説明

両性イオン構造要素を含む粒子

本発明は、一般式[1]〜[3]すなわち−NR−B−A[1]、=NR−B−A[2]、≡N−B−A[3]から選択される少なくとも1つの構造要素と、一般式[1]〜[3]のプロトン化および脱プロトン化の形態の構造要素とを含み、Aが‐SOスルホン酸基、‐C(O)Oカルボン酸基、または‐P(O)(OR)Oホスホン酸基であり、Bが(CRの任意選択的に置換されたアルキル基、アリール基、またはヘテロ原子を間に挟むヘテロアリール基であり、RおよびRが水素基、または任意選択的に置換された炭化水素基であり、Rが水素基、ハロゲン基、または任意選択的に置換された炭化水素基であり、mが1、2、3、4、または5の値であることを特徴とし、一般式[2]の窒素原子が環内窒素原子として脂肪族複素環の一部であること、および一般式[3]の窒素原子が環内窒素原子として芳香族複素環の一部であることを条件とする粒子(PS)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に複合材料における、表面上に両性イオン構造要素を有する粒子と、その生成および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックスに添加したときに、その性質を変える微粒子を充填剤と呼ぶ。充填剤は、現在化学工業において多様な目的で使用されている。充填剤は、プラスチックの機械的特性(硬度、引裂強さ、耐化学薬品性、電気・熱・イオン伝導性、接着性、または熱膨張係数等)を変え得る。充填剤の表面改良により、概して充填剤のマトリックスへの相溶性が影響を受け、結果として複合材の特性プロフィールが著明に改善され得る。好適は、高分子マトリックスに反応する改良充填剤を用いることである。このように、例えばカルビノール官能性粒子は、イソシアネート官能性樹脂と共有結合的に結合させてもよい。このような充填剤の高分子マトリックスへの化学的組込みは、例えば機械的増強等、特性を格段に改善することが多い。極性またはイオン性の充填剤が適切な極性またはイオン性のマトリックスに組み込まれると、高分子は機械的に相当増強される。この場合、機械的増強は、充填剤とマトリックスとの間の純然たる物理的相互作用(イオン性相互作用、双極子-双極子相互作用等)によって達成され得る。
【0003】
例えば、従来のプロトン伝導性高分子電解質膜(PEM)は、使用されている通り、プロトン伝導性官能基、特にスルホン酸基またはアミノ基を共有結合した高分子から構成される燃料電池を作製するために使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高分子電解質膜を燃料電池で使用する際にしばしば生じる問題は、膜の機械的安定性が低いことである。しかし、とりわけ燃料として使用されるガスの圧に対して膜の機械的安定性が高いことは、燃料電池を産業的に使用するには絶対必要である。特に高分子電解質膜を自動車用燃料電池で使用する場合、極めて高い機械的ストレスに耐え得る膜材料が必要である。
【0005】
この問題を解決する特に有利な方法は、高分子マトリックスを機械的に増強し得る充填剤を使用することである。充填剤が表面上にプロトン伝導性官能基をさらに有する、あるいは使用される充填剤が真性導電率を有する場合は、複合膜のプロトン伝導性の改善と機械的安定性の改善が見込まれる。さらに、適切な充填剤を使用すると、燃料には不要な透過性を抑制し得る。
【0006】
プロトン伝導性高分子および無機粒子を含むこのような複合膜は文献より周知である。このように、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5には、プロトン伝導性有機高分子および未改良または改良された無機充填剤を含む混合物について記載されている。使用される充填剤は、とりわけ未改良のシリカゾル、アミノアルキル官能性シリカゾル、およびスルホン酸基を有するシリカゾルであり、使用される有機高分子は、スルホン化パーフルオロ炭化水素およびスルホン化ポリエーテルケトンである。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0053060号明細書
【特許文献2】米国特許第5919583号明細書
【特許文献3】国際公開第0045447号
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0053818号明細書
【特許文献5】特開2001/155744号明細書
【0007】
膜の特性プロフィールは、このような粒子の組込みによって実際に相当改善され得る。しかし、先行技術に記載されているいずれのシステムにおいても、最適な結果は達成されていない。特に、相当する複合膜のプロトン伝導性は依然として満足できるものではなく、また、とりわけ不十分な弾性モジュールおよび引張強さによって示される通り、機械的安定性は産業的使用には不十分である。
【0008】
これらの特性を改善する方法として考えられるのは、陽イオン基と陰イオン基が互いに共有結合する両性イオン構造要素を有する充填剤を使用することである。複合材料を生成するためのそのような充填剤とその使用は、文献には記載されていない。
【0009】
一方、例えばアミノシランまたはアミノ官能性シロキサンとハロゲン化カルボン酸またはアルキルスルトンとを反応させることによって得られる両性イオン構造要素を有するシランおよびシロキサンについては、文献より周知である。
【0010】
非特許文献1には、アミノプロピルトリエトキシシランまたはN‐アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランと1,3‐プロパンスルトンとの反応による2種類の両性イオン性アルコキシシランの調製について記載されている。
【非特許文献1】J.Appl.Polym.Sci.1975,19,1221‐1225,LITT et al.
【0011】
特許文献6および特許文献7には、ω‐ハロアルキル‐カルボキシレートを用いてアミノアルキル置換ポリジメチルシロキサンを四級化することによって得られる両イオン性有機官能性シロキサンについて記載されている。
【特許文献6】独国特許第3417912号明細書
【特許文献7】独国特許第3422268号明細書
【0012】
非特許文献2には、エチレンジアミノ官能性ポリシロキサンと1,3‐プロパンスルトンとを反応させることによって得られる両イオン性ポリシロキサンについて記載されている。
【非特許文献2】J.Polymer Sci.1979,17,3559‐3572
【0013】
特許文献8および非特許文献3には、第四級アンモニオアルキルスルホネート基を含むポリシロキサンの調製と、表面活性物質としてのその使用について示されており、この表面活性物質によって水溶液の表面張力は相当減少し得る。シリコンスルホンベタインは、相当する官能化有機剤よりも著しく低い試薬濃度で表面張力を減少させる。
【特許文献8】米国特許第4918210号明細書
【非特許文献3】Langmuir 1990,6,385‐391,SNOW et al.
【0014】
特許文献9には、文献において時にシリコンスルホンベタインと呼ばれる、このような両イオン性シロキサンが記載されており、木材、金属、ポリカーボネート、およびポリスチレンへの優れた接着力から、熱可塑性エラストマーとして、とりわけシーリング剤、接着剤、およびコーティング用に適している。両イオン性シロキサンの熱可塑性特性と、特に優れた機械的特性は、隣接する両イオン性シロキサン鎖のイオン性架橋によるものである。
【特許文献9】米国特許第4496795号明細書
【0015】
本発明は、一般式[1]〜[3]
[化1]−NR‐B‐A [1]
[化2]NR‐B‐A [2]
[化3]≡N‐B‐A [3]
から選択される少なくとも1つの構造要素と、一般式[1]〜[3]のプロトン化および脱プロトン化の形態の構造要素を有する粒子(PS)とを提供するものであり、この場合、
Aはスルホン酸基‐SO、カルボン酸基‐C(O)O、またはホスホン酸基‐P(O)(OR)Oであり、
Bは(CR、または置換あるいは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ原子を間に挟むヘテロアリール基であり、
RおよびRはそれぞれ水素基、または置換あるいは無置換の炭化水素基であり、
は水素基、ハロゲン基、または置換あるいは無置換の炭化水素基であり、
mは1、2、3、4、または5であってもよく、
一般式[2]の窒素原子が環内窒素原子として脂肪族複素環の一部であること、および一般式[3]の窒素原子が環内窒素原子として芳香族複素環の一部であることを条件とする。
【0016】
本発明は、本発明の粒子(PS)が複合材料の生成、特に機械的安定性およびプロトン伝導性が、文献から既知である相当するシステムよりも著明に優れている膜を生成するのに適するという発見に基づく。この粒子(PS)は、表面上に両イオン性構造要素を有する。
【0017】
一般式[1]〜[3]の構造要素は、周囲媒体のpHによっては、例えばAのプロトン化による陽イオン形態(すべての電荷が陽である等)または非荷電形態等、両イオン性形態で存在してもよい。一般式[1]および[2]の構造要素のR基が水素である場合、その構造要素も陰イオン種として存在してもよい(基剤との反応の結果としてすべての電荷が陰である等)。以下の文では、一般式[1]〜[3]の構造要素によって官能化されたシランおよびシロキサン(S)と、同様に改良された粒子(PS)については、全電荷とは無関係に、両イオン性のシランおよびシロキサンまたは粒子と呼ぶ。
【0018】
B基は、好ましくはエチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、または相当する部分的にフッ化またはパーフルオロ化される基である。
【0019】
R基、R基、およびR基は、好ましくは水素、ハロゲン、特にフッ素または塩素、1〜10個、特に1〜6個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素である。特に好適は、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、i‐プロピル基、フェニル基、およびパーフルオロ化されたメチル基、エチル基、n‐プロピル基、およびフェニル基である。
【0020】
mは、好ましくは2、3、または4である。一般式[2]の構造要素の一部である脂肪族複素環は、好ましくは置換または無置換のアジリジン、ピロリジン、ピペラジン、またはピペリジンである。一般式[3]の構造要素の一部である芳香族複素環は、好ましくは置換または無置換のピリジン、ピロール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、キノリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ピラゾール、またはトリアゾールである。
【0021】
本発明の粒子(PS)は、規定の表面積が0.1〜1000 m/g、特に好ましくは10〜500 m/g(DIN EN ISO 9277/DIN 66132に基づきBET法により測定)である。主な粒子の平均サイズは、好ましくは10 μm未満、特に好ましくは1000 nm未満であり、主な粒子は凝集体(aggregate)(DIN 53206による定義)または凝集塊(agglomerate)(DIN 53206による定義)として存在してもよく、外部剪断応力(例、測定条件の関数として)によっては、サイズは1〜1000 μmでもよい。
【0022】
粒子(PS)において、一般式[1]〜[3]の構造要素は、イオン相互作用またはファンデルワールス相互作用を介して共有結合してもよい。一般式[1]〜[3]の構造要素は、好ましくは共有結合する。
【0023】
本発明は、粒子(PS)を作製するプロセスをさらに提供し、この場合、粒子(P)は一般式[1]〜[3]の少なくとも1つの構造要素を有するシランまたはシロキサン(S)と反応する。
【0024】
粒子(PS)を作製するのに特に好適なプロセスにおいて、金属‐OH、金属‐O‐金属、Si‐OH、Si‐O‐Si、Si‐O‐金属、Si‐X、金属‐X、金属‐OR、Si‐ORから選択される基を有する粒子(P)は、一般式[1]〜[3]の少なくとも1つの構造要素と、粒子(P)の表面基に反応を示す少なくとも1つの反応性シリル基
≡Si‐Y
とを有するシラン、シロキサン(S)、あるいはこれらの加水分解、アルコール分解、および縮合による生成物と反応するものであり、この場合、
は置換または無置換のアルキル基であり、
Xはハロゲン原子であり、
Yはハロゲン基、ヒドロキシ基、またはアルコキシ基、カルボン酸基、またはエノラート基であり、
一般式[2]の窒素原子が環内窒素原子として脂肪族複素環の一部であって、この脂肪族複素環を介してシランまたはシロキサン(S)との共有結合が生じる、もしくは一般式[3]の窒素原子が環内窒素原子として芳香族複素環の一部であって、この芳香族複素環を介してシランまたはシロキサン(S)との共有結合が生じることを条件とする。
【0025】
は、好ましくは、1〜10個、特に1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。特に好適は、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、i‐プロピル基である。
【0026】
Xは、好ましくはフッ素または塩素である。
【0027】
好適には、Y基はそれぞれハロゲン基、ヒドロキシ基、またはアルコキシ基である。Y基は、特に好ましくは塩素原子、ヒドロキシ基、エトキシ基、またはメトキシ基である。
【0028】
本発明は、粒子(PS)を作製するプロセスをさらに提供するものであり、その場合、粒子合成時に一般式[1]〜[3]の構造要素の結合が生じる。ここで、一般式[1]〜[3]の構造要素は、粒子の生成に加わっている合成構成単位の一部であってもよい。
【0029】
代替として、粒子(PS)の生成は、2段階プロセスで実行し得る。第1段階において、粒子(P)は有機官能性試薬と反応し、有機官能性粒子(P’)を形成する。続いて粒子(P’)の有機性基は、第2段階におけるさらなる試薬との反応によって一般式[1]〜[3]の構造要素へ変換され得る。例えば、粒子(P)はアミノ官能性シランとの反応によってアミノ官能性粒子(P’)へ変換され、この粒子は次に1,3‐プロパンスルトンとの反応によって、一般式[1]の構造要素を含む粒子(PS)へ変換される。
【0030】
産業的に取り扱いやすいという理由から、適切な粒子(P)とは、例えば第3主族元素(酸化したホウ素、アルミニウム、ガリウム、またはインジウム等)、第4主族元素(二酸化ケイ素、二酸化ゲルマニウム、酸化スズ、二酸化スズ、酸化鉛、二酸化鉛等)、第4遷移族元素(酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化ハフニウム等)の酸化物など、金属‐酸素結合において共有結合成分を有する酸化物である。さらなる実施例は、酸化したニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム、およびバナジウムである。
【0031】
さらに、酸化した表面を有する金属、ゼオライト(適するゼオライトは、非特許文献4の一覧で確認できる)、ケイ酸塩、アルミン酸塩、アルミノリン酸塩、チタン酸塩、およびケイ酸アルミニウム層(ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト等)が適しており、好ましくは粒子の規定の表面積は0.1〜1000 m/g、特に好ましくは10〜500 m/g(DIN 66131および66132に基づきBET法により測定)である。粒子(P)は、好ましくは平均径が10 μm未満、特に好ましくは1000 nm未満であり、凝集体(DIN 53206に基づく定義)または凝集塊(DIN 53206による定義)として存在してもよく、外部剪断応力(例、測定条件の関数として)に基づけば、サイズは1〜1000 μmでもよい。
【非特許文献4】Atlas of Zeolite Framework Types, 5th edition,Ch.Baerlocher,W.M.Meier D.H.Olson,Amsterdam:Elsevier 2001
【0032】
粒子(P)として、特に好適は、有機ケイ素化合物(四塩化ケイ素、メチルジクロロシラン、ヒドロゲントリクロロシラン、ヒドロゲンメチルジクロロシラン、他のメチルクロロシラン、またはアルキルクロロシラン等から、もしくは炭化水素との混合物において)から炎色反応において生じる発熱性シリカ、または記載した種類の有機ケイ素化合物と炭化水素との揮発性または噴霧可能な混合物(水素‐酸素フレームまたは一酸化炭素‐酸素フレーム等において)である。シリカは、水添加の有無によらず、例えば精製ステップにおいて作製され得る。好適は、水は添加しない。
【0033】
発熱性シリカまたは二酸化ケイ素は、例えば非特許文献5より周知である。
【非特許文献5】Ullmann's Enzyklopadie der Technischen Chemie 4th edition,volume 21,page 464
【0034】
DIN EN ISO 9277/DIN 66132に基づいて測定した未改良の発熱性シリカの規定のBET表面積は、10 m/g〜600 m/g、好ましくは50m/g〜400 m/gである。
【0035】
DIN EN ISO 787‐11に基づいて測定した未改良の発熱性シリカのかさ密度は、10 g/l〜500 g/l、好ましくは20 g/l〜200 g/l、特に好ましくは30 g/l〜100 g/lである。
【0036】
発熱性シリカは、好ましくは2.3以下、特に好ましくは2.1以下、さらに特に好ましくは1.95〜2.05の表面フラクタル次元を好ましくは有し、その表面フラクタル次元Dの定義は、粒子表面積Aは粒子の半径RのD乗に比例するものとする。
【0037】
シリカは、例えば非特許文献6で示される通り、好ましくは2.8以下、好ましくは2.3以下、特に好ましくは1.7〜2.1の質量Dのフラクタル次元を好ましくは有する。質量Dのフラクタル次元の定義は、粒子質量Mは粒子の半径RのD乗に比例するものとする。
【非特許文献6】F.Saint‐Michel,F.Pignon,A.Magnin,J.Colloid Interface Sci.2003,267,314
【0038】
未改良のシリカは、好ましくは非特許文献7に記載されている方法により測定した表面のシラノール基の密度が2.5 SiOH/nm未満、好ましくは2.1 SiOH/nm未満、好ましくは2 SiOH/nm未満、特に好ましくは1.7〜1.9 SiOH/nm未満である。
【非特許文献7】G.W.Sears,Anal.Chem.28(1956)1981
【0039】
湿式化学法または高温(> 1000℃)で調製されるシリカを使用することができる。特に好適は、発熱性シリカである。一時的に保管されていて、バーナーから直接新たに調製された形態または包装されて販売されている形態の親水性シリカも使用することができる。疎水化酸化金属またはシリカ(販売用シリカ等)を使用してもよい。
【0040】
様々な酸化金属またはシリカの混合物(酸化金属または様々なBET表面積を有するシリカの混合物等)または疎水化あるいはシリル化の程度が異なる酸化金属の混合物も使用できる。
【0041】
本発明のさらに好適な実施形態においては、水性または有機性溶媒中でミクロン以下のサイズである相当する酸化物粒子の分散物として概して存在するコロイド状ケイ素または酸化金属が、粒子(P)として使用される。この場合、とりわけ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム、スズ等の金属の酸化物または相当する混合酸化物を使用することもできる。特に好適は、シリカゾルである。粒子(PS)を作製するのに適する市販のシリカゾルの実施例は、LUDOX(登録商標)(Grace Davison)、Snowtex(登録商標)(Nissan Chemical)、Klebosol(登録商標)
(Clariant)、およびLevasil(登録商標)(H.C.Starck)の製品シリーズのシリカゾルまたはStoberプロセスにより調製され得るシリカゾルである。
【0042】
本発明のさらに好適な実施形態においては、一般式[4]
[化4]
[RSiO1/2[RSiO2/2[RSiO3/2[SiO4/2 [4]
がオルガノポリシロキサンである場合、
は1〜18個の炭素原子を有するOH基、すなわち無置換またはハロゲン置換、ヒドロキシル置換、アミノ置換、エポキシ置換、ホスホナト置換、チオール置換、(メタ)アクリル置換、カルバマート基、またはNCO置換の炭化水素基であり、この炭素鎖は隣接しない酸素、硫黄、またはNR3’基を挟んでいて、
3’はRの意味も有し、
i、j、k、lは、それぞれ0以上であり、
i+j+k+lは3以上、特に10以上であることと、少なくとも1個のR基がOH基であることを条件として、このオルガノポリシロキサンを粒子(P)として使用する。
【0043】
本発明の好適な実施形態においては、粒子(P)を改良するために使用するシラン(S)は、一般式[5]
[化5]
(RO)3‐aSi‐(CH‐NR‐(CH2)m‐A [5]
に相当する構造を有し、この場合、
aは0、1、または2であり、
nは1、2、または3であり、
はRの意味も有し、R、A、およびmは一般式[1]〜[4]で規定された意味を有する。
【0044】
nは、好ましくは1または3である。
【0045】
本発明のさらに好適な実施形態においては、粒子(P)を改良するために使用するシラン(S)は、一般式[6]
[化6]
(RO)3−aSi‐(CH‐および‐(CH‐A [6]
に相当する構造を有し、この場合、
Kは、少なくとも1個の四価の窒素(≡N‐)を有する置換または無置換のアリール基またはヘテロアリール基であり、
aは0、1、または2であり、
nは1、2、または3であり、
、A、m、およびaは、一般式[1]〜[3]および[5]で規定された意味を有すると考えられる。
【0046】
k基は、好ましくはイミダゾリウム、ベンゾイミダゾリウム、ピリジニウム、8‐メルカプトキノリニウム、2‐メルカプトベンゾイミダゾリウム、2‐メルカプトベンゾキサゾリウム、2‐メルカプトベンゾチオゾリウム、3,5‐ジメチルピラゾリウム、1,2,4‐トリアゾリウム、またはインドリニウムなどの基である。一般式[6]における基(RO)3−aSi‐(CH‐K‐(CH‐Aは、好ましくはk基のヘテロ原子である硫黄および/または窒素または炭素原子を介して結合する。
【0047】
本発明のさらに好適な実施形態においては、粒子(P)を改良するために使用するシロキサン(S)は、一般式[7]
[化7]
[RSiO1/2[RSiO2/2[RSiO3/2[SiO4/2 [7]
に相当する構造を有し、この場合、
は水素基、または置換あるいは無置換の炭化水素基であり、少なくとも1個のハロゲン、OH基、またはアルコキシ基と、一般式[1]〜[3]の少なくとも1つの構造要素とを有し、
w、x、y、zは、それぞれ0以上であり、
w+x+y+zは3以上、特に10以上であることと、少なくとも1個のR基がOH基であることを条件とする。
【0048】
好ましくは粒子(P)を改良するために使用するシラン(S)の実施例は、一般式[H1]〜[H30]の化合物であり、ここではAは公式[1]〜[3]で示される基の1つである。







【0049】
シランおよびシロキサン(S)は、好ましくは相当するアミノ官能性シランまたはシロキサン(S0)と、一般式[8]のアルキルスルトン、一般式[9]のラクトン、一般式[10]のω‐ハロアルキルカルボキシレート、一般式[11]のω‐ハロアルキルスルホネート

[化8]
‐O‐SO [8]
[化8]
‐O‐C(O) [9]
[化9]
‐(CR‐C(O)OD [10]
[化10]
‐(CR‐SOD [11]
と反応させることによって入手するものであり、この場合、
は置換または無置換の直鎖状または分枝状の脂肪族炭化水素基であり、
は塩素、臭素、またはヨウ素であり、
Dは水素、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、R基およびmは公式[1]〜[3]で規定された意味を有すると考えられる。
【0050】
は、好ましくは直鎖状の無置換またはフッ素置換のアルキル基である。
【0051】
代替プロセスにおいては、エポキシ基官能性またはクロロアルキル官能性のシランまたはシロキサン(S1)は、一般式[12]のアミノアルキルカルボキシレートまたは一般式[13]のアミノアルキルスルホネート、または一般式[17]のアミノアルキルホスホネート
[化11]
N‐B‐C(O)OD [12]
[化12]
N‐B‐SOD [13]
[化13]
N‐B‐P(O)(OR)OD [17]
と反応させるものであり、この場合、Dは水素、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、R、B、およびRは一般式[1]〜[3]で規定された意味を有する。
【0052】
A=P(O)(OR)Oである一般式[1]〜[3]の構造要素を含むシランおよびシロキサン(S)は、好ましくは2段階プロセスで作製する。第1段階において、アミノ官能性シランまたはシロキサン(S0)と、一般式[14]のビニル官能性リン酸エステル、一般式[15]のジアルキルホスホネート官能性カルボン酸エステルまたは一般式[16]のω‐ハロアルキルホスホネート
[化14]
C=CR‐P(O)(OR [14]
[化15]
X‐B‐P(O)(OR [15]
[化16]
‐O‐C(O)‐B‐P(O)(OR [16]
とを反応させることによってアミノ官能性リン酸エステルを作製し、この場合、
はハロゲン原子、好ましくはフッ素または塩素であり、B、R、およびRは一般式[1]〜[3]で規定された意味を有すると考えられる。
【0053】
第2ステージにおいて、アミノ官能性リン酸エステルを加水分解してアンモニオアルキルホスホネート官能性シランおよびシロキサン(S)を得る。ホスホネート基の加水分解は、例えば非特許文献8に記載の方法によって実行する。
【非特許文献8】BARNES et al.in J.Org.Chem.1960,25,1191‐1194
【0054】
これらの反応において、一般式[1]〜[3]の構造要素が形成される。反応は、触媒の有無によらず実行してもよいが、好適は触媒を用いずに反応を実行することである。反応は、バルク中または溶媒中のいずれかで実行できる。一般式[8]〜[17]の試薬は、シランおよびシロキサン(S0)の窒素原子の数次第で、またはシランおよびシロキサン(S1)のエポキシ基またはクロロアルキル基の数次第で、不足等量、等モル量、または過剰量にて使用できる。好適な変形体においては、一般式[8]〜[17]の試薬は、等モル量にて使用する。
【0055】
一般式[8]〜[17]の有用な化合物の実施例は、1,3‐プロパンスルトン、1,4‐ブタンスルトン、ジヒドロフラン‐2‐オン、テトラヒドロピラン‐2‐オン、オキセパン‐2‐オン、クロロ酢酸とそのナトリウムおよびカリウム塩、ブロモ酢酸とそのナトリウムおよびカリウム塩、N,N‐ジメチルグリシン、クロロメタンスルホン酸とそのナトリウムおよびカリウム塩、ブロモメタンスルホン酸とそのナトリウムおよびカリウム塩、ジエチルブロモメチルホスホネート、ジエチルビニルホスホネート、メチル‐3‐ジエトキシホスホリルプロピオン酸、ナトリウム2‐アミノプロピオン酸、タウリンとそのアルキル化誘導体および塩、2‐アミノベンゼンスルホン酸、3‐アミノベンゼンスルホン酸、4‐アミノベンゼンスルホン酸、3‐アミノプロパンスルホン酸、3‐アミノプロパンスルホン酸とそのナトリウムおよびカリウム塩、3‐アミノプロパンホスホン酸である。
【0056】
使用するアミノ官能性シランの実施例は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、オルト‐アミノフェニルトリエトキシシラン、メタ‐アミノフェニルトリエトキシシラン、パラ‐アミノフェニルトリエトキシシラン、オルト‐アミノフェニルトリメトキシシラン、メタ‐アミノフェニルトリメトキシシラン、パラ‐アミノフェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N‐ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N‐ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルメチルジメトキシシラン、アミノメチルジメチルメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルメチルジエトキシシラン、アミノメチルジメチルエトキシシラン、シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、アニリノメチルトリメトキシシラン、N‐ピペラジノメチルトリメトキシシラン、N‐ピペラジノメチルトリエトキシシラン、N‐ピペラジノメチルメチルジメトキシシラン、N‐ピペラジノメチルメチルジエトキシシラン、N‐ピペラジノメチルジメチルメトキシシラン、N‐ピペラジノメチルジメチルエトキシシラン、N,N‐ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、N‐ベンゾイミダゾリルプロピルトリメトキシシラン、N‐ベンゾイミダゾリルプロピルトリエトキシシラン、N‐イミダゾリルトリメトキシシラン、N‐イミダゾリルトリエトキシシラン、および非特許文献9に記載のシランである。
【非特許文献9】VORONKOV et al.in Chem.Heterocycl.Compd.2001,37,1358‐1368
【0057】
有用なアミノ官能性シロキサン(S0)は、反応性シラノール基、アルコキシシリル基、またはクロロシリル基の残留分を有するアミノ官能性の直鎖状または分枝状のポリジメチルシロキサンまたはシリコン樹脂である。
【0058】
有用なエポキシ官能性シランは、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5,6‐エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6‐エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)‐エチルトリメトキシシラン、または2‐(3,4‐エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランである。
【0059】
適するクロロシランの実施例は、クロロメチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルジメチルエトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、およびクロロプロピルトリエトキシシランである。
【0060】
本発明の粒子(PS)を作製するためには、粒子(P)をシランまたはシロキサン(S)と反応させる。反応は、好ましくは0℃〜150℃、特に好ましくは20℃〜80℃で実行する。プロセスは、溶媒を含んでも、溶媒を含まなくても、実行してよい。
【0061】
溶媒を使用する場合は、プロトン性および非プロトン性の溶媒および様々なプロトン性および非プロトン性の溶媒の混合物が適している。好適は、プロトン性溶媒(水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等)または極性非プロトン性溶媒(THF、DMF、NMP、ジエチルエーテル、またはメチルエチルケトン等)を使用することである。沸点または沸点の範囲が0.1 Mpaのときに最大120℃の溶媒または溶媒混合物が好適である。
【0062】
粒子(P)を改良するために使用するシラン(S)は、好ましくは1重量%を超える量(粒子(P)に基づき)、好ましくは5重量%を超える量、特に好ましくは8重量%を超える量で使用する。
【0063】
粒子(P)とシランおよびシロキサン(S)との反応は、減圧下、過圧下、または大気圧(0.1 MPa)で適宜実行する。反応で形成される解離生成物(アルコール等)は、減圧するあるいは温度を上げることによって、生成物中に残し得るまたは/および反応混合物から除去し得る。
【0064】
粒子(P)とシランまたはシロキサン(S)との反応において触媒を添加してもよい。この場合、このような目的で通常使用される触媒、例えば有機スズ化合物(ジブチルスズジラウラート、ジオクチルスズジラウラート 、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジアセテート、またはジブチルスズジオクトエート等)、有機チタン酸塩(チタン(IV)、イソプロポキシド等)、鉄(III)化合物(鉄(III)アセチルアセトネート等)、または他のアミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4‐ジアザビ‐シクロ[2.2.2]オクタン、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク‐7‐エン、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノン‐5‐エン、N,N‐ビス(N,N‐ジメチル‐2‐アミノエチル)メチルアミン、N,N‐ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N‐ジメチルフェニルアミン、N‐エチルモルホリン等)はすべて使用できる。酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、リン酸と、そのモノエステルおよび/またはジエステル(リン酸ブチル、リン酸イソプロピル、リン酸ジブチル等)などの有機または無機ブレンステッド酸と、塩化ベンゾイルなどの酸塩化物も、触媒として適している。触媒は、好ましくは0.01〜10重量%の濃度で使用する。様々な触媒は、純粋な形態でも、様々な触媒の混合物としても使用してよい。
【0065】
使用する触媒については、好ましくは粒子(P)とシランまたはシロキサン(S)とを反応させてから抗触媒または触媒毒の添加によって不活化すると、Si‐O‐Si基を切断し得る。この2回目の反応は使用する触媒に依存しており、不活化を省くこともできる。触媒毒の実施例は、使用する塩基を中和するために使用される酸または使用する酸を中和するために使用される塩基である。中和反応によって形成される生成物は、適宜、分離または濾過抽出される。反応生成物は、好ましくは生成物中に残る。
【0066】
水の添加は、粒子(P)とシランおよびシロキサン(S)とを反応させるためには好適となり得る。
【0067】
粒子(P)から粒子(PS)を作製するにあたって、シランまたはシロキサン(S)のほかに、さらなるシラン(S2)、シラザン(S3)、シロキサン(S4)、または別の化合物(L)を使用することもできる。シラン(S2)、シラザン(S3)、シロキサン(S4)、または別の化合物(L)は、好ましくは粒子(P)表面の官能基に対し反応性を示す。シラン(S2)およびシロキサン(S4)は、シラノール基または加水分解性シリル基のいずれかであり、後者が好適である。シラン(S2)、シラザン(S3)、およびシロキサン(S4)は有機基を有してもよいが、有機基を持たないシラン(S1)、シラザン(S3)、およびシロキサン(S4)も使用できる。シランおよびシロキサン(S)は、シラン(S2)、シラザン(S3)、またはシロキサン(S4)との混合物として使用してもよい。代替として、粒子は様々な種類のシランを用いて首尾よく官能基化し得る。適する化合物(L)は、例えばチタン(IV)イソプロポキシドまたはアルミニウム(III)ブトキシド等の金属アルコキシドである。
【0068】
特に好適は、シランを有するシランまたはシロキサン(S)と一般式[18]
[化17]
(RO)4‐b‐c‐d(R(Z)Si(R [18]
のシラン(S2)との混合物であり、この場合、
zはハロゲン原子、擬ハロゲン基、Si‐N結合アミン基、アミド基、オキシム基、アミノキシ基、またはアシルオキシ基であり、
bは0、1、2、または3であり、
cは0,1,2または3であり、
dは0、1、2、または3であり、RはRの1つの意味を有し、a+b+cは4以下である。
【0069】
ここでは、bは好ましくは0、1、2であり、cおよびdは好ましくはそれぞれ0または1である。
【0070】
シラザン(S3)またはシロキサン(S4)として、特に好適はヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、または末端が有機官能基である直鎖状のシロキサンを用いることである。
【0071】
シラン(S2)、シラザン(S3)、シロキサン(S4)または粒子(P)を改良するために使用する他の化合物(L)は、好ましくは1%重量を超える量で使用する(粒子(P)に基づき)。
【0072】
粒子(P)から粒子(PS)を作製するために一般式[4]のシロキサンを使用した場合、一般式[4]のシロキサン(P)が遊離Si‐OH基、Si‐OR基、またはSi‐X基を有するならば、加水分解および/または縮合によってシランまたはシロキサン(S)を結合させる。シロキサン(P)にSi‐O‐Si基しか存在しない場合は、シランまたはシロキサン(S)の共有結合は平衡反応によって生じ得る。平衡反応に必要とされる手順および触媒は当業者には周知であり、文献において広範に記載されている。
【0073】
粒子(P)から得られる改良粒子(PS)は、従来の方法、例えば使用する溶媒を蒸発させる、あるいは噴霧乾燥によって粉末として分離してもよい。
【0074】
代替として、粒子(PS)の分離を省いてもよい。
【0075】
さらに、好適な実施形態においては、粒子(PS)生成後に粒子を解凝集するため、粒子を解凝集するためのプロセス(ピンミリング等)またはミリングおよびスクリーニングするための装置(ピンミル、ハンマーミル、向流ミル、衝撃ミル、またはミリングおよびスクリーニングのための装置等)を使用してもよい。
【0076】
さらに好適なプロセスにおいては、発熱性シリカを含む粒子(P)を使用して粒子(PS)を作製する。この場合、粒子(PS)は様々な方法によって発熱性シリカから生成できる。
【0077】
好適なプロセスにおいては、乾燥した粉状の発熱性シリカを微細粒化したシラン(S)と直接反応させ、適宜他のシラン(S1)、シラザン(S2)、またはシロキサン(S3)と混合する。
【0078】
プロセスは連続的またはバッチ式で実行し、なおかつ、1つ以上のステップで構成してもよい。改良発熱性シリカ(PS)は、好ましくは別々のステップ、すなわち(A)第1には親水性発熱性シリカ(P)を調製し、(B)(1)親水性発熱性シリカとシラン(S)とを投入して親水性発熱性シリカ(P)を改良し、(2)発熱性シリカと適用される化合物とを反応させ、(3)過剰に適用された化合物と解離生成物とを除去することによって発熱性シリカを精製するというステップを踏んで実行するプロセスにより生成する。
【0079】
表面処理は、好ましくは10重量%未満の酸素、特に好ましくは2.5重量%の酸素を含む大気中で実行する。最良の結果は、酸素が1重量%未満のときに達成される。
【0080】
投入、反応、および精製は、バッチ式または連続プロセスとして実行してもよい。
【0081】
投入(ステップB1)は、−30℃〜250℃の温度で、好ましくは20℃〜150℃の温度で、特に好ましくは20℃〜80℃の温度で実行し、特定の実施形態においては、投入ステップは30℃〜50℃の温度で実行する。
【0082】
滞留時間は1分〜24時間、好ましくは15分〜240分であり、空時収量上の理由から特に好ましくは15分〜90分である。
【0083】
投入時の圧の範囲は、やや減圧させた状態から0.2 バールまでで、かつ、最大ゲージ圧力は100バールであり、周囲圧/大気圧を超えない圧を適用する等、工学的理由から大気圧が好適である。
【0084】
シラン(S)またはその混合物は、好ましくは液状で添加する、特に好ましくは粉状の酸化金属(P)に混合する。化合物は、産業的に使用される既知の溶媒(例えばメタノール、エタノール、またはi‐プロパノール等のアルコール、ジエチルエーテル、THF、またはジオキサン等のエーテル、あるいはヘキサンまたはトルエン等の炭化水素など)について純粋な形態で、あるいは溶液として混合してもよい。溶液中の濃度は、5〜95重量%、好ましくは30〜95重量%、特に好ましくは50〜95重量%である。
【0085】
シランは、好ましくはノズル法または類似の方法、例えば過圧下(好ましくは5〜20バール)1液ノズルでの微粒化、過圧下(好ましくは2〜20バールのガスおよび液体)2液ノズルでの噴霧、移動可能、回転式、または静的内部装置を有するアトマイザーまたはガス‐固体交換装置による微細分散法等の有効な微粒化法を用いて混合することによって、シラン(S)を粉状の発熱性シリカ(P)に均一に塗布できるようになる。
【0086】
シラン(S)は、好ましくは沈降速度0.1〜20 cm/秒の超微細エアゾールとして添加する。
【0087】
シリカ(P)の投入およびシラン(S)との反応は、好ましくは機械的またはガス供給系の流動化によって実行する。機械的流動化が、特に好適である。
【0088】
ガス供給系流動化は、全ての不活性ガス、好ましくはN、Ar、他の希ガス、CO等によって生じ得る。流動化用のガスは、好ましくは気相の見かけ流速0.05〜5 cm/秒、特に好ましくは0.5〜2.5 cm/秒の範囲で供給される。特に好適は、プロペラ撹拌機、アンカー撹拌機、および他の適切な撹拌デバイスを用いてシステムを不活性化するのに必要とされる量を上回るガスを追加導入せずに実行する機械的流動化である。
【0089】
反応は、好ましくは40℃〜200℃の温度で、好ましくは40℃〜160℃の温度で、特に好ましくは80℃〜150℃の温度で実行する。
【0090】
反応時間は5分〜48時間、好ましくは10分〜4時間の範囲である。
【0091】
液状または気化しやすいアルコールまたは水等、プロトン性溶媒を適宜添加してもよい。典型的なアルコールは、イソプロパノール、エタノール、およびメタノールである。上述のプロトン性溶媒の混合物を添加することもできる。好適は、酸化金属に基づいて1〜50重量%、特に好ましくは5〜25重量%のプロトン性溶媒を添加することである。特に好適は水である。
【0092】
要望があれば、ルイス酸またはブレンステッド酸の意味において酸性の性質を有する酸性触媒(塩化水素等)またはルイス塩基またはブレンステッド塩基の意味において塩基性の性質を有する塩基触媒(アンモニアまたはトリエチルアミンなどのアミン等)を添加してもよい。これらは好ましくは極微量(1000 ppm未満等)を添加する。特に好適は、触媒を添加しないことである。
【0093】
精製は20℃〜200℃、好ましくは50℃〜180℃、特に好ましくは50℃〜150℃の精製温度で実行する。精製ステップは好ましくは撹拌で、特に好ましくは弱撹拌かつ穏やかに混合して実行する。撹拌デバイスは、有利には固定し、完全に旋回させるのではなく、好ましくは混合および流動化が生じるように動かす。
【0094】
精製ステップは、好ましくは気相の見かけ流速が0.001〜10 cm/秒、より好ましくは0.01〜1 cm/秒に相当する高ガス注入によって実行してもよい。これは全ての不活性ガス、好ましくはN、Ar、他の希ガス、CO等によって生じ得る。
【0095】
さらに、改良時または精製後にシリカを機械的に圧密するためのプロセス、例えば押圧ローラー、連続的またはバッチ式のミリング装置(パンミル、ボールミル等)、スクリュー、スクリューミキサー、スクリューコンプレッサー、ブリケット装置による圧密、または適切な減圧法を用いて存在する空気またはガスを吸い出すことによる圧密を使用してもよい。
【0096】
特に好適は、反応のステップB2における、押圧ローラー、上述のミリング装置(ボールミル等)、またはスクリュー、スクリューミキサー、スクリューコンプレッサー、ブリケット装置による圧密を用いる改良時の機械的圧密である。
【0097】
さらに特に好適な実施形態においては、シリカを機械的に圧密するためのプロセス、例えば適切な減圧法を用いて存在する空気またはガスを吸い出すことによる圧密、押圧ローラー、または2つのプロセスを組み合わせて精製後に使用する。
【0098】
さらに、特に好適な実施形態においては、シリカを解凝集するためのプロセス、例えばピンミリング、ハンマーミル、向流ミル、衝撃ミル、またはミリングおよびスクリーニングのための装置等を精製後に使用してもよい。
【0099】
さらに好適なプロセスにおいては、親水性発熱性シリカ(P)の水または一般に産業的に使用される溶媒(例えばメタノール、エタノール、またはi‐プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ジエチルエーテル、THF等のエーテル、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素、トルエン等の芳香族、ヘキサメチルジシロキサン等その他の揮発性溶媒中、あるいはこれらの混合物中において、シラン(S)と反応させる。
【0100】
プロセスは連続的またはバッチ式で実行し、なおかつ、1つ以上のステップで構成してもよい。好適は、連続的プロセスである。改良発熱性シリカは、好ましくはシリカを(1)上述の溶媒の1つに混合し、(2)シラン(S)と反応させ、(3)溶媒、過剰シラン、および副産物を除去するプロセスによって生成することである。
【0101】
分散(1)、反応(2)、および乾燥(3)は、好ましくは10重量%未満、特に好ましくは2.5重量%未満の酸素を含む大気中で実行する。最善の結果は、酸素が1重量%未満のときに達成される。
【0102】
混合(1)は、従来のミキサー装置(アンカー型撹拌機またはビーム型撹拌機等)によって実行してもよい。適切であれば、混合は高剪断下で溶解機ディスク、ローター・ステーター装置によって実行してもよく、適切であれば超音波振動子またはボールミル等ミリング装置を用いて剪断隙間に直接投入する。適切であれば、上述のさまざまな種類の複数の装置を並行または連続で使用してもよい。
【0103】
シラン(S)とシリカ(P)との反応(2)を実行するには、純粋な形態または適切な溶媒中の溶液としてのシランをシリカの分散物に添加し、均一に混合する。シラン(S)の添加は、分散物を調製するために使用する容器または別個の反応器において実行してもよい。シランを分散物用容器に添加する場合、分散と並行して、あるいは分散後に実行してもよい。適切であれば、シラン(S)は、分散ステップにおいて直接分散媒中の溶液として添加してもよい。
【0104】
適切であれば、水を反応混合物に添加する。適切であれば、ブレンステッド酸等の酸性触媒(液状またはガス状のHCl、硫酸、リン酸、または酢酸等)またはブレンステッド塩基等の塩基触媒(液状またはガス状のアンモニア、NEt等のアミン、またはNaOH等)を反応混合物に添加する。
【0105】
反応ステップは、0℃〜200℃の温度で、好ましくは10℃〜180℃、特に好ましくは20℃〜150℃の温度で実行する。
【0106】
溶媒、過剰シラン(S)、および副産物(3)については、乾燥機または噴霧乾燥機によって除去してもよい。
【0107】
適切であれば、乾燥ステップ後に加熱ステップを実施し、反応を完了する。
【0108】
加熱は、50℃〜350℃、好ましくは50℃〜200℃、特に好ましくは80℃〜150℃の温度で実行する。
【0109】
さらに、乾燥または加熱後に、シリカ(PS)を機械的に圧密するためのプロセス、例えば押圧ローラー、連続的またはバッチ式のミリング装置(パンミル、ボールミル等)、スクリュー、スクリューミキサー、スクリューコンプレッサー、ブリケット装置による圧密、または適切な減圧法を用いて存在する空気またはガスを吸い出すことによる圧密を実施してもよい。
【0110】
さらに特に好適な実施形態においては、シリカを機械的に圧密するためのプロセス、例えば適切な減圧法を用いて存在する空気またはガスを吸い出すことによる圧密、押圧ローラー、または2つのプロセスを組み合わせて乾燥または加熱後に使用する。
【0111】
さらに、特に好適な実施形態においては、シリカを解凝集するためのプロセス、例えばピンミリング、ハンマーミル、向流ミル、衝撃ミル、またはミリングおよびスクリーニングのための装置等を乾燥または加熱後に利用してもよい。
【0112】
本発明は、本発明の粒子(PS)を含む水性分散物(W)をさらに提供する。
【0113】
分散物(W)を生成するため、本発明の粒子(PS)を水性液に導入し、自然乾燥、振とう(タンブルミキサー、高速ミキサー等を用いて)、撹拌(ビーム撹拌機または溶解機ディスク等を用いて)によって混和してもよい。粒子を液体へ混和するには、10重量%以下の低い粒子濃度のときに、概して撹拌するだけで十分である。粒子(PS)は、好ましくは高剪断速度で液体へ混和する。混和後または混和と並行して、粒子(PS)を分散させる。好適は並行分散である。これは第1容器における分散システムによって、あるいは容器から分散デバイスを含む外部パイプへ注入することによって生じ得るものであり、好ましくは閉鎖的に容器へ再循環させる。このプロセスは、部分的再循環および部分的連続抜き取りによって、好ましくは連続的に行ってもよい。
【0114】
このような混和は、好ましくは高速撹拌機、高速溶解機ディスク(周速1〜50 m/秒等)、高速ローター・スターターシステム、ソニケーター、剪断隙間、ノズル、ボールミルを用いて実行する。
【0115】
本発明の水性分散物(W)において、本発明の粒子(PS)を分散させる特に有用な方法は、5 Hz〜500 kHz、好ましくは10 kHz〜100 kHz、極めて好ましくは15 kHz〜50 kHzの範囲で超音波を使用することである。超音波分散は、連続的またはバッチ式で実行してもよい。これは個々の超音波振動子(超音波プローブ等)によって、あるいは適切であればパイプまたは管壁を用いて分離される、1つ以上の超音波振動子を含む流動系において生じ得るものである。
【0116】
水性分散物(W)は、バッチ式または連続プロセスによって生成してもよい。好適は、連続プロセスである。
【0117】
もちろん、本発明の水性分散物(W)は、別の方法で生成してもよい。しかし、手順が極めて重要であり、どの生成方法によっても安定した分散物が得られるとは限らないことは周知である。
【0118】
このプロセスは、実行が極めて容易であり、固形分が極めて多い水性分散物(W)を生成できるという点で有利である。
【0119】
本発明の水性分散物(W)は、好ましくは本発明による粒子(PS)の含量が5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%、極めて特に好ましくは15〜35重量%である。
【0120】
本発明による粒子(PS)の含量が多い本発明の水性分散物(W)は、特に粘度の低い分散物が得られるのが特徴的である。これは、粒子含量が好ましくは5〜60重量%の分散物の粘度が1000 mPas未満、好ましくは粘度が800〜10 mPas、特に好ましくは700〜50 mPasであることを意味し、円錐平板型センサーシステムによって測定した粘度については、25℃、剪断速度10 秒−1で測定値の差が105 μmである。
【0121】
本発明による粒子(PS)の含量が多い本発明の水性分散物(W)は、貯蔵安定性も優れている。これは、分散物生成直後の粘度と比較して、40℃で4週間貯蔵後の分散物の粘度が1.5未満の係数、好ましくは1.25未満の係数、特に好ましくは1.1未満の係数、極めて特に好ましくは係数1によって上昇したことを意味しており、円錐平板型センサーシステムによって測定した粘度については、25℃、剪断速度10 秒−1で測定値の差が105 μmであった。
【0122】
本発明による粒子(PS)の含量が多い本発明の水性分散物(W)は、貯蔵安定性も優れている。これは、分散物の限界流量が100 Pa未満、好ましくは10 Pa未満、特に好ましくは1 Pa未満、極めて特に好ましくは0.1 Pa未満であることを意味する。いずれの例も40℃で4週間貯蔵後、非特許文献10のVane法に従って25℃で測定する。
【非特許文献10】Q.D.Nguyen,D.Boger,J.Rheol.1985,29,335
【0123】
さらに、本発明による粒子(PS)の含量が多い本発明による水性分散物(W)は、光子相関分光法により数平均の形態で平均流体力学的当量直径として測定される平均粒子サイズが1000 nm未満、好ましくは1 nm〜800 nm、特に好ましくは10 nm〜500 nmである。
【0124】
本発明による水性分散物(W)は、適切であれば、メチルイソチアゾロンまたはベンゾイソチアゾロン等の殺カビ剤または殺菌剤を含んでもよい。
【0125】
本発明は、複合材料(C)を生成するための本発明の粒子(PS)の使用をさらに提供する。
【0126】
複合材料(C)は、無機または有機の極性、塩基性、酸性、またはイオン性のいずれかのマトリックス材料(M)を用いて生成する。このような高分子マトリックス(M)の実施例は、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン、(PPSU)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテルグリコール(PEG)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアリールエーテルケトン、およびスルホン化有機高分子である。特に有用な高分子マトリックスは、スルホン化有機高分子、例えばスルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリアリールエーテルケトン(s‐PEK、s‐PEEK、s‐PEEKK、s‐PEKK、s‐PEKEKK)、スルホン化ポリエーテルスルホン(PES)、スルホン化ポリフェニルエーテルスルホン(s‐PPSU)、スルホン化ポリイミド、スルホン化スチレンエチレン共重合体(s‐SES)、スルホン化ポリスチレン、スルホン化スチレンブタジエン共重合体(s‐SBS)、スルホン化パーフルオロ高分子(Nafion(登録商標)等)、部分的にフッ化されたスルホン化高分子、およびスルホン化アミン高分子(スルホン化ポリベンゾイミダゾール、アルキルスルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホアリール化ポリベンゾイミダゾール、およびスルホン化イミダゾール等)である。
【0127】
さらに適切なマトリックス材料(M)は、純粋な原重合体(ポリベンゾイミダゾール、ポリイミダゾール、およびポリアミド等)である。
【0128】
同様にマトリックス(M)として適する他の高分子は、当業者には既知の一般的なゾル‐ゲル法によって入手できる酸化物材料である。ゾル‐ゲル法においては、加水分解性および凝縮性のシランおよび/または有機金属試薬が水によって、および任意選択的に触媒存在下で加水分解され、適切な方法で硬化されてシリカ質材料または酸化物材料が得られる。
【0129】
シランまたは有機金属試薬が、架橋に使用し得る有機官能基(エポキシ基、メタクリル基、アミン基等)を有する場合、これらの改良されたゾル‐ゲル材料はその有機分を介してさらに硬化され得る。有機分の硬化は、例えば適切であれば、さらなる反応性有機成分を添加してから熱的または紫外線を用いて生じさせてもよい。例えば、アミン系硬化剤の有無によらず、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ樹脂とを反応させることによって得られるゾル‐ゲル材料は、マトリックス(M)として適している。このような無機‐有機高分子のさらなる実施例は、アミノ官能性アルコキシシランおよびエポキシ樹脂から生成し得るゾル‐ゲル材料(M)である。
【0130】
有機成分の混和は、例えばゾル‐ゲル薄膜の弾性を改善し得る。
【0131】
このような無機‐有機高分子については、例えば非特許文献11に記載されている。
【非特許文献11】Thin Solid Films 1999,351,198‐203
【0132】
シランまたは有機金属試薬が、カルボン酸基、スルホン酸基、またはホスホン酸基等の酸性基あるいはアミノ基等の塩基性基を有する場合、ゾル‐ゲル法の過程において今度は酸性基または塩基性基を含む酸化物材料が得られる。酸性基または塩基性基は、好ましくは加水分解抵抗性スペーサ(アルキル基等)を介してシリル基と共有結合する。
【0133】
両性イオン基を有する酸化物ゾル‐ゲル材料は、一般式[1]〜[3]から選択される構造要素を含むシランまたは有機金属化合物を用いて同様に入手できる。
【0134】
マトリックス材料(M)として適するシリカ質材料の実施例は、とりわけ特許文献10に記載されている。
【特許文献10】独国特許第10163518号明細書
【0135】
さらに、様々なマトリックス高分子またはこれに相当する共重合体も、マトリックス材料(M)として適している。
【0136】
さらに、反応性樹脂もマトリックス材料(M)として使用してもよい。現在の目的として、反応性樹脂は1つ以上の反応性基を有する化合物である。ここで言及し得る反応性基の実施例は、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、エチレン性不飽和基および水分‐架橋性アルコキシシリル基である。反応性樹脂は、熱処理または化学線によって、適切な硬化剤または開始剤存在下で重合してもよい。反応性樹脂は、モノマー、オリゴマー、およびポリマーの形態で存在し得る。従来の反応性樹脂の実施例は、ヒドロキシ官能性樹脂(ヒドロキシル含有ポリアクリレートまたはイソシアネート官能性硬化剤によって架橋され得るポリアクリレートまたはポリエステル、開始剤添加後に熱的または化学線によって硬化し得るアクリル酸官能性およびメタクリル酸官能性の樹脂、アミン系硬化剤によって架橋されるエポキシ樹脂、SiH官能性硬化剤との反応によって架橋され得るビニル官能性シロキサン、重縮合によって硬化され得るSiOH官能性シロキサンである。
【0137】
本発明の複合材料(C)においては、両性イオン性粒子(PS)と極性またはイオン性マトリックス(M)との間に強力な相互作用が認められる。この相互作用は、特に、材料の優れた機械的特性にとって極めて重要である。使用するマトリックス材料(M)の種類と、適切であれば、塩基性基または酸性基によっては、本発明の両性イオン性粒子(PS)との相互作用はコントロール可能である。このように、例えば塩基性高分子(M)を使用する際に、粒子の電荷全体を負電荷にし得る。この場合、高分子の増強によって負電荷化粒子(PS)と陽電荷化マトリックス(M)との間に相互作用が生じ得る。
【0138】
複合材料(C)における本発明の粒子(PS)は、分布勾配を有していてもよい、あるいは均一に分布していてもよい。選択したマトリックスシステムによっては、粒子の均一分布または不均一分布は、機械的安定性、プロトン伝導性、および気体および液体の透過性のコントロールに対し有利な影響を及ぼし得る。
【0139】
本発明の粒子(PS)が反応性樹脂(M)に対し反応を示す有機官能基を有する場合、粒子分散後に粒子(PS)はマトリックス(M)と共有結合してもよい。
【0140】
複合材料(C)に存在する粒子(PS)量は、総量に基づけば、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは90重量%を超えない。
【0141】
この場合、複合材料(C)は1種類以上の粒子(PS)を含んでもよい。このように、例えば本発明は改良二酸化ケイ素および改良アルミノリン酸塩を含む複合材(C)を包含する。
【0142】
複合材料(C)は、好ましくは2段階プロセスで生成する。第1段階では、粒子(PS)のマトリックス材料(M)への組込みによって分散物(D)を作製する。第2段階では、分散物(D)を複合材料(C)へ転換する。
【0143】
分散物(D)を生成するため、マトリックス材料(M)と本発明の粒子(PS)を溶媒中、好ましくは極性の非プロトン性またはプロトン性の溶媒中または溶媒混合物中で溶解または分散させる。適切な溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、水、エタノール、メタノール、プロパノールである。マトリックス(M)を粒子(PS)に添加してもよい、あるいは粒子(PS)をマトリックス(M)に添加してもよい。粒子(PS)をマトリックス材料(M)中に分散させるため、従来分散に使用されているさらなる添加物および助剤を使用してもよい。ここで名前を挙げると、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、メチルスルホン酸等のブレンステッド酸、トリエチルアミンおよびエチルジイソプロピルアミン等のブレンステッド塩基である。さらに、従来のすべての乳化剤および/または保護コロイドをさらなる添加物として使用してもよい。保護コロイドの実施例は、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、またはビニルピロリドン含有高分子である。従来の乳化剤は、例えばエトキシ化アルコールおよびフェノール(C〜C18のアルキル基、3〜100のエチレンオキシド(EO)ユニット)、アルカリ金属、硫酸アルキル(C〜C18)のアンモニウム塩、硫酸エステル、リン酸エステル、およびスルホン酸アルキルである。
【0144】
特に好適は、スルホコハク酸エステル、アルカリ金属硫酸アルキル、およびポリビニルアルコールである。混合物として複数の保護コロイドおよび/または乳化剤を使用することもできる。
【0145】
粒子(PS)およびマトリックス(M)が固形である場合、分散物(D)は融解プロセスまたは押出プロセスによって作製してもよい。
【0146】
代替として、分散物(D)はマトリックス材料(M)の粒子(P)を改良することによって作製してもよい。この目的のため、粒子(P)をマトリックス材料(M)中に分散させ、続いてシランまたはシロキサン(S)と反応させて粒子(PS)を形成する。
【0147】
分散物(D)が水性または有機性溶媒を含む場合、分散物(D)を生成してから相当する溶媒を除去する。溶媒は、好ましくは蒸留によって除去する。代替として、溶媒は分散物(D)中に残っていてもよく、複合材料(C)を生成する過程で乾燥によって除去してもよい。
【0148】
分散物(D)は、従来の溶媒および製剤中に存在する従来の添加物および助剤を含んでいてもよい。ここで名前を挙げると、とりわけ均染剤、表面活性物質、結合剤、光安定剤(UV吸収剤等)および/またはフリーラジカル捕捉剤、チキソトロープ、およびさらなる固体および充填剤である。いずれの例においても、分散物(D)と複合材(C)の両方にとって望ましい特性プロフィールを生じさせるには、このような助剤が好適である。
【0149】
複合材料(C)を生成するには、粒子(PS)とマトリックス(M)とを含む分散物(D)を、ドクターブレードを用いて基質に塗布する。さらなる方法は、浸染、噴霧、鋳込、および押出などのプロセスである。適切な基質は、とりわけガラス、金属、木材、シリコン・ウエハー、PTFEである。分散物(D)が溶媒を含む場合、溶媒を蒸発させることで複合材(C)を乾燥させる。
【0150】
分散物(D)が粒子(PS)と反応性樹脂(M)の混合物である場合、硬化剤または開始剤添加後に、好ましくは化学線または熱エネルギーによってその分散物を硬化させる。
【0151】
代替として、複合材料(C)は、マトリックス(M)中の本発明による粒子(PS)を形成することによって生成してもよい。これらの複合材(C)を生成する従来の方法はゾル‐ゲル合成であり、その場合、加水分解性有機金属または有機ケイ素化合物、およびシランまたはシロキサン(S)等の粒子前駆体をマトリックス(M)に溶解し、続いて例えば触媒添加によって粒子形成を開始する。適切な粒子前駆体は、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等である。複合材(C)を生成するには、ゾル‐ゲル混合物を基質に塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥させる。
【0152】
同様に好適な方法においては、適切な溶媒を用いて硬化した高分子を膨潤させ、例えば粒子前駆体およびシランまたはシロキサン(S)としての加水分解性有機金属または有機ケイ素化合物を含む溶液中に浸漬させる。次に、上述の1つの方法によって、高分子マトリックス内で濃縮された粒子前駆体の粒子形成を開始する。
【0153】
分散物(D)から得られる複合材料(C)は、驚くほど高い機械的安定性と、粒子のない高分子と比較して格段に高いプロトン伝導性を示す。
【0154】
複合材料(C)は、その優れた化学的、熱的、機械的特性により、特に接着剤、シーリング剤、コーティング、および密封用および埋封用組成物として使用される。本発明の複合材料(C)は、その成分が適切に選択されると、優れた機械的特性と高いプロトン伝導性を示すため、これらの材料は燃料電池における膜として特に適している。特に好適は、PEMFC(高分子電解質膜燃料電池)、PAFC(リン酸燃料電池)、およびDMFC(直接型メタノール燃料電池)である。本発明の材料(C)について、高分子膜としてさらに考えられる使用分野には、電気分解、蓄電器、およびバッテリーシステムにおける使用もある。
【0155】
燃料電池を生成するために使用し得る好適なプロトン伝導性ポリマー電解質膜(PEM)は、プロトン伝導性基、特にカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、またはアミノ基に共有結合した高分子(M)から作られる。高分子電解質膜を生成するために使用し得るプロトン伝導性高分子の実施例は、スルホン化パーフルオロ炭化水素、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化硫化ポリフェニル、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリスチレン、ポリベンゾイミダゾール、シリカ質または酸化物材料、およびこれら高分子の混合物である。
【0156】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の粒子(PS)は、極性システム(溶媒のない高分子および樹脂または溶液、懸濁液、乳剤、および有機樹脂の分散物等)、水性システム、または有機溶媒(ポリエステル、ビニルエステル、エポキシド、ポリウレタン、アルキド樹脂等)中で高い増粘作用を示すため、これらのシステムにおけるレオロジー添加剤として適している。
【0157】
これらのシステムにおけるレオロジー添加剤としての粒子(PS)によって、必要とされる粘度、非ニュートン粘度、チキソトロピー、および水平面上に位置付けられたままであるのに十分な限界流量が得られる。
【0158】
本発明のさらなる実施形態においては、表面改質粒子(PS)は固化および塊形成(例えば、湿気存在下、粉状システムにおいて等)を防止し、再凝集する傾向もないため望まれない分離が生じるが、代わりに易流動性状態で粉末を保持するため、投入安定性と貯蔵安定性の両方を得られるようになる。概して粉状システムに基づいて、0.1〜3重量%の量の粒子を使用する。
【0159】
これは、接触させる必要のないプロセスまたは電子写真印刷/複製のプロセス等、特に非磁性および磁性トナー、現像剤、および荷電制御助剤での使用に適用される。これらは、1成分および2成分システムでもよい。これは、表面コーティングとして使用される粉状樹脂において適用される。
【0160】
本発明は、トナー、現像剤、および荷電制御助剤における粒子(PS)の使用をさらに提供する。このような現像剤およびトナーは、例えば磁性1成分および2成分トナーであり、非磁性トナーでもよい。これらのトナーは、主成分としてスチレン樹脂およびアクリル樹脂等の樹脂を含んでいてもよく、好ましくは粉砕して1〜100 μmの範囲の粒子分散物を生じさせる、あるいは重合プロセスにおいて分散物、乳剤、溶液、または塊で生成される樹脂であり、好ましくは1〜100 μmの範囲の粒子分散物が得られる。酸化ケイ素および酸化金属は、好ましくは粉末の流動性を改善および制御するおよび/またはトナーまたは現像剤の摩擦電気帯電特性を調節および制御するために使用する。このようなトナーおよび現像剤は電子写真印刷プロセスにおいて使用してもよく、直接画像伝送プロセスにおいて使用してもよい。
【0161】
本発明の粒子(PS)および本発明による水性分散物(W)も、例えば高光沢写真用紙で使用されているような、紙用塗料を生成するのに適している。
【0162】
本発明の粒子(PS)および本発明による水性分散物(W)は、さらにピッカリング・エマルジョンとして知られる粒子によって安定化された乳剤を安定させるのに使用してもよい。
【0163】
上の公式のすべての記号は、互いに独立した意味を有する。すべての式において、シリコン原子は四価である。
【0164】
他に示されない限り、すべての量および百分率は重量に基づくものであり、すべての圧は0.10 MPa(絶対圧)、すべての温度は20℃である。
【実施例1】
【0165】
アンモニオプロピルスルホネート官能性シラン(シラン1)の調製
【0166】
アミノプロピルトリメトキシシランと1,3‐プロパンスルトンとの反応
【0167】
1,3‐プロパンスルトン18.8 g(0.15 mol)は、トルエン100 ml中のアミノプロピルトリメトキシシラン溶液26.9 g(0.15 mol)に滴下により添加する。反応混合物を60℃で6時間加熱し、形成する沈殿物を濾過して酢酸エチルで洗浄し、その生成物を減圧下で乾燥させる。これにより無色の固形物35 gが得られる。
【実施例2】
【0168】
アンモニオプロピルスルホネート官能性シラン(シラン2)の調製
【0169】
ピペラジノメチルトリエトキシシランと1,3‐プロパンスルトンとの反応
【0170】
1,3‐プロパンスルトン1.88 g(15.0 mmol)は、トルエン10 ml中のピペラジノメチルトリエトキシシラン溶液3.90 g(15.0 mmol)に滴下により添加する。反応混合物を60℃で6時間加熱し、反応混合物を冷却させ、その相を分離する。減圧下で低いほうの相を蒸発させ、乾燥させる。酢酸エチルを用いて煮沸すると、オレンジ色の固形物2.70 gが得られる。
【実施例3】
【0171】
アンモニオブチルスルホネート官能性シラン(シラン3)の調製
【0172】
アミノプロピルトリメトキシシランと1,4‐ブタンスルトンとの反応
【0173】
1,4‐ブタンスルトン1.10 g(8.20 mmol)は、トルエン5 ml中のアミノプロピルトリメトキシシラン溶液1.47 g(8.20 mmol)に滴下により添加する。反応混合物を6時間還流し、次いで冷却させ、その相を分離する。減圧下で低いほうの相を蒸発させ、乾燥させる。酢酸エチルを用いて煮沸すると、黄色の固形物1.20 gが得られる。
【実施例4】
【0174】
ベンゾイミダゾリオプロピルスルホネート官能性シラン(シラン4)の調製
【0175】
ベンゾイミダゾール15.5 g(0.13 mol)を初回投入分2.6モルのナトリウムメトキシド溶液50 mlを添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させてから残留物を乾燥DMF中に取り込み、18-クラウン-6 3 mgおよびγ‐クロロプロピルトリメトキシシラン26.1 g(0.13 mol)と混和させた。反応混合物を90℃で2時間加熱し、室温まで冷却させ、形成した沈殿物を濾過により分離した。
【0176】
分離した中間体5.00 gをトルエン20 ml中に溶解し、1,3プロパンスルトン2.18 g(17.9 mmol)と混和した。混合物を60℃で6時間加熱し、室温まで冷却させ、形成した生成物をトルエンおよび酢酸エチルを用いて洗浄した。これにより無色の固形物7.19 gが得られた。
【実施例5】
【0177】
濃縮アンモニオプロピルスルホン酸官能性シリカゾルの調製
【0178】
O15.0 gを水性SiOゾル(Grace Davison製LUDOX(登録商標) AS 40、SiO 40重量%、pH9.1、22 nm)15.0 gに添加する。次に実施例1に記載されているシラン1 1.20 gを1分間添加し、混合物を25℃で2時間および70℃で2時間撹拌する。これにより若干のチンダル効果を示す改良シリカゾルが得られる。このように改良されたシリカゾルは、pH8.8のときに負のゼータ電位−38 mVである。pHが7未満のときに、粒子の凝集が確認される。
【実施例6】
【0179】
濃縮アンモニオプロピルスルホネート官能性シリカゾルの調整
【0180】
O15.0 gを水性SiOゾル(Grace Davison製LUDOX(登録商標) AS 40、SiO 40重量%、pH9.1、22 nm)15.0 gに添加する。次に実施例3に記載されているシラン3 1.20 gを1分間添加し、混合物を25℃で2時間および70℃で2時間撹拌する。これにより若干のチンダル効果を示す改良シリカゾルが得られる。このように改良されたシリカゾルは、pH9のときに負のゼータ電位−41 mVである。pHが6未満のときに、粒子の凝集が確認される。
【実施例7】
【0181】
濃縮アンモニオプロピルスルホネート官能性シリカゾルの調整
【0182】
O15.0 gを水性SiOゾル(Grace Davison製LUDOX(登録商標) AS 40、SiO 40重量%、pH9.1、22 nm)15.0 gに添加する。次に実施例4に記載されているシラン4 1.20 gを1分間添加し、混合物を25℃で2時間および70℃で2時間撹拌する。これにより若干のチンダル効果を示す改良シリカゾルが得られる。このように改良されたシリカゾルは、pH9.3のときに負のゼータ電位−53 mVである。pHが5.5未満のときに、粒子の凝集が確認される。
【0183】
実施例5、6、および7のシリカゾルのゼータ電位は、Dispersion Technologies製DT1200を用いて測定した。pHは、1%重量強度の硫酸を用いて設定した。
【実施例8】
【0184】
アンモニオプロピルスルホネート官能性シリカゾルの調整
【0185】
実施例2に記載されているシラン2 0.80 gを水性SiOゾル(Grace Davison製LUDOX(登録商標) AS 40、SiO 40重量%、pH9.1、22 nm)10.0 gに1分間添加し、混合物を25℃で16時間撹拌する。次に溶液をHO190.0 gで希釈し、10%重量強度の硫酸を用いてpHを5に設定する。これにより若干のチンダル効果を示す改良シリカゾルが得られる。
【実施例9】
【0186】
アンモニオプロピルスルホネート官能性シリカゾルの調整
【0187】
実施例3に記載されているシラン3 0.80 gを水性SiOゾル(Grace Davison製LUDOX(登録商標) AS 40、SiO 40重量%、pH9.1、22 nm)10.0 gに1分間添加し、混合物を25℃で2時間および70℃でさらに2時間撹拌する。次に溶液をHO190 gで希釈し、10%重量強度の硫酸を用いてpHを5に設定する。これにより若干のチンダル効果を示す改良シリカゾルが得られる。
【実施例10】
【0188】
アンモニオプロピルスルホネート官能性シリカゾルの調整
【0189】
実施例4に記載されているシラン4 0.80 gを水性SiOゾル(Grace Davison製LUDOX(登録商標) AS 40、SiO 40重量%、pH9.1、22 nm)10.0 gに1分間添加し、混合物を25℃で2時間および70℃でさらに2時間撹拌する。次に溶液をHO190.0 gで希釈し、10%重量強度の硫酸を用いてpHを5に設定する。これにより若干のチンダル効果を示す改良シリカゾルが得られる。
【実施例11】
【0190】
複合材料Nafion(登録商標)の生成とこれらの検査
【0191】
希釈した水性SiOゾル(Grace Davison製LUDOX(登録商標)をSiO 2重量%まで希釈し、10%重量強度の硫酸を用いてpHを5に設定する。22 nm)(分散物A)または実施例8の改良シリカゾル1.25 g(分散物B)をNafion(登録商標)(DuPont製Nafion(登録商標)。パーフルオロイオン交換樹脂、低い脂肪族アルコールと水の混合物中で20重量%)溶液2.50 gに添加する。混合物を10分間撹拌し、続いて超音波バス中でさらに10分間均質化する。
【0192】
試験検体を生成するため、分散物A、B、および無充填のNafion(登録商標)溶液(試料C)をPTFE成形品へ注入し、オーブンにて80℃で120分間乾燥させる。水数滴を添加後、PTFE成形品から膜検体A(分散物A由来)、B(分散物B由来)、およびC(試料 C)が採取できる。
【0193】
このように作製した膜検体を幅10 mm、長さ60 mmの試験検体へと細分化し、EN ISO 527‐3に従ってZwick社のZ010に基づいて測定し、その機械的特性について確認した。各検体を1分あたり50 mmの定速度で引張り、破壊した。測定はそれぞれ3つの試験検体を用いて繰り返し、測定値の平均を計算した。各検体について確認した特性を表1に記載する。
【0194】
[表1]
表1.複合材の機械的特性

*本発明によるものではない
【0195】
実施例は、本発明による複合材Bの機械的特性が、本発明によるものではない材料AおよびCよりも著明に優れていることを示す。
【実施例12】
【0196】
複合材料sPEEKの生成とこれらの検査
【0197】
希釈した水性SiOゾル2.0 g(Grace Davison製LUDOX(登録商標)をSiO 2重量%まで希釈し、10%重量の硫酸を用いてpHを6に設定する。22 nm)(分散物D)または実施例8の改良シリカゾル2.0g(分散物E)または実施例9の改良シリカゾル2.0 g(分散物F)または実施例10の改良シリカゾル2.0 g(分散物G)をsPEEK溶液8.0 g(Fumatech製sPEEK、スルホン酸ポリエーテルエーテルケトン、DMF中5%重量強度)に添加する。混合物を10分間撹拌し、続いて超音波バス中でさらに10分間均質化する。
【0198】
試験検体を生成するため、分散物D〜Gおよび無充填のsPEEK溶液(試料H)をPTFE成形品へ注入し、オーブンにて100℃で5時間乾燥させる。水数滴を添加後、PTFE成形品から膜検体D(分散物D由来)、E(分散物E由来)、F(分散物F由来)、G(分散物E由来)、およびH(試料 H由来)が採取できる。
【0199】
このように作製した膜検体を長さ3.5 cm、幅1.5 cmの切片に切断した。各検体を25%重量強度の硫酸によって70℃で2時間煮沸したのち実測、続いて蒸留水にて3回洗浄し、煮沸して依然として残る硫酸を除去した。プロトン伝導性特性を確認するため、このような方法で前処理した検体を2つの白金電極間に固定した。40℃、相対湿度100%のときに、ACインピーダンス分光法を用いてプロトン伝導性を測定した。このような方法で確認した各検体の特性を表2に示す。
【0200】
[表2]
表2.40℃、相対湿度100%のときの複合材料のプロトン伝導性特性

*本発明によるものではない
【0201】
実施例は、本発明による複合材E,F,およびGのプロトン伝導性が、本発明によるものではない材料DおよびHよりも著明に高いことを示す。
【実施例13】
【0202】
アンモニオプロピルスルホネート官能性発熱性シリカの生成
【0203】
希ガスN下25℃の温度のときに、水/メタノール混合物(1:1)38 g中のシラン1 12 g溶液50 gとMeOH 5 mlで溶解したNEt 0.5 gとを、1液ノズル(圧:5バール)による噴霧で、含水率1重量%未満およびHCl含量100 ppm未満、規定の表面積130 m/g(DIN EN ISO 9277/DIN66132に準拠してBET法により測定)(HDK S13という名称でWacker‐Chemie GmbH社(ドイツ、ミュンヘン)より入手可能)の親水性SILICA100 gに添加する。このような方法で負荷されたSILICAは、25℃の温度、滞留時間0.25時間のときにさらなる撹拌によって流動化させ、続いて100 l乾燥器中で、N下120℃、滞留時間3時間で反応させる。
【0204】
これにより中間シリル化層が均一な白いSILICA粉末が得られる。
【0205】
分析データを表3に示す。
【実施例14】
【0206】
アンモニオプロピルスルホネート官能性発熱性シリカの生成
【0207】
メタノール700 ml、脱イオン水500 ml、シラン1 12 g、およびNEt 0.5 gを2 l三つ口フラスコに入れてN保護ガス下に置く。続いて含水率1重量%未満およびHCl含量100 ppm未満、規定の表面積130 m/g(DIN EN ISO 9277/DIN66132に準拠してBET法により測定)(HDK S13という名称でWacker‐Chemie GmbH社(ドイツ、ミュンヘン)より入手可能)の親水性SILICA100 gを撹拌しながら添加する。混合物を2時間還流し、続いて回転式蒸発器上のすべての揮発性成分を除去し、白い粉状の残留物を100 l乾燥器中で、N下120℃、滞留時間2時間で加熱する。
【0208】
これにより中間シリル化層が均一な白いSILICA粉末が得られる。
【0209】
分析データを表3に示す。
【0210】
[表3]
表3:粒子の分析データ

【0211】
分析法の説明
【0212】
炭素含量(%)
【0213】
炭素の元素分析。酸素流中、1000℃超で試料を燃焼し、生じたCOをIR(装置:LECO 244)によって検出および定量化する。
【実施例15】
【0214】
水性分散物の生成
【0215】
脱イオン水(DI)4.0 lを、容量6 lの高性能ミキサーUnimix LM6(Ekato製)の中に置き、水性1M HCLを用いてpHを4.5にした。実施例13に相当するシリカ1000 gを撹拌しながら30分間供給し、ローター・ステーター装置を稼動させ、水性1M HCLを添加しpH4.5を維持した。続いて混合物を1時間集中的に剪断したところ、温度が約45℃まで上昇した。
【0216】
分散液が得られた。分散物の分析データを表4に示す。
【0217】
[表4]
表4.実施例15の分散物の分析データ

【0218】
分析法の説明
【0219】
1.以下の方法によって分散物の固形分を確認した:水性分散物10 gと同量のエタノールとを磁製皿中で混和し、Nで洗浄した乾燥器において150℃で恒量まで蒸発させた。乾燥残留物の質量(m)から、固形分/%=m*100/10 gに基づき固形分が得られる。
【0220】
2.単極pH測定装置を用いて測定したpH
【0221】
3.以下の方法を用いて、焼結凝集体の平均径を光相関分光法により測定する。シリカ含量が0.3重量%である分散物試料は、電磁撹拌機を用いて適量の開始分散物を撹拌しながらDI水に分散させて調製する。試料は、PCS装置Zetasizer Nano ZS(Malvern製)を用いて173℃のときに後方散乱モードで測定する。平均粒径は、自己相関関数の適合性の数平均として得られる。
【0222】
4.円錐平板型センサーシステム(測定値の差が105 μm)を備えるMCR 600流動計(Haake製)を用いて25℃、剪断速度D=10秒‐1のときに測定した分散物の粘度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]〜[3]
[化1]
−NR−B−A [1]
[化2]
=NR−B−A [2]
[化3]
≡N−B−A [3]
から選択される少なくとも1つの構造要素と、一般式[1]〜[3]のプロトン化および脱プロトン化の形態の構造要素とを有し、この場合、
Aがスルホン酸基‐SO、カルボン酸基‐C(O)O、またはホスホン酸基‐P(O)(OR)Oであり、
Bが(CR、または置換あるいは無置換のアルキル基、アリール基、またはヘテロ原子を間に挟むヘテロアリール基であり、
RおよびRがそれぞれ水素基、または置換あるいは無置換の炭化水素基であり、
が水素基、ハロゲン基、または置換あるいは無置換の炭化水素基であり、
mが1、2、3、4、または5であってもよく、
一般式[2]の窒素原子が環内窒素原子として脂肪族複素環の一部であること、および一般式[3]の窒素原子が環内窒素原子として芳香族複素環の一部であることを条件とする、粒子(PS)。
【請求項2】
規定の表面積が0.1〜1000 m/gである、請求項1に記載の粒子(PS)。
【請求項3】
一般式[1]〜[3]の構造要素が共有結合する、請求項1または請求項2に記載の粒子(PS)。
【請求項4】
請求項1で説明したように、粒子(P)が一般式[1]〜[3]の少なくとも1つの構造要素を有するシランまたはシロキサン(S)と反応することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の粒子(PS)を作製するプロセス。
【請求項5】
一般式[4]
[化4]
[RSiO1/2[RSiO2/2[RSiO3/2[SiO4/2 [4]
がオルガノポリシロキサンである場合、
が1〜18個の炭素原子を有するOH基、すなわち無置換またはハロゲン置換、ヒドロキシル置換、アミノ置換、エポキシ置換、ホスホナト置換、チオール置換、(メタ)アクリル置換、カルバマート基、またはNCO置換の炭化水素基であり、この炭素鎖は隣接しない酸素、硫黄、またはNR3’基を挟んでいて、
3’が請求項1で説明したようにRの意味も有し、
i、j、k、lが、それぞれ0以上であり、
i+j+k+lが3以上であることと、少なくとも1個のR基がOH基であることを条件として、このオルガノポリシロキサンを粒子(P)として使用することを特徴とする、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
発熱性シリカを粒子(P)として使用することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
シリカゾルを粒子(P)として使用することを特徴とする、請求項4〜請求項6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
光子相関分光法により数平均の形態で平均流体力学的当量直径として測定される平均粒子サイズが1000 nm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子(PS)の水性分散物(W)。
【請求項9】
紙用塗料を生成し、なおかつ複合材料(C)を生成するための、トナー、現像剤、および荷電制御助剤における、粒子(PS)の使用。
【請求項10】
粒子(PS)と、無機材料、有機材料、無機‐有機材料、極性材料、およびイオン性材料から選択されるマトリックス材料(M)とを含む、複合材料(C)。
【請求項11】
接着剤、シーリング剤、コーティング、および密封用または埋封用組成物または膜である、請求項10に記載の複合材料(C)の使用。

【公表番号】特表2009−513758(P2009−513758A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537039(P2008−537039)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067105
【国際公開番号】WO2007/048691
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(507303435)ウァッカー ケミー アーゲー (17)
【Fターム(参考)】