説明

リン酸三カルシウム、その複合体、それらを組み入れたインプラント、及びそれらの製造方法

リン酸三カルシウムの合成方法、及び、特定の方法において、リン酸三カルシウム前駆析出物における特性に合うように調節されうる一連の具体的反応パラメーターを提示する。約250nm以下の平均結晶径を有する粒子状リン酸三カルシウム組成物を提供する。本発明の組成物は、人工器官インプラント及び人工器官インプラント用被覆として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概してバイオセラミック、特にリン酸三カルシウムバイオセラミック、これらの材料を組み入れた複合体、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
許容可能な期間にわたるオステオインテグレーションを提供しつつ多様な臨床適用用の優れた構造支持体を提供するインプラント材料の必要性が広く認識されている。従来の金属インプラントは、短期の機械的目的を達成する埋め込んだ領域の機械的安定性を保証するように設計されるが、皮膚上への隆起、不均一な治癒、骨萎縮、インプラントの移動及びゆるみを含む、多数の長期的な臨床的問題を生じ、これらすべてはインプラントを取り除く二度目の手術をもたらしうる。
【0003】
金属製インプラントに関連したこれらの病的状態は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、それらの共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンフマレート、コラーゲン、又はコラーゲン−グリコアミノグリカンから構成されている(compromised of)高分子インプラント及び再吸収可能なインプラントへの関心を刺激した。これらのデバイスは、脆弱な機械的安定性、洞管の形成、骨溶解、滑膜炎、局所的な炎症、及び肥大性繊維性被包化に関連する多くの臨床的問題が原因で、広くは受け入れられていない。その結果、耐荷重及び非耐荷重の両者の用途で使用するための、より強く、より生体適合性で、再吸収可能な整形外科的インプラントへの臨床的要求が存在している。このようなインプラントは、以下の特性を有する生体材料を組み入れる:1)充分な治癒を可能とするために必要な継続時間の間の損傷部位での機械的安定性、2)周辺の宿主組織との生体適合性、3)宿主骨とのオステオインテグレーション、及び4)無菌性炎症の除去。
【0004】
バイオセラミックは潜在的に上記所望の特性を有しうる生体材料であることが判明している。それらは、頭蓋顎骨顔面的、歯科的、及び整形外科的用途、ならびに口腔、形成、ならびに耳、鼻及び喉の手術での広範囲な使用が見出されており、それらのインビボでの相互作用(生体不活性、生体活性、及び再吸収性)に従って分類されている。一般的なバイオセラミックは、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウムを基礎とするセラミック、及びガラス−セラミック複合体である。
【0005】
生体不活性なバイオセラミックには、アルミナ及びジルコニアが挙げられ、体がそれらを異物として認識しそれらを繊維組織中に被包化するためそのように見なされている。さらに、この反応に関連する組織増殖は、表面の凹凸内への組織の成長を促すことによって不活性なセラミック物品を体内に機械的に固定するか、又は、空隙を意図的に導入するために使用される。多くのセラミック組成物が体の様々な部位を修復するためのインプラントとして試験されているが、ヒト臨床用途を達成しているものはほとんどない。これらのセラミックに関連する問題は、典型的には、結合組織との安定な接合部分の欠落及び/又はインプラントと置き換えられるべき組織との間の機械的特性の不整合を伴う(Hench、「Bioceramics: from Concept to Clinic」、J.Am.Ceram.Soc.、1991,74,1487−1510を参照)。生体不活性なバイオセラミック材料の場合、インプラント表面上への脆弱な繊維組織の物理的相互嵌合のみが得られる。頻繁に見られることであるが、周辺組織とインプラントとの間のこの固定の強度が不十分な場合、バイオセラミックのゆるみがインプラントの不具合と共に周辺組織の壊死を引き起こしうる。例えば、アルミナ又はジルコニアのインプラントが体内に堅固な機械的嵌合で埋め込まれ、組織との接合面で移動が起こらなければ、そのインプラントは臨床的に成功でありうる。しかし、移動が起こった場合、インプラント周辺の繊維状被膜が成長して、インプラントのゆるみを引き起こしかつ臨床的不具合を招く数百ミクロンの厚さになりうる。
【0006】
生体活性のバイオセラミックには、ハイドロキシアパタイト、バイオガラス、及びバイオガラス−セラミックが挙げられる。「生体活性」材料はその表面で特定の生物学的な反応を引き起こすものであり、これにより、周辺組織との有益な生物学的及び化学的反応が生じる。これらの反応は、機械的固定を与えるのみのインプラントの微細孔中への組織の単なる増殖よりはむしろ、組織と生体活性インプラントとの間の接合部位における組織への化学的及び生物学的結合を引き起こす。ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH)、JC−PDS 9−432)は、その組成が天然の骨塩に近似しており、本質的に生体活性及び骨伝導性であることから、整形外科的及び歯科的用途において特に興味深い。ハイドロキシアパタイトは耐荷重性インプラント材料となりうる潜在性を有しているが、最も一般的なリン酸カルシウム処理技術が、脆弱な機械的特性をもたらす耐荷重性インプラントにおける該処理に関連する欠点を取り除くことができないため、用途は、被覆に、多孔性インプラントに、そして、複合体における生体活性相として限られている。ハイドロキシアパタイト材料の処理に関する問題は、米国特許第6,013,591号に開示された方法により少なくとも一部については解決されており、該米国特許は、高密度化され、圧縮強さ、曲げ強さ、及び破壊靭性が改善されたハイドロキシアパタイト構造を形成しうる、ナノメーターサイズのハイドロキシアパタイト粒子の合成を記載している。これらの結果は、ナノ結晶性材料に固有のひびのサイズの減少によるものでありうる。
【0007】
吸収性バイオセラミックには、リン酸三カルシウム(TCP)、硫酸カルシウム、及び他のリン酸カルシウム塩に基づくバイオセラミックが挙げられる。それらは、損傷組織を置換するように使用され、最終的には宿主組織がインプラントと置き換わるように吸収される。吸収性バイオセラミックに関連する長きにわたる問題は、強度の維持、接合部位の安定性、及び宿主組織の再生率へのその吸収速度の適合である。さらに、多量の材料が細胞によって消化されなければならないため、吸収性バイオセラミックの構成物質は、望ましくは、代謝的に許容可能である。このことは、これらの組成物に厳格な制限を強いている。硫酸カルシウムは典型的には、機械的強度が必要でない場合に、急速に分解する骨充填材として用いられている。α−TCP(α−Ca(PO、JC−PDS 9−348)及びβ−TCP(β−Ca(PO、JC−PDS 9−169)は、典型的には、硫酸カルシウム(CaSO、JC−PDS 6−0046)よりも大きな機械的強度を有する急速に分解する骨充填材が必要なときに用いられる。硫酸カルシウムとTCPは急速に分解するが、それらはどちらも骨充填材へのその用途が限られる脆弱な機械的特性に苦慮している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リン酸カルシウム生体材料は本質的に生体活性及び吸収性であるため、それらはナノ構造を通じて、機械的強度、吸収及び周辺組織との結合に合うように調整できる。α−及びβ−TCPが広く用いられ、人工器官に有利な機械的及び形態的特性を有するTCP製剤が非常に有用であろうが、信頼性のある構造的TCPインプラントを製造する今日までの試みは失敗している。従って、本発明の目的は、構造的インプラントに有用な構造的及び形態的特性を有するα−及びβ−TCP材料、及びそれらの複合体を合成する技術を提供することである。特に、本発明の目的は、微細構造制御、欠陥の削減又は排除、製造の容易性、コストの最小化を可能にする条件下において高密度化できるTCP材料を製造する合成及び処理技術を提供することである。本発明の他の目的は、合成及び処理中の結晶径、形態及び組成制御を通じて、焼結中の微細構造を制御することにより、向上した機械的特性、向上した生体活性/オステオインテグレーション、及び制御された吸収プロファイルを有するTCP材料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、特に小さな結晶径及び/又は粒子径を有するリン酸三カルシウム(TCP)材料を含む組成物及び物品を提供する。本発明はさらに、完全に高密度で無欠陥であるか又は広範囲な多孔度を有する、多様な物品へとTCPを統合する方法を提供する。
【0010】
TCP(すなわち、α−及び/又はβ−TCP)は、湿式化学法により高表面積粉末、被覆、多孔質体、及び高密度物品へと形作られうる。この湿式化学法は、予備反応と、反応生成物の特徴(例えば、形態、大きさ、及び反応性)の両方の点において、多用途で、単純で、制御が容易であるため好ましい。前駆体タイプ、前駆濃度、溶媒環境、前駆体添加速度、エージング時間、エージング温度、及び析出中のpHは、TCP前駆材料の分子的及び構造的発達を制御する処理パラメーターと見なされている。さらに、洗浄、乾燥及び粉砕を通じて析出物からの乾燥粒子形成を制御することにより、超微細粒子状TCP前駆粉末を得ることができる。
【0011】
このTCP前駆粉末を、その後、例えば焼成工程によってTCPに変換する。充填及び高密度化を改善し焼結温度を低くしうる超微細粒子状TCPの形成を可能にする適切な析出条件を用いて、焼成温度は顕著に減少させることができる。得られるTCPの相(すなわち、α又はβ)は、少なくとも一部は、その析出及び処理の条件ならびに焼成の温度及び環境に依存する。あるいは、前駆粉末をTCPに変換するために、マイクロ波、X線、レーザー、電子ビーム又は中性子ビームを用いる方法を使用することができる。
【0012】
高密度TCP物品は、この超微細TCP粉末を用いた無加圧又は加圧の焼結プロセスにより、製造することができる。物品中の結晶径を縮小することにより、最も小さな起こりうる欠陥のサイズは減少し、それにより最も高いありうる強度は増大する。加えて、急速超塑性ネットシェイプ成形を可能にする粒界すべりを許容する粒界の体積分率の増加とともに、セラミックは低温度において、より可塑性になる。さらに、高密度TCPの吸収プロフィールは、焼結中の加熱処理を延長することにより、又は微細構造を変化させる焼結後熱サイクルを通じて、制御されうる。次いで、その結果生じる制御された粒子成長を、吸収速度を増加又は減少させるために使用しうる。次いで、このTCP前駆粉末を、例えば焼成工程によってTCPに変換する。充填及び高密度化を改善し焼結温度を低くしうる超微細粒子状TCPの形成を可能にする適切な析出条件を用いて、焼成温度を顕著に減少させることができる。得られるTCPの相(すなわち、α又はβ)は、少なくとも一部は、その析出及び処理の条件ならびに焼成の温度及び環境に依存する。あるいは、TCPを加圧し又は加圧せずに高密度物品へ焼結するために、マイクロ波、X線、レーザー、電子ビーム又は中性子ビームを用いる方法が使用されうる。
【0013】
それゆえ、本発明のTCPは、より粗い微細構造を有する従来のTCPと比較して、より優れた信頼性及びより良好な機械的特性を有している。加えて、本発明のTCPは、ナノ複合体処理中に補助補強種をTCP前駆材料に組込むことにより、構造的に補強することができる。
【0014】
一つの局面において、本発明は、約250nm以下の平均TCP結晶径、及び約5μm以下の平均粒子径を有する粒子状TCPを含む組成物を提供する。他の実施態様において、本発明は約20m/g以上のBET表面積を有するTCP組成物を提供する。
【0015】
他の局面において、本発明は約80μm以下の平均結晶径、及び理論密度約90%の密度を有する、強化TCP構造を含む物品を提供する。さらに他の局面において、本発明は、約1μm以下の平均結晶径、及び約20%以上の多孔度を有する強化TCP構造を含む物品を提供する。
【0016】
本発明はまた、約400℃〜約1400℃の温度でTCP前駆析出物を焼成し、約20m/g以上のBET表面積及び約250nm以下の結晶径を有するナノ構造化TCP物品を回収する方法を提供する。本発明はまた、約400℃〜約1400℃の温度でTCP前駆材料を焼成すること、ならびに、約20m/g以上のBET表面積及び約5ミクロン以下の平均粒子径を有するナノ構造化TCP物品を回収することを含む方法を提供する。
【0017】
他の局面において、本発明は、組成物が無加圧焼結により約90%以上の理論密度まで焼結されうるのに十分小さな平均結晶径を有する粒子状TCP組成物を提供する。他の局面において、加圧焼結によりTCPを含む組成物を約90%以上の理論密度まで焼結することを含む方法を提供する。本発明はまた、いずれの焼結添加剤も存在しない状態でTCPを焼結することを含む方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の他の利点、新規特徴、及び目的は、下記の発明の詳細な説明によって明らかになる。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明はナノ構造化TCPの合成法、埋め込み可能な物品中へのナノ構造化TCPの処理、及び関連する方法を実施する工程を提供する。望ましくは、これらの方法は、(a)微細構造制御及びナノメートルスケールでの設計、(b)分子レベルでの相均一性及び化学的均質性、(c)化学的及び物理学的特性の均一性、(d)部分的に強化されたリン酸三カルシウムの機械加工性、(e)焼結挙動、(f)機械的信頼性及び強度、(g)ネットシェイプ成形、(h)多孔質体及び高密度体の製造、(i)複合体材料の形成、及び/又は(j)遺伝子、薬物及びタンパク質の輸送デバイスに関する1つ以上の改良をもたらす。
【0020】
本発明の合成法は、好ましくは、TCP生成物に非常に優れた微細構造制御をもたらす。従って、本発明により提供されるTCPは、好ましくは、より粗い微細構造を有する従来の多結晶TCPと比較して、低減された亀裂サイズ、より優れた信頼性、より良好な機械的特性(例えば、強度及び破壊靭性)、改良された延性、及び向上された生体活性をもたらす超微細構造を用いて、高密度化されうる。より細かい微細構造のため、本発明のTCPは、焼結の助けの必要なく、実質的により低い温度で、高密度化されうる。ナノ構造化TCPは、優れた機械的特性を提供するだけでなく、安価で迅速なプロトタイピングのための超塑性ネットシェイプ成形の可能性も与える。
【0021】
本発明はさらに、脱凝集された(deagglomerated)ナノメーターサイズのTCP粒子を含むTCP組成物を提供する。湿式化学法は、組成の均一性が提供されるという利点をもたらす好ましい組成物の合成で用いられる。さらにこの方法は、多用途であり、予備反応と反応生成物の性質の両方の点で制御が容易である。この処理は、析出粒子の形態、大きさ、及び反応性を制御することにより、強化/高密度化TCP物品、多孔質体、被覆、セメント、及び複合体などの異なる適用に合わせることができる。本発明のTCP組成物は、好ましくは、数ミクロン以下のオーダーの粒子径及び狭い対数正規粒子径分布を有するTCP粉末を含む。
【0022】
結晶径は典型的には、TCP組成物から調製された強化又は高密度化物品におけるバルク特性を決定する。TCP結晶径の最小化は、より小さな結晶は互いにより迅速に再配置及び充填しうるので、また密度を高める高密度化前の結晶の凝集が最小化されるので、例えば焼結中で、結晶の強化をより容易にする。従って、好ましくは本発明のTCP粉末は、材料の平均結晶径に近い平均粒子径を有している。加えて、極めて小さな結晶径を有する本発明のバイオセラミックTCP材料は、粉末又は被覆中での使用、及び骨との使用に理想的である。健康な骨の結晶径はほぼ20〜30nmであり、類似する結晶径を有するバイオセラミック材料は、結果として骨とより相性が良い。
【0023】
従って、本発明の組成物は、約250nm以下(例えば、約220nm以下、約200nm以下、又は約180nm以下)の平均結晶径を有する粒子状TCPを含む。好ましくは、結晶径は約150nm以下(例えば、約130nm以下)、より好ましくは約100nm以下(例えば、約80nm以下、又は約50nm以下)、及び最も好ましくは約30nm以下(例えば、約20nm以下)である。いくつかの実施態様において、TCP吸収速度を遅らせるために、粒子状TCPは約500nm以上(例えば、約1ミクロン以上、約3ミクロン以上、約12ミクロン以上、又はさらには約60ミクロン以上)の平均結晶径を有していることが望ましい。
【0024】
加えて、本発明の組成物は小さな平均粒子径、特に約5μm以下(例えば、約3μm以下、約2μm以下、又は約1μm以下)の平均粒子径、好ましくは約800nm以下(例えば、約650nm以下)の平均粒子径、より好ましくは約500nm以下(例えば、約400nm以下)の平均粒子径を有する粒子状TCPを含む。いくつかの実施態様においては、粒子状TCPは約100nm以上(例えば、約150nm以上、又は約200nm以上)の平均粒子径を有することが望ましい。好ましい粒子径と好ましい結晶径の任意の組み合わせが、本発明の好ましい組み合わせ(例えば、約150nm以下の平均結晶径と約1μm以下の平均粒子径など)を定義しうる。好ましくは、結晶径はX線回折ピークのピークブロード分析により又はTEMにより決定され、粒子径はレーザー散乱又は回折により又は電子マイクロコピー(例えば、TEM又はSEM)により決定される。
【0025】
典型的には、粒子状TCPは狭い対数正規粒子径分布を有している。例えば、典型的には約25%以上(例えば、約50%以上、約75%以上)のTCP粒子が、約1ミクロン以下(例えば、約100nm〜約800nm)の粒子径を有する。さらに、90%以上のTCP粒子は約10ミクロン以下未満(例えば、約7.5ミクロン以下、約5ミクロン以下)の粒子径を有する。結晶径及び粒子径は、例えば上記技術を含む、任意の適切な技術により決定されうる。
【0026】
本発明の組成物は、好ましくは高表面積を有するTCP粒子を含む。典型的には、BET表面積は約20m/g以上である。好ましくは、BET表面積は、約40m/g以上(例えば、約60m/g以上、又は約80m/g以上)、より好ましくは約100m/g以上(例えば、約120m/g以上、又は約150m/g以上)である。
【0027】
TCP粒子は任意の適当な形態を有することができ、例えばこの粒子は約1:1〜約50:1のアスペクト比を有することができる。TCP粒子の形態は、所望の用途に依存する。TCP粒子が高密度化物品の形成に用いられる場合、好ましくは、TCP組成物は実質的に等軸のTCP粒子(例えば、約3:1以下、約1.5:1以下、又は約1:1のアスペクト比を有する)を含む。TCP粒子が多孔質強化物品の形成に使用される場合、又は強化剤高密度複合体物品として使用される場合、好ましくは、TCP組成物は、ウィスカー様のTCP粒子(例えば、約3:1以上、5:1以上、又はさらには10:1以上のアスペクト比を有する)を含む。
【0028】
本発明のTCP組成物は、望ましくは、湿式化学法を用いて調製される。湿式化学法は、(i)TCP前駆材料(例えば、モネタイト(CaHPO)、ブラッシャイト(CaHPO・2HO)、ハイドロキシアパタイト、アモルファスリン酸カルシウム、リン酸八カルシウム、又はそれらの組み合わせ)を析出すること、(ii)TCP前駆材料を回収すること、(iii)TCP前駆材料を製粉して、TCP前駆結晶が最小限度まで凝集された粉末を形成すること、及び(iv)TCP前駆粉末を変換して、TCPを形成することを含む。好ましくは、析出したTCP前駆材料の個々のナノ結晶は個々の粒子を定義する。この方法は必要に応じ、(v)TCPを強化及び高密度化して、有用な特性を有するTCP材料又は物品を形成することをさらに含む。湿式化学法は、組成の均一性を提供するという利点をもたらす好ましい組成物の合成で使用され、そしてこの方法は多用途であり、予備反応及び反応生成物の特性の両方の点で制御が容易である。
【0029】
特定の用途に見合った特性を有するTCPを生成するため、エージング温度、エージング時間、反応物質の添加速度(例えば、TCP生成における塩基性リン酸水素アンモニウム溶液への硝酸カルシウム溶液の添加速度)、化学的析出中の溶液のpH、前駆濃度及び溶媒環境などの、分子的及び構造的改善ならびにTCP前駆材料の化学的性質に影響を与える一連の処理パラメーターが本発明に従い提供される。製粉方法、焼成の温度/方法、及び焼結の温度/方法などのセラミック粒子の凝集及び高密度化に影響を与えるパラメーターもまた提供される。
【0030】
上記の通り、湿式化学法は、カルシウム塩及びリン酸塩源を含む溶液からTCP前駆材料を析出することを含む。カルシウム及びリン酸塩源は、任意の適当な源でありえ、それらの多くは当該分野で一般に公知である。例えば、カルシウム源は、硝酸カルシウム及びその任意の水和物、亜硝酸カルシウム、窒化カルシウム、酢酸カルシウム及びその任意の水和物、水酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド(例えば、ジエトキシド、ジイソプロポキシド、及びジブトキシド)、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム(calcium proprionate)、過塩素酸カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。好ましくは、カルシウム源は硝酸カルシウムである。リン酸塩源は、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、リンアルコキシド(phosphorous alkoxide)(例えば、トリアルキルフォスフェート(例えば、トリブチルフォスフェート又はトリエチルフォスフェート)又は亜リン酸トリアルキル(例えば、亜リン酸トリブチル又は亜リン酸トリエチル))、β−グリセロリン酸、ブチルリン酸、ホスホノ酢酸、五酸化リン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。好ましくは、リン酸塩源はリン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、又はこれらの組み合わせである。
【0031】
望ましくは、カルシウム塩及びリン酸塩源は、後に組み合される別々の溶液、安定な懸濁液、又はエマルジョンとして形成される。溶媒は任意の適当な溶媒でありうる。TCP前駆体は、水、極性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、又はトルエン)、又はこれらの混合物中で析出されうる。水と極性有機溶媒が混合物として使用される場合、極性有機溶媒は望ましくは水混和性である。好ましくは、TCP前駆粉末は、水、アルコール、油状物、及び界面活性剤の混合物から析出される。水又は水と極性有機溶媒との混合物が用いられる場合、水溶性カルシウム塩、例えば、硝酸カルシウム及び任意のその水和物、窒化カルシウム、亜硝酸カルシウム、酢酸カルシウム及び任意のその水和物、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、及びこれらの組み合わせ、ならびに、水溶性リン酸塩、例えば、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、β−グリセロリン酸、ブチルリン酸、ホスホノ酢酸、及びこれらの組み合わせが、好ましくは用いられる。
【0032】
カルシウム源溶液とリン酸塩源溶液は任意の適当な濃度を有しうる。典型的には、リン酸塩源溶液の濃度はカルシウム源溶液の濃度の約3分の2である。望ましくは、カルシウム源溶液は約2M以下(例えば、約1.5M以下、又は約1M以下)の濃度を有する。より低い濃度の溶液を使用したときにはTCP前駆析出物の収率は減少するが、比較的低い源溶液を使用した場合に、析出TCP前駆材料の最適な物理的及び化学的特性が得られる。従って、約0.1M〜約1.5M(例えば、約0.12M〜約1M、又は約0.15M〜約0.5M)のカルシウム源溶液濃度が好ましい。リン酸塩源溶液は典型的には約1.3M以下(例えば、約1M以下、又は約0.6M以下)の濃度を有する。好ましくは、リン酸塩源溶液は、約0.05M〜約1M(例えば、約0.07M〜約0.6M、又は約0.1M〜約0.3M)の濃度を有する。
【0033】
好ましくは、TCP前駆材料は、リンに対するカルシウムのモル比が約1〜約2(例えば、約1.2〜約1.8)であるカルシウム源溶液及びリン酸塩源溶液から析出される。より好ましくは、リン源に対するカルシウム源のモル比は約1.4〜約1.6、より好ましくは約1.5(すなわち、3:2)である。カルシウム源溶液をリン酸塩溶液に加えることによるか、リン酸塩源溶液をカルシウム源溶液に加えることによるか、又はカルシウム塩溶液とリン酸塩源溶液との同時混合により、TCP前駆材料は形成されうる。好ましくは、カルシウム塩溶液はリン酸塩源溶液に加えられる。
【0034】
リン酸塩源へのカルシウム源の(またあるいは、カルシウム源へのリン酸塩源の)混合速度(例えば、添加速度)の制御は、得られるTCP前駆結晶子の大きさの制御に有益である。望ましくは、カルシウム源のリン酸塩源への(又は逆の)添加速度は、約0.1mmol/分以上(例えば、約1mmol/分以上、約10mmol/分以上、約50mmol/分以上、又はさらには約100mmol/分以上)である。好ましくは、混合速度はとても大きいが(例えば、瞬間的混合が最も好ましい)、使用される混合/攪拌装置により、実際の混合速度は典型的には制限され、そして通常約1mol/分以下(例えば、約0.8mol/分以下、又は約0.6mol/分以下)である。好ましくは、混合速度(例えば、添加速度)は、約1mmol/分〜約1000mmol/分、より好ましくは約10mmol/分〜約500mmol/分である。
【0035】
カルシウム溶液及びリン酸塩溶液のpHは、形成されるTCP前駆材料のタイプを制御するのに重要なパラメーターであることが判明している。望ましくは、TCP前駆材料は、約5〜約11、より好ましくは約7〜約10のpHを有する溶液から析出される。溶液のpHが約5又は6である場合、TCP前駆材料は、典型的には、モネタイト、ブラッシャイト、又はこれらの組み合わせを含む。溶液のpHが10以上である場合、TCP前駆材料は、典型的には、不完全結晶(poorly crystalline)アパタイト型リン酸カルシウム材料を含む。溶液のpHが約7〜約10の場合、TCP前駆材料は、典型的には、主にアモルファスのリン酸カルシウム、リン酸八カルシウム(Ca(PO・5HO)、アパタイト型TCP、又はこれらの組み合わせを含む。前駆体溶液のpHは1つ以上の通常のpH調整剤を加えることによって調節することができる。pH調整剤は、任意の適当なpH調整剤、例えば、硝酸、酢酸、水酸化アンモニウム、又は水酸化テトラメチルアンモニウム(例えば、水酸化テトラエチルアンモニウム又は水酸化テトラブチルアンモニウム)でありうる。好ましくは、pH調整剤は、硝酸、水酸化アンモニウム、又はこれらの組み合わせである。
【0036】
次いで、析出したTCP前駆材料は、例えば、ろ過、加圧ろ過(filter pressing)、遠心分離、又は沈殿及びデカンテーションにより、反応混合物から回収される。好ましくは、TCP前駆材料は、回収の前にエージングされる。TCP前駆材料は、任意の適当な温度で、任意の適当な期間、エージングされうる。典型的には、TCP前駆材料は、約0℃〜約90℃の間、好ましくは約5℃〜約50℃の間、より好ましくは約10℃〜約30℃の間(例えば、約20℃)の温度でエージングされる。典型的には、TCP前駆材料は、約1分以上(例えば、約30分以上、又は約60分以上)エージングされる。好ましくは、TCP前駆材料は約2時間以上(例えば、約5時間以上、約10時間以上、約30時間以上、約50時間以上、又はさらには約100時間以上)エージングされる。エージング後、TCP前駆材料は集められ、次いで、反応溶液と同じ溶媒及びpHを有する溶液中に再分散されうる。
【0037】
回収したTCP前駆材料を、望ましくは、乾燥して粉末を形成し、次いで、製粉する。この乾燥TCP前駆粉末は、任意の適当な方法により、任意の適当な溶媒の非存在又は存在下において、製粉されうる。好ましくは、乾燥TCP前駆粉末は、無水アルコール、アセトン、トルエン、又はこれらの組み合わせの存在下で製粉される。製粉後、乾燥TCP前駆粉末を再び乾燥する。
【0038】
乾燥及び製粉されたTCP前駆粉末は、その後、TCP粉末、好ましくはナノ結晶TCP粉末へと変換される。典型的には、TCP前駆粉末は、脱ヒドロキシル化及び上記特性を有する強固なTCP材料の生成を可能にする一連の条件下で焼成される。多くの他の生成物が形成されうるが、望ましくは、TCP前駆材料の焼成は純粋相α−TCP又はβ−TCPを生成する。このような他の生成物には、混合相材料、例えば、ハイドロキシアパタイト/α−TCP、ハイドロキシアパタイト/β−TCP、α−TCP/β−TCP、及びハイドロキシアパタイト/α−TCP/β−TCPが挙げられうる。焼成により形成されるTCP材料の組成及び特性は、少なくとも一部は、焼成条件、例えば、温度、温度勾配(temperature ramp rate)、時間、冷却速度、及び炉環境に依存する。望ましくは、焼成温度は約400℃〜約1400℃(例えば、約500℃〜約1300℃、又は約600℃〜約1200℃)である。純粋相β−TCPは、典型的には、真空下、約400℃〜約900℃(例えば、約600℃〜約800℃)の温度で焼成することにより形成される。純粋相α−TCPは、典型的には、約1000℃〜約1400℃(例えば、約1100℃〜約1250℃)のより高温での焼成により形成される。混合α−TCP/β−TCPは、1000℃より高い一次焼成温度にTCP前駆粉末を均熱し(すなわち、α−TCPの完全又は部分的形成を可能とするため)、その後、1000℃より低い二次温度にTCP前駆粉末を均熱する(すなわち、β−TCPの部分的形成を可能とするため)ことにより形成することができる。もちろん、混合α−TCP/β−TCP材料はまた、1000℃より低い一次温度にTCP前駆粉末を均熱し(すなわち、β−TCPの完全又は部分的形成を可能とするため)、その後1000℃より高い二次温度にTCP前駆粉末を均熱する(すなわち、α−TCPの部分的形成を可能とするため)ことにより生成することができる。
【0039】
上記勾配は、使用される焼成装置のタイプ、及び焼成される材料のタイプに部分的に依存する。勾配は典型的には極めて速く、そして線形の十分制御された加熱温度をつくるために使用される炉の性能によってのみ制限される。TCP前駆材料が、加熱によって除去される有機材料をさらに含む場合、有機材料の完全な除去を確実にするために勾配をよりゆっくりにすることができる。
【0040】
焼成時間は、典型的には、約15分以上(例えば、約30分以上、又は約1時間以上)及び約15時間以下(例えば、約12時間以下、又は約10時間以下)である。好ましくは、焼成時間は約1時間〜約4時間、より好ましくは約1.5時間〜約2.5時間(例えば、約2時間)である。一般的には、短い焼成時間(例えば、約1時間以下)は、より小さな結晶径を有する複合TCP材料を生成し、一方、より長い焼成時間(例えば、約4時間以上)はより大きな結晶径を有する純粋相のTCPを生成する。約1時間〜約4時間の焼成時間は、典型的には、純粋相のナノ結晶TCP粉末を生成する。焼成後の冷却速度(すなわち、クエンチ速度)は生成される材料のタイプに依存する。例えば、α−TCPを生成する際には、冷却速度はβ−TCPの形成を避けるため、望ましくは急速である。対照的に、β−TCPを生成する際には、冷却速度はそれほど重要ではない。
【0041】
TCP前駆材料は、望ましくは、還元性雰囲気の存在下で焼成される。還元性雰囲気は任意の適当な還元性雰囲気でありうる。例えば、その環境は真空、又は窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、及びこれらの混合物を含むガス雰囲気でありうる。好ましくは、還元性雰囲気は真空、又は窒素を含むガス雰囲気である。
【0042】
TCP前駆材料からα−TCP又はβ−TCPを形成するために典型的に用いられる熱的処理(例えば、焼成)の代替手段として、X線、マイクロ波、電子ビーム、又は他の類似する照射がTCP前駆材料からTCPを形成するために使用でき、やはり小さな結晶径を維持する。照射線の強度、及び曝露の長さを制御することにより、所望のTCP相を形成することができる。例えば、β−TCPは、高強度かつ高エネルギーのX線ビームへの約5分間の曝露により、約50nmの平均結晶径を有するα−TCPに変換されうる。
【0043】
本発明で提供される湿式化学経路を通じたTCP合成の使用により、多種の有用な用途が実現される。第一に、骨移植片、骨代替物、空間充填剤、ペ−スト、又はセメントとして使用されうるTCP粉末が提供される。第二に、TCP粉末は、例えば、熱噴霧被覆、液体に基づく被覆、スパッタ被覆、気相被覆、湿式化学法を通じた被覆など(これらの多くは当該分野で公知である)を含むTCP被覆を形成するために使用することができる。このような被覆は、極めて小さな粒子径がより高品質でより良好な付着性の被覆をもたらすので、本発明の組成物から利益を得うる。有機種とバイオセラミックとの混合、被覆の形成、及び有機材料の焼失により、多孔質の被覆を作ることができる。同様に、極めて小さな孔を形成するのに、自己組織化界面活性剤を用いることができる。より大きな孔の物品には、高分子をバイオセラミック結晶粉末と混合し、凝固後焼失しうる。第三に、本発明のTCP組成物は、その小さな結晶及び粒子径のため、ネットシェイプ成形、未焼結機械加工(green machining)、又は焼結後機械加工により容易に成形可能である。
【0044】
本発明の一つの局面において、TCP組成物は強化粒子状TCPとして提供され、ここで「強化」とは自己支持構造を形成するTCP粒子の集積を定義することを意味している。TCPは、任意の適当な技術によって、例えば、粒子状TCPをプレスに供給し、物品の形成のためにTCPを圧迫することによって、強化することができる。強化粒子状TCPは高密度であるか又は多孔質でありうる。通常、多孔質セラミック物品を作るのは比較的容易であるが、高密度セラミック物品を作るのは明らかにより困難である。本発明の極めて小さなTCP粒子径は、極めて高密度の物品の形成を可能にする。このような高密度で強い材料は、インプラントとして、特に、ピン、ねじ、ねじ本体(threaded bodies)、椎体間(inter−body)スペーサー、及び骨折の固定及び結合のためのプレート、脊椎固定、臀部のボールジョイント、歯冠などのような強度が必要とされる耐荷重性インプラント(例えば、歯科的及び整形外科的インプラント)として使用することができる。強化物品はまた、人工器官の形状に成形しうるか、又は、人工器官の外部被覆のような人工器官の少なくとも一部を規定しうる。特に好ましい実施態様において、強化及び高密度化TCP物品は、その形状及び寸法が当該分野で一般に公知である、脊椎インプラント(内部又は外部固定インプラント)、又は軟組織付着用インプラントとして使用される。脊椎インプラントは、ねじ及びプレ−ト、椎体置換物、又は椎間スペーサーの形状でありうる。他の好ましい実施態様において、本発明の高密度化TCP物品は、1つ以上の上記記載の生物学的又は薬学的添加物を必要に応じ含む高分子添加物(例えば、高分子スポンジ、又はコラ−ゲン)などの補助添加物で満たされたあけられた孔をもつように改変することができる。
【0045】
強化TCP物品は、任意の適当な寸法を有することができる。その寸法は、強化TCP物品がどのように使われるか(例えば、インプラント、人工器官、又は、インプラント/人工器官の被覆のタイプ)に依存する。そのような物品の寸法は、当該分野で一般的に公知である。典型的には、強化TCP物品は約0.5cm以上(例えば、0.8cm以上、約1cm以上、又は約2cm以上)の最小寸法を有する。例えば、人工器官の外部被覆として使用されるとき、強化TCP物品は、少なくとも1つの領域で約0.5μm以上(例えば、約1μm以上)の厚さであり、被覆された物品に対して、約0.5cm以上(例えば、約1cm以上)の左右寸法(lateral dimension)を有する。いくつかの実施態様において、強化TCP物品は、約10cm以下(例えば、約7.5cm以下、又は約5cm以下)の最大寸法を有する。
【0046】
典型的には、強化物品は、約80μm以下(例えば、約75μm以下、約50μm以下、又は約25μm以下)の平均結晶径(例えば、粒子径)を有する。好ましくは、強化物品は、約10μm以下(例えば、約1μm以下、約750nm以下、約500nm以下、又は約300nm以下)の平均結晶径を有する。いくつかの実施態様において、強化物品は、約100nm以上(例えば、約150nm以上、又は約200nm以上)の平均結晶径を有するのが望ましい。強化物品は、好ましくは、平均結晶径の約±0.75(例えば、約±0.5、約±0.25、又は約±0.1)倍の結晶径分布を有する。
【0047】
本発明の強化物品の理論密度は、好ましくは約25%以上、より好ましくは約40%以上、さらにより好ましくは約55%以上である。好ましい実施態様において、TCP粉末は、高密度化粒子状TCP物品に成形され、ここで「高密度化」は自己支持物品を作成するために高密度化工程を経たとして定義される。好ましくは、TCP粉末は、約60%以上(例えば、約70%以上、又は約80%以上)の理論密度まで高密度化される。より好ましくは、物品は理論密度の約90%以上(例えば、約95%以上、又は約98%以上)の密度を有する。
【0048】
高密度化物品は、典型的には、約150MPa以上(例えば、約300MPa以上)、好ましくは、約500MPa以上(例えば、約600MPa以上、又は約700MPa以上)の圧縮強さ(ASTM C 1424−99)を有する。3点曲げ強さ(ASTM C 1161−94)は、典型的には約100MPa以上(例えば、約200MPa以上)、好ましくは約300MPa以上(例えば、約400MPa以上)である。通常、3点曲げ強さは約700MPa以下(例えば、約600MPa以下)である。高密度化物品は、典型的には、約0.5MPa・m1/2以上(例えば、約1MPa・m1/2以上、又は約1.5MPa・m1/2以上)の破壊靭性(ASTM C 1421−01a)を有する。通常、破壊靭性は、約5MPa・m1/2以下(例えば、約4MPa・m1/2以下)である。このような高密度化TCP物品は、部分的に、又は、完全に透明でありうる。好ましくは、この物品は約50%以上(例えば、約70%以上、又は約90%以上)の約150nm〜約1,000nmの範囲の波長を有する光を透過することができる。
【0049】
TCP材料を容易に高密度化する本発明の能力は、TCP材料が、必ずしも密度を必要としない用途に対してそれを極めて有用なものとしうる品質のものでもあることを示している。つまり、特に有用な組成物のスクリーニングテストとして高密度化を使用することができ、そして、本発明の多くの組成物は特定の条件下で高密度化可能であると述べられているが、必ずしも高密度化されている必要はない。このように、本発明のTCP組成物は、歯用セメント、頭蓋手術用セメントなどの高表面積で、流動可能で、鋳造可能な材料を必要とする用途で使用するための、比較的多孔質な材料/物品を作るのに用いることもできる。場合によっては、多孔度は、約200μmの孔が望ましくありうる骨成長のためなど、特定の目的に適合されうる。
【0050】
これらの材料/物品の多孔度は、望ましくは約20%以上である。好ましくは、多孔度は約30%以上(例えば、約40%以上、又は約50%以上)である。より好ましくは、多孔度は約60%以上(例えば、約70%以上)である。平均孔径は、典型的には、約300μm以下(例えば、約200μm以下、約150μm以下、約100μm以下)である。好ましくは、平均孔径は、約50μm以下(例えば、約20μm以下、又は約10μm以下)である。典型的には、平均孔径は、約25nm以上(例えば、約50nm以上、約100nm以上)である。好ましくは、平均孔径は、約200nm以上(例えば、約500nm以上、又は約1μm以上)である。
【0051】
強化多孔質物品は、約50MPa以上(例えば、約100MPa以上、又は約150MPa以上)の圧縮強さ(ASTM C 1424−99)を有しうる。加えて、強化多孔質物品は、約20MPa以上(例えば、約40MPa以上、又は約60MPa以上)の3点曲げ強さ(ASTM C 1161−94)を有しうる。一般的に、圧縮強さは約500MPa以下であり、3点曲げ強さは約400MPa以下である。強化多孔質物品は、典型的には、約0.2MPa・m1/2以上(例えば、約0.5MPa・m1/2以上)の破壊靭性(ASTM C 1421−01a)を有する。一般的に、破壊靭性は約1MPa・m1/2以下である。
【0052】
他の実施態様において、TCPを含む高密度化物品は約75%以下(例えば、約50%以下、約25%以下 約10%以下、又は約5%以下)の空隙容量を有する。このような高密度化物品は全体的にTCPからなる必要はなく、むしろその物品は二相又は複合のTCP物品であることができる。例えば、その物品は、その孔が、構造添加物(例えば、ハイドロキシアパタイト、銀、金、又はマグネシウム合金)又は有機添加物(例えば、高分子)などの補助添加物の存在によって満たされている多孔質TCP構造からなることができる。このような複合材料は、本明細書中でさらに詳細に記載される。
【0053】
典型的には、上記記載の強化TCP物品は、温和な条件下での焼結により、TCP粉末(例えば、焼成したTCP粉末)から調製される。強化TCP構造は、β−TCP、α−TCP、又はこれらの混合物を含むことができる。典型的には、焼成したTCP粉末は圧縮され、約400℃〜約1400℃(例えば、約600℃〜約1300℃)の焼結温度において焼かれる。焼結時間は典型的には、約30分以上(例えば、約60分以上)及び約3時間以下(例えば、約2時間以下)である。焼結したβ−TCPを形成するために、圧縮したβ−TCP粉末を約1150℃以下の温度で焼結する。焼結したα−TCPを形成するために、圧縮したα−TCP粉末を約1150℃以上の温度で焼結する。α−TCP/β−TCP焼結複合体を形成するために、圧縮したα−TCP粉末を約1150℃以下の温度で焼結することができ、圧縮したβ−TCP粉末を約1150℃以上の温度で焼結することができ、又はα−TCP及びβ−TCP粉末の圧縮した混合物を約400℃〜約1400℃(例えば、約600℃〜約1200℃)の温度で焼結することができる。
【0054】
本発明の焼成組成物は、「焼結補助剤」(その多くが当該分野で公知であり、ガラス、及び、焼結中は高粘性になり自由に流動するがそれから形成される物品を脆弱化する界面ガラス相を生じる低融点ガラス性酸化物が挙げられる)の必要なしに、上記のような高い理論密度まで焼結することができる。
【0055】
1つの好ましい実施態様において、本発明のTCP組成物は、外圧なしに(すなわち、無加圧焼結を通して)高密度化される。無加圧焼結は、一般的には、低い焼結温度で比較的短期間行われる。例えば、焼結時間は、典型的には、約2時間以下、好ましくは約1時間以下、より好ましくは約30分間以下である。無加圧焼結は、本発明のTCP材料の独特な性質のため、使用することができる。特に、本発明のTCP粉末の平均粒子径及び粒子径分布は、望ましくは、組成物が、約400℃〜約1400℃(例えば、約600℃〜約1200℃)の焼結温度において、約90%以上、好ましくは約95%以上、より好ましくは約98%以上の理論密度まで無加圧焼結することができるようなものである。
【0056】
他の好ましい実施態様において、コロイド加圧(すなわち、湿式加圧)、ホットプレス、又は熱間等方圧加圧により、本発明の強化及び/又は高密度化TCP物品は成形することができる。コロイド加圧は、それにより、結合剤又は滑沢剤を必要に応じ含むTCP前駆材料の安定化ゾルが、溶媒除去のため、ダイで一軸加圧されるプロセスである。材料の安定化ゾルは粒子の懸濁液として定義され、これは長時間目に見えて沈殿することはない。ダイ内のフリットは、固体粒子を捕獲しつつダイが加圧されるに従い、溶媒が抜けるのを可能にする。一旦、固体ペレットを得るために十分な溶媒が除去されれば、ペレットは取り除かれ、乾燥ストレスによりペレットが割れるのを防ぐため、慎重に乾燥される。ペレットを完全に乾燥させた後、ペレットは冷間等方圧加圧(CIP)され、その後上記のような無加圧焼結を受ける。コロイド加圧は、乾燥粉末と共に機能することとしばしば関係する粒子集積を防ぎ、加圧中の溶媒の潤滑効果の利益を享受し、このことは溶液中の粒子が最密充填へ再配列することを可能とする。
【0057】
ホットプレスは、それにより、十分に高密度のプレ−トを得るため、焼結中にダイ内に含まれる粉末に圧力が一軸で加えられる加圧焼結の一形態である。このプレ−トは、その後、所望の形状に機械加工することができる。熱間等方圧加圧は、それにより成形された部分に圧力が平衡に加えられる加圧焼結の一形態である。その部分は、密閉気孔率まで焼結されうるか、あるいは、冷間等方圧加圧、未焼結機械加工スリップもしくはゲル鋳造、又は射出成形のような周知のネットシェイプ成形技術によって作られた被包化(encapsulated)未焼結体でありうる。加圧焼結は、より迅速な高密度化及びより低温の焼結温度を可能にする。典型的には、加圧焼結においては、約10MPa以上及び約1Gpa以下(例えば、約500MPa以下、又は約250MPa以下(les))の圧力、及び約400〜約1200℃の焼結温度が用いられる。通常、より高い焼結圧力の使用により、より低い焼結温度の使用が可能となる。
【0058】
上記記載の全ての組成物、物品、及び方法において、好ましい組成物、物品、及び方法の生成物は、単独で、又は複合物品を特徴付けるための補助添加物と必要に応じ組み合わせて、TCPを含む。補助添加物は、構造、有機、高分子、生物学的及び/又は薬学的な添加物でありうる。補助添加物は任意の適当な量で存在することができ、好ましくは、約1容積%〜約50容積%(例えば、約5容積%〜約40容積%)、好ましくは、約15容積%〜約35容積%の範囲の量で存在する。好ましい実施態様において、補助添加物とTCP材料は、「ナノ/ナノ」複合材料を形成するためにそれぞれがナノ結晶性である。
【0059】
本発明において提供される複合体、特にジルコニア強化TCPは、純粋なTCPよりも非常に優れた機械的強度を持ち、耐荷重用途のための選択材料としての可能性を有する。本発明の化学的析出プロセスはまた、被覆、セメント、ペ−スト及び薬物/遺伝子輸送のような多様な他の新規生成物を提供するため、改変されうる。
【0060】
補助添加物を含むTCP複合体は、任意の適当な方法により成形することができる。例えば、TCP前駆材料は、上記のように溶媒(ここで溶媒は、懸濁液中に一つ以上の補助添加物を含む)から析出させることができ、又はTCP前駆材料はそこから補助添加物が析出される溶媒中、懸濁液中に提供することができる。好ましくは、TCP前駆材料及び補助添加物(単数又は複数)は、実質的に同時に共に析出する。あるいは、TCP前駆材料は、補助添加物の存在下で、焼成又は焼結されうる。さらに他の方法においては、TCP粉末は独立して回収され、補助添加物は(通常の溶媒又は懸濁液からの析出というよりはむしろ)独立して提供され、その後混合され焼結されうる。
【0061】
ナノ複合材料を構造的に補強するために、構造添加物をTCPに加えることができる。構造添加物は、任意の適当な構造添加物でありうる。適当な構造添加物としては、セラミック、金属、合金、及びこれらの組み合わせが挙げられる。複合体で使用するのに好ましいセラミックとしては、金属酸化物(例えば、アルミナ、ジルコニア、及びチタニア)、炭化ケイ素、窒化ケイ素、これらの組み合わせ、及び他の構造的セラミックが挙げられる。複合体で使用するのに好ましい金属としては、Mg、Ti、Ta、Nb、Al、Ni、W、Fe、Mo、Co、Zr、Au、Ag、V、これらの合金、ステンレススチ−ル、これらの組み合わせ、及び他の構造的金属が挙げられる。他の適当な構造添加物としては、アパタイト及び炭素が挙げられる。構造添加物は、任意の適当な大きさ又は形状を有することができる。例えば、構造添加物は、粒子、ロッド、ウィスカー、プレート、ナノチューブ、又は繊維の形状を有することができる。特に、非球面アスペクト比を有する構造添加物が望ましく、破壊靭性及び強度の大幅な改善に貢献する。好ましくは、構造添加物は、ナノ結晶アルミナプレート、ハイドロキシアパタイトウィスカー、炭素の繊維又はナノチューブ、銀の粒子又はロッド、ジルコニアの粒子又はロッド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。構造添加物は、複合体を強化するために選択されるべきである。補助的な非TCP構造成分は、メジャー又はマイナーな成分を形成することができ、複合体全体が、少なくとも10%のTCP、好ましくは少なくとも20%のTCP、より好ましくは少なくとも50%のTCPを有する。
【0062】
組成物の強化が望まれる場合、ジルコニア及びアルミナが組成物中に有利に用いられる。組成は所望の機械的特性に基づいて策定されうる。例えば、補助相が粒界に「固定される」(例えば、粒界相を形成する)場合、主要相における粒子成長を防ぐことによって、超微細結晶径を維持することができ、これは欠陥サイズを削減することによって材料を強化する。また、補助相が亀裂をそらすか又は架橋し、変換が亀裂エネルギーの吸収を強めることによって、材料は強化されうる。
【0063】
有機添加物は、任意の適当な有機添加物、例えば、界面活性剤(例えば、臭化セチルトリアンモニウム又は塩化デドシルトリメチルアンモニウムのようなカチオン性界面活性剤;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(sodium disopropylnaphtalene sulfonate)又は他のアルカリ、あるいはクエン酸アンモニウム、アクリル酸アンモニウム、スルホン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リグノスルホン酸アンモニウム、カルボン酸アンモニウム及びリン酸アンモニウムのようなアニオン性界面活性剤;ならびに、エトキシル化ノニルフェノール、エトキシル化トリデシルアルコール、アセチレンジオール(acetylenic diol)のような非イオン性界面活性剤)でありうる。高分子添加物は、任意の適当な高分子添加物、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体、ポリプロピレンフマレート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンアジペート、コラーゲン、キトサン、アルギネート、セルロース、スターチ、糖、ポリペプチド、ポリエチレングリコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド及びメタクリレート又は任意のこれらの誘導体、あるいは、PEO−PPO−PEO、PPO−PEO−PPO、ポリビニルピリジン−ポリスチレン−ポリビニルピリジン(PVP−PS−PVP)、PS−PVP−PS、PS−PEO−PS、PEO−PS−PEO等トリブロック共重合体などの共重合ミセルからなる群から選択される高分子でありうる。生物学的添加物は、任意の適当な生物学的添加物、例えば、プラスミドDNAもしくはRNA、又はタンパク質(例えば、骨形成タンパク質2、4、7)でありうる。薬学的添加物は、任意の適当な薬学的添加物、例えば、ビスフォスフォネート(例えば、アレンドロネート)、及び、シスプラチン、抗生物質、抗炎症剤、抗関節病体質剤(anti−arthritism)、エリスロポエチン等でありうる。
【0064】
1つの好ましい実施態様において、上記TCP多孔質物品は、十分に高密度な物品を形成するために、ハイドロキシアパタイトのような補助添加物で浸潤される。この複合物品は、耐荷重用途のための十分な強度を有する。インプラント後、TCPは、その中に骨が成長する補助組成物(例えば、ハイドロキシアパタイト)の多孔質構造を残して、実質的に吸収される。他の好ましい実施態様において、ハイドロキシアパタイトのようなTCP前駆材料を含む強化物品(例えば、インプラント)は、TCP複合物品(例えば、二相性ハイドロキシアパタイト/TCP複合物品)へと変換される。TCP前駆材料は、任意の適当な手段により変換することができる。好ましくは、TCP前駆材料は、上記のようなレーザー光源(例えば、X線、UV、電子、又は中性子ビーム)の使用により変換される。例えば、強化又は高密度化ハイドロキシアパタイト物品の表面は、α−TCP及び/又はβ−TCPへと変換することができる。レーザービームの使用は、レーザーが予見可能な様式で(例えば、インプラントの選ばれた領域において)TCP前駆材料を変換することができるため、特に有利である。二相性ハイドロキシアパタイト/TCP物品は、TCPの吸収特性と共にハイドロキシアパタイトの強度及び構造安定性を有する。物品表面で形成されるTCPの量は、その表面へのレーザーの侵入及び曝露時間の長さに依存する。典型的には、曝露時間は、約1分〜約20分(例えば、約2分〜約10分、又は約3分〜約7分)である。望ましくは、約1μm〜約250μm(例えば、約5μm〜約125μm)のハイドロキシアパタイト表面がTCP(これはハイドロキシアパタイトよりも容易に吸収される)へと変換される。
【0065】
本発明の物品及び組成物は、望ましくは、約1ヶ月以上(例えば、約3ヶ月以上、約6ヶ月以上、又は約1年以上)の吸収時間を有する。吸収速度は、少なくとも一部は、組成物又は物品の結晶径に依存する。より小さな結晶径は、より大きな結晶径よりも迅速に吸収される。所望の吸収速度は用途に依存し、結晶径は、所望の吸収速度に見合うように適合されうる。いくつかの用途において、吸収時間は約6ヶ月以上(例えば、約1年以上、又は約2年以上)であることが望ましい。
【実施例】
【0066】
本発明のこれら及び他の実施態様の機能と利点は、以下の実施例からより完全に理解される。以下の実施例は、本発明の利点を説明することを意図するが、本発明の全ての範囲を例示するものではない。
【0067】
実施例1
焼結のためのナノ結晶TCP合成の最適化
【0068】
ナノ結晶TCP粉末の焼結能は、無加圧焼結によりナノ結晶微細構造を維持しつつ高密度(例えば、理論密度約95%超)まで焼結するナノ結晶TCP粉末を生成するために、前駆濃度、添加速度、pH、エージング時間及びエージング温度などの合成パラメーターを最適化することにより、改善することができる。
【0069】
7.5リットル(NHHPO水溶液(NHP)、又は、7.5リットルCa(N0水溶液(CaN)を含む前駆溶液を各種濃度で調製する。前駆溶液は、カルシウムとリン酸塩との比を約3:2に維持するために十分なNHP及びCaNを含む。カルシウム及びリン酸塩前駆溶液のpHを、濃硝酸又は酢酸のような有機酸を加えてpHを下げるか、あるいは、濃水酸化アンモニウム又は水酸化テトラメチルアンモニウムのような有機塩基を加えることによって、約5〜約11に調節する。瞬時に近い高エネルギー混合を達成するために、高速高剪断ミキサーを使用して、約20ml/分〜約240ml/分の範囲の流速で、前駆溶液を混合する。前駆溶液は、任意の順序で混合する(例えば、合わせる)ことができる。例えば、CaN溶液をNHP溶液に加えてもよいし、バッチ又は半バッチ処理のために、NHP溶液をCaN溶液に加えてもよい。あるいは、CaN溶液及びNHP溶液を、半バッチ又は連続処理のために、ミキサーに同時に加えてもよい。
【0070】
添加が完了したらすぐに、約0℃〜約90℃の範囲の温度で、約0〜約100時間、合わせた溶液を攪拌し、エージングする。エージング後、析出物を遠心分離、ろ過又は沈殿によって回収し、上澄みをデカンテーションする。その後、デカンテーションした上澄みと同じpHを有する溶液中に、析出物を再分散する。この洗浄手順をさらに2回繰り返す。引き続いて、析出物を再分散し、無水アルコール(すなわち、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、アセトン又はトルエンでさらに3回洗浄して、析出物を脱水する。その後、そのゼラチン状析出物を乾燥する。その後、乾燥したTCP前駆粉末を、無水アルコール、アセトン又はトルエン中で製粉し、その後、再び乾燥する。
【0071】
その後、製粉した粉末を、約2時間、約650℃の均熱温度で、勾配の間は窒素中で及び真空下で焼成して、TCP前駆粉末をβ−TCPへと完全に変換する。焼成後、β−TCP粉末を、約150MPaの圧力まで、ステンレススチ−ルダイで、一軸加圧する。その後、これらの圧縮したペレットを、約3分間、約300MPaの圧力で、冷間等方圧加圧(CIP)する。CIP後、次いで、ペレットを、約2時間約1100℃の均熱温度まで、無加圧焼結によって、酸素中で焼結して、密度と微細構造に関して焼成したTCP粉末の焼結能を評価する。
【0072】
実施例2
最適条件の決定−前駆濃度の影響
【0073】
前駆濃度を変えることによって、TCP前駆合成の速度論は影響を受けうる。前駆濃度を増加することによって、所定のpHにおける溶解限度はより急速に高められ、結晶成長のための一次核が爆発的に増える。しかしながら、反応物質を連続的に加えるので、一次核は急速に成長し続ける。その結果、高い前駆濃度は、より大きな晶子及び粒子径をもたらした。
【0074】
この実施例において、TCP前駆粉末は、約250ml/分の添加速度、25℃の温度、100時間のエージング時間、及び約8.5のpHにおいて、それぞれ1.5M及び1.0M程度の高さのCaN濃度及びNHP濃度で合成することができる。これらの条件は、約80nm超の晶子径、約8μmの粒子径、及び約50m/g未満の表面積を有するTCPをもたらす。前駆濃度を減少することによって、一次核はよりゆっくりと成長する。例えば、約250ml/分の添加速度、25℃の温度、100時間のエージング時間、及び約8.5のpHにおいて、それぞれ0.15M及び0.1M程度の低さのCaN濃度及びNHP濃度を有する溶液からTCP前駆粉末を析出するとき、約30nm未満の晶子径、約1μm未満の粒子径、及び約125m/g超の表面積が達成される。最終的に、これらの条件が無加圧焼結の後、95%を上回る理論密度をもたらすから、より低い前駆濃度が好ましい。高い前駆濃度で合成されたTCP前駆粉末を無加圧焼結するとき、理論密度約90%のみが達成される。しかしながら、これらの反応により生成されるTCP材料を被覆、多孔質体、セメント、ペースト、又は空間充填剤として使うのであれば、高い前駆濃度が好ましい。
【0075】
実施例3
最適条件の決定−添加速度の影響
【0076】
前駆体添加速度を変えることにより、核形成及び結晶成長の速度は制御することができる。前駆体の迅速な添加は、それらの領域においてTCPの溶解性が優れた、前駆体の局所的に高い濃度をもたらし、それは核形成と小結晶の形成に有利である。約250ml/分の最大流速、CaN及びNHPの濃度それぞれ0.15M及び0.1M、25℃の温度、100時間のエージング時間、及び約8.5のpHにおいて、30nm未満のTCP晶子径、約1μmの平均粒子径及び焼成後約125m/g超の表面積が作られうる。さらに、高速高剪断高エネルギーミキサーの使用は、不均一粒子形態の形成及び分散を防いで、化学的均質性を確保する。前駆体の遅い添加は、好都合な結晶成長の型及びより大きな粒子の形成をもたらす。約20ml/分の最小流速、CaN及びNHPの濃度それぞれ0.15M及び0.1M、25℃の温度、100時間のエージング時間、及び約8.5のpHにおいて、約80nm超の晶子径、3μmの平均粒子径、及び焼成後約100m/g未満の表面積が作られうる。焼結時、より高い添加速度では95%超の理論密度がもたらされるが、より低い添加速度では約90%超の理論密度だけがもたらされる。
【0077】
実施例4
最適条件の決定−pHの影響
【0078】
所定のリン酸カルシウムについてどちらの相が形成されるかは2つのパラメーターが支配する:1)反応物質の初期のカルシウムとリン酸塩との比、及び、2)反応が起きるpH。この実施例では、CaNとNHPの濃度それぞれ0.15M及び0.1M、約250ml/分の添加速度、25℃の温度、及び100時間のエージング時間におけるTCP前駆相の合成に有利に働くように、カルシウムとリンとの比約1.5で全ての反応を行う。約6の初期pHにおいて、析出している前駆相は、モネタイト/ブラッシャイト相である。約7の初期pHにおいて、析出している前駆相は同様に、モネタイト/ブラッシャイト相である。約10の初期pHにおいて、析出している前駆相は、低い結晶性のアパタイトである。pH約7以下において析出したTCP前駆材料を焼成した場合、モネタイトとブラッシャイトの相は存続し、β−TCPは形成しない。pH約10以上において析出したTCP前駆材料を焼成した場合、アパタイト型の相が存続する。しかしながら、焼成温度を約800℃超に上昇したときに、β−TCPが形成される。初期のCa/P比に関係なく、ハイドロキシアパタイトがそれらのpHにおいて熱力学的に好ましい相であるため、約10超の反応pHの使用は望ましくなく、TCPを形成するためにはより高い焼成温度の使用を必要とする。約7以下のpHにおいて、TCPは可溶性であり、酸性リン酸カルシウムが好まれる。これらの実験は、β−TCPを形成するために650℃において焼成可能なTCP前駆体を得るのに、好ましいpH範囲が約7超かつ約10未満であることを示している。このpH範囲内で作られるTCP粉末は、約50nm以下の結晶径、約150m/g以上の表面積、及び平均径が1μmの狭い粒径分布を有する。無加圧条件下で焼結するとき、95%超の理論密度が達成されうる。
【0079】
実施例5
最適条件の決定−エージング時間の影響
【0080】
TCPの結晶化度及び構造的成長はまた、析出物のエージング時間を変化させることによって影響を受ける。エージング時間を増やすことにより、TCP前駆析出物は、オストワルド熟成を通じて再結晶される。その結果、結晶構造が完全になり露出面が減少する一方で、結晶の自由エネルギーが減少するので、埋まっていた不純物は除去され、結晶のひずみは減少する。針、ロッド又はウィスカーのような非均一性形態は再溶解し、均一分散に近い一次粒子の形状を有する、球状(例えば、約3:1以下のアスペクト比を有する)などのより規則的な形態で再結晶される。さらに、より長いエージング時間は、試薬が完全に反応し、溶液から析出することについても保証する。この実施例では、全ての反応は、CaN及びNHPの濃度それぞれ0.15M及び0.1M、約250ml/分の添加速度、25℃の温度及び約8.5のpHにおいて起こる。
【0081】
焼結を必要とする用途には、約250nm未満の結晶径を持つ、95%超の理論密度を有するTCPを得ることができるため、100時間に近いエージング時間が好ましい。約100時間エージング後のTCP粉末は、約50nm未満の結晶径、約150m/g超の表面積、及び平均粒子径が約1μm未満の狭い粒径分布を有する。12時間、24時間、又は48時間のようなより短いエージング時間でエージングされたTCP粉末は、似たような結晶径、表面積及び粒径分布を有する。しかし、不均一性形態のため、これらのエージング時間では焼結時に約95%超の理論密度を達成しない。
【0082】
実施例6
最適条件の決定−エージング温度の影響
【0083】
エージング温度を変えることにより、結晶の核形成及び成長を制御することができる。約30℃未満の低温で析出することによって、より純度の高い結晶をもたらすように結晶成長は最小化されうる。しかしながら、これらの材料は、典型的には、乏しい機械的成長を有し、化学的及び熱的に不安定な構造を有する。約30℃超の温度でエージングするとき、析出物はより大きな結晶成長を経て、より良い構造的成長と化学的及び熱的安定性を有する。この実施例においては、全ての反応は、CaNとNHPの濃度それぞれ0.15M及び0.1M、約250ml/分の添加速度、100時間のエージング時間、及び約8.5のpHにおいて起こる。
【0084】
析出している相は、TCPを得るための焼成又は関連技術を必要とする前駆体であるため、TCPに容易に変換することができる熱的に不安定な前駆体に適した条件が好ましい。特に、30℃未満のエージング温度が好ましい。さらに、これらの材料の拡散係数は、より高いエージング温度を経た材料のものよりも高いため、より低いエージング温度が焼結には好ましい。しかしながら、温度が減少するに伴い、リン酸カルシウム析出物の溶解度は増加する。その結果、反応物溶液中のカルシウムとリン酸塩との比は、望ましくは、増加した溶解度を補うために対応して増加する。例えば、反応物溶液のカルシウムとリン酸塩との比を約1.67に設定すると、0℃でエージングした際、カルシウムとリン酸塩との比が1.5のTCP前駆析出物が得られる。焼成後、このTCP粉末は、非均一形態で、約80nm超の結晶径、3μm超の粒子径、及び約50m/g超の表面積を有する結晶を有する。この析出物を焼成し、無加圧焼結すると、結晶径が約1μm超であり、95%超の理論密度を有するTCPが得られる。その結果、前駆溶液の化学量論がより低い温度におけるより高い溶解度を補うように調節される場合は、30℃未満のエージング温度が好ましい。
【0085】
TCP前駆体を約30℃でエージングするとき、粉末特性はより洗練される。得られるTCPは、均一な結晶形態、50nm未満の結晶径、狭い粒径分布、約1μm未満の平均粒子径、及び150m/g超の表面積を有する。これらの粉末も、約250nm未満の結晶径と共に、95%の理論密度まで、無加圧焼結することができる。TCP前駆体を約75℃でエージングするとき、TCP結晶は、次第に異方性になる。このTCPは、細長い結晶形態及び150nm超の径、約5μm超の平均粒子径、及び約50m/gより大きい小さい表面積を有する。これらの粉末は、95%の理論密度まで無加圧焼結することはできないだろう。
【0086】
実施例1〜6の要旨
ナノ結晶TCPは、化学的析出、その後、焼結により合成することができる。前駆濃度、pH、添加速度、エージング時間、エージング温度、及び焼成温度の、晶子径、化学量論、粒子の径と分布、形態、結晶化度及び構造的成長への影響を調べることができる。重要な処理パラメーター及びこれらをそれにより制御可能な方法を特定することによって、バルクTCPの機械的特性を向上するために、晶子径と処理に関連する欠陥構造を減らすことができる。さらに、集積を減らし、粒子の形態と径分布を制御し、粒子の化学的反応性を制御するパラメーターを使用して、より低い焼結温度において完全な高密度化を達成することができる。焼成されたナノTCP粉末のXRDパターンは、β−TCPファイル(JC−PDS 9−169)とよく一致する。そのピークはTCPのナノ結晶性のため、かなりブロードである。
【0087】
析出中のエージング温度は、好まれる室温以下での結晶成長速度に影響を及ぼす。エージング時間は、化学的均質性、晶子径、ならびに粒子の形態及び径分布の変換に影響を及ぼす。pHは、TCP前駆相の溶解性に影響を及ぼす。TCP合成について、好ましいpHは、約7超かつ約10未満である。前駆体添加速度は、核形成ならびに結晶成長速度及び粒子形態に影響を及ぼす。高い及び低い両方の前駆濃度で、速い添加速度が好ましい。前駆濃度は、反応速度に影響を及ぼす。
【0088】
600℃で焼成されたナノTCP前駆相により、約50nmの超微細結晶径、約150m/g超の表面積、2.5μmの平均粒子径の狭い粒径分布が得られる。従来のTCPと比較したとき、ナノTCP圧縮体は優れた焼結能を有する。非常に高密度化されたTCPは、1100℃で無加圧焼結することによって得ることができる。
【0089】
実施例7
焼成温度に対する合成条件の影響
【0090】
ハイドロキシアパタイトとは異なり、TCPのα−又はβ−相のどちらも、実施例1〜6に記載された手順及び条件によって合成される析出している粉末からは形成されない。焼成の目的は、まず吸着しているいずれの揮発性の有機物(例えば、アルコール、トルエン、アセトン)又は無機物(例えば、硝酸塩など)をも取り除くこと、そしてその後TCP前駆相(例えば、アパタイト、アモルファスリン酸カルシウム、リン酸八カルシウム)を脱ヒドロキシル化し、α−及び/又はβ−TCPへとそれを結晶化することである。
【0091】
これらの目的を達成するため、いずれの揮発性吸着種をも除去するために、勾配の間は酸素又は他の酸化雰囲気中で、そして適切なTCP相の脱ヒドロキシル化及び結晶化を促進する期間は焼成(例えば、均熱)温度にしながら、真空又は他の還元雰囲気(例えば、窒素、アルゴン又はヘリウム)下で、TCP前駆粉末を焼成する。焼成の影響を調査するため、2時間、約400℃〜1400℃の範囲の均熱温度で、実施例1〜6で作ったTCP前駆粉末を焼成する。
【0092】
典型的には、約400℃〜1000℃の焼成温度で、β−TCP(JC−PDS 9−169)は得られる。β−TCPを形成するために必要とされる最低焼成温度である400℃は、CaNとNHPの濃度それぞれ0.15M及び0.1M、約250ml/分の添加速度、約100時間のエージング時間、約25℃の任意のエージング温度、及び約8.5のpHで、達成される。約400℃の焼成温度で、β−TCP粉末は、約25nmの結晶径、約200m/gの表面積及び約0.8μmの粒子径を有する。約1000℃以下の焼成温度で、β−TCP粉末は、約100nm以下の結晶径、約80m/gの表面積及び約3μmの粒子径を有する。
【0093】
この前駆粉末を約1000℃超〜1400℃で焼成すると、粉末を室温まで急冷した場合に、純粋な準安定α−TCPである相を得ることができる。約1100℃以上の焼成温度において、α−TCPが約50容量%を構成する混合α/β−TCPが得られる。α−TCP相は約150nmの結晶径を有し、一方、β−TCPは約125nmの結晶径を有する。この複合粉末は、約60m/gの表面積及び約5μmの粒子径を有する。約1200℃の温度での焼成によって、純粋なα−TCP相を得ることができる。α−TCP相は、約200nmの結晶径、約40m/gの表面積及び約7μmの粒子径を有する。約1400℃の焼成温度において、約300nmの結晶径、約30m/gの表面積及び約9μmの粒子径を有するα−TCP粉末を生成することができる。あるいは、冷却中、粉末をゆっくりと冷ますか又はより低い均熱温度に保った場合には、混合α/β−相が形成される。二次均熱温度及び時間は、形成されるβ−TCPの相対量と複合粉末の物理的特性を決定する。2時間〜約24時間、600℃〜約800℃の二次焼成温度に保つ場合、複合粉末を形成するために、二次的β−TCPを導入することができる。より低い温度及びより短い時間では、より低い体積分率、典型的には約5〜20容量%のβ−TCPが形成される。より高い温度及びより長い時間では、より高い体積分率、典型的には約50〜75容量%のβ−TCPが形成される。
【0094】
実施例8
TCP形成に必要とされる焼成温度に対する前駆体及び溶媒環境の影響
【0095】
典型的には、前駆粉末をTCP相へと脱ヒドロキシル化及び結晶化するために、TCP前駆粉末を焼成する。その結果、前駆反応物(カルシウム塩、リン酸塩、及び酸又は塩基)と、前駆体中のヒドロキシル化と水分保持を減らすことのできる溶媒が、より低い焼成温度及びナノ結晶晶子径(<100nm)をもたらす。
【0096】
水溶液中のTCP前駆体を析出させるとき、硝酸カルシウム及びリン酸水素アンモニウムが、それぞれ、好ましいカルシウム源及びリン酸塩源である。前駆析出物を、12時間25℃でエージングし、回収し、洗浄し、製粉し、乾燥し、そして600℃で焼成する。このβ−TCP粉末は、約50nm未満の結晶寸法、約150m/gを超える表面積、約0.9ミクロンの平均粒子径の狭い粒径分布、リン酸塩に対するカルシウムの比約1.5を有する。
【0097】
TCP前駆体を極性有機溶媒から析出させるとき、カルシウムアルコキシド又は酢酸カルシウムがカルシウム源として好ましく、リン酸又はトリアルキルフォスフェート(例えば、トリブチルフォスフェート又はトリエチルフォスフェート)がリン酸塩源として好ましい。前駆析出物を、12時間25℃でエージングし、回収し、洗浄し、製粉し、乾燥し、そして400℃で焼成する。このβ−TCP粉末は、約30nm未満の結晶寸法、約200m/gを超える表面積、約0.9ミクロンの平均粒子径の狭い粒径分布、リン酸塩に対するカルシウムの比約1.5を有する。
【0098】
あるいは、TCP前駆体は、水と極性有機溶媒の溶液から析出することができる。この場合、カルシウムアルコキシドとトリアルキルフォスフェートが、それぞれ、好ましいカルシウム源とリン酸塩源である。前駆析出物を、12時間25℃でエージングし、回収し、洗浄し、製粉し、乾燥し、そして400℃で焼成する。このβ−TCP粉末は、約30nm未満の結晶寸法、約200m/gを超える表面積、約0.9ミクロンの平均粒子径の狭い粒径分布、リン酸塩に対するカルシウムの比約1.5を有する。
【0099】
実施例9
TCP粉末の無加圧焼結
【0100】
β−TCPを、酸素/真空雰囲気において約600℃の温度で焼成し、次いで、約150MPaの圧力までスチールダイで一軸加圧し、約300MPaの圧力まで冷間等方圧加圧(CIP)し、最終的に、5℃/分の勾配率で約2時間酸素雰囲気下、約800℃〜約1500℃の温度で無加圧焼結する。
【0101】
焼結の前に、焼成工程に悪影響を与えることなく、約50MPa〜約1GPaの範囲の圧力で、スチールダイでβ−TCP粉末を一軸加圧しうる。一軸加圧後、約50MPaから特定の冷間等方圧加圧のための最大許容圧力までの範囲の圧力で、これらの圧縮体をCIPすることができる。あるいは、TCP粉末を、一軸加圧することなくゴム型へ注ぎ入れ、次いでCIPすることもできる。
【0102】
β−TCPは、約800℃〜約1100℃の範囲の焼結温度で形成される。約1100℃超の焼結温度では、混合α/β−TCP材料が形成され、一方、約1200℃超の焼結温度では、純粋なα−相が形成される。約900℃〜約1100℃の範囲の焼結温度は約95%超の理論密度をもたらし、一方、約1000℃〜約1100℃の範囲の焼結温度は約97%超の理論密度と約500nm未満の結晶径をもたらす。約1200℃超の焼結温度においては、約1μm超の結晶径の高密度α−TCPも得ることができる。実施例7と同様に、高密度α/β−TCP複合材料は、α−TCP粉末をより低い二次均熱温度に保持し、β−TCP相を再導入することによって、得ることができる。均熱温度と均熱時間の組み合わせが、形成されるβ−TCPの体積分率と結晶径を制御するために使用することができる。より高い均熱温度は、β−TCPのより大きい体積分率及び結晶径をもたらし、一方、より低い均熱温度は、より小さい体積分率と結晶径をもたらす。
【0103】
無加圧焼結によって焼結された物品の破壊靭性を、押し込み法によって測定する。破壊靭性は、約1〜2MPa・m1/2未満である。さらに、曲げ強さと等二軸曲げ強さ(equibiaxial flexure strength)は、約100MPa〜約250MPaである。圧縮強さは約500MP以上である。
【0104】
実施例10
TCP粉末のホットプレス
【0105】
酸素、水素 窒素、アルゴン、ヘリウム又は真空雰囲気で、約700℃〜約1300℃の焼結温度において、約5℃/分の勾配率、約30分のドウェルタイムで、約50MPa以上の圧力で、TCP粉末をホットプレスする。実施例9に記載した無加圧焼結処理と比較して、焼結中の一軸加圧の追加は、完全に高密度化された物品が数百度により達成される焼結温度を減ずることにより、焼結処理を向上する。さらに、焼結温度の減少は粒子成長の最小化ももたらす。
【0106】
約500nm未満の結晶径を持つβ−TCPの完全に高密度化された物品は、約1000℃未満の焼結温度におけるホットプレスにより得られる。実施例9と同様に、より高い焼結温度が非常に高密度なα−TCPをもたらし、一方、焼結後のより低い二次均熱温度がβ−TCPを再導入しうる。さらに、これらの高密度化物品は光学的に透明である。一軸加圧の適用は、無加圧焼結によっては除去されない多くの孔を除去する。押し込みを介しての破壊靭性測定は、破壊靭性が約1.5MPa・m1/2〜約3.0MPa・m1/2の間まで増加することを示している。さらに、曲げ強さと等二軸曲げ強さは、約150MPa〜約400MPaである。圧縮強さは約700MPa以上である。最終的に、ホットプレスにより作られた高密度化物品は、無加圧焼結により作られた物品よりも優れた信頼性を有する。
【0107】
実施例11
TCP粉末のネットシェイプ成形及び熱間等方圧加圧
【0108】
TCPから構成される幾何学的複合モノリスは2つの工程で処理される。初めに、TCP粉末を未焼結体へとネットシェイプ成形し、次にこの未焼結体を熱間等方圧焼結により高密度化する。微細構造的及び機械的特性分析を用いて、幾何学的複合TCPモノリスのネットシェイプ成形の処理を評価することができる。
【0109】
4つのプロセスの中の1つにより複合形状は形成される。これらのプロセスには、乾燥粉末圧縮、塑性流動、流動体除去及びゲル化が挙げられる。乾燥粉末圧縮は、ネットシェイプするために鋳型中で冷間等方圧加圧されるか、又は冷間等方圧加圧された未焼結体の未焼結体機械加工により行われうる。塑性流動処理の例には、射出成形及び押し出し/未焼結機械加工が挙げられる。流動体除去処理の例には、スリップ鋳造及び圧力鋳造/未焼結機械加工が挙げられる。ゲル化は、以下のモノマー/ポリマー系:アクリルアミド、メタクリレート、澱粉、糖、アルギネート、キトサン、又はセルロースの任意の組み合わせを使用して、インサイチュ重合及びゲル化により行うことができる。鋳型設計に依存して、未焼結体は、シリンダー、テーパー・ピン、ブロック、又はプレートでありうる。加えて、鋳型設計は、ねじ切り及び挿管を導入することができる。ナノ細孔性(約100nm)はナノ結晶の形態を変化させることにより導入することができ、一方、マイクロ細孔性(約150μm)は熱間等方圧加圧の前に除去することが可能なポリマー球を使用することにより導入することができる。完全に高密度化され、構造的用途に十分な強度を有することのできる未焼結部位を得るためには、未焼結体は以下の特性を備えるべきである:(1)封入物又は不純物がないこと(2)高又は低密度領域がないこと、及び(3)小さな孔径及び狭い孔径分布。
【0110】
熱間等方圧加圧(HIP)は、その部分の高密度化のための高温及び高圧の同時適用に依存する。この処理の利点は、処理に関連するバルク欠損のサイズを減少させつつ、複合形状を焼結し、焼結温度を低下することが可能なことである。ネットシェイプ成形後、未焼結体を、密閉気孔率(95%超の理論密度)まで焼結するか又はガラスもしくは金属中に封入/真空包装し、その後熱間等方圧加圧する。典型的には、TCPのHIP中の圧力は、約50MPaとHIPシステムの最大動作圧力との間である。焼結温度は、約600℃と約1500℃との間に存在する。均熱時間は約10分間〜約2時間に及ぶ。TCPの相挙動は実施例9及び10で観察されたものと類似している。
【0111】
HIPにより高密度化されたTCP物品は、典型的には、完全に高密度(97%超の理論的高密度)、ナノ結晶性(250nm未満の結晶径)、及び光学的に透明である。重大な欠陥のサイズがナノ結晶化度を保つことにより減少され、処理に関連する欠陥は、HIPを通じて大幅に除去されるため、破壊靭性及びTCP物品の強度は向上される。例えば、約1.5MPa・m1/2及び約3.0MPa・m1/2の間の押し込み試験を介した破壊靭性を得ることができる。さらに、約150MPa〜約400MPaの曲げ及び等二軸曲げ強さを得ることができる。約750MPa超の圧縮強さを得ることもできる。最終的に、HIPにより生産される物品は、ホットプレスにより作られた物品よりも優れた信頼性を有する。
【0112】
実施例12
TCPの吸収及び生体活性
【0113】
TCPの粉末、被覆、多孔質体又は高密度物品などと比較するとき、タンパク質吸着、細胞付着、付着、増殖、及びマトリックス合成の程度は結晶径と相関関係がある。例えば、タンパク質吸着、細胞付着、付着、増殖及びマトリックス合成は、より大きな結晶径のものと比較してより小さな結晶径を有するTCP材料について改善される。従って、結晶径又は約20〜約200nmの範囲の結晶径を有するナノ結晶TCPは高い生体活性を必要とする用途に好ましい。粉末、セメント、ペースト、空間充填剤、被覆、多孔質体及び高密度物品についての他の全ての特性が類似しているとき、体へのTCP吸収は、結晶径と相関関係があることも分かっている。典型的には、小さな粒子材料は、粗い粒子材料よりもより迅速に再吸収する。粉末、セメント、ペースト、空間充填剤、被覆、多孔質体及び高密度物品として使用するとき、本発明の方法を用いて、これらの材料の吸収時間を制御するためにTCP結晶及び粒子の径を変化させることができる。
【0114】
実施例13
TCPナノ複合体
【0115】
TCP材料の破壊靭性をさらに増加させるため、多孔質又は高密度TCP複合体を形成しうる。1つの方法において、TCPのものとは異なる材料特性を有する補助添加物を微細構造中に取り込むことができる。望ましくは、補助添加物はTCP材料より強く、例えば、補助添加物は典型的にはTCP材料より高い破壊靭性、硬度、延性、及び/又は強度を有する。補助添加物は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、金、銀、チタン、ニチノール及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。TCP材料の破壊靭性はまた、非球面アスペクト比(例えば、約1.5又は約2超のアスペクト比)を有する補助添加物を導入することにより増加させることができる。非球面アスペクト比を有するそのような補助添加物には、例えば、アルミナ、ハイドロキシアパタイト、チタニア、ジルコニア、又は金属針、ロッド又はウィスカー又はカーボンナノチューブ、プレートなどが挙げられる。補助添加物はナノメーター〜数ミクロンのオーダーの長さを有することができるが、合成中容易に分散されるために、又は、加圧高密度化を通じては除去することのできない処理欠陥を作るために、十分小さくなければならない。
【0116】
そのような複合材料を合成するために、補助添加物はカルシウム塩かアンモニウム塩溶液中に高分散することができ、最終複合物品で望まれる体積分率で存在すべきである。次いで、TCP中の補助添加物の高分散を達成するために、補助添加物の存在下でTCPを析出させる。pH又はカルシウム又はリン酸イオンの存在による反応を最小化するために、補助添加物は完全に反応され、結晶性であることが好ましい。複合析出物を回収し、上記のように処理する。実施例9〜11に記載された方法により完全密度まで焼結するとき、複合材料の微細構造は、TCP相が依然ナノ結晶であるが、第二相が高分散されているようなものである。第二相が高分散されているため、破壊靭性及び強度の向上は、より小さい体積分率の補助添加物を用いて達成される。第二相は好ましくは、好ましい第二相がマトリックス中で最も細かい個々の要素として分散されているTCPマトリックス中で約1ミクロン以下の範囲で存在する。約2MPa・m1/2超の破壊靭性及び約200MPa以上の曲げ及び等二軸曲げ強さが容易に達成される。
【0117】
実施例14
リン酸カルシウム−ポリマーナノ複合体
【0118】
目的がTCPの機械的特性を改善することであった実施例13とは異なり、剛性及び強度を増加することによりポリマーを機械的に補強するため、及び複合物品の生体活性を増加させるための両方で、ポリマーナノ複合体中に、アパタイト又はTCPのようなリン酸カルシウムの存在が使用される。これらの要求を達成するために、リン酸カルシウム生体材料を、望ましくは、ポリマー相中に高分散させる。好ましくは、リン酸カルシウムは約1ミクロン以下の範囲で存在する。より好ましくは、リン酸カルシウムはナノメートルスケール(例えば、約20〜約500nm)の範囲で存在する。そのようなポリマーナノ複合体を合成するために、リン酸カルシウムナノ結晶を、ポリマー合成の前のモノマーを含む反応媒体に分散すべきである。好ましいポリマーには、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体、ポリプロピレンフマレート、ポリヒドロキシブチル酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンアジペート及びコラーゲンが挙げられる。
【0119】
実施例15
多孔性TCPの処理
【0120】
実施例10で既に検討したように、多孔質TCPは約25nm〜約300ミクロンの範囲の直径を有するポリマー球と共にTCPを成形することにより作ることができる。一旦圧縮されたら、孔壁がナノ結晶TCPから構成されながら広範囲な及び相互接続した多孔質を残す高温処理(例えば、焼成又は焼結)中にポリマー球は焼失される。ポリマー球の粒径分布を制御することにより、数オーダーの規模にわたるTCPの孔径を導入することができる。その後、体積分率を、特定の強度を達成するために選択する。高いポリマー球体積分率では材料の圧縮強さは低い。しかしながら、そこにはこれは相互接続した多孔質を形成するのに不十分な体積分率である臨界体積分率が存在する。ナノ結晶壁で多孔質体を形成することの代替方法として、孔を作るために、TCPの高充填スラリーに発泡剤を加えてもよい。孔は、ポリマー又はモノマーのような硬化剤の添加によって保たれる。スラリーをその後乾燥し、焼いて、いずれの有機物をも除去する。この方法はまた、広い孔径分布をもつ孔を形成する能力を与える。他の方法は、多孔質ポリマー発泡体中に、硬化剤を含む高充填スラリーを入れることである。一旦乾燥したら、その材料を焼いて、多孔質TCPを残して有機物及びポリマー発泡体を除去する。TCP前駆体の析出中又はスラリーに、界面活性剤(すなわち、臭化セチルトリアンモニウム)又はトリブロック共重合体(すなわち、PEO−PPO−PEO)ミセルを導入することにより100nm未満の孔を形成することができる。ミセルTCP溶液を、その後、ポリマー球、発泡剤又はポリマー発泡体で処理して、25nm〜300ミクロンの大きさの範囲の孔を有する多孔質体を作る。
【0121】
実施例16
両連続二相リン酸カルシウム複合体
【0122】
この実施例では、ナノ結晶ハイドロキシアパタイトとTCPの2つの両連続相から構成される高密度物品を提案する。物品は高密度(複合体の95%超の理論密度)であるだろうし、高い屈げ強さを有するだろう。この両連続相は、1ミクロン〜300ミクロンの範囲の直径を持つチャネルで存在する。さらに、各両連続相の結晶径は、約50nmから約5ミクロンまで、別々に変えることができる。
【0123】
一旦インプラントされたなら、TCP相はその密度、結晶径及びチャネル直径で決定される速度で吸収される。TCPが吸収されるに従い、多孔質ハイドロキシアパタイトが高密度両連続二相リン酸カルシウム複合体から姿を現し、宿主組織が多孔性ハイドロキシアパタイトに浸潤し始める。ハイドロキシアパタイトの吸収速度は、その密度、結晶径及びチャネル直径によって決定される。
【0124】
そのような物品を生成するために、実施例15の方法に従って多孔質TCPを形成しうる。乾燥後、ハイドロキシアパタイトの高充填スラリーを、多孔質TCPに注ぎ入れる。あるいは、多孔質ハイドロキシアパタイト体は実施例15に従って形成することができ、その後TCPスラリーで浸潤される。この今は両連続二相のリン酸カルシウム複合体を、その後、実施例8〜10に記載の方法によって焼結する。
【0125】
実施例17
プラスミドDNA、RNA、タンパク質、及び薬剤の輸送ビヒクルとしてのリン酸カルシウム構造
【0126】
遺伝子輸送のためのプラスミドDNA又はRNA、骨形成タンパク質(BMP)のようなタンパク質、薬剤輸送のためのビスフォスフォネート及び抗生物質のような薬剤で、TCP又はハイドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウム粉末の表面を満たす。一旦有機材料が表面に完全吸着されたならば、粉末を回収し、乾燥する。これらの粉末は、遺伝子もしくは薬剤の輸送が求められるペースト、セメント、被覆、空間充填剤、又はインプラントで使用することができる。インプラント構造を形成するため、約25℃以上の温度、約5分以上の時間、約100MPa以上の圧力で、この粉末をCIPしうる。CIPにより密度は増加し、これにより、活性剤の持続輸送を確実にする。さらに、物品の高密度は、それが耐荷重性インプラントとして使用されるのを可能とする。
【0127】
本明細書で引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参照文献は、それぞれの参照文献が参照することにより含まれることが個別にそして具体的に記載され、本明細書にその全体が記載されているかと同じ程度まで、参照することにより本明細書により援用される。
【0128】
発明を説明する文中における(特に、以下の特許請求の範囲の文中における)語「1つ(a)」及び「1つ(an)」及び「その(the)」及び類似の指示用語の使用は、本明細書で異なるように示されているか又は文脈により明らかに矛盾するものでない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、異なるように記載されていない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書で異なるように示されていない限り、その範囲内にあたる各個の値を個別に示す省略方法として振舞うことを単に意図するものであり、各個の値が、本明細書で個別に列挙されているかのように、本明細書に包含される。本明細書で記載されたすべての方法は、本明細書で異なるように示されていないか又は文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適当な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意の及びすべての例、又は例示的語(例えば、「のような(such as)」の使用は、異なるように特許請求されていない限り、単に発明をよりよく説明することを意図するものであり、発明の範囲に制限をもたらすものではない。本明細書中のいかなる用語も本発明の実施に必要不可欠な任意の特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0129】
本発明者らの知る本発明を実施するための最良の態様を含む本発明の好ましい実施態様が本明細書中に記載される。それらの好ましい実施態様の改変物は、前述の説明を読むことにより当業者に明らかとなりうる。本発明者らは、当業者がそのような改変物を適切に用いることを予期し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載された以外の他の方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は適用法令により許可される、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された対象のすべての修飾物及び均等物を含む。さらに、それらのすべての可能な改変中の、上記記載の要素の任意の組み合わせが、本明細書で異なるように示されていないか又は文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5μm以下の平均粒径、約250nm以下の平均結晶径、及び約20m/g以上の表面積を有する粒子状リン酸三カルシウム(TCP)を含む組成物。
【請求項2】
粒子状TCPが約1μm以下の平均粒子径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
粒子状TCPが約200nm以下の平均結晶径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
粒子状TCPがα−TCP、β−TCP、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
粒子状リン酸三カルシウムが高密度化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
補助添加物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
補助添加物が約1容量%〜約50容量%の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
補助添加物が構造添加物を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
構造添加物が金属酸化物を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
金属酸化物がジルコニアを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
構造添加物が約2以上のアスペクト比を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
補助添加物が有機種である、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
補助添加物が高分子添加物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
高分子添加物が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体、ポリプロピレンフマレート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンアジペート、コラーゲン、キトサン、アルギネート、セルロース、スターチ、糖、ポリペプチド、ポリエチレングリコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリレート、共重合ミセル、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
補助添加物が生物学的添加物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項16】
生物学的添加物が、プラスミドDNA、RNA、タンパク質、骨形成タンパク質、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
補助添加物が薬学的添加物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項18】
約80μm以下の平均結晶径、理論密度約90%以上の密度を有する強化TCP構造を含む物品。
【請求項19】
約95%以上の密度を有する、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
約10%以下の空隙容量を有する、請求項18に記載の物品。
【請求項21】
TCP構造が約10μm以下の平均結晶径を有する、請求項18に記載の物品。
【請求項22】
TCP構造が約1μm以下の平均結晶径を有する、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
TCP構造が約500nm以下の平均結晶径を有する、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
TCP構造が約100MPa以上の3点曲げ強さを有する、請求項18に記載の物品。
【請求項25】
TCP構造が約200MPa以上の3点曲げ強さを有する、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
TCP構造がα-TCP、β-TCP、又はこれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の物品。
【請求項27】
少なくとも約0.5cmの寸法を有する、請求項18に記載の物品。
【請求項28】
人工器官である、請求項18に記載の物品。
【請求項29】
人工器官の少なくとも一部である、請求項18に記載の物品。
【請求項30】
人工器官の外部被覆を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項31】
生体活性インプラントである、請求項18に記載の物品。
【請求項32】
生体活性インプラントが整形外科的又は歯科的インプラントである、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
アパタイト構造が補助添加物を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項34】
補助添加物が構造添加物を含む、請求項33に記載の物品。
【請求項35】
構造添加物が金属酸化物を含む、請求項34に記載の物品。
【請求項36】
補助添加物がナノ結晶である、請求項33に記載の物品。
【請求項37】
補助添加物が金属又は合金である、請求項33に記載の物品。
【請求項38】
補助添加物が約1容量%〜約50容量%の間の量で加えられている、請求項33に記載の物品。
【請求項39】
約1μm以下の平均結晶径及び約20%以上の多孔度を有する強化TCP構造を含む物品。
【請求項40】
TCP構造が約40%以上の多孔度を有する、請求項39に記載の物品。
【請求項41】
TCP構造が約300μm以下の平均孔径を有する、請求項39に記載の物品。
【請求項42】
TCP構造が約100MPa以上の圧縮強さを有する、請求項39に記載の物品。
【請求項43】
TCP構造が約250nm以下の平均結晶径を有する、請求項39に記載の物品。
【請求項44】
TCP構造がα-TCP、β-TCP、又はこれらの組み合わせを含む、請求項39に記載の物品。
【請求項45】
少なくとも約0.5cmの寸法を有する、請求項39に記載の物品。
【請求項46】
人工器官である、請求項39に記載の物品。
【請求項47】
人工器官の少なくとも一部である、請求項39に記載の物品。
【請求項48】
人工器官の外部被覆を含む、請求項39に記載の物品。
【請求項49】
生体活性インプラントである、請求項39に記載の物品。
【請求項50】
生体活性インプラントが整形外科的又は歯科的インプラントである、請求項49に記載の物品。
【請求項51】
アパタイト構造が補助添加物を含む、請求項39に記載の物品。
【請求項52】
補助添加物が有機添加物である、請求項51に記載の物品。
【請求項53】
補助添加物が高分子添加物である、請求項51に記載の物品。
【請求項54】
高分子添加物が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸/ポリグリコール酸共重合体、ポリプロピレンフマレート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンアジペート、コラーゲン、キトサン、アルギネート、セルロース、スターチ、糖、ポリペプチド、ポリエチレングリコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリレート、共重合ミセル、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項53に記載の物品。
【請求項55】
補助添加物が生物学的添加物である、請求項51に記載の物品。
【請求項56】
生物学的添加物が、プラスミドDNA、RNA、タンパク質、骨形成タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項55に記載の物品。
【請求項57】
補助添加物が薬学的添加物である、請求項51に記載の物品。
【請求項58】
薬学的添加物が、ビスフォスフォネート、シスプラチン化合物、抗生物質、抗炎症剤、抗関節病体質剤、エリスロポエチン、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項57に記載の物品。
【請求項59】
補助添加物がハイドロキシアパタイトである、請求項51に記載の物品。
【請求項60】
補助添加物が約1容量%〜約50容量%の間の量で加えられている、請求項51に記載の物品。
【請求項61】
約7μm以下の平均結晶径、理論密度約90%以上の密度、及び約100MPa以上の3点曲げ強さを有するTCPを含むインプラント。
【請求項62】
α-TCP、β-TCP、又はこれらの組み合わせを含む、請求項61に記載のインプラント。
【請求項63】
脊椎インプラントである、請求項61に記載のインプラント。
【請求項64】
歯科的インプラントである、請求項61に記載のインプラント。
【請求項65】
内部又は外部固定インプラントである、請求項61に記載のインプラント。
【請求項66】
軟組織接着用インプラントである、請求項61に記載のインプラント。
【請求項67】
約3ヶ月以上の吸収時間を有する、請求項61に記載のインプラント。
【請求項68】
約1年以上の吸収時間を有する、請求項67に記載のインプラント。

【公表番号】特表2007−503849(P2007−503849A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522565(P2006−522565)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/022304
【国際公開番号】WO2005/032456
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(506041785)アングストローム メディカ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】