説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】NAND型フラッシュメモリにおいて、微細化にともなうソース領域およびドレイン領域の導通を回避できるようにする。
【解決手段】たとえば、p型ウェル12の少なくとも表面領域のボロン濃度が1E15cm-3以下となるように設定する。また、そのp型ウェル12の表面部に、ソース領域およびドレイン領域を有さず、トンネル酸化膜21を介して設けられた浮遊ゲートFGと、この浮遊ゲートFG上に絶縁膜22を介して設けられたワード線WLとなる制御ゲートCGとを有するゲート電極を備える、複数のフラッシュメモリセルMCnを設けてなる構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体記憶装置に関する。たとえば、不揮発性メモリセル間に不純物拡散層(ソース領域およびドレイン領域)を有さない、NANDセル型EEPROM(NAND型フラッシュメモリ)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気的にデータの書き換えが可能なNAND型フラッシュメモリは、電荷蓄積層(浮遊ゲート)と制御ゲートとを積層してなる積層ゲート構造のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタを不揮発性の記憶素子(フラッシュメモリセル)として用いている。たとえば、浮遊ゲートに電子を注入し、MOSトランジスタのしきい値(Vth)を変化させることによって、フラッシュメモリセルに対するデータの書き込み(プログラム動作またはライト動作)が行われる。データの読み出し(リード動作)は、MOSトランジスタのしきい値の変化、つまりは、浮遊ゲートへの電子の注入/非注入に応じて変化する、セル電流をセンスアンプによりセンスすることによって行われる。
【0003】
このようなNAND型フラッシュメモリにおいては、フラッシュメモリセルの微細化が進められている。これにより、チップの小型化または1チップあたりの記憶容量の増加が図られている。しかしながら、フラッシュメモリセルの微細化にともない原子1個あたりの影響が顕在化し、不純物のゆらぎによるしきい値のバラつきが大きくなるという問題があった。
【0004】
不純物のゆらぎを低減させる方法としては、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)において、チャネル部の反転層となる基板表面の不純物濃度を小さく(薄く)する方法が、既に提案されている(たとえば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、チャネル部の不純物濃度を薄くすると、MISFETのソース領域とドレイン領域とが導通しやすくなる。特に、微細化が進むと、ソース領域とドレイン領域との間の距離が小さく(短く)なるため、より導通しやすくなる。万が一、フラッシュメモリセル間のソース領域とドレイン領域とが導通した場合、フラッシュメモリセルとしての機能を果たせなくなるという問題があった。
【0006】
また、ソース領域及びドレイン領域を設けないMISFETの構成も提案されている(例えば特許文献3参照)。しかしながら本構成では、隣接するMISFETのゲート電極間に導電層を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−40764号公報
【特許文献2】特開平11−145304号公報
【特許文献3】特許第3522836号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、不揮発性メモリセルのチャネル部の不純物濃度を低下できるとともに、不揮発性メモリセルを微細化することが可能な不揮発性半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の一態様によれば、半導体基板と、電荷蓄積層を有する第1ゲート電極を備え、前記半導体基板上において隣接して配列された複数の不揮発性のメモリセルと、隣接する前記メモリセルの前記第1ゲート電極間の領域を埋め込むようにして前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜とを具備し、前記半導体基板は少なくとも表面領域に、動作対象となる選択メモリセル以外の非選択メモリセルの第1ゲート電極に電圧が印加された際に、前記選択メモリセルのソース領域またはドレイン領域として機能する電流パスが形成される第1不純物領域を備える不揮発性半導体記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、不揮発性メモリセルのチャネル部の不純物濃度を低下できるとともに、不揮発性メモリセルを微細化することが可能な不揮発性半導体記憶装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態にしたがった不揮発性半導体記憶装置(NAND型フラッシュメモリ)の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のNAND型フラッシュメモリにおける、メモリセルアレイの構成例を示すブロック図である。
【図3】図2のメモリセルアレイにおけるブロックの構成例を示す回路図である。
【図4】図2のメモリセルアレイの、カラム方向の構造を示す断面図である。
【図5】図1のNAND型フラッシュメモリにおける、カラム制御回路の構成例を示す回路図である。
【図6】第1実施形態に係るフラッシュメモリセルの構成例を示す断面図である。
【図7】図6のフラッシュメモリセルにおける反転層の形成例を示す断面図である。
【図8】図6のフラッシュメモリセルにおけるソース領域およびドレイン領域での電子濃度分布を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る、フラッシュメモリセルを説明するために示す図である。
【図10】フラッシュメモリセルの特性について説明するために示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る、フラッシュメモリセルの構成例を示す断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る、フラッシュメモリセルの特性について説明するために示す図である。
【図13】図12のフラッシュメモリセルの特性について説明するために示す図である。
【図14】第5実施形態に係るNAND型メモリユニットの断面図。
【図15】第5実施形態に係るNAND型メモリユニットの断面図。
【図16】第5実施形態に係るNAND型メモリユニットの断面図。
【図17】第5実施形態に係るNAND型メモリユニットにおけるVI特性を示すグラフ。
【図18】第6実施形態に係るNAND型メモリユニットの断面図。
【図19】第6実施形態に係るNAND型メモリユニットの断面図。
【図20】第6実施形態に係るNAND型メモリユニットの断面図。
【図21】第6実施形態に係るNAND型メモリユニットにおけるVI特性を示すグラフ。
【図22】第6実施形態に係るメモリセルアレイの回路図。
【図23】第6実施形態の変形例に係るメモリセルアレイの回路図。
【図24】第1実施形態の第1変形例に係るフラッシュメモリセルの断面図。
【図25】第1実施形態の第1変形例に係るフラッシュメモリセルの断面図。
【図26】第1実施形態の第2変形例に係るフラッシュメモリセルの断面図。
【図27】第1実施形態の第2変形例に係るフラッシュメモリセルの断面図。
【図28】第1実施形態の第2変形例に係るフラッシュメモリセルの断面図。
【図29】第1実施形態の第3変形例に係るフラッシュメモリセルの断面図。
【図30】第1実施形態の第4変形例に係るフラッシュメモリセルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各図面の寸法および比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係および/または比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。特に、以下に示すいくつかの実施例は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置などによって、本発明の技術思想が特定されるものではない。この発明の技術思想は、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態にしたがった不揮発性半導体記憶装置の構成例を示すものである。第1実施形態では、不揮発性半導体記憶装置としてNAND型フラッシュメモリを例に説明する。
【0014】
<NAND型フラッシュメモリの全体構成について>
図示するように、本実施形態に係るNAND型フラッシュメモリは、メモリセルアレイ1、カラム制御回路2、ロウ制御回路3、ソース線制御回路4、pウェル制御回路5、データ入出力バッファ6、コマンド・インターフェイス7、及びステートマシン8を備えている。
【0015】
メモリセルアレイ1は、複数のフラッシュメモリセル(NANDセル)、複数のビット線、および複数のワード線を備えている。複数のフラッシュメモリセルは、不揮発性の記憶素子であって、たとえばマトリクス状に配置されている。
【0016】
カラム制御回路2は、メモリセルアレイ1に隣接して設けられている。カラム制御回路2は、メモリセルアレイ1内のビット線を制御し、フラッシュメモリセルのデータの消去、フラッシュメモリセルへのデータの書き込み、さらには、フラッシュメモリセルからのデータの読み出しを行う。カラム制御回路2内には、複数のセンスアンプ回路200が設けられている。
【0017】
ロウ制御回路(第1の電圧回路)3は、メモリセルアレイ1に隣接して設けられている。ロウ制御回路3は、メモリセルアレイ1内のワード線を選択し、選択/非選択のワード線に、消去、書き込み、または、読み出しに必要な電圧(ワード線電圧)を供給する。
【0018】
ソース線制御回路4及びpウェル制御回路(第2の電圧回路)5は、メモリセルアレイ1の近傍に設けられている。ソース線制御回路4は、メモリセルアレイ1内のソース線を制御する。pウェル制御回路5は、メモリセルアレイ1が形成されるp型ウェルを制御する。
【0019】
データ入出力バッファ6は、外部I/O線を介して、ホスト(図示していない)に接続されている。このデータ入出力バッファ6は、ホストからの書き込みデータの受け取り、ホストへの読み出しデータの出力、および、ホストからのアドレスデータおよびコマンドデータの受け取りを行う。データ入出力バッファ6で受け取った書き込みデータは、カラム制御回路2に送られる。また、データ入出力バッファ6は、カラム制御回路2を介して、メモリセルアレイ1内から読み出された読み出しデータを受け取る。
【0020】
データ入出力バッファ6で受け取ったホストからのアドレスデータは、メモリセルアレイ1内のフラッシュメモリセルの選択を行うため、コマンド・インターフェイス7およびステートマシン8を介して、カラム制御回路2およびロウ制御回路3に送られる。
【0021】
また、データ入出力バッファ6で受け取ったホストからのコマンドデータは、コマンド・インターフェイス7に送られる。コマンド・インターフェイス7は、ホストからの外部制御信号を受け、データ入出力バッファ6に入力されたデータが書き込みデータか、コマンドデータか、アドレスデータかを判断し、コマンドデータであれば、それを受け取りコマンド信号としてステートマシン8に転送する。
【0022】
ステートマシン8は、フラッシュメモリ全体の管理を行う。そして、コマンド・インターフェイス7からのコマンド信号に応じて、読み出し、書き込み、消去の各動作およびデータの入出力管理を行う。
【0023】
<メモリセルアレイ1の構成について>
次に、上記メモリセルアレイ1の構成の詳細について説明する。図2は、上記したメモリセルアレイ1の構成例を示すブロック図である。
【0024】
図示するようにメモリセルアレイ1は、複数のブロックBLOCK(本例の場合、BLOCK0〜BLOCK1023の1024個であるが、これは一例に過ぎない)を備えている。ブロックBLOCKは消去の最小単位である。各ブロックBLOCK内には、それぞれ図3に示すように、複数(たとえば、8512個)のNAND型メモリユニットMUが設けられている。図3は、あるブロックBLOCKi(iは0〜1023の自然数)の内部構成を示す回路図である。
【0025】
図示するようにブロックBLOCKiは、複数のNAND型メモリユニットMUを備えている。各NAND型メモリユニットMUは、直列に接続された、たとえば4個のフラッシュメモリセルMCを備えている。NAND型メモリユニットMU内のフラッシュメモリセルMCの個数は4個に限られず、8個、16個、32個、64個など、適宜選択出来る。一方の端部のフラッシュメモリセルMCは、それぞれ、選択ゲート線SGD_iに共通に接続された選択ゲートS1を介して、対応するビット線BL(BLe0〜BLe4255,BLo0〜BLo4255)に接続されている。他方の端部のフラッシュメモリセルMCは、それぞれ、選択ゲート線SGS_iに共通に接続された選択ゲートS2を介して、共通ソース線C−sourceに接続されている。
【0026】
それぞれのフラッシュメモリセルMCは、制御ゲートおよび電荷蓄積層(例えば浮遊ゲート)を有しているが、ソース領域及びドレイン領域となる不純物拡散層を有していない。各NAND型メモリユニットMUに含まれる4個のフラッシュメモリセルMCの各制御ゲートは、それぞれ、対応するワード線WL(WL0_i〜WL3_i)のうちのいずれかに共通に接続されている。
【0027】
データの書き込み及び読み出しは、0から数えて偶数番目のビット線BLeと奇数番目のビット線BLoとに対し、互いに独立に行われる。たとえば、1本のワード線WLに制御ゲートが共通に接続されている8512個のフラッシュメモリセルMCのうち、偶数番目のビット線BLeに接続される4256個のフラッシュメモリセルMCに対して、同時に、データの書き込みと読み出しとが行われる。なお、各フラッシュメモリセルMCがそれぞれ1ビットのデータを記憶する場合、4256個のフラッシュメモリセルMCに記憶される4256ビットのデータが、ページという単位を構成する。
【0028】
図4は、上記したメモリセルアレイ1の、カラム方向(ビット線BLに沿う方向)の断面図である。図示するように、例えばp型半導体基板10上にn型ウェル11が形成され、n型ウェル11内に低濃度領域であるp型ウェル(p型不純物濃度が1E15cm-3以下)12が形成されている。各フラッシュメモリセルMCは、p型ウェル12の表面部のチャネル領域上にトンネル酸化膜21を介して設けられた浮遊ゲートFGと、この浮遊ゲートFG上に絶縁膜22を介して設けられた制御ゲートCGと、を含む積層ゲートを備えている。そして制御ゲートCGがワード線WLとして機能する。
【0029】
各選択ゲートS1は、n型の不純物拡散層13で形成されたソースおよびドレインと、例えば多結晶シリコン層が積層された二重構造のゲート電極SGと、を含むMOSトランジスタである。ゲート電極SGは、選択ゲート線SGD_iに接続されている。選択ゲート線SGD_iおよびワード線WLは、ともに、図1中のロウ制御回路3に接続され、そのロウ制御回路3からの出力信号によって制御される。
【0030】
各選択ゲートS2は、n型の不純物拡散層13で形成されたソースおよびドレインと、例えば多結晶シリコン層が積層された二重構造のゲート電極SGと、を含むMOSトランジスタである。ゲート電極SGは、選択ゲート線SGS_iに接続されている。選択ゲート線SGS_iおよびワード線WLは、ともに、図1中のロウ制御回路3に接続され、そのロウ制御回路3からの出力信号によって制御される。
【0031】
隣接する各メモリユニットMUは、選択ゲートS1または選択ゲートS2のソース/ドレインを共有している。
【0032】
4個のフラッシュメモリセルMCと選択ゲートS1,S2とを備えたNAND型メモリユニットMUの一端(選択ゲートS1のドレイン)は、コンタクト電極CB1を介して、第1層目のメタル配線層M0に接続されている。このメタル配線層M0は、ヴィア電極V1を介して、ビット線BLに接続されている。ビット線は、第1層目のメタル配線層M0よりも上層にある第2層目のメタル配線層M1で形成される。そしてビット線BLは、図1中のカラム制御回路2に接続されている。
【0033】
NAND型メモリユニットMUの他端(選択ゲートS2のソース)は、コンタクト電極CB2を介して、共通ソース線C−sourceとなる第1層目のメタル配線層M2に接続されている。共通ソース線C−sourceは、図1中のソース線制御回路4に接続されている。
【0034】
n型ウェル11の表面にはn型の不純物拡散層14が形成され、p型ウェル12の表面にはp型の不純物拡散層15が形成されている。n型の不純物拡散層14およびp型の不純物拡散層15は、コンタクト電極CB3、CB4をそれぞれ介して、ウェル線C−p−wellとなる第1層目のメタル配線層M3に共に接続されている。ウェル線C−p−wellは、図1中のPウェル制御回路5に接続されている。
【0035】
<カラム制御回路2の構成について>
次に、上記カラム制御回路2の構成の詳細について説明する。図5は、上記したカラム制御回路2の構成例を示す回路図である。
【0036】
図示するようにカラム制御回路2は、nチャネルMOSトランジスタQn1、Qn2、及びセンスアンプ回路200を備えている。本実施形態に係る構成であると、センスアンプは、同一のカラム番号の偶数番目のビット線BLeと奇数番目のビット線BLoとからなる2本のビット線BLごとに、センスアンプ回路200が設けられている。
【0037】
MOSトランジスタQn1は、上記センスアンプ回路200と偶数番目のビット線BLeとの間に接続される。またMOSトランジスタQn2は、センスアンプ回路200と奇数番目のビット線BLoとの間に接続されている。nチャネルMOSトランジスタQn1のゲートには信号EVENBLが、nチャネルMOSトランジスタQn2のゲートには信号ODDBLが、たとえば、上記ステートマシン8よりそれぞれ与えられる。
【0038】
偶数番目および奇数番目のビット線BLe,BLoは、nチャネルMOSトランジスタQn1,Qn2によっていずれか一方が選択され、それぞれ、対応するセンスアンプ回路200に接続されて、データ書き込みあるいはデータ読み出しのための制御が行われる。すなわち、信号EVENBLがハイレベル(H)、信号ODDBLがローレベル(L)のときは、nチャネルMOSトランジスタQn1が導通して偶数番目のビット線BLeが選択され、そのビット線BLeがセンスアンプ回路200に接続される。信号EVENBLがLレベル、信号ODDBLがHレベルのときは、nチャネルMOSトランジスタQn2が導通して奇数番目のビット線BLoが選択され、そのビット線BLoがセンスアンプ回路200に接続される。なお、上記信号EVENBLは、偶数番目のビット線BLeに接続されている全てのカラム選択用のnチャネルMOSトランジスタQn1に共通に供給され、上記信号ODDBLは、奇数番目のビット線BLoに接続されている全てのカラム選択用のnチャネルMOSトランジスタQn2に共通に供給される。なお、非選択のビット線BL(BLe,BLo)については、図示していない他の回路で制御される。
【0039】
<フラッシュメモリセルMCの構成について>
次に、上記フラッシュメモリセルMCの構成の詳細について説明する。図6及び図7はフラッシュメモリセルMCの断面図であり、あるNAND型メモリユニットMUにおけるフラッシュメモリセルMCn−1,MCn,MCn+1を例示している。なお、図6はフラッシュメモリセルMCの基本的な素子構造を示し、図7は図6の構成において反転層(チャネル、空乏層)が形成された際の様子を示している。
【0040】
本実施形態では、p型ウェル(低不純物濃度領域)12は、少なくともその表面部において、p型不純物濃度が薄く、たとえばボロン濃度が1E15cm-3以下である。但し、p型不純物のインプランテーションを行っていない生のウェーハの不純物濃度(例えば4E14cm−3程度)と同じであるか、それよりも高い。そしてその表面部では、濃度はほぼ均一とされる。これにより、微細化にともなう、不純物のゆらぎによるフラッシュメモリセルMCのしきい値(Vth)のバラつきを軽減できる。
【0041】
また、各フラッシュメモリセルMCの浮遊ゲートFGおよび制御ゲートCG(積層ゲート)のゲート電極幅Lw、及び隣接する積層ゲート間距離Lsは、例えば共に22nmとされている。勿論、Lw及びLsの値は22nmに限定されるものでは無く、またLw≠Lsであっても良い。
【0042】
したがって、たとえば図7に示すように、従来、ゲート電極間に配置していたソース領域およびドレイン領域を形成しなくても、p型ウェル12の表面部(チャネル領域)において、隣接するフラッシュメモリセルMCn−1,MCn,MCn+1の浮遊ゲートFGn−1,FGn,FGn+1による反転層CPn−1,CPn,CPn+1を相互に接続させることが可能となる。浮遊ゲートFGn−1,FGn,FGn+1における電子(データ)の有無に応じて形成される反転層CPn−1,CPn,CPn+1は、たとえば、制御ゲートCGn−1,CGn,CGn+1に与えられるゲート電圧(ワード線電圧)、および/または、Pウェル制御回路5より与えられるp型ウェル12の電圧(Vsub)によって、その形成が制御される。すなわち、反転層CPn−1,CPn,CPn+1の形成は、後述する従来におけるソース領域およびドレイン領域に相当する領域の電子濃度分布(SDS,SDD)に依存する。
【0043】
図8は、図6の構成におけるp型ウェル12内の電子濃度分布のシミュレーション結果を示す。図8では、フラッシュメモリセルMCn−1、MCn、MCn+1に反転層(チャネル)が形成されておらず、またフラッシュメモリセルMCn+1、MCn−1に隣接して、それぞれ選択ゲートS1、S2が設けられている場合について示している。なお、隣接する積層ゲート間には、絶縁膜30(例えばシリコン酸化膜)が埋め込まれている。
【0044】
図示するように、p型ウェル12内において、フラッシュメモリセルMCnとMCn+1との間の領域、及びフラッシュメモリセルMCnとMCn−1との間の領域には、電子濃度の高い領域(すなわち、従来のソース及びドレイン領域)が設けられていない。言い換えれば、p型ウェル12の表面内において、フラッシュメモリセルMCn−1からMCn+1までの間の領域は、均一な電子濃度(例えば1E15cm−3)のp型領域とされている。
【0045】
これに対して、フラッシュメモリセルMCn+1と選択ゲートS1との間には、電子濃度の高い領域(例えば最も電子濃度の高い領域で1.5E18cm−3)が設けられている。これは、選択ゲートS1のソース領域13として機能する領域である。また、フラッシュメモリセルMCn−1と選択ゲートS2との間にも、電子濃度の高い領域が設けられている。これは、選択ゲートS2のドレイン領域13として機能する領域である。
【0046】
以上の構成において、図7に示すようにフラッシュメモリセルMCn−1、MCn、MCn+1はそれぞれ、浮遊ゲートFGn−1,FGn,FGn+1内の電荷密度に応じて、反転層(チャネル)CPn−1,CPn,CPn+1を形成する。この反転層CPn−1,CPn,CPn+1は、隣接するもの同士で接触する。つまり、反転層CPn−1,CPn,CPn+1が、フラッシュメモリセルMCn−1、MCn、MCn+1のチャネルとしてだけでなく、ソース領域及びドレイン領域としても機能する。
【0047】
<NAND型フラッシュメモリのプログラム動作について>
次に、本実施形態に係るNAND型フラッシュメモリのプログラム動作について、以下説明する。フラッシュメモリセルMCに対するデータの書き込みはページ単位で行われる。以下では、消去状態のフラッシュメモリセルMCの保持するデータを“1”データと呼ぶ。“1”データを保持するフラッシュメモリセルMCの閾値電圧は、例えば負の値である。また、浮遊ゲートFGに電子が注入されて閾値電圧が正の値とされたフラッシュメモリセルMCの保持するデータを、“0”データと呼ぶ。
【0048】
まずロウ制御回路3は、プログラム対象となるフラッシュメモリセルMC(これを選択フラッシュメモリセルMCと呼ぶ)の接続されたワード線WL(制御ゲートCG)に、高電圧(書き込み電圧Vpgm)の書き込みパルスを印加する。また、その他の非選択のワード線WLの電位をVPASSとする。VPASSは、フラッシュメモリセルMCを、保持するデータに関わらずオン状態とする(チャネルを形成させる)電圧であり、Vpgmよりも低い電圧である。
【0049】
この結果、選択フラッシュメモリセルMCを含むNAND型メモリユニットMU内の全てのフラッシュメモリセルMCに、チャネルが形成される。つまり、このNAND型メモリユニットMU内において、p型ウェル12の表面に反転層が形成される。そして、隣接するフラッシュメモリセルMCは、このチャネルによって接続され、当該NAND型メモリユニットMU内では全てのフラッシュメモリセルMCが導通状態となる。
【0050】
そしてカラム制御回路2が、“0”データの書き込みの対象となる選択フラッシュメモリセルMCが接続されるビット線BLの電位レベルを電圧VSSにバイアスするとともに、ロウ制御回路3が、選択ゲートS1をオン(SGD_0=Vsg,SGS_0=0V)させる。
【0051】
この結果、p型ウェル12の表面に形成された反転層の電位は、電圧VSS(0V)に設定される。そして、選択フラッシュメモリセルMCにおいては、浮遊ゲートFGとp型ウェル12の表面領域との間に高電界がかかる。そのため、p型ウェル12の表面領域側から浮遊ゲートFGに電子が注入される。これにより、選択フラッシュメモリセルMCの閾値電圧が上昇する。すなわち、“0”データが書き込まれる。
【0052】
またカラム制御回路2は、“0”データを書き込まない選択フラッシュメモリセルMCが接続されるビット線BLについては、その電位レベルを電圧VDD(>VSS)にバイアスする。そしてロウ制御回路3が、選択ゲートS1をカットオフ(SGD_0=0V,SGS_0=0V)させる。
【0053】
すると、当該選択フラッシュメモリセルMCを含むNAND型メモリユニットMUでは、反転層(p型ウェル12の表面領域)は、電気的にフローティングの状態となる。そして、この反転層の電位は、制御ゲートCGとのカップリングにより、ある電位Vinhibitまで上昇する。このため、浮遊ゲートFGとp型ウェル12の表面領域との間に高電界がかからない。その結果、選択フラッシュメモリセルMCには電子が注入されず、“1”データを保持したままの状態が維持される。
【0054】
通常、NAND型フラッシュメモリにおけるプログラム動作は、対応するロウデコーダにより、選択ワード線WLに書き込みパルスを印加して選択フラッシュメモリセルMCへのデータの書き込みを行い、その後、選択ワード線WLにベリファイパルスを印加してベリファイを行う。そして、選択フラッシュメモリセルMCの閾値電圧が所望の値に達するまで、この書き込み動作とベリファイ動作が繰り返される。
【0055】
<NAND型フラッシュメモリの読み出し動作について>
次に、本実施形態に係るNAND型フラッシュメモリの読み出し動作について、例えば選択フラッシュメモリセルMCnからデータを読み出す場合を例に挙げて、以下説明する。
【0056】
ロウ制御回路3は、非選択の全フラッシュメモリセルMCn−1、MCn+1の制御ゲートCGn−1,CGn+1、すなわちワード線WLn−1、WLn+1に、所定の第1のリード電圧Vcg1を印加する。第1のリード電圧Vcg1は、保持するデータに関わらず、フラッシュメモリセルMCをオンさせる電圧である。その結果、フラッシュメモリセルMCn−1、MCn+1はオン状態となり、反転層CPn−1、CPn+1をそれぞれ形成する。
【0057】
またロウ制御回路3は、選択フラッシュメモリセルMCnの制御ゲートCGn、すなわちWLnに、所定の第2のリード電圧Vcg2を印加する。第2のリード電圧Vcg2は、第1のリード電圧Vcg1よりも低い電圧であり、また読み出しレベルに応じた値である。
【0058】
すると、選択フラッシュメモリセルMCnに所望のデータが記憶されている場合、選択フラッシュメモリセルMCnはオン状態となる。すなわち、選択フラッシュメモリセルMCnは、p型ウェル12の表面に反転層CPnを形成する。この反転層CPnは、反転層CPn−1、CPn+1と接触し、これらによって電流パス(連続したチャネル領域)が形成される。そのため、ビット線BLからソース線SLに電流が流れる。
【0059】
これに対し、選択フラッシュメモリセルMCnに所望のデータが記憶されていない場合、選択フラッシュメモリセルMCnはオフ状態となる。すなわち、選択フラッシュメモリセルMCnは、反転層CPnを形成しない。よって、NAND型メモリユニットMU内にはビット線BLからソース線SLまでの連続した電流パスが形成されない。そのため、ビット線BLからソース線SLに電流は流れない。
【0060】
以上のように、電流パスの形成を判別することにより、つまり、対応するセンスアンプ回路200によって電流パスの形成に応じて流れるセル電流をセンスすることにより、選択フラッシュメモリセルMCnのデータを読み出し、データが“0”であるか“1”であるかを判定出来る。
【0061】
<効果>
以上のように、この発明の第1実施形態に係るNAND型フラッシュメモリであると、フラッシュメモリセルのサイズを微細化させつつ、NAND型フラッシュメモリの動作信頼性を向上出来る。
【0062】
すなわち、本実施形態に係る構成では、積層ゲート間のソース領域およびドレイン領域を形成することなしに、データの書き替えが可能なフラッシュメモリセルを構成できるようにしている。
【0063】
より具体的には、フラッシュメモリセルのp型ウェル(基板)は、その不純物濃度が1E15cm-3以下になるようにインプラされる。そして、フラッシュメモリセルが微細化された際には、言い換えれば隣接する積層ゲート間隔が小さくなった際には、隣接するフラッシュメモリセルの浮遊ゲートによる反転層の形成によって、その反転層間(チャネル領域)が接続されるようにしている。
【0064】
これにより、ソース領域およびドレイン領域を形成せずとも、フラッシュメモリセルとしての機能を果たすことができるようになる。したがって、フラッシュメモリセルを微細化した場合にも、ソース領域とドレイン領域とが導通するといった不具合をなくしつつ、微細なフラッシュメモリセルでの不純物のゆらぎによるしきい値のバラつきを低減することが可能となる。
【0065】
また、隣接するフラッシュメモリセルの積層ゲート間は絶縁膜で埋め込まれ、この領域に導電層は不要である。このことによっても、メモリセルアレイ1のサイズを縮小化出来る。
【0066】
[第2の実施形態]
次に、この発明の第2実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置について説明する。本実施形態は、上記第1実施形態において、p型ウェル12を、表面側の低濃度領域と、深部側の高濃度領域とを含むように形成したものである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0067】
図9は、第2実施形態に係るフラッシュメモリセルMCの一例を示すものである。図9(a)は、フラッシュメモリセルMCの断面図であり、p型ウェル12におけるp型不純物濃度(例えばボロン濃度)の分布を示している。また図9(b)は、ゲート電圧Vcg2とドレイン電流Idrainとの関係(Id−Vcg2特性)を示す。また、上記した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して、詳しい説明は割愛する。
【0068】
図9(a)に示すように、本実施形態に係る構成であると、p型ウェル12は、低濃度領域12aと高濃度領域12bとを備えている。低濃度領域12aでは、例えばボロン濃度が1E15cm-3以下とされ、例えばp型不純物が注入されていない生のウェーハの不純物濃度(例えば4E14cm−3程度)と同じか、それより高い。高濃度領域12bは、低濃度領域12aよりもp型不純物濃度(例えばボロン濃度)が高く、その濃度は例えば1E18cm−3程度である。
【0069】
低濃度領域12aは、p型ウェル12の表面内に形成され、高濃度領域12bは低濃度領域12aの下層に形成され、両者は接している。低濃度領域12aの厚さ(トンネル酸化膜21との界面であるp型ウェル12の表面部からの深さ)は、たとえば20nm以下とされている。
【0070】
理想的には、低濃度領域12aは、フラッシュメモリセルMCによって形成される空乏層の深さと同一であることが望ましい。言い換えれば、空乏層の下端が高濃度領域12bに接するように、低濃度領域12aの深さを設定することが望ましい。
【0071】
<効果>
上記のように、本実施形態に係るNAND型フラッシュメモリであると、例えば図9(a)に示したように、低濃度領域12aの下層に高濃度領域12bを形成することで、選択フラッシュメモリセルMCnを、より確実にカットオフさせることが可能となる。すなわち、選択フラッシュメモリセルMCnに隣接するフラッシュメモリセルMCn−1,MCn+1の制御ゲートCGn−1,CGn+1に与える第1のリード電圧Vcg1をたとえば6Vとした場合、制御ゲートCGnに与える第2のリード電圧Vcg2を、たとえば−6V程度とすることによって、選択フラッシュメモリセルMCnを確実にカットオフさせることが可能である(図9(b)参照)。
【0072】
これは、高濃度領域12bでは、低濃度領域12aに比べて空乏層が延びにくいためである。すなわち、反転層CPn−1とCPn+1とが、p型ウェル12の深部の領域を介して導通してしまうことを抑制できるからである。
【0073】
図10は、高濃度領域12bを設けずにp型ウェル12を形成した際のシミュレーション結果である。図10(a)は、フラッシュメモリセルの断面図であり、p型ウェル12内の電子濃度分布を示す。図10(a)のシミュレーション条件は、Vcg1=8V、Vcg2=−6Vである。また図10(b)は、ゲート電圧Vcg2とドレイン電流Idrainとの関係(Id−Vcg2特性)を示す。
【0074】
図10(a)に示すように、フラッシュメモリセルMCnはオフ状態であるので、チャネルは形成されない。よって、フラッシュメモリセルMCnの積層ゲート直下の領域では、電子濃度は十分に低い。しかし、フラッシュメモリセルMCn−1により形成された空乏層と、フラッシュメモリセルMCn+1により形成された空乏層とが、p型ウェル12の深い領域でつながっている。すなわち、電流経路が形成される。そのため、図10(b)に示すように、電圧Vcg2を十分に低くしても、多くのドレイン電流が流れてしまうおそれがある。言い換えれば、フラッシュメモリセルMCnをカットオフできない。
【0075】
この点、本実施形態に係る構成であると、隣接するフラッシュメモリセルMCn−1,MCn+1の制御ゲートCGn−1,CGn+1に与える第1のリード電圧Vcg1によっては(図10(a)の例では8V)、たとえ選択フラッシュメモリセルMCnの制御ゲートCGnに与える第2のリード電圧Vcg2を−6V程度とした場合でも、選択フラッシュメモリセルMCnをカットオフできない、といった動作不良の発生を防ぐことが可能となる。
【0076】
以上のように、本実施形態の構成によれば、高濃度領域12bを設けたことにより、p型ウェル12の深部において、隣接するフラッシュメモリセルMCn−1,MCn+1の浮遊ゲートFGnによる反転層CPn−1,CPn+1が導通するのを防止できるようになる。その結果、第1実施形態で説明した効果に加えて、選択フラッシュメモリセルMCnを確実にカットオフさせることが可能となり、動作性能(特に、リード動作の精度)を向上できる。
【0077】
[第3の実施形態]
次に、この発明の第3実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置について説明する。本実施形態は、上記第1実施形態で説明した構成を、SOI(Silicon On Insulator)基板に適用したものである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0078】
図11は、本実施形態に係るフラッシュメモリセルMCの一例を示す断面図である。ここでは、隣接するフラッシュメモリセルMCn−1,MCn+1の浮遊ゲートFGnにより形成された反転層CPn−1,CPn+1が導通するのを、絶縁体層によって防止するようにした場合について説明する。なお、上記した第1実施形態と同一部分には同一符号を付して、詳しい説明は割愛する。
【0079】
図示するように、第1の実施形態で説明した図6及び図8の構成において、p型ウェル12内に絶縁層23が形成されている。絶縁層23は、例えばシリコン酸化膜を材料に形成される。そして、絶縁層23上のp型ウェル12上にフラッシュメモリセルMCが形成されている。絶縁層23上のp型ウェル12の厚さは(表面部(ゲート酸化膜21との界面)からの深さ)は、例えば20nm程度またはそれ以下とされる。
【0080】
理想的には、絶縁層23は、フラッシュメモリセルMCによって形成される空乏層の下方に配置されるのが望ましい。または、空乏層の下端に接することが望ましい。
【0081】
<効果>
本実施形態に係る構成とした場合にも、絶縁層23によってパンチスルーを抑制できる。よって、第2実施形態と同様の効果が得られる。つまり、選択フラッシュメモリセルMCnを確実にカットオフさせることが可能となり、動作性能(特に、リード動作の精度)を向上できる。
【0082】
[第4の実施形態]
次に、この発明の第4実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置について説明する。本実施形態は、上記第1実施形態で説明した構成において、pウェル制御回路5によって、p型ウェル12に基板電圧Vsub(≠0V)を印加することにより、フラッシュメモリセルMCをカットオフさせるものである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0083】
図12(a)〜(c)は、本実施形態に係るフラッシュメモリセルMCの断面図であり、特に電圧Vcg2によるp型ウェル12内における電子濃度分布の変化を示すシミュレーション結果である。なお、Vcg1は4V一定である。フラッシュメモリセルMCの構造は、第1実施形態で説明した構造と同じである(各要素は第1実施形態と同じ参照符号で示してある)。
【0084】
図示するように、データの読み出し時において、pウェル制御回路5は、p型ウェル12に基板電圧Vsubとして例えば負電圧、例えば−5Vを印加する。また、フラッシュメモリセルMCnに隣接するフラッシュメモリセルMCn−1,MCn+1の制御ゲートCGn−1,CGn+1に第1のリード電圧Vcg1として4Vが印加される場合、選択フラッシュメモリセルMCnの制御ゲートCGnに与えられる第2のリード電圧Vcg2に応じて、p型ウェル12の表面部(チャネル領域)での電子濃度分布が変化する。
【0085】
すなわち、p型ウェル12に基板電圧Vsubとして−5Vの負電圧を与えるようにしたNAND型フラッシュメモリにおいて、第1のリード電圧Vcg1を4Vとした場合には、第2のリード電圧Vcg2を−4Vに設定することによって、たとえば図13に示すように、選択フラッシュメモリセルMCnを十分にカットオフさせることが可能となる。図13は、ゲート電圧Vcg2とドレイン電流Idrainとの関係(Id−Vcg2特性)を示すグラフである。
【0086】
また、第2のリード電圧Vcg2を−2V程度に設定することによって、選択フラッシュメモリセルMCnに対応するp型ウェル12の表面部に、反転層CPn−1,CPn+1間をつなぐ電流パスを形成することが可能となる。ゆえに、微細化した際においても、ソース領域とドレイン領域とが導通するといった不具合をなくしつつ、微細なフラッシュメモリセルでの不純物のゆらぎによるしきい値のバラつきを低減でき、動作性能(特に、リード動作の精度)を向上することが可能となるものである。
【0087】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る構成であると、p型ウェル12に電位を与えることによって、p型ウェル12内部に高濃度領域や絶縁層を設けることなく、フラッシュメモリセルMCをカットオフ出来る。勿論、本実施形態は第2、第3実施形態と組み合わせても良い。つまり、第2、第3実施形態において、低濃度領域12a、または絶縁層31上のウェル領域12に基板電位Vsubを印加するようにしても良い。なお、図12(a)〜(c)ではデータの読み出し時を例に説明したが、書き込み時も同様である。書き込み時には、選択ワード線にはVpgmが印加され、非選択ワード線にはVPASSが印加される。このことは、以後の実施形態でも同様である。
【0088】
[第5の実施形態]
次に、この発明の第5実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置について説明する。本実施形態は、上記第1実施形態において、選択ゲートS1、S2とフラッシュメモリセルMCとの間のn型不純物拡散層を排すると共に、フラッシュメモリセルMCの積層ゲートと選択ゲートS1、S2のゲート電極との間に高誘電体層を設けたものである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、以下では特に第1実施形態と異なる点に着目して説明する。
【0089】
図14は、本実施形態に係るNAND型メモリユニットMUの断面図である。図示するように、フラッシュメモリセルMC0〜MC3が、選択ゲートS2とS1との間に順次設けられている。第1実施形態と同様に、フラッシュメモリセルMCはソース領域及びドレイン領域となるn型不純物拡散層を有しない。更に本実施形態では、選択ゲートS1におけるソース領域及び選択ゲートS2におけるドレイン領域として機能するn型不純物拡散層13が排されている。
【0090】
第1実施形態と同様に、フラッシュメモリセルMC0〜MC3の積層ゲートの周囲は絶縁膜30によって取り囲まれ、隣接するフラッシュメモリセルMCの積層ゲート間の領域は絶縁膜30によって完全に埋め込まれている。また、選択ゲートS1、S2のゲート電極の周囲も絶縁膜30によって取り囲まれている。絶縁膜30は、例えばシリコン酸化膜などである。
【0091】
そして、フラッシュメモリセルMC3の積層ゲートと、選択ゲートS1のゲート電極との間の領域には、高誘電体層31が設けられている。高誘電体層31は、例えばシリコン窒化膜(SiN)よりも誘電率の高い材料で形成され、例えばHfOやアルミナ(Al)等である。同様に、フラッシュメモリセルMC0の積層ゲートと、選択ゲートS2のゲート電極との間の領域にも、高誘電体層31が設けられている。すなわち、隣接するフラッシュメモリセルMCと選択ゲートS1、S2との間の領域は、絶縁膜30及び高誘電体層31によって完全に埋め込まれている。なお、高誘電体層31の代わりに、シリコン酸化膜よりも誘電率の高い材料、例えばシリコン窒化膜を設けても良い。
【0092】
そして、上記の構成を被覆するように、半導体基板の全面に、図示せぬ層間絶縁膜(例えばシリコン酸化膜)が形成される。
【0093】
以上の構成において、選択ゲート線SGD、SGS、及びワード線WL0〜WL3に電圧を印加して、NAND型メモリユニットMUを導通させた際の様子を図15に示す。図15はNAND型メモリユニットMUの断面図であり、図14で説明した領域と対応している。
【0094】
図示するように、フラッシュメモリセルMC0〜MC3には反転層CP0〜CP3がそれぞれ形成され、これらは隣接するもの同士で接触する。また、選択ゲートS1、S2においても反転層CPsgが形成される。これらは第1実施形態と同様である。
【0095】
更に本実施形態では、高誘電体層31によって、p型ウェル12における高誘電体層31直下の領域にも反転層CPxが形成される。そして、反転層CP3とCPsgは反転層CPxによって接続され、また反転層CP0とCPsgも反転層CPxによって接続される。この結果、NAND型メモリユニットMUが導通する。
【0096】
その他の構成及び動作は第1実施形態で説明した通りである。
【0097】
<効果>
以上のように、第5実施形態に係る構成であると、選択ゲートS1、S2とフラッシュメモリセルMCとの間のn型不純物拡散層を排しつつ、NAND型メモリユニットMUを確実に導通させることが出来る。本効果につき、以下説明する。
【0098】
NAND型フラッシュメモリでは通常、ワード線WLとこれに隣接する選択ゲート線SGD、SGSとの間の間隔は、隣接するワード線WLの間隔よりも大きい。これは、フォトリソグラフィーの制約によるものである。具体的には、ワード線WLとこれに隣接する選択ゲート線SGD、SGSとの間隔は、例えば50nm程度である。
【0099】
従って、選択ゲートS1、S2とこれに隣接するフラッシュメモリセルMCとの間には、両者を接続するn型不純物拡散層が必要となる。これを仮に排した場合、その間隔が大きいために両者の反転層は十分に接することが出来ず、この領域が高抵抗領域となり、NAND型メモリユニットMUが導通出来なくなるおそれがある。
【0100】
この点、本実施形態に係る構成であると、隣接する選択ゲートS1、S2とフラッシュメモリセルMCとの間に、シリコン酸化膜よりも誘電率の高い材料で形成された層(高誘電体層31)を設けている。データの書き込み時及び読み出し時においてこの層31の電位は、隣接する選択ゲートS1、S2のゲート電極、及び隣接するフラッシュメモリセルMCの積層ゲートとのカップリングにより上昇される。その結果、p型ウェル12の表面には、層31によって反転層CPxが形成される。これにより、選択ゲートS1、S2とフラッシュメモリセルMCとの間の電気的接続を図ることが出来、NAND型メモリユニットMUを導通させることが出来る。
【0101】
<変形例>
なお、本実施形態は上記第2乃至第4実施形態に適用することも可能である。図16は、本実施形態を第2実施形態に適用した際のNAND型メモリユニットMUの断面図であり、特にp型ウェル12におけるp型不純物濃度分布のシミュレーション結果を示している。
【0102】
図示するようにp型ウェル12は、高濃度領域12bにおいて1E18cm−3のp型不純物濃度を有し、低濃度領域12aにおいて1E15cm−3のp型不純物濃度を有する。そして選択ゲートS1、S2とこれに隣接するフラッシュメモリセルMCとの間の領域からは、n型不純物拡散層が排されている。
【0103】
以上の構成を有するNAND型メモリユニットMUにおけるVI特性を図17に示す。図17は、選択ワード線WLにVcg2=6Vを印加し、非選択ワード線WLにVcg1=6Vを印加し、ビット線BLに0.7Vを印加した際に、選択ゲート線SGDの電圧Vsgを0〜2Vの間で変化させた際の、選択ゲートS1に流れる電流をIdrain(ビット線BLからソース線C-sourceに流れる電流)をシミュレーションしたグラフである。選択ゲート線SGDと、これに隣接するワード線WL3との間隔は、例えば80nmである。図中では、第1実施形態と同様にAsなどを用いてn型不純物拡散層を形成した場合(Reference)、高誘電体層31としてHfO層を設けた場合、高誘電体層31の代わりにSiN層を設けた場合、及び高誘電体層31の代わりにSiO層を設けた場合について示している。
【0104】
図示するようにSiO層(誘電率ε=3.9)を設けた場合、p型ウェル12が高抵抗領域となり、ドレイン電流は減少する。これに対してHfO(誘電率ε=20を設けた場合には、n型不純物拡散層を設けた場合とほぼ同様の特性が得られる。また、SiN(ε=7.5)を用いた場合にも、SiOを用いる場合よりは優れた特性が得られる。
【0105】
以上のように、選択ゲートS1、S2とフラッシュメモリセルMCとの間を埋め込む材料は、誘電率が高いほど好ましい。このことは、図14及び図15で説明した構造でも同様である。
【0106】
また、本実施形態においても、第3実施形態のようにSOI基板を用いても良いし、または第4実施形態のように基板電位Vsubを与えても良いし、これらを適宜組み合わせても良い。
【0107】
[第6実施形態]
次に、この発明の第6実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置について説明する。本実施形態は、上記第1実施形態において、ダミーワード線を設けることで、第5実施形態と同様に選択ゲートS1、S2とフラッシュメモリセルMCとの間のn型不純物拡散層を排したものである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、以下では第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0108】
図18は、本実施形態に係るNAND型メモリユニットMUの断面図である。図示するように、フラッシュメモリセルMC0〜MC3が、選択ゲートS2とS1との間に順次設けられている。第1実施形態と同様に、フラッシュメモリセルMCはソース領域及びドレイン領域となるn型不純物拡散層を有しない。
【0109】
更に本実施形態では、選択ゲートS1とこれに隣接するフラッシュメモリセルMC3との間、及び選択ゲートS2とこれに隣接するフラッシュメモリセルMC0との間に、ダミーセルDCが形成されている。ダミーセルDCは、フラッシュメモリセルMCと同様の構造を有しているが、実際にデータを保持するためには用いられないセルである。すなわちダミーセルDCは、電荷蓄積層(例えば浮遊ゲートFG)と、電荷蓄積層上にゲート間絶縁膜22を介在して設けられた制御ゲートCGとを含む積層ゲートを備えている。そして、制御ゲートCGはダミーワード線DWLに接続され、例えばロウ制御回路3によって電圧が供給される。そして、ダミーセルDCもフラッシュメモリセルMCと同様に、ソース及びドレイン領域となるn型不純物拡散層を有しない。従って、選択ゲートS1、S2とダミーセルDCとの間には、n型不純物拡散層13は存在しない。
【0110】
フラッシュメモリセルMC0〜MC3及びダミーセルDCの積層ゲートの周囲は絶縁膜30によって取り囲まれ、隣接するフラッシュメモリセルMCの積層ゲート間の領域は絶縁膜30によって完全に埋め込まれている。また、選択ゲートS1、S2のゲート電極の周囲も絶縁膜30によって取り囲まれている。更に、ダミーセルDCの積層ゲートと、選択ゲートS1、S2のゲート電極との間の領域には、絶縁膜32が埋め込まれている。絶縁膜30、32は、例えばシリコン酸化膜などである。
【0111】
以上の構成において、選択ゲート線SGD、SGS、ワード線WL0〜WL3、及びダミーワード線DWLに電圧を印加して、NAND型メモリユニットMUを導通させた際の様子を図19に示す。図19はNAND型メモリユニットMUの断面図であり、図18で説明した領域と対応している。図19の例では、ワード線WL0〜WL3には、第1実施形態で説明したように電圧Vcg1またはVcg2が印加される。ダミーワード線DWLには、Vcg0が印加される。Vcg0は、Vcg1と同等かそれよりも高い電圧である。
【0112】
図示するように、フラッシュメモリセルMC0〜MC3には反転層CP0〜CP3がそれぞれ形成され、これらは隣接するもの同士で接触する。また、選択ゲートS1、S2においても反転層CPsgが形成される。これらは第1実施形態と同様である。
【0113】
更に本実施形態では、ダミーセルDCによって、p型ウェル12におけるダミーセルDCの積層ゲート直下の領域にも反転層CPxが形成される。そして、反転層CP3とCPsgは反転層CPxによって接続され、また反転層CP0とCPsgも反転層CPxによって接続される。この結果、NAND型メモリユニットMUが導通する。
【0114】
その他の構成及び動作は第1実施形態で説明した通りである。
【0115】
図20は、図19においてVcg1=Vcg2=6Vとし、DWL(Vcg0)=14V(>VPASS)とし、SGD=2Vとした際のNAND型メモリユニットMUの断面図であり、特にp型ウェル12内における電子濃度分布のシミュレーション結果を示している。図示するように、NAND型メモリユニットMUにおけるp型ウェル12の表面に沿って、電子濃度の高い領域、すなわち電流パスが形成されている。
【0116】
また図21は、図20において、ダミーワード線DWLの電圧を6V、10V、14Vとした場合のNAND型メモリユニットMUにおけるVI特性を示すグラフである。図21は、ビット線BLに0.7Vを印加した際に、選択ゲート線SGDの電圧Vsgを0〜2Vの間で変化させた際の、選択ゲートS1に流れる電流をIdrain(ビット線BLからソース線C-sourceに流れる電流)をシミュレーションしたグラフである。選択ゲート線SGDと、これに隣接するダミーワード線DWLとの間隔は、例えば80nmである。図中では、第1実施形態と同様にAsなどを用いてn型不純物拡散層を形成した場合(Reference)を合わせて示している。図示するように、ダミーワード線DWLに電圧を与えることで、n型不純物拡散層を設けた場合とほぼ同様の特性が得られる。そしてダミーワード線DWLに印加する電圧は大きいほど好ましい。
【0117】
図22は、本実施形態に係るブロックBLOCKの一部領域の回路図である。図示するように、同一行にあるダミーセルDCは、同一のダミーワード線DWLに接続される。
【0118】
<効果>
以上のように、第6実施形態に係る構成であると、選択ゲートS1のソース領域及び選択ゲートS2のドレイン領域を排しつつ、NAND型メモリユニットMUを確実に導通させることが出来る。本効果につき、以下説明する。
【0119】
第5実施形態で説明したように、選択ゲートS1、S2とこれに隣接するフラッシュメモリセルMCとの間のn型不純物拡散層を排すると、NAND型メモリユニットにおけるMUが導通出来なくなるおそれがある。
【0120】
この点、本実施形態に係る構成であると、隣接する選択ゲートS1、S2とフラッシュメモリセルMCとの間に、ダミーセルDCを設けている。そしてダミーセルDCによって、p型ウェル12に反転層CPxを形成している。ダミーセルDCはフラッシュメモリセルMCと同じサイズで形成される。従って、ダミーワード線DWLと選択ゲート線SGD、SGSの間隔は、隣接するワード線WLの間隔よりも大きい。
【0121】
そこで本実施形態では、ダミーワード線DWLに例えばVPASSまたはVcg1以上の電圧を印加する。これにより、ダミーセルDCによって形成される反転層CPxは、p型ウェル12内に広く拡がり、これにより、選択ゲートS1、S2とフラッシュメモリセルMCとの間の電気的接続を図ることが出来る。
【0122】
<変形例>
なお、図18〜図22では、ワード線WLとこれに隣接する選択ゲート線SGD、SGS間のダミーセルDCの数が1個である場合を例に説明した。しかし、ダミーセルDCは複数個あっても良い。
【0123】
図23は、上記ダミーセルDCの数を2個にした場合のメモリセルアレイ1の回路図である。図示するように、選択ゲートS1とフラッシュメモリセルDCとの間には、2つのダミーセルDCが設けられ、それぞれダミーワード線DWL0、DWL1に接続されている。また選択ゲートS2とフラッシュメモリセルDCとの間にも、2つのダミーセルDCが設けられ、それぞれダミーワード線DWL0、DWL1に接続されている。
【0124】
以上の構成において、選択ゲート線S1、S2に近いダミーワード線DWL0に対しては、ダミーワード線DWL1よりも高い電圧が印加される。例えば、ダミーワード線DWL0にはVPASSまたはVcg1よりも高い電圧が印加され、ダミーワード線DWL1にはVPASSまたはVcg1と同等の電圧が印加される。
【0125】
なお、選択ゲート線S1、S2と、これに隣接するワード線WLとの間に設けるダミーワード線DWLの数は3本以上であっても良い。この場合も、選択ゲート線S1、S2に近いダミーワード線DWLほど、印加される電圧は高くされる。
【0126】
これにより、ワード線WLとダミーワード線DWLとの間に発生する電位差を小さくでき、NAND型フラッシュメモリの動作信頼性を向上出来る。
【0127】
また、ダミーワード線DWLに印加する電圧は適宜選択可能である。例えば図22においては、データの読み出し時にはダミーワード線DWLの電圧Vcg0の値を電圧Vcg1以上とし、書き込み時には電圧VPASS以上としても良いし、データの読み出し時と書き込み時とで同じ値の電圧としても良い。前述の通り、電圧Vcg1も電圧VPASSも、共に保持するデータに関わらずフラッシュメモリセルMCをオンさせる電圧である。
【0128】
また、本実施形態においても、第3実施形態のようにSOI基板を用いても良いし、または第4実施形態のように基板電位Vsubを与えても良いし、これらを適宜組み合わせても良い。
【0129】
更に、本実施形態に係る構成であると、選択ゲートS1、S2を排しても良い。すなわち、ダミーワード線DWLに印加する電圧によりダミーセルDCのオン/オフを制御することで、ダミーセルDCを選択ゲートS1、S2として機能させることも出来る。逆に、選択ゲートS1、S2に、ダミーセルDCと同様の機能を持たせても良い。すなわち、選択ゲートS1、S2をオンさせる際に、選択ゲート線SGD、SGSに対して電圧Vcg0を印加するようにしても良い。これにより、選択ゲートS1、S2によって形成される反転層は大きく延びることが出来、ダミーセルDCを設けることなく、本実施形態の効果が得られる。
【0130】
以上のように、上記第1乃至第6実施形態に係る構成であると、NAND型フラッシュメモリは、メモリセルMCと、第1絶縁膜30とを備える。メモリセルMCは、半導体基板10上に複数、隣接して設けられ、電荷蓄積層FGを有する第1ゲート電極(FG、CG)を備える。第1絶縁膜30は、隣接するメモリセルMCの第1ゲート電極間の領域を埋め込むようにして半導体基板10上に形成される。半導体基板10は少なくとも表面領域に、動作対象となる選択メモリセルMCn(図7)以外の非選択メモリセルMCn−1、MCn+1(図7)の第1ゲート電極に電圧Vcg1、VPASSが印加された際に、前記選択メモリセルMCn(図7)のソース領域またはドレイン領域として機能する電流パスCPn−1、CPn+1(図7)が形成される第1不純物領域12を備える。
【0131】
本構成により、メモリセルMCにおいてソース及びドレインとして機能する不純物拡散層を不要としつつ、メモリセルMCをMOSトランジスタとして機能させることが出来る。その結果、非常に微細化が進展したNAND型フラッシュメモリにおいても、その動作信頼性を向上出来る。
【0132】
なお、上記した各実施形態においては、いずれの場合も、対のビット線ごとにセンスアンプ回路が接続された構成に限らない。例えば、各ビット線にそれぞれセンスアンプ回路200が接続されても良い。
【0133】
また、上記第1乃至第6実施形態では、p型ウェル12に注入された不純物がボロンである場合を例に説明したが、p型不純物であればボロン以外であっても良い。更に、p型不純物の濃度は、上記実施形態で説明した例に限定されるものではない。すなわち、反転層CPn−1、CPn、CPn+1を適切に接続できるか否かは、フラッシュメモリセルMCのゲート電圧、隣接するゲート間隔、及びウェルの不純物濃度等の相互関係に依存し、これらの関係は様々に設定出来る。よって、例えば図6ではゲート間隔Lsが22nmである場合を例に説明したが、これに限定されるものでは無いし、データの読み出し及び書き込み時に印加されるゲート電圧も、上記説明した値に限定されない。種々の例について、以下に説明する。
【0134】
<第1の例>
まず第1の例について説明する。図24及び図25は、隣接ゲート間隔Lsが25nm、p型ウェル12のp型不純物濃度が1E15cm−3、Vcg1=0Vとした際の、NAND型メモリユニットMUの断面図であり、特にp型ウェル12内の電子濃度分布のシミュレーション結果を示している。また図24ではVcg=5Vとされ、図25ではVcg2=1Vとされている。図24、図25に示すように、本例であると、Vcg2=5Vの際は勿論、Vcg2が1Vまで低下しても、反転層が残存する。
【0135】
<第2の例>
次に第2の例について説明する。図26乃至図28は、隣接ゲート間隔Lsが25nm、p型ウェル12のp型不純物濃度が1E18cm−3、Vcg1=0Vとした際の、NAND型メモリユニットMUの断面図であり、特にp型ウェル12内の電子濃度分布のシミュレーション結果を示している。また図26ではVcg=5Vとされ、図27ではVcg2=3Vとされ、図28ではVcg2=1Vとされている。図26に示すように、Vcg2=5Vの際には反転層が形成されている。しかし図27に示すように、Vcg2=3Vになると反転層は消失し始め、Vcg2=1Vでは反転層は完全に消失する。よって、この場合には、第1の例に比べてVcg2を十分に高くする必要がある。
【0136】
<その他の例>
次にその他の例について説明する。図29及び図30は、Ls=25nm、Vcg1=0V、Vcg2=1Vとした際の、NAND型メモリユニットMUの断面図であり、特にp型ウェル12内の電子濃度分布のシミュレーション結果を示している。図29ではp型ウェル12のp型不純物濃度が1E16cm−3とされ、図30では1E17cm−3とされている。図示するように、p型不純物濃度以外の条件が同じであれば、p型不純物濃度の低い図29の例の方が、図30の例よりも十分に反転層が形成されることが分かる。
【0137】
また、第2実施形態では、図9(a)においてp型ウェル12が低濃度領域12aと高濃度領域12bとを含む2層構造であり、低濃度領域12aの深さが20nmである場合を例に説明した。しかし、低濃度領域12aの深さは20nmに限らず、上記図24乃至図30で説明したような空乏層の延び方に応じて適宜設定出来る。このことは第3実施形態でも同様である。またp型ウェル12は、3層構造または4層構造として、表面から深くなるにつれてp型不純物濃度が高くなるようにしても良い。更にp型ウェル12は、複数の層に明確に分離されている必要は無く、例えば表面から深くなるにつれてp型不純物濃度が連続的に増加するような不純物濃度プロファイルを有するように形成されても良い。
【0138】
更に第3実施形態では、図11を用いてSOI基板を用いる例について説明した。しかし絶縁層23は、必ずしもシリコン酸化膜に限られるものでは無く、その他の絶縁膜であっても良い。
【0139】
更に第4実施形態では、図12を用いて基板電圧Vsubとして−5Vを印加してデータを読み出す場合を例に説明した。しかし基板電圧Vsubは−5Vに限らず、適宜設定できる。また負電圧に限らず、空乏層の延び方等によっては正電圧であっても良い。また、書き込み動作時にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0140】
更に第5実施形態では、高誘電体層31としてHfO及びアルミナを使用し、また代わりにSiNを使用する例について説明した。しかし、これらの材料に限らず、選択ゲート線及びワード線とのカップリングにより電位が上昇され、これにより反転層CPxを形成出来る材料であれば限定されるものではない。
【0141】
更に第6実施形態においては、ダミーワード線DWLに印加する電圧Vcg0が、VPASSまたはVcg1より大きい場合を例に説明した。しかしながら、反転層CPxを十分に延ばして反転層CP0、CP3とCPsgを適切に接続できる電圧であれば、これに限定されるものではない。
【0142】
また、上記第1乃至第6実施形態はNAND型フラッシュメモリを例に挙げて説明したが、微細化が進展してソースとドレインとの短絡が問題となるような半導体メモリであれば、全般に適用可能である。
【0143】
その他、本願発明は、上記(各)実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記(各)実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。たとえば、(各)実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題(の少なくとも1つ)が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果(の少なくとも1つ)が得られる場合には、その構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0144】
1…メモリセルアレイ、2…カラム制御回路、12…p型ウェル、12a…低濃度領域、12b…中濃度領域、13…n型不純物拡散層、21…トンネル酸化膜、22、30、32…絶縁膜、23…SOI領域、31…高誘電体層、200…センスアンプ回路、BL(BLe,BLo)…ビット線、MC(MCn−1,MCn,MCn+1)…フラッシュメモリセル、WL…ワード線、FG(FGn−1,FGn,FGn+1)…浮遊ゲート、CG(CGn−1,CGn,CGn+1)…制御ゲート、CPn−1,CPn,CPn+1、CPx、CPsg…反転層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
電荷蓄積層を有する第1ゲート電極を備え、前記半導体基板上において隣接して配列された複数の不揮発性のメモリセルと、
隣接する前記メモリセルの前記第1ゲート電極間の領域を埋め込むようにして前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜と
を具備し、前記半導体基板は少なくとも表面領域に、動作対象となる選択メモリセル以外の非選択メモリセルの第1ゲート電極に電圧が印加された際に、前記選択メモリセルのソース領域またはドレイン領域として機能する電流パスが形成される第1不純物領域を備える
ことを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記半導体基板は、前記第1不純物領域の下層に設けられ、且つ前記第1不純物領域よりも高い不純物濃度を有する第2不純物領域を更に備え、
前記第1不純物領域の深さは、前記第1ゲート電極に前記電圧が印加された際に前記第1不純物領域に形成される空乏層の底部が前記第2不純物領域に達するように設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記半導体基板は、前記第1不純物領域の下層に設けられた絶縁体層を更に備え、
前記第1不純物領域の深さは、前記第1ゲート電極に前記電圧が印加された際に前記第1不純物領域に形成される空乏層の底部が前記絶縁体層に達するように設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
読み出し動作時に、前記メモリセルに第1の電圧及び第2の電圧を印加する第1の電圧回路を更に備え、
前記第1の電圧回路によって、前記選択メモリセルの第1ゲート電極に前記第1の電圧が印加され、前記非選択メモリセルの第1ゲート電極に前記第2の電圧が印加されると、前記選択メモリセルのデータに応じて、前記選択メモリセルと前記非選択メモリセルとを相互に接続する電流パスが、前記第1不純物領域の表面内に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記読み出し動作時に、前記半導体基板に第3の電圧を印加する第2の電圧回路を更に備える
ことを特徴とする請求項4に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項6】
前記半導体基板上に、いずれかの前記メモリセルと隣接して設けられ、第2ゲート電極を備えた選択ゲートと、
前記半導体基板上に、前記いずれかのメモリセルの前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との間の領域を埋め込むようにして設けられ、シリコン酸化膜よりも高い誘電率を有する第2絶縁膜と
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項7】
前記半導体基板上に、いずれかの前記メモリセルと隣接して設けられ、電荷蓄積層を有する第2ゲート電極を備えた第1ダミー素子と、
前記半導体基板上に、前記第1ダミー素子と隣接して設けられ、第3ゲート電極を備えた選択ゲートと
を更に備え、データの書き込み時において、前記非選択メモリセルの前記第1ゲート電極には保持するデータに関わらず該非選択メモリセルをオンさせる第1電圧が印加され、前記選択メモリセルの前記第1ゲート電極には前記第1電圧よりも高い第2電圧が印加され、
前記第1ダミー素子は、前記第1電圧よりも高い第3電圧が前記第3ゲート電極に印加されることにより、隣接する前記メモリセルと前記選択ゲートとを接続する電流パスを形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項8】
前記半導体基板上に、前記いずれかのメモリセルと前記第1ダミー素子との間に設けられ、電荷蓄積層を有する第4ゲート電極を備えた第2ダミー素子を更に備え、
前記第2ダミー素子は、前記第3電圧よりも低い第4電圧が前記第4ゲート電極に印加されることにより、隣接する前記メモリセルと前記第1ダミー素子とを接続する電流パスを形成する
ことを特徴とする請求項7に記載の不揮発性半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−23705(P2011−23705A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98188(P2010−98188)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】