説明

リセット回路

【課題】ウォッチドッグのための特殊な構成を追加することなく、マイコンラッチ時に自動的かつ確実にマイコンにリセットをかける
【解決手段】水晶振動子Xtalを用いた水晶発振回路からクロック信号を入力されるマイコン200のリセット回路100であって、マイコン200は、出力がHighとLowとで周期的に変動するGPIO端子201を備え、クロック信号の入力が停止されたときに自動的にリセット状態となる構成とされ、リセット回路100は、GPIO端子201の出力をコンデンサを用いて平滑し、平滑電圧がHighとLowの中間電位のときは水晶振動子Xtalの負性抵抗より小さい抵抗を発生して水晶振動子Xtalに印加し、平滑電圧がHighとLowのいずれかになると水晶振動子Xtalの負性抵抗以上の抵抗を発生して水晶振動子Xtalに印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリセット回路に関し、特に、水晶振動子を用いた水晶発振回路からクロック信号を入力されるマイコンのリセット回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異常状態に陥ったマイコンを異常状態から復帰させるために、マイコンの異常を監視するウォッチドッグ回路を設けることが行われている。ウォッチドッグ回路は、例えば、マイコンが周期的に出力するパルス信号(ウォッチドッグパルス信号等)をカウンターにてカウントし、当該パルス信号の周期性が維持されている場合はマイコンが正常と判断し、当該パルス信号の周期性が崩れた場合はマイコンが異常と判断してマイコンにリセットをかける(特許文献1〜3,5等)。その他、発振回路からのクロック信号の発振状態を制御する技術について、特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−224759号公報
【特許文献2】特開2008−152678号公報
【特許文献3】特開2006−302151号公報
【特許文献4】特開2006−295817号公報
【特許文献5】特開2006−119905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、上述した特許文献5に記載のように、ウォッチドッグをソフトウェア的に実現しているものも多い。このようなウォッチドッグでは、雷サージや静電気等によるマイコンラッチでマイコンが停止するとウォッチドッグも働かず、機器がフリーズしたままリセットされない。また、上述した特許文献1〜3の技術では、マイコンがウォッチドッグパルス信号を出力しつつ、マイコンの外部にウォッチドッグ信号の監視回路を設ける必要があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、ウォッチドッグのための構成を追加することなく、マイコンラッチ時に自動的かつ確実にマイコンにリセットをかけることが可能なリセット回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の1つは、水晶振動子を用いた水晶発振回路からクロック信号を入力されるマイコンのリセット回路であって、前記マイコンは、出力が正論理信号と負論理信号とで周期的に変動する所定端子を備え、前記クロック信号の入力が停止されたときに自動的にリセット状態となる構成とされ、当該リセット回路は、前記所定端子から出力される正論理信号と負論理信号の平滑電圧をコンデンサを用いて生成し、前記平滑電圧が正論理信号と負論理信号の中間電位のときは前記水晶振動子の負性抵抗より小さい抵抗を発生して前記水晶振動子に印加し、前記平滑電圧が正論理信号と負論理信号のいずれかになると前記水晶振動子の負性抵抗以上の抵抗を発生して前記水晶振動子に印加する構成とされる。
【0007】
なお、上述したリセット回路は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特殊な構成を追加することなく、マイコンラッチ時に自動的かつ確実にマイコンにリセットをかけることが可能なリセット回路を提供することができる。
請求項2にかかる発明によれば、前記リセット回路を簡易な回路構成で具体的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態にかかるリセット回路の構成を示す回路図である。
【図2】マイコンが異常状態のときのリセット回路における動作を示すタイミングチャートである。
【図3】マイコンが異常状態のときのリセット回路における動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態にかかるリセット回路の構成を示す回路図である。なお、同図において各素子の符号下に記載されている値は、リセット回路を構成する各素子の定格や型番の一例である。
【0011】
同図に示すように、リセット回路100は、水晶振動子Xtalにかかる水晶発振回路と一体的に構成されており、当該水晶発振回路の出力するクロック信号を入力されるマイコン200のGPIO端子201(汎用入出力端子)も含む形で構成されている。なお、GPIO端子201は、正常状態(マイコンの正常動作時)のときハイインピーダンスである。
また、GPIO端子201の出力は、High(正論理信号)とLow(負論理信号)とで周期的に変動するようになっており、以下ではHigh(正論理信号)とLow(負論理信号)との比率が1:1(Duty50%)の場合を例に取り説明する。マイコン200は、正常動作している状態(正常状態)では、GPIO端子201の出力をHighとLowとで周期的に変動させるが、ラッチする等して停止している状態(異常状態)では、GPIO端子201の出力がHighとLowのいずれか一方に固定された状態となる。また、マイコン200は、水晶振動子Xtalによって入力されるクロック信号が停止されると動作を停止し、自動的にリセットされる構成とされる。
【0012】
図1において、リセット回路100は、抵抗R1〜R7、コンデンサC1〜C3、ツェナダイオードD1,D2、ダイオードD3、nチャンネルのFET Tr1(電界効果トランジスタ)、を備えている。コンデンサC2,C3は、水晶発振回路の発振部容量を構成する。また、本実施形態において、抵抗R1は第1抵抗を構成し、抵抗R2は第2抵抗を構成し、抵抗R5は第3抵抗を構成し、ツェナダイオードD1は第1ツェナダイオードを構成し、ツェナダイオードD2は第2ツェナダイオードを構成する。
【0013】
抵抗R1はGPIO端子201をプルダウンし、抵抗R2はGPIO端子201を定電圧Vcc(=3.3V)のラインにプルアップし、コンデンサC1はGPIO端子201の出力するHigh,Lowを平滑化した平滑電圧を生成する。すなわち、GPIO端子201の出力がHighとLowとで周期的に変動していれば、A点には、定電圧Vccの中間電位Vmid(HighとLowの中間電位)が出力される。一方、GPIO端子201の出力がHighに固定されると、A点にはHighに対応する高電圧Vhが出力され、GPIO端子201の出力がLowに固定されると、A点にはLowに対応する低電圧Vl(グランド電位)が出力される。
【0014】
ダイオードD3は、水晶発振回路の発振部容量を構成するコンデンサC2,C3の間にて、水晶振動子Xtalに順方向になるように直列接続されており、正常状態において、ダイオードD3には順バイアスがかかるようになっている。このダイオードD3は水晶振動子Xtalの負性抵抗値を超えないように設定される。
【0015】
ここで、ダイオードD3のカソード(図のB点)と上述したA点の間は、抵抗R4〜R7、ツェナダイオードD1,D2、FET Tr1、を備える回路によって接続されている。ツェナダイオードD1はA点にカソードを接続され、直列接続された抵抗R6,R7を介してアノードをB点に接続されている。ここで、ツェナダイオードD1のツェナ電圧Vth1(不図示)をVl<Vmid<Vth1とされ、ツェナダイオードD1は、A点が上述した中間電位Vmidや低電圧Vlのときは降伏せず、A点が上述した高電圧Vhのときに降伏する。FET Tr1は抵抗R4を介してA点にゲートを接続され、グランドにソースを接続されている。FET Tr1のドレインは、抵抗R5を介して定電圧Vccに接続され、ツェナダイオードD2のアノードにも接続されている。ツェナダイオードD2のカソードは抵抗R6,R7の接続点に接続されている。ここで、FET Tr1のゲート閾値電圧Vth2(不図示)をVth2<Vmid<高電圧Vhとされ、FET Tr1は、A点が上述した中間電位Vmidや高電圧Vhのときはオンし、A点が上述した低電圧Vlのときはオフする。
【0016】
すなわち、マイコン200が正常動作していればFET Tr1がオンするとともにツェナダイオードD1は降伏せず、このときB点の電位は、ダイオードD3に順バイアスがかかる電位に保たれるようになっている。従って、水晶振動子にかかる抵抗が負性抵抗を超えず、水晶振動子の発振するクロック信号がマイコン200に供給され、マイコン200は正常動作を継続する。
【0017】
図2、図3は、マイコン200が異常状態のときのリセット回路100における動作を示すタイミングチャートである。図2、図3には、図1のA点における電圧と、水晶振動子Xtalの発振状態とを示してある。
【0018】
図2に示すように、GPIO端子201の出力がHighの状態でマイコン200が停止するとFET Tr1はオンし、ツェナダイオードD1が降伏することになる。このときB点の電位は、ダイオードD3に逆バイアスがかかる電位に上昇するようになっている。従って、水晶振動子にかかる抵抗が負性抵抗以上となって水晶振動子が発振を停止し、マイコン200は停止して自動的にリセットされる。その後、ダイオードD3のカソード側の電荷が放電されるとA点の電位が中間電位Vmidとなり、水晶振動子は再び発振を開始する。すると、マイコン200に対するクロック信号の入力が再開され、マイコン200は再起動する。すなわち、マイコン200が停止されても、リセット回路100の作用によりマイコン200は自動的にリセットした後で再起動される。
【0019】
一方、図3に示すように、GPIO端子201の出力がLowの状態でマイコン200が停止するとツェナダイオードD1が降伏せずにFET Tr1がオフすることになる。B点の電位はダイオードD3に逆バイアスがかかる電位に上昇するようになっている。従って、水晶振動子にかかる抵抗が負性抵抗以上となって水晶振動子が発振を停止し、マイコン200は停止して自動的にリセットされる。その後、ダイオードD3のカソード側の電荷が放電されるとA点の電位が中間電位Vmidとなり、水晶振動子は再び発振を開始する。すると、マイコン200に対するクロック信号の入力が再開され、マイコン200は再起動する。すなわち、マイコン200が停止されても、リセット回路100の作用によりマイコン200は自動的にリセットした後で再起動される。
【0020】
以上説明した実施形態にかかるリセット回路100は、水晶振動子Xtalを用いた水晶発振回路からクロック信号を入力されるマイコン200のリセット回路100において、GPIO端子201の出力をコンデンサを用いて平滑し、平滑電圧がHighとLowの中間電位のときは水晶振動子Xtalの負性抵抗より小さい抵抗を発生して水晶振動子Xtalに印加し、平滑電圧がHighとLowのいずれかになると水晶振動子Xtalの負性抵抗以上の抵抗を発生して水晶振動子Xtalに印加するように構成されている。すなわち、ウォッチドッグのための特殊な構成を追加することなく、マイコンラッチ時に自動的かつ確実にマイコンにリセットをかけることが可能となる。
【0021】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0022】
100…リセット回路、200…マイコン、201…GPIO端子、C1〜C3…コンデンサ、D1…ツェナダイオード、D2…ツェナダイオード、D3…ダイオード、R1〜R7…抵抗、Tr1…FET 、Vh…高電圧、Vl…低電圧、Vmid…中間電位、Xtal…水晶振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子を用いた水晶発振回路からクロック信号を入力されるマイコンのリセット回路であって、
前記マイコンは、出力が正論理信号と負論理信号とで周期的に変動する所定端子を備え、前記クロック信号の入力が停止されたときに自動的にリセット状態となる構成とされ、
当該リセット回路は、前記所定端子から出力される正論理信号と負論理信号の平滑電圧をコンデンサを用いて生成し、前記平滑電圧が正論理信号と負論理信号の中間電位のときは前記水晶振動子の負性抵抗より小さい抵抗を発生して前記水晶振動子に印加し、前記平滑電圧が正論理信号と負論理信号のいずれかになると前記水晶振動子の負性抵抗以上の抵抗を発生して前記水晶振動子に印加することを特徴とするリセット回路。
【請求項2】
前記リセット回路は、
前記水晶発振回路における発振部容量の間にて水晶振動子に順方向に直列接続されるダイオードと、
前記所定端子を所定の正の定電圧にプルアップする第1抵抗と、
前記所定端子をグランドにプルダウンする第2抵抗と、
前記所定端子の出力を平滑した平滑電圧を生成するコンデンサと、
前記平滑電圧をカソードに入力され、前記所定端子の出力が正論理信号と負論理信号とを周期的に変動しているときや前記所定端子の出力が負論理信号に停止しているときは降伏せず、前記所定端子の出力が正論理信号に停止すると降伏する第1ツェナダイオードと、
前記平滑電圧をゲートに入力され、前記所定端子の出力が負論理信号に停止しているときはオンせず、前記所定端子の出力が正論理信号と負論理信号とを周期的に変動しているときや前記所定端子の出力が正論理信号に停止しているときはオンするnチャンネルの電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのドレインと前記所定の正の定電圧との間を接続する第3抵抗と、
前記電界効果トランジスタのドレインにアノードを接続され、前記所定端子の出力が負論理信号に停止しているときに降伏する第2ツェナダイオードと、
を備え、
前記第1ツェナダイオードのアノードと前記第2ツェナダイオードのカソードとは、それぞれ抵抗を介して前記水晶振動子もしくは前記ダイオードに接続されることを特徴とする請求項1に記載のリセット回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−242921(P2012−242921A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110021(P2011−110021)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】