説明

レジスト組成物、レジストパターン形成方法

【課題】 レジストパターンの経時安定性に優れ、かつ現像欠陥低減を達成可能なレジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分、(B)オキシムスルホネート系酸発生剤、(D)炭素数5〜12のアルキル基を少なくとも1以上有するアミン化合物、及び(E)有機酸をメチル−n−アミルケトンを含有する有機溶剤(C)に溶解してなるポジ型レジスト組成物であって、前記(E)成分が2塩基酸であることを特徴とするレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物、レジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては一般に露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザー(248nm)が導入されている。
また、微細な寸法のパターンを再現可能な高解像性の条件を満たすレジスト材料の1つとして、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤を含有する化学増幅型レジスト組成物が知られている。化学増幅型レジスト組成物には、架橋剤とベース樹脂であるアルカリ可溶性樹脂とを含有するネガ型と、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂を含有するポジ型とがある。
そして、現在では半導体素子の微細化がますます進み、ArFエキシマレーザー(193nm)を用いたプロセスの開発が精力的に進められ、KrFエキシマレーザー用、ArFエキシマレーザー用として、種々の化学増幅型レジスト組成物が開発されている。
【0003】
この様な化学増幅型レジスト組成物に用いられる酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類、ニトロベンジルスルホネート類などのジアゾメタン系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
例えばArFエキシマレーザー用のレジスト組成物では、酸発生能が高い、いわゆるオニウム塩系酸発生剤が主に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−234511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オニウム塩系酸発生剤を用いると、場合によってはレジストパターンの断面形状がいわゆる裾引きの状態(下端部分がテーパーとなる状態)となって、良好な矩形のパターンが得られないことがある。これに対していわゆるオキシムスルホネート系酸発生剤を用いると、パターン形状の改善効果が得られる。
しかしながら、オキシムスルホネート系酸発生剤を用いると、形状改善の効果は得られるものの、レジストパターンの経時安定性や現像欠陥の問題があり改善が望まれていた。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、オキシムスルホネート系酸発生剤を含むレジスト組成物において、レジストパターンの経時安定性を向上させ、かつ現像欠陥を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のレジスト組成物は、(A)酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分と、(B)オキシムスルホネート系酸発生剤と、(D)炭素数5〜12のアルキル基を少なくとも1以上有するアミン化合物と、(E)有機酸とを、メチル−n−アミルケトンを含有する有機溶剤(C)に溶解してなるレジスト組成物であって、前記(E)成分が2塩基酸である。
本発明のレジストパターン形成方法は、本発明のレジスト組成物を基板上に塗布し、プレベークし、選択的に露光した後、PEB(露光後加熱)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成する。
また、本発明の他のレジストパターン形成方法は、本発明のレジスト組成物を基板上に塗布し、プレベークし、選択的に露光した後、露光後加熱(PEB)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、得られたレジストパターンのパターンサイズを加熱処理により狭小する狭小工程とを備える。
なお、本発明において、「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
また、「露光」は放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、オキシムスルホネート系酸発生剤を含むレジスト組成物において、レジストパターンの経時安定性を向上させ、かつ現像欠陥(ディフェクト)を低減することを課題とする。
ここで、現像欠陥(ディフェクト)は、例えばKLAテンコール社の表面欠陥観察装置(商品名「KLA」)等により、現像後のレジストパターンの真上から観察した際に検知されるスカムやレジストパターンの不具合全般のことである。このようなディフェクトは、プロセスにおける歩留まりの低下や製品の性能劣化などの原因となるため、非常に大きな問題である。
また、ここでいうレジストパターンの経時安定性とは、以下の様に評価するものである。すなわち、調整したレジスト組成物をそれぞれ異なる環境下で一定期間保存した後(例えば、温度が−20℃で2週間保存したレジスト組成物と温度が40℃で2週間保存したレジスト組成物)、同じ条件でレジストパターンを形成する。そして、同じ露光量でレジストパターンを形成した際に、そのレジストパターンのライン幅などのパターンサイズの寸法差の絶対値が小さい程、レジストパターンの経時安定性が良好であると言える。また、レジストパターンの経時安定性は、感度経時安定性または寸法経時安定性ということもある。
本発明によれば、オキシムスルホネート系酸発生剤を含むレジスト組成物において、レジストパターンの経時安定性を向上でき、かつ現像欠陥を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[レジスト組成物]
本発明のレジスト組成物は、(A)酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分と、(B)オキシムスルホネート系酸発生剤と、(D)炭素数5〜12のアルキル基を少なくとも1以上有するアミン化合物と、(E)有機酸とを、メチル−n−アミルケトンを含有する有機溶剤(C)に溶解してなるレジスト組成物であって、前記(E)成分が2塩基酸である。
【0009】
(A)成分
(A)成分はいわゆるベース樹脂成分であり、ベース樹脂成分(A)とは、レジスト組成物を基板等にコーティングしたときにレジスト被膜を形成する特性を有するものであることを意味する。通常(α−低級アルキル)アクリル酸エステル等の樹脂成分が用いられる。
【0010】
なお、本発明において、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルと、メタクリル酸エステル等のα−低級アルキルアクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
また、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」のα−位の置換基としての低級アルキル基は、炭素原子数1〜5のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して形成される構成単位を意味する。
【0011】
本発明のレジスト組成物においては、(A)成分として、通常、化学増幅型レジスト用のベース樹脂として用いられている、一種又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂又はアルカリ可溶性となり得る樹脂を使用することができる。前者の場合はいわゆるネガ型、後者の場合はいわゆるポジ型のレジスト組成物である。本発明のレジスト組成物は、好ましくはポジ型である。
ネガ型の場合、レジスト組成物には、(B)酸発生剤成分と共に架橋剤が配合される。そして、レジストパターン形成時に、露光により(B)酸発生剤成分から酸が発生すると、かかる酸が作用し、(A)成分と架橋剤間で架橋が起こり、アルカリ不溶性となる。前記架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基又はアルコキシメチル基を有するメラミン、尿素又はグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤が用いられる。
ポジ型の場合は、(A)成分はいわゆる酸解離性溶解抑制基を有するアルカリ不溶性のものであり、露光により(B)酸発生剤成分から酸が発生すると、かかる酸が前記酸解離性溶解抑制基を解離させることにより、(A)成分がアルカリ可溶性となる。本発明においてはポジ型が好ましい。
【0012】
(A)成分は上述の様にレジスト組成物のベース樹脂成分として使用可能なものであれば特に限定されない。
ただし、ArFエキシマレーザーで露光する用途に適した特性とし、解像性等の特性を向上させる点においては、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を80モル%以上、好ましくは90モル%以上(100モル%が最も好ましい)含むことが好ましい。
【0013】
このときポジ型であれば、(A)成分は、酸解離性溶解抑制基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸から誘導される構成単位(a1)(以下、(a1)または(a1)単位という。)を有する。
そして、解像性、耐ドライエッチング性、微細なパターンの形状を満足するために、(a1)単位を有し、かつそれ以外の複数の異なる機能を有するモノマー単位、例えば、以下の構成単位の組み合わせにより構成することが好ましい。
・ラクトン単位を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、(a2)または(a2)単位という。)、
・極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、(a3)または(a3)単位という。)
・前記(a1)単位の酸解離性溶解抑制基、前記(a2)単位のラクトン単位、および前記(a3)単位の極性基含有脂肪族炭化水素基のいずれとも異なる多環式基を含む構成単位(以下、(a4)または(a4)単位という)。
【0014】
・構成単位(a1)
構成単位(a1)は、酸解離性溶解抑制基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
【0015】
構成単位(a1)における酸解離性溶解抑制基は、解離前は(A)成分全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、解離後は(A)成分全体をアルカリ可溶性へ変化させるものであれば、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(α−低級アルキル)アクリル酸のカルボキシル基と、環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、または鎖又は環状アルコキシアルキル基などが広く知られている。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
構成単位(a1)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0016】
【化1】

[上記式中、Xは脂肪族分岐状又は脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基を表し、Yは脂肪族環式基又は炭素数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基を表し、Y’脂肪族環式基又は炭素数1〜10のアルキル基又はアルコキシ基であり、nは0又は1〜3の整数を表し、mは0または1を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。]
【0017】
本発明における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基(脂環式基)であることを意味し、このとき「脂肪族環式基」は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。好ましくは多環式基(脂環式基)である。
このような脂肪族環式基の具体例としては、例えば、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0018】
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)の具体例を示す。
【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
構成単位(a1)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その中でも、一般式(a1−1)で表される構成単位が好ましく、具体的には化学式(a1−1−1)〜(a1−1−40)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を用いることがさらに好ましく、化学式(a1−1−1)〜(a1−1−8)、(a1−1−35)〜(a1−1−40)から選ばれる少なくとも1種を用いることが最も好ましい。
(A)成分中、構成単位(a1)の割合は、(A)成分を構成する全構成単位に対し、10〜80モル%が好ましく、15〜70モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際にパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0030】
・構成単位(a2)
構成単位(a2)は、ラクトン含有単環または多環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
構成単位(a2)を有することにより、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、現像液との親水性を高めたりするうえで有効なものである。
なお、ここでのラクトンとは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
【0031】
構成単位(a2)としては、このようなラクトンの構造(−O−C(O)−)と環基とを共に持てば、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。特に、以下のような構造式を有するラクトン含有トリシクロアルカンから水素原子を1つを除いた基が、工業上入手し易いなどの点で有利である。
【0032】
【化12】

【0033】
構成単位(a2)の例として、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0034】
【化13】

(式中、Rは水素原子または低級アルキル基である、R’は水素原子、低級アルキル基、または炭素数1〜5のアルコキシ基であり、mは0または1の整数である。)
【0035】
一般式(a2−1)〜(a2−5)におけるRおよびR’の低級アルキル基としては、前記構成単位(a1)におけるRの低級アルキル基と同じである。
一般式(a2−1)〜(a2−5)中、R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。これらの中でも一般式(a2−1)で表される構成単位が好ましい。
【0036】
構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分中、構成単位(a2)の割合は、(A)成分を構成する全構成単位に対し、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、25〜45モル%が最も好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0037】
・構成単位(a3)
構成単位(a3)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。構成単位(a3)を有することにより、樹脂成分(A)の親水性が高まり、レジストパターン形成時における現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。極性基としては、水酸基、シアノ基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基(アルキレン基)や、多環式の脂肪族炭化水素基(多環式基)が挙げられる。該多環式基としては、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
その中でも、水酸基、シアノ基またはカルボキシル基含有脂肪族多環式基を含み、かつ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。この様な多環式基は、ArFエキシマレーザー用レジスト組成物用のポリマー(樹脂成分)において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの多環式基の中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
【0038】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基のときは、(α−低級アルキル)アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a3−1)、(a3−2)、(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0039】
【化14】

(式中、Rは前記に同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数である。lは1〜3の整数である。tは1〜3の整数である。)
【0040】
式(a3−1)中、jは1であることが好ましく、特に水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0041】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。これらは異性体の混合物として存在する(シアノ基がノルボルナニル基の5位または6位に結合している化合物の混合物)。
【0042】
式(a3−3)中、lは1であることが好ましい。tは1であることが好ましい。これらは異性体の混合物として存在する(アクリル酸エステルとの結合位置がノルボルナニル基の2位または3位に結合している化合物の混合物)。
【0043】
構成単位(a3)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)成分中、構成単位(a3)の割合は、当該樹脂成分(A)を構成する全構成単位に対し、本発明の効果のためには、5〜50モル%であることが好ましく、10〜35モル%がより好ましく、15〜30モル%が最も好ましい。
【0044】
・構成単位(a4)
本発明のレジスト組成物において、樹脂成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(a1)〜(a3)以外の他の構成単位(a4)を含んでいてもよい。
構成単位(a4)は、上述の構成単位(a1)〜(a3)に分類されない他の構成単位であれば特に限定するものではなく、ArFエキシマレーザー用、KrFポジエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト用樹脂に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
構成単位(a4)としては、例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含み、かつ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。該多環式基は、例えば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFポジエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。該多環式基は、炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基で置換されていてもよい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−5)の構造のものを例示することができる。
【0045】
【化15】

(式中、Rは前記と同じである。)
【0046】
かかる構成単位(a4)は、必須成分ではないが、これを(A)成分に含有させる際には、(A)成分を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a4)を1〜30モル%、好ましくは5〜20モル%含有させると好ましく、最も好ましくは5〜15モル%である。
【0047】
(A)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
また、HS−CH−CH−CH−C(CF−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、共重合体の末端に−C(CF−OH基を導入した共重合体を用いることもできる。
【0048】
(A)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定するものではないが、2000〜30000が好ましく、2000〜20000がより好ましく、5000〜15000が本発明の効果の点から最も好ましい。また分散度(Mw/Mn)は1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましい。
【0049】
前記(A)成分は1種または2種以上用いることができる。
【0050】
(B)成分
本発明のレジスト組成物においては、オキシムスルホネート系酸発生剤(B)を配合することを必須とする。本発明においては、オキシムスルホネート系酸発生剤を含むレジスト組成物において、レジストパターンの経時安定性を向上させ、かつ現像欠陥を低減することができる。
【0051】
なお、本発明において「オキシムスルホネート系酸発生剤」とは、下記一般式(B−1)
【0052】
【化16】

(式中、R21は有機基を表し、R22は1価の有機基、またはシアノ基である。)で表される構造を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物用として多用されているので、任意に選択して用いることができる。
【0053】
21の有機基は、好ましくはアルキル基、アリール基である。これらアルキル基、アリール基は置換基を有していても良い。
これらアルキル基、アリール基は、いずれにおいても炭素数1〜20であることが好ましく、更にはいずれにおいても炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜6であることが最も好ましい。また、アルキル基は部分又は完全フッ素化アルキル基が好ましく、アリール基は部分又は完全フッ素化アリール基が好ましい。
また、R22はシアノ基又は前記R21と同様の概念である。
尚、部分又は完全フッ素化アルキル基とは、部分的にフッ素化されたアルキル基又は完全にフッ素化されたアルキル基を意味する。部分又は完全フッ素化アリール基とは、部分的にフッ素化されたアリール基又は完全にフッ素化されたアリール基を意味する。
【0054】
これらの中でも、R21は炭素数1〜4のアルキル基又はフッ素化アルキル基であることがより好ましい。また、R22はシアノ基又は炭素数1〜8のアルキル基又は部分又は完全フッ素化アルキル基であることがより好ましい。
【0055】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(p‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロ‐2‐トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐クロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,4‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,6‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(2‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐チエン‐2‐イルアセトニトリル、α‐(4‐ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐[(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐(トシルオキシイ
ミノ)‐4‐チエニルシアニド、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘプテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロオクテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐エチルアセトニトリル、α‐(プロピルスルホニルオキシイミノ)‐プロピルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロペンチルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイ
ミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。
【0056】
また、下記化学式で表される化合物が挙げられる。
【化17】

【0057】
【化18】

【0058】
【化19】

【0059】
また、上記一般式(B−1)を含むものとして、さらに好ましいものとして、下記一般式(B−2)又は(B−3)が挙げられる。
【0060】
【化20】

[一般式中、R31は部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。R32はアリール基である。R33は部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。]
【0061】
【化21】

[一般式中、R34は部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。R35はアリール基である。R36は部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。pは2〜3の整数である。]
【0062】
前記一般式(B−2)において、R31は好ましくは部分的にフッ素化された炭素数1〜10(さらに好ましくは炭素数1〜8、最も好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基(さらに好ましくは炭素数1〜8、最も好ましくは炭素数1〜6)である。前記「部分的にフッ素化された」とは、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることを意味し、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上フッ素化されていることが好ましい。これらの中でも部分的にフッ素化されたアルキル基が好ましい。
32は、好ましくはフェニル基またはビフェニル(biphenylyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントラセル(anthracyl)基、フェナントリル基、ヘテロアリール基であって、炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲン化アルキル基又はアルコキシ基で置換されていても良い。これらのなかでも、フルオレニル(fluorenyl)基、が好ましい。前記置換されていても良いアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜4である。前記ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
33は好ましくは部分的又は完全にフッ素化された炭素数1〜10(さらに好ましくは炭素数1〜8、最も好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基(さらに好ましくは炭素数2〜8、最も好ましくは炭素数3〜6)である。前記「部分的にフッ素化された」とは、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることを意味し、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため好ましい。最も好ましくは水素原子が100%フッ素置換されたフッ素化アルキル基である。
【0063】
前記一般式(B−3)において、R34は好ましくは部分的にフッ素化された炭素数1〜10(さらに好ましくは炭素数1〜8、最も好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基(さらに好ましくは炭素数1〜8、最も好ましくは炭素数1〜6)である。前記「部分的にフッ素化された」とは、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることを意味し、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上フッ素化されていることが好ましい。これらの中でも部分的にフッ素化されたアルキル基が好ましい。
35は、好ましくはフェニル基またはビフェニル(biphenylyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントラセル(anthracyl)基、フェナントリル基、ヘテロアリール基であって、炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲン化アルキル基又はアルコキシ基で置換されていても良い。これらのなかでも、フルオレニル(fluorenyl)基、が好ましい。前記置換されていても良いアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜4である。前記ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
36は好ましくは部分的又は完全にフッ素化された炭素数1〜10(さらに好ましくは炭素数1〜8、最も好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基(さらに好ましくは炭素数2〜8、最も好ましくは炭素数3〜6)である。前記「部分的にフッ素化された」とは、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることを意味し、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため好ましい。最も好ましくは水素原子が100%フッ素置換されたフッ素化アルキル基である。
前記pは好ましくは2である。
【0064】
前記一般式(B−2)及び(B−3)で表される化合物のうち、好ましい化合物の一例を下記に示す。
【0065】
【化22】

【0066】
【化23】

【0067】
上記例示化合物の中でも、下記化学式(24)表されるものが好ましい。
【0068】
【化24】

【0069】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、さらに好ましくは1〜8質量部とされる。0.01質量部以上とすることによりパターンを形成することができ、20質量部以下とすることは現像欠陥低減の点からより好ましい。
(B)成分は1種または2種以上用いることができる。
【0070】
本発明のレジスト組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて前記(B)成分以外の他の酸発生剤、例えばヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤等を併用することもできる。
【0071】
(C)成分
本発明において、(C)成分はメチル−n−アミルケトン(別名:2−ヘプタノン)を含むことが必要である。これにより、レジストパターンの経時安定性を向上させることができ、かつ現像欠陥を低減することができる。
前記(C)成分中のメチル−n−アミルケトンの含有量は10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%、さらに好ましくは30〜45質量%とされる。10質量%以上とすることにより、オキシムスルホネート系酸発生剤のコーティング時の析出を抑制できる。60質量%以下とすることにより、下記メチル−n−アミルケトンと比較して相対的に極性の高い溶剤との組み合わせによって、現像後のディフェクトの低減を図ることができる。
なお、ディフェクトとは、例えばKLAテンコール社の表面欠陥観察装置(商品名「KLA」)により、現像後のレジストパターンの真上から観察した際に検知されるスカムやレジストパターンの不具合全般のことである。
【0072】
すなわち、前記(C)成分は、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、及び乳酸エチル(EL)から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。これらは前記メチル−n−アミルケトンと比較して相対的に極性の高い溶剤である。これらの作用により、上述の様に現像後のディフェクトの低減を図ることができる。特に、(a2)単位、(a3)単位の様に比較的極性の高い構成単位を含む(A)成分との組み合わせにおいて大きな効果を発揮する。
中でも好ましいのはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である。
これら相対的に極性の高い溶剤の配合量は、(C)成分中、40〜90質量%、好ましくは50〜80質量%、さらに好ましくは55〜70質量%とされる。下限値以上とすることにより現像後のディフェクトの低減を図ることができ、上限値以下とすることによりメチル−n−アミルケトンとのバランスをとることができ、コーティング時のオキシムスルホネート系酸発生剤の析出を低減することができる。また、レジストパターンの経時安定性を向上することができる。
【0073】
なお、(C)成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他レジスト組成物の溶剤として公知の任意の有機溶剤を、1種または2種以上任意に配合することができる。(C)成分の使用量は、特に限定されず、基板等の支持体に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0074】
(D)含窒素有機化合物
本発明のレジスト組成物には、本願発明の目的を達成させるために、炭素数5〜12のアルキル基を少なくとも1以上有するアミン化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることが必要である
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
(D)成分の具体例としては、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、トリ−n−デカニルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、ジ−n−ドデシルアミン等のアルキルアミンが挙げられる。
本発明において、特にトリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ドデシルアミンのような炭素数5〜12のアルキル基を少なくとも1以上有するトリアルキルアミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部、好ましくは0.1〜3質量部、さらに好ましくは0.2〜1.0質量部の範囲で用いられる。
【0075】
(E)成分
本発明のレジスト組成物には、本願発明の目的を達成させるために、前記(D)成分との配合による感度劣化を防ぎ、また、ディフェクト低減、レジストパターン形状、レジストパターンの経時安定性等の向上の目的で、有機酸として2塩基酸を加える必要がある。
該2塩基酸としては、一段階目のpKa(酸解離定数)が4以下であるこが本発明の効果に優れるため好ましい。
2塩基酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、サリチル酸などが好適である。
【0076】
(E)成分は、(D)成分1モルに対して0.01〜5.0molの割合で用いられることが好ましく、0.1〜3.0molがさらに好ましく、0.5〜2.5molが最も好ましい。上記範囲とすることで、レジストパターンの経時安定性が向上し、かつ現像欠陥を低減させることができる。
【0077】
上記(A)〜(E)成分を組み合わせて用いることで、レジストパターンの経時安定性が向上し、かつ現像欠陥を低減させることができる理由は定かではないが、すべての成分を組み合わせたことによる相乗効果と推測している。
【0078】
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0079】
[レジストパターン形成方法]
本発明のレジストパターン形成方法は例えば以下の様にして行うことができる。以下、ポジ型レジスト組成物の場合について説明する。
すなわち、まずシリコンウェーハのような基板上に、ポジ型レジスト組成物をスピンコーターなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベークを40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、レジスト膜を形成する。これに例えばArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して選択的に露光した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このようにして、マスクパターンに忠実なレジストパターンを得ることができる。
なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
【0080】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。特に、本発明においては、ArFエキシマレーザーに対して有効である。
【0081】
また、本発明のレジスト組成物は、窒素含有層を有する基板に適用すると好ましい。すなわち、本発明のレジスト組成物は窒素含有層を有する基板用として好適である。窒素含有層を有する基板を使用すると、窒素含有層と接触したレジストパターンにおいて、特に裾引き現象が生じやすいが、本発明の適用によりこれを低減できるからである。
窒素含有層とは、通常、使用目的に応じて基板の上に絶縁層、金属層等として設けられるものであって、窒素を含むものである。絶縁層としては、窒化ケイ素(SiN)、四窒化三ケイ素(Si)等が挙げられる。金属層としては窒化チタン(TiN)等が挙げられる。
窒素含有層は、例えばシリコン基板等の基板の上に蒸着等によって形成されたものである。
この様な窒素含有層を有する基板は、例えば「含窒素基板」等と呼ばれている。
【0082】
また、本発明のレジスト組成物は、反射防止膜[有機反射防止膜(有機化合物からなる反射防止膜)や無機反射防止膜(無機化合物からなる反射防止膜)]が設けられた基板に適用すると好ましい。特に好ましくは有機反射防止膜である。
反射防止膜(有機反射防止膜や無機反射防止膜)が設けられた基板、特に有機反射防止膜が設けられた基板を使用すると、反射防止膜と接触したレジストパターンにおいて、特に裾引き現象が生じやすいが、本発明の適用によりこれを低減できるからである。
有機反射防止膜としては、例えばAR46(製品名:シプレー社製)等が挙げられ、特にAR46を用いると裾引き現象が生じやすいが、これを本発明の適用により、抑制することができる。
【0083】
[サーマルフロー工程(サーマルフロープロセス)を行うレジストパターン形成方法]
サーマルフロープロセスは、上記の様にしてレジストパターンを形成した後に行う。
サーマルフロープロセスは、例えば以下のようにして行うことができる。すなわち、現像処理後のレジストパターンを少なくとも1回、好ましくは2〜3回加熱して軟化させ、レジストをフローさせることにより、レジストパターンのパターンサイズ(例えばホールパターンの孔径やラインアンドスペースのスペース幅)を現像直後のサイズより縮小(狭小)させる。
【0084】
好適な加熱温度は、レジスト組成物の組成に依存し、レジストパターンの軟化点以上であれば特に制限はないが、好ましくは80〜180℃、より好ましくは110〜150℃の範囲内である。加熱温度をこの範囲内とすることにより、パターンサイズの制御が容易等の利点がある。
また、好適な加熱時間は、スループットに支障がなく、所望のパターンサイズが得られる範囲内であればよく、特に制限はないが、通常の半導体素子の製造ライン工程から判断すれば、1回の加熱につき、好ましくは10〜300秒、より好ましくは30〜180秒程度とすることが好ましい。
【0085】
本発明のレジスト組成物は、サーマルフロープロセスを行うにおいても(B)成分の析出を抑えることができるとともに、サーマルフロー工程において加熱を施しても、レジスト組成物のガス化等の劣化が起こりにくく、好ましい。
すなわち、オニウム塩系酸発生剤を使用している一般的なArFエキシマレーザ用レジスト組成物では、サーマルフロー工程の加熱によってパターンに気泡が発生するという問題がある。これは、例えば特にハーフトーンレチクル等を用いると、未露光部にもある程度の光が照射され、この部分がサーマルフロー工程で加熱せしめられることにより、酸解離性溶解抑制基が解離することによって上記気泡の問題が生じているものと推測される。
これに対し、本発明においてはオキシムスルホネート系酸発生剤を用いているためか、その理由は定かではないが、驚くべきことにこの様な気泡の問題を低減することができる。したがって、本発明のレジスト組成物はサーマルフロープロセス用としても好適である。
【実施例】
【0086】
(実施例1〜4、比較例1〜6のレジスト組成物)
下記組成のポジ型レジスト組成物を製造した。
・(A)成分
下記化学式(30)に示す構成単位からなる共重合体(Mw:10000、分散度:2.1、q:r:s=40:40:20(モル%)) 100質量部
【0087】
【化25】

【0088】
・(B)成分
前記化学式(24)で表される化合物5.0質量部
・(C)成分
メチル−n−アミルケトン:PGMEAを、質量比4:6で混合した溶媒を用いて、レジスト組成物の固形分濃度が10質量%となるように調製した。
・(D)成分、(E)成分の種類と量は表1に示した。なお、(E)成分の量は(D)成分1モル当たりのモル数で示す。
上記レジスト組成物を用いて評価を行った。
【0089】
【表1】

【0090】
<保存方法>
調整した実施例1〜4及び比較例1〜6のレジスト組成物をそれぞれ冷凍(−20℃)又は40℃の状態で2週間保存した。
<寸法差>
実施例1〜4及び比較例1〜6のレジスト組成物において、2週間冷凍保存したレジスト組成物(R1)と2週間40℃で保存したレジスト組成物(R2)について、それぞれ、8インチのシリコンウェーハ上に有機反射防止膜用材料(シプレー社製、商品名:AR46)を塗布し、225℃で60秒間焼成して膜厚29nmの反射防止膜を形成して基板とした。
該基板上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて均一に塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プレベークして、乾燥させることにより、膜厚240nmのレジスト層を形成した。ついで、ArF露光装置(波長193nm)NSR−S306C(Nikon社製、NA(開口数)=0.78,σ=0.60)を用い、マスクを介して選択的に露光した。
そして、120℃、60秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間パドル現像し、その後30秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行って、コンタクトホール(1:1)のレジストパターン(以下、C/Hパターンという)を形成した。次いで、下記式によりレジストパターンの寸法差を算出した。レジストパターンの寸法差の絶対値が小さい程、レジストパターンの経時安定性に優れたレジスト組成物であることを示す。
寸法差(nm)=|R1の口径−R2の口径|
<現像欠陥>
1週間冷凍保存した実施例1〜4及び比較例1〜6のレジスト組成物について、8インチのシリコンウェーハ上に有機反射防止膜用材料(シプレー社製、商品名:AR46)を塗布し、225℃で60秒間焼成して膜厚29nmの反射防止膜を形成して基板とした。
該基板上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて均一に塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プレベークして、乾燥させることにより、膜厚240nmのレジスト層を形成した。ついで、ArF露光装置(波長193nm)NSR−S306C(Nikon社製、NA(開口数)=0.78,σ=0.60)を用い、マスクを介して選択的に露光した。
そして、120℃、60秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間パドル現像し、その後30秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行って、130nmのラインアンドスペース(1:1)のレジストパターン(以下、L/Sパターンという)を形成した。KLAテンコール社製の表面欠陥観察装置 KLA2132(製品名)を用いて測定し、ウェーハ内の欠陥数を評価した。試験に用いたウェーハは3枚であり、その平均値を求めた。
【0091】
実施例1〜4のレジスト組成物は寸法差が7nmより小さく、かつ現像欠陥が60個以下と非常に少ないものであった。比較例1、6は現像欠陥は低減できていたものの、寸法差がそれぞれ64.57nm、57.53nmと非常に大きな値を示していた。比較例2、3、5は寸法差は小さいもであったが、現像欠陥は低減できなかった。比較例4は寸法差及び現像欠陥共に低減できなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分と、(B)オキシムスルホネート系酸発生剤と、(D)炭素数5〜12のアルキル基を少なくとも1以上有するアミン化合物と、(E)有機酸とを、メチル−n−アミルケトンを含有する有機溶剤(C)に溶解してなるレジスト組成物であって、前記(E)成分が2塩基酸であるレジスト組成物。
【請求項2】
前記(E)成分の酸解離定数(pKa)が4以下である請求項1記載のレジスト組成物。
【請求項3】
前記(E)成分が、サリチル酸、マレイン酸、コハク酸及びマロン酸から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1または2記載のレジスト組成物。
【請求項4】
前記(C)成分中のメチル−n−アミルケトンの含有量が10〜60質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、及び乳酸エチル(EL)から選ばれる1種以上を含有する請求項4に記載のレジスト組成物。
【請求項6】
窒素含有層を有する基板用または反射防止膜が設けられた基板用である請求項1〜5のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項7】
サーマルフロープロセス用である請求項1〜6のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のレジスト組成物を基板上に塗布し、プレベークし、選択的に露光した後、PEB(露光後加熱)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のレジスト組成物を基板上に塗布し、プレベークし、選択的に露光した後、露光後加熱(PEB)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、得られたレジストパターンのパターンサイズを加熱処理により狭小する狭小工程とを備えるレジストパターン形成方法。


【公開番号】特開2006−106693(P2006−106693A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226487(P2005−226487)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】