説明

付着物排出機構付きクリーナ及びそれを用いたチャックテーブルクリーニング方法

【課題】テープかすなどの付着物の再付着を招くことなく、付着物を効率良く除去することができ、薄片化された半導体ウェーハの割れを確実に防止することができる付着物排出機構付きクリーナ及びそれを用いたチャックテーブルクリーニング方法を提供する。
【解決手段】ウェーハを吸着するチャックテーブル15の吸着面16a上に付着している不要な付着物20を除去する付着物排出機構付きクリーナ1であって、付着物20を削り取る刃部7a及び削り取った付着物20を捕捉する捕捉部6とを有するクリーナ本体2と、捕捉した付着物20を吸引して排出する排出手段10と、を備え、クリーナ本体2内には、チャックテーブル15の吸着面16a上に付着している付着物20をクリーナ本体2内に進入させるための開口部8が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハを吸着するチャックテーブルの吸着面上に付着している不要な付着物を除去する付着物排出機構付きクリーナ及びそれを用いたチャックテーブルクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは、バックグラインドステージや、ポリッシュステージや、フレームマウントステージや、ピーリングステージや、ダイシングステージなどにおいて、所定の処理が行われるようになっているため、チャックテーブルの吸着面にダストがない状態で負圧により吸着固定されるようになっている。吸着面上に残留するダストには、空気中に浮遊している異物や、フレームマウントステージでダイシングテープをカッターの刃でカットしたときや、ダイシングテープを交換するときや、ダイシングテープをフレームから剥がすことにより生ずる”テープかす”や、半導体ウェーハの板面にマウントされたチップを保護するために貼着された保護テープを剥がしたときに生じる”テープかす”などを挙げることができる。
【0003】
”テープかす”などのダストが吸着面上に残留した状態で半導体ウェーハが吸着面に吸着されると、ダストが残留している部分で半導体ウェーハが浮き上がった状態となり、裏面研削時にウェーハを均一な厚みに研削することができなくなると共に、ダストが残留している部分で半導体ウェーハにストレスがかかり、ウェーハの割れやチッピングを生ずる場合があるためである。フレームマウントステージやピーリングステージにおいても、ローラなどを介してウェーハに所定の圧力がかかると、ダストが残留している部分で半導体ウェーハにストレスが作用して割れる心配があるためである。したがって、チャックテーブルの吸着面上にはダストが残留していないことを確認すると共に、ダストが残留している場合にはローラやブラシでダストを除去した上で、ウェーハを吸着していた。
【0004】
しかしながら、”テープかす”は、チャックテーブルの吸着面に強固に付着する場合があるため、ローラやブラシを使用する従来の方法では完全に除去することができず、”テープかす”が吸着面に残留したままになる場合があった。半導体ウェーハの厚みが十分に厚い場合は、多少の”テープかす”が残留していても割れなどを生ずる問題はあまり見られないが、半導体ウェーハの厚みが100μm以下になると、従来問題の無かった”テープかす”によって割れやチッピングを生ずる心配があった。
【0005】
”テープかす”などの付着物を除去する従来の一例として、特許文献1で開示されているダイシングチャックテーブルの異物除去装置が開示されている。段落番号[0015]には、「異物7は粘着性を有しており、ダイシングチャックテーブル2への付着は強固である。そこで、本発明においては、払拭面を硬質な材料(例えば、高速度鋼(工具鋼)などの金属、または硬質ゴムのブレードなど)にしたバー状の異物除去部材8a、及びこの異物除去部材8aを移動させると共にダイシングチャックテーブル2の表面に押圧する附勢力を異物除去部材8aに付与する移動機構8bから成る異物除去装置8を設け、異物除去部材8aの接触面をテーブル面に加圧接触させた状態のまま異物除去装置8を図示の矢印方向へ往復動させることにより異物7を除去している。」と記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−291400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明では、異物除去装置8の払拭面への付着物が多くなった場合に、除去効率が低下するばかりか付着物の再付着を招いたり、消耗部品の交換または払拭面の清掃を行ったりする必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、”テープかす”などの付着物の再付着を招くことなく、付着物を効率良く除去することができ、薄片化された半導体ウェーハの割れを確実に防止することができる付着物排出機構付きクリーナ及びそれを用いたチャックテーブルクリーニング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、半導体ウェーハを吸着するチャックテーブルの吸着面上に付着している不要な付着物を除去する付着物排出機構付きクリーナであって、前記付着物を削り取る刃部及び削り取った前記付着物を捕捉する捕捉部とを有するクリーナ本体と、捕捉した前記付着物を吸引して排出する排出手段と、を備え、前記クリーナ本体内には、前記チャックテーブルの吸着面上に付着している前記付着物を前記クリーナ本体内に進入させるための開口部が設けられている付着物排出機構付きクリーナを提供する。
【0010】
また、本発明の他の態様は、半導体ウェーハを吸着するチャックテーブルの吸着面に付着している不要な付着物を除去するチャックテーブルクリーニング方法であって、請求項1〜5の何れか1項に記載の付着物排出機構付きクリーナを円形の前記吸着面上で遊星運動させながら前記付着物を除去するチャックテーブルクリーニング方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
以上の如く、本発明によれば、チャックテーブルから付着物を完全に効率良く取り除くことができ、付着物の再付着を防止することができる。したがって、薄片化された半導体ウェーハの割れを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下添付図面に従って本発明に係る付着物排出機構付きクリーナ(以下、「クリーナ」という)の好ましい実施形態について説明する。図1には、本発明に係るクリーナの代表的形態が示されている。本実施形態のクリーナ1は、チャックテーブル15の吸着面16aに対向する対向面に凹設された捕捉部6内で刃部7aを有する本体2と、刃部7aにより削り取られ、捕捉部6内に収容された付着物20を吸引して外部へ排出する付着物吸引ユニット10と、を備えている。
【0013】
図4には、クリーナ1によりクリーニングされるチャックテーブル15の一例が示されている。チャックテーブル15は、多孔質セラミック製のチャックテーブルであり、上面に吸着面16aを有するセラミック体16と、このセラミック体16を支持する金属製の支持体17とを備えている。真空源19により支持体17を貫通する通路18から真空引きすることにより、ウェーハ13に負圧が作用し、ウェーハ13が吸着面16aに吸着固定されるようになっている。このようなチャックテーブル15は、図示しない駆動源により回動されるようになっている。
【0014】
このようなチャックテーブル15の適用例は限定されるものではないが、半導体製造プロセスを例に挙げると、バックグラインドステージやポリシングステージに加え、フレームマウントステージやテープピーリングステージなどで適用することができる。その他の適用例として、非常に薄いシート状のものを平面に吸着させる各種測定装置や検査装置に適用することもできる。チャックテーブル15は、例えば数100μm〜数10μmの非常に薄いものを変形させたり、破損させたりすることなく吸着固定できるものである。
【0015】
個々のチャックテーブル15により真空吸着されるウェーハ13の形態は、本実施形態に制限されるものではない。フレームマウントステージでは、回路パターンが形成された表面に保護テープ(図示せず)が貼着されたウェーハ13がチャックテーブル15に吸着固定される。フレームマウントステージの前工程のバックグラインド/ポリシングステージでは、保護テープを介してガラス基材(支持基材)が貼り合わされたウェーハ13がチャックテーブルに吸着固定されるようになっている。本発明に係るクリーナ1は、チャックテーブル15の吸着面16aに強固に付着した付着物20、例えば”テープかす”などを容易に除去することができるものであり、このような付着物20は従来技術の欄で説明したように、主としてフレームマウントステージやテープピーリングステージなどで発生するのである。
【0016】
図5には、フレームマウントステージで使用されるダイシングテープ貼付装置25の一例が示されている。フレームマウントステージは、ダイシングテープ貼付装置25を使用し、片面に粘着剤を有するダイシングテープ32を用いてウェーハ13をダイシング用のフレーム33に一体的に取り付ける工程である。ダイシングテープ32は、チャックテーブル15の吸着面16a上に載置されているフレーム33の内側に配置されたウェーハ13が、研削面(裏面)を上にしてテーブル15に吸着固定された後、貼着される。
【0017】
ダイシングテープ貼付装置25のチャックテーブル15は、移動機構26により、横方向と上下方向に移動可能になっている。テープ供給リール27が、ウェーハ13とフレーム33の裏面にダイシングテープ32を供給する。ダイシングテープ32は第1のローラ28の部分で、テープ本体32aと表面カバーであるライナー32bの部分に分けられ、ライナー32bはテープ32の供給に合わせて第2のローラ29に巻き取られる。カッタ30は、図示していない回転移動機構により回転移動可能に保持されている。カッタ30の刃の先端がフレーム33上で円形の軌跡を描くことで、ダイシングテープ32が円形にカットされる。このとき、”テープかす”が発生し、チャックテーブル15の吸着面16aに落下し付着する。このような”テープかす”は、テープ32をウェーハ13から剥離する際にも生成する。”テープかす”は片面に粘着剤が有しているため、一旦チャックテーブル15の吸着面16aに付着するとローラやブラシなどで簡単に除去することができないが、本発明のクリーナ1を使用すれば容易に除去することができる。
【0018】
本発明のクリーナ1は、チャックテーブル15の吸着面16aに強固に付着した付着物20を除去するために独自の新しい特徴を備えたものであり、付着物20が刃部7aにより削り取られ、付着物吸引ユニット10により外部へ排出されるようになっている。クリーナ本体2の代表的形態として、チャックテーブル15のセラミック体16と同程度ないしそれより硬度が低いアルミナを主成分とする油砥石を用いることができる。油砥石とチャックテーブル15との摩擦係数は低く、チャックテーブル15の吸着面16aにダメージを与えることなく、吸着面16aに付着した付着物20を削りとることができるからである。クリーナ本体2の他の形態として、ジルコニア(ZrO2)、窒化ケイ素(Si34)などのセラミックスでクリーナ本体2を所定の形状に焼結成形することも可能である。
【0019】
クリーナ1には、刃部7aにより削り取られた付着物20が飛散しないようにするための凹所である捕捉部6が、チャックテーブル15の吸着面16aと対向する底壁(対向壁)3に形成されている。捕捉部5は、クリーナ1の移動方向前側の前壁5で付着物20を捕捉部6内に受け入れるための開口部8を有している。開口部8の間口の幅は、クリーニングされるチャックテーブル15の半径と同程度ないしはそれより小さい寸法であることが好ましい。また、間口の高さは、付着物20を捕捉部6内に受け入れることができる程度の寸法に形成されている。
【0020】
また、開口部8に対向する捕捉部6の奥側には、吸着面16aに対して起立している奥壁7が形成されている。本実施形態において奥壁7は幅方向で湾曲しているが、本発明はこれに限定するものではなく、奥壁7をクリーナ1の前壁5と平行に形成することも可能である。本実施形態のように、奥壁7を湾曲させた場合には、捕捉部6内に収容された付着物20が捕捉部6の中央に集まりやすくなり、付着物20の排出が容易になる利点がある。また、図2に示すように、本実施形態の奥壁7は、吸着面に対して略垂直に起立しているがこれに限られない。図3にはクリーナ1Aの変形例が示されているように、吸着面に対して鋭角θになるように斜めに奥壁7を起立させることもできる。このように奥壁7を傾斜させることで、刃部7aの切れ味が高まり、付着物20をより一層容易に削り取ることが可能になる。
【0021】
奥壁7の稜線部に形成された刃部7aは、付着物20を削り取る切れ刃として機能している。クリーナ1をチャックテーブル15の吸着面16a上に置いたとき、刃部7aは吸着面16aに接した状態となり、クリーナ1を吸着面16a上で滑らせることで、開口部8から捕捉部6内に進入した付着物20が刃部7aにより削り取られるようになっている。図2,3に示すように、刃部7aは付着物20を削り取るためのものであるため、シャープエッジ、すなわち刃立ちの良いものほど小さい切削力で付着物20を削りとることができるが、刃部7aのチッピングを防止するため、ホーニングを形成することもできる。
【0022】
クリーナ1の上壁4には、捕捉部6内に連通する貫通孔9が形成されている。貫通孔9の上壁4側の端部には、付着物吸引ユニット10のダクトパイプ11の一端が接続している。ダクトパイプ11の他端は、図示しない集塵器に接続している。付着物吸引ユニット10は、エア吸入源及びフィルタ付き集塵機を有する図示しない本体と、ダクトホース11とを備えているから、刃部7aに削り取られた付着物20は、ダクトパイプ11を介して吸入され、集塵機へ排出されるようになっている。これにより、テーブル吸着面16a上に付着物20が残留せず、付着物20の再付着を防止することができる。
【0023】
なお、本実施形態のクリーナ1,1Aを用いたチャックテーブル15のクリーニング方法は特に限定されるものではない。例えば、フレームマウントステージに備わるチャックテーブル15のように、テーブル15が円形で回転運動する場合には、図6に示すように、テーブル15の吸着面16a上でクリーナ1を遊星運動させることにより、チャックテーブル15の吸着面16aの中心部に付着物20を残さずに除去することができる。すなわち、クリーナ1,1AはO2軸を中心に半時計方向に自転しながら、O1軸の回りを公転することにより、吸着面16aの中心部に付着物20を残さずに除去することができる。クリーナ1,1Aにはダクトパイプ11が接続され、除去した付着物20が吸引されるようになっているため、クリーナ1,1Aを遊星運動させたときにリークが生じないように、クリーナ1,1Aはチャックテーブルからはみ出ない寸法を有する。
【0024】
また、別のクリーニング方法としては、例えば、保護テープを剥離するピーリングステージに備わるチャックテーブルのように、テーブルが矩形で直線運動する場合には、テーブルの吸着面上でクリーナ1,1Aを直線運動させることにより、チャックテーブルの吸着面から付着物20を効率良く除去することができる。
【0025】
このように本実施形態のテーブルクリーニング方法クリーナ1,1Aによれば、チャックテーブル15の吸着面16aに付着している付着物20をシャープエッジである刃部7aにより削り取ることができ、削り取った付着物20を吸引し排出することができるから、チャックテーブル15の吸着面16aに付着物20が残留せず、付着物20の再付着が防止される。これにより、薄片化された半導体ウェーハ13の割れを確実に防止することができる。
【0026】
以上、本発明をその好適な実施形態に関連して説明したが、後述する請求の範囲の開示から逸脱することなく様々な修正及び変更を為し得ることは、当業者に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るクリーナの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すクリーナのA−A線に沿って切断した断面図である。
【図3】同じく図1に示すクリーナの変形例を示す断面図である。
【図4】チャックテーブルを示す説明図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図5】ダイシングテープ貼付装置の一例を示す正面図である。
【図6】チャックテーブルのクリーニング方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 付着物排出機構付きクリーナ(クリーナ)
2 クリーナ本体
6 捕捉部
7 奥壁
7a 刃部
8 開口部
10 吸引ユニット
13 ウェーハ
15 テーブル
16a 吸着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを吸着するチャックテーブルの吸着面上に付着している不要な付着物を除去する付着物排出機構付きクリーナであって、
前記付着物を削り取る刃部及び削り取った前記付着物を捕捉する捕捉部を有するクリーナ本体と、
捕捉した前記付着物を吸引して排出する排出手段と、を備え、
前記クリーナ本体内には、前記チャックテーブルの吸着面上に付着している前記付着物を前記クリーナ本体内に進入させるための開口部が設けられている付着物排出機構付きクリーナ。
【請求項2】
前記刃部が前記捕捉部の内縁部に形成されているシャープエッジである請求項1に記載の付着物排出機構付きクリーナ。
【請求項3】
前記刃部が前記チャックテーブルの吸着面に対して鋭角になるように傾斜形成されている、請求項2に記載の付着物排出機構付きクリーナ。
【請求項4】
前記排出手段が、前記捕捉部に連通する貫通孔に接続するダクトパイプと、該ダクトパイプを介してエアを吸引する吸引源と、前記エアと共に吸引された前記付着物を収容する集塵器と、を備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の付着物排出機構付きクリーナ。
【請求項5】
前記クリーナ本体が、前記チャックテーブルと同程度ないしそれより硬度が低い砥石又はセラミックスである、請求項1〜4の何れか1項に記載の付着物排出機構付きクリーナ。
【請求項6】
半導体ウェーハを吸着するチャックテーブルの吸着面に付着している不要な付着物を除去するチャックテーブルクリーニング方法であって、
請求項1〜5の何れか1項に記載の付着物排出機構付きクリーナを円形の前記吸着面上で遊星運動させながら前記付着物を除去するチャックテーブルクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−297859(P2009−297859A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157166(P2008−157166)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】