説明

位相同期回路及びこれを用いた受信機

【課題】広帯域で量子化雑音及び発振器の位相雑音を除去し、小面積で構成可能な位相同期回路を提供する。
【解決手段】第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される共通の周波数及び互いに異なる位相を夫々持つ第1及び第2の発振信号を生成する制御発振器と;基準信号と第1の発振信号との間の周波数差及び位相差に応じた第1の検出信号を生成するデジタル位相周波数検出器と;第1の検出信号の高周波成分を除去して第1の制御信号を生成するデジタルフィルタと;第2の発振信号と基準信号との間の位相差に応じた第2の検出信号を生成するアナログ位相検出器と;第2の検出信号の高周波成分を除去して、第2の制御信号を出力するアナログフィルタと;アナログ位相検出器及びアナログフィルタを能動状態とするために、基準信号と第1の発振信号の同期を検出する同期検出部と;を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準信号に周波数及び位相が同期した出力信号を得る位相同期回路及びこれを用いた受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
基準信号に周波数及び位相が同期した出力信号を得る位相同期回路は、PLL(Phase Locked Loop)としてよく知られている。典型的なPLLは、印加される制御電圧に応じて発振周波数が制御される電圧制御発振器(VCO)と、基準信号と上記VCOの出力信号との位相差を検出する位相検出器と、上記位相検出器の出力信号から不要波を除去するアナログフィルタと、上記アナログフィルタの出力信号を増幅して上記制御電圧を生成する増幅器とを含む。
【0003】
また、PLLは前述したアナログ方式に限らず、デジタル方式で構成してもよい。非特許文献1には、VCOと、基準信号とVCOの出力信号の周波数差及び位相差を検出して、当該周波数差及び位相差に応じたデジタル検出信号を出力するTDC(Time to Digital Converter)と、上記デジタル検出信号から不要波を除去してするデジタルフィルタと、上記デジタルフィルタの出力信号を変換してVCOの制御電圧を生成するデジタル−アナログ変換器(DAC)とを含む、デジタル方式のPLLが記載されている。アナログ方式のPLLでは、アナログフィルタに外付けのキャパシタを用いる。デジタル方式のPLLでは、上記アナログフィルタをオンチップのデジタルフィルタに換えている。従って、デジタル方式のPLLはアナログ方式に比べて小面積で構成することができる。
【0004】
しかしながら、上記TDCでは周波数差及び位相差をデジタル検出信号に変換しており、当該変換によって量子化雑音が発生する。TDCの分解能は有限であるため、ロック状態であっても、1LSB(Least Significant Bit)相当の量子化雑音が発生してしまう。上記量子化雑音のPLL出力までの伝達関数は低域通過型であり、カットオフ周波数はループ帯域に依存する。一方、VCOで発生する位相雑音のPLL出力までの伝達関数は高域通過型であって、カットオフ周波数はループ帯域に依存する。従って、量子化雑音を除去するためにループ帯域を狭く設定すると、VCOの位相雑音が除去されにくくなる。一方、VCOの位相雑音を除去するためにループ帯域を広く設定すると、量子化雑音が除去されにくくなる。
【0005】
特許文献1には、周波数同期のためのデジタルループと、位相同期のためのアナログループとを備えた2重ループ方式のPLLが記載されている。特許文献1記載のPLLは、デジタルループのループ帯域を狭くすることにより量子化雑音を除去すると共に、アナログループのループ帯域を比較的広くすることによりVCOの位相雑音を除去する。
【0006】
また、PLLに含まれる位相検出器や位相周波数検出器には、検出可能な最小の位相差が存在する。このような、位相検出器が位相差を検出できない範囲は、不感帯(デッドゾーン)と呼ばれる。デッドゾーンは、位相検出器内部における論理遅延によって発生し、PLL全体の位相雑音特性の劣化の原因となる。
【0007】
特許文献2には、デッドゾーンの発生を回避するための位相検出器の回路構成が記載されている。特許文献2記載の回路構成では、2つの位相周波数比較器と、複数段のインバータ(遅延素子)とを組み合わせ、基準信号の位相とVCOの出力信号の分周信号の位相とが一致しても、両者の位相差を検出できるようにしている。
【特許文献1】特開2004−3212726号公報
【特許文献2】特開2004−357076号公報
【非特許文献1】R. Staszewski, "ALL-Digital PLL and Transmitter for Mobile Phones", IEEE J. of Solid-State Circuits Vol. 40, No. 12, DEC 2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の2重ループ方式のPLLは、アナログループで位相同期を行う点において、従来のアナログ方式のPLLと同様であるため、ループ帯域を従来(例えば、基準信号の周波数の1/10)以上に広帯域化することはできない。即ち、キャパシタンスの高い外付けのキャパシタでアナログフィルタを構成しなければならず、従来のアナログ方式のPLLに比べて回路の小面積化を見込めない。
【0009】
また、特許文献2記載の位相検出器には、通常の位相検出器に比べてより多くの遅延素子が必要となる。これら遅延素子において発生する遅延は、PLLの安定性、即ち位相余裕を劣化させる。また、基準信号が、複数段のインバータによって遅延されるため、雑音が当該基準信号に重畳されるおそれがある。更に、プロセスばらつき、電源電圧の変動及び各回路素子におけるパラメータの温度依存性などを考慮すると、上記遅延にはマージンを持たせる必要がある。従って、特許文献2記載の位相検出器は、チップ全体における消費電力及び回路面積が問題となる。
【0010】
従って、本発明は、広帯域で量子化雑音及び発振器の位相雑音を除去し、かつ、小面積で構成可能な位相同期回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る位相同期回路は、第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される共通の周波数及び互いに異なる位相を夫々持つ第1の発振信号及び第2の発振信号を生成する制御発振器と;基準信号と前記第1の発振信号との間の周波数差及び第1位相差を検出し、当該周波数差及び第1位相差に応じた第1の検出信号を生成するデジタル位相周波数検出器と;前記第1の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って前記第1の制御信号を生成するデジタルフィルタと;前記第2の発振信号と前記基準信号との間の第2位相差を検出し、当該第2位相差に応じた第2の検出信号を生成するアナログ位相検出器と;前記第2の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って、フィルタ信号を出力するアナログフィルタと;前記フィルタ信号を増幅して前記第2の制御信号を生成する増幅器と;前記アナログ位相検出器、前記アナログフィルタ及び前記増幅器を能動状態とするために、前記基準信号の周波数及び位相と前記第1の発振信号の周波数及び位相との同期を検出する同期検出部と;を具備する。
【0012】
本発明の他の態様に係る位相同期回路は、第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される共通の周波数と互いに異なる位相を夫々持つ第1の発振信号及び第2の発振信号を生成するリング型発振器と;基準信号と前記第1の発振信号との間の周波数差及び第1位相差を検出し、当該周波数差及び第1位相差に応じた第1の検出信号を生成するデジタル位相周波数検出器と;前記第1の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って前記第1のフィルタ信号を生成するデジタルフィルタと;前記第1のフィルタ信号をアナログ信号に変換して前記第1の制御信号を得るデジタル−アナログ変換器と;前記基準信号と前記第2の発振信号との間の第2位相差を検出し、当該第2位相差に応じた第2の検出信号を生成するアナログ位相検出器と;前記第2の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って、第2のフィルタ信号を出力するアナログフィルタと;前記第2のフィルタ信号を増幅して前記第2の制御信号を生成する増幅器と;前記アナログ位相検出器、前記アナログフィルタ及び前記増幅器を能動状態とするために、前記基準信号の周波数及び位相と前記第1の発振信号の周波数及び位相との同期を検出する同期検出部と;を具備する。
【0013】
本発明の他の態様に係る位相同期回路は、第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される周波数を持つ第1の発振信号を生成する制御発振器と;前記第1の発振信号を位相シフトさせて第2の発振信号を得る移相器と;基準信号と前記第1の発振信号との間の周波数差及び第1位相差を検出し、当該周波数差及び第1位相差に応じた第1の検出信号を生成するデジタル位相周波数検出器と;前記第1の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って前記第1の制御信号を生成するデジタルフィルタと;前記基準信号と前記第2の発振信号との間の第2位相差を検出し、当該第2位相差に応じた第2の検出信号を生成するアナログ位相検出器と;前記第2の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って、フィルタ信号を出力するアナログフィルタと;前記フィルタ信号を増幅して前記第2の制御信号を生成する増幅器と;前記アナログ位相検出器、前記アナログフィルタ及び前記増幅器を能動状態とするために、前記基準信号の周波数及び位相と前記第1の発振信号の周波数及び位相との同期を検出する同期検出部と;を具備する。
【0014】
本発明の他の態様に係る位相同期回路は、第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される共通の周波数及び互いに異なる位相を夫々持つ第1の発振信号及び第2の発振信号を生成する制御発振器と;基準信号と前記第1の発振信号とが同期状態か非同期状態かを検出する同期検出部と;前記非同期状態において前記第1の発振信号を分周し、分周信号を得る分周器と;前記分周信号と前記基準信号との間の周波数差及び第1位相差を検出し、当該周波数差及び位相差に応じた第1の検出信号を得る位相周波数検出器と;前記第2の発振信号と前記基準信号との間の第2位相差を検出し、当該第2位相差に応じた第2の検出信号を生成する位相検出器と;前記非同期状態において前記第1の検出信号を選択し、前記同期状態において前記第2の検出信号を選択して選択検出信号を得る選択器と;前記選択検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って前記制御信号を生成するフィルタと;を具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広帯域で発振器の位相雑音を除去し、小面積で構成可能な位相同期回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る位相同期回路は、基準信号生成器100、制御発振器101、TDC111、デジタルフィルタ112、位相検出器121、アナログフィルタ122、増幅器123、ロック検出器124及びスイッチ125を有する。
【0017】
図1の位相同期回路では、制御発振器101、TDC111及びデジタルフィルタ112を含むデジタルループ110において、制御発振器101の出力信号(後述する第1位相信号11)の周波数及び位相を、基準信号生成器100で生成される基準信号10の周波数及び位相にロックさせる。次に、制御発振器101、位相検出器121、アナログフィルタ122及び増幅器123を含むアナログループ120が動作して、制御発振器101で発生する位相雑音が除去される。
【0018】
基準信号生成器100は、例えば水晶発振器であって、図1の位相同期回路がロック対象とする基準信号10を生成する。基準信号生成器100は、基準信号10をTDC111、位相検出器121及びロック検出器124に渡す。
【0019】
制御発振器101は、デジタルフィルタ112から第1の制御端子に入力される第1の制御信号と、増幅器123から第2の制御端子に入力される第2の制御信号の組み合わせに応じた発振周波数の発振信号を出力する。ここで、制御発振器101は少なくとも2つの位相の互いに異なる発振信号(位相信号)を出力できるものとし、第1位相信号11をTDC111に渡し、第1位相信号11とは所定量位相の異なる第2位相信号12を位相検出器121に渡す。
【0020】
制御発振器101は、例えばリング型発振器で構成してもよいし、LC型発振器の出力を分岐し、一方の出力に移相器を接続して構成してもよいし、LC型発振器を用いた直交発振器で構成してもよい。
【0021】
TDC111は、基準信号10及び第1位相信号11との間の周波数差及び位相差を検出し、当該周波数差及び位相差に応じた第1の検出信号をデジタルフィルタ112に出力する。具体的には、TDC111は、第1の検出信号を生成する。TDC111は、例えば、前述した非特許文献1に示されるような、インバータ遅延を利用して位相差をデジタル値に変換する構成であってよい。
【0022】
デジタルフィルタ112は、TDC111からの第1の検出信号から不要波を除去し、第1制御信号を制御発振器101に渡す。制御発振器101は、第1制御信号に従って基準信号10及び第1位相信号11との間の周波数差及び位相差がより小さくなるよう、第1位相信号11及び第2位相信号12を生成する。デジタルフィルタ112の周波数特性は、デジタルループ110のループ帯域及びロックアップ時間や、制御発振器101の位相雑音特性に影響するため、適宜設定してよい。
【0023】
デジタルループ110において第1位相信号11の周波数及び位相が基準信号10の周波数及び位相に同期、すなわちロックしたことを、後述するロック検出器124が検出する。ロック検出器124がスイッチ125をONにすると、アナログループ120の各構成要素に電源電圧(駆動電圧)が供給され、アナログループ120が動作する。
【0024】
位相検出器121は、基準信号10の位相と、第2位相信号12の位相との位相差を検出し、第2の検出信号をアナログフィルタ122に出力する。制御発振器101は、第2の検出信号に従って、基準信号10と第1位相信号11の間の位相差がより小さくなるよう、第1の位相信号11及び第2の位相信号12を生成する。以下、図2A、図2B及び図2Cを用いて、位相検出器121の構成例について説明する。
【0025】
図2Aに示すように、位相検出器121は、通常の位相周波数比較器(PFD)の一方の出力だけを用いる構成であってよい。具体的には、図2Aに示す位相検出器121は、2つのDフリップフロップ131及び132と、ANDゲート133とで構成される。
【0026】
Dフリップフロップ131及び132は、ポジティブエッジトリガフリップフロップであり、クロック端子に入力されるクロックパルスの立ち上がり時におけるD端子の入力値を保持し、クロックパルスの次の立ち上がり時にQ端子から出力する。Dフリップフロップは、リセット端子に「H」レベルの信号が入力されると、保持している値を「L」レベルにリセットする。尚、Dフリップフロップ131及び132はネガティブエッジトリガフリップフロップでもよい。
【0027】
Dフリップフロップ131は、クロック端子には基準信号10が入力され、D端子には電源電圧が印加され、リセット端子にはANDゲート133の出力信号が入力され、Q端子からの出力信号はANDゲート133に入力される。また、Dフリップフロップ132は、クロック端子には第2位相信号12が入力され、D端子には電源電圧が印加され、リセット端子にはANDゲート133の出力信号が入力され、Q端子からの出力信号は上記第2の検出信号OUT-aとして用いられると共に、ANDゲート133に入力される。
【0028】
また、図2Bに示す位相検出器121は、2つのDフリップフロップ131及び132と、ANDゲート133及び134とで構成される。図2Bの位相検出器121では、Dフリップフロップ132のQ端子からの出力信号と、第1位相信号とがANDゲートに入力され、第2の検出信号OUT-bとして出力される。
【0029】
また、図2Cに示す位相検出器121は、2つのDフリップフロップ131及び132と、ANDゲート133及びXORゲート135とで構成される。図2Cの位相検出器121では、Dフリップフロップ132のQ端子からの出力信号と、第1位相信号とがXORゲートに入力され、第2の検出信号OUT-cとして出力される。
【0030】
以下、図3を用いて図2A、図2B及び図2Cに示す位相検出器121の動作について説明する。尚、デジタルループ110において、第1位相信号11の周波数及び位相は、基準信号10の周波数及び位相に、分周比1/4でロックしているものとする。また、第2位相信号12の位相は、第1位相信号11の位相に比べて90度(即ち、第1位相信号11及び第2位相信号12の周期の1/4)遅れているものとする。
【0031】
図2Aに示す位相検出器121は、基準信号10と第2位相信号12の立ち上がりエッジの時間差に応じた第2の検出信号OUT-aを出力する。即ち、基準信号10の立ち上がり時にDフリップフロップ131の出力が「H」レベルとなり、第2位相信号12の立ち上がり時にDフリップフロップ132の出力が「H」レベルとなり、ANDゲート132の出力も「H」レベルとなって、Dフリップフロップ131及び132がリセットされ、第2の検出信号OUT-aが「L」レベルに立ち下がる。その後、第2位相信号12の立ち上がり時にDフリップフロップ132の出力が再び「H」レベルとなり、Dフリップフロップ131の出力はリセット状態のままであるから、第2の検出信号OUT-aが「H」レベルに立ち上がる。その後、同様に、基準信号10の立ち上がり時に、第2の検出信号OUT-aが「L」レベルに立ち下がる。
【0032】
例えば、第1位相信号11及び第2位相信号12の位相が点線で示すように進んだとすると、基準信号10と第2位相信号12の立ち上がりエッジの時間差が短くなる。従って、第2の検出信号OUT-aの立ち上がり期間が長くなり、平均電圧が増加する。即ち、図2Aに示す位相検出器121は、位相進みを電圧の増加として検出し、位相遅れを電圧の減少として検出できる。
【0033】
尚、基準信号10と第2位相信号12はデジタルループ110によって一定の位相間隔(例えば90度)を保つようにロックされているので、第2の検出信号OUT-aのデューティ比が大幅に変化することはない。仮に、上記ロックが解除されても、後述するロック検出器124がスイッチ125をOFFにして、アナログループ120の動作を一旦停止し、デジタルループ110において再度ロックアップするようにしている。従って、位相検出器121は、雑音などによる制御発振器101の微小な位相変化だけを検出すればよい。また、基準信号スプリアスは第2の検出信号OUT-aのデューティ比が50%の場合に比べ、1/(2×分周比)に低減される。第1位相信号11と第2位相信号12の位相差を90度よりも小さくすれば、基準信号スプリアスは更に低減できる。しかしながら、上記位相差は位相検出器121のデッドゾーンを避けるために、ある程度確保することが望ましい。従って、上記位相差は、単に小さくするのでなく、デッドゾーンと基準信号スプリアスのトレードオフを考慮して設定する必要がある。
【0034】
図2Bに示す位相検出器121は、Dフリップフロップ132の出力、即ち、前述した第2の検出信号OUT-aと第1位相信号11との論理積を、第2の検出信号OUT-bとして出力する。従って、図2Bに示す位相検出器121は、図2Aに示す位相検出器121と同様に、位相進みを電圧の増加として検出し、位相遅れを電圧の減少として検出できる。
【0035】
また、図3に示すように、第2の検出信号OUT-bのデューティ比は50%程度となるので、平均電圧は電源電圧の半分程度に抑えられ、後段のアナログ信号処理を行いやすい。尚、前述した第2の検出信号OUT-aに比べスプリアス成分は増加しているが、全て制御発振器101自身の発振周波数成分であるため問題とはならない。
【0036】
図2Cに示す位相検出器121は、Dフリップフロップ132の出力、即ち、前述した第2の検出信号OUT-aと第1位相信号11との排他的論理和を、第2の検出信号OUT-cとして出力する。従って、図2Cに示す位相検出器121は、図2A及びBに示す位相検出器121とは逆に、位相進みを電圧の減少として検出し、位相遅れを電圧の増加として検出できる。
【0037】
また、図3に示すように、第2の検出信号OUT-cのデューティ比は50%程度となるので、平均電圧は電源電圧の半分程度に抑えられ、後段のアナログ信号処理を行いやすい。尚、前述した第2の検出信号OUT-aに比べスプリアス成分は増加しているが、全て制御発振器101の発振周波数成分であるため問題とはならない。
【0038】
アナログフィルタ122は、位相検出器121からの第2の検出信号から不要波を除去する。増幅器123は、アナログフィルタ122の出力信号を増幅して、第2の制御信号を生成し、制御発振器101に渡す。尚、増幅器123を除いた構成であっても、本実施形態に係る位相同期回路は実現可能であるが、増幅器123でアナログフィルタ122の出力信号を増幅する方がアナログループ120のループ帯域を広くできるので望ましい。
【0039】
ロック検出器124は、第1位相信号11の位相ロック及び当該位相ロックの解除を検出する。ロック検出器124は、位相ロックを検出すると、スイッチ125をONにしてアナログループ120を動作させる。一方、ロック検出器はロックの解除を検出すると、スイッチ125をOFFにしてアナログループ120の動作を停止する。
【0040】
具体的には、ロック検出器124は、図4Aに示す回路で構成できる。尚、図4Aに示す回路は、特開平08−79066号公報に開示されている。図4Aに示すロック検出器124は、Dフリップフロップ141及び142、NOTゲート143、NANDゲート144及びカウンタ145を含む。
【0041】
Dフリップフロップ141は、クロック端子には基準信号10が入力され、D端子には第2位相信号12が入力され、Q端子からの出力信号はNANDゲート144に入力される。Dフリップフロップ142は、クロック端子には基準信号10が入力され、D端子には、第1位相信号11より位相が一定量進んだ第3位相信号が入力され、Q端子からの出力信号はNOTゲート143に入力される。NOTゲート143は、Dフリップフロップ142からの出力信号を反転してNANDゲート144に渡す。NANDゲート144は、Dフリップフロップ141の出力信号と、NOTゲート143で反転されたDフリップフロップ142の出力信号とをNAND演算してカウンタ145に渡す。カウンタ145は、基準信号10を動作クロックとして、NANDゲート144からの「H」レベルのパルスの数及び「L」レベルのパルスの数を夫々第1及び第2のカウント値としてカウントする。
【0042】
第1位相信号の位相が、基準信号の位相にロックしていれば、Dフリップフロップ141の出力は「L」レベル、Dフリップフロップ142の出力は「H」レベルとなるので、NANDゲート144の出力が「H」レベルに固定される。従って、カウンタ145の第1のカウント値は、基準信号10の立ち上がり毎に増加する。カウンタ145は、上記第1のカウント値が閾値を超えると、位相ロックを検出し、スイッチ125をONにして、アナログループ120を動作させる。一方、カウンタ145は、上記第2のカウント値が閾値を超えると、位相ロックの解除を検出し、スイッチ125をOFFにして、アナログループ120の動作を停止する。
【0043】
スイッチ125は、ロック検出器124によってON/OFF制御される。スイッチ125がONであれば、アナログループ120の各構成要素に電源から駆動電圧が供給され、当該アナログループ120が動作する。一方、スイッチ125がOFFであれば、アナログループ120の各構成要素と、電源との接続が遮断されるので、当該アナログループ120の動作は停止する。
【0044】
以下、図1の位相同期回路における、各種雑音及び基準信号スプリアスの伝達について説明する。
図1に示す位相同期回路は、図5Aに示す線形モデルで表現できる。図5Aにおいて、KTDC[code/rad]はTDC111の変換利得、KPD[V/rad]は位相検出器121の変換利得、FD(s)はデジタルフィルタ112の伝達関数、FA(s)はアナログフィルタ122の伝達関数、Aは増幅器123の利得、KD_VCO[Hz/code]及びKA_VCO[Hz/V]は制御発振器101の第1及び第2の制御端子における周波数変換利得を夫々表している。図5Aにおいて、位相−周波数変換利得KTDC×KD_VCO[Hz/rad]と、位相−周波数変換利得KPD×KA_VCO[Hz/rad]とがKVCO[Hz/rad]に等しいと仮定すれば、図1に示す位相同期回路は、図5Bに示す線形モデルで表現できる。
【0045】
以下、図5Bにおいて、基準信号の周波数(基準周波数)を20MHz、位相−周波数変換利得KVCO[Hz/rad]を400kHz/radとする。また、デジタルフィルタ112は1MHzに4つ極を持つ4次低域通過型フィルタ(LPF)、アナログフィルタ122は上記基準周波数(=20MHz)にノッチを持つ2次ツインT型帯域除去フィルタ(BRF)とする。尚、上記例では基準信号スプリアスを除去するために、アナログフィルタ122にノッチを持たせているが、図1の位相同期回路ではアナログループ120において基準信号スプリアスは十分に除去可能なのでノッチは必ずしも必要ではない。但し、アナログループ120のループ帯域の広帯域化と、基準信号スプリアスの影響はトレードオフの関係にあるので、上記ループ帯域の広帯域化のためには、アナログフィルタ122にノッチを持たせることが望ましい。
【0046】
図5Bにおいて、デジタルループ110の開ループにおける伝達関数Hol_1(s)は、次式で表される。
【数1】

【0047】
数式(1)において、ωdigはデジタルフィルタ112の極周波数(=1MHz)を表す。
【0048】
また、図5Bにおいて、アナログループ120の開ループにおける伝達関数Hol_2(s)は、次式で表される。
【数2】

【0049】
数式(2)において、ωanaはアナログフィルタのノッチ周波数(=基準周波数=20MHz)を表す。
【0050】
伝達関数Hol_1の利得特性及び位相特性を図6A及び図6B、伝達関数Hol_2の利得特性及び位相特性を図7A及び図7Bに示す。図6Aに示すようにデジタルループ110のループ帯域は300kHz程度、図7Aに示すようにアナログループ120のループ帯域は5MHz(基準周波数の1/4)程度であり、アナログループ120のループ帯域はデジタルループ110に比べて10倍以上広い。また、図6A、図6B、図7A及び図7Bに示すように、デジタルループ110及びアナログループ120は、共に位相余裕を50度程度確保できている。
【0051】
制御発振器101で発生する位相雑音Φnの伝達モデルを図8に示す。図8において、Φoutは第1位相信号11を示す。図8から次式が導出される。
【数3】

【0052】
数式(3)より、制御発振器101の位相雑音の伝達関数Hcl_vco(s)は、次式で表される。
【数4】

【0053】
数式(4)及び図9に示すように、制御発振器101の位相雑音Φnの伝達関数Hcl_vcoは、1次高域通過型フィルタ(HPF)を示す。また、上記HPFのカットオフ周波数は、デジタルフィルタ112の伝達関数FD(s)よりも寧ろ、アナログフィルタ122の伝達関数FA(s)及び増幅器123の利得Aに依存して決まる。従って、アナログ120のループ帯域を広くすることによって、デジタルループ110のみでPLLを構成するよりも、制御発振器101の位相雑音Φnを広帯域で除去できる。
【0054】
デジタルループ110で発生する量子化雑音Vtdcの伝達モデルを図10に示す。図10において伝達関数Hcl_1(s)は、次式で表される。
【数5】

【0055】
また、アナログループ120で発生する基準信号スプリアスVspの伝達モデルを図11に示す。図11において伝達関数Hcl_2(s)は次式で表される。
【数6】

【0056】
数式(5)及び図10より、量子化雑音Vtdcの伝達関数Htdc(s)は、次式で表される。
【数7】

【0057】
また、数式(6)及び図11より、基準信号スプリアスVspの伝達関数Hsp(s)は、次式で表される。
【数8】

【0058】
伝達関数Htdc(s)及び伝達関数Hsp(s)の利得特性を図12及び図13に夫々示す。数式(5)、(7)及び図12に示すように、量子化雑音Vtdcの伝達関数Htdc(s)は、1次LPFである。また、上記LPFのカットオフ周波数は、デジタルフィルタ112の伝達関数FD(s)に依存して決まる。従って、デジタルループ110のループ帯域を狭くすることによって、量子化雑音Vtdcを広帯域に亘って除去できる。また、図13に示すように、基準信号スプリアスVspは、アナログフィルタ122によって帯域制限されている。従って、狭帯域のデジタルループ110及び広帯域のアナログループ120を組み合わせることによって、量子化雑音Vtdc及び制御発振器101で発生する位相雑音Φnを広帯域に亘って除去することが可能となる。
【0059】
尚、基準信号スプリアスVspはアナログループ120によってのみ帯域制限されているため、アナログループ120のループ帯域は、帯域制限したいスプリアス量とのトレードオフによって適宜設定するべきである。例えば、位相雑音Φnを広帯域に亘って除去しなければならない仕様であれば、前述したように、アナログフィルタ112としてノッチフィルタを用いることが望ましい。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路では、周波数及び位相ロックを行うための狭帯域デジタルループと、制御発振器で発生する位相雑音を除去するための広帯域アナログループを組み合わせて構成している。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、量子化雑音と制御発振器の位相雑音を共に、広帯域に亘って除去することができる。また、アナログループに含まれるアナログフィルタのカットオフ周波数を従来に比べて高く(例えば、基準周波数の1/4以上)設定できるため、当該アナログフィルタを小面積で構成することができる。即ち、上記アナログループを小面積化できる。また、本実施形態に係る位相同期回路は、デジタルループで周波数及び位相ロックを行うため、分周器が必要なく、従来に比べて更に小面積及び低消費電力で構成できる。
【0061】
(第2の実施形態)
図14に示すように、本発明の第2の実施形態に係る位相同期回路は、前述した図1に示す位相同期回路において、制御発振器101をVCO201、デジタルループ110をデジタルループ210に夫々置き換えている。以下の説明では、図14において図1と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0062】
デジタルループ210は、図1に示すデジタルループ110において、デジタルフィルタ112の後段にデジタル−アナログ変換器(DAC)213を設けている。DAC213は、デジタルフィルタ111からのデジタル出力信号をアナログ信号に変換し、前述した第1の制御信号としてVCO201に渡す。
【0063】
VCO201は、反転増幅器を環状に複数段接続したリング型発振器で構成され、DAC213から第1の制御端子に入力される第1の制御信号と、増幅器123から第2の制御端子に入力される第2の制御信号の電圧に応じた発振周波数の信号を出力する。VCO201は、上記段数に応じた数の、多相信号を出力できる。以下の説明では、VCO201は、4段で構成されており、第1位相信号11をTDC111に渡し、第1位相信号11とは90度位相の異なる第2位相信号12を位相検出器121に渡すものとする。尚、第1位相信号11と第2位相信号12の位相差は、必ずしも90度である必要は無く、前述したように位相検出器121のデッドゾーンと基準信号スプリアスのトレードオフに応じて適宜定めてよい。また、DAC213及びVCO201をDCO(Digitally controlled oscillator)で構成してもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路では、前述した第1の実施形態における制御発振器をリング型発振器に換えている。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、移相器を必要とせずに多相信号を生成し、デジタルループ及びアナログループに与えることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
図15に示すように、本発明の第3の実施形態に係る位相同期回路は、前述した図1に示す位相同期回路において、制御発振器101を、制御発振器301、差動−単相変換器302及び移相器303に置き換えている。以下の説明では、図15において図1と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0066】
制御発振器301は、可変キャパシタを含むLC型発振器で構成され、前述したVCO201に比べて発生する位相雑音が小さい。制御発振器301は、デジタルフィルタ112から第1の制御端子に入力される第1の制御信号に応じて上記可変キャパシタのキャパシタンスが離散的に制御される。また、制御発振器301は、増幅器123から第2の制御端子に入力される第2の制御信号によっても上記可変キャパシタのキャパシタンスが制御される。即ち、制御発振器301は、第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせに応じた発振周波数の差動発振信号を差動−単相変換器302に出力する。尚、制御発振器301は前述した制御発振器101及びVCO201とは異なり、多相信号を生成できない。
【0067】
差動−単相変換器302は、制御発振器301からの差動発振信号を単相発振信号に変換し、第1位相信号11としてTDC111及び移相器303に出力する。移相器303は、第1位相信号11を所定量(例えば、90度)位相シフトさせて、第2位相信号12を生成し、位相検出器121及びロック検出器124に渡す。尚、移相器303がシフトさせる位相量は、前述したように位相検出器121のデッドゾーンと基準信号スプリアスのトレードオフに応じて適宜定めてよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路では、前述した第1の実施形態における制御発振器をLC型発振器に換えている。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、制御発振器で発生する位相雑音を更に低減できる。
【0069】
(第4の実施形態)
図16に示すように、本発明の第4の実施形態に係る位相同期回路は、前述した図1に示す位相同期回路において、制御発振器101を、制御発振器401に置き換えている。以下の説明では、図16において図1と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0070】
制御発振器401は、可変キャパシタを含む第1及び第2のLC型発振器を環状に接続したLC型直交発振器と、上記第1及び第2のLC型発振器の出力を夫々差動−単相変換するための第1及び第2のオペアンプとで構成される。制御発振器401は、前述したVCO201に比べて発生する位相雑音が小さい。制御発振器401は、デジタルフィルタ112から第1の制御端子に入力される第1の制御信号に応じて上記可変キャパシタのキャパシタンスが離散的に制御される。また、制御発振器401は、増幅器123から第2の制御端子に入力される第2の制御信号によっても上記可変キャパシタのキャパシタンスが制御される。即ち、制御発振器401は、第1の制御信号及び第2の制御信号の電圧に応じた発振周波数の第1の差動発振信号を第1のLC型発振器で生成し、上記第1の差動発振信号と90度位相の異なる第2の差動発振信号を第2のLC型発振器で生成する。第1の差動発振信号は、第1のオペアンプによって単相信号に変換され、第1位相信号11としてTDC111に出力される。第2の差動発振信号は、第2のオペアンプによって単相信号に変換され、第2位相信号12として位相検出器121に出力される。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路では、前述した第1の実施形態に係る位相同期回路において、制御発振器をLC型直交発振器に換えている。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、制御発振器で発生する位相雑音を更に低減できる。また、本実施形態に係る位相同期回路は、前述した第3の実施形態に係る位相同期回路とは異なり、移相器を必要としない。
【0072】
(第5の実施形態)
図17に示すように、本発明の第5の実施形態に係る位相同期回路は、基準信号生成器100、VCO501、位相周波数検出器551、第1の位相検出器552、第2の位相検出器553、セレクタ554、チャージ・ポンプ555、ループ・フィルタ556、分周器557、スイッチ558及びロック検出器559を有する。尚、基準信号生成器100は、前述した第1乃至第4の実施形態に係る位相同期回路における基準信号生成器と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0073】
VCO501は、後述するループ・フィルタ556から制御端子に入力される制御信号の電圧に応じた発振周波数の発振信号を出力する。ここで、VCO501は少なくとも3つの、位相の互いに異なる発振信号(位相信号)を出力できるものとする。以下の説明では、VCO501は、第1位相信号21と、第1位相信号21の位相Φoutより所定量位相の遅れた第2位相信号22と、上記位相Φoutより所定量位相の進んだ第3位相信号23とを出力するものとする。第1位相信号21は第2の位相検出器533及び分周器557に入力され、第2位相信号22はロック検出器559及び第1の位相検出器552に入力され、第3位相信号23はロック検出器559及び第2の位相検出器553に入力される。
【0074】
位相周波数比較器551は、一般的なPLLに用いられる位相周波数検出器であって、基準信号10及び後述する分周器557からの分周信号の周波数差及び位相差を検出し、当該周波数差及び位相差に応じて第1−UP信号31及び第1−DOWN信号32を夫々セレクタ554に入力する。
【0075】
セレクタ554は、前述した第1−UP信号31及び第1−DOWN信号32と、後述する第2−UP信号33及び第2−DOWN信号34とのいずれか一方を選択し、チャージ・ポンプ555に入力する。具体的には、後述するロック検出器559が位相ロックを検出していればセレクタ554は第2−UP信号33及び第2−DOWN信号34を選択し、そうでなければセレクタ554は第1−UP信号31及び第1−DOWN信号32を選択する。
【0076】
チャージ・ポンプ555は、例えば図17に示す昇圧回路であって、電源と出力端子との間に第1の電流源、上記出力端子とグラウンドとの間に第2の電流源を夫々備える。第1の電流源は、セレクタ554によって選択された第1−UP信号31または第2−UP信号33のパルス幅に応じてUP電流を出力し、第2の電流源は、セレクタ554によって選択された第1−DOWN信号32または第2−DOWN信号34のパルス幅に応じてDOWN電流を出力する。チャージ・ポンプ555は、上記UP電流及びDOWN電流の差分に応じた出力電流をループ・フィルタ556に渡す。
【0077】
ループ・フィルタ556は、例えば抵抗及びキャパシタ(RC)で構成される低域通過型フィルタであり、チャージ・ポンプ555の出力電流の高周波成分を除去し、平滑化する。この平滑化された信号は制御信号として、VCO501に入力される。VCO501は、制御信号に従って基準信号10と第1位相信号21との間の周波数差及び位相差がより小さくなるよう、第1位相信号21、第2位相信号22及び第3位相信号23を生成する。
【0078】
分周器557は、第1位相信号21を例えば整数分周比で分周し、分周信号を位相周波数比較器551に渡す。尚、上記分周比は、基準信号10の周波数に対する第1位相信号21の発振周波数の比率によって定められる。
【0079】
また、分周器557と駆動電圧を供給する電源との接続は、後述するスイッチ558によって切り替え可能である。具体的には、ロック検出器559が位相ロックを検出すると、スイッチ558は分周器557と電源との接続を開放し、分周器557の動作はOFFとなる。一方、ロック検出器559が位相ロックの解除を検出すると、スイッチ558は分周器557と電源との接続を短絡し、分周器557の動作はONとなる。即ち、第1の位相検出器552及び第2の位相検出器553は2つの入力信号の周波数差の検出を行わず両者の周波数を一致させる必要がないので、スイッチ558は位相ロック状態であれば分周器557の動作をOFFさせることにより、回路全体の消費電力を低減させている。
【0080】
ロック検出器559は、前述したロック検出器124と同様、図4Aに示す構成であって、位相ロック及び位相ロックの解除を検出し、当該検出結果を示す信号をセレクタ554及びスイッチ558に渡す。
【0081】
以下、第1の位相検出器552及び第2の位相検出器553を設けることの技術的意義について説明する。尚、以下の説明において分周器557の分周比は4であるとする。
前述のように、位相周波数検出器551は、一般的なPLLに用いられる位相周波数検出器であって、デッドゾーンが存在する。従って、基準信号10と、第1位相信号21の分周信号の周波数及び位相が一致(ロック)すると、位相周波数検出器551のデッドゾーンによってPLL全体の位相雑音特性が劣化してしまう。故に、前述したように、ロック検出器559は、位相ロックを検出すると、スイッチ558を介して分周器557の動作をOFFさせると共に、セレクタ554に第1−UP信号31及び第1−DOWN信号32ではなく、第2−UP信号33及び第2−DOWN信号34を選択させる。即ち、図17に示す位相同期回路では、位相ロック状態であれば、位相周波数検出器551ではなく、第1の位相検出器552及び第2の位相検出器553によって位相ロックが維持される。
【0082】
第1の位相検出器552は、例えば図18Aに示すように、2つのDフリップフロップ561及び562と、ANDゲート563と、NOTゲート564とで構成される。
【0083】
Dフリップフロップ561及び562は、ポジティブエッジトリガフリップフロップであり、クロック端子に入力されるクロックパルスの立ち上がり時におけるD端子の入力値を保持し、クロックパルスの次の立ち上がり時にQ端子から出力する。Dフリップフロップは、リセット端子に「H」レベルの信号が入力されると、保持している値を「L」レベルにリセットする。尚、Dフリップフロップ561及び562はネガティブエッジトリガフリップフロップでもよい。
【0084】
Dフリップフロップ561は、クロック端子には基準信号10が入力され、D端子には電源電圧が印加され、リセット端子にはANDゲート563の出力信号が入力され、Q端子からの出力信号はANDゲート563に入力される。また、Dフリップフロップ562は、クロック端子には第2位相信号22が入力され、D端子には電源電圧が印加され、リセット端子にはANDゲート563の出力信号が入力され、Q端子からの出力信号はNOTゲート564及びANDゲート563に入力される。NOTゲート564は、入力された信号を反転し、第2−UP信号33を出力する。
【0085】
即ち、図18Bに示すように、第1の位相検出器552は、第1位相信号21より所定量(ΔT)位相の遅れた第2位相信号22と、基準信号10との位相差を示すパルス幅ΔTの第2−UP信号33を検出する。
【0086】
第2の位相検出器553は、例えば図19Aに示すように、4つのDフリップフロップ573、574、576及び577と、3つのANDゲート575、578及び580と、3つのNOTゲート571、572及び579とで構成される。
【0087】
Dフリップフロップ573、574、576及び577は、ポジティブエッジトリガフリップフロップであり、クロック端子に入力されるクロックパルスの立ち上がり時におけるD端子の入力値を保持し、クロックパルスの次の立ち上がり時にQ端子から出力する。Dフリップフロップは、リセット端子に「H」レベルの信号が入力されると、保持している値を「L」レベルにリセットする。尚、Dフリップフロップ573、574、576及び577はネガティブエッジトリガフリップフロップでもよい。
【0088】
NOTゲート571は、第1位相信号21を反転し、Dフリップフロップ573のクロック端子に入力する。Dフリップフロップ573は、D端子には電源電圧が印加され、リセット端子にはANDゲート575の出力信号が入力され、Q端子からの出力信号はANDゲート575に入力される。
【0089】
NOTゲート572は、第3位相信号23を反転し、Dフリップフロップ574のクロック端子に入力する。Dフリップフロップ574は、D端子には電源電圧が印加され、リセット端子にはANDゲート575の出力信号が入力され、Q端子からの出力信号はANDゲート575及び580に入力される。
【0090】
Dフリップフロップ576は、クロック端子には第3位相信号23が入力され、D端子には電源電圧が印加され、リセット端子にはANDゲート578の出力信号が入力され、Q端子からの出力信号はNOTゲート579及びANDゲート578に入力される。NOTゲート579は、Dフリップフロップ576から入力された信号を反転して、ANDゲート580に入力する。
【0091】
Dフリップフロップ577は、クロック端子には基準信号10が入力され、D端子には電源電圧が印加され、リセット端子にはANDゲート578の出力信号が入力され、Q端子からの出力信号はANDゲート578に入力される。
【0092】
ANDゲート580は、Dフリップフロップ574から入力された信号(以下、信号Aと称する)及びNOTゲート579から入力された信号(以下、信号Bと称する)との論理積を第2−DOWN信号34として出力する。
【0093】
図19Bに示すように、信号Aは、第1位相信号21の反転信号と、第1位相信号21より所定量(ΔT)位相の進んだ第3位相信号23の反転信号との位相差を示すパルス幅ΔTの信号である。信号Aの周期は、第1位相信号21の周期に等しい(即ち、基準信号10の1/4倍である。)。一方、信号Bは第3位相信号23と基準信号10との位相差を示す信号であり、信号Bの周期は、基準信号10の周期に等しい。従って、信号A及び信号Bの論理積である第2−DOWN信号34のパルス幅はΔT、周期は基準信号10の周期に等しくなる。
【0094】
このように位相ロック状態であれば、第2−UP信号33及び第2−DOWN信号34のパルス幅は共にΔTとなるため、チャージ・ポンプ555のUP電流及びDOWN電流の電流量は等しくなり、位相ロックが維持される。
【0095】
以下、第2−UP信号33及び第2−DOWN信号34による上記位相ロックの維持について、更に詳しく説明する。例えば、温度変動や雑音などの外乱によって、図20に示すように、VCO501の出力信号の位相が夫々αずつ遅れたとする。このとき、第2−UP信号33のパルス幅は、基準信号10と第2位相信号22の位相差に相当するため、ΔT+αとなる。しかしながら、第2−DOWN信号34のパルス幅は、第1位相信号21と第3位相信号23との位相差に相当するので、ΔTのままである。尚、第2−DOWN信号34の立ち上がり位置は、第3位相信号23の立ち下がり位置によって決まるので、αだけ遅れる。
【0096】
従って、チャージ・ポンプ555において、UP電流が第2−UP信号33のパルス幅の変動分(α)だけDOWN電流に比べて多く流れることとなり、VCO501の出力信号の位相は、進み方向に制御される。以下、負帰還によって徐々に基準信号10と第1位相信号21との位相差は減少し、位相ロックが維持される。逆に、位相がαずつ進んだとしても、第2−UP信号33のパルス幅がΔT−αとなり、同様に位相ロックが維持される。
【0097】
尚、第1位相信号21に対する、第2位相信号22及び第3位相信号23の位相遅れ及び位相進み量(ΔT)は、第1の位相検出器552及び第2の位相検出器553のデッドゾーンに比べ大きくすることが望ましい。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路は、位相ロックするまでは通常のPLLを利用するものの、位相ロック後は位相周波数比較器のデッドゾーンを回避するために、別に設けた位相検出器によって位相ロックを維持するようにしている。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、余分な遅延素子を必要とせずに、PLLの位相雑音特性の劣化を防ぐことができるので、従来に比べ回路面積を小型化できる。また、本実施形態に係る位相同期回路は、位相ロック後に分周器の動作をOFFするので、従来に比べ消費電力を低減できる。
【0099】
(第6の実施形態)
図21に示すように、本発明の第6の実施形態に係る位相同期回路は、前述した図17に示す位相同期回路において、セレクタ554をセレクタ654に置き換えると共に、ロック検出器559とセレクタ654との間に制御クロック生成回路660を設けている。以下の説明では、図21において図17と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0100】
制御クロック生成回路660は、ロック検出器559の出力信号を、互いのパルス区間がオーバーラップしない2つの制御クロックD1及びD2に変換し、セレクタ654に渡す。セレクタ654は、制御クロックD1及びD2に応じて、UP信号及びDOWN信号の選択を行う。
【0101】
以下、図22A及び図22Bを用いて制御クロック生成回路660の一例について説明する。
図22Aに示すように、制御クロック生成回路660は、NOTゲート681、NORゲート682及び683、遅延器684及び685を含む。ロック検出器559の出力信号は、NOTゲート681及びNORゲート682に入力される。NOTゲート681は、ロック検出器559の出力信号を反転して、NORゲート683に入力する。
【0102】
NORゲート682の出力信号は制御クロックD1としてセレクタ654に渡されると共に、遅延器685に入力される。NORゲート683の出力信号は制御クロックD2としてセレクタ654に渡されると共に、遅延器684に入力される。
【0103】
遅延器684は、制御クロックD2を所定時間遅延させてNORゲート682に入力する。遅延器685は、制御クロックD1を所定時間遅延させてNORゲート683に入力する。
【0104】
図22Bに示すように、ロック検出器の出力が立ち上がると(位相ロックの検出時)、NORゲート682の出力信号、即ち制御クロックD1は立ち下がる。また、制御クロックD1は、遅延器685を介してNORゲート683に入力されるので、NORゲート683の出力信号、即ち制御クロックD2は、上記制御クロックD1の立ち下がりから遅延器685で発生する遅延時間経過後に立ち上がる。
【0105】
一方、ロック検出器の出力が立ち下がると(位相ロック解除の検出時)、NORゲート683の出力信号、即ち制御クロックD2は立ち下がる。また、制御クロックD2は、遅延器684を介してNORゲート682に入力されるので、NORゲート682の出力信号、即ち制御クロックD1は、上記制御クロックD2の立ち下がりから遅延器684で発生する遅延時間経過後に立ち上がる。
【0106】
以上のように、制御クロックD1及びD2は、互いのパルス区間がオーバーラップしない。セレクタ654は、制御クロックD1によって位相ロック解除、制御クロックD2によって位相ロックを夫々検出できる。即ち、セレクタ654は、制御クロックD1が「H」レベルであれば、第1−UP信号31及び第1−DOWN信号32を選択する。また、セレクタ654は、制御クロックD2が「H」レベルであれば、第2−UP信号33及び第2−DOWN信号34を選択する。
【0107】
セレクタ654は、例えば図23に示すように、ANDゲート691及び692、ORゲート693、ANDゲート694及び695、ORゲート696を含む。
【0108】
ANDゲート691は、制御クロックD1と第1−UP信号31の論理積をORゲート693に渡す。ANDゲート692は、制御クロックD2と第2−UP信号33の論理積をORゲート693に渡す。ORゲート693は、ANDゲート691及び692からの入力信号の論理和を、UP電流を制御するためのUP信号としてチャージ・ポンプ555に渡す。従って、上記UP信号は、制御クロックD1が「H」レベルであれば第1−UP信号31、制御クロックD2が「H」レベルであれば第2−UP信号33となる。
【0109】
ANDゲート694は、制御クロックD1と第1−DOWN信号32の論理積をORゲート696に渡す。ANDゲート695は、制御クロックD2と第2−DOWN信号34の論理積をORゲート696に渡す。ORゲート696は、ANDゲート694及び695からの入力信号の論理和を、DOWN電流を制御するためのDOWN信号としてチャージ・ポンプ555に渡す。従って、上記DOWN信号は、制御クロックD1が「H」レベルであれば第1−DOWN信号32、制御クロックD2が「H」レベルであれば第2−DOWN信号34となる。
【0110】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路は、ロック検出器の出力信号を互いのパルス区間がオーバーラップしない2つの制御クロックD1及びD2に変換し、セレクタにおいて当該制御クロックD1及びD2に基づいて信号を選択する。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、セレクタにおいて位相周波数検出器からの信号と第1及び第2の位相検出器からの信号とが同時に選択されてしまうことによる、基準信号スプリアスの増大や位相ロックの解除を回避できる。
【0111】
(第7の実施形態)
図24に示すように、本発明の第7の実施形態に係る位相同期回路は、前述した図21に示す位相同期回路において、VCO501をVCO701に夫々置き換えている。以下の説明では、図24において図21と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0112】
VCO701は、反転増幅器を環状に複数段接続したリング型発振器で構成され、ループ・フィルタ556から制御端子に入力される制御信号の電圧に応じた発振周波数の信号を出力する。また、VCO701は、上記段数に応じた数の多相信号を出力できる。以下の説明では、VCO701は、4段で構成されており、第1位相信号21、第2位相信号22及び第3位相信号23をVCO701内の互いに異なる任意の3点から取り出すことができる。このように、VCO701は、第1位相信号21、第2位相信号22及び第3位相信号23間の位相差を任意に定めることができる。但し、上記位相差は第1の位相検出器552及び第2の位相検出器553のデッドゾーンに比べ大きくすることが望ましい。
【0113】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路では、前述した第6の実施形態におけるVCOをリング型発振器に換えている。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、移相器を必要とせずに多相信号を生成することができる。
【0114】
(第8の実施形態)
図25に示すように、本発明の第8の実施形態に係る位相同期回路は、前述した図24に示す位相同期回路において、VCO701を、VCO801、差動−単相変換器802及び移相器803及び804に置き換えている。以下の説明では、図25において図24と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0115】
VCO801は、可変キャパシタを含むLC型発振器で構成され、前述したVCO701に比べて発生する位相雑音が小さい。VCO801は、ループ・フィルタ556から制御端子に入力される制御信号によって上記可変キャパシタのキャパシタンスが制御される。即ち、VCO801は、制御信号の電圧に応じた発振周波数の差動発振信号を差動−単相変換器802に出力する。尚、VCO801は前述したVCO501及びVCO701とは異なり、多相信号を生成できない。
【0116】
差動−単相変換器802は、VCO801からの差動発振信号を単相発振信号に変換し、第1位相信号21として第2の位相検出器553、分周器557、移相器803及び804に出力する。
【0117】
移相器803は、上記第1位相信号21の位相を所定量(ΔT)遅らせ、第2位相信号22として第1の位相検出器552及びロック検出器559に渡す。移相器804は、上記第1位相信号21の位相を所定量(ΔT)進め、第3位相信号23として第2の位相検出器553及びロック検出器559に渡す。尚、上記所定量(ΔT)は第1の位相検出器552及び第2の位相検出器553のデッドゾーンに比べ大きくすることが望ましい。
【0118】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路では、前述した第7の実施形態におけるVCOをLC型発振器に換えている。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、VCOで発生する位相雑音を更に低減できる。
【0119】
(第9の実施形態)
図26に示すように、本発明の第9の実施形態に係る位相同期回路は、前述した図24に示す位相同期回路において、VCO701を、VCO901に置き換えている。以下の説明では、図26において図24と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0120】
VCO901は、可変キャパシタを含む第1及び第2のLC型発振器を環状に接続したLC型直交発振器と、上記第1及び第2のLC型発振器の出力を夫々差動−単相変換するための第1、第2及び第3のオペアンプとで構成される。VCO901は、前述したVCO701に比べて発生する位相雑音が小さい。VCO901は、ループ・フィルタ556から制御端子に入力される制御信号によって上記可変キャパシタのキャパシタンスが制御される。即ち、VCO901は、上記制御信号の電圧に応じた発振周波数の第1の差動発振信号を第1のLC型発振器で生成し、上記第1の差動発振信号と90度位相の異なる第2の差動発振信号を第2のLC型発振器で生成する。
【0121】
第1の差動発振信号は、第1のオペアンプによって単相信号に変換され、第1位相信号21として第2の位相検出器553及び分周器557に出力される。第2の差動発振信号は、第2のオペアンプによって単相信号に変換され、第2位相信号22として第1の位相検出器552及びロック検出器559に出力される。また、上記第2の差動発振信号は、第3のオペアンプにも入力され、第3のオペアンプから第2位相信号22の反転信号である第3位相信号23が得られる。第3位相信号23は、第2の位相検出器553及びロック検出器559に出力される。
【0122】
従って、第1位相信号21及び第2位相信号22との位相差と、第1位相信号21及び第3位相信号23との位相差は共に90度となり、第1の位相検出器552及び第2の位相検出器553のデッドゾーンよりも十分大きい。即ち、第1の位相検出器552及び第2の位相検出器553のデッドゾーンによる、PLLの位相雑音特性の劣化を回避できる。
【0123】
以上説明したように、本実施形態に係る位相同期回路では、前述した第7の実施形態に係る位相同期回路において、VCOをLC型直交発振器に換えている。従って、本実施形態に係る位相同期回路によれば、VCOで発生する位相雑音を更に低減できる。また、本実施形態に係る位相同期回路は、前述した第8の実施形態に係る位相同期回路とは異なり、移相器を必要としない。
【0124】
(第10の実施形態)
図27に示すように、本発明の第10の実施形態に係る受信機は、アンテナ1000、デュプレクサ1001、低雑音増幅器(LNA)1002、ローカル発振器1003、90度移相器1004、デジタル信号処理部1005、ミキサ1011、LPF1012、自動利得制御回路(AGC)1013、アナログ−デジタル変換器(ADC)1014、ミキサ1021、LPF1022、ADC1024及びクロック生成回路1030を有する。
【0125】
アンテナ1000は、無線(RF)信号を受信し、当該RF信号をデュプレクサ1001に渡す。デュプレクサ1001は、上記RF信号から不要波を除去し、LNA1002に渡す。LNA1002は、デュプレクサ1001からのRF信号を増幅して、ミキサ1011及びミキサ1021に渡す。
【0126】
ローカル発振器1003は、上記RF信号をダウンコンバートするためのローカル信号を生成し、ミキサ1011及び90度移相器1004に渡す。90度移相器1004は、ローカル発振器1003からのローカル信号を90度位相シフトさせ、ミキサ1021に渡す。
【0127】
ミキサ1011は、LNA1002からのRF信号と、ローカル発振器1003からのローカル信号との乗算を行って、I信号を生成する。また、ミキサ1021は、上記RF信号と、90度移相器1004において位相シフトされたローカル信号との乗算を行って、Q信号を生成する。
【0128】
ミキサ1011で生成されたI信号及びミキサ1021で生成されたQ信号は、LPF1012及び1022によって高周波成分が除去され、AGC1013及び1023によって信号レベルを調整される。ADC1014及び1024は、クロック生成回路1030によって生成されるサンプリングクロックに応じて上記I信号及びQ信号をサンプリングして、デジタル値に変換し、デジタル信号処理部1005に渡す。クロック生成回路1030は、前述した第1乃至第9の実施形態のいずれかに係る位相同期回路で構成されている。
【0129】
デジタル信号処理部1005は、例えばDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)で構成され、上記ADC1014及び1024からのデジタルI信号及びQ信号を更に処理し、送信されたデータの復号・再生を行う。
【0130】
以上説明したように、本実施形態に係る受信機では、I信号及びQ信号を変換するADCのサンプリングクロックを生成するクロック生成回路を、前述した第1乃至第9の実施形態のいずれかに係る位相同期回路を用いて構成している。従って、本実施形態に係る受信機によれば、従来に比べて小面積かつ低消費電力なクロック生成回路によって、高精度かつ低ジッタなサンプリングクロックを生成できる。
【0131】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】第1の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図2A】図1の位相検出器の一例を示す回路図。
【図2B】図1の位相検出器の他の例を示す回路図。
【図2C】図1の位相検出器の他の例を示す回路図。
【図3】図2A、2B及び2Cの回路の動作例を示すタイムチャート。
【図4A】図1のロック検出器の一例を示す回路図。
【図4B】図4Aの回路に入力される信号例を示すタイムチャート。
【図5A】図1の回路の線形モデルを示す図。
【図5B】図5Aの線形モデルを簡略化した図。
【図6A】図1のデジタルループにおける開ループ利得特性を示すグラフ図。
【図6B】図1のデジタルループにおける開ループ位相特性を示すグラフ図。
【図7A】図1のアナログループにおける開ループ利得特性を示すグラフ図。
【図7B】図1のアナログループにおける開ループ位相特性を示すグラフ図。
【図8】図1の制御発振器で発生する位相雑音の伝達モデルを示す図。
【図9】図1の制御発振器で発生する位相雑音の伝達関数の利得特性を示すグラフ図。
【図10】図1のデジタルループで発生する量子化雑音の伝達モデルを示す図。
【図11】図1のアナログループで発生する基準信号スプリアスの伝達モデルを示す図。
【図12】図1のデジタルループで発生する量子化雑音の伝達関数の利得特性を示すグラフ図。
【図13】図1のアナログループで発生する基準信号スプリアスの伝達関数の利得特性を示すグラフ図。
【図14】第2の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図15】第3の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図16】第4の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図17】第5の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図18A】図17の第1の位相検出器の一例を示す回路図。
【図18B】図18Aの回路の動作例を示すタイムチャート。
【図19A】図17の第2の位相検出器の一例を示す回路図。
【図19B】図19Aの回路の動作例を示すタイムチャート。
【図20】第1、第2及び第3位相信号の位相遅れαに対する、図18Aの回路及び図19Aの回路の動作例を示すタイムチャート。
【図21】第6の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図22A】図21の制御クロック生成回路の一例を示す回路図。
【図22B】図22Aの回路の動作例を示すタイムチャート。
【図23】図21のセレクタ及びチャージ・ポンプの一例を示す回路図。
【図24】第7の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図25】第8の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図26】第9の実施形態に係る位相同期回路を示すブロック図。
【図27】第10の実施形態に係る受信機を示すブロック図。
【符号の説明】
【0133】
10・・・基準信号
11・・・第1位相信号
12・・・第2位相信号
13・・・第3位相信号
21・・・第1位相信号
22・・・第2位相信号
23・・・第3位相信号
31・・・第1−UP信号
32・・・第1−DOWN信号
33・・・第2−UP信号
34・・・第2−DOWN信号
100・・・基準信号生成器
101・・・制御発振器
110・・・デジタルループ
111・・・TDC
112・・・デジタルフィルタ
120・・・アナログループ
121・・・位相検出器
122・・・アナログフィルタ
123・・・増幅器
124・・・ロック検出器
125・・・スイッチ
131,132・・・Dフリップフロップ
133,134・・・ANDゲート
135・・・XORゲート
141,142・・・Dフリップフロップ
143・・・NOTゲート
144・・・NANDゲート
145・・・カウンタ
201・・・VCO
210・・・デジタルループ
213・・・DAC
301・・・制御発振器
302・・・差動−単相変換器
303・・・移相器
401・・・制御発振器
501・・・VCO
551・・・位相周波数検出器
552・・・第1の位相検出器
553・・・第2の位相検出器
554・・・セレクタ
555・・・チャージ・ポンプ
556・・・ループ・フィルタ
557・・・分周器
558・・・スイッチ
559・・・ロック検出器
561、562・・・Dフリップフロップ
563・・・ANDゲート
564、571、572・・・NOTゲート
573、574・・・Dフリップフロップ
575・・・ANDゲート
576、577・・・Dフリップフロップ
578・・・ANDゲート
579・・・NOTゲート
580・・・ANDゲート
654・・・セレクタ
660・・・制御クロック生成回路
681・・・NOTゲート
682、683・・・NORゲート
684、685・・・遅延器
691、692・・・ANDゲート
693・・・ORゲート
694、695・・・ANDゲート
696・・・ORゲート
701、801・・・VCO
802・・・差動−単相変換器
803、804・・・移相器
901・・・VCO
1000・・・アンテナ
1001・・・デュプレクサ
1002・・・低雑音増幅器
1003・・・ローカル発振器
1004・・・90度移相器
1005・・・デジタル信号処理部
1011・・・ミキサ
1012・・・フィルタ
1013・・・自動利得制御器
1014・・・ADC
1021・・・ミキサ
1022・・・フィルタ
1023・・・自動利得制御器
1024・・・ADC
1030・・・クロック生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される共通の周波数及び互いに異なる位相を夫々持つ第1の発振信号及び第2の発振信号を生成する制御発振器と、
基準信号と前記第1の発振信号との間の周波数差及び第1位相差を検出し、当該周波数差及び第1位相差に応じた第1の検出信号を生成するデジタル位相周波数検出器と、
前記第1の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って前記第1の制御信号を生成するデジタルフィルタと、
前記第2の発振信号と前記基準信号との間の第2位相差を検出し、当該第2位相差に応じた第2の検出信号を生成するアナログ位相検出器と、
前記第2の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って、フィルタ信号を出力するアナログフィルタと、
前記フィルタ信号を増幅して前記第2の制御信号を生成する増幅器と、
前記アナログ位相検出器、前記アナログフィルタ及び前記増幅器を能動状態とするために、前記基準信号の周波数及び位相と前記第1の発振信号の周波数及び位相との同期を検出する同期検出部と
を具備することを特徴とする位相同期回路。
【請求項2】
前記制御発振器、前記デジタル位相周波数検出器及び前記デジタルフィルタは、第1のループ帯域を有する第1のループを形成するように構成され、前記制御発振器、前記アナログ位相検出器、前記アナログフィルタ及び前記増幅器は、前記第1のループ帯域より広い第2のループ帯域を有する第2のループを形成するように構成されることを特徴とする請求項1記載の位相同期回路。
【請求項3】
前記アナログ位相検出器は、前記第2の発振信号と、前記基準信号との間の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのいずれか一方の時間差を検出し、当該時間差に応じた電圧パルスを前記第2の検出信号として生成することを特徴とする請求項1記載の位相同期回路。
【請求項4】
前記アナログ位相検出器は、前記第2の発振信号と、前記基準信号との間の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのいずれか一方の時間差を検出し、当該時間差に応じた電圧パルスと、前記第1の発振信号との論理積を前記第2の検出信号として生成することを特徴とする請求項1記載の位相同期回路。
【請求項5】
前記アナログ位相検出器は、前記第2の発振信号と、前記基準信号との間の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのいずれか一方の時間差を検出し、当該時間差に応じた電圧パルスと、前記第1の発振信号との排他的論理和を前記第2の検出信号として生成することを特徴とする請求項1記載の位相同期回路。
【請求項6】
前記電圧制御発振器は、前記第1の発振信号と、前記第1の発振信号と直交する前記第2の発振信号とを生成するLC型直交発振器であることを特徴とする請求項1記載の位相同期回路。
【請求項7】
第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される共通の周波数と互いに異なる位相を夫々持つ第1の発振信号及び第2の発振信号を生成するリング型発振器と、
基準信号と前記第1の発振信号との間の周波数差及び第1位相差を検出し、当該周波数差及び第1位相差に応じた第1の検出信号を生成するデジタル位相周波数検出器と、
前記第1の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って前記第1のフィルタ信号を生成するデジタルフィルタと、
前記第1のフィルタ信号をアナログ信号に変換して前記第1の制御信号を得るデジタル−アナログ変換器と、
前記基準信号と前記第2の発振信号との間の第2位相差を検出し、当該第2位相差に応じた第2の検出信号を生成するアナログ位相検出器と、
前記第2の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って、第2のフィルタ信号を出力するアナログフィルタと、
前記第2のフィルタ信号を増幅して前記第2の制御信号を生成する増幅器と、
前記アナログ位相検出器、前記アナログフィルタ及び前記増幅器を能動状態とするために、前記基準信号の周波数及び位相と前記第1の発振信号の周波数及び位相との同期を検出する同期検出部と
を具備することを特徴とする位相同期回路。
【請求項8】
第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される周波数を持つ第1の発振信号を生成する制御発振器と、
前記第1の発振信号を位相シフトさせて第2の発振信号を得る移相器と、
基準信号と前記第1の発振信号との間の周波数差及び第1位相差を検出し、当該周波数差及び第1位相差に応じた第1の検出信号を生成するデジタル位相周波数検出器と、
前記第1の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って前記第1の制御信号を生成するデジタルフィルタと、
前記基準信号と前記第2の発振信号との間の第2位相差を検出し、当該第2位相差に応じた第2の検出信号を生成するアナログ位相検出器と、
前記第2の検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って、フィルタ信号を出力するアナログフィルタと、
前記フィルタ信号を増幅して前記第2の制御信号を生成する増幅器と、
前記アナログ位相検出器、前記アナログフィルタ及び前記増幅器を能動状態とするために、前記基準信号の周波数及び位相と前記第1の発振信号の周波数及び位相との同期を検出する同期検出部と
を具備することを特徴とする位相同期回路。
【請求項9】
前記電圧制御発振器は、LC型発振器であることを特徴とする請求項8記載の位相同期回路。
【請求項10】
第1の制御信号及び第2の制御信号の組み合わせによって制御される共通の周波数及び互いに異なる位相を夫々持つ第1の発振信号及び第2の発振信号を生成する制御発振器と、
基準信号と前記第1の発振信号とが同期状態か非同期状態かを検出する同期検出部と、
前記非同期状態において前記第1の発振信号を分周し、分周信号を得る分周器と、
前記分周信号と前記基準信号との間の周波数差及び第1位相差を検出し、当該周波数差及び位相差に応じた第1の検出信号を得る位相周波数検出器と、
前記第2の発振信号と前記基準信号との間の第2位相差を検出し、当該第2位相差に応じた第2の検出信号を生成する位相検出器と、
前記非同期状態において前記第1の検出信号を選択し、前記同期状態において前記第2の検出信号を選択して選択検出信号を得る選択器と、
前記選択検出信号の高周波成分を除去するフィルタ処理を行って前記制御信号を生成するフィルタと
を具備することを特徴とする位相同期回路。
【請求項11】
前記位相検出器は、前記第2の発振信号と、前記基準信号との間の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのいずれか一方の時間差を検出し、当該時間差に応じた電圧パルスを前記第2の検出信号として生成することを特徴とする請求項1記載の位相同期回路。
【請求項12】
前記検出結果信号から、前記同期状態を示す第1の制御クロックと、前記非同期状態を示し、かつ、前記第1の制御クロックとオーバーラップしない第2の制御クロックとを生成し、前記選択器に渡す制御クロック生成回路を更に具備することを特徴とする請求項10記載の位相同期回路。
【請求項13】
前記制御クロック生成回路は、前記検出結果信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの少なくとも一方に対して遅延するように前記第1の制御クロック及び第2の制御クロックを生成することを特徴とする請求項10記載の位相同期回路。
【請求項14】
前記制御発振器は、リング型発振器であることを特徴とする請求項10記載の位相同期回路。
【請求項15】
前記制御発振器は、
前記制御信号に応じた周波数の第1の発振信号を出力するLC型発振器と、
前記第1の発振信号を位相シフトさせて前記第2の発振信号を得る移相器と
を含むことを特徴とする請求項10記載の位相同期回路。
【請求項16】
前記制御発振器は、前記第1の発振信号と、前記第1の発振信号と直交する前記第2の発振信号とを出力するLC型直交発振器であることを特徴とする請求項10記載の位相同期回路。
【請求項17】
請求項1記載の位相同期回路を含み、前記第1の発振信号によって制御されるクロック信号を生成するクロック生成部と、
前記クロック信号によって動作するアナログ−デジタル変換器とを具備することを特徴とする受信機。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−194611(P2009−194611A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32821(P2008−32821)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】