説明

リニアモータの原点設定方法

【課題】再現性のよい安定したリニアモータの原点設定方法を提供する。
【解決手段】予め設定した所定の方向に可動子を移動させ、磁気特性急変位置検知部によって検知した磁気特性急変位置を原点設定基準位置とし、この原点設定基準位置から、磁気式リニアエンコーダの絶対位置の基準位置を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータの原点設定方法に関し、特に高速で繰返し位置決めとして用いられる磁気式リニアエンコーダを内蔵したリニアモータの原点設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの移動機構や搬送機構の駆動源として、リニアモータが使用されている。リニアモータの使用に際しては、リニアモータの移動部の移動位置の検出が不可欠である。かかる移動位置を検出する手段として、リニアエンコーダが用いられている。また、移動部の直線運動を回転運動に変換し、ロータリエンコーダによって移動位置を検出する手法も採用されている。これらのエンコーダでは、等間隔に刻まれた磁気マークあるいは光学的マークを検出し、その検出したマークを積算し、更には2つのマーク間を内挿分割して、移動部の移動量を検出している。
【0003】
これらのエンコーダは、移動部の移動量、即ちインクリメンタル量は検出できるが、絶対位置(ある座標原点に対する位置)を検出することはできない。絶対位置を検出するためには、マークの積算や内挿信号の積算の基準となる位置を設定しなければならない。すなわち、移動部の原点位置を確立する必要がある。
【0004】
従来、原点位置の確立方法として、リニアモータの固定部側の所望の位置にリミットスイッチを設け、移動部を所定方向から移動させ、移動部に設けたドッグをリミットスイッチが検出した位置を原点として設定し確立する手法が採用されていた。
【0005】
これに対して、リミットスイッチや、ドッグ等の手段を使用しないリニアモータの原点設定方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これは、リニアモータに位置検出器としてリニアエンコーダを並設し、リニアモータの移動部を所定の決められた位置にオペレータが介在して位置決めした後、該位置から低速度で所定の決められた方向に移動部を移動させ、ホール素子からの磁気信号の極性が設定数変化した位置で、現在位置を演算するための可逆カウンタをリセットすることによって、位置検出器で検出する位置の原点とする手法である。
【0006】
更に、光学式リニアエンコーダを用いたリニアモータでは、塵芥が付着したり、汚れ等があると検出感度が弱くなり、耐環境性が十分でないことに鑑み、耐環境性に強く、且つ、ローコストで、磁気式リニアエンコーダとしてのセッティングが不要であるリニアモータが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。これは、永久磁石が、リニアモータの界磁とリニアエンコーダの被検出体である磁気スケール部を兼用して構成するとともに、永久磁石のピッチ間隔が磁気スケール部のスケールピッチとなるように設け、塵芥等に強く、耐環境性を増すようにするものである。
【特許文献1】特開平8−322276号公報
【特許文献2】特開2004−56892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リミットスイッチやドッグを利用する原点設定あるいは原点の確立方法では、リミットスイッチやドッグを必要とし、これらリミットスイッチやドッグの位置調整は、オペレータが介在して行わねばならない。
【0008】
また、特許文献1に開示された原点の確立方法では、所定の決められた位置にラフに位置決めするためのマークがオペレータにより利用され、先ず、移動部材に付されたマーク及び固定支持部に付されたマークの2つのマークが1つの永久磁石幅内でラフに一致するようにオペレータによりラフな位置決めが実施され、その後、リニアモータの原点設定/確立処理が実行される。そのため、リニアモータの原点設定に際して、オペレータの介在が必須であり、人間による種々のセッティング作業が必要であり、原点設定処理を完全に自動的に行うことは実現できていない。
【0009】
一方、特許文献2に記載されたリニアモータでは、磁気式リニアエンコーダのセッティングが不要であり、その磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドは、電気角で位相が90°ずれるようにした複数個のホール素子を配置して構成され、ホール素子から出力される2相正弦波のアナログ信号を位置データに変換する位置情報変換器により可動子の現在位置を演算する構成となっている。ところが、特許文献2の図2(a)に図示されるような誘起電圧波形及びエンコーダ信号の波形は、複数個の永久磁石が所定の一定間隔で隣り合わせに規則的に並べて配置されている磁石配列の端部を除いた磁石配列の中央部側においてのみ採用可能な原理である。そのため、エンコーダ信号波形を処理するだけでは、リニアモータの絶対位置を確定するための原点を設定・確立することは不可能である。したがって、特許文献2に記載のリニアモータでは、絶対位置を確定する位置情報変換器の原点をセッティングする手段あるいは方法の採用を、暗黙の前提とするものである。加えて、特許文献2においては、モータ原点および原点設定に関しては、何等の記述も見出すことはできない。
【0010】
本発明は上述のような事情に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、リニアモータの絶対位置を確定するための原点の設定および確立を、安定かつ容易に実現可能な原点設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、円筒状部材の中空部に、複数個の永久磁石を互いに同一の磁極を対向して密着させて、直列状に配置して構成された界磁ヨークと、前記磁石列と磁気的空隙を介して対向配置された電機子コイルを有する電機子と、前記磁石列の端部または途中に配設され、前記磁石列の磁気特性を急激に変化せしめる磁気特性急変部と、前記磁石列を磁気スケール部として構成し、2個の前記永久磁石間の長さを前記磁気スケール部のスケールピッチとして設定されるとともに、互いに電気角で位相を90°(スケールピッチの1/4波長に相当)ずらして配置された複数個の第1の磁気検出器と、この第1の磁気検出器から電気角で位相を180°(スケールピッチの1/2波長に相当)ずらして配置された第2の磁気検出器を、前記電機子の長手方向に有した位置検出用の磁気式リニアエンコーダとを有し、前記界磁ヨークと前記電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、前記磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドを前記電機子側に備え、前記界磁ヨークと前記電機子を相対的に直線走行するようにしたリニアモータの原点設定方法であって、前記可動子を原点方向に移動させて、前記磁石列の磁気特性が急激に変化する磁気特性急変位置をサーチし、この磁気特性急変位置を基にして、原点設定のための原点設定基準位置を設定し、この原点設定基準位置から前記可動子を所定の減速度で減速させ、前記スケールヘッドが所定値となる位置で停止させ、この停止位置から前記可動子の移動方向を反転させて、前記磁気式リニアエンコーダから得られる磁気特性の極性変化点をサーチし、この極性変化点の位置で、前記可動子を停止させ、前記リニアモータの絶対位置の基準位置とすることを特徴とするリニアモータの原点設定方法が提供される。
【0012】
また、本発明の別の一態様によれば、円筒状部材の中空部に、複数個の永久磁石を互いに同一の磁極を対向して密着させて、直列状に配置して構成された界磁ヨークと、前記磁石列と磁気的空隙を介して対向配置された電機子コイルを有する電機子と、前記磁石列の端部または途中に配設され、前記磁石列の磁気特性を急激に変化せしめる磁気特性急変部と、前記磁石列を磁気スケール部として構成し、2個の前記永久磁石間の長さを前記磁気スケール部のスケールピッチとして設定されるとともに、互いに電気角で位相を90°(スケールピッチの1/4波長に相当)ずらして配置された複数個の第1の磁気検出器と、この第1の磁気検出器から電気角で位相を180°(スケールピッチの1/2波長に相当)ずらして配置された第2の磁気検出器を、前記電機子の長手方向に有した位置検出用の磁気式リニアエンコーダとを有し、前記界磁ヨークと前記電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、前記磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドを前記電機子側に備え、前記界磁ヨークと前記電機子を相対的に直線走行するようにしたリニアモータの原点設定方法であって、前記磁石列の磁気特性が急激に変化する磁気特性急変位置をサーチして、前記可動子が前記磁気特性急変部方向に原点を通り過ぎていることを判断し、前記可動子を原点に近づく方向に移動させて、そのまま原点を通過させ、さらに前記可動子を原点から離れる方向に、所定距離だけ移動させ、前記可動子を原点方向に移動させて、前記磁気特性急変位置をサーチし、この磁気特性急変位置を基にして、原点設定のための原点設定基準位置を設定し、この原点設定基準位置から前記可動子を所定の減速度で減速させ、前記スケールヘッドが所定値となる位置で停止させ、この停止位置から前記可動子を原点方向に移動させて、前記磁気式リニアエンコーダから得られる磁気特性の極性変化点をサーチし、この極性変化点の位置で、前記可動子を停止させ、前記リニアモータの絶対位置の基準位置とすることを特徴とするリニアモータの原点設定方法が提供される。
【0013】
また、本発明の別の一態様によれば、円筒状部材の中空部に、複数個の永久磁石を互いに同一の磁極を対向して密着させて、直列状に配置して構成された界磁ヨークと、前記磁石列と磁気的空隙を介して対向配置された電機子コイルを有する電機子と、前記磁石列の端部または途中に配設され、前記磁石列の磁気特性を急激に変化せしめる磁気特性急変部と、前記磁石列を磁気スケール部として構成し、2個の前記永久磁石間の長さを前記磁気スケール部のスケールピッチとして設定されるとともに、互いに電気角で位相を90°(スケールピッチの1/4波長に相当)ずらして配置された複数個の第1の磁気検出器と、この第1の磁気検出器から電気角で位相を180°(スケールピッチの1/2波長に相当)ずらして配置された第2の磁気検出器を、前記電機子の長手方向に有した位置検出用の磁気式リニアエンコーダとを有し、前記界磁ヨークと前記電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、前記磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドを前記電機子側に備え、前記界磁ヨークと前記電機子を相対的に直線走行するようにしたリニアモータの原点設定方法であって、前記可動子を原点方向に移動させ、前記磁石列の磁気特性が急激に変化する磁気特性急変位置をサーチし、この磁気特性急変位置を基にして、原点設定のための原点設定基準位置を設定し、この原点設定基準位置から前記可動子を所定の減速度で減速させ、前記スケールヘッドが所定値となる位置で一旦停止させ、停止位置からさらに可動子を原点方向に移動させて、前記磁気式リニアエンコーダから得られる磁気特性の極性変化点をサーチし、この極性変化点の位置で、前記可動子を停止させ、前記リニアモータの絶対位置の基準位置とすることを特徴とするリニアモータの原点設定方法が提供される。
【0014】
さらに、本発明の別の一態様によれば、円筒状部材の中空部に、複数個の永久磁石を互いに同一の磁極を対向して密着させて、直列状に配置して構成された界磁ヨークと、前記磁石列と磁気的空隙を介して対向配置された電機子コイルを有する電機子と、前記磁石列の端部または途中に配設され、前記磁石列の磁気特性を急激に変化せしめる磁気特性急変部と、前記磁石列を磁気スケール部として構成し、2個の前記永久磁石間の長さを前記磁気スケール部のスケールピッチとして設定されるとともに、互いに電気角で位相を90°(スケールピッチの1/4波長に相当)ずらして配置された複数個の第1の磁気検出器と、この第1の磁気検出器から電気角で位相を180°(スケールピッチの1/2波長に相当)ずらして配置された第2の磁気検出器を、前記電機子の長手方向に有した位置検出用の磁気式リニアエンコーダとを有し、前記界磁ヨークと前記電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、前記磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドを前記電機子側に備え、前記界磁ヨークと前記電機子を相対的に直線走行するようにしたリニアモータの原点設定方法であって、前記可動子を原点方向に移動させて、前記磁石列の磁気特性が急激に変化する磁気特性急変位置をサーチし、この磁気特性急変位置を基にして、原点設定のための原点設定基準位置を設定し、この原点設定基準位置から前記可動子を所定の減速度で減速させ、前記スケールヘッドが所定値となる位置で一旦停止させ、前記原点設定基準位置を、前記リニアモータの絶対位置の基準位置とすることを特徴としたリニアモータの原点設定方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リミットスイッチやドッグの取り付け・調整・設定作業が一切不要であり、リニアモータの組立てが終了した時点で原点設定に伴う作業も終了するので、人間による設定及び調整作業が排除できるから、再現性のよい安定したリニアモータの原点設定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。本発明に係る原点設定方法が適用されるリニアモータは、界磁ヨークと電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、界磁ヨークと電機子を相対的に直線走行させるものである。以下に述べる実施形態では、説明の便宜上、界磁ヨークを固定子に、電機子を可動子としているが、本発明は、これら実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0017】
図1は本発明を実施する磁気式リニアエンコーダを採用したリニアモータの概略構成を示す正面図である。また、図2は、図1におけるA−Aでの断面図である。
【0018】
図1、図2に示すように、リニアモータ1は、ベースとなるベース部2とリニアモータ1の直線方向の移動をガイドするためのリニアガイド3を備えている。リニアガイド3は、ベース部2に取り付けられるガイドレール3Aと、ガイドレール3A上をスライドするスライダ3Bから構成されている。スライダ3Bの上面には、例えば、リニアモータ1を適用する機械や装置を取り付けるためのテーブル3Cが載置されている。
【0019】
ベース部2には、リニアモータ1の固定子(固定部)を構成し、界磁を発生させる界磁ヨーク4が配設されている。界磁ヨーク4は、円筒状部材(スリーブ)6と円筒状部材6の中空内部に挿入された円柱状の永久磁石8を密着させた磁石列から構成されている。複数の永久磁石8は、それぞれが同一の形状、寸法を備える部材である。各永久磁石8は、円筒状部材6の長手方向に磁化されている。磁石列は、隣り合う永久磁石8を同じ磁極(N極−N極、または、S極−S極同士)を相互に対向させて、且つ、密着させた状態で、複数並べて構成されている。リニアモータ1の移動方向の長さ、すなわち、最大移動距離は、並べられた永久磁石8の磁石列の長さに可動子の長さを引いたものである。
【0020】
磁石の種別としては、ネオジム系が好適である。尚、永久磁石8は、円柱状、すなわち中実のものに限られることなく、例えば円筒形のものであってもよい。このように、永久磁石8の同じ磁極が、相互に密着対向配置されているので、非常に強力な反発力が発生する。かかる永久磁石8の磁気特性をシミュレーションにより求めると、図8に示すようになる。図8は、合成磁界の空間分布特性を示すもので、横軸方向は円筒状部材6の軸方向距離を、縦軸方向は同極磁石を密着させた場合の合成磁界を表わしている。円筒状部材6の半径方向に形成され、円筒状部材6の表面に垂直に出入りする磁束成分が、空隙を介して対向配置された電機子コイル12に対し有効磁束となる。ところが、本発明の実施形態に係るリニアモータ1では、同極同士の磁束が密着面でぶつかり合っているので、磁石外周部の磁束と比較すると、磁石中心に近い磁束は、あらゆる方向から相手磁石の発生する磁界の影響を受けている。このため、磁石中心に近い磁束は、相手磁石と反対方向に相互の反発により折り曲げられる。その結果、折り曲げられた成分だけ円筒状部材6の半径方向からずれて円筒表面から出入りすることになり、電機子コイル12に対する有効磁束が減少することが推察できる。
【0021】
円筒状部材6は、非磁性体で構成し、その比透磁率は、2.0以下が好ましい。円筒状部材6を磁性体で構成すると、磁束のほとんどが永久磁石8列→円筒状部材6→永久磁石8列で構成される磁気回路を流れ、電機子コイル12に達する有効磁束が減少するためである。
【0022】
リニアモータ1の可動子(可動部)10には、円筒状部材6を挿通する挿通孔が形成されており、円筒状部材6の長手方向に可動可能に構成されている。可動子10は、電機子、電機子を収容する筐体、筐体に取り付けられる磁気式リニアエンコーダ(リニアセンサ)で構成されている。電機子には、3相の電機子コイル12が装着されている。
【0023】
図3は、リニアモータ1の側面から見た概略図で、図6は、図3の一部の拡大図である。磁気式リニアエンコーダでは、可動子の位置検出のための磁極パターンを形成するための磁気スケール部と、磁気スケール部の磁極パターンを検出するスケールヘッドを備えている。図3に示すように、本実施形態においては、磁気スケール部とスケールヘッドを、それぞれ個別にベース部2等に配設することなく、リニアモータ1の界磁ヨーク4に使用する永久磁石8列が、磁気式リニアエンコーダ16の被検出体である磁気スケール部19を兼用するように構成されている。更に、図3及び図6に示すように、2つの永久磁石8を密着させた構成したときの長さLpが、磁気スケール部19のスケールピッチLpとなるように構成されている。
【0024】
可動子10側、すなわち電機子コイル12の一端部で、リニアモータ1の原点側に、磁気式リニアエンコーダ16のスケールヘッド18が装着されている。ここで、原点側とは、リニアモータ1が現在位置から移動するとき、位置を表わす情報量が増大する方向は原点から離れ、減少する方向は原点に近づくことを意味している。尚、スケールヘッド18の装着位置は、上記に限らず、例えば可動子10の中心位置に装着させてもよい。
【0025】
磁気式リニアエンコーダ16は、固定子の永久磁石8列(から)の磁束を検出するため、2個の第1の磁気検出部14を備えている。それぞれの第1の磁気検出部14は互いに電気角で90°位相差(スケールピッチLpの1/4波長に相当)をもつように配置され、その出力信号は2相となる。これにより、リニアモータ1の電気角とリニアモータ1の進行方向を検出することが可能となっている。
【0026】
これら第1の磁気検出部14からは、スケールヘッド18の現在の位置情報の元となる2相正弦波のアナログ信号da,dbが出力される。これら第1の磁気検出部14としては、磁気を直線的に電気信号に変換できるホール素子が好適である。さらに、磁気式リニアエンコーダ16には、磁気特性急変部32(後述する)の磁気特性急変位置を検知するため、磁気特性急変位置検知部22が、電機子の長手方向にスケールヘッド18内に設けられている。磁気特性急変位置検知部22は、第1の磁気検出部14からの信号及び第2の磁気検出部20からの信号を処理・判定するものである。
【0027】
第2の磁気検出部20は、第1の磁気検出部14に対して、電気角で位相が180°(スケールピッチLpの1/2波長に相当)ずれるように、リニアモータ1の移動方向に配置されている。第2の磁気検出部20からは、正弦波のアナログ信号dcが出力される。第2の磁気検出部20としては、磁気を直線的に電気信号に変換できるホール素子が好適である。
【0028】
磁気特性急変位置検知部22は、例えば、第2の磁気検出部20の出力信号dcと、Lp/2波長分、位置がずれている方の第1の磁気検出部14(図6参照)の出力信号daを加算する加算回路(図示しない)と、その加算結果から磁気特性急変位置を判定するためのコンパレータ(図示しない)で構成することができる。
【0029】
2個の第1の磁気検出部14から出力されるアナログ信号da,db及び第2の磁気検出部20から出力されるアナログ信号dcの波形を、界磁ヨーク4に沿って示すと、図4のようになる。図4において、縦軸方向は磁束密度Br、横軸方向はスケールヘッド18の位置を表わしており、縦軸方向はその位置における永久磁石8列からの有効磁束の磁束密度Brを表わしていることになる。さらに、原点周辺の第1の磁気検出部14から出力されるアナログ信号da,db波形を部分拡大すると、図7(a)のようになる。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係るリニアモータ1のドライブシステム50について説明する。図10はドライブシステムの構成例を示すブロック図である。図10に示すように、このドライブシステム50は、モータ駆動制御装置(サーボドライバ)30、磁気特性急変位置検知部22、位置情報変換器28、書込み可能なメモリ等である固定記憶部31から構成されている。第1の磁気検出部14から出力される2相正弦波のアナログ信号da,dbを入力して位置データに変換する位置情報変換器28と、外部からリニアモータ1に対して指示される位置指令(図示しない)と位置情報変換器28で得られたスケールヘッド18の現在位置の信号posによって、電機子コイル12に対する電流指令を演算するモータ駆動制御装置30とを接続している。
【0031】
モータ駆動制御装置(サーボドライバ)30は、例えば中央演算装置(またはマイクロプロセッサ)、ROM、RAM、入出力回路、及び電力増幅器等で構成される。
【0032】
第1の磁気検出部14からの磁気信号に基づいて、コイルに流す電流を制御しながらリニアモータ1を駆動制御する。
【0033】
位置情報変換器28は、電機子コイル12の端部に取付けられたスケールヘッド18から読み取った可動子10の現在位置を示すアナログ信号、すなわち第1の磁気検出部14から出力される2相正弦波のアナログ信号da,dbを入力し、位置データに変換する。この位置情報変換器28は、位置変換器であると共に、スケールヘッド18の現在位置を表わす位置カウンタでもある。位置情報変換器28は、原点復帰が完了した時にモータ駆動制御装置30から出力されるリセット信号rst信号を受け取り、位置カウンタとしての値をゼロにする。
【0034】
モータ駆動制御装置30は、スケールヘッド18の現在位置の情報posに基づき電流指令を演算し、制御電流を給電線(図示しない)を介して可動子に送り、可動子の目標位置及び移動速度を制御する。
【0035】
尚、上記した説明では、位置情報変換器28は、ドライブシステム50の1構成要素として独立したものとしたが、これに限ることはなく、磁気式リニアエンコーダ16の内部に配設してもよい。磁気式リニアエンコーダ16を、モータ駆動制御装置30の1構成要素として、その内部に配設してもよい。また、逆にモータ駆動制御装置30を、磁気式リニアエンコーダ16の1構成要素として、その内部に配設してもよい。
【0036】
磁気特性急変位置検知部22は、第1の磁気検出部14から出力されるアナログ信号da及び第2の磁気検出部20から出力されるアナログ信号dcを入力して、両信号を加算演算する。
【0037】
アナログ信号daとアナログ信号dcは位相が180度ずれていることから、da≒−dcの関係にある。したがって、両者を加算すると、相互に打ち消しあい、永久磁石8列が密着している箇所では、加算信号acの大きさはゼロに近いものとなる。ゼロとならないのは、個々の永久磁石8の磁気特性や形状、第1の磁気検出部14、第2の磁気検出部20にバラツキが存在するからである。
【0038】
そして、この加算信号acの大きさを処理(例えば、閾値処理)して、磁気特性急変位置を検知する。そして、磁気特性急変位置では、da≒−dcの関係が崩れるため、da+dcは大きな出力信号になる。この加算信号ac、すなわち合成センサ出力が、界磁ヨーク4の全体に亘ってどのように変化するかを示すと、図5のようになる。また、原点周辺での加算信号acの波形を拡大すると、図7(b)のようになる。上述した閾値処理に応じて、磁気特性急変位置検知部22は、磁気特性急変位置検知信号dth及び、オーバーラン信号dovをモータ駆動制御装置30に出力している。また、上述した閾値処理は、当該リニアモータが適用される搬送装置に要求される精度に応じて、適宜、設定することができる。
【0039】
尚、磁気特性急変位置検知部22は、磁気式リニアエンコーダ16の1構成要素として、その内部に配設してもよい。更に、磁気式リニアエンコーダ16を、モータ駆動制御装置30の1構成要素として、その内部に配設することは可能であるから、磁気特性急変位置検知部22は、モータ駆動制御装置30の内部に配設することも可能である。
【0040】
本発明の実施形態に係るリニアモータでは、図3に示すように、複数の永久磁石8を密着して配列した両端部に、磁気特性急変部32が、界磁ヨーク4の一部として設けられている。尚、図3中、左端に設けられる磁気特性急変部32は、リニアモータの原点位置検出用に利用され、右端に設けられる磁気特性急変部32は、オーバーラン位置検出用として利用される。
【0041】
磁気特性急変部32は、非磁性体で構成しても磁性体で構成してもよい。尚、比透磁率rが50以上の材料が好ましく、比透磁率rが100以上の材料であれば更に好ましく、比透磁率rが10000以上の材料が最も好適である。
【0042】
また、磁気特性急変部32の材質としては、例えば、アルミニウム合金、銅合金、非磁性ステンレス鋼(例えば、SUS304)等の非磁性材料が利用可能である。更に、比透磁率が高い磁性体材料として、磁性ステンレス鋼、軟鋼、珪素鉄BFM、炭素鋼、または低炭素鋼等の利用がより好ましい。
【0043】
磁気特性急変部32のリニアモータ1の移動方向の厚さ(長さ)は、1個の永久磁石8の磁化方向の長さより短いものも利用可能であるが、永久磁石8の磁化方向の長さより長いものが好ましい。磁気特性急変位置検知部22によって安定的に磁気特性急変位置を検知するためである。磁気特性急変部32は、円筒状部材6の内径と略同じ大きさの外径を有し、外周部に接着剤を塗布した後、円筒状部材6の一端から圧入し、または、カシメにて、円筒状部材6に固定もしくは固着するのが好ましい。
【0044】
仮に、永久磁石8列の端部に磁気特性急変部32を配設することなく、空隙とした場合、端部を出た磁束は、直ぐに端部に位置する永久磁石8自身の異極に戻ろうとする。これに対して、永久磁石8列の端部に磁気特性急変部32を配設した場合には、端部を出た磁束は、磁気特性急変部32を通り端部に位置する永久磁石8自身の異極に戻ろうとする。しかも、磁気特性急変部32の材料を高い比透磁率のものとすれば、端部を出た磁束の描くループはより顕著なものとなる。
【0045】
しかも、磁気検出器は、それと直交する磁束に対しては、大きく反応する。
【0046】
すなわち、図3に示す永久磁石8列と磁気特性急変部32の配列、及び、図5に示す合成センサ出力acの波形から明らかなように、可動子10の移動指令に基づく移動方向Xと、合成センサ出力acの出力信号を両方とも監視することにより、可動子10のオーバーランが発生した場合、その検知が可能である。図3に示す永久磁石8列の左端部または右端部において、可動子10のオーバーランが発生した場合、図5に示すように、合成センサ出力acの出力が急に大きくなることがわかる。そこで、変化磁気特性急変位置検知部22により、合成センサ出力acの出力が所定の大きさより大きく変化した状態を閾値処理することにより、可動子10のオーバーラン状態を検知することが可能である。ここでの、閾値処理は、例えば当該リニアモータが適用される搬送装置に要求される精度に応じて、適宜、設定することができる。
【0047】
このようにして、通常の運転制御中、可動子10が図3の右端において右方向に移動中、磁気特性急変位置検知部22により、図5に示す右端位置x4を閾値処理により検知した場合、この位置x4を、可動子10の右端部オーバーラン状態の検知に利用可能である。同様の処理により、通常の運転制御中、可動子10が図3の左端において左方向に移動中、原点設定基準位置x1(後述する)を閾値処理により検知した場合、この位置を、可動子10の左端部オーバーラン状態の検知に利用可能である。
【0048】
図3、図6に示すように、磁気特性急変部32として、円筒状部材6の内部に永久磁石8と略同じ大きさの直径を有する中実の非磁性ステンレス鋼のSUS304(比透磁率1.0008)を使用した場合のアナログ信号の加算信号acを、図11の曲線gaに示す。図11において、横軸はスケールヘッドの位置を表わし、縦軸は合成センサ出力信号の大きさを表わしている。
【0049】
ここで、磁気特性急変部の変形例を説明する。図13に示す磁気特性急変部32bは、比透磁率r=10000の高比透磁率磁性体33で、その直径が永久磁石8の半分の大きさのものを軸心部に使用し、その外側に非磁性ステンレス鋼(SUS304)34を使用したものである。このように磁気特性急変部32bを構成した場合のアナログ信号の加算信号acを、図11の曲線gbに示す。
【0050】
更に、図14に示す磁気特性急変部32cは、比透磁率r=10000の高比透磁率磁性体で、その直径が永久磁石8と同一の大きさのものを使用したものである。この変形例のアナログ信号の加算信号acを、図11の曲線gcに示す。図11に示される磁気特性曲線群ga〜gcから、磁気特性急変部の材質としては、非磁性体または磁性体の何れの材料でも利用可能なことが理解できる。
【0051】
以上のことを踏まえて、磁気特性急変部の材質を変えたときの磁気特性について、発明者らの行ったシミュレーション結果を示すと図12のようになる。図12に示すシミュレーション結果から、少なくとも比透磁率rが50以上の磁性体を含む材料を利用するのが好ましく、比透磁率rが100以上の磁性体を含む材料を利用するのがより好ましく、比透磁率rが10000以上の磁性体を含む材料を利用するのが更に好ましいことが理解できる。
【0052】
また、磁気特性急変部の位置については、上記した実施形態に限られることはなく、いくつかのバリエーションが可能であることは言うまでもない。例えば、磁石列の端部側ではなく、界磁ヨークの途中に磁気特性急変部を配設することができる。さらに、磁気特性急変部を磁石列の端部側と界磁ヨークの途中にと、複数個所に配設することもできる。
【0053】
<原点設定及び原点設定動作>
次に、以上のように構成されたリニアモータの原点設定及び原点設定動作について説明する。
【0054】
通常の状態では、位置情報変換器28によって可動子10の現在位置を演算できる。しかし、電源をOFFにして再起動した場合や、可動子10をベース部2から取り外し、その後、可動子10を再度ベース部2に取り付けた場合等では、可動子10の絶対位置を演算することができない。位置情報変換器28において絶対位置を演算するための基準位置がずれてしまうからである。そこで、本実施形態に係るリニアモータでは、再度、基準位置を設定し確定するための原点復帰作業が、オペレータの介在無しで、自動的に実行される。
【0055】
図15乃至図18は、それぞれ本実施形態に係るリニアモータ1における原点設定の流れを示すフローチャートである。原点設定の際、可動子10と磁気特性急変部32の位置関係によって、原点設定の手法に相違がでてくるので、それぞれの場合に分けて説明する。
【0056】
図15は、原点復帰開始前に、可動子10がすでに磁気特性急変部32方向に原点を通り過ぎている場合の原点設定の流れを示している。なお、原点は、図15に示す位置にあると仮定する。
【0057】
先ず、モータ駆動制御装置30に設けられた操作盤(図示しない)から、マニュアル指令、または、リニアモータ運転プログラム中のプログラム指令により原点復帰指令がモータ駆動制御装置30に向けて出力される(ステップS101)。
【0058】
次に、モータ駆動制御装置30内のマイクロプロセッサ等の制御手段は、磁気特性急変位置検知部22が磁気特性急変部32を検知することで可動子10が磁気特性急変部32方向に原点を通り過ぎていることを検知する(ステップS102)。尚、本実施形態では、磁気特性急変部32が、リニアモータ1の端部を検出する端部検出部を兼ねる構成としている。
【0059】
次いで、予め設定記憶されている原点出し用のシーケンスプログラムを実行し、リニアモータ1の可動子10を原点に近づく方向に移動させ、そのまま原点を通過させ、さらに可動子10を原点から離れる方向に、所定距離だけ移動させる(ステップS103)。図15に示す原点の位置を抜けるためである。ここで、所定の距離としては例えば、磁気式リニアスケールの1乃至数スケールピッチ、例えば3スケールピッチ相当の距離が好適である。原点の位置を抜ける距離でさえあれば十分であることによる。
【0060】
その後、リニアモータ1を原点方向に微低速で駆動し、可動子10を原点方向に移動せしめ、第2の磁気検出部20から出力される1/2スケールピッチ(Lp/2)離れた2点間のアナログ信号の加算信号acを、磁気特性急変位置検知部22により処理し(例えば、閾値処理)、磁気特性急変位置をサーチする(ステップS104)。ここでの加算信号は、180度位相が異なる信号同士を加算しているので、2点間の磁気特性の差を演算していることになる。
【0061】
次いで、加算結果の値Vbが、所定値より大きくなった位置を、原点設定基準位置x1とする(ステップS105)。このようにして、磁気特性急変位置検知部22により、原点設定基準位置x1を検出できる。この原点設定基準位置x1は、磁気特性急変部32と永久磁石8の境界ではなく、そこからはずれている。これは、次のような理由による。すなわち、磁気特性急変部32と永久磁石8の境界付近が波形acのピークになるので、その位置をx1とすることは可能である。しかし、ピーク値は個々の界磁ヨークによりバラツキがある。そのため、ある界磁ヨークのピーク値を代表として閾値設定した場合、別の界磁ヨークではバラツキによりその閾値に届かない可能性がる。そこで、波形acの中段辺りを閾値にするのが好適であり、磁気特性急変部32と永久磁石8の境界付近とx1をずらすのが好適である。
【0062】
<所定値について>
ここで、所定値は、次のように設定することができる。まず、リニアモータ1においては、使用する永久磁石8の個々の寸法のバラツキや、永久磁石8を着磁した時の磁気特性のバラツキ及び、永久磁石8を円筒状部材6へ挿入して組立てた際に発生する永久磁石固定位置のバラツキが存在する。これらのバラツキを考慮すると、直線状に配列させた永久磁石8列の両端及び原点周辺を除いた移動範囲内で観測される、第1の磁気検出部14及び第2の磁気検出部20から出力される2つのアナログ信号da,dcの加算信号acの変動幅Vbより5%大きい値、すなわち、1.05Vbを所定値として利用することが可能である。発明者らの行った実験によれば、加算信号acの変動幅Vbより10%大きい値=1.1Vbであれば、より安定的に原点設定ができ、2つのアナログ信号の加算信号acの変動幅Vbより25%大きい値=1.25Vbであれば、更に好ましい。
【0063】
原点設定基準位置x1が判定されると、このx1から可動子10を予め決められた減速度で減速させ、可動子10が停止した位置を、スケールヘッドの位置x2(図7(b)、図7(c)参照)とする。この減速度は、例えばモータ駆動制御装置30内のマイクロプロセッサ等の制御手段に予め設定記憶しておくと好適である。尚、減速度が大きいと、x2での可動子停止時に過大なオーバシュートが発生し、界磁ヨーク端部を傷める虞がある。また、減速度が小さいと、への到着時間が増大することになる。そこで、界磁ヨーク内で停止する減速度が適切な値となる。
【0064】
次いで、可動子10をスケールヘッドの現在位置x2から移動方向を反転させる(ステップS106)。
【0065】
停止位置x2での2相正弦波アナログ信号である磁気式エンコーダのA相信号da及びB相信号dbに関して、下記の式(1)を使用して、スケールヘッドの位置xhについて計算を行う。
【0066】
xh = (Lp/2π)f( db/da ) ・・・(1)
ただし、式(1)において、f( db/da ) は下記の式(1a)〜式(1d)のように定義する。
【0067】
f( db/da ) = atan( db/da)−π/2 | da≧0 ,db≧0 ・・・(1a)
f( db/da ) = atan( db/da)+π/2 | da<0 ,db≧0 ・・・(1b)
f( db/da ) = atan( db/da)+π/2 | da<0 ,db<0 ・・・(1c)
f( db/da ) = atan( db/da)−π/2 | da≧0 ,db<0 ・・・(1d)

可動子10の停止位置x2は、求めようとするスケールヘッドの原点位置hpAを図7(a)または図7(c)のx軸上で0(ゼロ)とすると、概略値として、下記の式で表わすことができ、
x2 ≒ −xh ・・・(2)
上記式(1)のxhとほぼ等しくなる。尚、上記した位置計算は、hpA±スケールピッチ/2の範囲において有効なものである。
【0068】
可動子10を現在位置x2から図7(b)の右方向(いままでと逆方向)に微低速で移動させつつ、繰り返し式(1)を演算し、2相正弦波アナログ信号の極性変化点をサーチする(ステップS107)。
【0069】
可動子10が極性変化点に到達、すなわち、xh=0の位置(図7(c)においてx3の位置)で、可動子10を停止させ、スケールヘッドの現在位置カウンタをリセットさせる(ステップS108)。
【0070】
尚、上記式(1)では、求めようとするスケールヘッドの原点位置hpAについて、x軸上で0(ゼロ)としたが、このゼロ点を図7(a)に示す波形のどの位置に取るかで定義が変わり、式(1a)〜(1d)の「π/2」の値もが変わることになるのは言うまでもない。
【0071】
また、それぞれの永久磁石8に寸法上のバラツキ、磁化特性のバラツキ等が存在する場合には、それらバラツキによる影響を解消するため、求められた原点位置hpAについて、所望の補正を行うことができる。この補正の手法については、本発明の本旨ではないので、ここでは詳述しない。
【0072】
かくして、本実施形態では、リニアモータ1の組立作業が終了した時点で、リニアモータ1の絶対位置の基準位置(点)となる原点x3=hpAが、操作者の介在なしで実現でき、自動的に原点設定処理が実現できる。したがって、従来のような原点設定のためのオペレータによる追加作業は一切発生しない。
【0073】
次に、図16は、原点復帰開始前に、可動子10が磁気特性急変部32の位置にない場合の原点設定の流れを示している。このような位置関係にある場合には、可動子10は、原点位置を超えて、磁気特性急変部32まで移動し、再び原点位置に向けて移動する。
【0074】
まず、リニアモータ運転プログラム中のプログラム指令により原点復帰指令がモータ駆動制御装置30に向けて出力される(ステップS201)。
【0075】
次いで、リニアモータ1を原点方向に駆動して、可動子10を原点方向に移動せしめ、第2の磁気検出部20から出力される1/2スケールピッチ(Lp/2)離れた2点間のアナログ信号の加算信号acを、磁気特性急変位置検知部22により処理し(例えば、閾値処理)、磁気特性急変位置をサーチする(ステップS202)。
【0076】
次いで、加算結果の変動幅Vbが、所定値より大きくなった位置を、原点設定基準位置x1とする(ステップS203)。
【0077】
原点設定基準位置x1が判定されると、このx1から可動子10を減速させ、スケールヘッド位置x2で停止させる。
【0078】
次いで、可動子10をスケールヘッドの現在位置x2から原点方向(いままでと逆方向)に微低速で移動させつつ(ステップS204)、上記した式(1)を演算し、2相正弦波アナログ信号の極性変化点をサーチする(ステップS205)。
【0079】
可動子10が極性変化点に到達すると、可動子10を停止させ、現在位置カウンタをリセットさせる(ステップS206)。
【0080】
次に、図17は、磁気特性急変部32が界磁ヨークの途中であって、かつ原点位置よりも内側に配設されている場合の原点設定の流れを示している。このような位置関係にある場合には、可動子10は、界磁ヨークの途中に位置に配設された磁気特性急変部32を超えて移動し、原点位置に至るまで移動する。
【0081】
まず、リニアモータ運転プログラム中のプログラム指令により原点復帰指令がモータ駆動制御装置30に向けて出力される(ステップS301)。
【0082】
次いで、リニアモータ1を原点方向に駆動して、可動子10を原点方向に移動せしめ、第2の磁気検出部20から出力される1/2スケールピッチ(Lp/2)離れた2点間のアナログ信号の加算信号acを、磁気特性急変位置検知部22により処理し(例えば、閾値処理)、磁気特性急変位置をサーチする(ステップS302)。
【0083】
次いで、加算結果の変動幅Vbが、所定値より大きくなった位置を、原点設定基準位置x1とする(ステップS303)。
【0084】
原点設定基準位置x1が設定されると、可動子10をスケールヘッドの現在位置x1から原点方向に微低速で移動させつつ、上記した式(1)を演算し、2相正弦波アナログ信号の極性変化点をサーチする(ステップS304)。
【0085】
可動子10が極性変化点に到達すると、可動子10を停止させ、現在位置カウンタをリセットさせる(ステップS305)。
【0086】
次に、図18は、磁気特性急変部32が界磁ヨークの途中であって、かつ原点位置よりも外側に配設されている場合の原点設定の流れを示している。このような位置関係にある場合には、可動子10は、原点を超えて移動し、界磁ヨークの途中に位置に配設された磁気特性急変部32の位置で移動方向を変え、原点位置に至るまで移動する。
【0087】
まず、リニアモータ運転プログラム中のプログラム指令により原点復帰指令がモータ駆動制御装置30に向けて出力される(ステップS401)。
【0088】
リニアモータ1を原点方向に駆動して、可動子10を原点方向に移動せしめ、第2の磁気検出部20から出力される1/2スケールピッチ(Lp/2)離れた2点間のアナログ信号の加算信号acを、磁気特性急変位置検知部22により処理し(例えば、閾値処理)、磁気特性急変位置をサーチする(ステップS402)。
【0089】
次いで、加算結果の変動幅Vbが、所定値より大きくなった位置を、原点設定基準位置x1とする(ステップS403)。
【0090】
原点設定基準位置x1が判定されると、このx1から可動子10を減速させ、スケールヘッド位置x2で停止させる。
【0091】
次いで、可動子10をスケールヘッドの現在位置x2から原点方向(いままでと逆方向)に微低速で移動させつつ(ステップS404)、上記した式(1)を演算し、2相正弦波アナログ信号の極性変化点をサーチする(ステップS405)。
【0092】
可動子10が極性変化点に到達すると、可動子10を停止させ、現在位置カウンタをリセットさせる(ステップS406)。
【0093】
尚、上述したいずれのケースにおいても、リニアモータ1の絶対位置の基準位置(点)となる原点hpAが設定できた時点で、所定の期間、LED等の発光手段を点灯させてもよい。または、ブザー等の可聴周波数の発音手段を作動させて、外部に告知する告知手段を、磁気式リニアエンコーダ16に付設すると、オペレータにより容易に原点設定処理の終了が確認でき好適である。
【0094】
<変形例>
上述した原点設定では、原点近傍で極微低速に減速して、原点設定誤差を出来る限り小さい範囲に留めるため、位置x2から大まかな戻る距離が予め把握可能な演算方法を採用した。この他にも、図7(a)の例では、2相正弦波アナログA相信号daまたはB相信号dbが、正から負(または負から正)へ極性が変化する位置を求めることでも原点設定の処理は可能である。
【0095】
更に、磁気特性急変位置検知部22により原点設定基準位置x1が検知できた直後に、位置情報変換器28をリセットして、原点設定基準位置x1を原点として利用することも、位置精度が多少粗くても十分な利用分野では採用可能である。
【0096】
本実施形態によれば、リニアモータの絶対位置を演算する基礎となる原点設定のために、従来人間が介在しなければならなかった作業、即ち、リミットスイッチやドッグの取り付け、調整、設定作業が一切不要である。また、リニアモータの組立てが終了した時点で、原点設定関係の組立及び取付け作業も同時に全て終了し完了する。
【0097】
さらに、リニアモータの永久磁石周辺及び周囲の磁界分布あるいは磁界特性に基づき、磁気特性急変位置を自動的に検知することから、簡単かつ正確に原点設定ができる。
【0098】
すなわち、原点設定に際し、オペレータの介在を必要としないことから、作業者の能力による原点設定作業のばらつき等も排除でき、再現性のよい安定したリニアモータの原点設定立ができる。
【0099】
なお、本発明は上記の実施形態のそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】第1の実施形態に係るリニアモータの概略構成を示す正面図である。
【図2】図1におけるA−Aでの断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るリニアモータの側面略図である。
【図4】第1の実施形態の第1の磁気検出部の出力波形である。
【図5】第1の実施形態の第2の磁気検出部の出力を加算した波形である。
【図6】第1の実施形態に係るリニアモータの原点周辺の部分拡大図である。
【図7】(a)は図6における第1の磁気検出部の出力波形の部分拡大図、(b)は図6における第2の磁気検出部の出力を加算した波形の部分拡大図、(c)は原点設定に際しての可動子に対する運転指令を示す参考図である。
【図8】同極磁石を対向かつ密着させた場合の合成磁界のシミュレーション結果を示す図である。
【図9】同極磁石を対向かつ密着させると共に、高比透磁率の円筒部材を使用した場合の合成磁界のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係るリニアモータのドライブシステムの構成例を示すブロック図である。
【図11】比透磁率に応じて変化する合成センサ出力を示す図である。
【図12】比透磁率に応じて変化する合成センサ出力について行ったシミュレーション結果を示す図である。
【図13】本発明の磁気特性急変部の別の構成例を示す図である。
【図14】本発明の磁気特性急変部の別の構成例を示す図である。
【図15】本実施形態に係るリニアモータにおける原点設定の流れを示すフローチャートである。
【図16】本実施形態に係るリニアモータにおける原点設定の流れを示すフローチャートである。
【図17】本実施形態に係るリニアモータにおける原点設定の流れを示すフローチャートである。
【図18】本実施形態に係るリニアモータにおける原点設定の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
1・・・リニアモータ、4・・・界磁ヨーク、6・・・円筒状部材、8・・・永久磁石、10・・・可動子、12・・・電機子コイル、14、20・・・磁気検知部、16・・・磁気式リニアエンコーダ、18・・・スケールヘッド、19・・・磁気スケール部、22・・・磁気特性急変位置検知部、28・・・位置情報変換器、30・・・モータ駆動制御装置、32、32b、32c・・・磁気特性急変部、50・・・ドライブシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部材の中空部に、複数個の永久磁石を互いに同一の磁極を対向して密着させて、直列状に配置して構成された界磁ヨークと、前記磁石列と磁気的空隙を介して対向配置された電機子コイルを有する電機子と、前記磁石列の端部または途中に配設され、前記磁石列の磁気特性を急激に変化せしめる磁気特性急変部と、前記磁石列を磁気スケール部として構成し、2個の前記永久磁石間の長さを前記磁気スケール部のスケールピッチとして設定されるとともに、互いに電気角で位相を90°(スケールピッチの1/4波長に相当)ずらして配置された複数個の第1の磁気検出器と、この第1の磁気検出器から電気角で位相を180°(スケールピッチの1/2波長に相当)ずらして配置された第2の磁気検出器を、前記電機子の長手方向に有した位置検出用の磁気式リニアエンコーダとを有し、前記界磁ヨークと前記電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、前記磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドを前記電機子側に備え、前記界磁ヨークと前記電機子を相対的に直線走行するようにしたリニアモータの原点設定方法であって、
前記可動子を原点方向に移動させて、前記磁石列の磁気特性が急激に変化する磁気特性急変位置をサーチし、
この磁気特性急変位置を基にして、原点設定のための原点設定基準位置を設定し、
この原点設定基準位置から前記可動子を所定の減速度で減速させ、前記スケールヘッドが所定値となる位置で停止させ、
この停止位置から前記可動子の移動方向を反転させて、前記磁気式リニアエンコーダから得られる磁気特性の極性変化点をサーチし、
この極性変化点の位置で、前記可動子を停止させ、前記リニアモータの絶対位置の基準位置とすることを特徴とするリニアモータの原点設定方法。
【請求項2】
円筒状部材の中空部に、複数個の永久磁石を互いに同一の磁極を対向して密着させて、直列状に配置して構成された界磁ヨークと、前記磁石列と磁気的空隙を介して対向配置された電機子コイルを有する電機子と、前記磁石列の端部または途中に配設され、前記磁石列の磁気特性を急激に変化せしめる磁気特性急変部と、前記磁石列を磁気スケール部として構成し、2個の前記永久磁石間の長さを前記磁気スケール部のスケールピッチとして設定されるとともに、互いに電気角で位相を90°(スケールピッチの1/4波長に相当)ずらして配置された複数個の第1の磁気検出器と、この第1の磁気検出器から電気角で位相を180°(スケールピッチの1/2波長に相当)ずらして配置された第2の磁気検出器を、前記電機子の長手方向に有した位置検出用の磁気式リニアエンコーダとを有し、前記界磁ヨークと前記電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、前記磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドを前記電機子側に備え、前記界磁ヨークと前記電機子を相対的に直線走行するようにしたリニアモータの原点設定方法であって、
前記磁石列の磁気特性が急激に変化する磁気特性急変位置をサーチして、前記可動子が前記磁気特性急変部方向に原点を通り過ぎていることを判断し、
前記可動子を原点に近づく方向に移動させて、そのまま原点を通過させ、
さらに前記可動子を原点から離れる方向に、所定距離だけ移動させ、
前記可動子を原点方向に移動させて、前記磁気特性急変位置をサーチし、
この磁気特性急変位置を基にして、原点設定のための原点設定基準位置を設定し、
この原点設定基準位置から前記可動子を所定の減速度で減速させ、前記スケールヘッドが所定値となる位置で停止させ、
この停止位置から前記可動子を原点方向に移動させて、前記磁気式リニアエンコーダから得られる磁気特性の極性変化点をサーチし、
この極性変化点の位置で、前記可動子を停止させ、前記リニアモータの絶対位置の基準位置とすることを特徴とするリニアモータの原点設定方法。
【請求項3】
円筒状部材の中空部に、複数個の永久磁石を互いに同一の磁極を対向して密着させて、直列状に配置して構成された界磁ヨークと、前記磁石列と磁気的空隙を介して対向配置された電機子コイルを有する電機子と、前記磁石列の端部または途中に配設され、前記磁石列の磁気特性を急激に変化せしめる磁気特性急変部と、前記磁石列を磁気スケール部として構成し、2個の前記永久磁石間の長さを前記磁気スケール部のスケールピッチとして設定されるとともに、互いに電気角で位相を90°(スケールピッチの1/4波長に相当)ずらして配置された複数個の第1の磁気検出器と、この第1の磁気検出器から電気角で位相を180°(スケールピッチの1/2波長に相当)ずらして配置された第2の磁気検出器を、前記電機子の長手方向に有した位置検出用の磁気式リニアエンコーダとを有し、前記界磁ヨークと前記電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、前記磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドを前記電機子側に備え、前記界磁ヨークと前記電機子を相対的に直線走行するようにしたリニアモータの原点設定方法であって、
前記可動子を原点方向に移動させ、前記磁石列の磁気特性が急激に変化する磁気特性急変位置をサーチし、
この磁気特性急変位置を基にして、原点設定のための原点設定基準位置を設定し、
この原点設定基準位置から前記可動子を所定の減速度で減速させ、前記スケールヘッドが所定値となる位置で一旦停止させ、
停止位置からさらに可動子を原点方向に移動させて、前記磁気式リニアエンコーダから得られる磁気特性の極性変化点をサーチし、
この極性変化点の位置で、前記可動子を停止させ、前記リニアモータの絶対位置の基準位置とすることを特徴とするリニアモータの原点設定方法。
【請求項4】
円筒状部材の中空部に、複数個の永久磁石を互いに同一の磁極を対向して密着させて、直列状に配置して構成された界磁ヨークと、前記磁石列と磁気的空隙を介して対向配置された電機子コイルを有する電機子と、前記磁石列の端部または途中に配設され、前記磁石列の磁気特性を急激に変化せしめる磁気特性急変部と、前記磁石列を磁気スケール部として構成し、2個の前記永久磁石間の長さを前記磁気スケール部のスケールピッチとして設定されるとともに、互いに電気角で位相を90°(スケールピッチの1/4波長に相当)ずらして配置された複数個の第1の磁気検出器と、この第1の磁気検出器から電気角で位相を180°(スケールピッチの1/2波長に相当)ずらして配置された第2の磁気検出器を、前記電機子の長手方向に有した位置検出用の磁気式リニアエンコーダとを有し、前記界磁ヨークと前記電機子の何れか一方を固定子に、他方を可動子として、前記磁気式リニアエンコーダのスケールヘッドを前記電機子側に備え、前記界磁ヨークと前記電機子を相対的に直線走行するようにしたリニアモータの原点設定方法であって、
前記可動子を原点方向に移動させて、前記磁石列の磁気特性が急激に変化する磁気特性急変位置をサーチし、
この磁気特性急変位置を基にして、原点設定のための原点設定基準位置を設定し、
この原点設定基準位置から前記可動子を所定の減速度で減速させ、前記スケールヘッドが所定値となる位置で一旦停止させ、
前記原点設定基準位置を、前記リニアモータの絶対位置の基準位置とすることを特徴としたリニアモータの原点設定方法。
【請求項5】
前記磁気特性急変位置は、前記第2の磁気検出器から出力される1/2スケールピッチ離れた2点間のアナログ信号の加算信号を、閾値処理してサーチされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリニアモータの原点設定方法。
【請求項6】
前記加算信号は、2点間の磁気特性の差を演算することを特徴とする請求項5記載のリニアモータの原点設定方法。
【請求項7】
前記原点設定基準位置は、加算結果の値Vbが、所定値より大きくなった位置とすることを特徴とする請求項5記載のリニアモータの原点設定方法。
【請求項8】
前記所定の減速度は、前記可動子が前記界磁ヨーク内に収まるように設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリニアモータの原点設定方法。
【請求項9】
前記極性変化点の位置で、前記スケールヘッドの現在位置を示すカウンタをリセットすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリニアモータの原点設定方法。
【請求項10】
前記原点設定基準位置で、前記スケールヘッドの現在位置を示すカウンタをリセットすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリニアモータの原点設定方法。
【請求項11】
求めた前記リニアモータの絶対位置の基準位置について、さらに補正を加えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリニアモータの原点設定方法。
【請求項12】
前記磁気特性急変部が、前記リニアモータの端部検出部を兼ねている請求項1乃至11のいずれか1項に記載のリニアモータの原点設定方法。
【請求項13】
前記原点復帰設定動作または原点設定の完了の際、所定の期間、発光器を点灯させ、あるいは発音器を作動させることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のリニアモータ原点設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−289345(P2008−289345A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61141(P2008−61141)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(594090724)株式会社ワコー技研 (3)
【Fターム(参考)】