説明

レジスト保護膜用組成物

【課題】幅広い波長領域において高い透明性と不感性とが得られ、かつ、PED効果抑制に優れるレジスト保護膜を得るためのレジスト保護膜用組成物の提供。
【解決手段】C−H結合を有し、かつ、酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していない含フッ素樹脂(A)、および、C−H結合を有するフッ素系溶媒(B)を含むレジスト保護膜用組成物。特に含フッ素樹脂(A)が、含フッ素アクリル系単量体(A1)または含フッ素アクリル系単量体(A1)を重合してなる繰り返し単位、含フッ素ジエン系単量体(A2)を環化重合してなる繰り返し単位、および、含フッ素ジエン系単量体(A3)とビニルエーテル系単量体(A4)とを2分子環化重合してなる繰り返し単位からなる群から選ばれる1種以上の繰り返し単位を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレジスト保護膜用組成物、該レジスト保護膜用組成物から得られるレジスト保護膜、および、該レジスト保護膜用組成物を用いたフォトレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にフォトレジストパターンは、レジスト膜の形成、露光、露光後のベーク、現像等のプロセスを経てパターンが形成される。ここで化学増幅系レジストのように、化学線等の光線照射により生じる酸を触媒として反応機構に適用するレジストにおいては、前記酸が大気中の不純物(例えばアミン化合物)と反応して失活することがある。この失活により、レジスト像の形成が妨げられる、感度の変化が引き起こされる等の問題が発生する(非特許文献1参照。)。特に露光と露光後ベークとの間の放置は、レジスト特性に大きな悪影響を及ぼす。即ち露光と露光後ベークとの間の放置時間が長くなると、レジスト感度が急速に低下し、パターンの形成ができなくなる現象(PED効果(PostExposure Delay effect))がよく知られている。
【0003】
PED効果を軽減するための方法として、レジスト膜と相溶しない高分子膜(レジスト保護膜)が得られる組成物(レジスト保護膜用組成物)をレジスト膜の上に塗布してレジスト保護膜を形成する技術が知られている(特許文献1参照。)。この方法では、形成されたレジスト保護膜が、大気中に浮遊するアミン等がレジスト膜に侵入することを防止する。
【0004】
またレジストの特性を損なわないために、前記レジスト保護膜は露光に使用される光線に対し「透明」でなければならない。すなわちレジスト保護膜は、X線、紫外線などの光線を吸収しないこと(透明性)、および、露光による不溶化等の副反応を起こさないこと(不感性)が要求される。しかしPED効果を抑制するために用いるレジスト保護膜としては、前記透明性と不感性とを同時に、かつ充分に満足するものは知られていない。
【0005】
一方、近年技術開発が進展している液浸露光技術は、投影レンズとレジスト膜の間に屈折率の大きな液体(例えば水)(液浸媒体)を満たすことによって高解像露光が可能となるという特徴を有している。しかし該液浸媒体によりレジスト膜が膨潤すること、レジスト膜から発生する不純物が該液体に溶解し投影レンズ表面を汚染すること等の問題が指摘されている。
【0006】
この問題を解決するために、液浸媒体およびレジスト膜のいずれにも相溶しないレジスト保護膜を用いることが提案されている(特許文献2参照。)。ここではレジスト保護膜として、環式または鎖式ペルフルオロアルキルポリエーテルを用いる技術が提案されている。しかしこの技術ではPED効果低減は不充分であり、さらにレジスト保護膜の除去にペルフルオロ化合物を溶媒として使用する必要があった。
【0007】
【特許文献1】特開平4−204848号公報
【特許文献2】国際公開第2004/074937号パンフレット
【非特許文献1】S.A.MacDonald et al.、Proc.SPIE、第1466巻、1991年、p.2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前述した問題を同時かつ充分に解決することを課題とする。すなわち本発明は、幅広い波長領域において高い透明性と不感性とが得られ、かつ、PED効果抑制に優れるレジスト保護膜を得るためのレジスト保護膜用組成物の提供を目的とする。特に透明性については、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー等の遠紫外線、およびFエキシマレーザー等の真空紫外線に対して高い透明性が得られることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、C−H結合を有し、かつ、酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していない含フッ素樹脂(A)、および、C−H結合を有するフッ素系溶媒(B)を含むレジスト保護膜用組成物を提供する。本発明において、前記含フッ素樹脂(A)が、炭素原子、水素原子、フッ素原子、塩素原子、および酸素原子からなる群から選ばれる原子(フッ素原子、塩素原子または酸素原子は炭素原子にのみ結合し、また酸素原子はエーテル性酸素原子、ケトン性酸素原子、エステル性酸素原子のみである)のみから実質的に構成されることが好ましい。
【0010】
また前記含フッ素樹脂(A)が下記式(1)で表される含フッ素アクリル系単量体(A1)または下記式(1)で表される含フッ素アクリル系単量体(A1)を重合してなる繰り返し単位を有することが好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
ただし、RはH、CH、F、CFのいずれかを表し、XはHまたはFを表す。
【0013】
また、前記含フッ素樹脂(A)が、下記式(2)で表される含フッ素ジエン系単量体(A2)を環化重合してなる繰り返し単位を有することも好ましい。
CF=CFOCFCF(Z)CH=CY (2)。
ただし、YはHまたはFを表し、ZはFまたはCFを表す。
【0014】
また前記含フッ素樹脂(A)が、下記式(3)で表される含フッ素ジエン系単量体(A3)と、下記式(4)で表されるビニルエーテル系単量体(A4)とを2分子環化重合してなる繰り返し単位を有することも好ましい。
【0015】
CF=CFCFCF=CF (3)、
CH=CHO−R (4)。
ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0016】
また本発明は、基材の表面にレジスト層を形成する工程、該レジスト層の上に、上記発明にかかるレジスト保護膜用組成物を用いてレジスト保護膜を形成する工程、液浸リソグラフィ法により露光する工程、前記フッ素系溶媒(B)を用いて前記レジスト保護膜を除去する工程、および、アルカリ現像する工程、を有するフォトレジストパターン形成方法を提供する。
【0017】
さらに本発明は、C−H結合を有し、かつ、酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していない含フッ素樹脂(A)からなるレジスト保護膜を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、幅広い波長領域において高い透明性と不感性とが得られ、かつ、PED効果抑制に優れるレジスト保護膜が得られる。特に透明性については、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー等の遠紫外線、およびFエキシマレーザー等の真空紫外線に対して高い透明性が得られる。これらの効果により、本発明にかかるレジスト保護膜は、精細なパターンの製造に好適である。
【0019】
また本発明にかかるレジスト保護膜用組成物は、含フッ素樹脂(A)がC−H結合を有しているため、C−H結合を有しているフッ素系溶媒(B)との親和性が高く、結果として組成物の安定性が非常に良好である。さらに、溶媒としてC−H結合を有するフッ素系溶媒(B)を用いているため、組成物自体の比重を比較的小さくでき、レジスト保護膜の塗布工程等で操作性が向上する。
【0020】
また含フッ素樹脂(A)は、C−H結合を有しているため、例えばペルフルオロ(C−H結合を有していない例。)である含フッ素樹脂と比較して、屈折率が大きい。このためレジスト膜との屈折率の調整(反射率等の要請から必要である。)が容易となる。
【0021】
また本発明により得られたレジスト保護膜は、水に不溶であり、水の浸透性も低く、かつ、高い撥水性を有するため、液浸露光工程において、液浸媒体からレジスト膜を効果的に保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のレジスト保護膜用組成物は、C−H結合を有し、かつ、酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していない含フッ素樹脂(A)、および、C−H結合を有するフッ素系溶媒(B)を含む。また本発明のレジスト保護膜は、前記含フッ素樹脂(A)からなる。ここで酸性官能基とは、水中で水素イオンを生成しうる官能基をいう。ただし水素イオンの生成は、水により当該官能基が加水分解を受けた後に水素イオンを生成する場合も含む。具体例としては、水酸基、カルボキシル基、スルフォニル基、カルボン酸クロリド等が挙げられる。また塩基性官能基とは、水中で水酸イオンを生成しうる官能基をいう。具体例としては、アミノ基等が挙げられる。
【0023】
本発明にかかる含フッ素樹脂(A)は、酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していないため、水に溶解も膨潤もしない。液浸媒体として水を用いた場合に、含フッ素樹脂(A)が酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していないため、レジスト保護膜が膨潤して解像度を低下させることもなく、また水分を透過させてレジスト層に存在する酸発生剤と反応してレジスト感度を低下させることもない。
【0024】
また含フッ素樹脂(A)は、炭素原子、水素原子、フッ素原子、塩素原子、および酸素原子からなる群から選ばれる原子のみから実質的に構成されることが好ましい。ただしこのときフッ素原子、塩素原子または酸素原子は炭素原子にのみ結合する。また酸素原子としてはエーテル性酸素原子、ケトン性酸素原子、エステル性酸素原子のみである。水酸基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)に含まれる酸素原子は含まない。含フッ素樹脂(A)が特定の構成原子のみから構成され、かつ特定の原子団を有していないことにより、遠紫外線または真空紫外線における高い透明性と不感性とが得られる。
【0025】
また含フッ素樹脂(A)は、主鎖または側鎖に含フッ素脂肪族環構造を有することが好ましい。この構造により遠紫外線または真空紫外線における高い透明性が得られる。また側鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する場合であって、かつ、エステル結合が含フッ素脂肪族環に隣接するときは、当該エステル結合の酸素原子に隣接する脂肪族環を構成する炭素原子は、2級炭素原子であるかまたは3級炭素原子であるかが好ましく、3級炭素原子であることがより好ましい。当該3級炭素原子がさらに橋頭原子であることが特に好ましい。
【0026】
本発明において、前記含フッ素樹脂(A)は後述する3種類の繰り返し単位のうち、1種または2種以上を有することが好ましい。また第1の繰り返し単位または第2の繰り返し単位を有することが特に好ましい。
【0027】
含フッ素樹脂(A)が有することが好ましい第1の繰り返し単位は、下記式(1)で表される含フッ素アクリル系単量体(A1)または下記式(1)で表される含フッ素アクリル系単量体(A1)を重合してなる繰り返し単位である。
【0028】
【化2】

【0029】
ただし、RはH、CH、F、CFのいずれかを表し、XはHまたはFを表す。ここでRとしてはHまたはCHが含フッ素樹脂(A)を安価に製造できるために好ましい。
【0030】
含フッ素アクリル系単量体(A1)は、新規化合物である。含フッ素アクリル系単量体(A1)は、下式(a1−3)で表される化合物と水を反応させて下式(a1−2)で表される化合物を得て、つぎに化合物(a1−2)とH−CHOを反応させて下式(a1−1)を得て、つぎに化合物(a1−1)と式CH=CRCOClで表される化合物を反応させることにより製造できる。
【0031】
【化3】

【0032】
本発明において例示しうる含フッ素アクリル系単量体(A1)としては、以下のものが挙げられる。
【0033】
【化4】

【0034】
本発明において例示しうる含フッ素アクリル系単量体(A1)としては、以下のものが挙げられる。
【0035】
【化5】

【0036】
含フッ素樹脂(A)は、含フッ素アクリル系単量体(A1)または含フッ素アクリル系単量体(A1)を重合してなる繰り返し単位を1種類のみ有していてもよく、2種類以上有していてもよい。
【0037】
含フッ素樹脂(A)が有することが好ましい第2の繰り返し単位は、下記式(2)で表される含フッ素ジエン系単量体(A2)を環化重合してなる繰り返し単位である。
CF=CFOCFCF(Z)CH=CY (2)。
ただし、YはHまたはFを表し、ZはFまたはCFを表す。
【0038】
本発明において例示しうる式(2)で表される含フッ素ジエン系単量体(A2)としては、以下のものが挙げられる。
CF=CFOCFCFCH=CH (2−1)、
CF=CFOCFCFCH=CF (2−2)、
CF=CFOCFCF(CF)CH=CH (2−3)、
CF=CFOCFCF(CF)CH=CF (2−4)。
【0039】
例えば、上記式(2−1)で表される含フッ素ジエン系単量体(A2)が環化重合してなる繰り返し単位は以下のように示される。
【0040】
【化6】

【0041】
また例えば、上記式(2−2)で表される含フッ素ジエン系単量体(A2)が環化重合してなる繰り返し単位は以下のように示される。
【0042】
【化7】

【0043】
また例えば、上記式(2−3)で表される含フッ素ジエン系単量体(A2)が環化重合してなる繰り返し単位は以下のように示される。
【0044】
【化8】

【0045】
含フッ素樹脂(A)は、含フッ素ジエン系単量体(A2)を重合してなる繰り返し単位を1種類のみ有していてもよく、2種類以上有していてもよい。
【0046】
含フッ素樹脂(A)が有することが好ましい第3の繰り返し単位は、下記式(3)で表される含フッ素ジエン系単量体(A3)と、下記式(4)で表されるビニルエーテル系単量体(A4)とを2分子環化重合してなる繰り返し単位である。
CF=CFCFCF=CF (3)、
CH=CHO−R (4)。
ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0047】
本発明において例示しうるビニルエーテル系単量体(A4)としては、以下のものが挙げられる。
【0048】
CH=CHO−CH (4−1)、
CH=CHO−CHCH (4−2)、
CH=CHO−CHCHCH (4−3)、
CH=CHO−CH(CH (4−4)、
CH=CHO−CHCHCHCH (4−5)、
CH=CHO−CHCH(CH (4−6)、
CH=CHO−C(CH (4−7)。
【0049】
例えば、含フッ素ジエン系単量体(A3)と上記式(4−7)で表されるビニルエーテル系単量体(A4)とが2分子環化重合してなる繰り返し単位は、以下のように示される。
【0050】
【化9】

【0051】
また、上記に例示された含フッ素ジエン単量体が重合してなる繰り返し単位に由来する単位は、含フッ素樹脂(A)中に、1種類のみ含まれていてもよいし、あるいは複数種類含まれていてもよい。
【0052】
含フッ素樹脂(A)は、含フッ素ジエン系単量体(A3)と、ビニルエーテル系単量体(A4)とを2分子環化重合してなる繰り返し単位を1種類のみ有していてもよく、2種類以上有していてもよい。
【0053】
本発明において、前記含フッ素樹脂(A)は前述の第1〜第3の3種類の繰り返し単位のうち、1種または2種以上を有することが好ましい。また含フッ素樹脂(A)は、レジスト保護膜としての特性を損なわない範囲で、単量体(A1)〜(A4)以外のその他のラジカル重合性単量体(A5)を重合して得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。含フッ素樹脂(A)において、前記その他のラジカル重合性単量体(A5)を重合して得られる繰り返し単位の割合は、含フッ素樹脂(A)の全繰り返し単位のうちの0〜50モル%が好ましく、0〜15モル%がより好ましい。
【0054】
例示しうる前記その他のラジカル重合性単量体(A5)としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のα−オレフィン類;ジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等の含フッ素オレフィン類;ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)などの含フッ素環状モノマー類;ペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)などの環化重合しうるペルフルオロジエン類;アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のアクリルエステル類;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、アダマンチル酸ビニル等のビニルエステル類;エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;シクロヘキセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状オレフィン類;無水マレイン酸等の不飽和酸無水物類;塩化ビニル等の含塩素オレフィン類;ビニルスルホン酸類;ビニルスルホン酸エステル類;ビニルスルホニルフルオリド類等が挙げられる。なかでも、含フッ素オレフィン類、含フッ素環状モノマー類、ペルフルオロジエン類、アクリルエステル類、ビニルエステル類、環状オレフィン類が好ましい。
【0055】
本発明において、含フッ素樹脂(A)のC−H結合含量は1〜80モル%が好ましく、5〜75モル%がより好ましく、10〜50モル%が特に好ましい。ただしC−H結合含量とは、C−H結合の量(C−H結合の本数)を、C−H結合、C−Cl結合およびC−F結合の合計量で割った値である。例えばトリフルオロエタンであれば、C−H結合含量は50モル%である。C−H結合含量が上記割合であれば、レジスト保護膜とレジスト層との相溶も少なく、C−H結合を有するフッ素系溶媒(B)への溶解性も良好となるため好ましい。
【0056】
本発明における含フッ素樹脂(A)は、含フッ素アクリル系単量体(A1)、含フッ素アクリル系単量体(A1)、含フッ素ジエン系単量体(A2)、および、含フッ素ジエン系単量体(A3)とビニルエーテル系単量体(A4)との組み合わせ(および任意にその他のラジカル重合性単量体(A5))からなる群から選ばれる1種または2種以上の単量体を重合して得られる。すなわち、これらの単量体を単独重合または共重合して含フッ素樹脂(A)が得られる。
【0057】
前記重合に用いる重合開始源(重合開始剤)としては、重合反応をラジカル的に進行させるものであれば限定されない。例えばラジカル発生剤、光、電離放射線などが挙げられる。特にラジカル発生剤が好ましく、ラジカル発生剤としては過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩などが例示される。中でもアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、または以下に示す過酸化物が好ましい。
−C(O)O−OC(O)−C
−C(O)O−OC(O)−C
−C(O)O−OC(O)−C
(CHC−C(O)O−OC(O)−C(CH
(CHCH−C(O)O−OC(O)−CH(CH
(CHC−C10−C(O)O−OC(O)−C10−C(CH
(CHC−O−C(O)O−OC(O)−O−C(CH
(CHC−O−OC(O)−C(CH
(CHCH−O−C(O)O−OC(O)−O−CH(CH
(CHC−C10−O−C(O)O−OC(O)−O−C10−C(CH
【0058】
ラジカル発生剤としては、tert−ブチルペルオキシピバレート(PBPV)[(CHC−O−OC(O)−C(CH]、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート(IPP)[(CHCH−C(O)O−OC(O)−CH(CH]、または、ビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシド(PFB)[C−C(O)O−OC(O)−C]が、好ましいレジスト保護膜が得やすいため特に好ましい。
【0059】
含フッ素樹脂(A)を得るための重合方法もまた特に限定されるものではない。単量体を溶媒等を用いずにそのまま重合するバルク重合法;前記各単量体を溶媒中に溶解し重合する溶液重合法;前記各単量体を分散媒中に分散させて重合する懸濁重合法;水性媒体に乳化剤を添加して前記各単量体をこの分散系中に分散させて重合する乳化重合法等が例示できる。
【0060】
重合を行う温度や圧力も特に限定されるものではない。モノマーの沸点、加熱源、重合熱の除去などの諸因子を考慮して適宜設定することが望ましい。例えば、0〜200℃の間で好適な温度の設定を行うことができ、室温〜100℃程度ならば実用的にも好適な温度設定を行うことができる。また重合圧力としては減圧下でも加圧下でもよく、実用的には常圧〜10MPa、さらには常圧〜1MPaで好適な重合を実施できる。
【0061】
本発明におけるフッ素系溶媒(B)は、C−H結合を有する化合物である。このフッ素系溶媒(B)は、前記含フッ素樹脂(A)を溶解しうる溶媒であることが好ましい。特に室温における含フッ素樹脂(A)の溶解度(溶液中に溶解しうる樹脂濃度)が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。またフッ素系溶媒(B)としては、レジスト膜を溶解しないことが好ましい。
【0062】
フッ素系溶媒(B)の25℃における比重は、スピンコート等における取り扱いの容易性から、1.8g/cm以下が好ましく、1.6g/cm以下がより好ましい。通常比重の下限は1.3g/cm以上である。またフッ素系溶媒(B)の沸点は、スピンコート等における取り扱いの容易性から、80〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。
【0063】
C−H結合を有するフッ素系溶媒(B)としては、ハイドロクロロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロベンゼン類、ハイドロフルオロケトン類、ハイドロフルオロアルキルベンゼン類、ハイドロフルオロエーテル類、ハイドロフルオロアルコール類が例示できる。前記ハイドロクロロフルオロカーボン類の具体例としては、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。前記ハイドロフルオロカーボン類の具体例としては、CFCHFCHFCFCF、CF(CFH、CF(CF、CF(CF、CF(CF等が挙げられる。前記フルオロアルキルベンゼン類の具体例としては、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。前記ハイドロフルオロエーテル類の具体例としては、CFCFCFCFOCH、CFCHOCFCHF等が挙げられる。前記ハイドロフルオロアルコール類の具体例としては、CHFCFCHOH、CFCFCFCHFCFCHOH等が挙げられる。
【0064】
フッ素系溶媒(B)としてはレジスト保護膜を製造する際の取り扱いが容易であることから、ハイドロフルオロカーボン類、フルオロアルキルベンゼン類、ハイドロフルオロエーテル類、ハイドロフルオロアルコール類が特に好ましい。これらの溶媒は1種類のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また前記フッ素系溶媒(B)とともにC−H結合を有していないフッ素系溶媒を併用してもよい。具体的には、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロベンゼン等のペルフルオロカーボン類;ペルフルオロエーテル類が例示できる。
【0066】
本発明のレジスト保護膜用組成物は、前記含フッ素樹脂(A)および前記フッ素系溶媒(B)を含む。このレジスト保護膜用組成物において含フッ素樹脂(A)の割合は、組成物全体を100質量%としたとき、0.1〜50質量%が好ましく、1〜10質量%が好ましい。また本発明のレジスト保護膜用組成物は、前記含フッ素樹脂(A)以外の樹脂を含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。レジスト保護膜用組成物に含まれていてもよい他の樹脂の割合は、0〜5質量%が好ましく、0〜1質量%が好ましい。レジスト保護膜用組成物のうちの樹脂全体における含フッ素樹脂(A)の割合(レジスト保護膜のうちの含フッ素樹脂(A)の割合)は50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%が好ましい。
【0067】
また本発明のレジスト保護膜用組成物は、各成分を均一に混合した後、公称目開きが0.1〜2μmのフィルターでろ過した後に用いることが好ましい。
【0068】
また本発明のフォトレジストパターン形成方法は、基材の表面にレジスト層を形成する工程、該レジスト層の上に前記レジスト保護膜用組成物を用いてレジスト保護膜を形成する工程、液浸リソグラフィ法により露光する工程、前記フッ素系溶媒(B)を用いて前記レジスト保護膜を除去する工程、および、アルカリ現像する工程を有する。
【0069】
前記基材としてはシリコーンウエハが例示できる。ウエハの大きさは直径200〜300mmが主である。レジスト層の形成は公知の方法が採用される。代表的にはスピンコート法が例示できる。形成されたレジスト層の上に、前記レジスト保護膜用組成物を用いてレジスト保護膜を形成する方法としては、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法が例示できるが、得られる膜の均質性の点からスピンコート法が好適である。本発明のレジスト保護膜は、前記レジスト保護膜用組成物をコートし、乾燥(溶媒除去)して得られる。すなわち本発明のレジスト保護膜は、C−H結合を有し、かつ、酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していない含フッ素樹脂(A)からなる。形成されるレジスト保護膜の厚さは、20〜200nmが好ましく、30〜150nmがより好ましい。
【0070】
また液浸リソグラフィ法により露光する工程において、液浸媒体としては水が好ましい。本発明にかかる含フッ素樹脂(A)をレジスト保護膜に採用することにより、水に不溶で、水の浸透性が小さく、良好なパターンが安定して得られる。露光に用いられる光としては、波長436nmのg線、波長365nmのi線等の紫外線;波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのArFエキシマレーザー等の遠紫外線;波長157nmのFエキシマレーザー等真空紫外線が挙げられる。本発明のレジスト保護膜は、波長250nm以下の紫外線、特に波長200nm以下の紫外線を用いるプロセスに好適である。
【0071】
前記露光の後は、前記フッ素系溶媒(B)を用いて前記レジスト保護膜を除去する工程、および、アルカリ現像する工程を経てフォトレジストパターンが形成される。ここでレジスト保護膜を除去する際にも前記フッ素系溶媒(B)を用いることが好ましい。ここでもフッ素系溶媒(B)はレジスト層を溶解しないことが好ましい。ただしレジスト保護膜用組成物におけるフッ素系溶媒(B)と、レジスト保護膜を除去する際のフッ素系溶媒(B)とは同一であっても、異なってもよい。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。下記例に用いられた略称は以下のとおりである。R113:トリクロロトリフルオロエタン、R225:ジクロロペンタフルオロプロパン、C13H:1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−トリデカフルオロヘキサン、HFIP:ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、IPP:ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、PFB:ビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシド、PBPV:tert−ブチルペルオキシピバレート、GPC:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、PSt:ポリスチレン、PMMA:ポリメタクリル酸メチル、PTFE:ポリテトラフルオロエチレン。
【0073】
(合成例1)
1−メタクリロイルオキシ−ペルフルオロアダマンタン[CH=C(CH)−COOC1015]の2.5g、C13Hの2.2gを内容積50mLのガラス製耐圧反応器に入れた。次に、重合開始剤としてIPPのR225溶液(濃度は50質量%)の0.6gを添加した。系内を凍結脱気した後、封管し、恒温振とう槽内(40℃)で18時間重合させた。重合後、反応溶液をメタノール中に滴下して、重合体を再沈させた後、90℃で24時間真空乾燥を実施した。その結果、側鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する非結晶性含フッ素重合体2.2gを得た(以下、重合体A10aという。)。R225/HFIP(99/1、体積比)を溶媒として用いてGPCにより測定したPMMA換算分子量は、数平均分子量(Mn)5,800、重量平均分子量(Mw)14,200であり、Mw/Mn=2.5であった。室温で白色粉末状の重合体であった。また重合体A10aのC−H結合含量は25モル%である。
【0074】
(合成例2)
内容積20mLのガラス製耐圧反応器に、1,1,2,4,4,5,5,7,7−ノナフルオロ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン[CF=CHCFCFOCF=CF]の5.91gとPFBのR225溶液(濃度は3質量%)の1.29gを入れた。反応器を、凍結脱気してから20℃の恒温振とう槽内に浸漬し、65時間、重合を行ってゴム状の重合体を得た。該重合体をR225(40mL)に溶解させて重合体溶液を得た。
【0075】
重合体溶液の全量をヘキサン(4L)中に滴下し、凝集した固形物をろ過により回収した。該固形物を、さらにヘキサン(2L)中に滴下し、凝集した固形物を20分間、撹拌洗浄した。該固形物をろ過により回収してから、80℃にて17時間、真空乾燥して白色粉末状の主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する非結晶性含フッ素重合体(以下、重合体A2aという。)の3.51gを得た。H−NMRおよび19F−NMRにより分析した結果、重合体A2aは含フッ素ジエン系単量体(A2)に基づく下記の繰り返し単位を含むことを確認した。
【0076】
【化10】

【0077】
また、重合体A2aのガラス転移点は76℃であり、R225/HFIP(99/1、体積比)を溶媒として用いてGPCにより測定したPMMA換算分子量は、数平均分子量(Mn)49,900、重量平均分子量(Mw)93,000であり、Mw/Mn=1.86であった。また重合体A2aのC−H結合含量は10モル%である。
【0078】
(合成例3)
1,1,2,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン[CH=CHCFCFOCF=CF]の4.3gおよびC13Hの37gを内容積50mLのガラス製耐圧反応器に入れた。重合開始剤としてIPPのR225溶液(濃度は50質量%)の4.3gを加え、系内を凍結脱気した後、40℃で18時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する非結晶性含フッ素重合体(以下、重合体A2bという)を3.24g得た。H−NMRおよび19F−NMRにより分析した結果、重合体A2bは含フッ素ジエン系単量体(A2)に基づく下記の繰り返し単位を含むことを確認した。
【0079】
【化11】

【0080】
重合体A2bのガラス転移点は90℃であり、R225/HFIP(99/1、体積比)を溶媒として用いてGPCにより測定したPMMA換算分子量は、数平均分子量(Mn)11,700、重量平均分子量(Mw)21,500であり、Mw/Mn=1.84であった。室温で白色粉末状の重合体であった。また重合体A2bのC−H結合含量は30モル%である。
【0081】
(合成例4)
内容積100mLのガラス製耐圧反応器内を窒素で3回置換した後、系内を減圧にし、0℃のウオーターバス内にセットしたあと系内を窒素で置換した。1,1,2,4,4,5−ヘプタフルオロ−3−オキサ−5−トリフルオロメチル−1,6−ヘプタジエン[CH=CHCF(CF)CFOCF=CF]の30g、および重合開始剤としてPFBの24.5mgをC13Hに溶かし、耐圧反応器に減圧導入した。系内を窒素で5回置換したあと25℃で20時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する非結晶性含フッ素重合体(以下、重合体A2cという)を20g得た。H−NMRおよび19F−NMRにより分析した結果、重合体A2cは含フッ素ジエン系単量体(A2)に基づく下記の繰り返し単位を含むことを確認した。また重合体A2cのC−H結合含量は25モル%である。
【0082】
【化12】

【0083】
重合体A2cの固有粘度[η]はペルフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン中、30℃で0.60dl/gであった。重合体A2cのガラス転移温度は108℃であった。
【0084】
(合成例5)
1,1,2,4,4,5−ヘキサフルオロ−3−オキサ−5−トリフルオロメチル−1,6−ヘプタジエンの24g、重合開始剤としてPFBの29mgとC13Hの70gの混合物を内容積200mLのガラス製耐圧反応器に入れた。系内を窒素で置換した後、フッ化ビニリデンの4.6gを気相部に導入した。その後10℃で72時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する非結晶性含フッ素重合体(以下、重合体A2dという)を11g得た。重合体A2dの固有粘度[η]は、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中、30℃で0.54dl/gであった。
【0085】
(合成例6)
内容積50mLのガラス製耐圧反応器に、CF=CFCFCF=CF(以下、単量体A3という)を8.91g、CH=CHOC(CH(以下、単量体A4aという)を8.42g、酢酸メチルを23.3gおよび炭酸カリウムを0.14g入れた。開始剤としてPBPVのキシレン溶液(濃度は50質量%)の0.346gを添加した。系内を凍結脱気した後、50℃の恒温振とう槽内で18時間重合させた。得られた重合体溶液をヘキサン中に滴下して、ポリマーを再沈させた後、60℃で15時間真空乾燥を実施した。その結果、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する非結晶性含フッ素重合体(以下、重合体A3aという)の12.45gを得た。H−NMRおよび19F−NMRにより分析した結果、重合体A3aは単量体A3と単量体A4aとが2分子環化重合してなる下記の繰り返し単位を含むことを確認した。
【0086】
【化13】

【0087】
得られた重合体の組成は単量体A3に由来する構造/単量体A4aに由来する構造=32/68(モル%)であった。得られた重合体の分子量をGPCで測定したところ、PSt換算数平均分子量は18,480であった。重合体A3aのガラス転移温度は113℃であった。また重合体A3aのC−H結合含量は76モル%である。
【0088】
(合成例7)
1−メタクリロイルオキシメチル−ペルフルオロアダマンタン[CH=C(CH)−COOCH1015](以下、化合物(a11)ともいう。)の製造例
0℃に保持したフラスコに、下記化合物(a1−3)(27.46g)、NaF(3.78)およびアセトン(100mL)を入れ撹拌した。つぎにフラスコに水(1.14g)を滴下し、フラスコ内を充分に撹拌した。フラスコ内容液を昇華精製して下記化合物(a1−2)(22.01g)を得た。
【0089】
化合物(a1−2)(2.03g)およびジメチルスルホキシド(50mL)の混合物に、水酸化カリウム(1.00g)とホルマリン水溶液(20mL)を加え、そのまま75℃にて6.5時間反応させた。反応終了後、反応液をR−225(40mL)に抽出し、さらにR−225を留去して下記化合物(a1−1)(1.58g)を得た。
【0090】
同様にして得た化合物(a1−1)(6.01g)とR−225(103g)とをフラスコに加え、つぎにトリエチルアミン(1.68g)とCH=C(CH)COCl(1.58g)とを少しずつ加え、そのまま、25℃にてフラスコ内を2時間撹拌した。フラスコ内溶液をろ過して得たろ液を水(50mL)で2回洗浄した。つぎに、フラスコ内溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した後に濃縮して、浅黄色の固形物(6.19g)を得た。固形物をカラムクロマトグラフィーで精製して、下記化合物(a11)を得た。
【0091】
耐圧反応器(内容積30mL、ガラス製)に、化合物(a11)(0.8g)とCF(CFCHF(1.06g)とを仕込んだ。つぎに、R−225で50質量%に希釈したIPPの0.28gを重合開始剤として添加した。反応器内を凍結脱気した後、40℃にて、18時間、重合反応を行った。重合反応後、反応器内溶液をメタノール中に滴下して凝集した固形物を回収し、該固形物を90℃にて、24時間、真空乾燥して重合体(0.62g)(以下、重合体A11aという。)を得た。重合体A11aは、25℃にて白色粉末状の非結晶性の重合体であった。
【0092】
GPC法(展開溶媒;R−225(99体積%)とヘキサフルオロイソプロパノール(1体積%)の混合溶媒。内部標準;PMMA)により測定した重合体A11aのMnは7000であり、Mwは20000であった。
【0093】
【化14】

【0094】
化合物(a11)のNMRデータを以下に示す。
H−NMR(300.4MHz,CDCl,TMS)δ(ppm):1.96(s,3H),5.06(s,2H),5.71(s,1H),6.19(s,1H)。
19F−NMR(282.7MHz,CDCl,CFCl)δ(ppm):−113.6(6F),−121.1(6F),−219.4(3F)。
【0095】
(例1〜7)レジスト保護膜組成物の製造例
合成例1〜7で得られた、重合体A10a、重合体A2a、重合体A2b、重合体A2c、重合体A2d、重合体A11aのそれぞれ1gを1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンに溶解し、5質量%溶液とした。次いで、孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いてろ過し、レジスト保護膜用組成物A10aP〜A3aP、レジスト保護膜組成物A11aPを製造した。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
(例8)レジスト保護膜組成物の光線透過率評価例
CaF基板上に、例1〜6で調製したレジスト保護膜用組成物(A10aP、A2aP、A2bP、A2cP、A2dP、A3aP)をそれぞれ回転塗布し、塗布後130℃で90秒加熱処理して、膜厚0.2μmのレジスト保護膜を形成した。窒素置換した透過率測定装置(分光計器 KV−201AD型 極紫外分光測定装置、分光計器社製)内に、レジスト保護膜が形成されたCaF基板を入れ、193nmの光線透過率(単位:%)を測定した。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
(例9)レジスト保護膜組成物の屈折率評価例
シリコン基板上に、例1、3、6で調製したレジスト保護膜用組成物(A10aP、A2bP、A3aP)を回転塗布し、塗布後130℃で90秒加熱処理して、膜厚0.15μmのレジスト保護膜を形成し、J.A.Woollam社製分光エリプソメーター(M2000D)にて193nmの光に対する屈折率を測定した。
【0100】
一方、旭硝子製環状ペルフルオロポリエーテル樹脂(商品名:サイトップ)の7質量%溶液(ペルフルオロフッ素系溶剤、商品名:CT−Solv)を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いてろ過し、レジスト保護膜用組成物(WP)を製造した。次いで、保護膜用組成物(WP)を回転塗布し、塗布後130℃で90秒加熱処理して、膜厚0.15μmのレジスト保護膜を形成し、J.A.Woollam社製分光エリプソメーター(M2000D)にて193nmの光に対する屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
(例10)レジスト保護膜組成物の水溶性評価例
有機反射防止膜(BARC(Bottom Anti−Reflective Coating)、Rohm And Haas Electronic Material社製 AR−26)で処理したシリコン基板上に、例1〜7で調製したレジスト保護膜用組成物(A10aP、A2aP、A2bP、A2cP、A2dP、A3aP、A11aP。)をそれぞれ回転塗布し、塗布後130℃で90秒加熱処理して、膜厚0.15μmのレジスト保護膜を形成した。次いで、このシリコン基板上のレジスト保護膜を30秒間、水に浸漬させた。その後110℃にて90秒間乾燥し、水浸漬前後の膜厚変化を測定した。結果を表4に示す。
【0103】
【表4】

【0104】
(例11)レジスト保護膜組成物の撥水性評価例
シリコン基板上に、例1〜7で調製したレジスト保護膜用組成物(A10aP、A2aP、A2bP、A2cP、A2dP、A3aP、A11aP。)をそれぞれ回転塗布し、塗布後130℃で90秒加熱処理して、膜厚0.15μmのレジスト保護膜を形成し、水に対する静的接触角(単位:度)および転落角(単位:度)を測定した。結果を表5に示す。
【0105】
【表5】

【0106】
(例11)レジスト保護膜用組成物の含フッ素溶媒への溶解性評価例
例1、例3、および例7で調製したレジスト保護膜用組成物(A10aP、A2bP、A11aP)を水晶振動子上に回転塗布し、さらに130℃で90秒間加熱処理することによって、膜厚0.2μmの重合体薄膜を形成した。次いで同水晶振動子をペルフルオロブチルメチルエーテル(3M社品:商品名 ノベックHFE−7100)に浸漬し、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を用いて、重合体のHFE−7100への溶解速度(単位:nm/s)を測定した。結果を表6に示す。
【0107】
一方、シリコン基板上に、レジスト保護膜用組成物(WP)を回転塗布し、塗布後130℃で90秒加熱処理して、膜厚0.15μmのレジスト保護膜を形成した。次いで、このシリコン基板上のレジスト保護膜を30秒間、HFE−7100に浸漬させた。その後100℃にて90秒間乾燥し、浸漬前後の膜厚変化を測定した。このレジスト保護膜のHFE−7100への溶解は困難であった。結果をまとめて表6に示す。
【0108】
【表6】

【0109】
(例13)レジスト保護膜用組成物を用いた液浸露光工程を含むフォトレジストパターン形成方法
例3で得られた重合体A2bを1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンに溶解し、1質量%溶液とした(以下、保護膜用組成物A2bP1と記す。)。有機反射防止膜(BARC)で処理したシリコン基板上に、住友化学社製レジスト(PAR715)を回転塗布し、塗布後130℃で60秒加熱処理して、膜厚150nmのレジスト膜を形成した(以下、ウエハ1Xと記す。)。次いで、ウエハ1X上のレジスト膜にさらに保護膜用組成物A2bP1を回転塗布して、膜厚30nmのレジスト保護膜を形成した(以下、ウエハ1Yと記す。)。
【0110】
上記ウエハ1Xおよび1Yを、波長193nmのレーザー光を用いた二光束干渉露光装置にて、Dryおよび液浸(液浸媒体:超純水)にて90nmL/Sの露光試験を行い、そのパターン形状をSEM画像にて比較した。結果をまとめて表7に示す。なお、露光後の処理条件は、以下の通りである。露光後加熱:130℃、60秒;保護膜除去:HFE−7100、60秒;現像:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(濃度:2.38質量%)(23℃)、60秒。
【0111】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明のレジスト保護膜用組成物は、KrF、ArFエキシマレーザー等の遠紫外線やFエキシマレーザー等の真空紫外線に対する透明性に優れる。特に液浸リソグラフィ用のレジスト保護膜用組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C−H結合を有し、かつ、酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していない含フッ素樹脂(A)、および、C−H結合を有するフッ素系溶媒(B)を含むレジスト保護膜用組成物。
【請求項2】
前記含フッ素樹脂(A)が、炭素原子、水素原子、フッ素原子、塩素原子、および酸素原子からなる群から選ばれる原子(フッ素原子、塩素原子または酸素原子は炭素原子にのみ結合し、また酸素原子はエーテル性酸素原子、ケトン性酸素原子、エステル性酸素原子のみである)のみから実質的に構成される請求項1に記載のレジスト保護膜用組成物。
【請求項3】
前記含フッ素樹脂(A)が下記式(1)で表される含フッ素アクリル系単量体(A1)または下記式(1)で表される含フッ素アクリル系単量体(A1)を重合してなる繰り返し単位を有する請求項1または2に記載のレジスト保護膜用組成物。
【化1】

ただし、RはH、CH、F、CFのいずれかを表し、XはHまたはFを表す。
【請求項4】
前記含フッ素樹脂(A)が下記式(2)で表される含フッ素ジエン系単量体(A2)を環化重合してなる繰り返し単位を有する請求項1、2または3に記載のレジスト保護膜用組成物。
CF=CFOCFCF(Z)CH=CY (2)
ただし、YはHまたはFを表し、ZはFまたはCFを表す。
【請求項5】
前記含フッ素樹脂(A)が、下記式(3)で表される含フッ素ジエン系単量体(A3)と、下記式(4)で表されるビニルエーテル系単量体(A4)とを2分子環化重合してなる繰り返し単位を有する請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト保護膜用組成物。
CF=CFCFCF=CF (3)
CH=CHO−R (4)
ただし、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【請求項6】
基材の表面にレジスト層を形成する工程、該レジスト層の上に請求項1〜6のいずれかに記載のレジスト保護膜用組成物を用いてレジスト保護膜を形成する工程、液浸リソグラフィ法により露光する工程、前記フッ素系溶媒(B)を用いて前記レジスト保護膜を除去する工程、および、アルカリ現像する工程、を有するフォトレジストパターン形成方法。
【請求項7】
C−H結合を有し、かつ、酸性官能基および塩基性官能基のいずれも有していない含フッ素樹脂(A)からなるレジスト保護膜。

【公開番号】特開2007−86731(P2007−86731A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116734(P2006−116734)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】