及び解体という高負荷の作業を廃止することができ、作業負荷の飛躍的な軽減と製造効率の飛躍的な向上とを図ることができるラップドVベルトの加硫方法及び加硫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1発明に係るラップドVベルトの加硫方法は、外被布で周囲が覆われた環状のベルトを加硫してラップドVベルトを製造する、ラップドVベルトの加硫方法であって、前記ベルトが架け渡されるように装着される一対のドラムと、前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムを回転駆動する駆動手段と、前記一対のドラムに装着された前記ベルトを加熱して加硫する加熱手段と、を有するラップドVベルトの加硫装置を用いる。そして、第1発明のラップドVベルトの加硫方法は、前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムの外周においてドラムの軸方向に沿って螺旋状に連続して延びるV状断面の溝として形成されたV状溝に対して未加硫状態の前記ベルトの内周側を嵌め込むとともに、当該ベルトを前記一対のドラムに架け渡すように装着するベルト装着工程と、前記ベルトが装着された前記一対のドラムの軸間距離を調整し、前記ベルトに張力を付与する張力付与工程と、前記駆動手段により前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムを回転駆動することで前記ベルトを前記一対のドラムの軸方向に沿って移動させるとともに、移動している前記ベルトを前記一対のドラムの軸方向における所定の長さの領域である加硫領域に沿って配置された前記加熱手段によって加熱して加硫を行う加硫工程と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によると、V状溝にベルトの内周側を嵌め込んだ状態でこのベルトを一対のドラムに架け渡すことで加硫装置に未加硫状態のベルトの装着を容易に行うことができる。そして、ベルト装着工程の後は、一対のドラムの軸間距離を調整してベルトに張力を付与し、ドラムを回転駆動することで、螺旋状に延びるとともにベルトとの接触面積が多く確保されたV状溝からの摩擦力によってベルトを順次送り込むことができる。また、ドラムを回転駆動しながら、ドラムの軸方向に沿って配置された加熱手段によって自動で連続してベルトの加硫を行うことができる。さらに、V状溝に嵌め込まれた状態でベルトの加硫が行われるため、連続加硫であっても、このV状溝によってベルトの外観形状を正確に型付けすることができる。このため、この加硫方法によると、そもそもリング金型が必要なく、ラップドVベルトの加硫を自動で連続して行うことができる。従って、本発明によると、リング金型の組立及び解体という高負荷の作業を廃止することができ、作業負荷の飛躍的な軽減を図ることができる。また、本発明によると、自動で連続して加硫を行うことができるため、製造効率の飛躍的な向上も図ることができる。
【0008】
第2発明に係るラップドVベルトの加硫方法は、第1発明のラップドVベルトの加硫方法において、前記一対のドラムに装着された前記ベルトの外周側に押し付けられることで前記ベルトを加圧する環状のベルト部材を有し、前記一対のドラムの回転とともに前記ベルト部材が回転するベルト加圧手段を更に備える前記加硫装置を用い、前記加硫工程において、前記加硫領域に沿って配置された前記ベルト加圧手段によって加圧されている前記ベルトに対し、前記加熱手段による加熱が行われることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、加硫工程において、ドラムとともに回転するベルト部材を有するベルト加圧手段によって、ベルトの外周側が加圧される。このため、連続して加硫が行われるベルトに対して、ドラムとベルト加圧手段とによって加硫中の加圧を行うことができる。これにより、作業負荷の飛躍的な軽減と製造効率の飛躍的な向上とが図られた加硫方法において、更に、加硫後のゴム組織においてより均質でむらの少ないラップドVベルトの製造を実現することができる。
【0010】
第3発明に係るラップドVベルトの加硫方法は、第1発明又は第2発明のラップドVベルトの加硫方法において、前記一対のドラムのうちの一方のドラムは、前記V状溝が形成されるとともに前記駆動手段によって駆動される駆動ドラムとして設けられ、前記一対のドラムのうちの他方のドラムは、外周が平坦な円柱状に形成されるとともに前記駆動ドラムの回転に伴って前記ベルトを介して駆動される従動ドラムとして設けられていることを特徴とする。
【0011】
この発明によると、一方の駆動ドラムにV状溝が形成されているため、V状溝に嵌め込まれたベルトに対して駆動ドラムからの回転力がより確実に伝達され、ベルトが順次送り込まれる。そして、他方の従動ドラムは平坦な円柱状に形成されているため、ベルトの回転に伴って従動ドラムが円滑に回転し、従動ドラムとベルトとの間で作用する摩擦力によって駆動ドラムからベルトへの回転力の伝達に影響が生じてしまうことを抑制できる。このため、駆動ドラムの回転とベルトの回転とにずれがほとんど生じることなく、ドラムの軸方向におけるベルトの移動をより正確に制御し、ラップドVベルトの加硫条件をより正確に制御することができる。また、V状溝が形成された駆動ドラムの回転とベルトの回転とにずれがほとんど生じないため、ベルトの外観形状の型付けをより正確に行うことができる。
【0012】
第4発明に係るラップドVベルトの加硫方法は、第1発明乃至第3発明のいずれかのラップドVベルトの加硫方法において、前記ベルト装着工程において未加硫状態の複数本の前記ベルトが前記一対のドラムに装着され、前記加硫工程において複数本の前記ベルトの加硫が同時に行われることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、ベルト装着工程においてドラムに装着された複数本のベルトに対して、加硫工程において加硫を同時に連続して行うことができる。このため、複数本のラップドVベルトを自動で連続して加硫することができ、更なる製造効率の向上を図ることができる。
【0014】
第5発明に係るラップドVベルトの加硫方法は、第1発明乃至第4発明のいずれかのラップドVベルトの加硫方法において、前記加硫工程の後に、前記加熱手段により加熱が行われた前記ベルトを前記ベルトの移動方向における前記加硫領域の下流側に配置された冷却領域で冷却する冷却工程と、前記冷却工程で冷却された前記ベルトを前記冷却領域から排出するベルト排出工程と、を更に備えていることを特徴とする。
【0015】
この発明によると、加硫工程が終了した後に、加熱されたベルトを加硫領域の下流側の冷却領域においてそのまま連続して冷却することができ、更に、冷却工程が終了した後は、そのままベルトを冷却領域から連続して排出することができる。このため、一対のドラムにベルトを装着して張力を付与した後は、加硫工程、冷却工程、及びベルト排出工程を自動で連続して処理することができ、更なる製造効率の向上を図ることができる。
【0016】
また、前述の目的を達成するための第6発明に係るラップドVベルトの加硫装置は、外被布で周囲が覆われた環状のベルトを加硫してラップドVベルトを製造する、ラップドVベルトの加硫装置であって、前記ベルトが架け渡されるように装着される一対のドラムと、前記ベルトが装着された前記一対のドラムの軸間距離を調整し、前記ベルトに張力を付与する張力付与手段と、前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムを回転駆動する駆動手段と、前記一対のドラムに装着された前記ベルトを加熱して加硫する加熱手段と、を備えている、そして、第5発明に係るラップドVベルトの加硫装置は、前記一対のドラムは、その少なくとも一方のドラムの外周においてドラムの軸方向に沿って螺旋状に連続して延びるV状断面の溝として形成されるとともに、前記ベルトの内周側が嵌め込まれるV状溝が設けられ、前記駆動手段は、前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムを回転駆動することで前記ベルトを前記一対のドラムの軸方向に沿って移動させ、前記加熱手段は、前記一対のドラムの軸方向における所定の長さの領域である加硫領域に沿って配置され、前記一対のドラムの軸方向に沿って移動している前記ベルトを加熱して加硫すること特徴とする。
【0017】
この発明によると、V状溝にベルトの内周側を嵌め込んだ状態でこのベルトを一対のドラムに架け渡すことで加硫装置に未加硫状態のベルトの装着を容易に行うことができる。そして、ベルトを装着した後は、一対のドラムの軸間距離を調整してベルトに張力を付与し、ドラムを回転駆動することで、螺旋状に延びるとともにベルトとの接触面積が多く確保されたV状溝からの摩擦力によってベルトを順次送り込むことができる。また、ドラムを回転駆動しながら、ドラムの軸方向に沿って配置された加熱手段によって自動で連続してベルトの加硫を行うことができる。さらに、V状溝に嵌め込まれた状態でベルトの加硫が行われるため、連続加硫であっても、このV状溝によってベルトの外観形状を正確に型付けすることができる。このため、この加硫装置によると、そもそもリング金型が必要なく、ラップドVベルトの加硫を自動で連続して行うことができる。従って、本発明によると、リング金型の組立及び解体という高負荷の作業を廃止することができ、作業負荷の飛躍的な軽減を図ることができる。また、本発明によると、自動で連続して加硫を行うことができるため、製造効率の飛躍的な向上も図ることができる。
【0018】
第7発明に係るラップドVベルトの加硫装置は、第6発明のラップドVベルトの加硫装置において、前記一対のドラムに装着された前記ベルトの外周側に押し付けられることで前記ベルトを加圧する環状のベルト部材を有し、前記一対のドラムの回転とともに前記ベルト部材が回転するベルト加圧手段を更に備え、前記加硫領域に沿って配置された前記ベルト加圧手段によって加圧されている前記ベルトに対し、前記加熱手段が加熱を行うことを特徴とする。
【0019】
この発明によると、加硫中において、ドラムとともに回転するベルト部材を有するベルト加圧手段によって、ベルトの外周側が加圧される。このため、連続して加硫が行われるベルトに対して、ドラムとベルト加圧手段とによって加硫中の加圧を行うことができる。これにより、作業負荷の飛躍的な軽減と製造効率の飛躍的な向上とを図ることができる加硫装置において、更に、加硫後のゴム組織においてより均質でむらの少ないラップドVベルトの製造を実現することができる。
【0020】
第8発明に係るラップドVベルトの加硫装置は、第6発明又は第7発明のラップドVベルトの加硫装置において、前記一対のドラムのうちの一方のドラムは、前記V状溝が形成されるとともに前記駆動手段によって駆動される駆動ドラムとして設けられ、前記一対のドラムのうちの他方のドラムは、外周が平坦な円柱状に形成されるとともに前記駆動ドラムの回転に伴って前記ベルトを介して駆動される従動ドラムとして設けられていることを特徴とする。
【0021】
この発明によると、一方の駆動ドラムにV状溝が形成されているため、V状溝に嵌め込まれたベルトに対して駆動ドラムからの回転力がより確実に伝達され、ベルトが順次送り込まれる。そして、他方の従動ドラムは平坦な円柱状に形成されているため、ベルトの回転に伴って従動ドラムが円滑に回転し、従動ドラムとベルトとの間で作用する摩擦力によって駆動ドラムからベルトへの回転力の伝達に影響が生じてしまうことを抑制できる。このため、駆動ドラムの回転とベルトの回転とにずれがほとんど生じることなく、ドラムの軸方向におけるベルトの移動をより正確に制御し、ラップドVベルトの加硫条件をより正確に制御することができる。また、V状溝が形成された駆動ドラムの回転とベルトの回転とにずれがほとんど生じないため、ベルトの外観形状の型付けをより正確に行うことができる。
【0022】
第9発明に係るラップドVベルトの加硫装置は、第6発明乃至第8発明のいずれかのラップドVベルトの加硫装置において、前記一対のドラムには、前記ベルトの移動方向における前記加硫領域の上流側に配置され、前記加硫領域へ投入される未加硫状態の複数本の前記ベルトが装着されるベルト装着領域と、前記加硫領域の下流側に配置され、前記加熱手段により加熱が行われた前記ベルトが前記加硫領域から排出されるベルト排出領域と、が設けられていることを特徴とする。
【0023】
この発明によると、ドラムにおけるベルト装着領域に装着された複数本のベルトに対して、加硫領域において加硫を同時に連続して行うことができる。そして、ドラムにおいて加硫領域の下流側にベルト排出領域が設けられているため、加硫が終了したベルトをそのまま連続して排出することができる。このため、複数本のラップドVベルトを自動で連続して加硫しながら排出することができ、更なる製造効率の向上を図ることができる。
【0024】
第10発明に係るラップドVベルトの加硫装置は、第9発明のラップドVベルトの加硫装置において、前記一対のドラムには、前記ベルトの移動方向における前記加硫領域の下流側に配置され、前記加熱手段により加熱が行われた前記ベルトを冷却する冷却領域が更に設けられ、前記ベルトの移動方向における上流側から下流側に沿って、前記ベルト装着領域、前記加硫領域、前記冷却領域、及び前記ベルト排出領域が、この順番で連続して配置されていることを特徴とする。
【0025】
この発明によると、複数本のベルトを一対のドラムに装着して張力を付与した後は、複数本のベルトに対して加硫領域にて加硫を連続して行い、更に、加硫領域で加熱されたベルトを下流側の冷却領域でそのまま連続して冷却することができる。そして、冷却が終了したベルトについてもそのまま連続して排出することができる。このため、複数本のベルトに対して、加硫、冷却、排出を自動で連続して行うことができ、更なる製造効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、リング金型の組立及び解体という高負荷の作業を廃止することができ、作業負荷の飛躍的な軽減と製造効率の飛躍的な向上とを図ることができるラップドVベルトの加硫方法及び加硫装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。尚、本発明の実施形態に係るラップドVベルトの加硫装置及びラップドVベルトの加硫方法は、外被布で周囲が覆われた環状のベルトを加硫してラップドVベルトを製造する際に、広く適用することができるものである。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態に係るラップドVベルトの加硫装置1(以下、単に「加硫装置1」ともいう)を示す正面図であり、図2は、加硫装置1の平面図である。図1及び図2に示すように、加硫装置1は、一対のドラム11、投入側支持機構12、排出側支持機構13、加熱機構(加熱手段)14、冷却機構15、電動機(駆動手段)16、張力付与機構(張力付与手段)17、ベルト加圧機構(ベルト加圧手段)18、投入用支持ユニット19、排出用支持ユニット20等を備えて構成されている。尚、図1及び図2においては、一部の構成要素を破線で図示している。
【0029】
図1によく示すように、一対のドラム11は、軸方向が平行に配置されて長く延びる駆動ドラム11aと従動ドラム11bとを備えて構成されており、各ドラム(11a、11b)の両端部が投入側支持機構12及び排出側支持機構13によってそれぞれ回転自在に支持されている。駆動ドラム11aは、排出側支持機構13において支持された端部にて電動機16が連結されており、この電動機16の運転が行われることにより回転駆動されるように構成されている。また、駆動ドラム11aの外周には、一対のドラム11の一部を切欠き状態で拡大して示す図3によく示すように、駆動ドラム11aの軸方向に沿って螺旋状に連続して延びるV状断面の溝として形成されたV状溝26が設けられている。一方、従動ドラム11bは、外周が平坦な円柱状に形成されており、駆動ドラム11aの回転に伴って後述するベルト100を介して駆動されるように構成されている。
【0030】
また、図3に示すように、一対のドラム11には、環状のベルト100が、駆動ドラム11aと従動ドラム11bとに懸架された状態で、架け渡されるように装着される。図4は、駆動ドラム11aの軸方向における外周近傍の断面の一部をベルト100の断面とともに示した図である。この図4に示すように、ベルト100は、ゴム部材の周囲が外被布であるカバー帆布100aで覆われた(カバー巻きされた)環状のベルトとして構成されている。このベルト100は、カバー帆布100aの内部において、伸張ゴム層100b、心線層100c、及び圧縮ゴム層100dが積層状態で形成されている。伸張ゴム層100bは環状のベルト100における外周側に、圧縮ゴム層100dはベルト100の内周側に、心線層100cは伸張ゴム層100bと圧縮ゴム層100dとの間に配置されている。このベルト100の断面は、内周側が窄まった略台形状のV状断面となるように形成されている。そして、ベルト100は、その内周側がV状溝26に嵌め込まれた状態で、一対のドラム11に装着される(図3、図4参照)。尚、このベルト100は、後述するように、未加硫の状態で一対のドラム11に装着されてこの一対のドラム11の軸方向に移動しながら加硫される。これにより、ラップドVベルトが製造されることになる。
【0031】
また、軸方向に長く形成された一対のドラム11には、図1に示すように、その軸方向に沿って(ベルト100の移動方向における上流側から下流側に沿って)、ベルト装着領域50a、加硫領域50b、冷却領域50c、及びベルト排出領域50dが、この順番で連続して配置されるように設けられている。加硫領域50bは、加熱機構14及びベルト加圧機構18が配置され、一対のドラム11の軸方向における所定の長さの領域でベルト100の加硫が行われる領域として設けられている。ベルト装着領域50aは、ベルト100の移動方向(図1において矢印Aで示す方向)における加硫領域50bの上流側に配置された領域として設けられている。このベルト装着領域50aにおいて、加硫領域50bに投入される未加硫状態の複数本のベルト100が装着される(図3、図7参照)。また、冷却領域50cは、冷却機構15が配置され、ベルト100の移動方向における加硫領域50bの下流側で加硫領域50bに隣接した領域であって、加熱機構14により加熱が行われて加硫が終了したベルト100の冷却が行われる領域として設けられている。また、ベルト排出領域50dは、ベルト100の移動方向における加硫領域50b及び冷却領域50cの下流側で一対のドラム11における最下流側に配置された領域として設けられている。そして、このベルト排出領域50dにおいて、加熱機構14による加熱と冷却機構15による冷却とが行われたベルト100が加硫領域50b及び冷却領域50cから排出されることになる。
【0032】
図1において破線で示す電動機16は、前述のように、排出側支持機構13に配置されるとともに一対のドラム11のうちの一方の駆動ドラム11aの端部に連結され、この駆動ドラム11aを回転駆動する本実施形態の駆動手段を構成している。そして、電動機16は、駆動ドラム11aのV状溝26の螺旋方向に対応した所定の回転方向に駆動ドラム11aを回転駆動することで、V状溝26に嵌め込まれた状態で一対のドラム11に装着されたベルト100をこの一対のドラム11の軸方向に沿って移動させるように構成されている。また、本実施形態では、駆動ドラム11aのV状溝26は、ベルト装着領域50a、加硫領域50b、及び冷却領域50cに対応する位置において形成され、ベルト排出領域50dに対応する位置には形成されていない。このため、電動機16によって駆動ドラム11aが回転駆動されると、ベルト100は、ベルト装着領域50aから冷却領域50cまでは駆動ドラム11aの回転速度に応じて一定の速度で移動し、ベルト排出領域50dに排出された後は滞留することになる。尚、ベルト排出領域50dの長さを十分に長く確保することで、このベルト排出領域50dにもV状溝26を形成するように構成することもできる。
【0033】
図1に示す張力付与機構17は、投入側支持機構12に配置されたシリンダ装置17aと、排出側支持機構13に配置されたシリンダ装置17bとを備えて構成されている。シリンダ装置17aは、投入側支持機構12における投入側支持ハウジング21に対して従動ドラム11bの高さ方向の位置を変更可能に構成され、例えば、油圧シリンダ装置として設けられている。また、シリンダ装置17bは、排出側支持機構13における排出側支持ハウジング23に対して従動ドラム11bの高さ方向の位置を変更可能に構成され、例えば、油圧シリンダ装置として設けられている。一方、駆動ドラム11aは、投入側支持ハウジング21及び排出側支持ハウジング23に対して高さ方向の位置が固定されている。これにより、シリンダ装置17a及びシリンダ装置17bは、駆動ドラム11aと従動ドラム11bとの距離(一対のドラム11の軸間距離)を調整できるように構成されている。
【0034】
また、張力付与機構17において、シリンダ装置17aとシリンダ装置17bとは、図示しない制御装置からの指令に基づいて同量のストローク分を同期して変位するように制御される。これにより、シリンダ装置(17a、17b)が作動して一対のドラム11の軸間距離が変化する際には、駆動ドラム11aと従動ドラム11bとが平行な状態に維持されるように構成されている。そして、シリンダ装置(17a、17b)が上記のように構成されていることで、張力付与機構17は、ベルト100が装着された一対のドラム11の軸間距離を調整し、ベルト100に張力を付与する本実施形態の張力付与手段を構成している。尚、張力付与機構17が一対のドラム11を離間させる方向に上記軸間距離を調整することで、ベルト100に付与される張力が増すことになる。
【0035】
図5は、図1のB−B線矢視位置における断面を模式的に示したものである。尚、図5では、一対のドラム11に対して装着されたベルト100が加硫領域50bにまで移動した状態を示している。図1及び図5に示す加熱機構14は、一対のドラム11に装着されてその軸方向に沿って移動しているベルト100を加熱して加硫する本実施形態の加熱手段を構成しており、外部ヒータ27とスチーム加熱空間28とで構成されている。
【0036】
図5に示す加熱機構14の外部ヒータ27は、図示しない電源から供給される電力によって発熱し、輻射熱を放射することで、一対のドラム11に装着されたベルト100を後述のスチールベルト32を介して加熱する発熱体として構成されている。そして、外部ヒータ27は、駆動ドラム11aに対して所定の空隙を介して加硫領域50bに沿って延びるように配置されるとともに、駆動ドラム11aの周方向に沿ってその一部を覆うように配置されている。ベルト100は、駆動ドラム11aの回転に伴って駆動ドラム11aの軸方向に移動する際に、駆動ドラム11aと外部ヒータ27との間を通過した部分が、外部ヒータ27によって加熱されることになる。尚、後述するように、外部ヒータ27と移動するベルト100との間には、スチールベルト32が配置されており、外部ヒータ27からの輻射熱はスチールベルト32を加熱し、このスチールベルト32からの熱伝導によってベルト100が加熱されることになる。
【0037】
図5に示す加熱機構14のスチーム加熱空間28は、駆動ドラム11aにおいて加硫領域50bに沿って配置された内部空間として設けられている。駆動ドラム11aには加硫領域50bにおいて中空部が形成されており、この中空部に高温の加熱蒸気が導入されることで、スチーム加熱空間28が構成されている。また、図2に示すように、加硫装置1においては加熱蒸気供給源としてのボイラー25が備えられており、このボイラー25から供給される加熱蒸気がフレキシブル配管25a及び投入側支持機構12を経てスチーム加熱空間28へと導入されるように構成されている。尚、駆動ドラム11a内においては、加硫領域50bと冷却領域50cとは連通しないように仕切られており、加熱蒸気が冷却領域50cに導入されないように構成されている。このようにスチーム加熱空間28が設けられていることで、ベルト100は、駆動ドラム11aの回転に伴って駆動ドラム11aの軸方向に移動する際に、駆動ドラム11aと接触している部分が、駆動ドラム11aを介した熱伝導によって加熱されることになる。
【0038】
図1及び図5に示すベルト加圧機構18は、本実施形態のベルト加圧手段を構成しており、加熱機構14とともに加硫領域50bに沿って配置されている。尚、ベルト加圧機構18は、加熱機構14とともに、加硫領域50bにおいて設置された加硫部ハウジング33に配置されている。そして、ベルト加圧機構18は、テンションロール29、一対のガイドロール(30、31)、及びスチールベルト32を備えて構成されている。
【0039】
図5に示すベルト加圧機構18のテンションロール29は、駆動ドラム11aの上方に配置されており、図示しない油圧シリンダに対して回転自在に取り付けられ、この油圧シリンダを介して加硫部ハウジング33に支持されている。そして、テンションロール29は、油圧シリンダの作動によって上下方向(図5において両端矢印Cで示す方向)に変位し、駆動ドラム11aに対して接近し又は離間するように構成されている。一対のガイドロール(30、31)は、駆動ドラム11aの側方の両側に配置され、加硫部ハウジング33において回転自在に支持されている。
【0040】
図5に示すベルト加圧機構18のスチールベルト32は、鋼製のベルト部材であって、テンションロール29及び一対のガイドルール(30、31)に架け渡される環状のベルト部材として設けられている。このスチールベルト32は、駆動ドラム11aの外周の一部に沿うように配置されるとともに、テンションロール29、一対のガイドロール(30、31)、及び外部ヒータ27が内側に位置するように配置されている。これにより、スチールベルト32は、テンションロール29が駆動ドラム11aから離間する方向に変位することで、一対のドラム11に装着されたベルト100の外周側に押し付けられるように構成されている。そして、スチールベルト32がベルト100の外周側に押し付けられることで駆動ドラム11aとの間でベルト100が加圧されることになる。また、スチールベルト32がベルト100を加圧した状態では、一対のドラム11の回転とともにスチールベルト32も回転することになる。即ち、図5に示すように、駆動ドラム11aが矢印D方向に回転すると、ベルト100を介した摩擦力によって、スチールベルト32が矢印E方向に周回するとともに、テンションロール29及び一対のガイドロール(30、31)が矢印F方向に回転することになる。尚、加硫装置1においては、上述したベルト加圧機構18が加硫領域50bに配置されているため、ベルト加圧機構18によって加圧されているベルト100に対し、加熱機構14が加熱を行うように構成されている。
【0041】
図1に示す冷却機構15は、冷却ファン15aを備え、冷却領域50cにおいて、加硫が終了したベルト100の冷却を行うように構成されている。一対のドラム11の回転とともに加硫領域50bから下流側に移動してきたベルト100は、冷却ファン15aによる送風によって空冷されることになる。
【0042】
図1及び図2に示す投入側支持機構12は、駆動ドラム11a及び従動ドラム11bをそれぞれ回転自在に支持する投入側支持ハウジング21と、投入側支持ハウジング21に連結されているとともに自走して移動可能な移動台車22とを備えて構成されている。投入側支持ハウジング21は、一対のドラム11と平行な方向に延びるガイドレール21aに沿って移動可能に構成されている。そして、加硫装置1による加硫が行われる際には、投入側支持ハウジング21は、一対のドラム11に連結されてこの一対のドラム11を支持した状態でガイドレール21a上での位置がロックされるように構成されている。一方、加硫装置1にベルト100を投入するために一対のドラム11に対してベルト100が装着される際には、投入側支持ハウジング21と一対のドラム11との連結が解除されるとともに前述のロックも解除され、移動台車22によって投入側支持ハウジング21が移動するように構成されている。これにより、一対のドラム11に対して環状のベルト100を装着することができるようになっている。
【0043】
図1及び図2に示す投入用支持ユニット19は、ベルト100を加硫装置1に投入する際に一対のドラム11を支持するために設けられている。そして、投入用支持ユニット19は、一対のドラム11と垂直な方向に延びるガイドレールに沿って移動可能な移動台部19aと、一対のドラム11を介して移動台部19aと反対側に固定された固定台部19bとを備えて構成されている。この投入用支持ユニット19は、移動台部19aが固定台部19bに接近して連結されることで、駆動ドラム11aと従動ドラム11bとを支持することができるように構成されている。このため、一対のドラム11にベルト100を装着するために投入側支持ハウジング21と一対のドラム11との連結が解除された際に、投入用支持ユニット19によって一対のドラム11が支持されることになる。
【0044】
図1及び図2に示す排出側支持機構13は、駆動ドラム11a及び従動ドラム11bをそれぞれ回転自在に支持する排出側支持ハウジング23と、排出側支持ハウジング23に連結されているとともに自走して移動可能な移動台車24とを備えて構成されている。排出側支持ハウジング23は、一対のドラム11と平行な方向に延びるガイドレール23aに沿って移動可能に構成されている。そして、加硫装置1による加硫が行われる際には、排出側支持ハウジング23は、一対のドラム11に連結されてこの一対のドラム11を支持した状態でガイドレール23a上での位置がロックされるように構成されている。一方、加硫装置1におけるベルト排出領域50dから更にベルト100を排出するために一対のドラム11からベルト100を取り外す際には、排出側支持ハウジング23と一対のドラム11との連結が解除されるとともに前述のロックも解除され、移動台車24によって排出側支持ハウジング23が移動するように構成されている。これにより、一対のドラム11から環状のベルト100を取り外すことができるようになっている。
【0045】
図1及び図2に示す排出用支持ユニット20は、ベルト100を加硫装置1から排出する際に一対のドラム11を支持するために設けられている。そして、排出用支持ユニット20は、一対のドラム11と垂直な方向に延びるガイドレールに沿って移動可能な移動台部20aと、一対のドラム11を介して移動台部20aと反対側に固定された固定台部20bとを備えて構成されている。この排出用支持ユニット20は、移動台部20aが固定台部20bに接近して連結されることで、駆動ドラム11aと従動ドラム11bとを支持することができるように構成されている。このため、一対のドラム11からベルト100を取り外すために排出側支持ハウジング23と一対のドラム11との連結が解除された際に、排出用支持ユニット20によって一対のドラム11が支持されることになる。
【0046】
次に、本発明の実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法について説明する。本実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法は、上述した本実施形態に係るラップドVベルトの加硫装置1を用いて行われる。即ち、加硫装置1が作動することで、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法が実施されることになる。
【0047】
図6は、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法を説明する図であって、加硫装置1によってベルト100を加硫してラップドVベルトを製造する工程を示す工程図である。この図6に示すように、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法は、ベルト装着工程S101、張力付与工程S102、加硫工程S103、冷却工程S104、ベルト排出工程S105を備えて構成されている。
【0048】
図7は、加硫装置1の正面図を一部拡大して示したものであり、ベルト装着工程S101及び張力付与工程S102が完了した加硫装置1の状態を示したものである。ベルト装着工程S101においては、まず、投入用支持ユニット19の移動台部19aと固定台部19bとが連結されて一対のドラム11が支持された状態で、投入側支持ハウジング21と一対のドラム11との連結が解除される(図2参照)。次いで、駆動ドラム11aに形成されたV状溝26に対して未加硫状態のベルト100の内周側が嵌め込まれるとともに、このベルト100が一対のドラム11に対してベルト装着領域50aにおいて架け渡されるように装着される。そして、ベルト100の装着が終了すると、投入側支持ハウジング21が一対のドラム11と連結され、投入用支持ユニット19の移動台部19aと固定台部19bとの連結が解除されて移動台部19aが一対のドラム11から退避した位置に移動することになる。尚、ベルト装着工程S101においては、図7に示すように、未加硫状態の複数本のベルト100が一対のドラム11に対して装着される。
【0049】
ベルト装着工程S101が終了すると、張力付与工程S102においては、張力付与機構17におけるシリンダ装置(17a、17b)が作動し、駆動ドラム11aに対して従動ドラム11bが離間する方向に所定の距離だけ変位するように、ベルト100が装着された一対のドラム11の軸間距離が調整される。これにより、ベルト100に対して所定の大きさの張力が付与されることになる。
【0050】
張力付与工程S102が終了すると、次に、加硫工程S103が行われる。加硫工程S103が開始されると、ベルト加圧機構18において、テンションロール29が駆動ドラム11aに対して離間する方向に(上方に)変位し、スチールベルト32における一対のガイドロール(30、31)間に配置された部分が駆動ロール11aに対して押し付けられる(図5参照)。そして、加熱機構14において、外部ヒータ27へ通電が行われ、スチールベルト32を介した駆動ドラム11aの上面側の加熱が開始される。また、加熱機構14においては、ボイラー25から供給された加熱蒸気がスチーム加熱空間28へと導入され、駆動ドラム11aの内部からの加熱も開始される。
【0051】
また、加硫工程S103においては、電動機16の運転も開始されて、駆動ドラム11aが回転駆動される。そして、駆動ドラム11aの回転とともに、張力が付与されたベルト100を介して摩擦力によって従動ドラム11bも回転し、螺旋状に連続して延びるV状溝に沿ってベルト100が一対のドラム11の周囲を回転しながら下流側に向かって(ベルト装着領域50aから加硫領域50bに向かって)一対のドラム11の軸方向に沿って移動することになる。即ち、駆動ドラム11aの回転に伴い、螺旋状に延びるとともにベルト100との接触面積が多く確保されたV状溝26からの摩擦力によってベルト100が下流側に順次送り込まれる。図8は、加硫装置1の正面図を一部拡大して示したものであり、加硫工程S103を実行中の加硫装置1の状態を示したものである。この図8に示すように、加硫工程S103においては、ベルト100が加硫領域50aを移動する。このとき、加熱機構14の外部ヒータ27及びスチーム加熱空間28から供給される熱によって、移動しているベルト100が加熱されて加硫が行われる。具体的には、外部ヒータ27からの輻射熱でスチールベルト32が加熱され、スチールベルト32からの熱伝導によりベルト100が加熱される。また、スチーム加熱空間28で加熱された駆動ドラム11aからの熱伝導によってもベルト100が加熱される。
【0052】
また、加硫工程S103においては、ベルト加圧機構18のスチールベルト32が駆動ドラム11aの上面側に対して常時押し付けられているため、加硫領域50bを移動するベルト100における駆動ドラム11aの上面側を通過する部分が、ベルト加圧機構18によって常時加圧されることになる。そして、このように加圧されているベルト100に対して、加熱機構14による加熱が行われることになる。尚、加硫工程S103においては、図8に示すように、複数本のベルト100の加硫が同時に行われる。また、加硫工程S103においては、V状溝26に嵌め込まれるとともにベルト加圧機構18によって加圧された状態でベルト100の加硫が行われるため、連続加硫中に、ベルト100の外観形状の正確な型付けが行われることになる。
【0053】
また、加硫工程S103においては、加硫条件として、駆動ドラム11aの表面温度(駆動ドラム11aにおいて外部ヒータ27とスチールベルト32を介して対向する位置にある表面の温度)、ベルト100が加硫領域50bにおいて加熱機構14により加熱されるとともにベルト加圧機構18により加圧される加熱加圧時間(即ち、ベルト100が加硫領域50bに進入してから加硫領域50bを通過し終わるまでの移動時間)、ベルト加圧機構18におけるスチールベルト32のベルト100に対する加圧圧力(スチールベルト32とベルト100との接触圧力)が制御される。駆動ドラム11aの表面温度は、例えば、120℃以上で170℃以下の範囲に収まるように加熱機構14による制御が行われる。また、上記の加熱加圧時間については、例えば、20分以上で40分以下の範囲に収まるように駆動ドラム11aの回転速度の制御が行われる。また、上記の加圧圧力については、例えば、0.5MPa以上で5MPa以下の範囲に収まるように、より好ましくは0.8MPa以上で1.0MPa以下の範囲に収まるようにテンションロール29の位置の制御が行われる。
【0054】
冷却工程S104及びベルト排出工程S105は、加硫工程S103と連続して行われる。即ち、加硫工程S103が進行すると、一対のドラム11の回転に伴って、一対のドラム11に装着されたベルト100のうち下流側に位置しているベルト100から、順次、加硫領域50bを通過して冷却工程S104及びベルト排出工程S105へと移動していくことになる。図9は、加硫装置1の正面図を一部拡大して示したものであり、冷却工程S104及びベルト排出工程S105を実行中の加硫装置1の状態を示したものである。この図9に示すように、加硫領域50bを通過して加硫工程S103が終了したベルト100は、一対の駆動ドラム11の回転とともに冷却領域50cに移動して、冷却ファン15aによる空冷が行われる。即ち、加硫工程S103において加熱機構14により加熱が行われたベルト100は、加硫領域50bの下流側に配置された冷却領域50cで冷却される。そして、更に、冷却領域50cを通過して冷却工程S104が終了し、冷却されたベルト100は、冷却領域50cからベルト排出領域50dへと連続して順次排出されることになる。尚、駆動ドラム11aにおけるベルト排出領域50dにはV状溝26が形成されておらず、ベルト排出工程S105においては、冷却領域50cから排出されたベルト100は、ベルト排出領域50cに滞留することになる。
【0055】
そして、加硫が終了した全てのベルト100がベルト排出領域50dに排出されると、電動機16の運転が停止され、駆動ドラム11aの駆動も停止される。尚、加熱機構14の作動については、全てのベルト100の加硫が終了した時点以降の所定のタイミングで適宜停止される。また、冷却機構15の作動については、全てのベルト100の冷却が終了した時点以降の所定のタイミングで適宜停止される。駆動ドラム11aの駆動停止後は、排出用支持ユニット20の移動台部20aと固定台部20bとが連結されて一対のドラム11が支持された状態で、排出側支持ハウジング23と一対のドラム11との連結が解除される(図2参照)。そして、加硫が完了したベルト100であるラップドVベルトがベルト排出領域50dから取り出されて加硫装置1から排出されることになる。ベルト100の取り出しが終了すると、排出側支持ハウジング23が一対のドラム11と連結され、排出用支持ユニット20の移動台部20aと固定台部20bとの連結が解除されて移動台部20aが一対のドラム11から退避した位置に移動する。これにより、全ての工程が終了して加硫装置1が作動前の状態に戻り、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法が終了し、ラップドVベルトの製造が完了することになる。
【0056】
以上説明した本実施形態に係るラップドVベルトの加硫装置1及び加硫方法によると、V状溝26にベルト100の内周側を嵌め込んだ状態でこのベルト100を一対のドラム11に架け渡すことで加硫装置1に未加硫状態のベルト100の装着を容易に行うことができる。そして、ベルト100を装着した後は、一対のドラム11の軸間距離を調整してベルト100に張力を付与し、駆動ドラム11aを回転駆動することで、螺旋状に延びるとともにベルト100との接触面積が多く確保されたV状溝26からの摩擦力によってベルト100を順次送り込むことができる。また、駆動ドラム11aを回転駆動しながら、駆動ドラム11aの軸方向に沿って配置された加熱機構14によって自動で連続してベルト100の加硫を行うことができる。さらに、V状溝26に嵌め込まれた状態でベルト100の加硫が行われるため、連続加硫であっても、このV状溝26によってベルト100の外観形状を正確に型付けすることができる。このため、この加硫装置1及びこの加硫方法によると、そもそもリング金型が必要なく、ラップドVベルトの加硫を自動で連続して行うことができる。従って、本実施形態によると、リング金型の組立及び解体という高負荷の作業を廃止することができ、作業負荷の飛躍的な軽減を図ることができる。また、本実施形態によると、自動で連続して加硫を行うことができるため、製造効率の飛躍的な向上も図ることができる。
【0057】
また、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫装置1及び加硫方法によると、加硫中において、一対のドラム11とともに回転するスチールベルト32を有するベルト加圧機構18によって、ベルト100の外周側が加圧される。このため、連続して加硫が行われるベルト100に対して、駆動ドラム11aとベルト加圧機構18とによって加硫中の加圧を行うことができる。これにより、作業負荷の飛躍的な軽減と製造効率の飛躍的な向上とを図ることができる加硫装置1及び加硫方法において、更に、加硫後のゴム組織においてより均質でむらの少ないラップドVベルトの製造を実現することができる。
【0058】
また、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫装置1及び加硫方法によると、駆動ドラム11aにV状溝26が形成されているため、V状溝26に嵌め込まれたベルト100に対して駆動ドラム11aからの回転力がより確実に伝達され、ベルト100が順次送り込まれる。そして、従動ドラム11bは平坦な円柱状に形成されているため、ベルト100の回転に伴って従動ドラム11bが円滑に回転し、従動ドラム11aとベルト100との間で作用する摩擦力によって駆動ドラム11aからベルト100への回転力の伝達に影響が生じてしまうことを抑制できる。このため、駆動ドラム11aの回転とベルト100の回転とにずれがほとんど生じることなく、一対のドラム11の軸方向におけるベルト100の移動をより正確に制御し、ラップドVベルトの加硫条件をより正確に制御することができる。また、V状溝26が形成された駆動ドラム11aの回転とベルト100の回転とにずれがほとんど生じないため、ベルト100の外観形状の型付けをより正確に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫装置1によると、一対のドラム11におけるベルト装着領域50aに装着された複数本のベルト100に対して、加硫領域50bにおいて加硫を同時に連続して行うことができる。そして、一対のドラム11において加硫領域50bの下流側にベルト排出領域50dが設けられているため、加硫が終了したベルト100をそのまま連続して排出することができる。このため、複数本のラップドVベルトを自動で連続して加硫しながら排出することができ、更なる製造効率の向上を図ることができる。また、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法によると、ベルト装着工程S101において一対のドラム11に装着された複数本のベルト100に対して、加硫工程S102において加硫を同時に連続して行うことができる。このため、複数本のラップドVベルトを自動で連続して加硫することができ、更なる製造効率の向上を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫装置1によると、複数本のベルト100を一対のドラム11に装着して張力を付与した後は、複数本のベルト100に対して加硫領域50bにて加硫を連続して行い、更に、加硫領域50bで加熱されたベルト100を下流側の冷却領域50cでそのまま連続して冷却することができる。そして、冷却が終了したベルト100についてもそのまま連続して排出することができる。このため、複数本のベルト100に対して、加硫、冷却、排出を自動で連続して行うことができ、更なる製造効率の向上を図ることができる。また、本実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法によると、加硫工程S103が終了した後に、加熱されたベルト100を加硫領域50bの下流側の冷却領域50aにおいてそのまま連続して冷却することができ、更に、冷却工程S50cが終了した後は、そのままベルト100を冷却領域50cから連続して排出することができる。このため、一対のドラム11にベルト100を装着して張力を付与した後は、加硫工程S103、冷却工程S104、及びベルト排出工程S105を自動で連続して処理することができ、更なる製造効率の向上を図ることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。
【0062】
(1)本実施形態では、駆動ドラムのみにV状溝が形成された一対のドラムを例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、一対のドラムのうちの少なくとも一方にV状溝が形成されていればよい。図10は、従動ドラムにもV状溝が形成された変形例に係るラップドVベルトの加硫装置2を示す正面図である。尚、図10においては、本実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。図10に示す加硫装置2のように、V状溝26が形成された駆動ドラム11aと、同様にV状溝26が形成された従動ドラム35とを備える一対のドラム34を構成することもできる。尚、駆動ドラム11aのV状溝26と従動ドラム35のV状溝26とは、ベルト100が駆動ドラム11aのV状溝26及び従動ドラム35のV状溝26の両方に嵌め込まれた状態で一対のドラム11の回転とともに円滑に移動するように、ドラムの軸方向に対する各V状溝26の螺旋角度や、駆動ドラム11a及び従動ドラム35の軸間距離や径寸法等が適宜調整される。
【0063】
(2)本実施形態では、一対のドラムのうちの一方のドラムが駆動ドラムとして設けられ、他方のドラムが従動ドラムとして設けられたものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、一対のドラムの両方とも同期して駆動される駆動ドラムとして構成されているものであってもよい。
【0064】
(3)本実施形態では、加熱手段として外部ヒータとスチーム加熱空間とが設けられたものを例にとって説明したが、この通りでなくもよく、他の形態の加熱手段を用いてベルトの加熱を行うものであってもよい。また、張力付与手段及びベルト加圧手段についても、本実施形態で例示した形態に限らず、適宜変更して実施することができる。また、一対のドラムを支持する構成として、本実施形態では、投入側支持機構、排出側支持機構、投入用支持ユニット、及び排出用支持ユニットを例示したが、この通りでなくもよく、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、外被布で周囲が覆われた環状のベルトを加硫してラップドVベルトを製造する、ラップドVベルトの加硫方法及びラップドVベルトの加硫装置として、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施の形態に係るラップドVベルトの加硫装置を示す正面図である。
【図2】図1に示す加硫装置の平面図である。
【図3】図1に示す加硫装置における一対のドラムの一部を切欠き状態で拡大して示す図である。
【図4】図3に示す一対のドラムのうちの駆動ドラムの軸方向における外周近傍の断面の一部をベルトの断面とともに示した図である。
【図5】図1のB−B線矢視位置における断面を模式的に示したものである。
【図6】本実施形態に係るラップドVベルトの加硫方法を説明する工程図である。
【図7】図1に示す加硫装置の正面図を一部拡大して示したものであり、ベルト装着工程及び張力付与工程が完了した加硫装置の状態を示したものである。
【図8】図1に示す加硫装置の正面図を一部拡大して示したものであり、加硫工程を実行中の加硫装置の状態を示したものである。
【図9】図1に示す加硫装置の正面図を一部拡大して示したものであり、冷却工程及びベルト排出工程を実行中の加硫装置の状態を示したものである。
【図10】変形例に係るラップドVベルトの加硫装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ラップドVベルトの加硫装置
11 一対のドラム
11a 駆動ドラム
11b 従動ドラム
14 加熱機構(加熱手段)
16 駆動機構
17 張力付与機構(張力付与手段)
26 V状溝
50a ベルト装着領域
50b 加硫領域
100 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外被布で周囲が覆われた環状のベルトを加硫してラップドVベルトを製造する、ラップドVベルトの加硫方法であって、
前記ベルトが架け渡されるように装着される一対のドラムと、前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムを回転駆動する駆動手段と、前記一対のドラムに装着された前記ベルトを加熱して加硫する加熱手段と、を有するラップドVベルトの加硫装置を用い、
前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムの外周においてドラムの軸方向に沿って螺旋状に連続して延びるV状断面の溝として形成されたV状溝に対して未加硫状態の前記ベルトの内周側を嵌め込むとともに、当該ベルトを前記一対のドラムに架け渡すように装着するベルト装着工程と、
前記ベルトが装着された前記一対のドラムの軸間距離を調整し、前記ベルトに張力を付与する張力付与工程と、
前記駆動手段により前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムを回転駆動することで前記ベルトを前記一対のドラムの軸方向に沿って移動させるとともに、移動している前記ベルトを前記一対のドラムの軸方向における所定の長さの領域である加硫領域に沿って配置された前記加熱手段によって加熱して加硫を行う加硫工程と、
を備えていることを特徴とする、ラップドVベルトの加硫方法。
【請求項2】
請求項1に記載のラップドVベルトの加硫方法であって、
前記一対のドラムに装着された前記ベルトの外周側に押し付けられることで前記ベルトを加圧する環状のベルト部材を有し、前記一対のドラムの回転とともに前記ベルト部材が回転するベルト加圧手段を更に備える前記加硫装置を用い、
前記加硫工程において、前記加硫領域に沿って配置された前記ベルト加圧手段によって加圧されている前記ベルトに対し、前記加熱手段による加熱が行われることを特徴とする、ラップドVベルトの加硫方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のラップドVベルトの加硫方法であって、
前記一対のドラムのうちの一方のドラムは、前記V状溝が形成されるとともに前記駆動手段によって駆動される駆動ドラムとして設けられ、
前記一対のドラムのうちの他方のドラムは、外周が平坦な円柱状に形成されるとともに前記駆動ドラムの回転に伴って前記ベルトを介して駆動される従動ドラムとして設けられていることを特徴とする、ラップドVベルトの加硫方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のラップドVベルトの加硫方法であって、
前記ベルト装着工程において未加硫状態の複数本の前記ベルトが前記一対のドラムに装着され、
前記加硫工程において複数本の前記ベルトの加硫が同時に行われることを特徴とする、ラップドVベルトの加硫方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のラップドVベルトの加硫方法であって、
前記加硫工程の後に、前記加熱手段により加熱が行われた前記ベルトを前記ベルトの移動方向における前記加硫領域の下流側に配置された冷却領域で冷却する冷却工程と、
前記冷却工程で冷却された前記ベルトを前記冷却領域から排出するベルト排出工程と、
を更に備えていることを特徴とする、ラップドVベルトの加硫方法。
【請求項6】
外被布で周囲が覆われた環状のベルトを加硫してラップドVベルトを製造する、ラップドVベルトの加硫装置であって、
前記ベルトが架け渡されるように装着される一対のドラムと、前記ベルトが装着された前記一対のドラムの軸間距離を調整し、前記ベルトに張力を付与する張力付与手段と、前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムを回転駆動する駆動手段と、前記一対のドラムに装着された前記ベルトを加熱して加硫する加熱手段と、を備え、
前記一対のドラムは、その少なくとも一方のドラムの外周においてドラムの軸方向に沿って螺旋状に連続して延びるV状断面の溝として形成されるとともに、前記ベルトの内周側が嵌め込まれるV状溝が設けられ、
前記駆動手段は、前記一対のドラムのうちの少なくとも一方のドラムを回転駆動することで前記ベルトを前記一対のドラムの軸方向に沿って移動させ、
前記加熱手段は、前記一対のドラムの軸方向における所定の長さの領域である加硫領域に沿って配置され、前記一対のドラムの軸方向に沿って移動している前記ベルトを加熱して加硫すること特徴とする、ラップドVベルトの加硫装置。
【請求項7】
請求項6に記載のラップドVベルトの加硫装置であって、
前記一対のドラムに装着された前記ベルトの外周側に押し付けられることで前記ベルトを加圧する環状のベルト部材を有し、前記一対のドラムの回転とともに前記ベルト部材が回転するベルト加圧手段を更に備え、
前記加硫領域に沿って配置された前記ベルト加圧手段によって加圧されている前記ベルトに対し、前記加熱手段が加熱を行うことを特徴とする、ラップドVベルトの加硫装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のラップドVベルトの加硫装置であって、
前記一対のドラムのうちの一方のドラムは、前記V状溝が形成されるとともに前記駆動手段によって駆動される駆動ドラムとして設けられ、
前記一対のドラムのうちの他方のドラムは、外周が平坦な円柱状に形成されるとともに前記駆動ドラムの回転に伴って前記ベルトを介して駆動される従動ドラムとして設けられていることを特徴とする、ラップドVベルトの加硫装置。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載のラップドVベルトの加硫装置であって、
前記一対のドラムには、
前記ベルトの移動方向における前記加硫領域の上流側に配置され、前記加硫領域へ投入される未加硫状態の複数本の前記ベルトが装着されるベルト装着領域と、
前記加硫領域の下流側に配置され、前記加熱手段により加熱が行われた前記ベルトが前記加硫領域から排出されるベルト排出領域と、
が設けられていることを特徴とする、ラップドVベルトの加硫装置。
【請求項10】
請求項9に記載のラップドVベルトの加硫装置であって、
前記一対のドラムには、前記ベルトの移動方向における前記加硫領域の下流側に配置され、前記加熱手段により加熱が行われた前記ベルトを冷却する冷却領域が更に設けられ、
前記ベルトの移動方向における上流側から下流側に沿って、前記ベルト装着領域、前記加硫領域、前記冷却領域、及び前記ベルト排出領域が、この順番で連続して配置されていることを特徴とする、ラップドVベルトの加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−30239(P2010−30239A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197389(P2008−197389)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】