説明

伝熱管の検査装置および検査方法

【課題】検査プローブと伝熱管との中心軸を合わせること。
【解決手段】伝熱管5が開口する管板4の管板面に固定される検査ロボットに設けられ、伝熱管5に挿入される検査プローブ30を自身の中心軸C1に沿って挿通案内する筒状のガイド部材222と、検査ロボットに設けられ、ガイド部材222の中心軸C1に対して自身の中心軸C3を平行とするとともに、各中心軸C1,C3が伝熱管5の配列間隔を基準とした間隔で配置されており、かつ伝熱管5に対して嵌合可能に設けられた嵌合部2232cと、嵌合部2232cの中心軸C3に沿って当該嵌合部2232cを移動させる移動手段224と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の伝熱管を検査する際に適用される伝熱管の検査装置および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる熱交換器としての蒸気発生器は、逆U字形状に形成された多数の伝熱管が、両端部を胴部内の管板に対して挿入固定されている。この伝熱管は、その健全性が検査される。このような検査は、渦電流探傷検査(ECT)によって伝熱管内面の損傷が検出された場合、これを確認するために外観検査(VT検査)や、超音波探傷検査(UT検査)が必要に応じて行われる。
【0003】
従来、特許文献1や特許文献2に示す伝熱管の検査装置は、伝熱管を利用して管板下面(管板の水室側の面)に支持される検査ロボットに対し、検査プローブを挿通案内する筒状のガイド部材が設けられている。検査ロボットは、伝熱管に挿通されるクランプ機構によって管板下面に支持されるものであるから、伝熱管の位置を基準とされる。ガイド部材は、伝熱管のピッチを考慮されて検査ロボットに設けられていることから、検査ロボットが管板下面に支持されている状態で、伝熱管の直下に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3137576号公報
【特許文献2】特開平10−227765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特に、外観検査や超音波探傷検査は、伝熱管の中心軸に検査プローブの中心軸が一致することで正確な検査を行うことができる。しかし、ガイド部材が検査ロボットに対して微細な位置ズレを生じて取り付けられている場合、ガイド部材に挿通される検査プローブの中心軸が伝熱管の中心軸からずれてしまうため、外観検査や超音波探傷検査において正確な検査を行うことが難しくなる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、検査プローブと伝熱管との中心軸を合わせることのできる伝熱管の検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の伝熱管の検査装置は、伝熱管が開口する管板の管板面に固定される固定手段に設けられ、前記伝熱管に挿入される検査プローブを自身の中心軸に沿って挿通案内する筒状のガイド部材と、前記固定手段に設けられ、前記ガイド部材の中心軸に対して自身の中心軸を平行とするとともに、各前記中心軸が前記伝熱管の配列間隔を基準とした間隔で配置されており、かつ前記伝熱管に対して嵌合可能に設けられた位置決部材と、前記位置決部材の前記中心軸に沿って当該位置決部材を移動させる位置決部材移動手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この伝熱管の検査装置によれば、位置決部材を伝熱管に嵌合させることで、当該位置決部材の中心軸が、嵌合された伝熱管の中心軸と一致する。このため、ガイド部材の中心軸が検査対象の伝熱管の中心軸と一致することになる。この結果、ガイド部材に挿通支持される検査プローブと、検査対象の伝熱管との中心軸を合わせることができる。
【0009】
また、本発明の伝熱管の検査装置は、前記位置決部材は、円錐状のテーパ面を有する嵌合部として構成され、前記位置決部材移動手段による移動に伴い前記テーパ面が前記伝熱管の開口部に当接嵌合されることを特徴とする。
【0010】
この伝熱管の検査装置によれば、嵌合部の円錐状のテーパ面は、伝熱管の開口部に対し、自身の真円部分が一致するように、すなわち、伝熱管の中心軸に対し、嵌合部の中心軸が一致するように嵌合する。この嵌合部は、伝熱管の開口部に嵌合するものであるから、移動のストロークが比較的短いため、装置の小型化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の伝熱管の検査装置は、前記嵌合部を前記伝熱管に向けて弾性付勢する弾性部材を備えることを特徴とする。
【0012】
この伝熱管の検査装置によれば、嵌合部は、弾性部材による弾性付勢力を付与されつつ伝熱管の開口部に当接するため、伝熱管の開口部に対し、自身の真円部分が一致する作用が助勢される。この結果、伝熱管の中心軸に対し、嵌合部の中心軸が一致する効果を顕著に得ることができる。
【0013】
また、本発明の伝熱管の検査装置は、前記ガイド部材および前記位置決部材を各前記中心軸に直交する方向にともにスライド移動可能に支持するスライド機構を備えることを特徴とする。
【0014】
この伝熱管の検査装置によれば、固定手段に対する位置ズレを、ガイド部材および位置決部材のスライド移動によって吸収することができる。
【0015】
また、本発明の伝熱管の検査装置は、前記ガイド部材の中心軸に沿って当該ガイド部材を移動させるガイド部材移動手段と、前記ガイド部材の移動に伴って前記伝熱管の開口部の周りに当接する態様で前記ガイド部材の先端全周に渡って設けられたシール材と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この伝熱管の検査装置によれば、ガイド部材の先端のシール材が検査対象の伝熱管の開口部の周りであって管板の管板面に当接し、検査対象の伝熱管に対してガイド部材が密封状態で連接することになる。この結果、例えば、超音波探傷検査のように、接触媒体として水を伝熱管内に充填する検査において、当該水の漏れがないため、正確な検査データを取得することができる。
【0017】
また、本発明の伝熱管の検査装置は、前記位置決部材移動手段と、前記ガイド部材移動手段とを共通に構成することを特徴とする。
【0018】
この伝熱管の検査装置によれば、各移動手段を共通に構成することで、装置の小型化を図ることができ、かつ製造コストを低減することができる。
【0019】
また、本発明の伝熱管の検査装置は、前記ガイド部材は、前記検査プローブをその内部で支持する長さに形成されていることを特徴とする。
【0020】
この伝熱管の検査装置によれば、伝熱管の管板への開口部分の検査を行う際には、検査プローブを伝熱管の開口部の位置で支持する必要がある。よって、ガイド部材が検査プローブをその内部で支持する長さに形成されていれば、検査プローブを伝熱管の開口部の位置で支持できるので、伝熱管の管板への開口部分の検査を行うにあたって、正確な検査データを取得することができる。
【0021】
上述の目的を達成するために、本発明の伝熱管の検査方法は、伝熱管が開口する管板の管板面に固定される固定手段に設けられ、前記伝熱管に挿入される検査プローブを自身の中心軸に沿って挿通案内する筒状のガイド部材と、前記固定手段に設けられ、前記ガイド部材の中心軸に対して自身の中心軸を平行とするとともに、各前記中心軸が前記伝熱管の配列間隔を基準とした間隔で配置されており、かつ前記伝熱管に対して嵌合可能に設けられた位置決部材と、前記位置決部材の前記中心軸に沿って当該位置決部材を移動させる位置決部材移動手段と、を備える伝熱管の検査装置を用いる伝熱管の検査方法であって、前記ガイド部材が検査対象となる前記伝熱管の直下に位置するように前記固定手段を前記管板面に固定する工程と、次に、前記位置決部材を前記位置決部材移動手段によって移動させて検査対象の前記伝熱管とは別の伝熱管に対して嵌合させ、前記ガイド部材の中心軸を検査対象の前記伝熱管の中心軸に一致させる工程と、次に、前記ガイド部材を通して検査対象の前記伝熱管に前記検査プローブを挿入して当該伝熱管の検査を行う工程と、を含む。
【0022】
この伝熱管の検査方法によれば、位置決部材を伝熱管に嵌合させることで、当該位置決部材の中心軸が、嵌合された伝熱管の中心軸と一致する。このため、ガイド部材の中心軸が検査対象の伝熱管の中心軸と一致することになる。この結果、ガイド部材に挿通支持される検査プローブと、検査対象の伝熱管との中心軸を合わせ、正確な検査データを取得することができる。
【0023】
また、本発明の伝熱管の検査方法は、前記伝熱管の検査装置は、前記ガイド部材の中心軸に沿って当該ガイド部材を移動させるガイド部材移動手段と、前記ガイド部材の移動に伴って前記伝熱管の開口部の周りに当接する態様で前記ガイド部材の先端全周に渡って設けられたシール材と、を備えており、前記ガイド部材の中心軸を検査対象の前記伝熱管の中心軸に一致させる工程では、前記ガイド部材を前記ガイド部材移動手段によって移動させて前記シール材を検査対象の前記伝熱管の開口部の周囲に当接させ、当該伝熱管に対して前記ガイド部材を密封状態で連接する工程を含むことを特徴とする。
【0024】
この伝熱管の検査方法によれば、ガイド部材の先端のシール材が検査対象の伝熱管の開口部の周りであって管板の管板面に当接し、検査対象の伝熱管に対してガイド部材が密封状態で連接することになる。この結果、例えば、超音波探傷検査のように、接触媒体として水を伝熱管内に充填する検査において、当該水の漏れがないため、正確な検査データを取得することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、検査プローブと伝熱管との中心軸を合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、蒸気発生器の概略側断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る伝熱管の検査装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る伝熱管の検査装置の使用状態を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る伝熱管の検査装置のプローブ支持機構を示す側断面図である。
【図5】図5は、図4に示すプローブ支持機構の拡大図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る伝熱管の検査装置のプローブ支持機構の動作を示す側断面図である。
【図7】図7は、図6に示すプローブ支持機構の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0028】
図1は、蒸気発生器の概略側断面図である。熱交換器としての蒸気発生器1は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる。加圧水型原子炉は、原子炉冷却材および中性子減速材として軽水を使用している。加圧水型原子炉は、軽水を炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水としての一次冷却水を蒸気発生器1に送る。蒸気発生器1では、高温高圧の一次冷却水の熱を二次冷却水に伝え、二次冷却水に水蒸気を発生させる。そして、この水蒸気によりタービン発電機が回されて発電する。
【0029】
蒸気発生器1は、上下方向に延在され、かつ密閉された中空円筒形状を成し、上半部に対して下半部が若干小径とされた胴部2を有している。胴部2は、その下半部内に、該胴部2の内壁面と所定間隔をもって配置された円筒形状を成す管群外筒3が設けられている。この管群外筒3は、その下端部が、胴部2の下半部内の下方に配置された管板4近傍まで延設されている。管群外筒3内には、伝熱管群5Aが設けられている。伝熱管群5Aは、逆U字形状をなす複数の伝熱管5から成る。各伝熱管5は、U字形状の円弧部を上方に向けて配置され、下端部が管板4の管穴に挿通支持されていると共に、中間部が複数の管支持板6を介して管群外筒3に支持されている。管支持板6は、多数の伝熱管挿通穴が形成されており、この伝熱管挿通穴に各伝熱管5が挿通されることで各伝熱管5を支持する。
【0030】
胴部2は、その下端部に水室7が設けられている。水室7は、内部が隔壁8により入室7Aと出室7Bとに区画されている。入室7Aは、各伝熱管5の一端部が連通され、出室7Bは、各伝熱管5の他端部が連通されている。また、入室7Aは、胴部2の外部に通じる入口ノズル7Aaが形成され、出室7Bは、胴部2の外部に通じる出口ノズル7Baが形成されている。そして、入口ノズル7Aaは、加圧水型原子炉から一次冷却水が送られる冷却水配管(図示せず)が連結され、出口ノズル7Baは、熱交換された後の一次冷却水を加圧水型原子炉に送る冷却水配管(図示せず)が連結される。
【0031】
胴部2は、その上半部内に、給水を蒸気と熱水とに分離する気水分離器9、および分離された蒸気の湿分を除去して乾き蒸気に近い状態とする湿分分離器10が設けられている。気水分離器9と伝熱管群5Aとの間には、外部から胴部2内に二次冷却水の給水を行う給水管11が挿入されている。さらに、胴部2は、その上端部に、蒸気排出口12が形成されている。また、胴部2は、その下半部内に、給水管11からこの胴部2内に給水された二次冷却水を、胴部2と管群外筒3との間を流下させて管板4にて折り返させ、伝熱管群5Aに沿って上昇させる給水路13が形成されている。なお、蒸気排出口12は、タービンに蒸気を送る冷却水配管(図示せず)が連結され、給水管11は、タービンで使用された蒸気が復水器(図示せず)で冷却された二次冷却水を供給するための冷却水配管(図示せず)が連結される。
【0032】
このような蒸気発生器1では、加圧水型原子炉で加熱された一次冷却水は、入室7Aに送られ、多数の伝熱管5内を通って循環して出室7Bに至る。一方、復水器で冷却された二次冷却水は、給水管11に送られ、胴部2内の給水路13を通って伝熱管群5Aに沿って上昇する。このとき、胴部2内で、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われる。そして、冷やされた一次冷却水は出室7Bから加圧水型原子炉に戻される。一方、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行った二次冷却水は、胴部2内を上昇し、気水分離器9で蒸気と熱水とに分離される。そして、分離された蒸気は、湿分分離器10で湿分が除去されてからタービンに送られる。
【0033】
このような蒸気発生器1の伝熱管5は、蒸気発生器1が供用された後、例えば、燃料交換作業のため定期的に炉心の運転を停止する際に同時に検査が行われる。この検査においては、水室7内が原子炉で加熱された一次冷却水に直接触れて放射線雰囲気になっていることから、検査を行う作業者が水室7内に長時間留まることは好ましくない。このため、水室7の外部からの遠隔操作によって検査を行う検査装置が用いられる。
【0034】
図2は、本実施の形態に係る伝熱管の検査装置を示す斜視図であり、図3は、本実施の形態に係る伝熱管の検査装置の使用状態を示す概略図である。図2に示すように、本実施の形態の伝熱管5の検査装置20は、水室7内において、伝熱管5が開口する管板面(管板4の下面)に固定される固定手段である検査ロボット21を備える。なお、固定手段としては、伝熱管5が開口する管板面(管板4の下面)に固定されるもので、例えば、図には明示しないが、水室7内に配置されるマニピュレータなどであってもよく、検査ロボット21に限定されるものではない。
【0035】
図2に示すように、検査ロボット21は、円形の基板211にX軸方向歩行装置212とY軸方向歩行装置213とが設けられている(管板面に沿う2次元で直交するX軸とY軸とで表す)。X軸方向歩行装置212は、3本のクランプ軸212aを有している。クランプ軸212aは、それぞれクランプシリンダ212bによって管板面に開口する伝熱管5の中に挿入され、拡張されて伝熱管5内で固定される一方、クランプシリンダ212bによって拡張が解除されつつ伝熱管5から抜き出される。また、X軸方向歩行装置212は、X軸駆動シリンダ212cを備えている。X軸駆動シリンダ212cは、2本のクランプ軸212aをX軸方向に伝熱管5の1ピッチ分だけ移動させる。
【0036】
同様にY軸方向歩行装置213は、3本のクランプ軸213aを有している。クランプ軸213aは、それぞれクランプシリンダ213bによって管板面に開口する伝熱管5の中に挿入され、拡張されて伝熱管5内で固定される一方、クランプシリンダ213bによって拡張が解除されつつ伝熱管5から抜き出される。また、Y軸方向歩行装置213は、Y軸駆動シリンダ213cを備えている。Y軸駆動シリンダ213cは、2本のクランプ軸213aをY軸方向に伝熱管5の1ピッチ分だけ移動させる。
【0037】
また、検査ロボット21は、基板211に複数(本実施の形態では3つ)のガイドローラ214が設けられている。
【0038】
また、検査ロボット21は、基板211の外周部に回転台215が設けられている。回転台215は、駆動装置216によって基板211の円周方向に所定角度駆動される。回転台215は、取付板217が設けられている。この取付板217は、昇降機構218が取り付けられている。昇降機構218は、昇降台218aがベルト218bを介して取付板217に連結されている。ベルト218bは、駆動モータ218cによって昇降台218aを昇降させる。この昇降台218aは、後述の検査プローブ30を案内支持するプローブ支持機構22が取り付けられている。
【0039】
このような検査ロボット21は、X軸方向歩行装置212およびY軸方向歩行装置213によって、管板4に所定のピッチで配置された伝熱管5の1ピッチを歩幅とし、管板面に沿う2次元方向に歩行移動する。この歩行移動の際、ガイドローラ214が管板面に接して移動を案内する。これにより、検査ロボット21は、図3に示すように、管板面の任意の位置に移動して固定されるので、プローブ支持機構22を検査対象の伝熱管5の位置に配置することができ、検査プローブ30を伝熱管5内に挿入して所定の検査を行うことが可能になる。また、検査ロボット21は、必要に応じ、回転台215が回転することでプローブ支持機構22が回転移動されるので、当該プローブ支持機構22を検査対象の伝熱管5の位置に配置することができ、検査プローブ30を伝熱管5内に挿入して所定の検査を行うことが可能になる。なお、検査プローブ30を送るには、水室7の外部に配置された図3に示すプッシャ装置23のプッシャ23aによって検査プローブ30に接続したケーブル30aを押し出す。ケーブル30aは、プッシャ装置23の巻取リール23bに巻かれており、検査プローブ30を送り出すときには、巻取リール23bから繰り出される一方、検査プローブ30を伝熱管5から引き出すときは、巻取リール23bに巻き取られる。
【0040】
なお、検査ロボット21は、伝熱管5の検査に先立ち、着脱自在な長い操作棒(図示せず)が取り付けられる。この操作棒を、作業者が掴持してマンホール7Cから水室7内に挿入し、当該マンホール7Cの直上における管板4の管板面に位置決めする。そして、検査ロボット21は、X軸方向歩行装置212およびY軸方向歩行装置213の各クランプ軸212a,213aを伝熱管5の中に挿入してクランプする。その後、操作棒を取り外すことで、検査ロボット21は、基板211から延びる操作用ケーブル219がマンホール7Cから水室7の外部に引き出された形態で管板4の管板面に設置される。このように検査ロボット21を管板4に設置した後、昇降機構218の駆動モータ218cを作動させてベルト218bを図2に示す位置から下方に延出させ、昇降台218aをマンホール7Cまで降下させる。そして、この昇降台218aにプローブ支持機構22を取り付け、再び駆動モータ218cを作動させてベルト218bを上方に収納し、昇降台218aを図2に示す元の位置に復帰させ、検査準備を完了する。
【0041】
ところで、伝熱管5の検査は、渦電流探傷検査によって伝熱管5内面の損傷を検査される。そして、渦電流探傷検査によって伝熱管5内面の損傷が検出された場合、これを確認するために外観検査や、超音波探傷検査が必要に応じて行われる。ここで、外観検査や超音波探傷検査は、伝熱管5の中心軸に検査プローブ30の中心軸が一致することで正確な検査を行うことができるものである。上述した検査ロボット21は、伝熱管5に挿入されるクランプ軸212a,213aによって管板面に支持されるものであり、伝熱管5の位置を基準とされる。そして、検査プローブ30を案内支持するプローブ支持機構22は、伝熱管5のピッチを考慮されて検査ロボット21に取り付けられていることから、検査ロボット21が管板面に支持されている状態で、検査対象の伝熱管5の直下に配置される。しかし、プローブ支持機構22が検査ロボット21に対して微細な位置ズレを生じて取り付けられた場合は、プローブ支持機構22によって案内される検査プローブ30の中心軸が伝熱管5の中心軸からずれてしまうことから、外観検査や超音波探傷検査において正確な検査を行うことが難しくなる。
【0042】
そこで、本実施の形態の検査装置20は、プローブ支持機構22が検査ロボット21に対して微細な位置ズレを生じて取り付けられていても、検査プローブ30と伝熱管5との中心軸を合わせるプローブ支持機構22を備えている。
【0043】
図4は、本実施の形態に係る伝熱管の検査装置のプローブ支持機構を示す側断面図であり、図5は、図4に示すプローブ支持機構の拡大図であり、図6は、本実施の形態に係る伝熱管の検査装置のプローブ支持機構の動作を示す側断面図であり、図7は、図6に示すプローブ支持機構の拡大図である。なお、図4〜図7では、上述したような固定手段としての検査ロボット21にプローブ支持機構22が取り付けられた状態であって、かつ検査ロボット21が管板4の管板面に固定された状態を示している。
【0044】
図4および図5に示すように、プローブ支持機構22は、固定手段としての検査ロボット21、詳しくは昇降機構218の昇降台218aに取り付けられる取付基部221に対し、ガイド部材222と、位置決機構223と、移動手段224とが設けられている。
【0045】
ガイド部材222は、長尺の円筒状に形成されており、その内部に上述した検査プローブ30を挿通案内するものである。ガイド部材222は、検査ロボット21が管板4の管板面に固定された状態で、一端の開口部が上方(管板4側)に向き、他端の開口部が下方に向くように取付基部221に対して取り付けられている。このガイド部材222は、その一端の外周に、円環状の連接部222aがOリング222bを介して液密性を有した形態で固定されている。連接部222aは、管板4側に向く面に、自身の全周に渡って環状に配置された無端状のシール材222cが突設されている。また、ガイド部材222は、取付基部221が検査ロボット21に取り付けられ、かつ検査ロボット21が管板4の管板面に固定された状態で、その中心軸C1が、伝熱管5の中心軸C2に一致するように設けられている。
【0046】
また、ガイド部材222は、図6に示すように、その筒内で中心軸C1に検査プローブ30の中心軸C4を一致させて支持するように、検査プローブ30の軸方向長さに対応する長さに形成されている。図6に示すように、検査プローブ30は、ケーブル30aの先端に配置されており、かつ調芯機能として軸方向に長く形成されている。よって、ガイド部材222は、その筒内で中心軸C1に検査プローブ30の中心軸C4を一致させて支持するように検査プローブ30の外径に対して軸方向に移動できるだけの微小な隙間を有する内径とされ、かつその筒内で検査プローブ30全体を包む長さに形成されている。
【0047】
位置決機構223は、検査ロボット21が管板4の管板面に固定された状態で、先端が上方(管板4側)に向くように、基端が取付基部221に対して取り付けられている。
この位置決機構223は、基端側の基台部2231、先端側の先端部2232、および基台部2231と先端部2232との間に配置された移動部2233を有している。
【0048】
基台部2231は、検査ロボット21が管板4の管板面に固定された状態で、上下方向に延在する態様で円柱形状をなし、その内部に円柱形状の摺動室2231aが形成されている。また、基台部2231は、摺動室2231aとは隔離され、下端から上端に通じる空気導入路2231bが形成されている。また、基台部2231は、摺動室2231aから外部に通じる空気抜路2231cが形成されている。
【0049】
移動部2233は、検査ロボット21が管板4の管板面に固定された状態で、上下方向に延在する態様で円筒形状をなし、下端が開放し、上端が閉塞して形成されることで、その内部に円柱形状の拡縮室2233aが設けられている。この移動部2233は、拡縮室2233aが基台部2231を内装し、かつOリング2233bを介して気密性を有した状態で、基台部2231に対して上下方向に移動可能に設けられている。また、拡縮室2233aは、基台部2231の空気導入路2231bが連通している。また、移動部2233は、拡縮室2233a内において、閉塞された上端から下方に延在しつつ、基台部2231の摺動室2231aに貫通する棒状の摺動部2233cが設けられている。この摺動部2233cは、基台部2231の摺動室2231aに貫通する部分と、摺動室2231aの内周面に対してOリング2233d,2233eを介して気密性を有して設けられて、基台部2231の摺動室2231a内を上下方向に摺動可能に構成されている。また、摺動部2233cは、その上端が、Oリング2233fを介して気密性を有した状態とされ、拡縮室2233aを貫通して設けられている。そして、摺動部2233cが、拡縮室2233aを貫通した上端は、上方に延出した取付ピン2233gが設けられている。なお、移動部2233は、本実施の形態においては、連結部2233hによってガイド部材222に連結されている。
【0050】
先端部2232は、検査ロボット21が管板4の管板面に固定された状態で、上下方向に延在する態様で円筒形状をなし、下端が開放し、上端が閉塞して形成されることで、その内部に円柱形状の収容室2232aが設けられている。この先端部2232は、収容室2232aが移動部2233を内装した状態で、移動部2233に対して上下方向に移動可能に設けられている。この移動は、移動部2233の摺動部2233c上端の取付ピン2233gが、収容室2232aを上方に貫通していることで、当該取付ピン2233gに案内される。また、先端部2232は、移動部2233の周りに装着された弾性部材としての圧縮コイルバネ2232bによって常に上方に移動するように弾性付勢されている。また、先端部2232は、その上端に、上方に向けて先細り円錐状で底部が伝熱管5の開口径よりも若干大きく形成されたテーパ面を有する位置決手段としての嵌合部2232cが形成されている。
【0051】
移動手段224は、位置決機構223の移動部2233および先端部2232を上下向に沿って移動させるもので、エアシリンダとして構成されている。移動手段224は、基台部2231の基端側に固定され、圧縮空気の供給側が、基台部2231の空気導入路2231bに連通している。すなわち、移動手段224により供給された圧縮空気は、空気導入路2231bを経て移動部2233の拡縮室2233aに供給される。移動手段224からの圧縮空気が拡縮室2233aに供給されると、図6および図7に示すように、空気抜路2231cを得て摺動室2231a内の空気が排出され、移動部2233が圧縮空気によって上方に移動し、これに伴い先端部2232が上方に移動する。一方、移動手段224による圧縮空気の供給が止まると、図4および図5に示すように、空気抜路2231cを得て摺動室2231a内に空気が導入されて、摺動部2233cが下方に下がることから、移動部2233が下方に移動し、これに伴い先端部2232が下方に移動する。また、ガイド部材222は、移動部2233に対して連結部2233hを介して連結されていることから、移動部2233の上下移動に伴って、ともに上下に移動する。
【0052】
なお、ガイド部材222は、移動部2233に対して連結部2233hを介して連結されていなくてもよい。この場合、移動手段224は、位置決手段としての嵌合部2232cを移動させるだけの位置決手段移動手段として構成される。そして、ガイド部材222が移動部2233に対して連結されない構成において、ガイド部材222を軸方向に移動させる場合、位置決手段移動手段とは別に、図には明示しないが移動手段224と同様のエアシリンダからなるガイド部材移動手段を備えるとよい。
【0053】
上記位置決機構223は、嵌合部2232cの円錐状の中心線C3が、摺動部2233cによる移動部2233の移動方向に平行であって、取付ピン2233gの延出する中心軸に一致するように構成されている。この中心軸C3は、ガイド部材222の中心軸C1と平行であって、かつガイド部材222の中心軸C1に対し、伝熱管5の配列間隔を基準とした間隔で配置されている。このため、位置決機構223は、取付基部221が検査ロボット21に取り付けられ、かつ検査ロボット21が管板4の管板面に固定された状態で、その中心軸C3が、伝熱管5の中心軸C2に一致するように設けられている。
【0054】
また、図4〜図7に示すように、プローブ支持機構22は、ガイド部材222が位置決機構223の移動部2233に連結され、かつ移動手段224が位置決機構223の基台部2231に固定されているため、ガイド部材222、位置決機構223、および移動手段224が一体とされている。そして、これらガイド部材222、位置決機構223、および移動手段224は、取付基部221に対し、スライド機構によって、中心軸C1,C3に直交する方向にスライド移動可能に設けられている。具体的にスライド機構は、図5および図7に示すように、ガイド部材222は、取付基部221に設けられた挿通穴221aに隙間を有して挿通されている。そして、ガイド部材222と挿通穴221aとの間の隙間にバネ部材221bが介在されている。また、位置決機構223の基台部2231は、取付基部221に対し、中心軸C1,C3に沿う方向に移動を規制されつつ、中心軸C1,C3に直交する方向に移動が供用されるように、支持枠221cによって取り付けられている。また、移動手段224は、取付基部221に設けられた挿通穴221dに隙間を有して挿通されている。そして、移動手段224と挿通穴221dとの間の隙間にバネ部材221eが介在されている。このように、ガイド部材222、位置決機構223、および移動手段224は、取付基部221に対し、スライド機構によって、中心軸C1,C3に直交する方向にスライド移動可能に設けられている。
【0055】
上述したプローブ支持機構22の動作、および上述したプローブ支持機構22を用いた検査方法について以下に説明する。
【0056】
まず、プローブ支持機構22が取り付けられた検査ロボット21を、管板4の管板面に固定し、ガイド部材222を検査対象の伝熱管5の直下に配置する。これに伴い位置決機構223が検査対象とは別の伝熱管5の直下に配置される(図4参照)。
【0057】
次に、図4の状態から図6に示すように、移動手段224によって位置決機構223の移動部2233および先端部2232を上方に移動させる。これにより、先端部2232の嵌合部2232cのテーパ面が、圧縮コイルバネ2232bによる弾性付勢力を付与されつつ伝熱管5の開口部に当接する。嵌合部2232cのテーパ面は、円錐状であることから、伝熱管5の開口部に対し、自身の真円部分が一致するように、すなわち、伝熱管5の中心軸C2に対し、嵌合部2232cの中心軸C3が一致するように当該嵌合部2232cが伝熱管5の開口部に嵌合する。このため、ガイド部材222の中心軸C1も、検査対象の伝熱管5の中心軸C2に一致することになる。この結果、プローブ支持機構22が、検査ロボット21に対して微細な位置ズレを生じて取り付けられていても、ガイド部材222に挿通支持される検査プローブ30と、検査対象の伝熱管5との中心軸C2,C4を合わせることが可能になる。
【0058】
特に、伝熱管5の管板4への開口部分の検査を行う際には、ガイド部材222に挿通支持される検査プローブ30と、検査対象の伝熱管5との中心軸C2,C4が一致していないと、正確な検査データを取得することが困難である。したがって、本実施の形態の検査装置と、当該検査装置を用いた検査方法によれば、ガイド部材222に挿通支持される検査プローブ30と、検査対象の伝熱管5との中心軸C2,C4を合わせることができるので、伝熱管5の管板4への開口部分の検査を行うにあたって、正確な検査データを取得することが可能になる。
【0059】
また、図6に示すように、位置決機構223の移動部2233に連結されたガイド部材222も、移動部2233とともに上方に移動する。このため、ガイド部材222の先端のシール材222cが検査対象の伝熱管5の開口部の周りであって管板4の管板面に当接し、検査対象の伝熱管5に対してガイド部材222が密封状態で連接することになる。この結果、例えば、超音波探傷検査のように、接触媒体として水を伝熱管5内に充填する検査において、当該水の漏れがないため、正確な検査データを取得することが可能になる。
【0060】
特に、伝熱管5の管板4への開口部分の検査を行う際には、ガイド部材222が検査対象の伝熱管5に密封状態で連接されていないと、伝熱管5内に充填する水の漏れが著しい。したがって、本実施の形態の検査装置と、当該検査装置を用いた検査方法によれば、検査対象の伝熱管5に対してガイド部材222を密封状態で連接することができるので、伝熱管5の管板4への開口部分の検査を行うにあたって、正確な検査データを取得することが可能になる。
【0061】
このように、本実施の形態の伝熱管の検査装置は、伝熱管5が開口する管板4の管板面に固定される検査ロボット(固定手段)21に設けられ、伝熱管5に挿入される検査プローブ30を自身の中心軸C1に沿って挿通案内する筒状のガイド部材222と、検査ロボット21に設けられ、ガイド部材222の中心軸C1に対して自身の中心軸C3を平行とするとともに、各中心軸C1,C3が伝熱管5の配列間隔を基準とした間隔で配置されており、かつ伝熱管5に対して嵌合可能に設けられた嵌合部(位置決部材)2232cと、嵌合部2232cの中心軸C3に沿って当該嵌合部2232cを移動させる移動手段(位置決部材移動手段)224と、を備える。
【0062】
この伝熱管の検査装置によれば、嵌合部2232cを伝熱管5に嵌合させることで、当該嵌合部2232cの中心軸C3が、嵌合された伝熱管5の中心軸C2と一致する。このため、ガイド部材222の中心軸C1が検査対象の伝熱管5の中心軸C2と一致することになる。この結果、ガイド部材222に挿通支持される検査プローブ30と、検査対象の伝熱管5との中心軸C2,C4を合わせることが可能になる。
【0063】
なお、上述した実施の形態において、位置決部材として嵌合部2232cを説明したが、位置決部材は、自身の中心軸C3に沿って、当該中心軸C3を伝熱管5の中心軸C2に一致させるものであればよい。例えば、図には明示しないが、中心軸C3に沿って移動することで伝熱管5内に挿入嵌合され、この挿入によって中心軸C3を伝熱管5の中心軸C2に一致させる構成や、中心軸C3に沿って移動することで伝熱管5内に挿入され、この伝熱管5内で拡張されるクランプ機構であってもよい。
【0064】
また、本実施の形態の伝熱管の検査装置は、位置決部材として、円錐状のテーパ面を有する嵌合部2232cとして構成され、移動手段224による移動に伴いテーパ面が伝熱管5の開口部に当接嵌合される。
【0065】
この伝熱管の検査装置によれば、嵌合部2232cの円錐状のテーパ面は、伝熱管5の開口部に対し、自身の真円部分が一致するように、すなわち、伝熱管5の中心軸C2に対し、嵌合部2232cの中心軸C3が一致するように嵌合する。この嵌合部2232cは、伝熱管5の開口部に嵌合するものであるから、移動のストロークが比較的短いため、装置の小型化を図ることが可能になる。
【0066】
また、本実施の形態の伝熱管の検査装置は、嵌合部2232cを伝熱管5に向けて弾性付勢する圧縮コイルバネ(弾性部材)2232bを備える。
【0067】
この伝熱管の検査装置によれば、嵌合部2232cは、圧縮コイルバネ2232bによる弾性付勢力を付与されつつ伝熱管5の開口部に当接するため、伝熱管5の開口部に対し、自身の真円部分が一致する作用が助勢される。この結果、伝熱管5の中心軸C2に対し、嵌合部2232cの中心軸C3が一致する効果を顕著に得ることが可能になる。
【0068】
また、本実施の形態の伝熱管の検査装置は、ガイド部材222および嵌合部(位置決部材)2232cを各中心軸C1,C3に直交する方向にともにスライド移動可能に支持するスライド機構を備える。
【0069】
この伝熱管の検査装置は、検査ロボット21に対する位置ズレを、ガイド部材222および嵌合部(位置決部材)2232cのスライド移動によって吸収することが可能になる。
【0070】
また、本実施の形態の伝熱管の検査装置は、ガイド部材222の中心軸C1に沿って当該ガイド部材222を移動させる移動手段(ガイド部材移動手段)224と、ガイド部材222の移動に伴って伝熱管5の開口部の周りに当接する態様でガイド部材222の先端全周に渡って設けられたシール材222cと、を備える。
【0071】
この伝熱管の検査装置によれば、ガイド部材222の先端のシール材222cが検査対象の伝熱管5の開口部の周りであって管板4の管板面に当接し、検査対象の伝熱管5に対してガイド部材222が密封状態で連接することになる。この結果、例えば、超音波探傷検査のように、接触媒体として水を伝熱管5内に充填する検査において、当該水の漏れがないため、正確な検査データを取得することが可能になる。
【0072】
また、本実施の形態の伝熱管の検査装置は、嵌合部(位置決部材)2232cを移動する位置決部材移動手段と、ガイド部材222を移動するガイド部材移動手段とを共通の移動手段224で構成する。
【0073】
この伝熱管の検査装置によれば、各移動手段を共通に構成することで、装置の小型化を図ることができ、かつ製造コストを低減することが可能になる。
【0074】
また、本実施の形態の伝熱管の検査装置は、ガイド部材222は、検査プローブ30をその内部で支持する長さに形成されている。
【0075】
この伝熱管の検査装置によれば、伝熱管5の管板4への開口部分の検査を行う際には、検査プローブ30を伝熱管5の開口部の位置で支持する必要がある。よって、ガイド部材222が検査プローブ30をその内部で支持する長さに形成されていれば、検査プローブ30を伝熱管5の開口部の位置で支持できるので、伝熱管5の管板4への開口部分の検査を行うにあたって、正確な検査データを取得することが可能になる。
【0076】
また、本実施の形態の伝熱管の検査方法は、伝熱管5が開口する管板4の管板面に固定される検査ロボット(固定手段)21に設けられ、伝熱管5に挿入される検査プローブ30を自身の中心軸C1に沿って挿通案内する筒状のガイド部材222と、検査ロボット21に設けられ、ガイド部材222の中心軸C1に対して自身の中心軸C3を平行とするとともに、各中心軸C1,C3が伝熱管5の配列間隔を基準とした間隔で配置されており、かつ伝熱管5に対して嵌合可能に設けられた嵌合部(位置決部材)2232cと、嵌合部2232cの中心軸C3に沿って当該嵌合部2232cを移動させる移動手段(位置決部材移動手段)224と、を備える伝熱管の検査装置を用いる伝熱管の検査方法であって、ガイド部材222が検査対象となる伝熱管5の直下に位置するように検査ロボット21を管板面に固定する工程と、次に、嵌合部2232cを移動手段224によって移動させて検査対象の伝熱管5とは別の伝熱管5に対して嵌合させ、ガイド部材222の中心軸C1を検査対象の伝熱管5の中心軸C2に一致させる工程と、次に、ガイド部材222を通して検査対象の伝熱管5に検査プローブ30を挿入して当該伝熱管5の検査を行う工程と、を含む。
【0077】
この伝熱管の検査方法によれば、嵌合部2232cを伝熱管5に嵌合させることで、当該嵌合部2232cの中心軸C3が、嵌合された伝熱管5の中心軸C2と一致する。このため、ガイド部材222の中心軸C1が検査対象の伝熱管5の中心軸C2と一致することになる。この結果、ガイド部材222に挿通支持される検査プローブ30と、検査対象の伝熱管5との中心軸C2,C4を合わせ、正確な検査データを取得することが可能になる。
【0078】
また、本実施の形態の伝熱管の検査方法は、伝熱管の検査装置は、ガイド部材222の中心軸C1に沿って当該ガイド部材222を移動させる移動手段(ガイド部材移動手段)224と、ガイド部材222の移動に伴って伝熱管5の開口部の周りに当接する態様でガイド部材222の先端全周に渡って設けられたシール材222cと、を備えており、ガイド部材222の中心軸C1を検査対象の伝熱管5の中心軸C2に一致させる工程では、ガイド部材222を移動手段224によって移動させてシール材222cを検査対象の伝熱管5の開口部の周囲に当接させ、当該伝熱管5に対してガイド部材222を密封状態で連接する工程を含む。
【0079】
この伝熱管の検査方法によれば、ガイド部材222の先端のシール材222cが検査対象の伝熱管5の開口部の周りであって管板4の管板面に当接し、検査対象の伝熱管5に対してガイド部材222が密封状態で連接する。この結果、例えば、超音波探傷検査のように、接触媒体として水を伝熱管5内に充填する検査において、当該水の漏れがないため、正確な検査データを取得することが可能になる。
【符号の説明】
【0080】
1 蒸気発生器
4 管板
5 伝熱管
7 水室
7C マンホール
20 検査装置
21 検査ロボット
22 プローブ支持機構
221 取付基部
221a 挿通穴
221b バネ部材
221c 支持枠
221d 挿通穴
221e バネ部材
222 ガイド部材
222a 連接部
222b Oリング
222c シール材
223 位置決機構
2231 基台部
2231a 摺動室
2231b 空気導入路
2231c 空気抜路
2232 先端部
2232a 収容室
2232b 圧縮コイルバネ
2232c 嵌合部
2233 移動部
2233a 拡縮室
2233b,2233d,2233e,2233f Oリング
2233c 摺動部
2233g 取付ピン
2233h 連結部
224 移動手段
23 プッシャ装置
30 検査プローブ
30a ケーブル
C1,C2,C3,C4 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管が開口する管板の管板面に固定される固定手段に設けられ、前記伝熱管に挿入される検査プローブを自身の中心軸に沿って挿通案内する筒状のガイド部材と、
前記固定手段に設けられ、前記ガイド部材の中心軸に対して自身の中心軸を平行とするとともに、各前記中心軸が前記伝熱管の配列間隔を基準とした間隔で配置されており、かつ前記伝熱管に対して嵌合可能に設けられた位置決部材と、
前記位置決部材の前記中心軸に沿って当該位置決部材を移動させる位置決部材移動手段と、
を備えることを特徴とする伝熱管の検査装置。
【請求項2】
前記位置決部材は、円錐状のテーパ面を有する嵌合部として構成され、前記位置決部材移動手段による移動に伴い前記テーパ面が前記伝熱管の開口部に当接嵌合されることを特徴とする請求項1に記載の伝熱管の検査装置。
【請求項3】
前記嵌合部を前記伝熱管に向けて弾性付勢する弾性部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の伝熱管の検査装置。
【請求項4】
前記ガイド部材および前記位置決部材を各前記中心軸に直交する方向にともにスライド移動可能に支持するスライド機構を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の伝熱管の検査装置。
【請求項5】
前記ガイド部材の中心軸に沿って当該ガイド部材を移動させるガイド部材移動手段と、
前記ガイド部材の移動に伴って前記伝熱管の開口部の周りに当接する態様で前記ガイド部材の先端全周に渡って設けられたシール材と、
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の伝熱管の検査装置。
【請求項6】
前記位置決部材移動手段と、前記ガイド部材移動手段とを共通に構成することを特徴とする請求項5に記載の伝熱管の検査装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、前記検査プローブをその内部で支持する長さに形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の伝熱管の検査装置。
【請求項8】
伝熱管が開口する管板の管板面に固定される固定手段に設けられ、前記伝熱管に挿入される検査プローブを自身の中心軸に沿って挿通案内する筒状のガイド部材と、前記固定手段に設けられ、前記ガイド部材の中心軸に対して自身の中心軸を平行とするとともに、各前記中心軸が前記伝熱管の配列間隔を基準とした間隔で配置されており、かつ前記伝熱管に対して嵌合可能に設けられた位置決部材と、前記位置決部材の前記中心軸に沿って当該位置決部材を移動させる位置決部材移動手段と、を備える伝熱管の検査装置を用いる伝熱管の検査方法であって、
前記ガイド部材が検査対象となる前記伝熱管の直下に位置するように前記固定手段を前記管板面に固定する工程と、
次に、前記位置決部材を前記位置決部材移動手段によって移動させて検査対象の前記伝熱管とは別の伝熱管に対して嵌合させ、前記ガイド部材の中心軸を検査対象の前記伝熱管の中心軸に一致させる工程と、
次に、前記ガイド部材を通して検査対象の前記伝熱管に前記検査プローブを挿入して当該伝熱管の検査を行う工程と、
を含む伝熱管の検査方法。
【請求項9】
前記伝熱管の検査装置は、前記ガイド部材の中心軸に沿って当該ガイド部材を移動させるガイド部材移動手段と、前記ガイド部材の移動に伴って前記伝熱管の開口部の周りに当接する態様で前記ガイド部材の先端全周に渡って設けられたシール材と、を備えており、
前記ガイド部材の中心軸を検査対象の前記伝熱管の中心軸に一致させる工程では、前記ガイド部材を前記ガイド部材移動手段によって移動させて前記シール材を検査対象の前記伝熱管の開口部の周囲に当接させ、当該伝熱管に対して前記ガイド部材を密封状態で連接する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の伝熱管の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−159473(P2012−159473A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21053(P2011−21053)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】