説明

二相の基板洗浄化合物を使用するための方法およびシステム

【課題】二相の基板洗浄化合物を使用するための方法およびシステム
【解決手段】基板表面から汚染物質を除去するための洗浄化合物、装置、および方法が提供される。半導体基板の表面から粒子状汚染物質を除去するための代表的な洗浄化合物が提供される。洗浄化合物は、約1cPから約10,000cPまでの間の粘度を有する粘性液体を含む。洗浄化合物は、また、粘性液体の中に分散された複数の固体成分を含み、複数の固体成分は、基板表面から粒子状汚染物質を除去するために、基板表面上の粒子状汚染物質と相互作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
集積回路およびメモリセルなどの半導体デバイスの製作では、半導体基板(「基板」)上に特徴を定めるために、一連の製造動作が実施される。一連の製造動作の間、基板表面は、各種の汚染物質に曝される。汚染源としては、製造動作中に存在する基本的に任意の材料が考えられる。例えば、汚染源は、数あるなかでも、とりわけ、プロセスガス、化学剤、堆積材料、エッチング副産物、および液体を含むであろう。各種の汚染物質は、粒子状の形態(粒子)で、ウエハ表面上に堆積することができる。
【0002】
半導体基板の表面は、基板汚染物質を取り除かれる必要がある。もし除去されないと、汚染付近のデバイスが動作不可能になる恐れがある。基板の汚染物質は、また、デバイスの性能特性に影響を及ぼし、通常より速い速度でデバイスの障害を引き起こす可能性もある。このため、基板表面および基板上に定められた特徴を損なうことなく、実質的に完璧な手法で、基板表面から汚染物質を取り除く必要がある。粒子状汚染のサイズは、ウエハ上に製作される特徴の微小寸法とおおよそ同程度であることが多い。したがって、表面および基板上の特徴に悪影響を及ぼすことなくこのような小さい粒子状汚染を除去することは、極めて困難である恐れがある。
【0003】
以上から、基板表面から汚染物質を除去してデバイスの歩留まりを向上させるための、改善された基板洗浄技術が必要とされていることがわかる。
【発明の開示】
【0004】
概して、本発明は、基板表面から汚染物質を除去してデバイスの歩留まりを向上させるための、改善された基板洗浄技術を提供することによって、これらのニーズを満たすものである。本発明は、溶液、方法、プロセス、装置、またはシステムを含む多くの形態で実現可能であることを理解されるべきである。以下では、発明のいくつかの実施形態について説明される。
【0005】
一実施形態では、半導体基板表面から粒子状汚染物質を除去するための洗浄化合物が提供される。洗浄化合物は、約1cPから約10,000cPまでの間の粘度を有する粘性液体を含む。洗浄化合物は、また、粘性液体の中に分散された複数の固体成分を含む。複数の固体成分は、基板表面から粒子状汚染物質を除去するために、基板表面上の粒子状汚染物質と相互作用する。
【0006】
別の一実施形態では、基板の基板表面から粒子状汚染物質を取り除くための装置が提供される。装置は、基板を保持するための基板サポートアセンブリを含む。装置は、また、基板表面から粒子状汚染物質を取り除くために洗浄化合物を分配するためのアプリケータを含む。洗浄化合物は、1/秒のせん断速度で約1cPから約10,000cPまでの間の粘度を有する粘性液体であり、粘性液体の中には、複数の固体成分が分散されている。
【0007】
さらに別の一実施形態では、基板表面から粒子状汚染物質を取り除くための方法が提供される。方法は、中に固体成分を分散された粘性液体を基板表面に塗布することを含む。方法は、また、少なくとも1つの固体成分を基板表面上の粒子状汚染物質に接近させるために、下向き成分およびせん断成分を有する力を粘性液体に加えることを含む。方法は、さらに、少なくとも1つの固体成分および粒子状汚染物質を基板表面から除去することを含む。
【0008】
本発明の原理を例として示した添付の図面と関連させた、以下の詳細な説明から、本発明のその他の態様および利点がより明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、添付の図面と関連させた以下の詳細な説明によって、容易に理解される。類似の参照符号は、類似の構成要素を表すものとする。
【0010】
基板から粒子状汚染物質を除去してプロセスの歩留まりを向上させるための、改善された基板洗浄技術について、いくつかの代表的な実施形態が提供される。本発明は、溶液、プロセス、方法、装置、またはシステムを含む多くの形態で実現可能であることを理解されるべきである。以下では、本発明のいくつかの実施形態について説明される。当業者ならば、本発明が、本明細書で特定された一部または全部の詳細をともなわずとも実施可能であることがわかる。
【0011】
本明細書で説明される実施形態は、研磨性の接触の必要性を排除するとともに、高アスペクト比の特徴を一部含むであろう半導体基板から汚染物質を取り除くに際して効率的であるような、洗浄技術を提供する。これらの実施形態は、半導体洗浄の応用に関連した具体例を提供するが、これらの洗浄応用は、基板からの汚染物質の除去を必要とする任意の技術に拡大適用可能である。後述されるように、連続液相および分散固相を有する洗浄溶液が提供される。個体粒子は、液相全体に分散されている。
【0012】
図1Aは、本発明の一実施形態にしたがった、半導体基板105の表面106から汚染物質103を除去するための洗浄溶液(または化合物)101の具体図を示している。洗浄溶液101は、粘性液体107と、固体成分109とを含む。固体成分109は、粘性液体107の中に分散されている。粘性液体107は、固体成分109と汚染物質103とを相互作用させ、最終的に基板表面106から汚染物質103を除去するために、固体成分109を汚染物質103に接近させるための媒介物を提供する。一実施形態では、固体成分109は、化学剤によって、または追加の界面活性剤によって加水分解される。一実施形態では、洗浄溶液101は、カルボン酸の固体を2%を超える重量/重量パーセントで脱イオン水(DIW)に溶解させることによって作成することができる。固体成分109は、DIWに溶解されたカルボン酸から沈殿したカルボン酸の固体である。一実施形態では、カルボン酸の炭素数は、4以上である。溶解されたカルボン酸は、1/秒のせん断速度で1cP(センチポアズ)から約10,000cPまでの間の粘度を有する粘性液体107を形成するであろう。留意すべきは、洗浄化合物(または溶液)が、水以外の溶媒にカルボン酸(または塩)を混ぜることによって作成可能であることである。アルコールなど、その他の極性溶媒または非極性溶媒もまた、使用することができる。
【0013】
固体成分109は、懸濁した状態で粘性液体107の中に分散される。一実施形態では、粘性液体107は、図1Bに示されるように、基板表面106に塗布することができる洗浄化合物101を、固体成分109網と合わさって形成するゲルである。固体成分109は、互いに相互作用することによって、ファンデルワールス力を通じて固体化合物網を形成する。固体成分109は、ゲルの形態をとる粘性液体107の中に懸濁されている。比較的高いゲルの粘度は、ゲルに加えられた力がゲル内の固体化合物に力を伝えることを可能にする。図1Bに示されるような洗浄化合物101は、カルボン酸の固体を、約3%から約5%までの間、好ましくは約4%から約5%までの間など、高めの濃度でDIWと混ぜることによって形成することができる。一実施形態では、カルボン酸の固体とDIWとの混合は、DIWに固体を溶解させる時間を短くするために、約75℃から約85℃までの温度に加熱することができる。ひとたび固体が溶解されると、洗浄溶液は、冷却することができる。冷却プロセス中は、針状または板状の形態の固体化合物が沈殿する。
【0014】
一実施形態では、粘性液体107は、せん断速度の増大とともに粘度を減少させる非ニュートン流体である。しかしながら、粘性液体107は、ニュートン流体であることも可能である。図1Cは、説明された実施形態の非ニュートン流体の図を示している。粘度は、せん断速度が非常に高いとゼロに近づく。非ニュートン流体の粘度は、せん断速度の増大とともに減少する。洗浄動作中は、一定範囲のせん断速度が選択される。一例として、DIWの中で3〜4重量/重量パーセントのカルボン酸を有する液体ゲルは、0.1/秒のせん断速度で約1000cPの粘度を有し、その粘度は、せん断速度が1000/秒に増大すると約10cPまで落ちる。
【0015】
上述のように、粘性液体107は、約10cPから約10,000cPまでの間の粘度を有する。溶液101の表面にせん断力が加えられると、粘性液体107は、そのせん断力の一部を固体成分109に伝えることができる。固体成分109は、汚染物質103に接触し、それらの汚染物質を基板表面から遠ざける。
【0016】
特定の実施形態に応じて、洗浄剤101の中の固体成分109は、固相の中の基本的に任意のサブ相を表すような物理的性質を持ちうることを理解されるべきである。ここで、固相は、液体でも気体でもない相として定められる。例えば、弾力性および可塑性などの物理的性質は、洗浄剤101の中の様々な異なるタイプの固体成分109の間で可変である。また、各種の実施形態では、固体成分109は、結晶性の固体または非晶質の固体として定められることを理解されるべきである。それらの特定の物理的性質にかかわらず、洗浄剤101の中の固体成分109は、基板表面106に近接近してまたは接触して配置された際に、基板表面106の表面に対する付着を回避可能であることが望ましい。また、固体成分109の機械的性質は、洗浄プロセス中に、基板表面106を損傷させないことが望ましい。一実施形態では、固体成分109の硬度は、基板表面106の硬度より小さい。
【0017】
さらに、固体成分109は、基板表面106上に存在する汚染物質103に近接近してまたは接触して配置された際に、それらの汚染物質103との間に相互作用を確立可能であることが望ましい。例えば、固体成分109のサイズおよび形状は、固体成分109と汚染物質103との間に相互作用を確立するのに好都合なものであることが望ましい。一実施形態では、固体成分109は、汚染物質の断面積より大きい断面積を有する。図1Dに示されるように、固体成分109’が、粒子状汚染物質103’の表面積A103'と比べて大きい表面積A109'を有する場合、固体成分109’に及ぼされるせん断力FS'は、大雑把に言うと、面積比(FS'×A109'/A103')を乗じたせん断力で粒子状汚染物質103’に伝えられる。例えば、粒子状汚染物質103’の有効径Dは、約0.1ミクロン未満である。固体成分109’の幅Wおよび長さLは、いずれも、約5ミクロンから約50ミクロンまでの間であり、固体成分109’の厚さは、約1ミクロンから約5ミクロンまでの間である。面積比(または力の乗数)は、2,500から約250,000までの間、またはそれより大きいことが可能である。粒子状汚染物質103’に及ぼされるせん断力は、非常に大きく、基板表面106から粒子状汚染物質103’を撤去することが可能である。
【0018】
固体成分109’から汚染物質103’へのエネルギの伝達は、直接的または間接的な接触を通じて生じ、基板表面106からの汚染物質103’の撤去を引き起こすことができる。この実施形態では、固体成分109’は、汚染物質103’より柔らかいまたは堅いことが可能である。もし固体成分109’が汚染物質103’より柔らかい場合は、固体成分109’は、衝突の最中に、より大きな変形を生じやすくなり、その結果、汚染物質103’を基板表面106から撤去するための運動エネルギの伝達が減少する。しかしながら、固体成分109’が汚染物質103’より柔らかい場合は、固体成分109’と汚染物質103’との間の付着結合は強くなるであろう。反対に、もし固体成分109’が少なくとも汚染物質103’と同程度に堅い場合は、固体成分109’と汚染物質103’との間に実質的に完璧なエネルギ伝達を生じることができるので、汚染物質103’を基板表面106から撤去する働きをする力が増大する。しかしながら、固体成分109’が汚染物質103’と少なくとも同程度に堅い場合は、固体成分109’の変形に依存する相互作用の力は低減されるであろう。固体成分109’および汚染物質103’に関連した物理的性質ならびに相対速度は、それらの間における衝突の相互作用に影響を及ぼすことを理解されるべきである。
【0019】
図1Eおよび図1Fは、基板表面106から汚染物質103を除去するために洗浄剤101がどのように機能するかの別の一実施形態を示している。洗浄プロセス中は、粘性液体107の中の固体成分109が基板表面106上の汚染物質103に接近するまたは接触するように、その固体成分109に、力Fの下向き成分である下向きの力FDが作用される。比較的高い粘性液体107の粘度は、粘性液体107に加えられた下向きの力のかなりの部分を固体成分109に作用させることを可能にする。固体成分109が汚染物質103に十分に接近するまたは接触すると、固体成分109と汚染物質103との間に相互作用が確立される。固体成分109と汚染物質103との間の相互作用は、汚染物質103と基板表面106との間の付着力、および固体成分109と汚染物質との間のあらゆる反発力に打ち勝つのに十分である。したがって、固体成分109が、力Fのせん断成分であるせん断力FSによって基板表面106から遠ざけられる際は、固体成分109と相互作用した汚染物質103もまた、基板表面106から遠ざけられる、すなわち、汚染物質103は、基板表面106から取り除かれる。一実施形態では、固体成分109が汚染物質103に十分に近づけられたときに、固体成分109と汚染物質103との間に相互作用が生じる。一実施形態では、この距離は、約10ナノメートル以内であることが可能である。別の一実施形態では、固体成分109が汚染物質103に実際に接触したときに、固体成分109と汚染物質103との間に相互作用が生じる。この相互作用は、固体成分109が汚染物質103と係合すると表現することも可能である。
【0020】
固体成分109と汚染物質103との間の相互作用の力は、汚染物質103を基板表面106につなぐ力よりも強い。図1Fは、固体成分109が基板表面106から遠ざけられる際に、固体成分109と結合された汚染物質103もまた、基板表面106から遠ざけられることを示している。洗浄プロセス中は、複数の汚染物質除去メカニズムが発生可能であることに留意するべきである。
【0021】
固体成分109は、汚染103と相互作用することによって洗浄プロセスに影響を及ぼすので、基板表面106全体にわたる汚染103の除去は、固体成分109が基板表面106全体に如何に良く分布しているかに依存することを理解されるべきである。好ましい一実施形態では、固体成分109は、非常に良く分布しているので、基板表面106上の基本的にどの汚染物質103も、少なくとも1つの固体成分109に接近している。また、1つの固体成分109は、同時的であれ順次的であれ、2つ以上の汚染物質103と接触できるまたは相互作用できることも理解されるべきである。さらに、固体成分109は、全て同じ成分ではなく、異なる成分の混合であることが可能である。このため、洗浄溶液は、特定の用途に合わせて、すなわち特定の汚染物質を対象として、設計することができる。あるいは、洗浄溶液は、複数の固体成分を提供された場合に、広範囲におよぶ汚染物質を対象にすることができる。
【0022】
固体成分109と汚染物質103との間の相互作用は、数あるなかでも、とりわけ、付着、衝突、および引力を含む1つまたは複数のメカニズムを通じて確立することができる。固体成分109と汚染物質103との間の付着は、化学的および/または物理的相互作用を通じて確立することができる。例えば、一実施形態では、化学的相互作用が、固体成分109と汚染物質103との間に糊に似た効果を生じさせる。別の一実施形態では、固体成分109の機械的性質によって、固体成分109と汚染物質103との間の物理的相互作用が促進される。例えば、固体成分109は、汚染物質103に押し付けられたときに汚染物質103が固体成分109の中に刷り込まれるように、可展性であることが可能である。別の一実施形態では、固体成分109網の中に汚染物質103を巻き込ませることが可能である。この実施形態では、固体成分109網を通じて機械的応力を汚染物質103に伝えることによって、基板表面106からの汚染物質103の除去に必要とされる機械力を提供することができる。
【0023】
汚染物質103による刷り込みに起因する固体成分109の変形は、固体成分109と汚染物質103との間に機械的結合を形成する。例えば、汚染物質103の表面トポグラフィは、汚染物質103が固体成分109の中に押し込まれるにつれて、固体成分109材料の部分が汚染物質103の表面トポグラフィの中の領域に入り、そこから容易に脱出することができなくなり、そうして固定のメカニズムが形成されるような、表面トポグラフィであることが可能である。
【0024】
上記に加えて、一実施形態では、固体成分109と汚染物質103との間の相互作用は、静電気引力に起因することができる。例えば、もし固体成分109と汚染物質103とが反対の表面電荷を有する場合は、それらは、互いに電気的に引きつけられる。固体成分109と汚染物質103との間の静電気引力は、汚染物質103を基板表面106につなぐ力に打ち勝つのに十分であることが可能である。
【0025】
別の一実施形態では、固体成分109と汚染物質103との間に静電反発力が存在することが可能である。例えば、固体成分109および汚染物質103は、ともに、負の表面電荷または正の表面電荷のいずれかを有することができる。もし、固体成分109と汚染物質103とを十分に近接近させることが可能であれば、それらの間の静電反発力は、ファンデルワールス力を通じて打ち負かすことが可能である。粘性液体107によって固体成分109に加えられる力は、静電反発力を打ち負かして固体成分109と汚染物質103との間にファンデルワールス引力を確立させるのに十分である。
【0026】
また、別の一実施形態では、固体成分109および汚染物質103の一方の上または両方の上に存在する表面電荷を相殺することによって、固体成分109と汚染物質103との間の静電反発力が低減されて、それらの間の相互作用が促進されるように、あるいは固体成分または汚染のいずれかが互いに対して表面電荷の反転を呈して、その結果として静電気引力を生じるように、粘性液体107のpHを調整することができる。例えば、3〜4%のカルボン酸をDIWに溶解させ、ゲル(粘性液体)のpH値を増大させるために脂肪酸の固体成分を加えて作成されたカルボン酸ゲルに、水酸化アンモニウム(NH4OH)などの塩基を加えることができる。加えられるNH4OHの量は、約0.05%から約5%までの間、好ましくは約0.25%から約2%までの間である。水酸化アンモニウムは、脂肪酸の固体を加水分解させてゲル中に分散させることを助ける。水酸化アンモニウムは、また、汚染物質103を加水分解することもできる。金属汚染物質を取り除くには、より低いpHの溶液を使用することもできる。pH値を約6から約8までの間に調節するために、緩衝HF溶液を使用することができる。
【0027】
洗浄効率を高めるためには、水酸化アンモニウムなどの塩基の使用に加えて、ドデシル硫酸アンモニウム、すなわちCH3(CH211OSO3NH4などの界面活性剤をカルボン酸ゲルに加えることもできる。一実施形態では、約0.1%から約5%までの界面活性剤が、洗浄溶液101に加えられる。好ましい一実施形態では、約0.5%から約2%までの界面活性剤が、洗浄溶液101に加えられる。
【0028】
また、固体成分109は、粘性液体107への溶解を回避すること、または粘性液体107の中で限られた溶解度を有することが望ましく、なおかつ、粘性液体107全体への分散を可能にする表面機能性を有することが望ましい。液体媒質107全体への分散を可能にする表面機能性を有さない固体成分109については、それらの固体成分109の分散を可能にするために、液体媒質107に化学分散剤を加えることができる。固体成分109は、それらの特定の化学的特性およびそれらを取り囲む粘性気体107との相互作用に応じて、いくつかの異なる形態のうちの1つまたは複数の形態をとることができる。例えば、各種の実施形態では、固体成分109は、集合体、コロイド、ゲル、合体球、または基本的にその他の任意のタイプの膠着、凝結、凝集、集塊、もしくは合体を形成することができる。その他の実施形態では、固体成分109は、本明細書に明記されていない形態をとることができる。したがって、理解されるべきは、固体成分109が、基板表面106および汚染物質103との相互作用について上述された方式で機能することができるような基本的に任意の固形材料として定められることである。
【0029】
代表的な一部の固体成分109は、脂肪族酸、カルボン酸、パラフィン、セルロース、ワックス、高分子、ポリスチレン、ポリペプチド、およびその他の粘弾性材料を含む。固体成分109材料は、粘性液体107の中でのその溶解限度を超える濃度で存在することが望ましい。また、特定の固体成分109材料に関連した洗浄の有効性は、温度、pH、およびその他の環境条件の関数として可変であることを理解されるべきである。
【0030】
脂肪族酸は、炭素原子が開鎖を形成するような有機化合物によって定められる基本的に任意の酸を表している。脂肪酸は、洗浄剤101の中の固体成分109として使用できる脂肪族酸の一例およびカルボン酸の一例である。固体成分109として使用できる脂肪酸の例は、数あるなかでも、とりわけ、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ミリスチン酸、マルガリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ネルボン酸、パリナリン酸、ティムノドン酸、ブラシジン酸、クルパノドン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、およびこれらの混合を含む。一実施形態では、固体成分109は、C−4から約C−26に到るまでの様々な炭素鎖長によって定められる脂肪酸の混合を表すことができる。カルボン酸は、1つまたは複数のカルボキシル基(COOH)を含む基本的に任意の有機酸によって定められる。また、カルボン酸は、メチル、ビニル、アルキン、アミド、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アゾ、ニトリル、ニトロ、ニトロソ、ピリジル、カルボキシル、ペルオキシ、アルデヒド、ケトン、第1級イミン、第2級イミン、エーテル、エステル、イソシアン化ハロゲン、イソチオシオネート、フェニル、ベンジル、ホスホジエステル、スルフヒドリルを非限定的に含むその他の官能基を含むことができるが、依然として、粘性液体107内における不溶性を維持する。
【0031】
また、カルボン酸塩、リン酸塩、硫酸基、ポリオール基、エチレンオキシドなどの、粘性液体107と混ざる部分を内包させることによって、固体成分109材料の表面機能性に影響を及ぼすことが可能である。理解されるべき点は、固体成分109は、基板105上に存在する汚染物質103と相互作用させられないような形態に固まることのないように、粘性液体107全体に実質的に均一に分散可能であることが望ましいことである。
【0032】
粘性液体107は、イオン性または非イオン性の溶媒およびその他の化学添加剤を含むように調整可能であることを理解されるべきである。例えば、粘性液体107への化学添加剤は、共溶媒、pH調整剤、キレート剤、極性溶媒、界面活性剤、水酸化アンモニウム、過酸化水素、フッ化水素酸、水酸化テトラメチルアンモニウム、ならびに高分子、微粒子、およびポリペプチドなどのレオロジー調整剤を、任意の組み合わせで含むことができる。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態にしたがった、基板表面から汚染物質を除去するための方法のフローチャートを示した図である。なお、図2の方法において言及される基板は、半導体ウエハ、または製造プロセスに関連した汚染物質の除去を必要とするその他の任意のタイプの基板を表しうることを理解されるべきである。また、図2の方法において言及される汚染物質は、粒子状汚染、微量金属汚染、有機汚染、フォトレジストのデブリ、ウエハ取り扱い機器からの汚染、およびウエハ背面の粒子状汚染を非限定的に含む、半導体ウエハ製造プロセスに関連した基本的に任意のタイプの表面汚染物質を表すことができる。
【0034】
図2の方法は、粘性液体またはゲルの中に固体成分を分散された洗浄剤(または溶液)を、基板の上に配する動作201を含む。図2の方法において言及される洗浄剤は、図1A〜1Fに関連して上述されたものと同じである。したがって、洗浄剤の中の固体成分は、懸濁した状態で粘性液体の中に分散される。また、固体成分は、基板を損傷させることおよび基板表面に付着することを回避するように定められる。
【0035】
方法は、また、固体成分に力を加えて固体成分を基板上に存在する汚染物質に接近させ、固体成分と汚染物質との間に相互作用が確立されるようにする動作203を含む。
【0036】
また、一実施形態では、方法は、固体成分と汚染物質との間の相互作用を向上させるために、洗浄剤の温度を制御する動作を含むことができる。より具体的に言うと、固体成分の性質を制御するために、洗浄剤の温度を制御することができる。例えば、固体成分は、温度が高いほど可展性が増し、汚染物質に押し付けられた際に形状的になじみやすくなる。そして、固体成分がひとたび汚染物質に押し付けられて形状的になじむと、今度は、固体成分の可展性を下げて、汚染物質になじんだ形状をより良く維持するために、温度を引き下げ、そうして、固体成分と汚染物質とを効果的に固定する。温度は、粘性液体の粘度を制御するために使用することが可能である。温度は、また、固体成分の可溶性を、ひいては濃度を制御するためにも使用することが可能である。例えば、固体成分は、温度が高いほど、粘性液体に溶解しやすいであろう。温度は、また、基板上においてin-situ(その場)で液液懸濁から固体成分を形成することを制御するおよび/または可能にするためにも使用することができる。別の一実施形態では、方法は、粘性液体の中に溶解した固体を沈殿させる動作を含むことができる。この沈殿動作は、固体を溶媒に溶解させ、次いで、溶媒とは混ざるが固体は溶解させない成分を追加することによって、実現することができる。
【0037】
方法は、さらに、固体成分と相互作用した汚染物質が基板表面から除去されるように、基板表面から固体成分を遠ざける動作205を含む。一実施形態では、方法は、基板から遠ざかる固体成分および/もしくは汚染物質の動きを制御するまたは向上させるために、基板の上方における洗浄剤の流量を制御する動作を含む。基板から汚染を除去するための本発明の方法は、固体成分と除去されるべき汚染物質との間に相互作用が確立されるように、洗浄剤の固体成分に力を加える手段がある限り、多くの異なる手法で実現することができる。
【0038】
一実施形態では、方法は、最終洗浄の動作を含むことができる。最終洗浄の動作では、撤去された汚染物質を含有する洗浄剤は、基板表面からの全ての洗浄剤の除去を促進する適切な化学剤によって取り除かれる。例えば、もし洗浄剤の粘性液体がカルボン酸ゲルである場合は、基板表面からカルボン酸を除去するために、DIWに希釈されたNH4OHを使用することができる。NH4OHは、カルボン酸を加水分解して(または脱プロトン化によってイオン化して)、加水分解されたカルボン酸を基板表面から持ち上げることを可能にする。あるいは、カルボン酸ゲルを基板表面から除去するために、ドデシル硫酸アンモニウム、すなわちCH3(CH211OSO3NH4などの界面活性剤をDIWに加えることができる。
【0039】
別の一実施形態では、上述された最終洗浄動作の後に、すすぎ動作が続く。最終洗浄後は、最終洗浄で使用された化学剤を基板表面から除去するために、DIWなどの液体によって基板表面をすすぐことができる。最終洗浄で使用された液体は、蒸発後に基板表面に化学残留物を残留させないことが望ましい。
【0040】
図3は、基板表面洗浄システム300の一実施形態の概略図を示している。システム300は、基板サポートアセンブリ304を収容する容器307を有する。基板サポートアセンブリ304は、基板301を支える基板ホルダ305を有する。基板サポートアセンブリ304は、回転メカニズム310によって回転される。システム300は、洗浄剤アプリケータ306を含む洗浄剤分配アセンブリ303を有する。アプリケータ306には、洗浄剤を基板301の表面上に分配可能にする複数の分配穴308がある。回転メカニズム310の補助によって、洗浄剤307は、基板表面全体を覆う。一実施形態では、アプリケータ306は、洗浄剤を分配する行為を通じて、洗浄剤に、そして基板表面に、下向きの力を提供する。洗浄剤は、空気圧によって、または機械的ポンプによって、アプリケータ306から押し出すことができる。別の一実施形態では、アプリケータ306は、下向きの機械力によって、基板上の洗浄剤に下向きの力を提供する。回転メカニズム310は、洗浄剤に、そして基板表面に、せん断力を提供する。一実施形態では、回転メカニズム310は、1回転/分(RPM)から約100RPMまでの間、好ましくは約5RPMから約30RPMまでの間の速度で回転される。洗浄剤をアプリケータ306から押し出すために洗浄剤(または化合物)に作用される圧力は、約5PSIから約20PSIまでの間である。あるいは、アプリケータ306は、せん断力を提供するために、基板301の中心を中心に回転することができる。
【0041】
一実施形態では、システム300は、洗浄剤による汚染物質除去のプロセスの完了後に基板表面から洗浄剤を取り除くために、基板表面上にDIW321を分配することができる、ディスペンサ320を含むこともできる。別の一実施形態では、ディスペンサ320は、粘性液体を加水分解し、その粘性液体を基板表面から持ち上げることを可能にするために、上記のDIWにNH4OHを含ませたような洗浄溶液を基板表面上に分配することができる。その後は、洗浄溶液を基板表面から除去するために、同じディスペンサ320または異なるディスペンサ(不図示)によって、DIWを分配することができる。
【0042】
以上では、いくつかの実施形態の観点から本発明の説明がなされてきたが、当業者ならば、先立つ明細書を読み、図面を検討することによって、各種の代替、追加、置換、および等価の形態を認識できるであろうことがわかる。したがって、本発明は、本発明の真の趣旨および範囲に含まれるものとして、このようなあらゆる代替、追加、置換、および等価の形態を含むことを意図している。特許請求の範囲において、構成要素および/またはステップは、特許請求の範囲に特に明記されない限り、いかなる特定の動作順序も示唆しないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1A】本発明の一実施形態にしたがった、基板表面から粒子状汚染を除去するための洗浄溶液の具体図を示している。
【図1B】非ニュートン流体について、応力および粘度の関数としてのせん断速度の図を示している。
【図1C】ゲルおよび固体化合物網をともなう洗浄溶液の具体図を示している。
【図1D】図1Aの洗浄溶液の固体成分が基板表面上の汚染物質に接近している様子の具体図を示している。
【図1E】図1Aの洗浄溶液の固体成分が基板表面上の汚染物質に接触している様子の具体図に示している。
【図1F】図1Aの洗浄溶液の固体成分が基板表面から汚染物質を遠ざけている様子の具体図を示している。
【図2】基板の表面から粒子状汚染物質を除去するためのプロセスフローの一実施形態を示している。
【図3】基板表面洗浄システムの一実施形態の概略図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板表面から粒子状汚染物質を除去するための洗浄化合物であって、
約1cPから約10,000cPまでの間の粘度を有する粘性液体と、
前記粘性液体の中に分散された複数の固体成分であって、前記基板表面から前記粒子状汚染物質を除去するために、前記基板表面上の前記粒子状汚染物質と相互作用する、複数の固体成分と、
を備える洗浄化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄化合物であって、
前記粘性液体は、約2%から約5%までの間のカルボン酸を脱イオン水に溶解させることによって作成されるカルボン酸ゲルである、洗浄化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の洗浄化合物であって、
前記複数の固体成分は、4を超える炭素数を有する脂肪酸である、洗浄化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄化合物であって、
前記脂肪酸は、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ミリスチン酸、マルガリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ネルボン酸、パリナリン酸、ティムノドン酸、ブラシジン酸、クルパノドン酸、およびこれらの混合物からなる群より選択される、洗浄化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の洗浄化合物であって、
前記複数の固体成分は、約5ミクロンから約50ミクロンまでの間の幅および長さを有する、洗浄化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の洗浄化合物であって、
前記複数の固体成分の各自は、0.1ミクロン未満の直径を有する、洗浄化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の洗浄化合物であって、
前記粘性液体のpH値は、約10から約11までの間である、洗浄化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の洗浄化合物であって、
前記pHは、前記粘性液体に水酸化アンモニウムを加えることによって調整される、洗浄化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の洗浄化合物であって、さらに、
前記複数の固体成分を分散させるのを助けるための界面活性剤を備える洗浄化合物。
【請求項10】
請求項9に記載の洗浄化合物であって、
前記界面活性剤は、ドデシル硫酸アンモニウムである、洗浄化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の洗浄化合物であって、
前記粘性液体は、ゲルである、洗浄化合物。
【請求項12】
基板の基板表面から粒子状汚染物質を取り除くための装置であって
前記基板を保持するための基板サポートアセンブリと、
前記基板表面から前記粒子状汚染物質を取り除くために洗浄化合物を分配するためのアプリケータと、
を備え、
前記洗浄化合物は、約1cPから約10,000cPまでの間の粘度を有する粘性液体であり、前記粘性液体の中には、複数の固体成分が分散されている、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、
前記基板サポートアセンブリは、回転メカニズムによって回転される、装置。
【請求項14】
請求項12に記載の装置であって、
前記アプリケータは、前記基板の中心を中心に回転する、装置。
【請求項15】
請求項12に記載の装置であって、
前記アプリケータは、前記洗浄化合物を分配するために、空気圧または機械的ポンプのいずれかを使用して前記アプリケータの下の前記洗浄化合物に下向きの力を作用させる、装置。
【請求項16】
請求項12に記載の装置であって、さらに、
洗浄液体分配ヘッドを備え、前記洗浄剤を前記基板表面から除去するために、前記洗浄液体分配ヘッドによって洗浄液体が分配される、装置。
【請求項17】
請求項12に記載の装置であって、
前記粘性液体は、ゲルである、装置。
【請求項18】
基板表面から粒子状汚染物質を取り除くための方法であって、
中に固体成分を分散された粘性液体を前記基板表面に塗布することと、
少なくとも1つの固体成分を前記基板表面上の粒子状汚染物質に接近させるために、下向き成分およびせん断成分を有する力を前記粘性液体に加えることと、
前記少なくとも1つの固体成分および前記粒子状汚染物質を前記基板表面から除去することと、
を備える方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記粘性液体の粘度は、約1cPから約10,000cPまでの間である、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの固体成分と、前記粒子状汚染物質との間には、相互作用が確立される、方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法であって、
前記粘性液体は、せん断力の増大とともに粘度を減少させる非ニュートン流体である、方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法であって、
前記粘性液体は、ゲルである、方法。
【請求項23】
請求項18に記載の方法であって、さらに、
前記粘性液体を加水分解する洗浄溶液を加えることによって、前記基板表面から前記粘性液体を除去することを備え、前記洗浄溶液は、前記粘性液体の可溶性を高める化学物質を有する、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、さらに、
前記基板表面から前記洗浄溶液を除去するための脱イオン水を加えることによって、前記基板表面から前記洗浄溶液を除去することを備える方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−522780(P2009−522780A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548621(P2008−548621)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/048706
【国際公開番号】WO2007/078975
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】