説明

住宅設備の遠隔監視システム及び住宅設備用回線制御装置

【課題】アナログ回線を用いて通話を行っている最中にデジタル回線が通信不能から通信可能へ変化した場合、通話の終了を待つことなくデジタル回線を介してデータ通信を行う。
【解決手段】住宅設備の遠隔監視システムは、住宅内1に配置されたを少なくともアナログ回線4を通じて監視する遠隔監視センター3と、住宅設備2に付された電話機5と、住宅内1に配置された回線制御装置6とを備え、デジタル通信判断手段8が、住宅設備2と遠隔監視センター3とがデジタル回線7で通信可能が否かを判断し、デジタル回線7で通信可能でない場合、アナログ回線制御部9がアナログ回線4を通じて住宅設備2の運転状態を示すデータ及び電話機5の利用者が発する音声を切り替えながら遠隔監視センター3へ送信し、デジタル回線7で通信可能である場合、デジタル回線制御部10がデジタル回線7を通じてデータを遠隔監視センター3へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータや浴室などの住宅設備を住宅の外からアナログ回線を介して監視する遠隔監視システム及び当該システムに用いられる住宅設備用回線制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、保守点検業務の省力化と効率化への要求が顕著となり、これに応えるべく、個々のエレベータを遠隔地で集中的に監視する遠隔監視システムが開発され、このシステムを盛んに利用する傾向にある。
【0003】
このような遠隔監視システムの例として、電話回線等のアナログ回線を利用してエレベータを遠隔監視するシステムが知られている(例えば、特許文献1及び2など参照。)当該システムは、例えば、エレベータ内に備えられた非常用電話機を備え、この電話機を用いて、エレベータ内に閉じ込められた乗客がエレベータ管理人等の外部の人に状況を知らせ、助けを求めることができる。
【0004】
また、電話回線は、乗客との通話手段として用いるだけでなく、エレベータを制御するための情報を通信するデータ通信手段としても用いられる。
【特許文献1】特開平6−085940号公報
【特許文献2】特開平5−290286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インターネットなどのデジタル通信網を利用したデータ通信は、アナログ回線に比べてそのデータ量や通信速度において優位であり、上記のようなエレベータ遠隔監視システムにおけるデータ通信手段としても有効である。近年、このようなデジタル通信網を利用したデータ通信と電話回線を用いた通話との双方が可能な遠隔監視システムが提案されている。
【0006】
しかし、エレベータの故障などに伴ってインターネット通信が不可能となる場合が考えられるが、このような時(ネット故障時)、上記システムではアナログ回線を用いてデータ通信及び通話を交互に行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、住宅内に配置された住宅設備を少なくともアナログ回線を通じて監視する遠隔監視センターと、住宅設備に付された電話機と、住宅内に配置された回線制御装置とを備える住宅設備の遠隔監視システムであって、回線制御装置が、住宅設備と遠隔監視センターとがデジタル回線で通信可能であるか否かを判断するデジタル通信判断手段と、デジタル通信判断手段がデジタル回線で通信可能でないと判断した場合、アナログ回線を通じて住宅設備の運転状態を示すデータ及び電話機の利用者が発する音声を切り替えながら遠隔監視センターへ送信するアナログ回線制御部と、デジタル通信判断手段がデジタル回線で通信可能であると判断した場合、デジタル回線を通じてデータを遠隔監視センターへ送信するデジタル回線制御部とを有することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アナログ回線を用いて通話を行っている最中にデジタル回線が通信不能から通信可能へ変化した場合、通話の終了を待つことなくデジタル回線を介してデータ通信を行う住宅設備の遠隔監視システムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一あるいは類似の部分には同一あるいは類似な符号を付している。
【0010】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係わる住宅設備の遠隔監視システム全体の構成を説明する。遠隔監視システムは、住宅内1に配置されたエレベータ2や浴室などの住宅設備を少なくとも電話回線(アナログ回線)4を通じて監視するコンタクトセンター(遠隔監視センター)3と、住宅設備の一例としてのエレベータ2に付された非常用の電話機5と、住宅内1に配置された住宅設備用回線制御装置(以後、「回線制御装置」と略す)6とを少なくとも備える。
【0011】
回線制御装置6は、モジュラ26を介して電話回線4に接続され、電話回線4を介してコンタクトセンター3に接続されている。また、住宅内1のルータ25を介してデジタル回線の一例としてのインターネット7にも接続され、更にエミット(Embedded Micro Internetworking Technology:EMIT)センターサーバ21を介してコンタクトセンター3に接続されている。
【0012】
コンタクトセンター3内で、電話回線4はモデム27を介して遠隔監視サーバ28及び管理者が使用する電話機29に接続されている。コンタクトセンター3内の遠隔監視サーバ28は、エレベータ向け顧客管理システム22にデジタル回線を介して接続されている。エレベータ向け顧客管理システム22は更にインターネット7を介してエレベータの施行業者端末30に接続されている。
【0013】
一方、住宅内1において、制御盤23がエレベータ2及び回線制御装置6に接続されている。制御盤23は、エレベータ2の運転状態、故障状態、或いは内部状態などを示すデータを読み出して回線制御装置6に転送する。回線制御装置6は、エレベータ2の運転状態、故障状態、或いは内部状態などを示すデータを、インターネット7或いは電話回線4を介してコンタクトセンターへデータ通信することができる。
【0014】
また、エレベータ2に付された非常用の電話機5は、回線制御装置6を介してモジュラ26に接続され、電話回線4を介してコンタクトセンター3内の電話機29との間で通話が行える。更に、モジュラ26には、住宅内1に配置された一般電話機24にも接続されている。モジュラ26において、非常用の電話機5と一般電話機24とが分岐されている。なお、モジュラ26において、非常用の電話機5と一般電話機24との間で通話の切替を行っても構わない。
【0015】
回線制御装置6は、エレベータ2とコンタクトセンター3とがインターネット7で通信可能であるか否かを判断するデジタル通信判断部8(デジタル通信判断手段)と、デジタル通信判断部8がインターネット7で通信可能でないと判断した場合、電話回線4を通じてエレベータ2の運転状態等を示すデータ及び電話機5の利用者が発する音声を切り替えながらコンタクトセンター3へ送信するアナログ回線制御部9(アナログ回線制御手段)と、デジタル通信判断部8がインターネット7で通信可能であると判断した場合、インターネット7を通じてエレベータ2の運転状態等を示すデータをコンタクトセンター3内の遠隔監視サーバ28へ送信するデジタル回線制御部10(デジタル回線制御手段)とを有する。
【0016】
デジタル通信判断部8は、インターネット7の回線が故障したり(ネット故障)、或いは住宅内にまだインターネット回線が引かれていないなど、エレベータ2とコンタクトセンター3とがインターネット7で通信可能であるかどうかを常時監視している。具体的には、デジタル通信判断部8は、インターネット回線に向けて応答を要求する信号を定期的に発信し、この信号に対する応答信号を受信した場合にインターネット7で通信可能であると判断し、応答信号を受信しない場合はインターネット7で通信可能でないと判断する。
【0017】
インターネット7で通信可能でないと判断された場合、インターネット7を介して制御盤23が収集したエレベータの運転状態等のデータを送信することができない。よって、コンタクトセンター3内の管理者は、エレベータ2の運転状態等を直接収集することができなくなる。この場合、電話回線4が通じていれば、アナログ回線制御部9が、電話回線4を介してエレベータ2の運転状態等を示すデータの通信、エレベータ2の利用者との通話を交互に行う。これにより、コンタクトセンター3内の管理者は、エレベータ2の運転状態等を示すデータの収集、及びエレベータ2の利用者との通話を交互に行うことができる。
【0018】
一方、インターネット7で通信可能であると判断された場合、デジタル回線制御部10が、インターネット7を介して制御盤23から収集したエレベータ2に関する情報をコンタクトセンター3へデータ送信すると同時に、アナログ回線制御部9が、電話回線4を介してエレベータ2の利用者との通話を行う。これにより、インターネット7により高速にエレベータ2に関する大量の情報をコンタクトセンター3へ送信することができると同時に、電話回線4を介してエレベータ2の利用者との通話も行える。データ通信中は通話ができない、或いは通話中にデータ通信ができないといったことが起こらず、エレベータ2の利用者を不安にさせたり、コンタクトセンター3でのデータ収集が遅れる等のおそれがない。また、インターネット7によるデータ通信の費用は、電話回線によるデータ通信に比べて安価であるため、通信費用を削減することができる。
【0019】
なお、エレベータ向け顧客管理システム22は、エレベータ事業部門の顧客管理、受注管理等に特化して業務を行うシステムである。コンタクトセンター3に個別商品向け対応ができる構成とすればエレベータ向け顧客管理システム22は不要となる。なお、監視対象の住宅設備がエレベータ2ではなく、浴室である場合、浴室の閉じ込め等の非常事態の管理するには、浴室専用のシステムで代替される。
【0020】
また、エミット(EMIT(Embedded Micro Internetworking Technology))と称する機器組み込み型ネットワーク技術(機器に簡単にミドルウェアを組み込んでネットワークに接続できる機能を備えるネットワーク技術、以降、EMIT技術と称する。)を用いることで、携帯電話、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS(Personal Handy phone System)等の外部端末(図示せず)から様々な住宅設備(エレベータ、浴室、照明装置、空調装置、動力装置、センサ、電気錠、ウェブカメラ等、以降、EMIT端末と称する。)<図示せず>にアクセスして、EMIT端末としての回線制御装置6を遠隔監視・制御することができる。
【0021】
尚、EMIT端末は、マイコン搭載の組み込み機器であり、機器組み込み型のネット接続用ミドルウェアでありEMIT技術を実現するEMITソフトウェアが搭載されている。
【0022】
上述のEMIT技術を応用したシステム(以降、EMITシステムと称する。)としては、外部端末がインターネット上に設けられたEMITセンタサーバ21経由でEMIT端末(回線制御装置6)を遠隔監視・制御する構成のものや、EMITセンタサーバ21センタサーバを介することなく、例えばEMITソフトウェアが搭載された外部端末から、直接各EMIT端末にアクセスしてEMIT端末を遠隔監視・制御する構成のものを挙げることができる。
【0023】
また、EMITシステムによって、例えば、建物(戸建住宅、マンション、ビル、工場用等)<図示せず>内に回線制御装置6を含む上述のEMIT端末を分散配置させて、外部端末からEMIT端末の状態を遠隔から監視することで、建物全体のエネルギー管理や、建物内のガス、水道、電気の遠隔検針を行うことも可能となる。
【0024】
次に、図2(a)〜図2(c)を参照して、インターネットが故障する前、インターネットが故障した後、そして、通話中にインターネットが復帰した時のデータ通信及び通話の方法を説明する。
【0025】
先ず、図2(a)に示すように、インターネット7が故障する前、つまり、インターネット7が通信可能である時、デジタル回線制御部10が、インターネット7を通じてエレベータ2の運転状態等を示すデータを送信し、アナログ回線制御部9が、電話回線4を通じて電話機5の利用者が発する音声を送信する。
【0026】
そして、図2(b)に示すように、インターネット7が故障した後、つまり、インターネット7が通信可能でなくなると、アナログ回線制御部9が、電話回線4を通じてエレベータ2の運転状態等を示すデータ及び電話機5の利用者が発する音声を切り替えながら送信するようになる。
【0027】
その後、図2(b)に示すように、インターネット7が復帰すると、つまり、インターネット7が通信可能でない状態から通信可能な状態に変化したとデジタル通信判断部8が判断すると、回線制御装置は、エレベータ2の運転状態等を示すデータを送信する回線を電話回線4からインターネット7へ切り替える。これにより、インターネット7の復帰と連動して、データを送信する回線を変更することができ、効率良くインターネット7を利用することができるようになる。
【0028】
更に、電話回線を通じて音声が送受信されている最中にインターネット7が復帰した場合、通話途中であっても、即座に、データを送信する回線を電話回線4からインターネット7へ切り替える。これにより、従来は、データ通信回線をインターネット7からバックアップ系統としての電話回線4へ切り替えた後に主経路としてのインターネット7が復帰した場合、通話が終了した後でなければデータ通信回線をインターネット7へ切り替えることができなかった。しかし、本実施形態によれば、通話途中にインターネット7が復帰しても通話途中において即座にインターネット通信へ復帰させることができ、折角インターネット7が復帰したのにすぐにインターネット通信ができないといったことが回避される。
【0029】
上記のように、本発明は、1つの実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0030】
住宅設備の例としてエレベータ2を挙げて説明したが、住宅設備はエレベータに限定されるものではなく、住宅内に配置される、その他のあらゆる住宅設備或いは設備機器に対して適用可能である。
【0031】
また、インターネット7が一度故障して再び復帰した場合を想定して本実施形態の動作を説明したが、本発明の動作はこれに限定されるものではない。その他にも、いままで、住宅内1にインターネット回線が引かれていない状況において、新たにインターネット回線を接続した場合、回線制御装置6は、何ら設定を変更することなく、デジタル通信判断部8が自動的にインターネット7による通信が可能であると判断して上記の回線切替を実行してくれる。よって、今後も普及が進むインターネットに対応した住宅設備用回線制御装置6を提供することができる。
【0032】
なお、アナログ回線の例として電話回線(公衆電話回線網)を挙げ、デジタル回線の例としてインターネット7を挙げたが、これらに限定されること無く、その他のアナログ回線及びデジタル回線に対して本発明を適用するができることは言うまでもない。
【0033】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係わる住宅設備の遠隔監視システム全体の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、インターネットが故障する前、インターネットが故障した後、そして、通話中にインターネットが復帰した時のデータ通信及び通話の方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1…住宅内
2…エレベータ(住宅設備)
3…コンタクトセンター(遠隔監視センター)
4…電話回線(アナログ回線)
5…電話機
6…回線制御装置(住宅設備用回線制御装置)
7…インターネット(デジタル回線)
8…デジタル通信判断部(デジタル通信判断手段)
9…アナログ回線制御部(アナログ回線制御手段)
10…デジタル回線制御部(デジタル回線制御手段)
21…EMITセンタサーバ
22…エレベータ向け顧客管理システム
23…制御盤
24…一般電話機
25…ルータ
26…モジュラ
27…モデム
28…遠隔監視サーバ
29…電話機
30…施行業者端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅内に配置された住宅設備を少なくともアナログ回線を通じて監視する遠隔監視センターと、
前記住宅設備に付された電話機と、
前記住宅内に配置された回線制御装置とを備え、
前記回線制御装置は、
前記住宅設備と前記遠隔監視センターとがデジタル回線で通信可能であるか否かを判断するデジタル通信判断手段と、
前記デジタル通信判断手段がデジタル回線で通信可能でないと判断した場合、前記アナログ回線を通じて前記住宅設備の運転状態を示すデータ及び前記電話機の利用者が発する音声を切り替えながら前記遠隔監視センターへ送信するアナログ回線制御手段と、
前記デジタル通信判断手段がデジタル回線で通信可能であると判断した場合、前記デジタル回線を通じて前記データを前記遠隔監視センターへ送信するデジタル回線制御手段
とを有することを特徴とする住宅設備の遠隔監視システム。
【請求項2】
前記回線制御装置は、前記アナログ回線を通じて前記音声が送受信されている途中で、前記デジタル通信判断手段が前記デジタル回線が通信可能でない状態から通信可能な状態に変化したと判断した場合、前記データを送信する回線を前記アナログ回線から前記デジタル回線へ切り替えることを特徴とする請求項1記載の住宅設備の遠隔監視システム。
【請求項3】
少なくともアナログ回線を通じて遠隔監視センターが住宅設備を遠隔から監視する遠隔監視システムに用いられる回線制御装置であって、
前記住宅設備と前記遠隔監視センターとがデジタル回線で通信可能であるか否かを判断するデジタル通信判断手段と、
前記デジタル通信判断手段がデジタル回線で通信可能でないと判断した場合、前記アナログ回線を通じて前記住宅設備の運転状態を示すデータ及び前記電話機の利用者が発する音声を切り替えながら前記遠隔監視センターへ送信するアナログ回線制御手段と、
前記デジタル通信判断手段がデジタル回線で通信可能であると判断した場合、前記デジタル回線を通じて前記データを前記遠隔監視センターへ送信するデジタル回線制御手段
とを有することを特徴とする住宅設備用回線制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−124154(P2007−124154A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311917(P2005−311917)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】