説明

レーザーを用いた電極パターン形成方法

【課題】パターン形成のタクトタイムの短縮を実現し、PDP製造のトータル的低コスト化が可能な白黒二層構造のバス電極パターン形成方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る白黒二層構造のバス電極パターン形成方法は、基材上に、耐熱顔料を含む塗膜を形成する工程と、上記塗膜の上に、導電性粉末を含む塗膜を形成し、二層塗膜を得る工程と、上記二層塗膜に対し、レーザー照射によりパターンを描画するレーザー照射工程と、上記パターン以外の部分を除去する工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーを用いたパターン形成方法に関し、特に白黒二層構造のバス電極パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイの一種であるプラズマディスプレイパネル(以下、PDP)のフロントパネルの製造は、ITOのパターンを形成した後、感光性ペーストによるフォトリソグラフィー技術を利用したバス電極パターニングを行い、その後焼成し、さらにその焼成後に誘電体を塗布し、焼成するという工程を経ることが一般的である。ブラックマトリックスを更に設ける場合には、バス電極の焼成後にブラックマトリックスパターニングを行い焼成する工程が追加される。また、近年、画面コントラストの向上を目的として、表示側となる下層に黒層を形成し、さらにその上に銀ペーストを用いて白層を形成し、白黒二層構造のバス電極を形成することがあり、この場合には、白層をパターニングした後に焼成するという工程を経る。
【0003】
このようにPDPの製造においては各種パターンの形成毎に焼成工程が繰り返されるが、焼成工程は有機成分のバーンアウトや無機成分の融着を行う工程であるため焼成温度は550℃以上と非常に高温でありキープ時間も長い。さらにガラスパネルが大きいため、急激な温度変化は難しく、昇温、冷却時間も非常に長くなる。また温度が高いため必要とするエネルギーも膨大であり、設備も非常に巨大なものとなることから、焼成工程はPDP製造の中でも最も製造コストに占める割合が大きな工程である。そのため、焼成工程を減らすことができればパネルの製造コストの大幅ダウンが可能となる。
【0004】
焼成回数を減らす方法としては、熱硬化樹脂及び酸化銀を含むペーストを用いたレーザーパターニング方法が開示されている。この方法は、酸化銀が熱又は光により分解し活性酸素を放出するという性質を利用したものであり、基材にペーストを塗布し、一夜間かけてペーストを硬化し、その後にレーザー照射することによって基材上に所望の電極パターンを形成する。その後、全面紫外線露光することで、レーザー未照射部の有機成分を上述の活性酸素により酸化分解し劣化させ、ブラッシング等することで焼成工程を経ずに所望の電極パターンを形成するというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、ペーストを基材に塗布後、一夜間かけて基材上のペーストを硬化させる工程やレーザーパターニング後に全面紫外線露光する工程など工程数が多いため、依然としてタクトタイムの短縮という面で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−195715号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題に対し、本発明の発明者らは、無機粉末と、カルボキシル基含有樹脂と、ガラスフリットと、溶剤からなるフォトリソグラフィーと焼成工程を含むパターン形成方法に用いられている従来のペーストを用い、これを基板上に塗布・乾燥し、得られた乾燥塗膜にレーザーを照射することによりパターンを描画し、その後、アルカリ溶液を用いて上記パターンを現像するパターン形成方法を発明し、出願している(特願2009−087332号)。
【0008】
かかる発明によれば、従来のペーストと現像工程を用い、焼成工程を要することなく十分に実用可能なパターン形成ができることを確認している。かかる発明は、単層塗膜に対するレーザーパターニングであり、二層塗膜に対するレーザーパターニングについてはなされていない。そこで、本発明の発明者らは、上記発明のさらなる改良検討として、二層塗膜に対するレーザーパターニング、具体的には白黒二層構造のバス電極パターニングを試みたところ、実用に足るバス電極パターニングをすることができない場合があった。
【0009】
この原因を究明するため種々の検討を行った結果、その原因が黒層塗膜の組成にあることを突き止めた。すなわち、黒層塗膜は下層であるため、レーザー照射時に、その有機成分は上層塗膜に阻害され、脱バインダーしにくくブリスターが生じることで黒層がポーラスな状態となり、そこへ上層(白層)の導電性粉末が入り込み融着されるため、黒色度が著しく低下してしまう。これに対し、黒色塗膜中の耐熱顔料を増やす、或いは有機成分を減らすことで、実用可能な白黒二層構造のバス電極パターンの形成を可能にした。
【0010】
本発明は、上記した知見に基づきなされたものであり、その目的は、パターン形成のタクトタイムの短縮を実現し、PDP製造のトータル的低コスト化が可能な白黒二層構造のバス電極パターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、基材上に、耐熱顔料を35質量%以上含む塗膜を形成する工程と、上記塗膜の上に、導電性粉末を含む塗膜を形成し、二層塗膜を得る工程と、上記二層塗膜に対し、レーザー照射によりパターンを描画するレーザー照射工程と、上記パターン以外の部分を除去する工程とを含むことを特徴とする白黒二層バス電極パターン形成方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の態様によれば、上記塗膜中の導電性粉末が60質量%以上である白黒二層バス電極パターン形成方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記レーザーの波長は、266〜10600nmであることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記レーザー照射に、YVOレーザーの第二高調波が用いられることを特徴とするパターン形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、白黒二層構造のバス電極パターン形成のタクトタイムを短縮することができ、また、上記パターン層と誘電体層の一括焼成が可能となり、PDP製造のトータル的低コスト化が実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかるパターン形成方法は、白黒二層の塗膜に対してレーザーを照射し、白黒二層構造の電極パターンを一括形成することに最大の特徴がある。
かかる発明のパターン形成方法によれば、レーザーパターニングの際に、塗膜中の有機成分はバーンアウトし、無機粉末が基材に融着されるため、その後の焼成工程を行う必要がなくなり、白黒二層構造の電極パターン形成のトータル的低コスト化が実現できる。
【0015】
以下に本実施の形態について詳細に説明する。
先ず、本実施形態の白黒二層構造のバス電極パターン形成方法に用いられるペーストについて説明した後、パターン形成方法について説明する。
【0016】
本実施形態の白黒二層構造のバス電極パターン形成方法に用いられるペーストは、そのパターンの用途、すなわち、白層か黒層かによって含有される無機粉末が異なるだけで、それ以外の成分は共通する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0017】
無機粉末として、白層の形成に用いられるペースト(以下、「白層用ペースト」ともいう。)には、導電性粉末が用いられ、黒層の形成に用いられるペースト(以下、「黒層用ペースト」ともいう。)には、耐熱顔料が用いられる。
【0018】
導電性粉末としては、例えばAg、Au、Pt、Pd、Ni、Cu、Al、Sn、Pb、Zn、Fe、Ir、Os、Rh、W、Mo、Ru等の単体とその合金の他、酸化錫(SnO2)、酸化インジウム(In23)、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いることができる。
【0019】
また、導電性粉末の酸化防止、組成物内での分散性向上、現像性の安定化のため、特にAg、Ni、Alについては、脂肪酸、またはベンゾトリアゾールによる処理を行うことが好ましい。このような脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0020】
このような導電性粉末は、乾燥塗膜中に60質量%以上の割合で配合される。導電性粉末が60質量%より少ないと、レーザー照射後の導電パターンがポーラスな状態となり充分な導電性が得られ難くなる。また、層間導通が悪くなる。
【0021】
耐熱顔料としては、例えばCu、Fe、Cr、Mn、Co、Ru、La等の単独の金属酸化物及び/又は金属元素2種以上からなる複合酸化物が好適に用いることができる。黒色度の点で四三酸化コバルトを用いることが好ましい。
【0022】
このような耐熱顔料は、乾燥塗膜中に35質量%以上の割合で配合される。耐熱顔料が35質量%より少ないと、レーザー照射後のパターンがポーラスな状態となり充分な黒色度が得られ難くなる。
【0023】
これら無機粉末は、一次粒径が0.1〜5μmであるものが好ましい。一次粒径が5μmより大きいと、導電性粉末の場合、レーザーパターニング後に白層パターンにピンホールや隙間が生じやすくなり十分な導電性が得られ難くなる。また、耐熱顔料の場合、導電性微粒子の場合と同様にレーザーパターニング後に皮膜にピンホールや隙間が生じやすくなり黒色度が低下する。粒径が小さくなると、より高価となるため低コスト化という観点から0.1μm以上が好ましい。より好ましくは0.2〜3.0μmである。
【0024】
また、このような無機粉末は、球状、フレーク状、デンドライト状など種々の形状のものを用いることができるが、光特性や分散性を考慮すると、球状のものを用いることが好ましい。なお、本実施態様において、無機粉末の一次粒径とは、電子顕微鏡(SEM)を用いて10,000倍にて観察したランダムな10個の無機粉末の長手方向を測定した平均粒径を意味する。
【0025】
また、基材との密着性向上の為、必要に応じて、無機粉末としてガラスフリットをさらに含有することができる。
【0026】
ガラスフリットとしては、ガラス軟化点が420〜580℃であることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点が360〜500℃である。また、ガラスフリットの熱膨張係数α300は、60〜110×10−7のものが好ましい。このようなガラスフリットとしては、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはアルカリホウケイ酸塩を主成分とするものが好適に用いられる。
【0027】
酸化鉛を主成分とするガラスフリットとしては、酸化物基準の質量%で、PbOが48〜82%、Bが0.5〜22%、SiOが3〜32%、Alが0〜12%、BaOが0〜15%、TiOが0〜2.5%、Biが0〜25%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0028】
酸化ビスマスを主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、Biが6〜88%、Bが5〜30%、SiOが5〜25%、Alが0〜5%、BaOが0〜20%、ZnOが1〜20%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0029】
酸化亜鉛を主成分とするガラスフリットの好ましい例としては、酸化物基準の質量%で、ZnOが25〜60%、KOが2〜15%Bが25〜45%、SiOが1〜7%、Alが0〜10%、BaOが0〜20%、MgOが0〜10%の組成を有し、軟化点が420〜580℃である非晶性ガラスフリットが挙げられる。
【0030】
このようなガラスフリットの配合量は、無機粉末に導電性粉末を用いた場合にあっては、レーザー照射後のパターンの密着性並びに抵抗値低減の観点から導電性粉末に対して、1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%で配合することができる。一方、無機粉末に耐熱顔料を用いた場合にあっては、レーザー照射後のパターンの密着性並びに黒色度の観点から耐熱顔料に対して1〜200質量%、より好ましくは30〜160質量%で配合することができる。
【0031】
本実施形態のパターン形成方法に用いるペーストには、有機バインダーを配合することができる。有機バインダーとしては、レーザーによりバーンアウトしやすく、かつパターン以外の部分を除去する工程に適したものがよい。
【0032】
一例として、パターン以外の部分を除去する工程がアルカリ現像の場合、カルボキシル基を有する樹脂、具体的にはそれ自体がエチレン性二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。好適に使用できる樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)としては、以下のようなものが挙げられる。
【0033】
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物を共重合させることによって得られるカルボキシル基含有樹脂、
(2)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸クロライドなどにより、エチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(3)グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(4)無水マレイン酸などの不飽和二重結合を有する酸無水物と、スチレンなどの不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(5)多官能エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基にテトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(6)メチル(メタ)アクリレートなどの不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のエポキシ基に、1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂、
(7)ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーに多塩基無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、及び
(8)ポリビニルアルコールなどの水酸基含有ポリマーに、テトラヒドロフタル酸無水物などの多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂などが挙げられ、特に(1)、(2)、(3)、(6)の樹脂が好適に用いられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0034】
このような有機バインダーとしては、それぞれ重量平均分子量が1,000〜100,000、かつ酸価が20〜250mgKOH/gであることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満の場合、現像時の塗布膜の密着性に悪影響を与える。一方、100,000を超えた場合、現像不良を生じやすくなる。より好ましくは5,000〜70,000である。また、酸価が20mgKOH/g未満の場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不十分で現像不良を生じやすい。一方、250mgKOH/gを超えた場合、現像時に塗布膜の密着性の劣化が生じてしまう。より好ましくは40〜200mgKOH/gである。
【0035】
このような有機バインダーは、単独で又は混合して用いてもよいが、いずれの場合でもこれらは合計でペースト全量の5〜50質量部で配合されることが好ましい。配合量が5質量部未満の場合、形成する皮膜中の上記樹脂の分布が不均一になりやすく、現像によるパターニングが困難となる。一方、50質量部を超えた場合、パターンのよれや線幅収縮を生じやすくなる。
【0036】
有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テルピネオールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの有機溶剤の配合量は、塗布作業性の観点からペースト中の有機成分に対して、100〜300質量%の割合で配合する。
【0037】
また、必要に応じて、重合性モノマーとして、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、こはく酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−、またはそれ以上のポリエステルなどの重合性モノマーが挙げられるが、特定のものに限定されるものではなく、またこれらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの低分子モノマーの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。このような重合性モノマーは、有機バインダー100質量部あたり20〜100質量部の割合で添加することが好ましい。
【0038】
また、必要に応じて、安定剤として、例えば硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等の各種無機酸;ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、ステアリン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸等の各種有機酸;リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジフェニル、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等の各種リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような安定剤は、無機粉末100質量部当り0.1〜10質量部の割合で添加することが好ましい。
【0039】
以上説明したペーストの各成分の混練分散は、三本ロールミルやブレンダー等の機械が用いられ、得られたペーストは、以下に説明するパターン形成方法に供される。
【0040】
本実施形態の白黒二層構造のバス電極パターン形成方法は、先ず、基材上に、黒層用ペーストをスクリーン印刷法、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の方法で塗布する。
【0041】
本実施の形態で用いられる基材としては、特定のものに限定されるものではないが、例えばソーダライムガラス、高歪み点ガラス、またはこれらの基材にITO(Indium tin oxide)等の透明電極が形成された基材を用いることができる。なお、透明電極は、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、電着等の従来公知の手段により基材上に形成することができる。
【0042】
次いで、塗布膜の指触乾燥性を得るために、熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉等で例えば約60〜150℃で5〜60分程度乾燥させて有機溶剤を蒸発させ、タックフリーの黒色塗膜を得る。乾燥温度が60℃未満では乾燥不足となり、一方、150℃を超えるとペースト成分の化学反応が起こる場合があり、現像性が低下する場合がある。また、乾燥時間が5分未満では、乾燥不足となり、一方、60分を超えて長時間となるとペースト成分の化学反応が起こる場合があり、現像性が低下する場合がある。
【0043】
その後、白層用ペーストを上記黒色塗膜の上に、黒層用ペーストと同様の方法で、塗布・乾燥を行い、白黒二層となった乾燥塗膜を得る。
【0044】
得られた白黒二層の乾燥塗膜に対し、レーザー照射により、所望のパターンを形成する。レーザーを照射された領域は、塗膜中の有機成分はほとんどバーンアウトし、白黒二層のパターンが形成される。具体的には、基材上に、下層の黒色塗膜中の耐熱顔料等の無機粉末が融着し、その上に上層の白色塗膜中の導電性微粒子等の無機粉末が融着することで白黒二層構造の電極が形成される。
【0045】
レーザーパターニングとしては、例えば、CADなどで、所望のパターンを作成し、これに従ってレーザーを照射するレーザー描画法が用いられる。レーザーとしては、基本波の波長が、266〜10600nmの範囲が好ましい。具体的には、YVOレーザーが好適に用いられる。レーザー出力及び照射速度は、塗膜中の無機粉末が融着できる程度の熱量になるよう調節する。具体的には、レーザー出力は、0.2〜1.0W、照射速度は、0.1〜1.5mm/sの範囲で適宜調節される。レーザー出力が、0.2Wより小さい場合、十分な融着ができない。1.0Wより大きいと、照射部分の熱の拡散によって、線幅が太くなる。照射速度は0.1mm/sより遅いとパターン形成のタクトタイム短縮の観点から良くない。照射速度は1.5mm/sより速いと、十分に有機バインダー等がバーンアウトされない。なお、ここではレーザー描画を挙げているが、これに限定されず、例えば、電子線ビーム、イオンビーム、荷電ビーム等を用いて描画してもよい。
【0046】
その後、レーザー未照射部を除去し、白黒二層構造の所望の電極パターンを形成する。
レーザー未照射部を除去する工程としては、スプレー法、浸漬法あるいは超音波による方法、サンドブラスト法、粘着テープによる剥離方法などが用いられるが、パターン以外の部分が除去されればよく、これらの方法に限定されない。
【0047】
上記工程の一例として、スプレー法を用いた場合、アルカリ現像では、現像液として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液が用いられる。特に約1.5質量%以下の濃度の金属アルカリ水溶液が好適に用いられるが、組成物中のカルボキシル基を含有する樹脂のカルボキシル基がケン化され未照射部が除去されればよく、上記のような現像液に限定されない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行うことが好ましい。一方、有機溶剤現像では、メタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸n−プロピル等のエステル類、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類、エチルセロソルブ、n−ブチルセロソルブ等のエーテル類が用いられる。
【0048】
なお、黒層用ペーストと白層用ペーストが予めフィルム状に成膜されたドライフィルムの場合には、順次基材上に熱圧着してラミネートした後、上述したレーザーパターニングを行うことにより製造することができる。
【0049】
このようにして得られた白黒二層構造のバス電極パターンは、焼成工程を経ることなく、誘電体層形成工程へ供される。
なお、誘電体形成工程は、誘電体をスクリーン印刷等で上記バス電極パターンを備えたガラス基板の全面に塗布・乾燥した後、焼成を行い、誘電体層を形成する。
【0050】
このように本発明のレーザーを用いたパターン形成方法は、白黒二層構造のバス電極パターン形成において、焼成工程を省略できるため、パターン形成のタクトタイムの短縮が可能となり、PDP製造におけるトータル的低コスト化が可能となる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。なお、以下において「部」は、特に断りのない限りすべて質量部であるものとする。
【0052】
[有機バインダーの合成]
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレートとメタクリル酸を0.76:0.24のモル比で仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を入れ、窒素雰囲気下、80℃で2〜6時間攪拌し樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却し、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロマイドを用い、グリシジルメタクリレートを95〜105℃で16時間の条件で上記樹脂のカルボキシル基1モルに対し0.12モルの割合の付加モル比で付加反応させ冷却後取り出し有機バインダーを得た。この有機バインダーは、重量平均分子量が約10,000、固形分酸価が59mgKOH/g、二重結合当量が950であった。なお、得られた共重合樹脂の重量平均分子量の測定は、島津製作所社製ポンプLC−6ADと昭和電工社製カラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0053】
上記方法により合成された有機バインダーを用い、表1に示す配合比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉してペースト化を行い、白層用ペースト(組成物1)及び黒層用ペースト(組成物2、3、4、5)を得た。
【表1】

[備考]
*1:トリプロピレングリコールメチルエーテル
*2:平均粒径(D50)2.2μm、最大粒径(Dmax)6.3μm、表面積0.3m/g
*3:四三酸化コバルト 平均粒径(D50)0.3μm
*4:Bi2O3 50%、B2O3 16%、ZnO 14%、SiO2 2%、BaO 18%
熱膨張係数α300=86×10-7/℃、ガラス軟化点501℃
*5:次亜リン酸
*6:モダフロー(モンサント社製)
*7:乾燥塗膜中の含有量
【0054】
[試験基板作成]
塗布及び乾燥工程:
高歪点ガラス(PD200:旭ガラス社製)基板上に、黒層用ペーストとして、組成物2、3、4、5をそれぞれ200メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布し、次いで、熱風循環式乾燥炉にて90℃で30分間乾燥して指触乾燥性の良好な乾燥塗膜(膜厚10μm)を形成した。
その後、上記乾燥塗膜上に白層用ペーストとして組成物1を、黒層用ペーストと同様の方法で、塗布、乾燥し、指触乾燥性の良好な白黒二層の乾燥塗膜を得た。
【0055】
レーザー照射工程:
上記の方法で作成した乾燥塗膜を、照射距離3cmにて乾燥塗膜の塗膜表面に焦点距離を合わせ、YVOレーザー(第二高調波;532nm)を照射し、評価パターンを形成した。
【0056】
現像工程:
上記の方法で作成した評価パターンを、液温30℃の0.4%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー法にてレーザー未照射部分が完全に落ちるまで現像を行った。
【0057】
[試験基板評価]
ブリスター:
上記方法にて作成された評価パターンについて、レーザー照射部の黒層にブリスターの発生の有無を評価した。
○;黒層にブリスターの発生がなく、緻密な状態である。
×;黒層にブリスターの発生し、ポーラスな状態である。
【0058】
導電性:
上記方法にて作成された評価パターンについて、レーザー照射部にテスターにて導通を評価した。
○;導電性有り。
×;導電性無し。
【0059】
線幅:
上記方法にて作成された評価パターンの現像後の線幅を光学顕微鏡にて測定した。
【0060】
耐現像性:
上記現像方法によって得られたレーザー照射部分についての有無について評価した。
○;完全にレーザー照射部分がすべて残っている。
△;一部のレーザー照射部分が欠けている。
×;すべてのレーザー照射部分が残っていない。
【0061】
[実施例1〜6、比較例1、2]
上記方法により作成した白黒二層の乾燥塗膜について、レーザー照射速度0.1mm/sの場合におけるレーザー出力0.2、0.5Wで得られた評価パターンの各々の導電性、線幅及び耐現像性を上記測定方法にて評価した。評価結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例1,3,5,6については、ブリスター、導電性、耐現像性、線幅、いずれも良好な評価結果が得られた。実施例2,4についてはいずれも良好な評価結果が得られたが耐現像性について一部のレーザ照射部分に欠けが見られた。また、実施例1〜6すべてにおいてブリスターの発生がなく、良好な黒色度が得られた。
比較例1,2においてはブリスターが発生し、ポーラスな状態となり、十分な黒色度が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、耐熱顔料を35質量%以上含む塗膜を形成する工程と、
前記塗膜の上に、導電性粉末を含む塗膜を形成し、二層塗膜を得る工程と、
前記二層塗膜に対し、レーザー照射によりパターンを描画するレーザー照射工程と、
前記パターン以外の部分を除去する工程と
を含むことを特徴とする白黒二層バス電極パターン形成方法。
【請求項2】
前記塗膜中の導電性粉末が60質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の白黒二層バス電極パターン形成方法。
【請求項3】
前記レーザーの波長は、266〜10600nmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の白黒二層バス電極パターン形成方法。
【請求項4】
前記レーザー照射に、YVOレーザーの第二高調波が用いられることを特徴とする請求項3に記載の白黒二層バス電極パターン形成方法。

【公開番号】特開2012−75993(P2012−75993A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221375(P2010−221375)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【Fターム(参考)】