説明

ワーク搬送装置

【課題】昇降用の駆動手段および回動動作用の駆動手段といったように、大きく重量大な駆動手段を2種類も備えなくて済み、小型で軽量に構成することができるワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】ワークとなるウィンドウ5を把持する把持具20と、把持具20を移動可能に支持する支持アーム10とを備え、把持具20にて把持したウィンドウ5を支持アーム10によりウィンドウ5が組み付けられるウィンドウ枠7a・枠7bまで搬送するとともに、ウィンドウ5の姿勢をウィンドウ枠7a・7bに応じた姿勢に変更するワーク搬送装置1であって、支持アーム10を、複数のリンク11・12・13・14が閉ループ状に接続される閉ループリンク機構に構成し、支持アーム10の把持具20に接続される一対のリンク13・14のうち、何れか一方のリンク13・14に対する把持具20の姿勢を固定可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持具にて把持したワークを支持アームによりワークが組み付けられるワーク組付位置まで搬送するとともに、前記ワークの姿勢をワーク組付位置に応じた姿勢に変更するワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の組立工程においては、一人の作業者では運搬や被組付体に対する位置決めおよび組み付けを行うことが困難なワーク(フロントガラスやリアガラス等のいわゆる大物ワーク)を車体に取り付ける場合に、前記作業者の操作力に基づいてアシスト力を発生させて、前記ワークの重量の一部または全部を支えるとともに、前記ワークを移動させて作業者におけるワークの操作負担を軽減する、パワーアシスト装置に構成されるワーク搬送装置が用いられている。
【0003】
このように作業者の操作負担を軽減するパワーアシスト装置に構成されるワーク搬送装置としては、例えば特許文献1に記載されるワーク昇降装置のように、ワークを把持する把持手段と、前記把持手段を上下に駆動するとともに傾斜可能に支持する支持手段とを備えるものがある。
このワーク昇降装置においては、作業者により操作された前記把持手段の傾きを検出し、検出した傾きの方向及び大きさに基づいて前記支持手段により前記把持手段を昇降するように構成している。
前記支持手段による把持手段の昇降は、例えば支持手段に設けられる駆動手段により該支持手段を伸縮させることにより行われている。
【0004】
また、前記ワーク昇降装置等のワーク搬送装置により昇降等されるワークは、該ワークが支持手段の昇降動作等により、組み付けられる被組付体の位置まで搬送された後に、該被組付体のワーク組付位置に組み付けられるが、ワーク組付位置に組み付けられる際には、前記把持手段を支持手段に対して傾斜させて、ワークの姿勢が前記ワーク組付位置に対応した姿勢となるようにすることが可能となっている。
【0005】
つまり、前記ワーク昇降装置においては、前記把持手段を前記支持手段に対して回動動作させるモータ等の駆動手段が設けられており、該駆動手段により把持手段を回動させることにより、ワークをワーク組付位置の傾斜に対応した姿勢に傾斜させることが可能となっている。
このように、前記ワーク昇降装置においては、ワークを昇降させるための駆動手段と、ワークを回動動作させるための駆動手段とが個別に備えられている。
【特許文献1】特開平11−245124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のごとく、ワークを把持する把持手段を昇降させるとともに、傾斜させるように構成したワーク昇降装置においては、例えば被組付体となる車体の窓枠にワークとなるガラスを組み込む場合、前記ガラスを把持した把持手段を昇降用の駆動手段により下降させつつ、回動動作用の駆動手段により前記把持手段を回動させて、前記窓枠の傾斜に対応した姿勢に傾斜させることとなる。
この場合、ガラスの回動動作は、組立ラインのタクトタイムに応じて定められる所定の時間内に完了する必要があるが、フロントガラスやリアガラスのような重量物の大物ワークを必要な角度だけ所定時間内に回動させるためには、回動動作用の駆動手段として、充分な駆動特性を備えたものを用いる必要があり、回動動作用の駆動手段が大型化および大重量化してしまう傾向にあった。
また、前記昇降用の駆動手段は、前記支持手段に支持される把持手段およびワークに加えて、回動動作用の駆動手段をも昇降させる必要があるため、前述のように回動動作用の駆動手段が重量大になると、昇降用の駆動手段も昇降能力が大きな駆動手段に構成する必要があり、さらに装置が大型化および大重量化することとなる。
【0007】
そこで、本発明においては、昇降用の駆動手段および回動動作用の駆動手段といったように、大きく重量大な駆動手段を2種類も備えなくて済み、小型で軽量に構成することができるワーク搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するワーク搬送装置は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、ワークを把持する把持具と、前記把持具を移動可能に支持する支持アームとを備え、前記把持具にて把持したワークを前記支持アームにより前記ワークが組み付けられるワーク組付位置まで搬送するとともに、前記ワークの姿勢をワーク組付位置に応じた姿勢に変更するワーク搬送装置であって、前記支持アームを、複数のリンク部材が閉ループ状に接続される閉ループリンク機構に構成し、前記支持アームの把持具に接続される一対のリンク部材のうち、何れか一方のリンク部材に対する前記把持具の姿勢を固定可能に構成する。
これにより、ワーク搬送装置には、ワークの昇降用の駆動手段と回動動作用の駆動手段とのうち、ワーク昇降用の駆動手段の一種類のみを備えればよいこととなり、回動動作用の駆動手段が不要になるので、前記支持アームによる支持重量が軽減され、ワークの昇降用の駆動手段を小型・軽量化することが可能となって、ワーク搬送装置を全体的に小型・軽量化することができる。
【0009】
また、請求項2記載の如く、前記支持アームの把持具に接続される何れか一方のリンク部材に対する前記把持具の姿勢を固定可能に構成する機構は、前記一対のリンク部材および前記把持具を互いに回動可能に連結する連結部材と、前記一対のリンク部材の何れか一方と前記把持具、または前記一対のリンク部材の何れか他方と前記把持具とを、選択的に相対回転不能に接続する姿勢固定用接続部材とを備える。
これにより、簡単な構成で確実に、前記把持具の、前記一対のリンク部材の何れか一方に対する姿勢の固定を行うことが可能となっている。
【0010】
また、請求項3記載の如く、前記把持具には、前記一対のリンク部材のうち姿勢を固定されているリンク部材に対する姿勢を微調節するための駆動部材が備えられる。
これにより、前記ワークのワーク組付位置に対する姿勢を高精度に位置決めおよび制御することができ、ワークのワーク組付位置に対する組み付け品質を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワーク搬送装置には、ワークの回動動作用の駆動手段が不要になるので、前記支持アームによる支持重量が軽減され、ワークの昇降用の駆動手段を小型・軽量化することが可能となって、ワーク搬送装置を全体的に小型・軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0013】
図1に示すワーク搬送装置1は、一人の作業者では運搬や被組付体に対する位置決めおよび取り付けを行うことが困難なワーク(フロントガラスやリアガラス等のいわゆる大物ワーク)を、作業者の意図に沿って、その作業者との協調作業によりまたはワーク搬送装置1単独で3次元的に搬送し、所定の位置に位置決めして組み付ける装置である。
【0014】
本例においては、前記ワーク搬送装置1は、組立ラインL上を図1における左方へ流れる被組付体である車体7のリアウィンドウ枠7aおよびフロントウィンドウ枠7bに対して、ワークであるガラス5を位置決めして組み付けるものであり、前記ガラス5を把持する把持具20と、前記把持具20を3次元的に移動可能に支持する支持アーム10と、前記支持アーム10の上方に配置され、該支持アーム10を前記組立ラインLと平行な方向へ移動可能に支持する走行台車40と、前記支持アーム10等の動作を制御する制御装置80とを備えている。
【0015】
なお、本例では、前記ワーク搬送装置1は、ガラス5を車体7のリアウィンドウ枠7aおよびフロントウィンドウ枠7bに対して設置して取り付ける装置に構成されているが、サイドガラス等の他のガラスを設置する装置に適用することもでき、さらにはボンネット等の他の部材を設置する装置に適用することも可能である。
【0016】
前記走行台車40は、台車本体41と、前記台車本体41に取り付けられ、前記組立ラインLの流れ方向と平行に敷設される走行レール9に係止する複数の車輪42・42・・・とを備えており、前記車輪42・42・・・が前記走行レール9に係止することで、前記走行レール9に支持されている。
このように、走行レール9に支持される走行台車40は、該走行レール9に沿って(すなわち組立ラインLの流れ方向に沿って)走行することが可能となっている。
【0017】
前記支持アーム10は、例えば、第1上部リンク11、第2上部リンク12、第1下部リンク13、および第2下部リンク14が四辺形状に接続された閉ループリンク機構に構成されており、前記第1上部リンク11の一端と第2上部リンク12の一端とが前記台車本体41に支持される上部関節15にて接続され、前記第1下部リンク13の他端と第2下部リンク14の他端とが下部関節18にて接続され、前記第1上部リンク11の他端と前記第1下部リンク13の一端とが第1中間関節16にて接続され、前記第2上部リンク12の他端と前記第2下部リンク14の一端とが第2中間関節17にて接続されている。
【0018】
前記上部関節15は、前記第1上部リンク11および第2上部リンク12を組立ラインL方向に回動駆動可能に支持する駆動関節に構成されており、前記第1上部リンク11を前記上部関節15を中心に回動駆動するモータ、および前記第2上部リンク12を前記上部関節15を中心に回動駆動するモータを備えている。
【0019】
前記下部関節18には前記把持具20の本体21から延出するオフセットリンク22が接続されており、該下部関節18は前記オフセットリンク22が下部関節18を中心に組立ラインL方向へ回動可能なように構成されている。
また、前記オフセットリンク22は、該オフセットリンク22に接続される第1下部リンク13および第2下部リンク14の何れか一方に対する回動角度(すなわち姿勢)を選択的に固定することが可能に構成されている。
【0020】
また、前記第1中間関節16は前記第1上部リンク11と前記第1下部リンク13とを組立ラインL方向へ回動自在に接続する非駆動関節に構成されており、前記第2中間関節17は前記第2上部リンク12と前記第2下部リンク14とを組立ラインL方向へ回動自在に接続する非駆動関節に構成されている。
【0021】
なお、前記支持アーム10は、本例では4本のリンク部材を四辺形状に接続した閉ループリンク機構に構成されているが、これに限らず、他の本数のリンク部材を閉ループ状に構成したものでもよく、前記下部関節18にてオフセットリンク22に接続される第1下部リンク13および第2下部リンク14のように、オフセットリンク22に接続される一対のリンク部材を備えたものであればよい。
【0022】
前記把持具20は、ガラス5を把持するための把持部材である複数の吸着パッド30・30・・・を前記本体21に備えている。
前記吸着パッド30は、本例では四辺形に形成されるガラス5の辺の数に合わせて4箇所に設けられているが、これに限るものではなく、3箇所に設けたり、4箇所よりも多く設けたりすることも可能である。
【0023】
前記制御装置80は、前記上部関節15に備えられるモータを回転駆動して前記支持アーム10の駆動の制御や、前記把持具20の吸着パッド30によるガラス5の吸着や吸着解除の切り換え等を行うように構成されている。
【0024】
このように構成されるワーク搬送装置1においては、例えばガラス5を車体7のリアウィンドウ枠7aに取り付ける場合、次のようにして取り付けが行われる。
まず、図1に示すように、周縁部に接着剤6が塗布された状態のガラス5を前記吸着パッド30・30・・・にて把持した把持具20を前記支持アーム10により高所に保持した状態で、前記走行台車40が走行レール9に沿って走行し、前記ガラス5を車体7のリアウィンドウ枠7aの近傍まで搬送する。
【0025】
つまり、ガラス5を車体7まで搬送する際には、前記支持アーム10は上下方向の寸法が縮まる方向に回動駆動され(すなわち第1上部リンク11および第2上部リンク12が、閉リンクループの内側における両者の角度が大きくなる方向に回動駆動され)、前記ガラス5は高所に上昇した状態に保持されている。
また、ガラス5は高所に上昇した状態では、略水平な姿勢で把持具20に把持されている。
【0026】
この場合、前記ガラス5の走行レール9に沿っての搬送は、作業者が把持具20を把持して移動させる動作に追随して前記走行台車40が走行レール9上を走行するように構成したり、前記走行台車40が走行レール9に沿って自走するように構成したりすることができる。
【0027】
ガラス5が、車体7におけるリアウィンドウ枠7aの位置まで搬送されると、前記支持アーム20が上下方向に伸びるように(すなわち第1上部リンク11と第2上部リンク12との閉リンクループの内側における角度が小さくなる方向に)駆動され、前記ガラス5が下降する。
ここで、ガラス5を車体7のリアウィンドウ枠7aに取り付ける場合、ワーク搬送装置1においては、前記オフセットリンク22の第1下部リンク13に対する回動角度θ1が固定されている。また、オフセットリンク22の第2下部リンク14に対する回動角度θ2は固定されておらず、オフセットリンク22は第2下部リンク14に対して回動自在となっている。
【0028】
前記支持アーム20が上下方向に伸びるように駆動されてガラス5が下降していくと、図2に示すように、前記支持アーム20の各リンク11・12・13・14は、水平方向に寝た姿勢から垂直方向に立つ姿勢へと変化していくが、前記オフセットリンク22は、前記第1下部リンク13に対する回動角度θ1が固定されているので、オフセットリンク22に接続されている把持具20に把持されたガラス5は、前記下部関節18を中心にして右回りに回動し、左端部が高所に位置するとともに右端部が低所に位置する左方への傾斜姿勢となる。
【0029】
この場合、前記ガラス5が前記リアウィンドウ枠7aの位置に対応した高さになるまで下降すると、前記リアウィンドウ枠7aの水平方向からの傾斜角度と前記ガラス5の水平方向からの傾斜角度とが略一致するように前記回動角度θ1等が設定されている。
【0030】
このように、前記ガラス5が前記リアウィンドウ枠7aの位置に対応した高さ位置にまで下降すると、前記ガラス5が作業者により前記リアウィンドウ枠7aに嵌め込まれる。
さらに、ガラス5はリアウィンドウ枠7a側へ押圧されて、該ガラス5の周縁部に塗布された接着剤6がガラス5とリアウィンドウ枠7aとの間で押しつぶされ、ガラス5がリアウィンドウ枠7aに取り付けられることとなる。
【0031】
また、ガラス5を車体7のフロントウィンドウ枠7bに取り付ける場合も同様に、前記支持アーム20を上下方向に伸びるように駆動してガラス5を下降させるが、この場合は、前記オフセットリンク22の第2下部リンク14に対する回動角度θ2が固定されており、オフセットリンク22の第1下部リンク13に対する回動角度θ1は固定されていなくて、オフセットリンク22が第1下部リンク13に対して回動自在となっている。
【0032】
従って、図3に示すように、支持アーム20の伸長動作により下降したガラス5は、
前記下部関節18を中心にして左回りに回動し、右端部が高所に位置するとともに左端部が低所に位置する右方への傾斜姿勢となる。
この場合、フロントウィンドウ枠7bの位置に対応した高さ位置にまで下降してきたガラス5が、前記リアウィンドウ枠7aの水平方向からの傾斜角度と前記ガラス5の水平方向からの傾斜角度とが略一致するように前記回動角度θ2等が設定されている。
【0033】
このように、オフセットリンク22は、下部関節18にて接続されている一対の第1下部リンク13および第2下部リンク14の何れか一方に対する回動角度θ1・θ2を固定可能に構成されているが、次に、この回動角度θ1・θ2を固定可能としている構造について説明する。
【0034】
図4、図5に示すように、前記第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22は、下部関節18の回動中心軸方向において、第1下部リンク13と第2下部リンク14との間にオフセットリンク22が介在するように配置されており、前記第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22における下部関節18部分(第1下部リンク13および第2下部リンク14については下端部、オフセットリンク22については上端部)には、それぞれ円弧形状に形成される摺動孔13a・13a、摺動孔14a・14a、および摺動孔22a・22aが形成されている。
【0035】
前記摺動孔13a・14a・22aは、それぞれ下部関節18における回動中心軸方向に第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22を貫通するように形成されている。
また、摺動孔13a・14a・22aは、単数箇所または複数箇所に形成することができ、本例の場合はそれぞれ2箇所に形成している。
【0036】
前記摺動孔13a・14a・22aには連結シャフト18aが挿入されており、該連結シャフト18aにより下部関節18の部分における第1下部リンク13と第2下部リンク14とオフセットリンク22とが互いに連結されている。
前記連結シャフト18aは、前記摺動孔13a・14a・22a内を該孔の円弧形状に沿って摺動可能に挿入されている。
これにより、前記第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22は、下部関節18の部分を中心にして互いに回動自在に連結されることとなっている。
このように、連結シャフト18aは、前記第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22を互いに回動可能に連結する連結部材として作用している。
【0037】
また、2箇所に配置されている前記各連結シャフト18aの第1下部リンク13側端はそれぞれストッパ18bに接続されており、第2下部リンク14側端はそれぞれストッパ18cに接続されている。
このように、各連結シャフト18aの両端部がストッパ18b・18cに接続されることにより、該連結シャフト18aが摺動孔13a・14a・22から抜け出ることを防止するとともに、一方の連結シャフト18aと他方の連結シャフト18aとの相対位置を固定している。本例の場合、各連結シャフト18aが、それぞれ挿入されている摺動孔13a・14a・22の同じ位相位置に位置するように、その相対位置が設定されている。
【0038】
また、前記第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22における前記連結シャフト18aの内周側には、各リンク13・14・22を回転中心軸方向に貫通する連結位置切換用孔13b・14b・22bがそれぞれ形成されている。
各連結位置切換用孔13b・14b・22bは、その断面形状が、円の一部を直線的に切り欠いて構成される、一面取りされた円形状に形成されている。
【0039】
前記下部関節18には、その断面形状が前記連結位置切換用孔13b・14b・22bの形状に合わせて一面取りした円形状に形成される柱状部材である回動角度固定用ピストン19aと、該回動角度固定用ピストン19aの一端がわから延出する支持ピン19bと、該支持ピン19bを軸方向に摺動自在に支持する支持体19cとで構成される固定用プランジャ19が備えられている。
【0040】
前記支持体19cは、第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22に対する、回動中心軸方向の位置が固定された状態に設けられている。
前記回動角度固定用ピストン19aは、前記支持ピン19bが支持体19c内を摺動することにより、第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22に対する、回動中心軸方向の位置を変更可能に構成されている。
【0041】
前記回動角度固定用ピストン19aは、その長さを、第1下部リンク13とオフセットリンク22との隙間寸法よりも長く、かつ第1下部リンク13の厚み寸法とオフセットリンク22の厚み寸法と前記隙間寸法とを加えた長さよりも短い寸法、ならびに第2下部リンク14とオフセットリンク22との隙間寸法よりも長く、かつ第2下部リンク14の厚み寸法とオフセットリンク22の厚み寸法と前記隙間寸法とを加えた長さよりも短い寸法となるような長さに設定されている。
【0042】
従って、前記回動角度固定用ピストン19aは、前記支持ピン19bの支持体19c内における摺動位置により、前記連結位置切換用孔13b・22bとの両方に挿入され、かつ両端が連結位置切換用孔13b・22bからはみ出ない状態となるような位置に配置したり(図4に示す位置)、前記連結位置切換用孔14b・22bとの両方に挿入され、かつ両端が連結位置切換用孔14b・22bからはみ出ない状態となるような位置に配置したり(図6に示す位置)することが可能となっている。
【0043】
すなわち、前記回動角度固定用ピストン19aは、連結位置切換用孔13b・22bの両方に挿入されているが連結位置切換用孔14bには挿入されていない状態と(図4に示す状態)、連結位置切換用孔14b・22bの両方に挿入されているが連結位置切換用孔13bには挿入されていない状態(図6に示す状態)とを切り換えることが可能となっており、前記第1下部リンク13および第2下部リンク14の何れか一方と前記把持具20、または前記第1下部リンク13および第2下部リンク14前記第1下部リンク13および第2下部リンク14の何れか他方と前記把持具20とを、選択的に相対回転不能に接続する姿勢固定用接続部材として作用する。
【0044】
前記回動角度固定用ピストン19aは、その断面形状が連結位置切換用孔13b・14b・22bの形状に合わせて一面取りした円形状に形成されているので、各連結位置切換用孔13b・14b・22bに挿入された状態では、該連結位置切換用孔13b・14b・22bに対して回動することができずに、該回動角度固定用ピストン19aの各連結位置切換用孔13b・14b・22bに対する回動方向の位相が固定される。
【0045】
従って、図4に示した、回動角度固定用ピストン19aが連結位置切換用孔13b・22bに挿入されている状態では、第1下部リンク13とオフセットリンク22との回動角度θ1が固定され、図6に示した回動角度固定用ピストン19aが連結位置切換用孔14b・22bに挿入されている状態では、第2下部リンク14とオフセットリンク22との回動角度θ2が固定されることとなる。
なお、回動角度固定用ピストン19aの回動中心軸方向の摺動位置は、前記制御装置80の制御により行うことが可能となっている。
【0046】
以上のような構成により、ワーク搬送装置1では、第1下部リンク13とオフセットリンク22との回動角度θ1、および第2下部リンク14とオフセットリンク22との回動角度θ2の何れかを、選択的に固定することが可能となっており、前記支持アーム20が上下へ伸びる方向に駆動されてガラス5が下降した際に、図2に示すように、把持具20の傾斜姿勢を左方への傾斜姿勢とする場合には、前記回動角度θ1が固定されるように回動角度固定用ピストン19aの摺動位置を制御し、同様に前記ガラス5が下降した際に、図3に示すように、把持具20の傾斜姿勢を右方への傾斜姿勢とする場合には、前記回動角度θ2が固定されるように回動角度固定用ピストン19aの摺動位置を制御するように構成されている。
【0047】
このように、本ワーク搬送装置1においては、前記第1下部リンク13とオフセットリンク22との回動角度θ1、および第2下部リンク14とオフセットリンク22との回動角度θ2の何れかを、選択的に固定可能とし、支持アーム10の動作と連動して把持具20の傾斜姿勢が自動的に変動するように構成しているので、把持具20(ガラス5)を回動させてその傾斜姿勢を変えるためのモータ等の駆動手段を別途設けることは不要である。
【0048】
従って、ワーク搬送装置1には、ワークの昇降用の駆動手段と回動動作用の駆動手段とのうち、ワーク昇降用の駆動手段の一種類のみを備えればよいこととなる。
また、回動動作用の駆動手段が不要になることで、支持アーム10による支持重量が軽減されるので、ワークの昇降用の駆動手段(前記上部関節15に設けられるモータ)を小型・軽量化することが可能となる。
【0049】
また、前記第1下部リンク13および第2下部リンク14の何れか一方に対する把持具20の姿勢を固定可能に構成する機構は、主に前記第1下部リンク13、第2下部リンク14、およびオフセットリンク22を互いに回動可能に連結する連結シャフト18aと、前記第1下部リンク13および第2下部リンク14の何れか一方と前記把持具20、または前記第1下部リンク13および第2下部リンク14前記第1下部リンク13および第2下部リンク14の何れか他方と前記把持具20とを、選択的に相対回転不能に接続する回動角度固定用ピストン19aとにより構成されているので、簡単な構成で確実に、前記把持具20の第1下部リンク13および第2下部リンク14の何れか一方に対する姿勢の固定を行うことが可能となっている。
【0050】
また、前記回動角度θ1・θ2を固定可能とした構成においては、次のようにして、オフセットリンク22の第1下部リンク13および第2下部リンク14に対する角度を微調節するように構成することもできる。
つまり、図7に示すように、下部関節18部分に角度微調節用モータ61を設けて、該角度微調節用モータ61により角度固定された第1下部リンク13および第2下部リンク14に対するオフセットリンク22の回動角度を微調節するようにしている。
【0051】
具体的には、前記オフセットリンク22を、インナーリンク22Aとその外周側に配置されるアウターリンク22Bとで構成し、該アウターリンク22Bにて前記把持具20を支持する。
前記インナーリンク22Aとアウターリンク22Bとは、回動中心軸を中心にして相対的に回動可能に構成されている。
また、アウターリンク22Bの外周はプーリー状に形成されており、該アウターリンク22Bと前記角度微調節用モータ61の駆動軸61aとの間に駆動用ベルト62を巻回して、角度微調節用モータ61によりアウターリンク22Bが回転駆動されるように構成している。
【0052】
また、前記摺動孔22および連結位置切換用孔22bは前記インナーリンク22Aに形成されており、該インナーリンク22Aが第1下部リンク13および第2下部リンク14と連結されている。
さらに、該インナーリンク22Aの第1下部リンク13および第2下部リンク14に対する回動角度θ1・θ2が、前記回動角度固定用ピストン19aにより固定可能となっている。
【0053】
なお、前記角度微調節用モータ61の本体部分は前記インナーリンク22Aに固定されている。
また、第1下部リンク13、第2下部リンク14、および固定用プランジャ19等、他の部材の構成は前述の構成と同様であるので省略する。
【0054】
このように構成することで、例えば図2に示すように、第1下部リンク13とオフセットリンク22との回動角度θ1を固定してガラス5をリアウィンドウ枠7aに組み付ける際に、支持アーム10を上下方向に伸長してガラス5を下降させ、該ガラス5をリアウィンドウ枠7aの高さ位置まで移動させたときに、リアウィンドウ枠7aの傾斜角度とガラス5の傾斜角度が若干異なっていたとしても、前記角度微調節用モータ61を駆動させて、前記アウターリンク22Bをインナーリンク22Aに対して回動させることで、前記ガラス5の傾斜角度を微調節して、リアウィンドウ枠7aの傾斜角度と揃えることが可能となる。
【0055】
つまり、前記インナーリンク22Aの第1下部リンク13に対する回動角度θ1は固定されているが、前記角度微調節用モータ61により前記アウターリンク22Bをインナーリンク22Aに対して回動することで、第1下部リンク13に対する把持具20(ガラス5)の姿勢を微調節することが可能となっている。
これにより、ガラス5のリアウィンドウ枠7aに対する姿勢を高精度に位置決めおよび制御することができ、ガラス5のリアウィンドウ枠7aに対する組み付け品質を向上することが可能となる。
【0056】
また、本ワーク搬送装置1は、次のように構成することもできる。
図8に示すように、本例においては、ワーク搬送装置1の走行台車40と把持具20との間にワイヤ73を懸架して、前記走行台車40によりワイヤ73を介して把持具20およびガラス5の重量を支持し、支持アーム10の動作時に該支持アーム10にかかる重量をキャンセルして、支持アーム10における上部関節15に設けられるモータにかかる負荷を低減するバランサ機構が構成されている。
【0057】
前記ワイヤ73の一端は走行台車40の台車本体41に接続され、他端は把持具20に接続されている。
前記台車本体41には、シリンダ本体71aとシリンダ本体71aに対して伸縮可能なピストン71bと、ピストン71bの先端部に取り付けられるプーリー71cとを備えるバランサシリンダ71が取り付けられており、該ランサシリンダ71のピストン71bは
略水平方向に伸縮動作するように構成されている。
【0058】
また、前記台車本体41にもプーリー72が設けられており、前記プーリー71cおよびプーリー72にワイヤ73が巻回されている。
このように、プーリー71c・72に巻回されたワイヤ73は、前記シリンダ71のピストン71bを伸縮動作することで、前記プーリー72と把持具20との間の長さが変化するが、このワイヤ73の長さを支持アーム10によるガラス5の昇降動作に対応して変化させることで、支持アーム10の動作状態にかかわらず(支持アーム10が上下縮小状態にあってガラス5が上昇状態にあったり、支持アーム10が上下伸長状態にあってガラス5が下降状態にあったりしても)、支持アーム10にかかる重量を効果的に低減することが可能となっている。
【0059】
ここで、前述のようなバランサ機構を構成した場合、仮に前記シリンダ71およびプーリー72の組立ラインL方向の位置が固定されていたとすると、図8に示すように、前記支持アーム10下端部(または把持具20)の組立ラインL方向の位置によっては、前記ワイヤ73におけるプーリー72への巻回部分と、把持具20への接続部分との組立ラインL方向の位置がずれてしまうことがある。
つまり、前記プーリー72より下方のワイヤ73が、垂直下方より傾斜角θaだけ傾斜した状態で把持具20およびガラス5を支持することとなる。
【0060】
このような状態では、把持具20に接続されるワイヤ73には、該ワイヤ73に沿ってワイヤ荷重Fがかかっているが、該ワイヤ73が垂直方向から傾斜角θaだけ傾斜していることにより、把持具20へのワイヤ73接続点には前記ワイヤ荷重Fの水平成分力Fsinθaがかかっている。
このように、ガラス5をフロントウィンドウ枠7b等に組み付ける際に、把持具20に前記水平成分力Fsinθaがかかっていると、作業者が把持具20を操作する操作力が前記制御装置80に適正に反映されず、前記支持アーム10の動作等の制御が不安定になる恐れがある。
【0061】
そこで、本例のワーク搬送装置1においては、前記シリンダ71を台車本体41に対して組立ラインL方向へ移動可能に取り付けて、支持アーム10の動作状態(姿勢)にかかわらず、把持具20に前記水平成分力Fsinθaがかからないように構成している。
具体的には、前記シリンダ71およびプーリー72を、ガイドレール74等の摺動部材を介して台車本体41に取り付け、プーリー72より下方のワイヤ73に水平方向の力がかかったときにはその力を打ち消す方向に、前記シリンダ71およびプーリー72が一体的に移動するように構成している。
【0062】
このように構成することで、図8に示すように、例えワイヤ73が垂直方向から傾斜して把持具20に水平成分力Fsinθaがかかったとしても、図9に示すように、すぐさまシリンダ71がその水平成分力Fsinθaを打ち消す方向に移動して、把持具20に前記水平成分力Fsinθaがかからないようになる。
なお、この場合は、前記シリンダ71は、ワイヤ73がプーリー72から直下方に延出するようになる位置まで移動することとなる。
【0063】
このように、支持アーム10の動作状態にかかわらず、ワイヤ73の把持具20における接続点の直上方に前記プーリー72が位置するように構成することで、該ワイヤ73を垂直に吊り下げることができ、把持具20に水平方向の力がかかることを防止して、安定して把持具20の搬送や姿勢制御を行うことが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】支持アームが上下方向に縮小した状態のワーク搬送装置を示す側面図である。
【図2】オフセットリンクと第1下部リンクとの回動角度が固定された状態で支持アームが上下方向に伸長したワーク搬送装置を示す側面図である。
【図3】オフセットリンクと第2下部リンクとの回動角度が固定された状態で支持アームが上下方向に伸長したワーク搬送装置を示す側面図である。
【図4】回動角度固定用ピストンが第1下部リンクの連結位置切換用孔およびオフセットリンクの連結位置切換用孔に挿入された状態の支持アームにおける下部関節部を示す平面断面図である。
【図5】支持アームにおける下部関節部を示す側面図である。
【図6】回動角度固定用ピストンが第2下部リンクの連結位置切換用孔およびオフセットリンクの連結位置切換用孔に挿入された状態の支持アームにおける下部関節部を示す平面断面図である。
【図7】オフセットリンクの第1下部リンクおよび第2下部リンクに対する角度を微調節するための角度微調節用モータを設けた支持アームにおける下部関節部を示す平面断面図である。
【図8】把持具およびガラスの重量を支持し支持アームにかかる重量をキャンセルするバランサ機構が構成されたワーク搬送装置であって、バランサ機構のワイヤにより水平方向の力が把持具にかかっている状態のワーク搬送装置を示す側面図である。
【図9】把持具およびガラスの重量を支持し支持アームにかかる重量をキャンセルするバランサ機構が構成されたワーク搬送装置であって、バランサ機構のワイヤにより水平方向の力が把持具にかかっていない状態のワーク搬送装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0065】
L 組立ライン
1 ワーク搬送装置
5 ガラス
6 接着剤
7 車体
7a リアウィンドウ枠
7b フロントウィンドウ枠
10 支持アーム
11 第1上部リンク
12 第2上部リンク
13 第1下部リンク
13a 摺動孔
13b 連結位置切換用孔
14 第2下部リンク
14a 摺動孔
14b 連結位置切換用孔
15 上部関節
18 下部関節
18a 連結シャフト
19 固定用プランジャ
19a 回動角度固定用ピストン
20 把持具
22 オフセットリンク
22a 摺動孔
22b 連結位置切換用孔
30 吸着パッド
40 駆動台車
80 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する把持具と、
前記把持具を移動可能に支持する支持アームとを備え、
前記把持具にて把持したワークを前記支持アームにより前記ワークが組み付けられるワーク組付位置まで搬送するとともに、前記ワークの姿勢をワーク組付位置に応じた姿勢に変更するワーク搬送装置であって、
前記支持アームを、複数のリンク部材が閉ループ状に接続される閉ループリンク機構に構成し、
前記支持アームの把持具に接続される一対のリンク部材のうち、何れか一方のリンク部材に対する前記把持具の姿勢を固定可能に構成する、
ことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記支持アームの把持具に接続される何れか一方のリンク部材に対する前記把持具の姿勢を固定可能に構成する機構は、
前記一対のリンク部材および前記把持具を互いに回動可能に連結する連結部材と、
前記一対のリンク部材の何れか一方と前記把持具、または前記一対のリンク部材の何れか他方と前記把持具とを、選択的に相対回転不能に接続する姿勢固定用接続部材とを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記把持具には、前記一対のリンク部材のうち姿勢を固定されているリンク部材に対する姿勢を微調節するための駆動部材が備えられる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワーク搬送装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−28879(P2009−28879A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197928(P2007−197928)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】