説明

位置調整装置

【課題】高精度な微位置調整が可能な位置調整装置を提供すること。
【解決手段】有底筒状容器14内に合金鋼の基板20を設け、この基板20上に順次鋼球23〜25、可動支持板27を設けてX−Y―θ調整部13を構成し、このX−Y―θ調整部13上にネジジャッキ部11および可動ホルダ30を設置し、ネジジャッキ部11の雄ネジ部32に螺合する上下動しない駆動雌ネジ36と一体に設けた調整用ナット37を回転させることにより雄ネジ部32を上下方向に移動させ、被位置調整体の荷重による重負荷を調整用ナット37と可動ホルダ30間にスラスト玉軸受け45を介在させることにより高精度な位置調整を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、位置調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、発電機の外側容器やステータなど数十トンもある大型構造物の機械加工や機械加工するためのケガキ作業などの前工程として芯出し作業が行われている。この芯出し作業は、平行度が出された機械テーブル又は定盤上に大型構造物を載せて行われている。
【0003】
曲面状に加工された大型構造物は、固定されてない自由な状態になるとねじれやうねりが生ずる場合が多い。大型構造物は、ねじれやうねりがある場合、機械テーブル又は定盤上に載置すると自重で平板状に変形する。機械加工の場合の芯出し作業は、大型構造物の芯をその機械の芯に合わせる作業である。ケガキ作業の場合の芯出し作業は、大型構造物の形状にねじれやうねりがある場合、このねじれやうねりのある加工するときの状態で大型構造物の芯を出す必要がある。
【0004】
発電機の外側容器やステータは、形状が平板状でなく、円弧状であり、このような形状の大型構造物の芯出し作業は、機械テーブル又は定盤上に載せた位置のばらつきにより芯の位置に誤差が発生するのを位置調整する作業である。この位置調整作業では、被位置調整体である大型構造物を上下方向、左右方向、前後方向、回転方向などあらゆる方向へ移動させて位置調整が行われるが、大型構造物自体の重量が数十トンもあるために大型構造物を油圧ジャッキにより支持して位置調整が行われている。
【0005】
油圧ジャッキを使用して重量物の設置位置合わせすることは、例えば特開平6−298494号公報に記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、油圧ジャッキによる位置合わせは、重量物の設置位置合わせより、さらに高精細な位置合わせが必要な機械加工やケガキ作業などのための芯出し作業に利用することは困難であった。即ち、油圧ジャッキによる位置合わせは、油供給量を例えば絞り弁により断続制御することにより行われるが、細かい圧力や油流量の設定が難しく、常に一定量の上下方向の移動調整量を安定して得ることができず、その都度異なる移動量となってしまう。このため大型構造物の機械加工やケガキ作業するための芯を出すような高精度な位置決めを油圧ジャッキを使用して行うことはできなかった。即ち、従来の油圧ジャッキによる芯出し作業方法では、位置決めのための微調整が困難であり、多くの作業時間を要していた。
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、高精度な微位置調整が可能な位置調整装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、高精度で微位置調整が可能な位置調整装置を提供するものである。
【0009】
請求項1記載の位置調整装置は、水平移動面を挟んで複数のボルト取付部を設けこれらのボルト取付部に前記水平移動面に向けてそれぞれ水平位置固定ボルトを取付けた固定ホルダと、前記固定ホルダの水平移動面に前記ボルト取付部との間に移動空間を残して水平配置された、対向する支持板間に複数の支持球体を配設してなる可動支持板と、前記可動支持板上に設置された垂直方向にネジジャッキ保持孔を設けた可動ホルダと、前記可動ホルダのネジジャッキ保持孔に保持部を嵌合させたネジジャッキと、前記ネジジャッキの雄ネジ部に螺合させた駆動雌ネジと、前記駆動雌ネジの下面部と前記可動ホルダの上面との間に介在させたスラスト軸受とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、高精度な微位置調整が可能である。さらに、ねじれやうねりがある大型構造物でも各位置に適合した位置調整を行うことができる。さらに、ネジジャッキ部は、ネジのピッチを変更することにより、1回転あたりの移動量を調節することができる。さらに、油圧ジャッキによる上下方向の位置調整は、油量の供給量の微調整が困難であり、繰り返し定量の供給を実施することができず、微細な位置調整に長時間かかるが、ネジジャッキ部によれば常に上下方向に定量移動させることができるので、微細な位置調整を手軽に行うことができる。
【0011】
本発明において、前記ネジジャッキ部の雄ネジ部上面には、突起状部品、平面状部品、突半球面状部品又は凹半球面状部品を交換可能に取り付けることができる。このように被位置調整体との接触部を被位置調整体の支持部の形状に適合した上記部品に交換して取着することにより被位置調整体を安定に支持することができる。即ち、大型構造物の受け部の面性状に合わせ、ネジジャッキ部先端は平面、球面、突起等の形状の受け具に交換可能であるので、どのような形状の被位置調整体でも安定に支持することができる。
【0012】
本発明において、前記ネジジャッキ部を支持する前記可動支持板は、一平面内において移動可能にしてあるので、ねじれやうねりのある被位置調整体でも、この被位置調整体の支持部の性状に合わせて水平面内の任意の位置に高精度に位置調整することができる。
【0013】
本発明において、前記雄ネジ部およびこの雄ネジ部に螺合する前記雌ネジは、要求される位置調整の精度に応じてネジピッチの異なる前記雄ネジおよび前記雌ネジに交換可能に設けられるので、雌ネジの回転あたりの移動量を所望する位置精度のネジピッチに交換することができる。さらに、微量の調節が必要な場合は、ネジジャッキの雄ネジ部および雌ネジのネジピッチを小さいものに交換することにより、回転角を大きくして上下移動量を小さく微細に制御することができる。
【0014】
本発明の位置調整装置は、前記雌ネジを回動させるサーボモータを具備するので、前記雄ネジ部の高さ位置を設定値に微細に調整することができる。さらに、前記雄ネジ部の高さ位置を自動的設定することができる。
【0015】
本発明の位置調整装置において、前記スラスト軸受は、スラスト玉軸受け、コロ軸受け、ニードルベアリングの少なくとも一つからなるので、重量物の位置調整でも軸受けやベアリングにより支持するのでポイント支持となり接触面積が小さくなるため滑らかに移動させることができ、滑らかに位置調整することができ、高精度な位置決めのための微調整が可能である。小エネルギで移動できることは、サーボモータにより重量物でも、さらに高精度な位置調整を可能にする。さらに、被位置調整体が大型構造物であっても、表面形状が平面でなくても、重量に合わせ、スラスト軸受けを高さの異なるスラスト玉軸受け、コロ軸受け、ニードルベアリング等に変えることにより、許容荷重や治具高さ等を自由に変更することができる。
【0016】
本発明の位置調整装置において、前記可動支持板は、熱処理された合金鋼からなるので、重量物の位置調整をするときには、支持球体により支持するため可動支持板が支持球体とポイント接触し、接触面積が小さくなり可動支持板との接触部に過大な圧力が作用するが、可動支持板が熱処理された合金鋼であるため重量物でも支持することができる。さらに、合金鋼を使用し熱処理で硬度を高めた可動支持板で荷重を受けることで、耐久性が増大するので、鋼球で受ける荷重による塑性変形を防止することができる。これにより位置調整装置外側容器の材質はアルミ等の軽合金で構成することができるため位置調整装置を軽量化することができる。さらに、硬度を高めた支持板で支持球体を挟むことにより、この支持板で荷重を受けることができるので集中荷重を防ぐことができる。
【0017】
本発明の位置調整装置において、前記支持球体およびスラスト軸受は、鋼球からなるので、重量物の位置調整でも鋼球により支持するので、硬度があり、しかもポイント支持となるので接触面積が小さくなるため滑らかに移動させることができ、位置調整が可能となり、高精度な位置決めのための微調整が可能である。小エネルギで移動できることは、サーボモータにより重量物でも、高精度な位置調整を行うことができる。
【0018】
本発明の位置調整装置は、前記雄ネジの高さ位置は、ディジタル表示又はアナログ表示する手段を備えているので、位置調整された高さ寸法をリアルタイムで読むことができる。さらに、数十m程度の大きな面積の重量物を、複数の位置調整装置により位置合わせして支持する場合でも、各位置調整装置の調整された高さが表示されるので、重量物を支持するバランスをくずして重量物を変形させてしまったり、破壊してしまう事故が大幅に減少し、信頼性の高い位置調整を可能にすることができる。特に、大型構造物の芯出し調整を容易且つ迅速に行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る位置調整装置の実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。図1は芯出し作業する状況を説明するための図であり、図2は位置調整装置の実施形態を説明するための一部切り欠き断面図であり、図3は図1のネジジャッキ部を拡大して示す断面図であり、図4は調整用ナットの上下動制止機構を拡大して示す断面図である。
【0020】
この実施形態は、発電機の外側容器やステータなど数十トンもある大型構造物の芯出し作業用位置調整装置に適用したものである。先ず、芯出し作業を、図1を参照して説明する。この実施形態では、大型構造物として例えば発電機の円弧状外側容器1は、大きさ例えば7m、厚さ10cmの鉄板を円弧状に加工した重量物の被位置調整体である。この外側容器1は、平行度が出された大きさ例えば10m、厚さ15cmの鉄板からなる定盤2上に載置される。外側容器1を定盤2上に載置する前に、定盤2上の予め定められた例えば2等辺三角形の各頂点位置には、3個の位置調整装置3,4,5を載置する。
【0021】
この3個の位置調整装置3〜5上には、クレーンにより外側容器1が搬送され、粗位置合わせされて載置される。このとき、外側容器1は、3個の位置調整装置3〜5で支持されて上記定盤2上に載置される。この状態で先ず外側容器1を安定に支持するように各位置調整装置3〜5について平面内の位置合わせが行われる。平面内の位置合わせが終了した状態で、各位置調整装置3〜5は外側容器1の芯を出すための高さ調整が行われて、外側容器1の芯出し作業が終了する。次に、このような芯出し作業を行うための各機構について具体的に説明する。
【0022】
3個の位置調整装置3〜5による支持は、大型構造物の外側容器1にうねりやよじれなど変形している場合、この状態を維持した外側容器1の支持を可能にする。このうねりやよじれなどの変形状態を維持した外側容器1へのケガキは、次の加工工程がうねりやよじれなどの変形状態で行われるため、高精度な加工を可能にする。
【0023】
大型構造物である外側容器1の芯出し作業は、外側容器1を上記各位置調整装置3〜5により支持した状態で、各位置調整装置3〜5において上下方向、左右方向、回転方向に移動させて位置調整し上記円弧状外側容器1の芯出しが行われる。
【0024】
大型構造物である外側容器1の芯出し作業は、外側容器1を上記各位置調整装置3〜5により支持した状態で、各位置調整装置3〜5において上下方向、左右方向、回転方向に移動させて位置調整し上記円弧状外側容器1の芯出しが行われる。
【0025】
このようにして位置調整された外側容器1は、手動又は定盤2の表面に予め設けられている案内溝6に沿ってケガキ装置7を移動させることにより、ケガキ装置7によるケガキ作業が実施される。機械加工例えば切削作業の場合は、ケガキ作業所から切削作業所に移動させて行われる。切削作業は、外側容器1にうねりやよじれなどの変形状態を維持した状態で行われる。
【0026】
このような芯出し作業に使用される位置調整装置3〜5の構成を、図2乃至図4を参照して説明する。図2は、1個の位置調整装置の一部切り欠き断面図を示している。この位置調整装置3(4,5)は、ネジジャッキ部11と、高さ調整部12と、X−Y−θ調整部13などの部品とが、有底筒状容器14内に組込まれて構成されている。ネジジャッキ部11は、上下方向に移動する装置であり、高さ調整部12は、上下方向に位置調整する装置であり、X−Y−θ調整部13は、一平面内において横(X)方向、縦(Y)方向、回転(θ)方向、任意の方向に自由に移動調整する装置である。
【0027】
有底筒状容器14は、位置調整装置3(4,5)の外側容器であり、固定ホルダとしても利用される厚さ例えば15mmの鋼鉄製有底円筒状容器である。位置調整装置3(4,5)は、ネジジャッキ部11と、主として駆動雌ネジからなる高さ調整部12と、主として可動支持板からなるX−Y−θ調整部13とを夫々組み立てた状態で有底円筒状容器内に組込むことができる。この場合、先ず、有底筒状容器14内にX−Y−θ調整部13が組込まれ、次に、X−Y−θ調整部13上にネジジャッキ部11および高さ調整部12が組込まれて、位置調整装置3(4,5)が組立てられる。
【0028】
次に、X−Y−θ調整部13の具体的構成について説明する。有底筒状容器14内に、最初に収納される部品は、X−Y−θ調整部13である。有底筒状容器14内には、基板例えば硬度が高く、耐久性がある合金鋼製基板20が搬入される。この基板20の底面には、円形又は方形状の突起21が一体に設けられ、この突起21は有底筒状容器14内底面の予め定められた位置に形成されている円形又は方形状の凹部と嵌合するように設けられている。このように突起21と凹部の嵌合は、ネジジャッキ部11をX−Y−θ方向に位置調整したとき基板20が移動しないように固定され、基板20が位置決めされて着脱自在な組込みを可能にする。
【0029】
この基板20上には、大型構造物の荷重を支持する球体少なくとも3個の鋼球を回動自在に収納するための鋼球収納孔を有するリテーナ22が設けられている。鋼球を3個配置する場合は、3個の鋼球が正三角形又は二等辺三角形の頂点の位置に配置されることが望ましい。3個の配置は、4個の配置より安定した平面を形成する。
【0030】
このリテーナ22の各鋼球収納孔には、支持球体例えば鋼球23〜25が中央部に1個、周辺部に同心状に45度間隔で8個回動自在に配列して設けられる。図2には、鋼球3個が図示されている。この鋼球23〜25は、安定な平面を形成するために少なくとも3個必要であるが、大型構造物を支持するためには、個数が多数の方がよい。鋼球23〜25の数は、被位置調整体の荷重によって選択される。鋼球23〜25は、大型構造物を支持する場合、鋼球が最適で、直径例えば20mmの球である。これら鋼球23〜25の配列上には、可動支持板27例えば円板状合金鋼板が設けられている。
【0031】
X−Y−θ方向の位置が所望する位置に調整された水平位置状態で固定するための固定具例えば水平位置固定用ボルト28a,28bが4個設けられて、X−Y−θ調整部13が構成されている。図2には、2つのボルト28a,28bが図示されている。これらボルト取付部は、例えば各ボルト28a,28bと螺合する雌ネジが有底筒状容器14の側壁に設けられ、ボルト28a,28bの先端は、位置決めされた位置で、可動ホルダ30の側壁面に90度間隔で4方向に形成されている各凹部29に当接して固定される。即ち、各凹部29に対応してボルト28a,28b、図示されていないボルト28c,28dが共に90度間隔で4方向に設けられている。即ち、ボルト28a,28b,28c,28dは水平移動面を挟んで配置されている。また、有底筒状容器14は、水平方向の位置を固定するための固定ホルダとして利用されている。
【0032】
このX−Y−θ調整部13は、大型構造物の支持であっても一平面内で横方向(X)、縦方向(Y)、回転方向(θ)の比較的滑らかな移動を可能にする。滑らかな移動は、高精度な位置調整を可能にする。このX−Y−θ調整部13は、基板20と、リテーナ22と、鋼球23〜25と、可動支持板27と、ボルト28a〜28dとからなる。
【0033】
次に、ネジジャッキ部11の構成について説明する。X−Y−θ調整部13上には、ネジジャッキ部11と、このネジジャッキ部11を囲繞するようにネジジャッキ保持孔を有するホルダ例えば円筒状可動ホルダ30が設けられ、可動ホルダ30とネジジャッキ部11とは互いに接する側壁面においてスライドするように構成されている。可動ホルダ30は、厚さ25mmの鋼鉄製の筒管である。可動ホルダ30の上端側の内周面は、肉薄に切削加工されて棚板が形成され、スラスト玉軸受け45を収納するためのスラスト玉軸受け45の収納部30aが形成されている。
【0034】
ネジジャッキ部11は、図3に一部拡大して示すように構成されている。保持部例えば円柱状基台31の上面には、下端で一体となった雄ネジ部32が同軸的に設けられている。この雄ネジ部32の上端には、図1に示す被位置調整体である上記外側容器1の側壁面に接触する受け具33が設けられている。
【0035】
この受け具33が当接する上記外側容器1の側壁面の面性状は、上記外側容器1の形状により表面が黒皮面や機械加工面等になっており、常に一定の性状ではない。このため雄ネジ部32の先端部は、被位置調整体の受け位置の面性状に適合した受け具33に交換して使用できるように構成されている。この受け具33は、雄ネジ部32の上端に交換可能なように螺着され、被位置調整体である外側容器1との接触部が球面34に加工された構成になっている。円柱状基台31の側壁面は、可動ホルダ30の内側壁面と対接してスライドする基台のスライド部31aである。
【0036】
雄ネジ部32は、大型構造物を支持するものであり、大きさ例えば直径30mm、長さ25mm、ネジピッチ5mmの鋼鉄製の雄ネジである。受け具33および球面34は、鋼鉄製の部材である。
【0037】
雄ネジ部32先端の高さ位置の調整は、図2に示すように上下動しない駆動雌ネジ36が、回転しない雄ネジ部32に螺合され、この駆動雌ネジ36を回転操作することにより行われる。雄ネジ部32の先端の高さ位置は、例えば駆動雌ネジ36を右回転させることにより高位置方向に調整され、左回転させることにより低位置方向に調整される。即ち、上記駆動雌ネジ36を回転させることにより雄ネジ部32を上下動させることができる。
【0038】
このとき、駆動雌ネジ36は回転するが、上下動しないように固定され、雄ネジ部32は上下動するが、回転しないように構成されている。駆動雌ネジ36の上下動は、可動ホルダ30に阻止され、雄ネジ部32の回転動は、廻り止め用キー38によって阻止されるように構成されている。
【0039】
X−Y−θ調整部13上に設けられたネジジャッキ部11および可動ホルダ30は、X−Y−θ調整部13の機能によりX−Y−θ方向の位置調整も行われるものである。ネジジャッキ部11および可動ホルダ30は、X−Y−θ方向の位置調整が行われた状態で有底筒状容器14に90度間隔で4方向に設けられた上記ボルト28a〜28dを締めることにより固定される。
【0040】
また、ネジジャッキ部11および可動ホルダ30についてX−Y−θ方向の位置調整が必要なとき、この4方向のボルト28a〜28dを緩めることでネジジャッキ部11および可動ホルダ30は、有底筒状容器14内で、任意の位置に動くことが可能である。この任意の位置は、上下方向の移動を除く、一平面内のX−Y−θ方向の移動で、X−Y−θ調整部13によるものである。このように可動ホルダ30内に組込まれたネジジャッキ部11は、可動ホルダ30と一体化となって動くことができる。
【0041】
ネジジャッキ部11は、基台31と、雄ネジ部32と、受け具33と、駆動雌ネジ36と、廻り止め用キー38とからなる。ネジジャッキ部11は、被位置調整体を上下方向に位置調整するものである。
【0042】
次に、高さ調整部12の構成を説明する。高さ調整部12は、数十トンもある大型構造物を上下方向に位置調整するために比較的小さな回転力で制御させることを目的とした構成である。上記駆動雌ネジ36の回転は、直接上記駆動雌ネジ36を回転させてもよいが、大型構造物の高さ位置を微調整すること、回転に伴って上下動しない機構にすることなどの目的から次のように構成されている。
【0043】
駆動雌ネジ36の下面側に駆動雌ネジ36より長大なる径を有する円環状調整用ナット37が一体に固定され、この上下動しない調整用ナット37を回転させることにより駆動雌ネジ36に螺合されている雄ネジ部32は、ネジ送りされて上下方向に移動する。調整用ナット37は、鍔部37aを有する円環状で中心部の穴部に同軸的に駆動雌ネジ36が一体に設けられた構造である。
【0044】
駆動雌ネジ36は、雄ネジ部32と螺合し、調整用ナット37は、調整用ナット37を回転させたとき駆動雌ネジ36が上下動しないように可動ホルダ30の上端側壁面に係合されている。さらに、雄ネジ部32は、廻り止め用キー38により回転しないように構成されている。このような構成により上下動しない駆動雌ネジ36の回転は、螺合されている回転しない雄ネジ部32を上下方向に移動させる。
【0045】
大型構造物に接触して支持する雄ネジ部32が受ける荷重は、雄ネジ部32の下端である基台31の底部が空隙31bとなるため駆動雌ネジ36と一体の調整用ナット37に掛かる。この結果、調整用ナット37を回転するための負荷が大きくなる。調整用ナット37を回転させるための負荷を軽くするために、調整用ナット37と可動ホルダ30の間には、スラスト玉軸受け45が設けられている。即ち、調整用ナット37と可動ホルダ30間に介在させたスラスト玉軸受け45は、大型構造物でも上下方向の微細な位置調整を可能にする。即ち、スラスト玉軸受け45は、被位置調整体が重量物の位置調整であっても調整用ナット37の回転操作を軽くできるようにしている。
【0046】
回転操作の軽減化は、手動やサーボモータによる微細な位置調整を可能にし、位置調整の自動化を可能にする。サーボモータによる駆動機構は、サーボモータの回転軸と調整用ナット37とを歯車結合させて回転駆動する構成である。調整用ナット37は、回転操作手段により構造、大きさ、形状などを適宜選択することができる。サーボモータを介して調整用ナット37の回転角を制御することにより、機械的に被位置調整体の上下方向の微調整が可能である。このようにして、大型構造物の高さ位置の微調整は、例えばμmオーダの精度まで調整できる。
【0047】
調整用ナット37の上下動防止機構は、例えば回転のみにするように調整用ナット37と可動ホルダ30の対向する側面に図4に示すように凹部30cと凸部37bとの凹凸の結合構造にすることより構成することができる。即ち、調整用ナット37の鍔部37aの内側壁面には、凸部37bが設けられ、可動ホルダ30の上記凸部37bと対向する外側壁面には凹部30cが設けられている。
【0048】
次に、スラスト玉軸受け45の構成を具体的に説明する。被位置調整体である大型構造物の負荷荷重は、雄ネジ部32の軸方向に掛かるため駆動雌ネジ36の回転操作を困難にする。この回転操作を容易にするために、大型構造物の負荷荷重は、スラスト軸受例えば少なくとも3個の鋼球41,42によって支持する構成になっている。この実施例での鋼球数は、直径20mmの鋼球41,42が、例えば同一円周状に45度間隔で8個配列されている。
【0049】
この実施例では、スラスト軸受が調整用ナット37下面と可動ホルダ30上面間に設けられている。即ち、調整用ナット37の内側の下面と対向する可動ホルダ30上面には、合金鋼からなる環状板43,44が設けられ、これら環状板43,44間には45度間隔で8個の鋼球41,42が回動自在に設けられている。この鋼球41,42と、環状板43,44によりスラスト玉軸受け45が構成されている。環状板43,44は、鋼球41,42と点接触子し、被位置調整体の荷重がかかり、スポット圧力を受けるため耐え得る材質として例えば合金鋼が用いられている。
【0050】
このスラスト玉軸受け45は、大型構造物を位置調整するための調整用ナット37の回転操作を容易にする。回転操作が容易とは、小さな回転操作力で微細に位置調整できることであり、より高精度な位置調整を可能にする。発電機の外側容器1やステータなど数十トンもある大型構造物の機械加工や機械加工するためのケガキ作業の精度は、例えば10μm程度の精度が要求される。スラスト玉軸受け45は、このような調整精度を可能にする。
【0051】
高さ調整部12の位置調整精度は、矢印46で示す上下方向の調整精度である。高さ調整部12は、調整用ナット37と、スラスト玉軸受け45と、可動ホルダ30とからなる構成される。このようにして位置調整装置3(4,5)が構成されている。
【0052】
次に、X−Y−θ調整部13による位置調整を説明する。ネジジャッキ部11のX−Y−θ方向の位置は、X−Y−θ調整部13により行う。即ち、ネジジャッキ部11のX―Y―θ方向の位置調整は、外側容器1の芯を出すための位置調整で、ネジジャッキ部11に作用させて所望するX―Y―θ方向に移動させることにより、鋼球23〜25の回転作用により比較的軽く前後方向、左右方向、回転方向など一平面内において任意の位置に操作することができる。
【0053】
上記基板20、可動支持板27、環状板43,44の材料である合金鋼の実施例は、プレート材でSKD11(JIS)、焼入硬度HRC64〜66、板厚10mmのものである。
【0054】
上記位置調整装置3(4,5)は、組立て構造にすることができ、次のようにして組立てる。有底筒状容器14の内部に基板20を敷き、この基板20上にリテーナ22を設置する。このリテーナ22の各鋼球収納孔に9個の鋼球23〜25嵌めこみ、各鋼球23〜25上に可動支持板27を設置する。9個の鋼球23〜25の配列は、例えば中心部に1個、環状に45度間隔で8個設けたものである。これでX−Y−θ調整部13の組立てが完了する。
【0055】
X−Y−θ調整部13上に円筒状可動ホルダ30を組込む。この可動ホルダ30内のスラスト玉軸受け45の収納部30aにスラスト玉軸受け45を組込む。しかるのち、この可動ホルダ30に位置合わせしてX−Y−θ調整部13上にネジジャッキ部11を組込む。このとき、ネジジャッキ部11の雄ネジ部32に調整用ナット37が螺合された状態でネジジャッキ部11を組込む。この組込みは、ネジジャッキ部11で図3に示す基台31のスライド部31aを可動ホルダ30の内周縁のスライド部30bを嵌め合わせて組込む。この嵌め合いにより上下方向のスライドを可能にしている。このような組込み工程を経て位置調整装置3(4,5)を組立てる。
【0056】
このように組立て分解が可能な構成は、各部品のメンテナンスを定期的に行うことができ、信頼性の高い位置調整を行うことができる。メンテナンスとしては、例えば定期的に分解して各部品の磨耗状況を確認し、適宜部品単位で交換することができる。
【0057】
このように大型構造物を支持する位置調整装置3(4,5)は、ネジジャッキ部11により構成し、このネジジャッキ部11のX−Y−θ方向の位置調整用機構と、上下方向の位置調整用機構とを夫々球体により支持して、微細な位置調整と、迅速な芯出し作業を実現する。
【0058】
即ち、3個の位置調整装置3(4,5)は、図1に示した平行度が出された大きさ例えば10m、厚さ15cmの鉄板からなる定盤2上で、大型構造物として例えば発電機の円弧状外側容器1を支持する。各位置調整装置3(4,5)は、外側容器1の芯と定盤2との平行度、直線性などを位置合わせするためにX−Y−θ方向と上下方向の位置調整が行われ、上記外側容器1は高精度に芯出しが行われる。上記外側容器1の芯を出したのち、ケガキ作業は、作業者が手作業で行うか、ケガキ装置を上記定盤2の所定の位置にセットして実施する。
【0059】
次に、上記実施形態において、位置調整装置3(4,5)の上下方向の位置調整をサーボモータ71により調整用ナット37を回転制御して行う実施例を、図1〜図6を参照して説明する。図1〜図4と同一部品には図5および図6に同一符号を付与し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
定盤2上には、位置調整装置3(4,5)が設置され、この位置調整装置3(4,5)の近隣には調整用ナット37を回転させるための位置調整系70が設置されている。位置調整系70は、調整用ナット37の回転を高精度に制御することができるサーボモータ71を駆動源とし、回転方向変換機72と、変速器73と、制御装置75とから構成されている。
【0061】
回転方向変換機72は、サーボモータ71の回転を調整用ナット37の回転方向に変換するための装置で、サーボモータ71の回転軸に結合される。回転方向変換機72は、例えばサーボモータ71の回転軸に一体にウォームギアを設け、このウォームギアにホイールギヤを螺合させることにより構成することができる。回転方向変換機72には、調整用ナット37の回転を高精度に制御するための回転速度に変速する変速器73が接続される。この変速器73は、調整用ナット37を変速された速度で回転させるために調整用ナット37の鍔部37aに接続される。変速器73は、例えばギア比の異なるギア結合により構成することができる。
【0062】
上記サーボモータ71を回転駆動、停止制御するための制御装置75が、サーボモータ71に接続されている。このようにして位置調整装置3(4,5)の上下方向の位置調整系70が構成されている。制御装置75は、サーボモータ71の回転数を制御して調整用ナット37の回転角を制御することにより、機械的に上下方向の微位置調整を行うことができる。
【0063】
調整用ナット37の回転力は、サーボモータ71のほか、他の機械動力で与えることも可能である。X−Y−θ方向に位置調整されたネジジャッキ部11の位置を固定するためのネジは、90度間隔で4個配置され、図5には3個のボルト28a,28b,28cが図示されている。(図2には、2個のボルト28a,28bが図示されている。)
【0064】
次に、図6を参照して発電機の円弧状外側容器1の芯出しの実施例を説明する。上記位置調整装置3(4,5)は、以下第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5と記述して説明する。第1のサーボモータ71a〜第3のサーボモータ71cによる各調整用ナット37の回転制御は、第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5について整合させた高さ制御を可能にする。即ち、第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5の球面34の高さを測定して第1の高さデータ81a〜第3の高さデータ81cを出力し、比較装置83は、発電機の円弧状外側容器1の芯の位置データ82と比較する。比較装置83は、第1の高さデータ81a〜第3の高さデータ81cと円弧状外側容器1の芯の位置データ82と比較し、差値を制御装置84に出力する。制御装置84は、第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5の高さ位置を制御する第1のサーボモータ71a〜第3のサーボモータ71cの回転を制御することにより、自動的に上記外側容器1の芯の位置データ82と一致させるように制御する。
【0065】
次に、上記実施形態において、第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5の上下方向の位置を表示する実施例を、図1〜図7を参照して説明する。図1〜図6と同一部品には図7に同一符号を付与し、その詳細な説明を省略する。この実施例は、ネジジャッキ部11の上下方向の移動量を作業者がリアルタイムで目視しながら位置調整できるようにした移動量表示部付き第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5である。ネジジャッキ部11の上下方向の移動量は、アナログ表示および/又はデジタル表示することができる。
【0066】
ネジジャッキ部11を構成する雄ネジ部32の先端部には、平板状測定子86の上端が固定して設けられ、この平板状測定子86の下端は現在の雄ネジ部32の先端部の高さを示すように三角形状に加工された指し部87が一体に設けられている。この指し部87の先端を実測値で読めるように有底筒状容器14側壁面には、目盛り88が設けられている。この目盛り88に表示される実測値を示す数値は、平板状測定子86の長さ分補償した寸法の数値である。
【0067】
第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5の移動量表示部89は、平板状測定子86と、指し部87と、目盛り88とからなる。測定子86の雄ネジ部32の上端への固定は、例えば平板をL字状に加工して測定子86を作成し、このL字状平板の上端側を受け具33のネジ止めにより測定子86を固定することができる。この場合、第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5の高さ表示値は、指し部87の指示値に受け具33の頭部高さと球面34の高さを加算した高さである。
【0068】
このようにして移動量表示部付き第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5が構成されている。移動量表示部付き第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5は、ジャッキアップした高さ寸法を芯出し作業しながら読むことができる。
【0069】
この移動量表示部付き第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5を図1に示されているように設置して、発電機の外側容器1の芯出し作業をする際、先ず、作業者は各移動量表示部付き第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5の現在の高さを確認する。次に、作業者は発電機の外側容器1の芯と比較して、芯出しできるように各移動量表示部付き第1の位置調整装置3〜第3の位置調整装置5の高さを、目盛り88を見ながら調整することにより、芯出し作業を迅速に行うことができる。
【0070】
上記実施形態では、被位置調整体である外側容器1との接触部が球面34に加工された球面型受け具について説明したが、受け具33は外側容器1の受け位置の面性状に適合したものに交換して使用することにより高精度な芯出しを行うことができる。
【0071】
受け具33としては、球面型受け具の他に図8に示すように被位置調整体である外側容器1との接触部が平坦面90となっている平坦型受け具91に交換して使用することができる。平坦型受け具91は、雄ネジ状になっており、一端側がネジの頭で平坦面90に加工され、他端側はネジ山92が形成された構成になっている。受け具33は、交換可能な構造とするためにネジ構造になっている。
【0072】
さらに、受け具33としては、図9に示すように被位置調整体である外側容器1との接触部が突起面94となっている突起型受け具95に交換して使用することができる。突起型受け具95は、雄ネジ状になっており、一端側がネジの頭で突起面94に加工され、他端側はネジ山92が形成された構成になっている。その他、被位置調整体との接触面が、平面状部品、突半球面状部品、凹半球面状部品などの受け具33が交換可能に取り付けられる。このように位置調整装置3(4,5)の状態、形状、大きさなどの表面の性状と材料の種類によって適宜選択することができる。
【0073】
さらに、このように被位置調整体との接触面の形状に合わせた受け具の使用は、安定した固定ばかりでなく高精度な位置決めのための微調整を可能にする。さらに、大型構造物の機械加工およびケガキの芯出し作業で、大型構造物の芯出し位置を調整する位置調整装置3(4,5)においては、大型構造物の受け面がいかなる面性状、形状であっても、ネジジャッキ部11で受けることが可能である。
【0074】
上記実施形態において被位置調整体がさらに大きくなり、ネジジャッキ部11が受ける許容荷重を大きくしたい場合は、スラスト玉軸受け45の呼びを大きくする必要がある。この場合、スラスト玉軸受け45の呼びを大きくすることは、可動ホルダ30のスライド部31aの高さを高くし、収納部30aを広くして鋼球23〜25の大きいものを設置できるように、スラスト玉軸受け45の載置面を広くすることである。また、スラスト玉軸受け45は、コロ軸受け、ニードルベアリングに変えることができる。コロ軸受け、ニードルベアリングへの交換は、同じ許容荷重でもネジジャッキ部11や可動ホルダ30の高さを低くすることが可能であり、許容荷重を減らすことなく位置調整装置3(4,5)の高さを低くすることになる。
【0075】
さらに、大型構造物を受けるネジジャッキ部11は、調整用ナット37の回転により上下方向に移動されるが、さらに微量の調節が必要な場合は、ネジジャッキ部11の雄ネジ部32および駆動雌ネジ36をネジピッチの小さいものに交換することにより可能である。ネジピッチの小さい雄ネジ部32および駆動雌ネジ36の使用は、回転角を大きくして上下方向の移動量を小さく微細に制御することが可能である。ネジピッチの異なる雄ネジ部32および駆動雌ネジ36の交換は、調整用ナット37の回転あたりの移動量を調節することが可能となる。
【0076】
さらに、大型構造物の荷重は、X−Y−θ調整部13に掛かる。X−Y−θ調整部13に掛かった大型構造物の荷重は、各鋼球23〜25に分散して掛かる。各鋼球23〜25と基板20および可動支持板27とは、ほぼ点接触となりこの接触部に集中して荷重が掛かる。従って、各鋼球23〜25と接触する基板20および可動支持板27には、上記集中荷重に耐え得る硬度があり、耐久性のある材料が使用される。
【0077】
例えば、基板20および可動支持板27は、熱処理で硬度を高めた合金鋼を使用することにより耐久性が増大するので、鋼球23〜25が受ける荷重により塑性変形するのを防止することができる。これにより基板20と接触する有底筒状容器14の内底面は、平面同士であるため、硬度や耐久性が比較的軽減される。
【0078】
このような作用は、鋼球41,42と環状板43,44との関係と同様である。従って、有底筒状容器14および可動ホルダ30の材質は、アルミ材等の軽合金を用いることができ、位置調整装置3(4,5)の軽量化をはかることができる。
【0079】
本実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。高精度な位置決めのための微調整が可能である。さらに、ネジジャッキ部11の雄ネジ部32は、ネジのピッチを変更することにより、調整用ナット37の1回転あたりの移動量を調節することができる。さらに、駆動雌ネジ36の回転角は、サーボモータ71により調整用ナット37を回転制御することにより、機械的に上下方向の移動距離を微位置調整することができる。
【0080】
さらに、大型構造物の機械加工およびケガキの芯出し作業でも、高精度に行うことができる。さらに、ネジジャッキ部11は、駆動雌ネジ36、調整用ナット37で上下方向の位置を調整するが、駆動雌ネジ36で被位置調整体の荷重を受けるためスラスト軸受を設置することにより、回転トルクを軽減することができる。
【0081】
さらに、ネジジャッキ部11の先端の受け具は、大型構造物の受け部の面性状に合わせて、平面、球面、突起等の形状のものに交換して位置調整することができる。さらに、被位置調整体の支持部の形状に合わせた受け具33に交換して使用することにより位置調整装置3(4,5)は、被位置調整体を安定且つ確実に支持する。
【0082】
さらに、位置調整装置3(4,5)は、重量物の位置調整でも球体として鋼球や軸受けやベアリングにより支持するのでポイント支持となり接触面積が小さくなるため滑らかに移動させることができ、位置調整が可能となり、高精度な位置決め微調整が可能である。さらに、小エネルギで移動できることは、重量物でもサーボモータによる回転制御により、さらに高精度な位置調整を可能にする。さらに、位置調整装置3(4,5)は、被位置調整体が大型構造物であっても、重量に合わせ、スラスト軸受をスラスト玉軸受け、コロ軸受け、ニードルベアリング等に変えることにより、許容荷重においてネジジャッキ部11の高さ等を自由に変更することができる。
【0083】
さらに、重量物の位置調整をするときには、支持球体により支持するため可動支持板27が支持球体とポイント接触し、接触面積が小さくなり可動支持板27の接触部に過大な圧力が作用するが、可動支持板27が熱処理された合金鋼であるため重量物でも支持することができる。さらに、可動支持板27は、熱処理で硬度を高め、耐久性を増大させた合金鋼を使用するので、重量物でもその荷重を受けることができ、この荷重で鋼球による塑性変形を防止することができる。高硬度合金鋼製の基板、可動支持板27、環状板は、位置調整装置本体の材質をアルミ等の軽合金を使用することができるため位置調整装置を軽量化することができる。さらに、高硬度合金鋼製の基板、可動支持板27、環状板は、少なくとも3個の鋼球を挟む構造であるが、荷重を受けることができるので各鋼球による集中荷重を防ぐことができる。
【0084】
さらに、移動量表示部付き位置調整装置は、位置調整された高さ寸法を直接読むことができる。さらに、移動量表示部付き位置調整装置は、数十m程度の大きな面積を有する重量物を複数の位置調整装置により支持する場合でも、各位置調整装置の調整された高さが表示されるので、支持する重量物のバランスをくずして重量物を変形させてしまったり、破壊してしまう事故が大幅に減少し、信頼性の高い位置調整を可能にすることができる。特に、移動量表示部付き位置調整装置は、大型構造物の芯出し調整を容易に行うことができる。さらに、移動量表示部付き位置調整装置は、大型構造物の機械加工およびケガキ作業において、大型構造物の芯出しのための位置決め時に、任意の位置への微位置調整を容易に行うことができる。
【0085】
上記実施形態では、位置決めのための、任意の位置への微位置調整について説明したが、雄ネジ部32およびこれに螺合する駆動雌ネジ36のネジピッチや雄ネジ部32の長さ、空隙31bの間隔を選択すれば長い距離の位置決めのための調整にも使用することができる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高精度な位置決めのための微位置調整が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る位置調整装置を使用して発電機の円弧状外側容器の芯出し工程の実施形態を説明するための斜視図。
【図2】図1の位置調整装置の実施形態を説明するための断面図。
【図3】図2のネジジャッキ部の基台、雄ネジ、受け具の関係を説明するための一部切欠断面図。
【図4】図2の高さ調整部の調整用ナット部と可動ホルダとの係合関係を説明するための断面図。
【図5】図2の調整用ナット部の回転制御するための他の実施例を説明するための構成図。
【図6】図5の位置調整装置により図1の発電機の円弧状外側容器の芯出し方法を説明するための断面図。
【図7】図2の位置調整装置の高さ表示の実施例を説明するための断面図。
【図8】図2の受け具の他の実施例を説明するための断面図。
【図9】図2の受け具の他の実施例を説明するための断面図。
【符号の説明】
1…外側容器、2…定盤、3,4,5…位置調整装置、6…案内溝、7…ケガキ装置、11…ネジジャッキ部、12…高さ調整部、13…X−Y−θ調整部、14…有底筒状容器、20…基板、21…突起、22…リテーナ、23,24,25,41,42…鋼球、27…可動支持板、28a,28b,28c,28d,…ボルト、29,30c…凹部、30…可動ホルダ、30a…スラスト玉軸受けの収納部、30b…スライド部,31…基台、31a…基台のスライド部、31b…空隙、32…雄ネジ部、33…受け具、34…球面、36…駆動雌ネジ、37…調整用ナット、37a…鍔部、37b…凸部、38…キー、43,44…環状板、45…スラスト玉軸受け、46…矢印、70…位置調整系、71…サーボモータ、71a,71b,71c…第1,第2,第3のサーボモータ、72…回転方向変換機、73…変速器、75,84…制御装置、81a,81b,81c…第1,第2,第3の高さデータ、82…芯の位置データ、83…比較装置、86…測定子、87…指し部、88…目盛り、89…移動量表示部、90…平坦面、91…平坦型受け具、92…ネジ山、94…突起面、95…突起型受け具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平移動面を挟んで複数のボルト取付部を設けこれらのボルト取付部に前記水平移動面に向けてそれぞれ水平位置固定ボルトを取付けた固定ホルダと、
前記固定ホルダの水平移動面に前記ボルト取付部との間に移動空間を残して水平配置された、対向する支持板間に複数の支持球体を配設してなる可動支持板と、
前記可動支持板上に設置された垂直方向にネジジャッキ保持孔を設けた可動ホルダと、
前記可動ホルダのネジジャッキ保持孔に保持部を嵌合させたネジジャッキと、
前記ネジジャッキの雄ネジ部に螺合させた駆動雌ネジと、
前記駆動雌ネジの下面部と前記可動ホルダの上面との間に介在させたスラスト軸受と
を有することを特徴とする位置調整装置。
【請求項2】
前記ネジジャッキの雄ネジ部上面には、突起状部品、平面状部品、突半球面状部品又は凹半球面状部品が交換可能に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の位置調整装置。
【請求項3】
前記ネジジャッキを支持する前記可動支持板は、一平面内において移動可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の位置調整装置。
【請求項4】
前記雄ネジ部およびこの雄ネジ部に螺合する前記雌ネジは、要求される位置調整の精度に応じてネジピッチの異なる前記雄ネジ部および前記雌ネジに交換可能に設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の位置調整装置。
【請求項5】
前記雌ネジを回転させるサーボモータを具備することを特徴とする請求項1記載の位置調整装置。
【請求項6】
前記スラスト軸受は、スラスト玉軸受け、コロ軸受けおよびニードルベアリングの少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1記載の位置調整装置。
【請求項7】
前記支持板は、熱処理された合金鋼からなることを特徴とする請求項1記載の位置調整装置。
【請求項8】
前記支持球体およびスラスト軸受は、鋼球からなることを特徴とする請求項1記載の位置調整装置。
【請求項9】
前記雄ネジ部の高さ位置をディジタル表示又はアナログ表示する手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の位置調整装置。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate



【図7】
image rotate



【図8】
image rotate



【図9】
image rotate


【公開番号】特開2004−75240(P2004−75240A)
【公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−235451(P2002−235451)
【出願日】平成14年8月13日(2002.8.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】