説明

作業機械の排気ガス浄化システム

【課題】作業機械の作業休止時間を利用して効率良くフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して減少させ、再生制御による作業効率の低下を回避することができる作業機械の排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】表示装置16の操作部17に油圧ショベルの作業休止時間を予め設定する手段としての機能を持たせ、かつ油圧ショベルが作業休止状態に入ったことを知らせる作業休止スイッチ13を設ける。車体制御装置21は、油圧ショベルが作業休止状態に入ったことが知らされると、フィルタに溜まった現在の粒子状物質の堆積量を再生装置によって燃焼除去するのに要する時間を計算し、作業機械が作業休止状態に入ったことが知らされかつ計算した時間が設定した作業休止時間よりも長いときに、設定した作業休止時間の間、エンジン制御装置4の再生制御部4aを作動させ、電磁切換弁15を閉位置に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械の排気ガス浄化システムに係わり、特に、油圧ショベル等の走行式の作業機械において、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼除去し、フィルタを再生させる再生装置を備えた作業機械の排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のディーゼルエンジンの排気ガスを浄化する排気ガス浄化システムとして、例えば特許文献1及び特許文献2に記載のものがある。特許文献1記載の排気ガス浄化システムは、トラック等の運搬車両において、エンジンの排気系にパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter )と呼ばれるフィルタを配置し、このフィルタで排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM:パティキュレート・マター:以下PMとする)を捕集し、外部に排出するPM量を低減するものである。また、PMフィルタの目詰まりを防止するため、フィルタの前後差圧を検出してフィルタのPM堆積量を判定し、PM堆積量が第1閾値を超えると自動で排気ガスの温度を上昇させてフィルタに堆積したPMを燃焼除去する自動再生制御と、PM堆積量が第1閾値より大きい第2閾値よりを超えると、ワーニングランプを点灯することで、車両を停車した状態での手動操作による再生制御の開始を促し、オペレータが手動再生スイッチをONすると、排気ガスの温度を上昇させてフィルタに堆積したPMを燃焼除去する手動再生制御とを行えるようにしている。排気ガスの温度上昇はエンジン主噴射後の膨張行程における燃料の追加噴射により未燃HCを酸化(燃焼)させることにより行っている。
【0003】
特許文献2記載の排気ガス浄化システムは、油圧作業機械において、エンジンに油圧的な負荷をかけることでエンジンの出力を高くして排気ガス温度を上昇させ、フィルタ堆積物を燃焼させフィルタを再生している。また、フィルタによるエンジンの排気抵抗を検出し、排気抵抗が許容値を超えると自動的に再生を開始するようにしている(自動再生制御)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−120895号公報
【特許文献2】特許第3073380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラック等の運搬車両における排気ガス浄化システムにおけるフィルタの再生制御には、特許文献1記載のように、走行中に行う自動再生制御と車体を停止して行う手動再生制御とがある。手動再生制御は、フィルタに堆積したPMが自動再生制御では燃焼除去しきれずに増え続けた場合に操作して、そのPMを燃焼除去するものである。すなわち、自動再生制御は走行中に行うため、再生によるPMの燃焼除去量よりエンジンの稼動によるフィルタのPM堆積量の方が多い場合があり、その場合は自動再生制御による再生を行ってもPM堆積量が増えてしまう。手動再生制御では、車体を停止して燃料の追加噴射等により排気ガスの温度を上昇させてフィルタに堆積したPMを燃焼除去するので、フィルタに堆積したPMを確実に燃焼除去することができる。
【0006】
しかし、手動再生制御の技術を特許文献2記載のような油圧ショベル等の作業機械に適用した場合は、次のような問題がある。
【0007】
油圧ショベル等の作業機械は車体を停止して作業を行う機械である。その作業は、エンジンで油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプの吐出油でブームシリンダ、アームシリンダ等のアクチュエータを駆動することで行う。このような作業機械で車体を停止して手動再生制御を行うことは、作業を中止しなければならないことを意味する。しかし、手動再生制御を開始するときのPM堆積量の閾値(第2閾値)は比較的大きく、PMの燃焼除去量も比較的多いため、再生時間は比較的長くなる。その結果、再生を行っている間は一切の作業ができず、作業効率が著しく低下する。
【0008】
一方、作業機械の場合、油圧ショベルを例にすると、掘削した土砂をダンプの荷台に積み込むような掘削・ダンプ積みのような作業を行うときには、必ずダンプ待ちのような作業を行わない時間(作業休止時間)が発生する。そして、このときは作業休止中であるためエンジン負荷が軽く、エンジンの排気ガス温度が比較的低い。その結果、フィルタに堆積したPMの自然燃焼の効果が低くなり、フィルタにPMが溜まりやすい。
【0009】
本発明の目的は、作業機械の作業休止時間を利用して効率良くフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼少させ、作業効率の低下を回避することができる作業機械の排気ガス浄化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するため、本発明は、ディーゼルエンジンの排気系に配置され、排気ガスの中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、このフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させ前記フィルタを再生する再生装置とを備える作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、前記作業機械の作業休止時間を予め設定する設定手段と、前記作業機械が作業休止状態に入ったことを知らせる手段と、前記作業機械が前記作業休止状態に入ったことが知らされたときに、前記設定した作業休止時間の間、前記再生装置を作動させる再生制御手段とを備えるものとする。
【0011】
このように構成した本発明においては、作業機械が作業休止状態に入ると、予め設定した作業休止時間の間再生装置を作動させるので、作業休止時間を利用してフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させる再生制御を行うことができる。また、作業休止時間はフィルタに粒子状物質が溜まりやすい時間であり、その時間を利用してフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させることにより、効率良くフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して減少させることができる。そして、そのように作業休止時間にフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して減少させることにより、フィルタに溜まる粒子状物質の堆積量の増加が抑制されるため、手動再生制御の要求頻度が減り、作業中に手動再生制御を強いられることによる作業効率の低下を防止することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記再生制御手段は、前記フィルタに溜まった現在の粒子状物質の堆積量を前記再生装置によって燃焼除去するのに要する時間を計算し、前記作業機械が前記作業休止状態に入ったことが知らされかつ前記計算した時間が前記設定した作業休止時間よりも長いときに前記再生装置の作動を開始する。
【0013】
本発明は上記のように設定した作業休止時間を利用して再生装置を作動させ、再生制御を行うものである。しかし、フィルタに溜まった粒子状物質の堆積量が僅かであるときでも作業休止時間に再生制御を行うと、再生装置の作動頻度が増加し、エンジンの燃費が悪化する可能性がある。
【0014】
そこで本発明は、計算した時間が設定した作業休止時間よりも長いときに再生装置の作動を開始するようにしたものであり、これにより作業休止状態に入ったことが知らされても計算した時間が設定した作業休止時間以下のときは再生装置は作動しないようになり、再生装置が頻繁に作動してエンジンの燃費が低下することが防止される。
【0015】
(3)上記(1)において、前記再生制御手段は、前記フィルタに溜まった現在の粒子状物質の堆積量と前記設定した作業休止時間で前記再生装置によって燃焼可能な粒子状物質の堆積量を計算し、前記作業機械が前記作業休止状態に入ったことが知らされかつ前記計算した粒子状物質の堆積量が前記計算した燃焼可能な粒子状物質の堆積量より多いときに前記再生装置の作動を開始していもよい。
【0016】
これによっても上記(2)で述べたように再生装置が頻繁に作動し、エンジンの燃費が低下することが防止される。
【0017】
(4)また、上記(1)において、好ましくは、前記作業機械が作業休止状態に入ったことを知らせる手段は、前記作業機械が作業休止状態に入ったときにオペレータにより操作される第1操作装置である。
【0018】
これによりオペレータの意志で上記(1)の作業休止時間を利用した再生制御を開始することができる。
【0019】
(5)上記(1)において、前記作業機械は作業時に操作される操作レバー装置を有し、前記作業機械が作業休止状態に入ったことを知らせる手段は、前記操作レバー装置の操作状態を検出する検出装置と、この検出装置の検出結果に基づいて前記作業機械が作業休止状態に入ったかどうかを判定する判定手段とを有していてもよい。
【0020】
これにより作業機械が作業休止状態に入ったときは、オペレータが操作をしなくても自動で上記(1)の作業休止時間を利用した再生制御を開始することができる。
【0021】
(6)また、上記(1)において、好ましくは、前記設定手段は、前記作業機械のオペレータにより操作され、前記作業機械の作業休止時間を入力する第2操作装置を有する。
【0022】
これによりオペレータは、オペレータの判断で作業現場の状況に応じて最適の作業休止時間を設定することができる。
【0023】
(7)上記(1)において、前記作業機械は運転データを蓄積する情報蓄積装置を更に備え、前記設定手段は、前記情報蓄積装置に蓄積した運転データを所定の時間隔で解析し、その解析結果に基づいて前記作業機械の作業休止時間を計算する解析手段を有していてもよい。
【0024】
これにより作業休止時間を自動で設定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、作業機械の作業休止時間を利用して効率良くフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して減少させ、再生制御による作業効率の低下を回避することができる。
【0026】
また、本発明によれば、エンジンの燃費を低下させることなく、作業休止時間を利用した再生制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
<第1の実施の形態>
<全体構成>
図1は、本発明の一実施の形態に係わる油圧ショベル(作業機械)の排気ガス浄化システムを示す図である。
【0028】
図1において、1はディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)であり、エンジン1は排気ガスを外部に排出する排気管2を備え、排気管2の先端にマフラ3が接続されている。エンジン1の回転数とトルクはエンジン制御装置4により制御される。エンジン制御装置4は、公知の如く、エンジンコントロールダイヤルによって指示された目標回転数を入力し、その目標回転数と回転数検出センサによって検出した実回転数とに基づいてエンジン1に備えられる電子ガバナを制御し、燃料噴射量を制御することで、エンジン1の回転数とトルクを制御する。
【0029】
エンジン制御装置4は、車体制御装置21、情報蓄積装置22、モニタ制御装置23、と通信ライン25を介して接続され、車体ネットワークを構成している。
【0030】
車体制御装置21は、油圧システム(後述)及び車体に設けられたセンサ等の信号を入力し、油圧制御及び車体制御の演算処理を行う。
【0031】
モニタ制御装置23は、エンジン制御装置4、車体制御装置21から通信ライン25を介して図示しない燃料残量センサ、水温センサ等の各種センサの検出信号を入力し、その検出結果を表示装置16に表示するための表示制御を行う。また、モニタ制御装置23は表示装置16に設けられた操作部17による設定入力の制御を行う。
【0032】
情報蓄積装置22は、通信ライン25を経由してエンジン制御装置4、車体制御装置21、モニタ制御装置23等に入力される各種信号を運転データとして収集し、データベースに時系列的に記憶、蓄積する。また、それらのデータは定期的に図示しない衛星通信端末を用いて管理サーバに送信される。
【0033】
本実施の形態の排気ガス浄化システムは上記のような機器を備えた油圧ショベルに設けられるものであり、エンジン1の排気系を構成する排気管2に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ装置(DPF)11と、フィルタ装置11の上流側と下流側の前後差圧(フィルタ装置11の圧力損失)を検出する差圧センサ12と、オペレータによって操作され、油圧ショベルが作業休止状態に入ったことを知らせる作業休止スイッチ13(第1操作装置)と、リモコン弁(後述)の制御パイロット圧の有無を検出し、作業に係わる操作手段の操作の有無を検出する圧力センサ14と、再生制御時にエンジン1に油圧的負荷を付与するための電磁切換弁15と、作業休止時間を入力する操作装置(第2操作装置)としての機能を有する上記表示装置16の操作部17と、上記車体制御装置21、モニタ制御装置23及びエンジン制御装置4とを備えている。フィルタ装置11は排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタと、このフィルタの上流側に配置された酸化触媒を内蔵している。
【0034】
エンジン制御装置4は差圧センサ12の検出信号を入力し、その検出信号を通信ライン25を介して車体制御装置21に送信する。モニタ制御装置23は、操作部17が作業休止時間を入力する操作装置として操作されたとき、その作業休止時間を入力し、その作業休止時間を通信ライン25を介して車体制御装置21に送信する。
【0035】
車体制御装置21は通信ライン25を介してモニタ制御装置23から作業休止時間を受け取ると、ハードディスク等の記憶装置にその作業休止時間を記憶し再生制御用の時間として設定する。また、車体制御装置21は、エンジン制御装置4から送信された差圧センサ12の検出信号を入力するとともに、作業休止スイッチ13の操作信号、圧力センサ14の検出信号を入力し、これらの信号を用いて所定の演算処理を行い、再生開始指示信号及び再生停止指示信号を通信ライン25を介してエンジン制御装置4に出力するとともに、電磁切換弁15に制御信号(ONの制御信号)を出力する。
【0036】
エンジン制御装置4は再生装置として機能する再生制御部4aを有しており、エンジン制御装置4は車体制御装置21から再生開始指示信号を受け取ると再生制御部4aの作動を開始し、車体制御装置21から再生停止指示信号を受け取ると再生制御部4aの作動を停止させる。再生制御部4aは、エンジン1の電子ガバナを制御して再生制御を行うものであり、車体制御装置21が電磁切換弁15にONの制御信号を出力してエンジン1に負荷をかけた状態で(後述)、公知の如く(例えば特許文献1)、エンジン回転数を所定の回転数(例えば1750rpm)に維持するとともにエンジン主噴射後の膨張行程におけるポスト噴射(追加噴射)で未燃HCを酸化させることによって排気ガスの温度を上昇させ、その高温の排気ガスによりフィルタ装置11の酸化触媒を活性化させることで、フィルタに堆積したPMを燃焼除去する。
【0037】
また、排気ガス浄化システムは手動再生開始スイッチ18を有し、車体制御装置21は、手動再生開始スイッチ18の操作信号を入力して所定の演算処理を行い、再生開始信号及び再生停止信号を通信ライン25を介してエンジン制御装置4に出力するとともに、電磁切換弁15に制御信号を出力する。エンジン制御装置4は、この場合も、再生開始信号を受け取ると再生制御部4aの作動を開始し、再生停止信号を受け取ると再生制御部4aの作動を停止させる。
【0038】
本明細書では、作業休止スイッチ13の操作信号に基づく再生制御を休止時間利用再生制御といい、手動再生開始スイッチ18の操作信号に基づく再生制御を手動再生制御という。また、再生制御部4a(再生装置)が作動することを適宜再生制御という。
<油圧システム>
図2は、本実施の形態に係わる作業機械である油圧ショベルに搭載される油圧回路装置を示す図である。油圧ショベルの油圧回路装置は、エンジン1により駆動される可変容量型のメインの油圧ポンプ31及び固定容量型のパイロットポンプ32と、油圧ポンプ31から吐出される圧油によって駆動される油圧モータ33及び油圧シリンダ34,35を含む複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ31から油圧モータ33及び油圧シリンダ34,35に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御するパイロット操作式の流量制御弁37〜39を含む複数の流量制御弁と、パイロットポンプ32から吐出される圧油の圧力を一定に保ち、パイロット油圧源40を形成するパイロットリリーフ弁41と、パイロット油圧源40の下流側に接続され、油圧ショベルの運転室の入り口側に設けられたゲートロックレバーの開閉状況によってON/OFF制御される電磁切換弁43と、電磁切換弁43の下流側のパイロット油路44に接続され、パイロット油圧源40の油圧を元圧として流量制御弁37〜39を操作するための制御パイロット圧a〜fを生成するリモコン弁45,46,47と、メインの油圧ポンプ31の吐出圧力の上限を規定する安全手段としてのメインリリーフ弁48とを備えている。リモコン弁45,46,47は運転室の運転席の左右に位置する左右の操作レバー装置に内蔵されている。
【0039】
リモコン弁45,46,47の一次ポートはパイロット油路44に接続され、二次ポートはパイロットライン45a,45b;46a,46b;47a,47bに接続され、リモコン弁45,46,47で生成された制御パイロット圧a〜fはそれらのパイロットラインを介して流量制御弁37〜39の受圧部に導かれる。パイロットライン45a,45b;46a,46b;47a,47bにはシャトル弁群50が接続されている。シャトル弁群50はシャトル弁50a〜50fを含み、シャトル弁50aはリモコン弁45のパイロットライン45a,45b間に接続され、シャトル弁50bはリモコン弁46のパイロットライン46a,46b間に接続され、シャトル弁50cはリモコン弁47のパイロットライン47a,47b間に接続され、シャトル弁50dはシャトル弁50a,50bの出力ポート間に接続され、シャトル弁50eはシャトル弁50c,50d間の出力ポート間に接続され、シャトル弁50fはシャトル弁50eの出力ポートと図示しない他の操作手段のリモコン弁に係わる最終段のシャトル弁の出力ポート間に接続されている。これによりシャトル弁50a〜50fを含むシャトル弁群50はリモコン弁45〜47の制御パイロット圧a〜fや図示しない他の操作手段のリモコン弁の制御パイロット圧のうちの最高圧力を抽出し、シャトル弁群50の最終段のシャトル弁50fはその最高圧力を出力する。圧力センサ14はその最終段のシャトル弁50fの出力ポートに接続され、シャトル弁50fの出力圧であるその最高圧力を検出することによりリモコン弁45〜47を含む全てのリモコン弁の制御パイロット圧の有無、すなわちリモコン弁45〜47の操作レバー装置を含む作業に係わる操作手段の操作の有無を検出する。
【0040】
流量制御弁37〜39を含む複数の流量制御弁はセンターバイパス型であり、これら流量制御弁は油圧ポンプ31の吐出油路につながるセンターバイパスライン51に直列に接続され、センターバイパスライン51の最下流側部分51aはタンクTに接続されている。また、センターバイパスライン51の最下流側部分51aには電磁切換弁15が接続されている。電磁切換弁15は開位置と閉位置とを有する二位置切換弁であり、車体制御装置21からの制御信号(ON信号)が無く、ソレノイドが励磁されていないときは図示の開位置にあり、車体制御装置21から制御信号(ON信号)が出力され、ソレノイドが励磁されると図示の開位置から閉位置に切り換えられる。
【0041】
電磁切換弁15はエンジン制御装置4が再生装置(再生制御部4a)を作動させるときに閉位置に切り換えられる(後述)。電磁切換弁15が閉位置に切り換えられると、油圧ポンプ31の吐出圧力はメインリリーフ弁48の設定圧力まで上昇し、その油圧ポンプ31を駆動するエンジン1の負荷トルクが増大し、再生装置の作動(再生制御)と相まってエンジン1の排気ガス温度を上昇させることができる。
<油圧ショベル>
図3は、図2に示す油圧回路装置を備えた作業機械の一例である油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ104a,104bにより駆動される。上部旋回体101は旋回モータ105により下部走行体100上に旋回可能に搭載され、フロント作業機102は上部旋回体101の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体101にはエンジンルーム106、キャビン(運転室)107が備えられ、エンジンルーム106にエンジン1が配置され、キャビン107内の運転席の入り口側にゲートロックレバーが設けられ、運転席の左右にリモコン弁35,36,37を内蔵した操作レバー装置が配置されている。また、キャビン107内の適所にエンジンコントロールダイヤルや表示装置16が設置されている。
【0042】
フロント作業機102はブーム111、アーム112、バケット113を有する多関節構造であり、ブーム111はブームシリンダ114の伸縮により上下方向に回動し、アーム112はアームシリンダ115の伸縮により上下、前後方向に回動し、バケット113はバケットシリンダ116の伸縮により上下、前後方向に回動する。
【0043】
図2において、油圧モータ33は例えば旋回モータ105であり、油圧シリンダ34は例えばアームシリンダ115であり、油圧シリンダ35は例えばブームシリンダ114である。図2に示す油圧回路装置には走行モータ104a,104b、バケットシリンダ116等に対応するその他の油圧アクチュエータや制御弁も備えられているが、図2ではそれらの図示を省略している。
<車体制御装置21の作業休止時間利用再生制御の処理内容>
図4は、車体制御装置21の作業休止時間利用再生制御の処理内容を示すフローチャートである。車体制御装置21は、図4に示す演算処理を所定の制御サイクルで実行する。
【0044】
まず、車体制御装置21は、エンジン制御装置4から送信された差圧センサ12の検出信号を入力し、差圧センサ12によって検出したフィルタ装置11の前後差圧(以下DPF差圧という)からフィルタ装置11のフィルタに堆積した現在の粒子状物質の堆積量(以下PM堆積量という)を計算し、更にその計算して得たPM堆積量から当該PM堆積量を再生装置によって燃焼除去するのに必要な時間(以下再生必要時間という)を計算する(ステップS100)。
【0045】
PM堆積量の計算は、メモリのテーブルに図5に示すようなDPF差圧とPM堆積量の関係を記憶しておき、差圧センサ12で検出したDPF差圧をそのテーブルに参照させて対応するPM堆積量を求めることにより行う。メモリのテーブルには、図5に示すように、DPF差圧が増大するにしたがってPM堆積量が増大するDPF差圧とPM堆積量との関係が設定されている。この関係は、事前に、実験等により求めメモリに記憶しておく。
【0046】
再生必要時間の計算は、メモリのテーブルに図6に示すようなPM堆積量と再生必要時間の関係を記憶しておき、計算したPM堆積量をそのテーブルに参照させて対応する再生必要時間を求めることにより行う。メモリのテーブルには、図6に示すように、PM堆積量が増大するにしたがって再生必要時間が増大するPM堆積量と再生必要時間との関係が設定されている。この関係は、事前に、実験等により求めメモリに記憶しておく。
【0047】
次いで、作業休止スイッチ13の操作信号により作業休止スイッチ13が操作されたかどうか、すなわち作業休止スイッチ13がONになったかどうかを判定し(ステップS110)、更にステップS100で計算した再生必要時間がモニタ制御装置23の操作部17によって入力し設定した作業休止時間を超えているかどうかを判定し(ステップS120)、作業休止スイッチ13がONになり、再生必要時間が設定した作業休止時間を超えていると、再生制御開始信号をエンジン制御装置4に出力し(ステップS130)、かつ電磁切換弁15に制御信号(ON信号)を出力して電磁切換弁15を閉位置に切り換える(ステップS140)。これによりエンジン1に油圧的な負荷をかけた状態で再生制御が開始される。
【0048】
ステップS110で作業休止スイッチ13がONでない場合、或いはステップS120で再生必要時間が設定した作業休止時間を超えていない場合はステップS100に戻り、ステップS100及びステップS110の処理を繰り返す。
【0049】
ステップS130及びステップS140の処理により再生制御が開始されると、その後は作業休止状態が継続されているかどうかを判定し(ステップS150)、かつ作業休止スイッチ13がONになった後の時間が上記設定した作業休止時間を超えたかどうかを判定する(ステップS160)。作業休止状態が継続されているかどうかの判定は、圧力センサ14の検出信号に基づいて、モコン弁45〜47を含む全てのリモコン弁の制御パイロット圧の有無を検出することにより行う。すなわち、制御パイロット圧無しが検出されると、作業休止状態が継続されていると判定し、制御パイロット圧有りが検出されると、作業を開始したと判定する。作業休止状態が継続し、作業休止スイッチON後の時間が設定時間を超えていないときはステップS130に戻り、ステップS130〜ステップS160の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS150で作業を開始したと判定された場合、或いはステップS160で作業休止スイッチON後の時間が設定した作業休止時間を超えた場合は、再生制御停止信号をエンジン制御装置4に出力し(ステップS170)、かつ電磁切換弁15に出力する制御信号をOFFにして電磁切換弁15を開位置に切り換える(ステップS180)。これによりエンジン1の油圧的な負荷が解除されかつ再生制御が停止する。
<作業休止時間の入力>
図7は、表示装置16の操作部17の構成と作業休止時間の入力手順を示す図である。
【0051】
表示装置16は液晶等の表示パネル16aを有し、操作部17は表示パネル16aの下側に配置されたF4スイッチ17a〜F7スイッチ17d及びメニュースイッチ17eを含むスイッチ群から構成されている。
【0052】
表示装置16の表示パネル16aには、常時は、作動油温、ラジエータ水温、エンジン燃料レベル等の計測値が表示されている。この状態でメニュースイッチ17eを押すと、画面がメニュー画面に切り換わる。メニュー画面の選択項目には「DPF機能」が含まれている。このメニュー画面では、F4スイッチ17a及びF5スイッチ17bはメニュー画面に表示されたカーソル(図示影線部分)を上下に動かす上下キーとして機能し、F6スイッチ17cは決定キー、F7スイッチ17dは戻りキーとして機能する。作業休止時間を入力する場合、オペレータはF4スイッチ17a及びF5スイッチ17b(上下キー)を操作し「DPF機能」を選択し、F6スイッチ17c(決定キー)を押して決定する。決定キー17cを押すと画面はDPF選択画面に切り換わる。DPF選択画面の選択項目には「DPF再生間隔設定」が含まれている。この画面では、オペレータはF4スイッチ17a及びF5スイッチ17b(上下キー)を操作し「DPF再生間隔設定」を選択し、F6スイッチ17c(決定キー)を押して決定する。決定キー17cを押すと画面はDPF再生間隔設定画面に切り換わる。DPF再生間隔設定画面には「車体休止間隔時間」の数値入力画面が表示される。この画面ではF4スイッチ17a及びF5スイッチ17bはそれぞれ数値入力の+−キーとして機能する。オペレータは、その+−キー17a,17bを操作することで「車体休止間隔時間」の数値を入力し、F6スイッチ17c(決定キー)を押して決定する。決定キー17cを押すことで、入力した数値が作業休止時間の設定信号としてモニタ制御装置23から通信ライン25を介して車体制御装置21に送信され、車体制御装置21に設定される。
<車体制御装置21の手動再生制御の処理内容>
図8は、車体制御装置21の手動再生制御の処理内容を示すフローチャートである。車体制御装置21は、図8に示す演算処理を所定の制御サイクルで実行する。
【0053】
まず、車体制御装置21は、エンジン制御装置4から送信された差圧センサ12の検出信号を入力し、差圧センサ12によって検出したフィルタ装置11の前後差圧が予め設定した再生開始閾値ΔPULよりも大きいかどうかを判定し(ステップS200)、判定結果がYESであれば、オペレータに手動再生制御の開始を促す警告を表示装置16に表示し(ステップS210)、判定結果がNOであればステップS200の処理を繰り返す。ここで、再生開始閾値ΔPULは、フィルタ装置11のフィルタの溶損防止のための限界値である。
【0054】
ステップS210で手動再生制御の開始を促す警告を表示装置16に表示すると、次いで手動再生開始スイッチ18が操作(ON)されたかどうかを判定し(ステップS220)、判定結果がNOであればその処理を繰り返し、判定結果がYESであれば、再生制御開始信号をエンジン制御装置4に出力し(ステップS230)、かつ電磁切換弁15に制御信号(ON信号)を出力して電磁切換弁15を閉位置に切り換える(ステップS240)。これによりエンジン1に油圧的な負荷をかけた状態でエンジン制御装置4の再生制御が開始される。
【0055】
次いで、差圧センサ12によって検出したフィルタ装置11の前後差圧が予め設定した再生終了閾値ΔPDLよりも小さいかどうかを判定し(ステップS250)、判定結果がNOであればその処理を繰り返し、判定結果がYESであれば、再生制御停止信号をエンジン制御装置4に出力し(ステップS260)、かつ電磁切換弁15に出力する制御信号をOFFにして電磁切換弁15を開位置に切り換える(ステップS270)。これによりエンジン1の油圧的な負荷が解除されかつエンジン制御装置4の再生制御が停止する。
<特許請求の範囲との対応>
以上において、作業休止時間を入力する操作装置として機能するときの表示装置16の操作部17は作業機械(油圧ショベル)の作業休止時間を予め設定する設定手段を構成し、作業休止スイッチ13は作業機械(油圧ショベル)が作業休止状態に入ったことを知らせる手段を構成し、車体制御装置21の図4に示した処理機能は、作業機械が作業休止状態に入ったことが知らされたときに、設定した作業休止時間の間、再生装置(再生制御部4a)を作動させる再生制御手段を構成する。
【0056】
また、本実施の形態では、図4に示した処理機能を有する車体制御装置21(再生制御手段)は、フィルタに溜まった現在の粒子状物質の堆積量を再生装置によって燃焼除去するのに要する時間を計算し、作業機械が作業休止状態に入ったことが知らされかつ計算した時間が設定した作業休止時間よりも長いときに再生装置の作動を開始する。
<動作>
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0057】
油圧ショベルの場合、掘削した土砂をダンプの荷台に積み込むような掘削・ダンプ積みのような作業を行うときには、必ずダンプ待ちのような作業を行わない時間(作業休止時間)が発生する。このときは、作業休止中であるためエンジン負荷が軽く、エンジンの排気ガス温度が比較的低い。その結果、フィルタに堆積したPMの自然燃焼の効果が低くなり、フィルタにPMが溜まりやすい。
【0058】
本実施の形態では、そのような作業休止時間を利用して次のように再生制御を行う。
【0059】
まず、ダンプ待ち時間は作業現場によって異なるので、新たな作業現場で作業を行うとき、オペレータは事前に作業現場に合ったダンプ待ち時間を推定し、そのダンプ待ち時間から本発明の再生制御に使用可能な作業休止時間を決め、設定する。この設定は、上記のように操作部16を用いて行う(図7)。
【0060】
次いで、オペレータは実際の作業に入る。そして、この作業でダンプの荷台が掘削土砂で一杯になり、次の空のダンプが来るまでダンプ待ちに入ると、オペレータは作業休止スイッチ13を押す。作業休止スイッチ13が押されると、車体制御装置21はその操作信号を入力し、フィルタ装置11のフィルタに溜まっている現在のPM堆積量を再生装置によって燃焼するのに必要な時間(再生必要時間)が設定した作業休止時間を超えていると、再生制御開始信号をエンジン制御装置4に出力し(図4、ステップS110→S120→S130)、かつ電磁切換弁15に制御信号を出力する(図4、ステップS140)。これにより油圧ショベルの作業休止時間を利用したフィルタの再生制御(フィルタに溜まったPMの燃焼)が開始される。一方、作業休止スイッチ13が押されても、再生必要時間が設定した作業休止時間を超えていない場合は、再生制御は開始されない(図4、ステップS120→S100)。再生制御始後、設定した作業休止時間が経過すると、再生制御は終了する(ステップS160→S170及びS180)。
【0061】
また、一旦、再生制御を開始した場合に、次のダンプが予定より早く到着し、設定した作業休止時間よりも早めに作業を再開したい場合は、オペレータは操作レバー装置(リモコン弁)を操作すると、自動で再生制御を停止し(ステップS150→S170及びS180)、作業を開始することができる。
【0062】
一方、エンジン制御装置4は、図示はしないが、自動再生制御の機能も有し、油圧ショベルの作業中は自動再生制御によりフィルタに堆積したPMを燃焼させる処理を行う。この自動再生制御では、例えば、圧力センサ14によりフィルタ装置11の前後差圧を検出してフィルタのPM堆積量を判定し、PM堆積量が閾値を超えるとエンジン主噴射後の膨張行程におけるポスト噴射(追加噴射)を行い、自動で排気ガスの温度を上昇させてフィルタに堆積したPMを燃焼させる。
【0063】
また、上記のように作業休止時間を利用した再生制御と自動再生制御を行ったにも係わらず、フィルタのPM堆積量が増加し、フィルタ装置11の前後差圧が手動再生制御の再生開始閾値ΔPULを超えた場合は、表示装置16に警告が表示される(ステップS200→S210)。表示装置16に警告が表示されるとオペレータは作業を中止し、再生開始スイッチ18を操作(ON)する。これによりエンジン1に油圧的な負荷をかけた状態で再生制御が開始される(図8、ステップS220→S240)。その後、フィルタ装置11の前後差圧が再生終了閾値ΔPDLよりも小さくなると、手動再生制御が終了する(ステップS250→S260及びS270)。
<効果>
以上のように本実施の形態によれば、次のような効果が得られる。
【0064】
油圧ショベルは車体を停止して作業を行う機械である。その作業は、エンジン1で油圧ポンプ31を駆動し、油圧ポンプ31の吐出油でブームシリンダ114、アームシリンダ115等のアクチュエータを駆動することで行う。このような油圧ショベルで手動再生制御を行うときは、上記のように作業を中止しなければならない。しかし、手動再生制御における再生開始閾値ΔPULは、フィルタ装置11のフィルタの溶損防止のための限界値であり、手動再生制御の時間は比較的長い。その結果、手動再生制御が一旦開始されると、その間は一切の作業ができないため、作業効率が著しく低下する。
【0065】
本実施の形態では、上記のように油圧ショベルのような作業機械特有の作業休止時間を利用してその間に再生制御を行い、フィルタ装置11のフィルタに堆積したPMを燃焼させる。油圧ショベル等の作業機械の作業休止時間はエンジン負荷が軽いため、フィルタに堆積したPMの自然燃焼の効果が低くなり、フィルタにPMが溜まりやすい時間でもある。このフィルタにPMの溜まりやすい時間に再生制御を行ってフィルタに堆積したPMを燃焼させ減らすことにより、効率良くフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して減少さることができる。そして、そのように作業休止時間にフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して減少させることにより、フィルタに溜まる粒子状物質の堆積量の増加が抑制されるため、手動再生制御の要求頻度(回数)が減り、作業中に手動再生制御を強いられることを未然に防ぎ、作業効率が低下することを防止することができる。
【0066】
また、作業休止時間に再生装置を作動させるとき、フィルタ装置11のフィルタに溜まったPM堆積量が僅かであるときにも再生制御を行うと、再生装置の作動頻度が増加し、燃費が悪化する可能性がある。本実施の形態では、作業休止スイッチ13が押されても再生必要時間が設定した作業休止時間を超えていない場合は、再生制御は開始しないため、再生装置が頻繁に作動することによる燃費の低下を回避することができる。
【0067】
更に、一旦、再生制御を開始した場合でも、設定した作業休止時間よりも早めに次のダンプが到着した場合は、オペレータは操作レバー装置(リモコン弁)を操作すると、自動で再生制御が停止するため、再生制御の状態を気にせずに、自由に作業を開始することができる。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図9を用いて説明する。図9は、本実施の形態における車体制御装置21の処理内容を示すフローチャートであり、図4に示した手順と同じものには同じ符号を付している。図4との相違点はステップS100及びS120の代わりにステップS100A及びS120Aを設け、堆積量を比較して再生装置の作動を開始させることである。
【0068】
すなわち、本実施の形態では、ステップS100Aでは、差圧センサ12によって検出したフィルタ装置11の前後差圧(以下DPF差圧という)からフィルタ装置11のフィルタに堆積した現在の粒子状物質の堆積量(以下PM堆積量という)を計算するとともに、設定した作業休止時間で燃焼可能なPM堆積量を計算する。この計算は、図6に示すようなPM堆積量と再生必要時間の関係の逆関数を用いて容易に行うことができる。また、ステップS120Aでは、再生必要時間が設定した作業休止時間を超えているかどうかを判定する代わりに、ステップS100Aで計算した現在のPM堆積量が同じくステップS100Aで計算した設定した作業休止時間で燃焼可能なPM堆積量を超えているかどうかを判定する。そして、その判定が肯定されると、再生制御開始信号をエンジン制御装置4に出力し(ステップS130)、かつ電磁切換弁15に制御信号(ON信号)を出力して電磁切換弁15を閉位置に切り換え(ステップS140)、エンジン1に油圧的な負荷をかけた状態でのエンジン制御装置4再生制御を開始する。
【0069】
このように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<第3の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図10を用いて説明する。図10は、本実施の形態における車体制御装置21の処理内容を示すフローチャートであり、図4に示した手順と同じものには同じ符号を付している。図4との相違点はステップS110の代わりにステップS110Bを設け、圧力センサ14の検出値を用いて作業機械が作業休止状態に入ったことを知らせることである。
【0070】
すなわち、本実施の形態では、作業休止スイッチ13は設けず、図10のステップS110Bにおいては、作業停止後、その状態が所定時間(例えば1分)経過したかどうかを判定し、所定時間経過すると作業休止状態に入ったと判断する。作業停止かどうかの判定は、圧力センサ14の検出信号を入力し、モコン弁45〜47を含む全てのリモコン弁の制御パイロット圧の有無(操作レバー装置の操作の有無)を検出することにより行う。すなわち、制御パイロット圧無しが検出されると作業停止と判定し、その後の経過時間をカウントする。
【0071】
このように構成した本実施の形態においても油圧ショベルが作業休止状態に入ったことを知らせることができ、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。また、本実施の形態では、ダンプ待ちに入った場合にいちいちオペレータが作業休止スイッチを操作しなくても、作業休止時間を利用した再生制御を自動で開始することができるので、オペレータ利便性が向上する。
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態を図1及び図11を用いて説明する。本実施の形態は、再生制御の作業休止時間をオペレータが入力し設定する代わりに、情報蓄積装置に蓄積した運転データを用いて計算し設定するものである。
【0072】
図1において、情報蓄積装置22は、前述したように、通信ライン25を経由してエンジン制御装置4、車体制御装置21、モニタ制御装置23等に入力される各種信号を運転データとして収集し、データベースに時系列的に記憶、蓄積する。収集する運転データには車体制御装置21に入力される圧力センサ14の検出データが含まれる。
【0073】
車体制御装置21は、そのような情報蓄積装置22に蓄積した運転データを用いて再生制御の作業休止時間を計算し、設定する。図11は、そのときの車体制御装置21の処理内容を示すフローチャートである。
【0074】
図11において、車体制御装置21は、前回の設定処理から所定時間(例えば1日)経過したかどうかを判定し(ステップS300)、所定時間経過すると、通信ライン25を経由して情報蓄積装置22から油圧ショベルの作業休止時間に係わる圧力センサ14の検出データ等の運転データを取得する(ステップS310)。次いで、その運転データを解析して作業休止時間の平均値を算出し(ステップS320)、その平均値を再生制御の作業休止時間として記憶し、設定する(ステップS330)。
【0075】
本実施の形態によっても第1の実施の形態と同様の効果が得られるとともに、再生制御の作業休止時間をオペレータがいちいち入力しなくても、自動で計算し設定することができるので、オペレータの利便性が向上する。
<その他の変形例>
以上に本発明の実施の形態を説明したが、本発明はそれらの実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神の範囲内で種々の変形が可能である。以下にその変形例を列挙する。
【0076】
1.上記実施の形態では、再生制御のための燃料噴射をエンジン主噴射後の膨張行程におけるポスト噴射(追加噴射)により行ったが、排気管に再生制御用の燃料噴射装置を設け、この燃料噴射装置を作動させることにより再生制御のための燃料噴射を行ってもよい。
【0077】
2.上記実施の形態では、休止時間利用再生制御及び手動再生制御の再生開始信号及び再生停止信号を生成する制御演算を車体制御装置21で行ったが、それらの制御演算をエンジン制御装置4で行ってもよい。
【0078】
3.上記実施の形態では、フィルタのPM堆積量の計算を差圧センサ12で検出したDPF差圧を用いて行ったが、エンジン1の状態量を検出して演算してもよい。例えば、エンジン回転数を検出する回転センサ、エンジン負荷を検出する負荷センサ、排気ガス温度を検出する温度センサ等を設け、これらの出力を読み込んでPM排出量We、PM燃焼量Wcを算出し、Wa=We−WcからPM堆積量Waを求め、このPM堆積量Waに前回算出値Wa1を加算することによっても、フィルタのPM堆積量を求めることができる。
【0079】
4.上記第1の実施の形態では、作業休止スイッチ13が操作されたとき、再生必要時間と設定した作業休止時間とを比較し、再生必要時間が設定した作業休止時間を超えていると作業休止時間を利用した再生制御を開始したが、再生必要時間と比較する値は設定した作業休止時間に厳密に一致していなくてもよい。例えば、再生必要時間と比較する時間として、設定した作業休止時間の前後20%程度の値を設定しておき、再生必要時間がその値を超えたときに作業休止時間を利用した再生制御を開始してもよい。これによっても全く制限を設けない場合に比べて、作業休止時間を利用した再生制御の頻度を低減し燃費の低下を防止することができる。第2の実施の形態においても、同様であり、フィルタに溜まった現在の粒子状物質の堆積量と比較する値は設定した作業休止時間で再生装置によって燃焼可能な粒子状物質の堆積量の前後20%程度の値を設定しておき、そのフィルタに溜まった現在の粒子状物質の堆積量がその値を超えたときに作業休止時間を利用した再生制御を開始してもよい。
【0080】
5.上記実施の形態では、再生制御でエンジンに排気ガス温度上昇のための負荷をかけるのに油圧回路に電磁切換弁を設け、この電磁切換弁を閉位置に切り換えることエンジンに油圧的な負荷をかけたが、他の手段によりエンジンに負荷をかけてもよい。例えば、排気管に絞り弁を設け、この絞り弁で排気管の流路を絞ることによってもエンジンに負荷をかけることができる。
【0081】
6.上記実施の形態では、作業機械として油圧ショベルに本発明を適用したが、油圧ショベル以外の作業機械に本発明を適用してもよい。油圧ショベル以外の作業機械としては、例えば、ホイールショベル、クレーン車等があり、この場合も上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる油圧ショベル(作業機械)の排気ガス浄化システムを示す図である。
【図2】作業機械である油圧ショベルに搭載される油圧回路装置を示す図である。
【図3】図2に示す油圧回路装置を備えた油圧ショベルの外観を示す図である。
【図4】車体制御装置の作業休止時間利用再生制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図5】DPF差圧とPM堆積量の関係示す図である。
【図6】PM堆積量と再生必要時間の関係を
【図7】表示装置の操作部の構成と作業休止時間の入力手順を示す図である。
【図8】車体制御装置の手動再生制御の処理内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態における車体制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態における車体制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第4の実施の形態における車体制御装置が運転データから作業休止時間を計算するときの処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1 エンジン
2 排気管
3 マフラ
4 エンジン制御装置
11 フィルタ装置(DPF)
12 差圧センサ
13 作業休止スイッチ
14 圧力センサ
15 電磁切換弁
16 表示装置
17 操作部
18 手動再生開始スイッチ
21 車体制御装置
22 情報蓄積装置
23 モニタ制御装置
25 通信ライン
31 油圧ポンプ
32 パイロットポンプ
33 油圧モータ
34,35 油圧シリンダ
37〜39 流量制御弁
40 パイロット油圧源
43 電磁切換弁
44 パイロット油路
45〜47 リモコン弁
45a,45b;46a,46b;47a,47b パイロットライン
50 シャトル弁群
50a〜50f シャトル弁
51 センターバイパスライン
100 下部走行体
101 上部旋回体
105 旋回モータ
111 ブーム
112 アーム
113 バケット
114 ブームシリンダ
115 アームシリンダ
116 バケットシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気系に配置され、排気ガスの中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、このフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させ前記フィルタを再生する再生装置とを備える作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記作業機械の作業休止時間を予め設定する設定手段と、
前記作業機械が作業休止状態に入ったことを知らせる手段と、
前記作業機械が前記作業休止状態に入ったことが知らされたときに、前記設定した作業休止時間の間、前記再生装置を作動させる再生制御手段とを備えることを特徴とする作業機械の排気ガス浄化システム。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記再生制御手段は、前記フィルタに溜まった現在の粒子状物質の堆積量を前記再生装置によって燃焼除去するのに要する時間を計算し、前記作業機械が前記作業休止状態に入ったことが知らされかつ前記計算した時間が前記設定した作業休止時間よりも長いときに前記再生装置の作動を開始することを特徴とする作業機械の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
請求項1記載の作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記再生制御手段は、前記フィルタに溜まった現在の粒子状物質の堆積量と前記設定した作業休止時間で前記再生装置によって燃焼可能な粒子状物質の堆積量を計算し、前記作業機械が前記作業休止状態に入ったことが知らされかつ前記計算した粒子状物質の堆積量が前記計算した燃焼可能な粒子状物質の堆積量より多いときに前記再生装置の作動を開始することを特徴とする作業機械の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
請求項1記載の作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記作業機械が作業休止状態に入ったことを知らせる手段は、前記作業機械が作業休止状態に入ったときにオペレータにより操作される第1操作装置であることを特徴とする作業機械の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
請求項1記載の作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記作業機械は作業時に操作される操作レバー装置を有し、
前記作業機械が作業休止状態に入ったことを知らせる手段は、前記操作レバー装置の操作状態を検出する検出装置と、この検出装置の検出結果に基づいて前記作業機械が作業休止状態に入ったかどうかを判定する判定手段とを有することを特徴とする作業機械の排気ガス浄化システム。
【請求項6】
請求項1記載の作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記設定手段は、前記作業機械のオペレータにより操作され、前記作業機械の作業休止時間を入力する第2操作装置を有することを特徴とする作業機械の排気ガス浄化システム。
【請求項7】
請求項1記載の作業機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記作業機械は運転データを蓄積する情報蓄積装置を更に備え、
前記設定手段は、前記情報蓄積装置に蓄積した運転データを所定の時間間隔で解析し、その解析結果に基づいて前記作業機械の作業休止時間を計算する解析手段を有することを特徴とする作業機械の排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−121466(P2010−121466A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293582(P2008−293582)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】