説明

作業機械の電液駆動システム

【課題】 作業機械の構造体を駆動する液圧モータと電動機とを備えさせるとともに、動力源で駆動する液圧ポンプと電動機とを備えさせて、液圧と電気とにより効率的な運転ができる作業機械の電液駆動システムを提供すること。
【解決手段】 作動油の流量をコントロール弁6で調整して上部旋回体16を駆動する作業機械の電油駆動システムを、エンジン2で駆動する油圧ポンプ4と第一電動機5とを有する電油ポンプ3と、前記電油ポンプ3から供給する作動油で回転させる油圧モータ10と第二電動機11とを有する電油モータ9とによって構成し、前記電油ポンプ3の負荷と前記電油モータ9の負荷とから、前記第一電動機5と前記第二電動機11の動作状態を決定する制御装置7を備えているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械等に設けられている構造体を液圧モータと電動機とを用いて駆動する電液駆動システムに関し、例えば、油圧モータと電動機とを用いた電油駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル、クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ等の動力機械類(この明細書及び特許請求の範囲の書類では、これらの動力機械類(重機)を総称して「作業機械」という)が種々の分野で使用されている。例えば、油圧ショベルを例に説明すると、油圧ショベルは、下部走行体の上部に上部旋回体(構造体)が設けられ、この上部旋回体には、エンジンや運転席、バケットが先端に設けられたアーム、アームに連結されたブーム等が備えられており、大型の重量物になっている。この上部旋回体は、作業時に運転席のリモートコントロール弁(以下、「リモコン弁」という)を操作することによって下部走行体の上部で旋回させられ、アーム先端のバケットによって各種作業が行われる。
【0003】
また、このような作業機械において、近年、上部旋回体等の駆動装置として電動機を備えたものが提案されている。
【0004】
例えば、このような作業機械において、動力源であるエンジンで駆動する減速機に油圧ポンプと発電機兼電動機を並べて取り付け両者を駆動し、油圧ポンプからの作動油で油圧アクチュエータを駆動し、発電機で発電した電気をバッテリに蓄えておき、必要に応じて発電機兼電動機を電動機として動作させるようにしたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
また、他の先行技術として、動力源であるエンジンに油圧ポンプを取り付け、この油圧ポンプに減速機やカップリングを介して発電機兼電動機を備えさせ、エンジンの動力で駆動する油圧ポンプからの作動油で油圧シリンダや走行用油圧モータを駆動し、発電機で発電した電気をバッテリに蓄えて旋回電動機を駆動するようにしたものがある(例えば、特許文献2,3参照)。
【0006】
さらに、他の先行技術として、動力源であるエンジンと発電機を一体的に構成し、この発電機を介して駆動する油圧ポンプの作動油で油圧シリンダ等を駆動するとともに、上部旋回体を電動機で駆動するようにしたものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−237178号公報
【特許文献2】特開2003−9308号公報
【特許文献3】特開2007−218003号公報
【特許文献4】特開2002−275945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1では、油圧ポンプと発電機兼電動機を駆動する大型の減速機を要し、装置全体が大型化するとともに複雑になり、各機器の接続作業性や信頼性を保つのが難しい。しかも、各機器の構成点数が多いので、多くの製作費用等を要する。
【0009】
また、上記特許文献2,3の場合も、エンジンと油圧ポンプ又は発電機兼電動機との間にカップリング等を要するため、その構成等で装置全体が大型化するとともに複雑になり、各機器の接続作業性や信頼性を保つのが難しいとともに、多くの製作費用等を要する。
【0010】
さらに、上記特許文献4の場合には、エンジンと発電機とを一体化して小型化を実現したとしても、発電機と一体となったエンジンが専用品となり、各作業機械に応じて駆動装置の新規設計及び構成部品の製造が必要になり、多くの製作費用や製作時間等を要する。
【0011】
その上、これらの先行技術では、作業機械の構造体である旋回体を電動機のみで駆動する構成であるため、動力源で発電機を駆動して電気をバッテリに蓄えておかなければ旋回体を旋回させることができなくなる場合もあり、動力源による発電時間が多く、作業機械の全体動力を効率的に利用するのは難しい。
【0012】
そこで、本発明は、作業機械の構造体を駆動する液圧モータと電動機とを備えさせるとともに、動力源で駆動する液圧ポンプと電動機とを備えさせて、液圧と電気とにより効率的な運転ができ、コストダウンも図れる作業機械の電液駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、作動液の流量をコントロール弁で調整して構造体を駆動する作業機械の電液駆動システムであって、動力源によって駆動される液圧ポンプと第一電動機とを有し、前記作動液を供給する供給装置と、前記供給装置から供給される作動液で回転する液圧モータと第二電動機とを有し、前記構造体を駆動させる駆動装置と、前記供給装置の負荷と前記駆動装置の負荷とから、前記第一電動機と前記第二電動機との動作状態を決定する制御装置とを有している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「電動機の動作状態」は、電動機が「駆動機」として動作するか「発電機」として動作するか、のいずれの状態で動作するかをいう。これにより、動力源で駆動する液圧ポンプからコントロール弁を介して液圧モータに供給される液圧によって作業機械の構造体を駆動することができるとともに、第一電動機と第二電動機とによる発電又は駆動を効率的に行うことで、電気・液圧を使った効率の良い電油駆動システムを構成することができる。
【0014】
また、前記第一電動機は、動力源から伝達された動力を電気エネルギに変換する発電機機能と、前記電気エネルギを利用して液圧ポンプをアシスト駆動する駆動機機能とを有し、前記制御装置は、前記発電機機能で発電される電気を充電する充電部の充電状態と、前記第一電動機の動作状態とに基いて、該第一電動機を発電機及び駆動機のいずれで動作させるかを制御するようにしてもよい。このようにすれば、充電部の充電状態と第一電動機の動作状態とに応じて第一電動機を駆動機又は発電機として動作させることで効率的な運転ができる。
【0015】
さらに、前記第二電動機は、液圧モータの減速時の慣性エネルギを電気エネルギに変換する発電機機能と、前記電気エネルギを利用して液圧モータをアシスト駆動する駆動機機能とを有し、前記制御装置は、前記発電機機能で発電される電気を充電する充電部の充電状態と、前記第二電動機の動作状態とに基いて、該第二電動機を発電機及び駆動機のいずれで動作させるかを制御するようになっていてもよい。このようにすれば、充電部の充電状態と第二電動機の動作状態とに応じて第二電動機を駆動機又は発電機として動作させることで効率的な運転ができる。しかも、動作状態に応じて供給装置の第一電動機及び駆動装置の第二電動機の一方又は両方を発電機として動作させることで効率的なエネルギ回収をすることもできる。
【0016】
また、前記駆動装置は、前記液圧モータと第二電動機とが一体型であり、該第二電動機は、前記液圧モータの回転軸に接続された回転子と、該回転子の外周に配置された固定子とを有し、前記回転子は、前記液圧モータのケーシング外周と所定の隙間を設けて外囲するように配置され、該回転子と前記ケーシングとの間には、該回転子をケーシングに支持する軸受と、該回転子とケーシングとの隙間をシールするシール材が配置されていてもよい。このようにすれば、液圧モータの外周に第二電動機を配置して駆動装置をコンパクトに形成できるとともに、液圧モータのケーシング外周に隙間を設けて配置した第二電動機の回転子との間をシール材でシールするので、第二電動機に液圧モータから潤滑油等が入るのを防止して第二電動機の性能低下等を防ぐことができる。
【0017】
さらに、前記供給装置は、前記液圧ポンプと第一電動機とが一体型であってもよい。このようにすれば、動力源に液圧ポンプを接続する構造部分を従来と同様にして、従来の取付構造に大きな変更を加えることなく液圧ポンプと第一電動機とを有する供給装置を動力源に備えさせることができる。しかも、液圧ポンプと第一電動機とを有する供給装置を一体型の小型に形成することができ、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、作業機械の構造体を駆動する液圧モータと電動機、及び動力源で駆動する液圧ポンプと電動機とにより、液圧と電気とによって効率的に運転することができる作業機械の駆動システムを構成することが可能となる。
【0019】
また、液圧モータと電動機、又は液圧ポンプと電動機を一体的に構成することで機器を小型化してコストダウンを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る作業機械の電液駆動システムを示すブロック図である。
【図2】図1に示す電液駆動システムの油圧回路図である。
【図3】(a) 〜(d) は、図1に示す電液駆動システムの電液一体型供給装置の構成例を模式的に示す側面図である。
【図4】(a) 〜(c) は、図1に示す電液駆動システムの電液一体型供給装置の他の構成例を模式的に示す側面図である。
【図5】図1に示す電液駆動システムの電液一体型駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。以下の実施形態では、「作動液」として「作動油」を例に説明する。また、作業機械として、油圧シリンダ、走行用油圧モータ、及び上部旋回体等を有する油圧ショベルの例を説明する。さらに、以下の実施形態では、油圧ポンプに第一電動機を一体的に備えさせた電油一体型供給装置(以下、「電油ポンプ」という)と、油圧モータに第二電動機を一体的に備えさせた電油一体型駆動装置(以下、「電油モータ」という)とを備えた電油駆動システムを例に説明する。
【0022】
図1に示すように、この実施形態の電油駆動システム1は、動力源であるエンジン2と、このエンジン2で駆動する電油ポンプ3と、この電油ポンプ3の油圧ポンプ4から吐出される作動油を流量制御するコントロール弁6と、上記電油ポンプ3の第一電動機5と、この第一電動機5で発電された電気を制御装置7を介して充電する充電部8と、上記コントロール弁6からの作動油と制御装置7を介して供給される電気とで駆動する電油モータ9(電油旋回モータ)とを備えている。この電油モータ9は、後述するように、コントロール弁6からの作動油で駆動される油圧モータ10と、制御装置7を介して供給される電気で駆動される第二電動機11とを有している。
【0023】
上記コントロール弁6は、電油ポンプ3から供給される作動油が、例えば、ブーム伸縮用の油圧シリンダや走行用油圧モータ等15に供給されて、これらが駆動される。また、コントロール弁6を介して供給される作動油で電油モータ9も駆動され、この電油モータ9で上部旋回体16が旋回駆動される。
【0024】
また、上記電油モータ9は、上部旋回体の慣性等を利用して発電する機能を備えており、この発電した電気が制御装置7を介して充電部8に充電されるようになっている。
【0025】
さらに、充電部8に充電された電気は、必要に応じて、上記制御装置7を介して、上記電油モータ9の第二電動機11を駆動するアシスト駆動動力、上記電油ポンプ3の第一電動機5を駆動するアシスト駆動動力として利用されるようになっている。
【0026】
図2に示すように、この実施形態における上記電油駆動システム1の油圧回路としては、上部旋回体の旋回方向及び旋回速度等の動作量を決定するリモコン弁20に設けられた傾倒ハンドル21を傾倒する方向、角度、及び速度等によって旋回体の旋回方向及び速度が決定される。リモコン弁20の操作量は、圧力センサ22で検出された左右ポートの差圧が、旋回体を回転させるための速度指令(回転数指令)として制御装置7に入力される。一方、上記電油モータ9の油圧モータ10は、上記電油ポンプ3の油圧ポンプ4から吐出される作動油によっても駆動され、上記油圧ポンプ4からの作動油がコントロール弁6を介して油圧モータ回路23の油路24,25に供給され、これらの油路24,25から油圧モータ10の吸入ポートに作動油が供給される。コントロール弁6は、油圧モータ回路23に供給される作動油流量を制御している。油圧モータ10の吸入ポートと吐出ポートは、回転方向によって逆になる。
【0027】
また、この油圧モータ回路23には、油圧モータ10の減速時に、この油圧モータ10の吐出側において発生する損失を回避するための電磁リリーフ弁26が設けられている。この電磁リリーフ弁26により、油圧モータ10の減圧時に開放することで油圧モータ10の慣性エネルギを利用して第二電動機11で効率良く回生電力を回収することができる。電磁リリーフ弁26は、油圧モータ10の正回転、及び逆回転時に作動油が流れる方向が異なるので、油路24,25のそれぞれの方向に向けて設けられている。さらに、油路24,25の間には、通常使用時の圧力を超えた場合にタンク29へ作動油を逃すように作動するリリーフ弁27と、油路24,25内の油の循環時に油量が減るとタンク29から油を吸引するチェック弁28とが設けられている。
【0028】
また、この実施形態では、上記コントロール弁6による作動油量を制御するために、このコントロール弁6のパイロットポート30(旋回セクション)に電磁減圧弁31が設けられている。この電磁減圧弁31には、一次圧として上記リモコン弁20の二次圧が導かれている。
【0029】
この電磁減圧弁31によるコントロール弁6の制御は、上記リモコン弁20の操作量に基いた作動油量が油圧モータ10に供給されるように、制御装置7からの開度制御信号に基いて行われる。この制御装置7による電磁減圧弁31の開度制御は、上記リモコン弁20の操作量に基いて、リモコン弁20から供給されるパイロット圧油(二次圧)を電磁減圧弁31で減圧したパイロット圧でコントロール弁6を制御することによって行われる。
【0030】
さらに、上記油圧モータ10の吸入ポートと吐出ポートには圧力センサ35がそれぞれ設けられており、これらの圧力センサ35で検出された圧力の差圧が差圧フィードバックとして制御装置7に入力されている。この差圧フィードバックにより、制御装置7内で油圧モータ10の発生トルクが推定される(負の信号の場合は、逆トルク)。
【0031】
また、上記第二電動機11は、上記制御装置7を介して電気を蓄える充電部8と接続されている。制御装置7は、充電部8と第二電動機11との間で電気の授受を行うようになっており、上部旋回体を回転駆動するために油圧モータ10が加速する時には、油圧モータ10と協動する第二電動機11へ電気を供給するよう放電し、油圧モータ10が減速する時には、油圧モータ10を制動するよう第二電動機11に回生作用を生じさせ、得られた回生電力が充電されるようになっている。このように、上記制御装置7は、油圧モータ10の加速時においては、油圧モータ10と協動する第二電動機11へ回転指令を出し、油圧モータ10の減速時においては、油圧モータ10を制動するよう第二電動機11に回生指令を出している。
【0032】
さらに、第二電動機11には回転数センサ36が設けられており、この回転数センサ36によって検出された回転数が速度フィードバックとして上記制御装置7に入力されている。この速度フィードバックにより、制御装置7内でリモコン弁20からの速度指令(回転数指令)と実回転数の差から加速度が求められる。
【0033】
一方、上記電油ポンプ3の第一電動機5にも回転数センサ37が設けられており、この回転数センサ37によって検出された回転数が回転数フィードバックとして上記制御装置7に入力されている。この回転数フィードバックにより、油圧ポンプ4の正確な吐出量が制御装置7内で求められる。また、制御装置7からは、油圧ポンプ4に対して傾転制御の傾転指令と、エンジン2に対して回転数指令とが出されるようになっている。
【0034】
そして、上記制御装置7は、リモコン弁20の操作量に基く差圧信号の速度指令(回転数信号)、油圧モータ10の差圧信号に基く差圧フィードバック(トルク信号)、第二電動機11の回転数信号に基く速度フィードバック(実回転数)、及び第一電動機5の回転数信号に基く回転数フィードバック(実吐出量)とに基いて、電油モータ9に必要なトルクが得られるように、第二電動機11を回転させるとともに、第二電動機11のトルク不足分を補うように電磁減圧弁31へ開度制御信号を送ってコントロール弁6を制御する。更に、上記制御装置7は、必要に応じて油圧ポンプ4の傾転制御と第一電動機5の動作状態を制御する。
【0035】
また、この制御装置7によるコントロール弁6の電磁減圧弁31を制御する方法としては、リモコン弁20が操作されて加速と判断した際には、充電部8に第二電動機11の運転が可能な電気エネルギが蓄積されている場合は、この電気エネルギで優先的に第二電動機11を駆動し、トルクが不足する分が上記したように制御されるコントロール弁6を介して供給される作動油で駆動される油圧モータ10によって補われる。
【0036】
一方、リモコン弁20が操作されて減速と判断した際には、第二電動機11に回生作用を行わせて慣性エネルギが電気エネルギに変換されて回生電力が充電部8に充電される。また、エンジン2の余力がある場合などには、電油ポンプ3の第一電動機5が発電機として動作させられ、発電された電気が充電部8に充電される。
【0037】
このように、リモコン弁20からの信号と、電油ポンプ3及び電油モータ9からの信号に基いて、制御装置7でコントロール弁6と第一電動機5及び第二電動機11を制御することができるので、各機器の動作状況に応じて、電油モータ9及び電油ポンプ3を効率良く制御することが可能となり、エネルギ効率の向上を図った電油駆動システム1を構成することができる。つまり、電油ポンプ3及び電油モータ9の動作状態に応じて、制御装置7でコントロール弁6の電磁減圧弁31を制御することで作動油量を調整するとともに、第一電動機5と第二電動機11とに対して発電動作又は駆動動作をさせることにより、電油駆動システム1において電気・液圧を使った効率の良い運転をすることができる。
【0038】
図3に示すように、上記電油ポンプ3(電油一体型供給装置)の構成例としては、例えば、2つの油圧ポンプを直列に配置している場合、(a) に示す例では、油圧ポンプ4のエンジン2側(図の左方)に第一電動機5が設けられ、その回転子41が回転軸40に設けられ、その回転子41の外周に固定子42が配置される。また、(b) に示す例では、2つの油圧ポンプ4の間に第一電動機5が設けられ、その回転子41が回転軸40に設けられ、その回転子41の外周に固定子42が配置される。さらに、(c) に示す例では、油圧ポンプ4の反エンジン側に第一電動機5が設けられ、その回転子41が延設された回転軸40に設けられ、その回転子41の外周に固定子42が配置される。また、(d) に示す例では、油圧ポンプ4に設けられている動力取出し機構(Power take-off;以下、「PTO」という)に第一電動機5が接続されており、PTO軸43に回転子41が接続され、その回転子41の外周に固定子42が配置される。
【0039】
また、図4に示すように、上記電油ポンプ3(電油一体型供給装置)の他の構成例としては、例えば、2つの油圧ポンプ4を並列に配置している場合、(a) に示す例では、油圧ポンプ4のエンジン2側(図の左方)に第一電動機5が設けられ、その回転子41が回転軸40に設けられ、その回転子41の外周に固定子42が配置される。また、(b) に示す例では、油圧ポンプ4の反エンジン側に第一電動機5が設けられ、その回転子41が延設された回転軸40に設けられ、その回転子41の外周に固定子42が配置される。さらに、(c) に示す例では、油圧ポンプ4に設けられているPTOに第一電動機5が接続されており、PTO軸43に回転子41が接続され、その回転子41の外周に固定子42が配置される。
【0040】
さらに、図3,4に示すような構成にすれば、エンジン2との取付構造を従来と大きく変更することなく油圧ポンプ4に第一電動機5を備えさせることができるので、例えば、稼働中の作業機械における油圧ポンプを電油ポンプ3(電油一体型駆動装置)に取替えることにより、容易に駆動系における燃料消費量を抑えた効率の良い運転が可能となる。
【0041】
図5に示すように、上記電油モータ9(電油一体型駆動装置)としては、この実施形態では、上部旋回体を旋回させる歯車51が設けられた減速機50に連結されており、減速機50の入力軸52に動力伝達する出力軸70を回転させる第二電動機11と、この出力軸70と同軸上に配置されている回転軸60を回転させる油圧モータ10とが備えられている。この例の減速機50は、取付フランジ53によって機器側に取り付けることができるようになっている。
【0042】
上記油圧モータ10は、定容量形の斜板式ピストンモータである。この油圧モータ10は、上記回転軸60と、シリンダブロック61と、複数のピストン62と、斜板63とを備え、ケーシング64に収容されている。回転軸60は、上記出力軸70方向一端部が突き出た状態でケーシング64内に配置され、両端部が軸受65によってケーシング64に回転可能に支持されている。また、回転軸60の他端部側には、円筒状に形成された上記シリンダブロック61がスプライン結合などで一体的に回転するように嵌挿されている。このシリンダブロック61には、周方向に等間隔で複数のピストン室66が形成されている。各ピストン室66は、上記斜板63方向一端側のシリンダブロック61が開口し、他端側がシリンダポート67を介してシリンダブロック61の他端にて開口している。各ピストン室66には、上記斜板63方向から上記ピストン62が挿入されている。
【0043】
ピストン62は、ピストン室66内を往復運動し、一端部の球面状に形成された外表面が、斜板63に配置されたシュー68に取り付けられている。斜板63は、シリンダブロック61よりも回転軸60の出力軸70方向部に配置され、回転軸60の軸線Lに対して所定の傾斜角でケーシング64に設けられている。
【0044】
このような油圧モータ10によれば、吸入ポートを介してピストン室66に作動油が供給され、供給された作動油が吐出ポートを介してピストン室66から吐出されることで、ピストン62が往復運動する。そして、斜板63が所定の傾斜角で傾いているため、ピストン62が往復運動すると、シュー68が斜板63上を滑動し、シリンダブロック61が軸線L回りに回転する。シリンダブロック61は、回転軸60と一体的に回転するようになっているため、このシリンダブロック61の回転によって回転軸60も一体的に回転する。
【0045】
そして、このように構成される油圧モータ10に、第二電動機11が一体的に設けられている。第二電動機11は、所謂三相同期電動機であり、この第二電動機11は、上記出力軸70と、回転子71と、固定子72とを備え、これらがハウジング73内に収容されている。ハウジング73は、有底円筒状に形成され、油圧モータ10のケーシング64の外周に位置するように設けられている。ケーシング64の外周面の軸線方向中間部には、半径方向外方に突出する外向きフランジ部69が全周にわたって形成され、この外向きフランジ部69にハウジング73の開口端部74が固定されている。
【0046】
このようにして、油圧モータ10の回転軸60が突出している側の部分を上記出力軸70と同一軸心でハウジング73内に収容し、これらをスプライン結合などで一体回転するようにするとともに、第二電動機11が油圧モータ10を外囲するように配置して、油圧モータ10の外周に第二電動機11を位置させて一体的に設けている。
【0047】
また、上記ケーシング64の出力軸70方向端部には、外周と所定の隙間を設けて上記回転子71の支持部75が軸受80によって支持されている。この実施形態の回転子71は、支持部75が上記出力軸70と一体的に形成されており、この出力軸70部分も軸受81によってハウジング73に支持されている。
【0048】
そして、上記軸受80の第二電動機方向(固定子方向)には、回転子71の支持部75とケーシング64との隙間をシールするシール材82が配設されている。このシール材82を軸受80の第二電動機方向に配設することにより、油圧モータ10内の油が軸受80を介して第二電動機11の回転子71と固定子72との間に漏れ出ないようにしている。また、上記軸受81の第二電動機方向にもシール材83が配設されている。このシール材83を軸受81の第二電動機方向に配設することにより、上記減速機50内の油が軸受81を介して第二電動機11の回転子71と固定子72との間に漏れ出ないようにしている。このようにすることで、第二電動機11の回転子と固定子72との間に油が漏れ出て電動機としての性能が低下するのを防いでいる。
【0049】
このような電油モータ9によれば、油圧モータ10に第二電動機11をコンパクトに配置することができ、部品点数の削減によるコストダウンが図れる。また、油圧モータ10の油が第二電動機11内に漏れ出ることがないので、油圧モータ10及び第二電動機11の効率を下げることなく運転できる。さらに、油圧モータ10と第二電動機11の駆動比率等を効率良く制御することにより、エネルギ効率の向上を図ることができる。
【0050】
以上のように、上記電油駆動システム1によれば、油圧ポンプ4と第一電動機5とを備えた電油ポンプ3(供給装置)、及び油圧モータ10と第二電動機11とを備えた電油モータ9(駆動装置)とにより、上部旋回体等を有する作業機械の動作状況等に応じて、制御装置7で油圧ポンプ4と第一電動機5、コントロール弁6、及び油圧モータ10と第二電動機11を選択的に制御することができるので、各機器の動作状況等に応じて、電油ポンプ3及び電油モータ9を効率良く動作させることが可能となり、エネルギ効率の向上を図った電油駆動システム1を構成することができる。
【0051】
しかも、電油モータ9の第二電動機11が不能になった場合でも、油圧モータ10による上部旋回体等の駆動は可能であり、信頼性の高い電油駆動システム1を構成することができる。また、電油ポンプ3及び電油モータ9を小型化して一体形成することにより、信頼性が高く低コストの電油駆動システム1を構成することもできる。
【0052】
なお、上記実施形態では、作業機械として、油圧モータ10、走行用油圧モータ、及び上部旋回体等を有する油圧ショベルの例を説明したが、電液供給装置及び電液駆動装置を用いる作業機械であれば同様に適用でき、作業機械は上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
また、上記実施形態では、電油ポンプ3及び電油モータ9のいずれも一体型で構成した例を示したが、油圧ポンプ4と第一電動機5及び油圧モータ10と第二電動機11とをそれぞれ並設したような構成であってもよく、一体型に限定されるものではない。
【0054】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る電液駆動システムは、構造体を油モータと電動機とで駆動するように構成された作業機械において利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 電油駆動システム(電液駆動システム)
2 エンジン(動力源)
3 電油ポンプ(供給装置)
4 油圧ポンプ
5 第一電動機
6 コントロール弁
7 制御装置
8 充電部
9 電油モータ(駆動装置)
10 油圧モータ
11 第二電動機
22,35 圧力センサ
36,37 回転数センサ
60 回転軸
62 ピストン
63 斜板
64 ケーシング
65 軸受
70 出力軸
71 回転子
72 固定子
73 ハウジング
82,83 シール材
L 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液の流量をコントロール弁で調整して構造体を駆動する作業機械の電液駆動システムであって、
動力源によって駆動される液圧ポンプと第一電動機とを有し、前記作動液を供給する供給装置と、
前記供給装置から供給される作動液で回転する液圧モータと第二電動機とを有し、前記構造体を駆動させる駆動装置と、
前記供給装置の負荷と前記駆動装置の負荷とから、前記第一電動機と前記第二電動機との動作状態を決定する制御装置と、を有する作業機械の電液駆動システム。
【請求項2】
前記第一電動機は、動力源から伝達された動力を電気エネルギに変換する発電機機能と、前記電気エネルギを利用して液圧ポンプをアシスト駆動する駆動機機能とを有し、
前記制御装置は、前記発電機機能で発電される電気を充電する充電部の充電状態と、前記第一電動機の動作状態とに基いて、該第一電動機を発電機及び駆動機のいずれで動作させるかを制御する請求項1に記載の作業機械の電液駆動システム。
【請求項3】
前記第二電動機は、液圧モータの減速時の慣性エネルギを電気エネルギに変換する発電機機能と、前記電気エネルギを利用して液圧モータをアシスト駆動する駆動機機能とを有し、
前記制御装置は、前記発電機機能で発電される電気を充電する充電部の充電状態と、前記第二電動機の動作状態とに基いて、該第二電動機を発電機及び駆動機のいずれで動作させるかを制御する請求項1又は請求項2に記載の作業機械の電液駆動システム。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記液圧モータと第二電動機とが一体型であり、
該第二電動機は、前記液圧モータの回転軸に接続された回転子と、該回転子の外周に配置された固定子とを有し、
前記回転子は、前記液圧モータのケーシング外周と所定の隙間を設けて外囲するように配置され、
該回転子と前記ケーシングとの間には、該回転子をケーシングに支持する軸受と、該回転子とケーシングとの隙間をシールするシール材が配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械の電液駆動システム。
【請求項5】
前記供給装置は、前記液圧ポンプと第一電動機とが一体型である請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業機械の電液駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−41978(P2012−41978A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183428(P2010−183428)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】