説明

作業車の制御装置

【課題】過捕集状態での作業継続によって排気ガス浄化装置の故障が発生するのを防止することが可能な構成の作業車の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置2は、エンジンEを有する車体と、エンジンEの駆動力を取り出すパワーテイクオフ機構PTOと、エンジンEから排出された排気ガスに含まれる可燃性微粒子を捕集するフィルタを有し、このフィルタを再生可能な排気ガス浄化装置と、可燃性微粒子の捕集推定量を検出する圧力センサ63,64と、これら圧力センサ63,64により検出された捕集推定量が所定量を超えた場合に警告信号を出力する電子制御ユニットECUとを備えて構成される。そして、コントローラ70の規制部73は、パワーテイクオフ機構PTOがオン作動された状態において、電子制御ユニットECUから警告信号が出力された場合に、エンジンEの作動を停止させるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の制御装置に関し、さらに詳細にはエンジンから排出される排気ガスを清浄化する排気ガス浄化装置を備えた作業車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車は、一般に走行可能な車体上に昇降装置(例えば、ブーム装置等)を介して作業台を備えており、昇降装置を作動させて作業台を所望の高所位置へ移動させるとともに、この作業台に搭乗したオペレータにより高所作業を行うことが可能である。また、車体の左右両側の前後には、車体の左右方向外側へ拡幅および車体の下方へ張り出し伸縮自在なアウトリガジャッキが配設されており、高所作業時には、このアウトリガジャッキが車体を安定的に持ち上げ支持可能になっている。このような高所作業車においては、車体に搭載されたディーゼルエンジンの駆動力をパワーテイクオフ機構(PTO)により取り出して油圧ポンプを駆動させ、この油圧ポンプから吐出する作動油の油圧により、昇降装置やアウトリガジャッキなどに備えられた油圧シリンダ等を作動させて、これら昇降装置やアウトリガジャッキを作動させるように構成されている。
【0003】
ところで近年、環境問題等に関連して排気ガス規制が強化されており、上記のような作業車においてもディーゼルエンジンから排出される排気ガス中のパティキュレート(PM:可燃性微粒子)を捕集する排気ガス浄化装置が設けられ、大気中へ排出されるパティキュレート量の低減が図られている。この排気ガス浄化装置は、そのフィルタ(パティキュレートフィルタ)内にパティキュレートが堆積するため、フィルタの目詰まりにより空気抵抗が増大しないうちに堆積したパティキュレートを適宜燃焼除去し、自動的にフィルタの再生を行うようになっている。ところがエンジンの作動条件(例えば、長時間の高所作業やアイドリング状態など)によっては自動再生が適正に完了しない場合がある。そのため、作業台に搭乗した作業者に対してフィルタの強制再生(手動再生)を促すために、作業台に備えられた警報装置(警報ランプや警報ブザー等)を作動させて警報を発するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。これによりオペレータは、警報装置が発した警報に気付くことで排気ガス浄化装置の強制再生操作を行って、フィルタ内で過捕集されたパティキュレートの燃焼除去を行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−19534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、排気ガス浄化装置がパティキュレートを過捕集して作業台内で警報装置が警報を発した場合でも、作業に集中するオペレータにとっては気が付かずに作業を続行してしまうおそれもあり、その結果として排気ガス浄化装置に過度の負担が掛かり故障を起こすという事例が発生している。排気ガス浄化装置に故障が生じると、エンジンを適正に作動させることができなくなるため(エンジン回転数を上昇させることができず低速域での作動となるため)、その後の作業の継続や走行に支障がでるだけでなく、排気ガス浄化装置の交換や修理によって多額の損害を被るという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、過捕集状態での作業継続によって排気ガス浄化装置の故障が発生するのを防止することが可能な構成の作業車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る作業車の制御装置は、エンジンを有する車体と、エンジンの駆動力を取り出すパワーテイクオフ機構と、車体に配設されてパワーテイクオフ機構により取り出されるエンジンの駆動力を用いて作動する作業装置(例えば、実施形態における旋回台20、ブーム30、および作業台40)と、パワーテイクオフ機構をオンオフ作動させるための操作を行うパワーテイクオフ操作手段(例えば、実施形態におけるPTO操作装置13)と、作業装置を作動させるための操作を行う作業装置操作手段(例えば、実施形態における上部操作装置43)と、エンジンの始動および停止を制御するとともに、作業装置操作手段からの操作信号に基づいて作業装置の作動を制御する作動制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ70)と、エンジンから排出された排気ガスに含まれる可燃性微粒子を捕集するフィルタを有し、フィルタに捕集された可燃性微粒子を燃焼除去してフィルタを再生可能な排気ガス浄化装置と、フィルタに捕集された可燃性微粒子の捕集推定量を検出する捕集量検出手段(例えば、実施形態における圧力センサ63,64)と、捕集量検出手段により検出された可燃性微粒子の捕集推定量が所定量を超えた場合に警告信号を出力する浄化装置制御手段(例えば、実施形態における電子制御ユニットECU)とを備え、作動制御手段は、パワーテイクオフ機構がオン作動された状態において、浄化装置制御手段から警告信号が出力された場合に、エンジンの作動を停止させるようになっている。
【0008】
なお、上記構成の作業車の制御装置において、作動制御手段は、浄化装置制御手段から警告信号が出力されているとき、作業装置操作手段から操作信号が出力されていない場合にエンジンの作動を停止させ、作業装置操作手段から操作信号が出力されている場合にはエンジンを継続して作動させ、当該操作信号の出力が解除されたときにエンジンの作動を停止させることが好ましい。
【0009】
また、上記構成の作業車の制御装置において、作動制御手段は、浄化装置制御手段から警報信号が出力されてから所定時間経過後にエンジンの作動を停止させることが好ましい。
【0010】
また、上記構成の作業車の制御装置において、エンジンを始動させるための操作を行うエンジン操作手段(例えば、実施形態におけるエンジン始動・停止スイッチ15)を備え、作動制御手段は、浄化装置制御手段から警告信号が出力されたとき、エンジンの作動を一旦停止させ、当該エンジン停止後においてエンジン操作手段によりエンジンの始動操作がされた場合には、当該警告信号が出力されてから所定時間経過後に、もしくは所定時間経過ごとにエンジンを再停止させる制御を行い、当該所定時間内においてのみエンジンの再始動を許容するように構成してもよい
【0011】
また、上記構成の作業車の制御装置において、エンジンを始動させるための操作を行うエンジン操作手段(例えば、実施形態におけるエンジン始動・停止スイッチ15)を備え、作動制御手段は、浄化装置制御手段から警告信号が出力されたとき、エンジンの作動を一旦停止させるとともに、当該エンジン停止後においてエンジン操作手段によりエンジンの始動操作がされるとエンジンの再始動を所定時間だけ許容するように構成してもよい。
【0012】
また、上記構成の作業車の制御装置において、エンジンの作動が停止された状態において、エンジン操作手段によりエンジンの始動操作がされるとエンジンの再始動が1度のみ許容され、その後においてはエンジンの始動操作が再びされてもエンジンの作動が規制されることが好ましい。
【0013】
また、上記構成の作業車の制御装置において、エンジンが作動されている状態において、パワーテイクオフ機構がオン作動される前に浄化装置制御手段から警告信号が出力された場合には、作動制御手段は、パワーテイクオフ機構がオン作動されたときにエンジンの作動を停止させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る作業車の制御装置によれば、排気ガス浄化装置のフィルタが過捕集状態に陥った場合に、作動制御手段がエンジンの作動を強制停止させるため、エンジンを無理に作動させて排気ガス浄化装置に過度の負担が掛かるのが回避されるため、排気ガス浄化装置の故障を未然に防止することが可能になる。
【0015】
さらに、浄化装置制御手段から警告信号が出力されているとき、作業制御手段が、作業装置操作手段から操作信号が出力されていない場合にエンジンの作動を停止させ、作業装置操作手段から操作信号が出力されている場合にはエンジンを継続して作動させ、当該操作信号の出力が解除されたときにエンジンの作動を停止させるように構成することで、フィルタが過捕集状態に陥って警告信号が出力された場合でも、作業装置が作動している状態ではエンジンを即停止させず、作業装置の作動が停止した状態となってからエンジンの作動を停止させるため、作業装置の急停止を防止して(例えば、作業装置として移動中の作業台が急停止することでオペレータが作業台内でバランスを崩すような事態が防止され)、より安全性の高い作業を実現させることが可能である。
【0016】
また、作動制御手段によって浄化装置制御手段から警報信号が出力されてから所定時間経過後にエンジンの作動を停止させる構成とすることで、エンジンが停止されるまでの間にオペレータは作業装置を安全な姿勢にする(例えば作業装置としてブームを格納状態にする)等の処置を行うことができるため、安全性を向上させることが可能である。
【0017】
さらに、浄化装置制御手段から警告信号が出力されたとき、作動制御手段が、エンジンの作動を一旦停止させ、当該エンジン停止後においてエンジン操作手段によりエンジンの始動操作がされた場合には、当該警告信号が出力されてから所定時間経過後に、もしくは所定時間経過ごとにエンジンを再停止させる制御を行い、当該所定時間内においてのみエンジンの再始動を許容するように構成することで、一旦はエンジンの作動を停止させてオペレータにフィルタが過捕集状態である旨を知らせた上で、その後においては所定時間内であればフィルタを強制再生せずともエンジンを時限的に再始動させて作業装置を安全な姿勢等にすることが可能となるため、安全性および作業性を向上させることができる。なお、エンジンの再始動後であっても、作動制御手段が所定時間経過に伴いエンジンの作動を再び停止させる制御を行うため、エンジンの作動時間が長時間に達して排気ガス浄化装置が故障する事態を防止できるようになっている。
【0018】
また、浄化装置制御手段から警告信号が出力されたとき、作動制御手段が、エンジンの作動を一旦停止させるとともに、当該エンジン停止後においてエンジン操作手段によりエンジンの始動操作がされるとエンジンの再始動を所定時間だけ許容するように構成することで、一旦はエンジンの作動を停止させてオペレータにフィルタが過捕集状態である旨を知らせた上で、その後においてはフィルタが過捕集状態であってもエンジン始動のタイミングによらずエンジン始動時から所定時間の間だけエンジンを時限的に作動させて作業装置を安全な姿勢等にすることができるため、安全性および作業性を向上させることができる。なおこの場合においても、作動制御手段が所定時間経過に伴いエンジンの作動を再び停止させる制御を行うため、エンジンの作動時間が長時間に達して排気ガス浄化装置が故障する事態を防止できるようになっている。
【0019】
さらに、エンジンの作動が停止された状態において、エンジン操作手段によりエンジンの始動操作がされるとエンジンの再始動が1度のみ許容され、その後においてはエンジンの始動操作が再びされてもエンジンの作動が規制される構成とすることで、フィルタが過捕集状態に至った後にエンジンが多数回に亘って始動と停止が繰り返された結果、エンジンの作動時間が長時間に達してしまうような事態が防止される。
【0020】
また、エンジンが作動されている状態において、パワーテイクオフ機構がオン作動される前に浄化装置制御手段から警告信号が出力された場合には、作動制御手段は、パワーテイクオフ機構がオン作動されたときにエンジンの作動を停止させる構成とすることで、エンジンの動力を作業装置側に取り出すためにパワーテイクオフ操作手段がオン操作されたとき、すなわち作業装置が安全姿勢(格納姿勢等)となっている作業開始のときに、エンジンの作動を停止させてフィルタの強制再生を促すことで、無用な作業装置の作動が回避され、作業の効率化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上記制御装置を備えた高所作業車を示す側面図である。
【図3】上記高所作業車に備えられた排気ガス浄化装置を説明するための内燃機関の概略構成図である。
【図4】上記制御装置によるエンジンの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態の制御装置によるエンジンの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。
【図7】本発明の第3実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第3実施形態の制御装置によるエンジンの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。
【図9】本発明の第4実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第4実施形態の制御装置によるエンジンの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。
【図11】第4実施形態に係る制御装置の変形例を示すブロック図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図13】第5実施形態の制御装置によるエンジンの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。
【図14】本発明の第6実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図15】第6実施形態の制御装置によるエンジンの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフであり、作業開始前から警告信号が出力されている場合である。
【図16】第6実施形態の制御装置によるエンジンの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフであり、作業開始後に警告信号が出力されている場合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2に本発明の第1実施形態に係る制御装置を備えた高所作業車を示しており、先ずこの図を用いて高所作業車の全体構成について説明する。
【0023】
高所作業車1は、ディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」と称する)Eによって駆動されるタイヤ車輪11,11,…を備えて運転キャブ12から走行運転操作が可能なトラック式車両の車体10と、車体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が支持された伸縮ブーム(以下、単に「ブーム」と称する)30と、このブーム30の先端部に取り付けられたオペレータ搭乗用の作業台40とを有して構成される。
【0024】
車体10上に設けられた旋回台20は、車体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている。車体10の内部には旋回モータ23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させることができる。ブーム30は、基端ブーム30a、中間ブーム30bおよび先端ブーム30cが入れ子式に組み立てられた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮作動により各ブーム30a,30b,30cを相対的に移動させて、ブーム30全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと旋回台20の支柱21との間には起伏シリンダ24が跨設されており、この起伏シリンダ24を伸縮作動させることによりブーム30全体を上下面内で起伏動させることができる。
【0025】
先端ブーム30cの先端部にはブームヘッド32が取り付けられており、このブームヘッド32により垂直ポスト33の下端部が枢支されている。垂直ポスト33は、先端ブーム30c先端あるいはブームヘッド32と垂直ポスト33との間に配設されたレベリング装置(図示しない)により揺動制御が行われ、ブーム30の起伏の如何に拘らずこの垂直ポスト33が常時垂直姿勢に保持される構成となっている。
【0026】
作業台40は略箱形状を呈しており、その外部に突出して設けられた作業台保持ブラケット41を介して垂直ポスト33の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット41の内部には首振りモータ42が設けられており、この首振りモータ42を回転作動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト33まわりに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト33は上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0027】
作業台40には、これに搭乗するオペレータが操作する上部操作装置43が設けられている。この上部操作装置43には、ブーム30の旋回、起伏、伸縮操作を行うためのブーム操作レバーと、作業台40の首振り操作を行うための作業台操作レバーとが設けられており、作業台40に搭乗したオペレータは上部操作装置40aの各操作レバーを操作することにより、ブーム30を起伏動、伸縮動させ、旋回台20(ブーム30)を旋回動させ、さらには作業台40を首振動させて、作業台40を所望もしくは任意の高所位置に移動させることができるように構成されている。なお、上部操作装置43の近傍には、エンジンEを始動および停止させる操作を行うためのエンジン始動・停止スイッチ15(図1を参照)が設けられている。
【0028】
車体10の前後左右各箇所には作業中の車体10を安定的に支持するためのアウトリガジャッキ50,50,…が設けられている。各アウトリガジャッキ50は、上下方向に延びたアウタポスト51と、アウタポスト51内にジャッキシリンダ54によって下方に向かって伸縮可能に挿入されたインナポスト52と、インナポスト52の下端に設けられたジャッキパッド53とから構成されており、ジャッキシリンダ54の伸縮作動により(ジャッキパッド53が接地するまで)アウタポスト51に対してインナポスト52を相対的に下方に張り出すことにより、車体10を持ち上げ状態に支持することができる。また、各アウトリガジャッキ50は車体10の側方に張り出させることも可能であり、より高い車体10の安定性が得られるようになっている。なお、車体10の後部には下部操作装置57が設けられており、下部操作装置57の操作に応じて、アウトリガジャッキ50が伸縮作動等するようになっている。
【0029】
また、車体10に備えられたエンジンEの動力は、図1に示すように、トランスミッションTMにより変速され、図示しないプロペラシャフトを介してタイヤ車輪11に伝達される。トランスミッションTMには、パワーテイクオフ機構PTOが組み込まれており、運転キャブ12内にあるPTO操作レバー13をオフ位置からオン位置に位置させる操作(オン操作)がなされときに、パワーテイクオフ機構PTOの機構部を作動させることにより、エンジンEによる駆動先をタイヤ車輪11から主油圧ポンプP1に切り換えることができる。なお、PTO操作レバー13の近傍には、PTO操作検出器(リミットスイッチ)14が設けられており、PTO操作レバー13がオン操作される(オフ位置からオン位置に操作される)と、このPTO操作検出器14が作動してエンジンEの駆動力の取り出し状態が検出される。エンジンEからパワーテイクオフ機構PTOを介して駆動される主油圧ポンプP1は、旋回モータ23、起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、首振りモータ42およびジャッキシリンダ54に作動油(圧油)を供給する。すなわち、エンジンEは車体10の走行動力および作業装置等である旋回台20、ブーム30、作業台40およびアウトリガジャッキ50の作動動力を供給する動力源である。
【0030】
エンジンEには、図3に示すように、エアクリーナ(図示しない)等によって清浄化された空気をエンジンEに供給する吸気管18や、エンジンE内で爆発燃焼された混合気を排気ガスとして車体10外部へと排出する排気管19が接続されている。このエンジンEの排気管19の途中には、図3に示すように、排気ガス浄化装置60が設けられている。
【0031】
排気ガス浄化装置60は、中央が排気管19よりも大径に形成された筒型のケーシング61を有しており、このケーシング61は排気管19と連通され、エンジンEからの排気ガスがケーシング61内を通過していくようになっている。このケーシング61内にはパティキュレートフィルタ62が収容保持されており、排気ガスがこのパティキュレートフィルタ62を通過するときに、エンジンEからの排気ガスに含まれる可燃性微粒子であるパティキュレート(以下、「PM」と称する)等が捕集されるようになっている。
【0032】
パティキュレートフィルタ62には、エンジンEの作動等に応じて排気ガス中のPMが堆積していくため、目詰まりにより排気抵抗が増大しないうちにPMを適宜に燃焼除去してパティキュレートフィルタ62の再生を図る必要がある。そのため、排気ガス浄化装置60は、後述する電子制御ユニットECUによって、例えば所定時間毎(所定作動時間毎)にパティキュレートフィルタ62に堆積したPMを燃焼除去してパティキュレートフィルタ62を自動再生するように制御されている。このパティキュレートフィルタ62の再生は、例えば、エンジンEに備えられた燃料噴射装置(インジェクタ)Iによるポスト噴射によって高温の排気ガスを導入してパティキュレートフィルタ62を昇温し、捕集されたPMを燃焼除去することで行われる。
【0033】
その一方で、エンジンEの作動条件(長時間の高所作業や長時間のアイドリングなど)によってはパティキュレートフィルタ62の自動再生が適正に完了せず、このパティキュレートフィルタ62に過度のPMが堆積している場合がある。その場合には、電子制御ユニットECUが詳細は次述するように所定量以上のPMが捕集されたことを検出して、運転キャブ12内に設けられた再生警告灯65を点灯させ、オペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生(手動再生)を促す。なお、このようなパティキュレートフィルタ62を備え、自動再生や強制再生を行うことによりフィルタ再生を行う排気ガス浄化装置は周知なものである。
【0034】
パティキュレートフィルタ62の上・下流側には、その上流側の排気ガスの圧力を検出する上流側圧力センサ63と、下流側の排気ガスの圧力を検出する下流側圧力センサ64とが設けられており、これらの圧力センサ63,64は電子制御ユニットECUに接続されている。電子制御ユニットECUは、エンジンEの燃料噴射装置(インジェクタ)I等、エンジン各部を制御するもので、例えばマイクロコンピュータを中心に構成されている。電子制御ユニットECUには、エンジンEにおいてエンジン各部の状態を判断するための種々のセンサからの信号が入力されており、この中には、上述した圧力センサ63,64からの信号も含まれる。
【0035】
電子制御ユニットECUは、圧力センサ63,64からの信号を入力してパティキュレートフィルタ62の上流側の圧力と下流側の圧力とを各々検出し、この上流側と下流側との圧力差からパティキュレートフィルタ62でのPMの捕集量(捕集推定量)を算出する。そして、電子制御ユニットECUによって、予め設定した所定量以上の(多量の)PMが捕集されたと判断された場合には、フィルタ目詰まりを解消するために捕集されたPMを強制的に燃焼除去してパティキュレートフィルタ62を強制再生する必要がある。そのため、このような場合には電子制御ユニットECUは後述するコントローラ70に警告信号を出力するとともに、運転キャブ12内の再生警告灯65を点灯させる警報作動を実行しその旨をオペレータに知らせ、オペレータに対して運転キャブ12内に設けられた強制再生スイッチ66の操作を促す。オペレータによって強制再生スイッチ66がオン操作されると、排気ガス浄化装置60の制御が、例えば、通常モード(自動モード)から強制再生モードに切り換わり、例えば、燃料噴射装置Iによるポスト噴射の噴射量(エネルギー投入量)が増加されることで、パティキュレートフィルタ62に堆積した大量のPMが燃焼除去され、パティキュレートフィルタ62が強制再生されてPMの捕集能力が回復することとなる。なお、このように電子制御ユニットECUが、パティキュレートフィルタ62の上・下流の圧力差からPMが所定量以上堆積したか否かを検出する手段は周知なものである。
【0036】
次に、上記高所作業車1に備えられた制御装置2について図1を追加参照して説明する。制御装置2は、上記のようなPTO操作検出器14、操作装置43,57、電子制御ユニットECU、圧力センサ63,64のほか、コントローラ70、油圧ユニット80、警報装置90を有して構成される。
【0037】
コントローラ70は、オペレータによって上部操作装置43や下部操作装置57の操作レバーが操作されたときに、これら操作装置43,57から出力される操作信号を受けて油圧ユニット80に制御信号を出力し、旋回台20、ブーム30、作業台40およびアウトリガジャッキ50の作動を制御する。油圧ユニット80は、コントローラ70からの制御信号に基づいて各アクチュエータ(旋回モータ23、起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、首振モータ42およびジャッキシリンダ54)への作動油の給排制御をする。
【0038】
そして、上記のように構成された旋回台20を旋回動させる旋回モータ23、ブーム30を起伏動させる起伏シリンダ24、ブーム30を伸縮動させる伸縮シリンダ31、作業台40を首振動(旋回動)させる首振モータ42、およびアウトリガジャッキ50を伸縮動させるジャッキシリンダ54の作動は、エンジンEによりパワーテイクオフ機構PTOを介して駆動される主油圧ポンプP1から吐出する作動油の給排制御をすることで行われる。
【0039】
油圧ユニット80は、オイルタンクT、主油圧ポンプP1のほか、起伏シリンダ24に対応する第1制御バルブV1、伸縮シリンダ31に対応する第2制御バルブV2、旋回モータ23に対応する第3制御バルブV3、首振モータ42に対応する第4制御バルブV4、およびジャッキシリンダ54に対応する第5制御バルブV5を有して構成される。これに伴って、起伏シリンダ24等の各アクチュエータに流れる作動油の給排制御は、コントローラ70からの制御信号に応じて、油圧ユニット80内の第1〜第5制御バルブV1,V2,V3,V4,V5の各スプール(図示しない)を電磁駆動して、これらのバルブ開度を制御することで行われる。
【0040】
コントローラ70は、ブーム作動制御部71、ジャッキ作動制御部72、および規制部73を有して構成される。このコントローラ70は、詳細図示を省略するバッテリおよびリレー等を有して構成される電源回路17を介してオンオフ制御される。この電源回路17は、エンジンEの作動している状態において、PTO操作レバー13がオン操作されたことをPTO操作検出器14により検出されたときに、上記リレーがオン方向に作動することでコントローラ70がバッテリと繋がり電源をオンにする構成となっている。また、コントローラ70は信号ラインを介して上記の電子制御ユニットECUと繋がっており、電子制御ユニットECUとの間で信号の送受信が可能である。
【0041】
ブーム作動制御部71は、油圧ユニット80に制御信号を出力して、油圧ユニット80内の第1〜第4制御バルブV1,V2,V3,V4のバルブ開度を制御し、ブーム30の起伏動、伸縮動、旋回動と、作業台40の首振動との制御を行う。またジャッキ作動制御部72は、油圧ユニット80に制御信号を出力して、油圧ユニット80内の第5制御バルブV5のバルブ開度を制御し、各アウトリガジャッキ50の伸縮動の制御を行う。
【0042】
規制部73は、電子制御ユニットECUがパティキュレートフィルタ62に所定量以上のPMが堆積したことを検出することで出力する警告信号が入力されると、エンジンEの作動を即停止させるように電子制御ユニットECUへエンジン停止信号を出力する。これにより、エンジン各部を制御する電子制御ユニットECUがコントローラ70から出力されるエンジン停止信号を受けてエンジンEを即停止させる制御を行う。
【0043】
またこのとき、規制部73は、上部操作装置43に備えられた警報装置90に警報作動信号を発信する。この警報装置90は、例えば警報ランプや警報ブザー等から構成されており、規制部73から警報作動信号が入力されると、ランプを点灯したり警報音を発生させたりする警報作動を行って(本実施形態では表示ランプとして点灯する場合を例示する)、オペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生が必要である旨を報知する。なお、パティキュレートフィルタ62が強制再生され、電子制御ユニットECUが圧力センサ63,64による検出情報によってパティキュレートフィルタ62が正常な状態に回復したと判断すると、この電子制御ユニットECUは警告信号を解除する(オフ信号とする)。規制部73は、電子制御ユニットECUからのオフ信号を受けて、警報装置90に警報解除信号を出力して警報作動を解除させる(ランプを消灯させる)。
【0044】
続いて、このように構成される制御装置2において、図4を追加参照して具体的に作用を説明する。なお、図4は制御装置2によるエンジンEなどの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。所望の高所作業(例えば、電線のメンテナンス作業等)を行うため、高所作業車1を運転して目的とする作業現場に到着したオペレータは、エンジンEの作動状態において、まずPTO操作レバー13をオン操作することになる。これにより主油圧ポンプP1はパワーテイクオフ機構PTOにより取り出されたエンジンEの動力を受けて回転作動し、コントローラ70の電源も電源回路17を介してオンになるため、その後、後部操作装置57の操作レバーを操作すれば、この操作レバーの傾動操作に応じた操作信号がコントローラ70のジャッキ作動制御部72に入力され、ジャッキ作動制御部72は、入力された制御信号に基づき第5制御バルブV5のバルブ開度を制御する。そうすると、エンジンEによりパワーテイクオフ機構PTOを介して駆動される主油圧ポンプP1から第5制御バルブV5を経てジャッキシリンダ54に作動油が供給され、下部操作装置57の操作に応じてアウトリガジャッキ50を接地状態まで張り出し作動させて車体10を安定支持させることができる。
【0045】
そして、作業台40に搭乗したオペレータは、上部操作装置43の各操作レバーの操作により作業台40を移動させて、任意の高所位置で作業を行う。このとき、上部操作装置43の操作レバーの操作量に応じた操作信号がコントローラ70のブーム作動制御部71に入力され、ブーム作動制御部71は、入力された操作信号に基づき、第1〜第4制御バルブV1,V2,V3,V4のバルブ開度を制御する。これにより主油圧ポンプP1から、第1〜第4制御バルブV1〜V4を介して各アクチュエータ(起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、旋回モータ31、および首振モータ42)に作動油が供給され、上部操作装置43の操作に応じて旋回台20、ブーム30、および作業台40が作動することになる。
【0046】
作業台40に搭乗したオペレータが高所作業を行っている際に、排気ガス浄化装置60のパティキュレートフィルタ62に所定量以上のPMが堆積したこと(過捕集状態)を電子制御ユニットECUが検出した場合、電子制御ユニットECUからコントローラ70へ警告信号(オン信号)が出力される(図4を参照)。これによりコントローラ70の規制部73が警報作動信号を出力することで上部操作装置43内の警報装置90が点灯し、オペレータに対して強制再生操作スイッチ66の操作が促される。このとき、オペレータが警報装置90の点灯に気づいた場合には、オペレータはパティキュレートフィルタ62の強制再生を行うべく、例えば地上にいる作業者(工事責任者)等に強制再生操作スイッチ66のオン操作を促すことで当該操作が行われる。そうすると、強制再生操作スイッチ66から電子制御ユニットECUに再生信号が入力されて昇温モードとなり、パティキュレートフィルタ62に堆積した多量のPMが燃焼除去される。パティキュレートフィルタ62が再生されたことを電子制御ユニットECUが検出した場合には、電子制御ユニットECUによって警告信号が解除されることで、コントローラ70の規制部73から警報解除信号が出力されて警報装置90が消灯される。
【0047】
一方、オペレータが警報装置90の点灯に気づかなかった場合には、オペレータはパティキュレートフィルタ62の強制再生を行うことなく、上部操作装置43の操作を継続もしくはこれから行おうとするが、コントローラ70の規制部73は、上述のように電子制御ユニットECUから出力された警告信号が入力されることで、エンジンEの作動を即停止させるように電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力する。これを受けて電子制御ユニットECUはエンジンEの作動を強制停止させる。そして、エンジンEの作動が停止されると、パワーテイクオフ機構PTOからエンジンEの動力が主油圧ポンプP1へ伝達されず、オペレータによって上部操作装置54の操作レバーが操作されても、主油圧ポンプP1からは起伏シリンダ24等の各アクチュエータへ作動油が供給されなくなるため、ブーム30等の作動が規制される。オペレータは、このようなエンジンEおよぶブーム30の作動停止を受けて(もしくは、この段階で警報装置90の点灯に気づいて)、パティキュレートフィルタ62の強制再生を行うべく、例えば、作業台40内から地上にいる作業者(工事責任者)等に強制再生操作スイッチ66のオン操作を促したり、エンジンEの動力を必要とせず電動モータM(図11を参照)によって独立して作動される非常用油圧ポンプP2(図11を参照)を用いて作業台40を降下させ、オペレータ自身で強制再生操作スイッチ66をオン操作する。
【0048】
そして、パティキュレートフィルタ62が強制再生され、電子制御ユニットECUによってパティキュレートフィルタ62が正常な状態に回復したと判断されると、この電子制御ユニットECUは警告信号を解除する。これを受けてコントローラ70の規制部73は、警報解除信号を出力して警報装置90を消灯させる。その後、オペレータは上部操作装置43の近傍に設けられたエンジン始動・停止スイッチ15をオン操作することでエンジンEを再始動させて、所望の高所作業を引き続き行うことができる。
【0049】
以上のように構成される本実施形態の制御装置2によれば、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥った場合に、コントローラ70の規制部73が電子制御ユニットECUを介してエンジンEの作動を強制停止させることで、確実にオペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生の操作を促すことができるとともに、エンジンEを無理に作動させて排気ガス浄化装置60に過度の負担が掛かるのが回避されるため、排気ガス浄化装置60の故障を未然に防止することが可能である。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態に係る制御装置について図5を用いて説明する。この第2実施形態に係る制御装置102が適用される高所作業車は、エンジンE等の作動制御に関する構成以外は上述の高所作業車1と同一であるので、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分を中心に説明することにする。
【0051】
この第2実施形態の制御装置102は、図5に示すように、PTO操作検出器14、操作装置43,57、電子制御ユニットECU、圧力センサ63,64、コントローラ170、油圧ユニット80、警報装置90を有して構成され、その内のコントローラ170は、ブーム作動制御部71、ジャッキ作動制御部72、規制部173を有している。
【0052】
規制部173は、電子制御ユニットECUから出力された警告信号が入力されると、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させるとともに、上部操作装置43からブーム作動制御部71へ操作信号が入力されているか否かを判定し、入力されていないと判断したとき、すなわち、ブーム30の作動が停止している状態であると判断したときは、エンジン停止信号を電子制御ユニットECUへ出力してエンジンEの作動を即停止させる。一方、上部操作装置43から操作信号が入力されていると判断したとき、すなわち、ブーム30が作動している状態(ブーム30が作動中)であると判断したときには、エンジンEおよびブーム30の作動をそのまま継続させ、ブーム30の作動が停止した時点(上部操作装置43からの操作信号の入力が途絶えた時点)で、エンジン停止信号を電子制御ユニットECUへ出力してエンジンEの作動を停止させる。
【0053】
続いて、このように構成される制御装置102において、図6を追加参照して具体的に作用を説明する。なお、図6は制御装置102によるエンジンEなどの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。作業台40に搭乗したオペレータが高所作業を行っている際に、排気ガス浄化装置60のパティキュレートフィルタ62に所定量以上のPMが堆積したことを電子制御ユニットECUが検出した場合、電子制御ユニットECUからコントローラ170に警告信号(オン信号)が出力される。この警告信号を受けてコントローラ170の規制部173は、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させ、オペレータに対して強制再生スイッチ66の操作が促される。それと同時に規制部173は、オペレータの操作によって上部操作装置43から操作信号がブーム作動制御部71に入力されているか否か、すなわち、ブーム30が作動している状態であるか否かを判定する。このときブーム30の作動が停止している状態であるときは、規制部173は電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力してエンジンEを即停止させる。一方、ブーム30が作動している状態であるときには、規制部173はエンジンEを直ちに停止させずにブーム30の作動が停止されるまで待ち状態となり、ブーム30の作動が停止された時点(上部操作装置43からの操作信号が途絶えた時点)で、電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力してエンジンEを停止させる。なお、規制部173を、オペレータによってブーム30の作動操作が行われている状態で電子制御ユニットECUから警告信号を入力した場合に、先ずブーム作動制御部71に規制信号を出力してブーム30の作動を停止させる制御をした上で、電子制御ユニットECUを介してエンジンEの作動を停止させる制御を行うように構成してもよい。
【0054】
このように構成される第2実施形態の制御装置102においても、パティキュレートフィルタが過捕集状態に陥った場合に、コントローラ170の規制部173が電子制御ユニットECUを介してエンジンEの作動を強制停止させることで、確実にオペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生の操作を促すことができるとともに、エンジンEを無理に作動させて排気ガス浄化装置60に過度の負担が掛かるのが回避されるため、排気ガス浄化装置60の故障を未然に防止することが可能である。
【0055】
よって、前述の第1の実施形態に係る制御装置2と同様の効果が得られるのであるが、この第2実施形態に係る制御装置102では、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥って警告信号が入力された場合でも、ブーム30が作動している状態である場合にはエンジンEの作動を即停止させず、ブーム30の作動が停止した状態となってからエンジンEの作動を停止させるため、ブーム30の急停止によって作業台40内でオペレータがバランスを崩したりするような事態が防止されるため、より安全な高所作業を実現することが可能になる点で特徴的である。また、オペレータが上部操作装置43を操作している間に警報装置90の点灯に気づいた場合には、そのままブーム30を格納姿勢にまで戻して作業台40から降りることで、オペレータ自身によりパティキュレートフィルタ62の強制再生操作を行うことができるため、安全性および作業効率をより向上させることも可能である。
【0056】
次に、本発明の第3実施形態に係る制御装置について図7を用いて説明する。この第3実施形態に係る制御装置202が適用される高所作業車は、エンジンE等の作動制御に関する構成以外は上述の高所作業車1と同一であるので、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分を中心に説明することにする。
【0057】
この第3実施形態の制御装置202は、図7に示すように、PTO操作検出器14、操作装置43,57、電子制御ユニットECU、圧力センサ63,64、コントローラ270、油圧ユニット80、警報装置90を有して構成され、その内のコントローラ270は、ブーム作動制御部71、ジャッキ作動制御部72、規制部273、タイマカウント部274を有している。
【0058】
タイマカウント部274は、電子制御ユニットECUから出力された警告信号を受けて、予め設定された起算時からのエンジンEの作動時間T(図8を参照)を計測し、この作動時間の情報を規制部273に出力する。
【0059】
規制部273は、電子制御ユニットECUから出力された警告信号が入力されると、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させるとともに、タイマカウント部274からの情報を受けて、エンジンEの作動時間Tが予め設定されたエンジン停止猶予時間ΔT1(図8を参照)を超えたか否かを判定する。なお、エンジンEの作動時間Tの起算時については、タイマカウント部274(および規制部273)が電子制御ユニットECUからの警告信号を入力した時点、警報装置90が点灯した時点などが例示される。規制部273は、エンジンEの作動時間Tがエンジン停止猶予時間ΔT1を超えたと判定した場合、電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力して、エンジン停止猶予時間ΔT1を超えたエンジンEの作動を停止させる。
【0060】
続いて、このように構成される制御装置202において、図8を追加参照して具体的に作用を説明する。なお、図8は制御装置202によるエンジンEなどの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。作業台40に搭乗したオペレータが高所作業を行っている際に、排気ガス浄化装置60のパティキュレートフィルタ62に所定量以上のPMが堆積したことを電子制御ユニットECUが検出した場合、電子制御ユニットECUからコントローラ270に警告信号が出力される。この警告信号を受けてコントローラ270の規制部273は、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させ、オペレータに対して強制再生スイッチ66の操作が促される。それと同時に規制部273は、タイマカウント部274からの情報を受けて、例えば警告信号を入力した時点(所定の起算時)からのエンジンEの作動時間Tがエンジン停止猶予時間ΔT2を超えたか否かを判定する。規制部273によってエンジンEの作動時間が所定時間を超えていないと判断されたときは、その間、エンジンEの作動は停止されず、オペレータは上部操作装置43を任意に操作することが可能である。その後、規制部273によってエンジンEの作動時間Tがエンジン停止猶予時間ΔT1を超えたと判定された場合、規制部273は電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力して、エンジン停止猶予時間ΔT1を超えたエンジンEの作動を停止させる。
【0061】
このように構成される第3実施形態の制御装置202においても、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥った場合に、コントローラ270の規制部273が電子制御ユニットECUを介してエンジンEの作動を強制停止させることで、確実にオペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生の操作を促すことができるとともに、エンジンEを無理に作動させて排気ガス浄化装置60に過度の負担が掛かるのが回避されるため、排気ガス浄化装置60の故障を未然に防止することが可能である。
【0062】
よって、前述の第1の実施形態に係る制御装置2と同様の効果が得られるのであるが、この第3実施形態に係る制御装置202では、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥って警告信号が入力された場合でも、その時点でエンジンEの作動を即停止させるのではなく、警告信号の入力に伴って計測開始されるエンジンEの作動時間Tがエンジン停止猶予時間ΔT1を超えたときにエンジンEの作動を停止させるため、その間にオペレータが警報装置90の点灯に気づく可能性は高く、その状態においての最善の行動(例えば、ブーム30を格納姿勢に戻す、作業台40を安全な位置に退避させる、進行中の作業を中断させる等)を取ることができるため、安全性を向上させることが可能になる点が特徴的である。また、エンジンEが停止されるまでに警報装置90の点灯に気づくための時間的な余裕ができるため、突然のブーム30の急停止によって作業台40内でオペレータがバランスを崩したりするような事態も防止される。
【0063】
次に、本発明の第4実施形態に係る制御装置について図9を用いて説明する。この第4実施形態に係る制御装置302が適用される高所作業車は、エンジンE等の作動制御に関する構成以外は上述の高所作業車1と同一であるので、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分を中心に説明することにする。
【0064】
この第4実施形態の制御装置は、図9に示すように、PTO操作検出器14、エンジン始動・停止スイッチ15、操作装置43,57、圧力センサ63,64、電子制御ユニットECU、コントローラ370、油圧ユニット80、警報装置90を有して構成され、その内のコントローラ370は、ブーム作動制御部71、ジャッキ作動制御部72、規制部373、タイマカウント部374を有している。
【0065】
タイマカウント部374は、電子制御ユニットECUから出力された警告信号を受けて、予め設定された所定の起算時からの経過時間K(図10を参照)を計測し、この経過時間Kの情報を規制部373に出力する。
【0066】
規制部373は、電子制御ユニットECUから出力された警告信号が入力されると、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させるとともに、電子制御ユニットECUへエンジン停止信号を出力してエンジンEを即停止させる。また、規制部373は、タイマカウント部374からの情報を受けて、所定の起算時からの経過時間Kに基づきエンジン始動許容時間ΔT2(図10を参照)ごとに一定の時間間隔で、電子制御ユニットECUへエンジン停止信号を出力する。なお、上記経過時間Kの起算時については、規制部373によってエンジンEが最初に停止された時点、タイマカウント部374(および規制部373)が電子制御ユニットECUから警告信号を入力した時点、警報装置90が点灯した時点などが例示される。そして、エンジン始動許容時間ΔT2内にオペレータによって上部操作装置43の近傍に設けられたエンジン始動・停止スイッチ15がオン操作されると、規制部373はこのエンジンEの再始動を許容し、電子制御ユニットECUによってエンジン始動許容時間ΔT2内における残余の時間だけエンジンEを作動させることが可能になっている。
【0067】
続いて、このように構成される制御装置302において、図10を追加参照して具体的に作用を説明する。なお、図10は制御装置302によるエンジンEなどの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。作業台40に搭乗したオペレータが高所作業を行っている際に、排気ガス浄化装置60のパティキュレートフィルタ62に所定量以上のPMが堆積したことを電子制御ユニットECUが検出した場合、電子制御ユニットECUからコントローラ370に警告信号が出力される。この警告信号を受けてコントローラ370の規制部373は、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させて、オペレータに対して強制再生操作スイッチ66の操作が促される。それと同時に規制部373は電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力してエンジンEを即停止させる。このようにエンジンEを停止させた後において、規制部373はタイマカウント部374からの情報を受けて所定の起算時からエンジン始動許容時間ΔT2ごとに電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力する。エンジン許容始動時間ΔT2内にオペレータによって上部操作装置43の近傍に設けられたエンジン始動・停止スイッチ15がオン操作されると、エンジン始動許容時間ΔT2内における残余の時間だけエンジンEが再び作動され、その後エンジン始動許容時間ΔT2の経過に伴って規制部373から電子制御ユニットECUにエンジン停止信号が出力されることでエンジンEの作動が再び停止される。さらに、その後もオペレータはエンジン始動許容時間ΔT2を最長時間としてエンジンEをその都度始動させることが可能である。
【0068】
このように構成される第4実施形態の制御装置302においても、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥った場合に、コントローラ370の規制部373が電子制御ユニットECUを介してエンジンEの作動を強制停止させることで、確実にオペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生の操作を促すことができるとともに、エンジンEを無理に作動させて排気ガス浄化装置60に過度の負担が掛かるのが回避されるため、排気ガス浄化装置60の故障を未然に防止することが可能である。
【0069】
よって、前述の第1の実施形態に係る制御装置2と同様の効果が得られるのであるが、この第4実施形態に係る制御装置302では、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥って警告信号が入力された場合、一旦はエンジンEの作動を即停止させてオペレータにパティキュレートフィルタ62が過捕集状態である旨を知らせた上で、その後においてエンジン始動許容時間ΔT2内であれば何度でもエンジンEを再始動させることができるため、安全性および作業効率を向上させることが可能である点が特徴的である。例えば、オペレータはエンジンEの最初の作動停止に伴ってパティキュレートフィルタ62が過捕集状態であることを認識して、パティキュレートフィルタ62を強制再生すべくエンジン始動許容時間ΔT2内に上部操作装置43を操作してブーム30を格納姿勢に戻して作業台40から降り立つことで、オペレータ自身により強制再生操作を行うことが可能になる。
【0070】
なお、上記第4実施形態ではエンジン始動許容時間ΔT2が多数回継続して設定された場合を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えばエンジン始動許容時間ΔT2は最初の1回のみ、もしくは数回のみを限定的に許容して、その後についてはエンジン再始動を規制する構成としてもよいものである。この構成によれば、オペレータがエンジン始動許容時間ΔT2内ごとに多数回に亘ってエンジンEを再始動させることで、その積算されたエンジンの作動時間が長時間に陥ってしまうような事態を防止することができる。
【0071】
ところで、エンジンEを再始動させた状態においては、前述したように、エンジンEの動力はパワーテイクオフ機構PTOを介して主油圧ポンプP1に伝達され、これによって作動される主油圧ポンプP1から第1〜第4制御バルブV1〜V4を介して起伏シリンダ24等のアクチュエータに作動油が供給されることで、上部操作装置43の操作に応じてブーム30および作業台40が作動する構成である。そのため、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥った状態でエンジンEを再始動させると、排気ガス浄化装置60により大きな負担を掛けるおそれがある。そのため、上記第4実施形態の制御装置302の変形例として図11に示すように、油圧ユニット80′を、油圧タンクT、主油圧ポンプP1、第1〜第5制御バルブV1〜V5のほかに、エンジンEの動力を用いずに独立して電動モータMにより駆動されて上記アクチュエータへ作動油を供給する非常用油圧ポンプP2を備えて構成してもよい。
【0072】
従来から主油圧ポンプP1とは別に、この主油圧ポンプP1が故障した場合に上記アクチュエータが作動不能になる(例えば、作業台40を高所から低所に退避できなくなる)事態を防止するために非常用油圧ポンプP2が設けられるのは周知であり、非常用油圧ポンプP2の作動操作は、上部操作装置43内に設けられた非常用ポンプスイッチ44を操作することで行われるようになっている。ここでは、パティキュレートフィルタ62の過捕集状態においてエンジンEを再始動させる代わりに、エンジンEの作動を必要とせず電動モータMによって独立して作動する非常用油圧ポンプP2を利用すれば、排気ガス浄化装置60に何ら負担を掛けずにブーム30を作動させることができる。
【0073】
具体的には、コントローラ370′のブーム作動制御部71′は、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥って電子制御ユニットECUから警告信号が出力された結果、規制部373によってエンジンEの作動が停止されている状態において、オペレータがエンジン始動許容時間ΔT2内で上部操作装置43を用いてブーム30の作動操作を行った場合には、図示しないリレー等を介して非常用油圧ポンプP2を自動的に作動させて、このエンジン始動許容時間ΔT2内だけブーム30の作動を許容する。これにより、エンジンEを無理に作動させて排気ガス浄化装置60に過度の負担が掛かるのをより効果的に防止することが可能である。また、非常用油圧ポンプP2が作動され得るのは、時限的なエンジン始動許容時間ΔT2内だけであるため、非常事態における短時間のみの作動を意図して設置された当該非常用油圧ポンプP2の目的とも合致する。
【0074】
次に、本発明の第5実施形態に係る制御装置について図12を用いて説明する。この第5実施形態に係る制御装置402が適用される高所作業車は、エンジンE等の作動制御に関する構成以外は上述の高所作業車1と同一であるので、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分を中心に説明することにする。
【0075】
この第5実施形態の制御装置402は、図12に示すように、PTO操作検出器14、エンジン始動・停止スイッチ15、操作装置43,57、電子制御ユニットECU、圧力センサ63,64、コントローラ470、油圧ユニット80、警報装置90を有して構成され、その内のコントローラ470は、ブーム作動制御部71、ジャッキ作動制御部72、規制部473、タイマカウント部474を有している。
【0076】
規制部473は、電子制御ユニットECUから出力された警告信号が入力されると、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させるとともに、電子制御ユニットECUへエンジン停止信号を出力してエンジンEを即停止させる。また、規制部473は、エンジンEの作動が停止された状態において、オペレータによって上部操作装置43近傍のエンジン始動・停止スイッチ15がオン操作されることでこの操作信号を受けると、エンジン始動信号を電子制御ユニットECUに出力してエンジンEを再始動させるとともに、タイマカウント部474に対して計測開始信号を出力する。
【0077】
タイマカウント部474は、規制部473から出力された計測開始信号を受けて、例えば、計測開始信号を受信した時点もしくは電子制御ユニットECUによってエンジンEが再始動した時点を起算時としてエンジンEの作動時間T(図13を参照)を計測し、この作動時間Tの情報を規制部473に出力する。規制部473は、タイマカウント部474の情報を受けて、エンジンEの作動時間Tが予め設定されたエンジン作動可能時間ΔT3(図13を参照)を超えたか否かを判定する。この規制部473によりエンジンEの作動時間Tがエンジン作動可能時間ΔT3を超えたと判定された場合、電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力して、エンジン作動可能時間ΔT3を超えたエンジンEの作動を停止させる。そして、エンジン作動可能時間ΔT3の経過に伴ってエンジンEが再び停止された後は、オペレータによってエンジン始動・停止スイッチ15が再びオン操作されるたびに、規制部473が電子制御ユニットECUにエンジン始動信号および停止信号を適宜出力し、エンジンEをエンジン作動可能時間ΔT3の間だけ作動させる。
【0078】
続いて、このように構成される制御装置402において、図13を追加参照して具体的に作用を説明する。なお、図13は制御装置402によるエンジンEなどの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフである。作業台40に搭乗したオペレータが高所作業を行っている際に、排気ガス浄化装置60のパティキュレートフィルタ62に所定量以上のPMが堆積したことを電子制御ユニットECUが検出した場合、電子制御ユニットECUからコントローラ470に警告信号が出力される。この警告信号を受けてコントローラ470の規制部473は、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させて、オペレータに対して強制再生操作スイッチ66の操作が促される。それと同時に規制部473は電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力してエンジンEを即停止させる。このようにエンジンEが停止された状態において、オペレータによってエンジン始動・停止スイッチ15がオン操作されると、この操作信号を受けて規制部473は電子制御ユニットECUにエンジン始動信号を出力してエンジンEを始動させる。そして、規制部473は、タイマカウント部474からの情報を受けて、エンジンEの作動時間Tがエンジン作動可能時間ΔT3を超えたか否かを判定し、その間(エンジン作動可能時間ΔT3内)においてオペレータは上部操作装置43を操作してブーム30を任意に作動させることができる。規制部473はエンジンEの作動時間Tがエンジン作動可能時間ΔT3に達したと判断すると、電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力してエンジンEの作動を再び停止させる。さらに、オペレータはエンジン始動・停止スイッチ15を再度オン操作することで、エンジン作動可能時間ΔT3内を限度としてエンジンEをその都度作動させることが可能である。
【0079】
このように構成される第5実施形態の制御装置402においても、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥った場合に、コントローラ470の規制部473が電子制御ユニットECUを介してエンジンEの作動を強制停止させることで、確実にオペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生の操作を促すことができるとともに、エンジンEを無理に作動させて排気ガス浄化装置60に過度の負担が掛かるのが回避されるため、排気ガス浄化装置60の故障を未然に防止することが可能である。
【0080】
よって、前述の第1の実施形態に係る制御装置2と同様の効果が得られるのであるが、この第5実施形態に係る制御装置402では、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥って警告信号が入力された場合、一旦はエンジンEの作動を即停止させてオペレータにパティキュレートフィルタ62が過捕集状態である旨を知らせた上で、その後においてエンジン作動可能時間ΔT3内であれば何度でもエンジンEを作動させることができるため、安全性および作業効率を向上させることが可能である点が特徴的である。例えば、オペレータはエンジンEの最初の作動停止に伴ってパティキュレートフィルタ62が過捕集状態であることを認識して、パティキュレートフィルタ62を強制再生すべくエンジン作動可能時間ΔT3内に上部操作装置43を操作してブーム30を格納姿勢に戻して作業台40から降り立つことで、オペレータ自身により強制再生操作を行うことが可能になる。また、上記第4実施形態の制御装置302と異なり、エンジン始動・停止スイッチ15の操作タイミングによらず、エンジン始動により起算されるエンジン作動可能時間ΔT3の間をフルに利用することができるため、習熟度の低い不慣れなオペレータ等であっても、時間的な制約がより緩和されて安心して慎重にブーム30の作動操作を行うことが可能である。
【0081】
なお、上記第5実施形態ではエンジン作動可能時間ΔT3が他数回許容された場合を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えばエンジン作動可能時間ΔT3は最初の1回のみ、もしくは数回のみを限定的に許容して、その後についてはエンジン再始動を規制する構成としてもよいものである。この構成によれば、オペレータがエンジン作動可能時間ΔT3を利用して多数回に亘ってエンジンEを再始動させることで、その積算されたエンジンの作動時間Tが長時間に陥ってしまうような事態を防止することができる。
【0082】
次に、本発明の第6実施形態に係る制御装置について図14を用いて説明する。この第6実施形態に係る制御装置502が適用される高所作業車は、エンジンE等の作動制御に関する構成以外は上述の高所作業車1と同一であるので、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分を中心に説明することにする。
【0083】
この第6実施形態の制御装置502は、図14に示すように、PTO操作検出器14、操作装置43,57、電子制御ユニットECU、圧力センサ63,64、コントローラ570、油圧ユニット80、警報装置90を有して構成され、その内のコントローラ570は、ブーム作動制御部71、ジャッキ作動制御部72、規制部573、タイマカウント部574を有している。
【0084】
前述した場合と同様に、コントローラ570は、作業開始に伴ってPTO操作レバー13がオン操作され、パワーテイクオフ機構PTOによってエンジンEの動力を取り出して主油圧ポンプP1を駆動可能な状態にしたときに(PTO操作検出器14がオン信号を出力したときに)、電源装置17によってこれに連動してオン作動(電源オン)するように構成されているが、パティキュレートフィルタ62が作業前(例えば走行移動中)の段階で過捕集状態に至ってしまい、作業現場に到着した後であってコントローラ570の電源が投入された時点で、このコントローラ570に電子制御ユニットECUからの警告信号が入力される場合がある。
【0085】
タイマカウント部574は、PTO操作スイッチ13のオン操作によって電源装置17を介してコントローラ570の電源が投入された時点から、コントローラ570の作動時間を計測し、この作動時間の情報を規制部573に出力する。
【0086】
規制部573は、タイマカウント部574からの情報を受けて、コントローラ570の起動直後から電子制御ユニットECUより警告信号が入力されていると判断すると、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させるとともに、電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力してエンジンEを即停止させる。なお、規制部573は、コントローラ570の起動の際に電子制御ユニットECUからの警報信号が電源投入時から(PTO操作レバー13がオン操作されてから)一定時間内に入力されたときに、コントローラ570の起動直後から警報信号が入力されていると判断する。
【0087】
一方で規制部573は、タイマカウント部574からの情報を受けて、コントローラ570の起動後一定時間が経過してから(PTO操作レバー13がオン操作されて一定時間を経過してから)電子制御ユニットECUにより警報信号が入力されたと判断した場合には、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させるとともに、所定の起算時からのエンジンEの作動時間T(図16を参照)が予め設定されたエンジン猶予時間ΔT4(図16を参照)を超えたか否かを判定する。なお、エンジンEの作動時間Tの起算時については、タイマカウント部574(および規制部573)が電子制御ユニットECUから警告信号を入力した時点、警報装置90が点灯した時点などが例示される。この規制部573によりエンジンEの作動時間Tがエンジン停止猶予時間ΔT4を超えたと判定された場合、電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力して、エンジン停止猶予時間ΔT4を超えたエンジンEの作動を停止させる。
【0088】
続いて、このように構成される制御装置502において、図15および図16を追加参照して具体的に作用を説明する。なお、図15および図16は、制御装置502によるエンジンEなどの作動制御における各種信号等の経時変化を示すグラフであって、図15はPTO操作装置13のオン操作がされる前に警告信号が出力された場合を示し、図16はPTO操作装置13のオン操作がされた後に警告信号が出力された場合を示している。
【0089】
目的の作業現場においてこれから作業を行おうとするオペレータは、エンジンEの作動状態において先ずPTO操作レバー13をオン操作することになる。これによりエンジンEの動力の伝達先がタイヤ車輪11から主油圧ポンプP1に切り換わり、主油圧ポンプP1はパワーテイクオフ機構PTOによって取り出されたエンジンEの動力を受けて回転作動し、電源装置17がPTO操作検出器14からオン信号を入力することでコントローラ570の電源もオンになる。コントローラ570の電源が投入されると、コントローラ570のタイマカウント部574はコントローラ570の作動時間の計測を始める。このときパティキュレートフィルタ62が既に走行途中で過捕集状態に至っていた場合には、コントローラ570の電源投入(PTO操作レバー13のオン操作)に伴って電子制御ユニットECUから発信された警告信号がコントローラ570の規制部573に入力される。
【0090】
規制部573は、タイマカウント部574からの情報を受けて、電子制御ユニットECUからの警告信号がコントローラ570の電源起動直後から(一定時間内に)入力されていると判断すると、電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力してエンジンEを即停止させるとともに警報装置90を点灯させる。これによりオペレータはパティキュレートフィルタ62が過捕集状態であることを認識し、排気ガス浄化装置60の強制再生スイッチ66をオン操作して、パティキュレートフィルタ62に堆積したPMを強制的に燃焼除去してフィルタ再生を行うことができる。これによってパティキュレートフィルタ62が正常な状態に回復し、その後、オペレータはエンジンEを再始動させた上で、下部操作装置57を操作してアウトリガジャッキ50を接地させ、作業台40に搭乗して上部操作装置43を操作することで所望の高所作業が可能となる。なお、このように本実施形態において、コントローラ570の電源起動直後に電子制御ユニットECUから警告信号が入力された場合にエンジンEをエンジン停止猶予時間ΔT4後ではなく即停止させる制御を行うのは、作業開始前(現場に到着した状態)においてはブーム30等が格納姿勢となっているため、エンジン停止猶予時間ΔT2の経過を待たずにエンジンEを即停止させて無用なブーム30の作動を回避し、オペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生を促す方が作業の効率化の観点から望ましいためである。
【0091】
一方、コントローラ570の電源投入から一定時間が経過して作業が開始され、作業台40に搭乗したオペレータが高所作業を行っている際に、排気ガス浄化装置60のパティキュレートフィルタ62に所定量以上のPMが堆積したことを電子制御ユニットECUが検出した場合には、図16に示すように、電子制御ユニットECUからコントローラ570に警告信号が出力され、この警告信号を受けてコントローラ570の規制部573は、警報作動信号を出力して警報装置90を点灯させるとともに、タイマカウント部574からの情報を受けて所定の起算時からのエンジンEの作動時間Tがエンジン停止猶予時間ΔT4を超えたか否かを判定する。規制部573によってエンジンEの作動時間Tがエンジン停止猶予時間ΔT4を超えていないと判断されたときは、その間、エンジンEの作動は停止されず、オペレータは上部操作装置43を任意に操作してブーム30を作動させることが可能である。その後、規制部573によってエンジンEの作動時間Tがエンジン停止猶予時間ΔT4を超えたと判定された場合、規制部573は電子制御ユニットECUにエンジン停止信号を出力して、エンジン停止猶予時間ΔT4を超えたエンジンEの作動を停止させる。このようにコントローラ570の起動後一定の時間を経過してから警報信号が入力された場合にエンジンEを即停止させずに所定のエンジン停止猶予時間ΔT4の経過を待ってエンジンEを停止させるのは、作動中のブーム30が急停止すると作業台40内のオペレータがバランスを崩してしまうような事態が生じるおそれがあるからである。
【0092】
このように構成される第6実施形態の制御装置502においても、パティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥った場合に、コントローラ570の規制部573が電子制御ユニットECUを介してエンジンEの作動を強制停止させることで、確実にオペレータに対してパティキュレートフィルタ62の強制再生の操作を促すことができるとともに、エンジンEを無理に作動させて排気ガス浄化装置60に過度の負担が掛かるのが回避されるため、排気ガス浄化装置60の故障を未然に防止することが可能である。
【0093】
よって、前述の第1の実施形態に係る制御装置2と同様の効果が得られるのであるが、この第6実施形態に係る制御装置502では、コントローラ570の電源が投入された時点(PTO操作スイッチのオン操作がされた時点)でパティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥って警告信号が入力されている場合にはエンジンEを即停止させて作業の効率化を図る。一方で、コントローラ570の電源が投入されてから一定時間経過してパティキュレートフィルタ62が過捕集状態に陥って警告信号が入力された場合には、その時点でエンジンEの作動を即停止させるのではなく、エンジン停止猶予時間ΔT4の経過を待ってエンジンEの作動を停止させるため、その間にオペレータは警報装置90の点灯に気づいて、その状態においての最善の行動を取ることが可能になり、安全性および作業性を向上させることができる。すなわち、PTO操作スイッチ13の操作時(PTO操作検出器14の検出時)を基準にして本高所作業車が作業状態にあるか否かを判定することで、エンジン停止のタイミングを選択的に切り換えて、より利便性が向上した制御装置として構成されている点が特徴的である。
【0094】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示されたものに限定されない。例えば、上述の実施形態(第4実施形態)において、エンジン停止信号の出力タイミングが、エンジン始動許容時間ΔT2ごとに一定の時間間隔で設定された場合を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、時間の経過とともに時間間隔を徐々に短く設定する構成としてもよい。この構成によれば、オペレータへの注意喚起をより確実なものにすることができる。同様に、第5実施形態においても、エンジン作動可能時間ΔT3を時間とともに徐々に短く設定する構成としてもよい。
【0095】
なお、上述の実施形態において、本発明が適用される対象は車体がタイヤ車輪式である作業車であったが、車体は必ずしもタイヤ車輪式に限定されるものではなく、クローラ装置等により走行するものであってもよい。或いは軌道走行用車輪を備えて軌道上を走行する軌道走行用の作業車、さらにはタイヤ車輪と軌道走行用車輪との両方を備えた軌陸両用の作業車等であってもよい。
【0096】
また、上述の実施形態において、本発明に係る作業車として高所作業車1を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、穴掘り建柱車、起陸車、クレーン車等であってもよく、車体に油圧作動式等の作業装置および排気ガス浄化装置を備えて構成された作業車であれば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 高所作業車(作業車)
2 制御装置
10 車体
13 PTO操作装置(パワーテイクオフ操作手段)
15 エンジン始動・停止スイッチ(エンジン操作手段)
20 旋回台(作業装置)
30 ブーム(作業装置)
40 作業台(作業装置)
43 上部操作装置(作業装置操作手段)
60 排気ガス浄化装置
62 パティキュレートフィルタ(フィルタ)
63 上流側圧力センサ(捕集量検出手段)
64 下流側圧力センサ(捕集量検出手段)
66 強制再生操作スイッチ(強制再生操作手段)
70 コントローラ(作動制御手段)
90 警報装置
102 制御装置(第2実施形態)
170 コントローラ(作動制御手段)
202 制御装置(第3実施形態)
270 コントローラ(作動制御手段)
302 制御装置(第4実施形態)
370 コントローラ(作動制御手段)
402 制御装置(第5実施形態)
470 コントローラ(作動制御手段)
502 制御装置(第6実施例)
570 コントローラ(作動制御手段)
E エンジン
ECU 電子制御ユニット
PTO パワーテイクオフ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車体と、
前記エンジンの駆動力を取り出すパワーテイクオフ機構と、
前記車体に配設されて前記パワーテイクオフ機構により取り出される前記エンジンの駆動力を用いて作動する作業装置と、
前記パワーテイクオフ機構をオンオフ作動させるための操作を行うパワーテイクオフ操作手段と、
前記作業装置を作動させるための操作を行う作業装置操作手段と、
前記エンジンの始動および停止を制御するとともに、前記作業装置操作手段からの操作信号に基づいて前記作業装置の作動を制御する作動制御手段と、
前記エンジンから排出された排気ガスに含まれる可燃性微粒子を捕集するフィルタを有し、前記フィルタに捕集された可燃性微粒子を燃焼除去して前記フィルタを再生可能な排気ガス浄化装置と、
前記フィルタに捕集された可燃性微粒子の捕集推定量を検出する捕集量検出手段と、
前記捕集量検出手段により検出された可燃性微粒子の捕集推定量が所定量を超えた場合に警告信号を出力する浄化装置制御手段とを備え、
前記作動制御手段は、前記パワーテイクオフ機構がオン作動された状態において、前記浄化装置制御手段から警告信号が出力された場合に、前記エンジンの作動を停止させることを特徴とする作業車の制御装置。
【請求項2】
前記作動制御手段は、前記浄化装置制御手段から警告信号が出力されているとき、前記作業装置操作手段から操作信号が出力されていない場合に前記エンジンの作動を停止させ、前記作業装置操作手段から操作信号が出力されている場合には前記エンジンを継続して作動させ、当該操作信号の出力が解除されたときに前記エンジンの作動を停止させることを特徴とする請求項1に記載の作業車の制御装置。
【請求項3】
前記作動制御手段は、前記浄化装置制御手段から警報信号が出力されてから所定時間経過後に前記エンジンの作動を停止させることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車の制御装置。
【請求項4】
前記エンジンを始動させるための操作を行うエンジン操作手段を備え、
前記作動制御手段は、前記浄化装置制御手段から警告信号が出力されたとき、前記エンジンの作動を一旦停止させ、当該エンジン停止後において前記エンジン操作手段により前記エンジンの始動操作がされた場合には、当該警告信号が出力されてから所定時間経過後に、もしくは所定時間経過ごとに前記エンジンを再停止させる制御を行い、当該所定時間内においてのみ前記エンジンの再始動を許容することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の作業車の制御装置。
【請求項5】
前記エンジンを始動させるための操作を行うエンジン操作手段を備え、
前記作動制御手段は、前記浄化装置制御手段から警告信号が出力されたとき、前記エンジンの作動を一旦停止させるとともに、当該エンジン停止後において前記エンジン操作手段により前記エンジンの始動操作がされると前記エンジンの再始動を所定時間だけ許容することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業車の制御装置。
【請求項6】
前記エンジンの作動が停止された状態において、前記エンジン操作手段により前記エンジンの始動操作がされると前記エンジンの前記再始動が1度のみ許容され、その後においては前記エンジンの始動操作が再びされても前記エンジンの作動が規制されることを特徴とする請求項4または5に記載の作業車の制御装置。
【請求項7】
前記エンジンが作動されている状態において、前記パワーテイクオフ機構がオン作動される前に前記浄化装置制御手段から警告信号が出力された場合には、前記作動制御手段は、前記パワーテイクオフ機構がオン作動されたときに前記エンジンの作動を停止させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の作業車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−94597(P2011−94597A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252274(P2009−252274)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】