説明

中心ずれ測定装置及びその方法

【課題】中央部に円孔を有する円盤状基板の内周と外周の中心ずれを測定する時間を短縮可能な、中心ずれ測定装置及びその方法を提供すること。
【解決手段】中央部に円孔を有する円盤状基板Wの内周と外周の中心ずれを測定する中心ずれ測定装置であって、内周端面C1と外周端面C2に挟まれた主平面Sの半径方向幅Bを、投光部と受光部との間に形成された計測領域DA内で円盤状基板の全周にわたって非接触で計測する計測部と、前記計測部によって計測された半径方向幅Bの最大値Bmaxと最小値Bminの差Aを演算して該差Aを用いて中心ずれを演算する演算部とを備えることを特徴とする、中心ずれ測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央部に円孔を有する円盤状基板の内周中心と外周中心のずれを測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガラス又はアルミニウム磁気ディスク基板の製造工程においては、内周と外周の同芯度が測定されて、管理されている。一般に、同芯度は、ディスク基板の内周端面と外周端面を接触式又は非接触式センサによって計測し、その内周円と外周円の中心をそれぞれ求め、それらの中心間距離を算出することにより、測定される。
【0003】
例えば、2つの円周の中心をそれぞれ求め、それらの中心間距離に基づいて、同芯度を測定する先行技術文献として、例えば特許文献1,2が挙げられる。特許文献1,2には、非接触式センサによる測定技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−54917号公報
【特許文献2】特開2008−171532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、上述の従来技術の場合、2つの円周の中心ずれの測定を正確に実施することができる。しかしながら、2つの円周の中心をそれぞれ求めなければならないので、両中心間のずれの測定に時間を要してしまうという欠点がある。そのため、例えば、工程管理のために頻繁に測定をする場合には、従来の測定方法では不向きである。
【0006】
そこで、本発明は、中央部に円孔を有する円盤状基板の内周と外周の中心ずれを測定する時間を短縮可能な、中心ずれ測定装置及びその方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る中心ずれ測定装置は、
中央部に円孔を有する円盤状基板の内周と外周の中心ずれを測定する中心ずれ測定装置であって、
前記内周と前記外周に挟まれた主平面の半径方向幅を円盤状基板の全周にわたって計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記半径方向幅の最大値と最小値の差を演算して該差を用いて中心ずれを演算する演算部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る中心ずれ測定方法は、
中央部に円孔を有する円盤状基板の内周と外周の中心ずれを測定する中心ずれ測定方法であって、
前記内周と前記外周に挟まれた主平面の半径方向幅を円盤状基板の全周にわたって計測する計測工程と、
計測された前記半径方向幅の最大値と最小値の差を演算する演算工程と、
を有する、ことを特徴とするものである。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る中心ずれ測定方法は、
中央部に円孔を有する円盤状基板の内周と外周の中心ずれを測定する中心ずれ測定方法であって、
中央部に円孔を有する複数の円盤状基板を立てた状態で横方向に並べて収容する収納容器から、収容されている円盤状基板を昇降機構によって立てた状態で上昇させて離脱させ、
離脱させた円盤状基板を該円盤状基板の周方向に回転させ、
回転させた円盤状基板の主平面の半径方向幅を全周にわたって計測する計測工程と、
前記半径方向幅を計測した円盤状基板を前記昇降機構によって下降させて前記収納容器に戻し、
前記収納容器に収容されている別の円盤状基板が前記昇降機構によって前記収納容器から上昇して離脱するように、前記収納容器と前記昇降機構との前記横方向の相対位置を移動させるピッチ移動工程と、
計測工程で計測された前記半径方向幅の最大値と最小値の差を演算して該差を用いて中心ずれを演算する演算工程とを含む、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中央部に円孔を有する円盤状基板の内周中心と外周中心の中心ずれを測定する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】ガラス基板Wの内周と外周の中心ずれを本発明で測定する場合を示した図である。
【図1B】計測領域DAの別態様を示した図である。
【図1C】計測領域DAの別態様を示した図である。
【図1D】計測領域DAの別態様を示した図である。
【図2】本発明の中心ずれ測定方法を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態である中心ずれ測定装置1の側面図である。
【図4】回転機構10の第1の具体例を示した斜視図である。
【図5】図4に示したE−Eにおける回転機構10の断面図である。
【図6】回転機構10の第2の具体例を示した斜視図である。
【図7】回転機構10の第3の具体例を示した模式図である。
【図8】図7に示した回転機構10を利用して、カセット40に収容されている複数のガラス基板Wの中心ずれを測定する装置を説明するための図である。
【図9】カセット40に収容されている複数のガラス基板Wの中心ずれを測定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0013】
図1Aは、磁気記録媒体用ガラス基板Wの内周と外周の中心ずれを本発明で測定する場合を示した図である。ガラス基板Wは、中央部に円状の円孔が形成されたドーナツ状の円盤状基板である。主平面Sは、ガラス基板Wの外周端面C2と中央部の円孔の内周端面C1とに挟まれた平面状の環状面である。主平面Sの半径方向幅Bは、主平面Sのガラス基板Wの半径方向の寸法に相当する。
【0014】
図2は、ガラス基板Wの内周と外周の中心ずれを説明するための図である。ガラス基板Wを周方向に中央部の円孔を回転中心として1回転させたとき、主平面Sの全周にわたる半径方向幅Bの中で最大の値がBmaxに相当し、主平面Sの全周にわたる半径方向幅Bの中で最小の値がBminに相当する。この場合、最大値Bmaxと最小値Bminの差Aが、ガラス基板Wの内周と外周の同芯度に相当する値であるため、差Aを、ガラス基板Wの外周と内周の中心ずれの度合を表す値として使用することができる。すなわち、差Aの絶対値が大きいほど、ガラス基板Wの外周と内周の中心ずれが大きいことを表し、差Aの絶対値が小さいほど、その中心ずれが小さいことを表し、差Aが零のとき、その中心ずれが無いことを表している。
【0015】
つまり、ガラス基板Wの内周端面C1と外周端面C2に挟まれた主平面Sの半径方向幅Bを全周にわたって計測し、その計測された全周分の半径方向幅Bの最大値Bmaxと最小値Bminの差Aを演算し、該差Aを用いて中心ずれを演算することにより、ガラス基板Wの内周と外周の中心ずれを測定できる。この方法によれば、ガラス基板Wの内周と外周の中心ずれを測定するために、内周と外周の中心をそれぞれ求める必要がないため、中心ずれの測定時間を短縮できる。
【0016】
主平面Sの半径方向幅Bを全周にわたって計測するためには、例えば図1Aに示されるように、半径方向幅Bを計測するための所定の計測領域DAに主平面Sを全周にわたって通過させればよい。具体的には、ガラス基板Wの周方向に中央部の円孔を回転中心としてガラス基板Wを1回転又はそれ以上回転させればよい。半径方向幅Bの計測を安定化させるためには、主平面Sが計測領域DAを通過する速度(具体的には、回転の角速度)を一定にすることが好ましい。
【0017】
計測領域DAは、ガラス基板Wの主平面Sを全て含むような大きさにする必要はない。半径方向幅Bの誤計測を防ぐため、計測領域DAは、ガラス基板Wの半径方向の一方向において、主平面Sの半径方向幅Bを規定する内周端面C1の一部分と外周端面C2の一部分とを含むような大きさであればよい。測定時間をさらに短縮させたい場合、計測領域DAを広げると良い。例えば、図1Bのように計測領域DAを広げる、又は図1C,図1Dのように計測領域DAを2箇所以上設けて、ガラス基板Wの回転を半回転以下として測定もよい。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態である中心ずれ測定装置1の側面図である。中心ずれ測定装置1は、半径方向幅Bの計測部として、投光部12と受光部11とを備えている。投光部12の投光面14と受光部11の受光面13とに挟まれた空間に計測領域DAが形成される。投光部12は、投光面14が上向きになるように、ガラス基板Wの取り付け位置に対して下側に配置される。受光部11は、支柱15の上部に設置され、受光面13が下向きになるように、ガラス基板Wの取り付け位置に対して上側に配置される。受光面13を下向きにすることによって、上向きにする場合に比べて、天井の蛍光灯などの他の外乱光が受光面13に入射することを抑え、ひいては半径方向幅Bの誤計測を防止することができる。
【0019】
投光部12は、ガラス基板Wに向けてその主平面Sの法線方向(図3の場合、Z軸方向)から光を照射する。投光部12は、例えば、光源21と、レンズ22とを備えている。半径方向幅Bの計測精度向上の点で、光源21の好適な例として、発光ダイオードが挙げられ、より好適な例として、窒化ガリウム発光ダイオードが挙げられる。一方、レンズ22は、計測領域DAを形成する光学部品である。レンズ22は、計測領域DAの安定的な形成のため、光源21から放たれた光を平行光に変換するコリメータレンズが好適である。レンズ22によって、光源21からの光が、主平面Sの全領域のうち内周端面C1と外周端面C2とに挟まれた半径方向の一部分に集光される。
【0020】
受光部11は、ガラス基板Wの主平面Sの方向から到来した光を受光する。半径方向幅Bは、受光部11によって受光された光の明暗のエッジ位置に基づいて計測される。受光部11は、例えば、投光部12からの光が照射されたガラス基板Wの映像を、テレセントリックレンズ23を介して、CCDイメージセンサ(撮像素子)25上に結像させる。また、受光部11は、ビームスプリッタ24備え、ガラス基板Wの映像を、CCDイメージセンサ25とCMOSイメージセンサ26に分けてもよい。
【0021】
中心ずれ計測装置1の演算部16は、受光部11のCCDイメージセンサ25から送出される受光信号に基づいて、主平面Sのエッジ(内周端面C1と外周端面C2)を計測し、半径方向幅Bの最大値Bmaxと最小値Bminを導出する。そして、演算部16は、最大値Bmaxと最小値minの差Aを算出して、その差Aの算出結果を出力部17に出力する。演算部16は、AD変換器やCPUなどによって構成されるとよい。出力部17は、例えば、ディスプレイ、プリンター、スピーカ、それらのいずれかの組み合わせであればよい。出力部17は、受光部11のCMOSイメージセンサ26によって得られた映像を表示するものでもよい。
【0022】
また、中心ずれ測定装置1は、ガラス基板Wの主平面Sを全周にわたって計測領域DAに通過させる可動機構として、回転機構10を備えている。回転機構10は、XY平面内で、ガラス基板Wをその周方向にその中央部の円孔を回転中心としてモータで回転させる手段である。回転機構10は、台座18によって固定されている。
【0023】
図4は、回転機構10の第1の具体例を示した斜視図である。回転機構10は、ガラス基板Wを回転させる回転台32と、ガラス基板Wを位置決めする中心軸33と、回転台32を回転させるモータ等を収容するハウジング31とを備えている。回転台32の上面32aに、ガラス基板Wが載る。外形が円柱状の中心軸33は、ガラス基板Wの中央部の円孔が上方から嵌合されてガラス基板Wを位置決めする部材である。回転台32は、XY平面内をガラス基板Wの周方向に自転するが、中心軸33は、回転しない固定されたままの部材である。中心軸33には、投光部12から照射された光が、ガラス基板Wの内周端面C1を通過して、受光部11に到達するように、溝34が形成されている。
【0024】
図5は、図4に示したE−Eにおける回転機構10の断面図である。被計測物としてのガラス基板Wが、回転台32の上面に載っている。回転機構10の回転台32は、ガラス基板Wの内周端面C1を中心軸33の側面33aに接触させて滑らせながら、ガラス基板Wを回転させる。溝34は、投光部12から内周端面C1を通って受光部11に到達する光の経路として、ガラス基板Wの主平面Sの法線方向に延在するように中心軸33に形成された切り欠き部である。溝34を設けることによって、中心軸33の側面と回転台32の内筒面との間の隙間を通ってきた光が、ガラス基板Wの中央部の円孔の内周端面C1と内周端面C1の半径方向の内側を通ることができるため、受光部11で計測される内周端面C1における光の明暗がはっきりし、内周端面C1を正確に計測することができる。
【0025】
図6は、回転機構10の第2の具体例を示した斜視図である。中心軸33に形成される切り欠き部は、図4に示されるような溝形状に限ることはなく、図6に示されるように、ガラス基板Wが静止した状態で、ガラス基板Wの内周端面C1の一部分が中心軸33の側面33aに接触しないような形状であればよい。
【0026】
また、投光部12から照射された光が乱反射しないように、さらには、受光部11が乱反射した光を受光しないように、回転台32と中心軸33は暗色(典型的には、黒色)であることが好ましい。
【0027】
図7は、回転機構10の第3の具体例を示した模式図である。回転機構10は、ガラス基板Wの外周端面C2に外接可能な回転ローラーによって、ガラス基板Wをその周方向に回転させるものでもよい。図7には、回転ローラー41〜43が示されている。回転ローラーの全てが、ガラス基板Wに回転力を与える駆動源を備えるものでもよいし、その一部のみがそのような駆動源を備え、残りがそのような駆動源を備えずに回転支持ガイドとして機能するものでもよい。
【0028】
図8は、図7に示した回転機構10を利用して、カセット40に収容されている複数のガラス基板Wの中心ずれを測定する装置を説明するための図である。上述の図3では、投光部12から受光部11への光の照射方向が上下方向である構成を例示した。図8では、投光部12から受光部11への光の照射方向が水平方向である構成を例示する。なお、図8において、図3に例示した、投光部12,受光部11,演算部16,出力部17などは同様の構成でよいため、省略している。
【0029】
図8は、カセット40を上方から見た図である。カセット40は、複数のガラス基板Wをそれらの主平面Sが鉛直となるように立てた状態で、横方向(すなわち、主平面Sの法線方向)に互いに離隔して並べて収容可能な収納容器(具体例として、ラック)である。カセット40は、複数のガラス基板Wを、それらの上部と下部を開放して露出させた状態で、支持している。回転ローラー41,42は、一枚のガラス基板Wを下方から規定位置まで押し上げ、規定位置まで押し上げたガラス基板Wを再び下降させることが可能な昇降機構として備えられている。回転ローラー41,42は、押し上げ前の初期状態では、カセット40の下方に配置されている。その規定位置には、ガラス基板Wにその周方向の回転力を与える駆動源を備える図7に示した回転ローラー43が設置されている(図8では省略)。また、カセット40は、カセット40の横方向への移動を可能にするキャリア44の上に載せられている。
【0030】
図9は、カセット40に収容されている複数のガラス基板Wの中心ずれを測定する方法を説明するための図である。図9は、カセット40を側方から見た図である。(a)(b)に示されるように、不図示の測定開始スイッチが押されると、回転ローラー41,42が上昇する。回転ローラー41,42は、ガラス基板W1の下部の外周端面を支えながら、ガラス基板W1を立てたまま上昇させて収納容器40から離脱させる。(c)に示されるように、回転ローラー41,42は、ガラス基板W1の上部の外周端面が回転ローラー43に接するまで、ガラス基板W1を上昇させる。ガラス基板W1の上部の外周端面が回転ローラー43に接すると、回転ローラー43は、モータMの駆動力によって、ガラス基板W1を周方向に回転させる。不図示の受光部11は、上述と同様に、ガラス基板W1の主平面Sの半径方向幅Bを全周にわたって計測する。(d)に示されるように、全周分の半径方向幅Bの計測後、回転ローラー41,42は、ガラス基板W1を立てたまま下降させて収納容器40の元の収容位置に戻す。(e)に示されるように、ガラス基板W1の収容位置の隣に収容されているガラス基板W2が回転ローラー41,42によって収納容器40から上昇させて離脱できるように、カセット40は1ピッチ(収納間隔の長さ分)移動する。カセット40と回転ローラー41,42との横方向の相対位置を移動させるピッチ移動機構として、キャリア44とキャリア44の横方向への移動を制御する制御部45とが備えられている。(f)に示されるように、回転ローラー41,42は、ガラス基板W2の下部の外周端面を支えながら、ガラス基板W2を立てたまま上昇させて収納容器40から離脱させる。以下、同様に繰り返される。
【0031】
不図示の演算部16は、計測された半径方向幅Bの最大値Bmaxと最小値Bminの差Aを、複数のガラス基板Wそれぞれについて演算する。これにより、複数のガラス基板W毎の中心ずれを測定できる。差Aの演算は、一枚のガラス基板Wの全周分の半径方向幅Bの計測が終了する毎に行ってもよいし、カセット40に収容されている複数のガラス基板Wの全周分の半径方向幅Bの計測が全て終了した段階でまとめて行ってもよい。
【0032】
このように、上述の実施例によれば、ガラス基板Wの内周と外周の中心ずれを測定するために、内周と外周の中心をそれぞれ求める必要がないため、ガラス基板Wの中心ずれを簡易的に短時間で測定できる(内周の真円度と外周の真円度が、それぞれ測定する中心ずれの値より充分に小さい場合)。また、ガラス基板Wの回転中心と回転機構10の回転中心が一致していなくてもよく、予め芯出しを行うことを不要にできるため、その点でも測定時間短縮が可能となる。測定時間短縮の結果、ガラス基板の生産性も向上する。
【0033】
測定時間短縮の効果を確認するため、従来の触針式同芯度測定器(メーカー:KOSAKA。装置名:Roncorder EC1550)と本発明の実施例として図3に示した非接触式の測定装置とについて、測定タクト時間と測定のみに要する時間を比較した。従来の触針式同芯度測定器の場合、測定タクト時間は約3分、測定のみに要する時間は約1分20秒であるのに対して、図3に示した非接触式の測定装置の場合、測定タクト時間は約11秒、測定のみに要する時間は約7秒であり、大幅な時間短縮効果が確認できた。
【0034】
また、本発明の中心ずれ測定装置及びその方法の実施例として図8,9に例示した装置又は方法によれば、複数のガラス基板Wの中心ずれをまとめて短時間に測定できる。特に、量産工程では、複数のガラス基板Wをカセット40に立てた状態で取り扱われることが多いため、測定時間削減によって得られる効果は特に高い。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形、改良及び置換を加えることができる。
【0036】
例えば、主平面Sの半径方向幅Bは、内周端面C1と外周端面C2との撮像画面上での画素列に沿った離間距離によっても、計測可能である。撮像素子によって得られる撮像画像は、複数の画素から構成される。撮像画像を構成する各画素に割り当てられた座標によって、撮像画像内の被写体の位置を表すことができる。
【0037】
例えば、図1Aに示した計測領域DAを、撮像画像の視野とする。撮像画像の左右方向をx軸方向とし、上下方向をy軸方向とすると、内周端面C1の絶対位置は、内周端面C1上の複数の点Pjが属する画素の位置を表す座標(xj,yj)によって定めることができる(jは、自然数)。同様に、外周端面C2の絶対位置は、外周端面C2上の複数の点Piが属する画素の位置を表す座標(xi,yi)によって定めることができる(iは、自然数)。したがって、上述の演算部16は、x座標が互いに同一の点Pjと点Piとの間の距離(画素数)を半径方向幅Bとして計測することができる。そして、回転機構10によって、内周端面C1と外周端面C2を計測領域DA内に入るように全周にわたって移動させることによって、主平面Sの全周にわたる半径方向幅Bを計測できる。
【0038】
また、上述の実施例では、主平面Sを全周にわたって計測領域DAに通過させる可動手段として、回転機構10を例示した。この実施例では、受光部11などの計測部を固定したまま、回転機構10を回転させることによって、計測領域DA内のガラス基板Wを動かしている。しかしながら、当該可動手段は、受光部11などの計測部を動かすことによって、主平面Sを全周にわたって計測領域DAに通過させてもよい。
【0039】
また、上述の図8,9に示した実施例では、回転ローラー41〜43の横方向への移動は固定し、カセット40を横方向に移動させて、回転ローラー41〜43とカセット40との横方向での相対位置を変えていた。しかしながら、回転ローラー41〜43を横方向に移動させて、カセット40の横方向への移動を固定することにより、回転ローラー41〜43とカセット40との横方向での相対位置を変えてもよい。
【0040】
本発明の測定の対象となるガラス基板としては特に制限はなく、中央部に円孔を有する円盤形状の基板であればよい。
【0041】
また、ガラス基板のガラスの種類は、それぞれの用途に適したものが適宜選択されるが、アモルファスガラスでもよいし、結晶化ガラスでもよく、ガラス基板の表層に強化層を有する強化ガラス(例えば、化学強化ガラス)でもよい。
【0042】
また、加工前のガラス基板(以下、ガラス素基板ともいう)の製造方法としても特に制限はなく、フロート法で造られたものでもよく、フュージョン法で造られたものでもよく、プレス成形法で造られたものでもよい。
【0043】
中央部に円孔を有する円盤形状の基板の中でも、磁気記録媒体用ガラス基板は、他のガラス基板製品に要求される形状特性に比べて厳しいレベルのものが要求されるが、本測定装置を使用した測定方法および本測定装置を使用した測定方法を有する検査工程を含む磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法が最も好適に適用されるものである。
【0044】
一般に、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程は、以下の工程を含む。(1)フロート法、フュージョン法またはプレス成形法で成形されたガラス素基板を、中央部に円孔を有する円盤形状に加工した後、内周側面と外周側面に面取り加工を行う。(2)ガラス基板の上下主平面に研削加工を行う。(3)ガラス基板の側面部と面取り部に端面研磨を行う。(4)ガラス基板の上下主平面に研磨を行う。研磨工程は、1次研磨のみでも良く、1次研磨と2次研磨を行っても良く、2次研磨の後に3次研磨を行っても良い。(5)ガラス基板の精密洗浄を行い、磁気記録媒体用ガラス基板を製造する。(6)磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層などの薄膜を形成し、磁気ディスクを製造する。
【0045】
なお、上記磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程において、各工程間にガラス基板洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施してもよい。さらに、磁気記録媒体用ガラス基板に高い機械的強度が求められる場合、ガラス基板の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、または研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施してもよい。
【0046】
本発明において、磁気記録媒体用ガラス基板は、アモルファスガラスでもよく、結晶化ガラスでもよく、ガラス基板の表層に強化層を有する強化ガラス(例えば、化学強化ガラス)でもよい。また、本発明のガラス基板のガラス素基板は、フロート法で造られたものでもよく、フュージョン法で造られたものでもよく、プレス成形法で造られたものでもよい。
【0047】
本発明の測定装置は、測定基準を満たせば、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程のガラス基板の形状付与工程(1)や、端面研磨工程(3)で、加工途中の磁気記録媒体用ガラス基板の形状の検査に使用できる。また、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程において、測定基準を満たせば、ガラス基板を精密洗浄して製造された磁気記録媒体用ガラス基板(5)の形状検査(磁気記録媒体用ガラス基板の最終検査)や、磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層などの薄膜を形成して製造された磁気ディスク(6)の形状検査に使用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 中心ずれ測定装置
10 回転機構
11 受光部
12 投光部
13 受光面
14 投光面
15 支柱
16 演算部
17 出力部
18 台座
21 光源
22 レンズ
23 テレセントリックレンズ
24 ビームスプリッタ
25 CCDイメージセンサ
26 CMOSイメージセンサ
31 ハウジング
32 回転台
33 中心軸
40 カセット
41〜43 回転ローラー
44 キャリア
45 制御部
A 差
B 半径方向幅
C1 内周端面
C2 外周端面
DA 計測範囲
S 主平面
W ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に円孔を有する円盤状基板の内周と外周の中心ずれを測定する中心ずれ測定装置であって、
前記内周と前記外周に挟まれた主平面の半径方向幅を円盤状基板の全周にわたって計測する計測部と、
前記計測部によって計測された前記半径方向幅の最大値と最小値の差を演算して該差を用いて中心ずれを演算する演算部と、
を備えることを特徴とする、中心ずれ測定装置。
【請求項2】
可動機構を更に備え、
前記計測部が、所定の計測領域内の被計測物を計測するものであって、
前記可動機構は、円盤状基板の全周にわたって前記主平面を前記計測領域に通過させる、請求項1に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項3】
前記可動機構が、前記円盤状基板の周方向に前記円盤状基板を回転させる回転機構を有する、請求項2に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項4】
前記計測部が、前記円盤状基板の主平面の方向から到来した光を受光する受光部を有し、
前記半径方向幅が、前記受光部によって受光された光に基づいて計測される、請求項2又は3に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項5】
前記計測部が、前記円盤状基板に対して光を照射する投光部を有する、請求項4に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項6】
前記受光部が、前記主平面の方向から到来した光を撮像素子で受光する、請求項4又は5に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項7】
前記受光部の受光面が下向きである、請求項4から6のいずれか一項に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項8】
前記可動機構が、
中央部に円孔を有する複数の円盤状基板を立てた状態で横方向に並べて収容する収納容器から、収容されている円盤状基板を立てた状態で上昇させて離脱させ、離脱させた円盤状基板を下降させて前記収納容器に戻す昇降機構と、
前記収納容器に収容されている別の円盤状基板が前記昇降機構によって前記収納容器から上昇して離脱するように、前記収納容器と前記昇降機構との前記横方向の相対位置を移動させるピッチ移動機構とを有する、請求項2から6のいずれか一項に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項9】
前記円盤状基板が、ガラス基板である、請求項1から8のいずれか一項に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項10】
前記ガラス基板が、磁気記録媒体用ガラス基板である、請求項9に記載の中心ずれ測定装置。
【請求項11】
中央部に円孔を有する円盤状基板の内周と外周の中心ずれを測定する中心ずれ測定方法であって、
前記内周と前記外周に挟まれた主平面の半径方向幅を円盤状基板の全周にわたって計測する計測工程と、
計測された前記半径方向幅の最大値と最小値の差を演算する演算工程と、
を有する中心ずれ測定方法。
【請求項12】
中央部に円孔を有する円盤状基板の内周と外周の中心ずれを測定する中心ずれ測定方法であって、
中央部に円孔を有する複数の円盤状基板を立てた状態で横方向に並べて収容する収納容器から、収容されている円盤状基板を昇降機構によって立てた状態で上昇させて離脱させ、
離脱させた円盤状基板を該円盤状基板の周方向に回転させ、
回転させた円盤状基板の主平面の半径方向幅を全周にわたって計測する計測工程と、
前記半径方向幅を計測した円盤状基板を前記昇降機構によって下降させて前記収納容器に戻し、
前記収納容器に収容されている別の円盤状基板が前記昇降機構によって前記収納容器から上昇して離脱するように、前記収納容器と前記昇降機構との前記横方向の相対位置を移動させるピッチ移動工程と、
計測工程で計測された前記半径方向幅の最大値と最小値の差を演算して該差を用いて中心ずれを演算する演算工程とを含む、中心ずれ測定方法。
【請求項13】
前記円盤状基板が、ガラス基板である、請求項11又は12に記載の中心ずれ測定方法。
【請求項14】
前記ガラス基板が、磁気記録媒体用ガラス基板である、請求項13に記載の中心ずれ測定方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の中心ずれ測定装置を用いた検査工程を有する円盤状基板の製造方法。
【請求項16】
請求項11から14のいずれか一項に記載の中心ずれ測定方法が使用される検査工程を含む円盤状基板の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−154740(P2012−154740A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13221(P2011−13221)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】