説明

作業車両

【課題】乗用管理機等の乗用型の走行機体に、中耕除草用作業機を着脱する際に手間がかかって、効率が悪かった。
【解決手段】該走行機体22の機体フレーム6L・6R上に薬液タンク24を配設し、
該薬液タンク24の下方で且つリアアクスルケース34Lの上方に、該作業機2及び昇降リンク装置1に動力を伝達するための動力伝達機構73を配設し、該リアアクスルケース34L上面に凹部34Lbを形成し、該動力伝達機構73の少なくとも一部分が、前記凹部34Lbの上方に位置するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中耕除草用作業機やロータリ等の作業機及び該作業機を昇降自在に支持するための昇降リンク装置を有し、該作業機及び該昇降リンク装置を駆動するための動力伝達手段を有した散布作業用乗用管理機等の作業車両の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防除作業を行なう作業車両である乗用管理機は、乗用型の走行機体の前部に散布装置を配設し、走行機体の後部に動力散布装置を配設すると共に、機体フレーム上に薬液タンクを配設している。
そして、前記動力散布装置へと動力を伝達する手段は、変速機構出力軸と動力噴霧装置へと動力を伝達する作業機駆動ケースの入力軸間を伝動軸によって構成している。特に前記伝動軸の後部を前記薬液タンクとリアアクスルケース上面間に配置することにより、最低地上高を確保すると共に、走行機体の重心位置を可及的に低位置にして作業車両全体の安定性を確保している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−315541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
動力噴霧装置を駆動する駆動力は比較的小さくてすむため、従来の乗用管理機では伝動軸も比較的小径のもので足りていたが、例えばロータリ耕耘装置等の駆動力が大きな作業機にあっては、伝動軸の軸径は動力噴霧装置を駆動する場合に比べて大径のものを使用しなくてはならない。
この大径の伝動軸を配設できるスペースを確保するためには、例えば以下のような方法が考えられているが、それぞれの方法が抱える問題点が指摘されている。
【0004】
まず、リアアクスルケースを従来に比べて低位置にする方法が考えられているが、この場合は、作業車両の最低地上高が低くなってしまい、作物に干渉して損傷させてしまうおそれがあった。
【0005】
次に、薬液タンクを従来位置より高位置に配設する方法が考えられているが、この場合は、走行機体の重心位置が従来に比べ高位置となり、作業車両全体の安定性が悪くなってしまうおそれがあった。
【0006】
最後に、走行機体のフレーム形状自体を大径の伝動軸に対応できるように変更する方法が考えられているが、この場合は、大径の伝動軸に対応しているフレームの形状が小径の伝動軸に対応しているフレームの形状と異なって専用化してしまい、共用化できなくなってしまう。その結果、製造コストも上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、走行機体後方に昇降リンク装置を介して作業機を昇降可能に配設する作業車両において、
該走行機体の機体フレームの上端面よりも下方で、且つ、リアアクスルケースの上方に、該作業機に動力を伝達するための動力伝達機構を配設し、
前記リアアクスルケースの上面に凹部を形成し、該動力伝達機構の少なくとも一部分が、前記凹部に位置するように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、作業車両の最低地上高を従来に比べて低くすることなく、大径の動力伝達機構を配設できるスペースを確保することができ、その結果作物に干渉して損傷させてしまう等のおそれを少なくすることができる。また、走行機体の重心位置を高めることもないので、作業車両全体の安定性も悪化しない。加えて、走行機体のフレームを小径の動力伝達機構に対応しているフレームと同形状のものとできるため、フレームの共用化も実現でき、製造コストの上昇を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のリアアクスルケース34Lを有する乗用管理機101の実施の一形態を示す左側面図、図2は同じく平面図、図3は本発明のリアアクスルケース34Lを示す前上方斜視図、図4は本発明のリアアクスルケース34LとPTOドライブシャフト73を示す左前方斜視図、図5は同じく右前方斜視図、図6は同じく一部断面側面図、図7は昇降リンク装置1を示す左側面図、図8は同一部拡大図、図9は昇降リンク装置1を示す平面図、図10は同一部拡大図、図11は昇降リンク装置1を示す背面図、図12は同一部拡大図、図13は昇降用シリンダ82L周辺部を示す左後方斜視図、図14は門型フレーム75周辺を示す左前方斜視図である。
【0012】
以下では、図1および図2を用いて、本発明のリアアクスルケース34L及びPTOドライブシャフト73を有した作業車両の実施の一形態である散布作業用乗用管理機101の全体構成について説明する。
なお、本発明のリアアクスルケース34L及びPTOドライブシャフト73を配設する作業車両は散布作業用乗用管理機101に限定するものではなく、走行車両の後部に各種作業機を取り付ける構成のものであればよく、他の目的の作業車両に配設することもできる。
また、図1、図2においては、動力噴霧装置を外して昇降リンク装置1を取り付けた状態を示し、図2においては説明の便宜上キャビン45及び中耕除草用作業機2を省略している。
【0013】
本実施例の散布作業用乗用管理機101は圃場に液剤の農薬や肥料等を散布するものであり、乗用型の走行機体22と、薬液を散布するための複数のノズル23・23・・・を有するブーム40と、該ブーム40の昇降や展開を行うための機構よりなるブーム駆動部35と、中耕除草作業を行なう3連式の中耕除草用作業機2と、該中耕除草用作業機2を昇降自在に支持する昇降リンク装置1等で構成されるものである。後述するように、中耕除草用作業機2を支持する昇降リンク装置1を取り外す場合は、薬剤散布装置を取り付けることが可能である。
なお、本実施例では、ブーム駆動部35は走行機体22の前部および側部に配設され、動力噴霧装置は後部に昇降リンク装置1の代わりに着脱可能に配設されるものである。
【0014】
走行機体22の機体前端より後方へ向けて、左右一対の機体フレーム6L・6Rが水平方向に延設されている。該機体フレーム6L・6Rの前部下方にはフロントアクスルケースを配置して、その両側に前車輪7・7が支承され、機体フレーム6L・6Rの後部下方には図示しないデフケースを配置して、その両側にリアアクスルケース34L・34Rを配置し、該リアアクスルケース34L・34Rの外側に後車輪8・8が支承されている。
【0015】
走行機体22の前部においては、機体フレーム6L・6R上にエンジン9を被覆するボンネット10が配設されている。該ボンネット10後方のカバー上には操作パネル11が設けられ、該操作パネル11の上方には運転ハンドル12が設けられる。操作パネル11および運転ハンドル12等で乗用管理機101の操縦部を構成している。前記操作パネル11下方より後方に向けて、機体フレーム6L・6R上にはステップ13が設けられる。また機体フレーム6L・6R後部上には薬液タンク24が配設されており、該薬液タンク24の前部中央には運転席14が形成されて、該薬液タンク24によって側部と後部を取り囲まれるように載置されている。
また、乗用管理機101のフレームの各構成部材である機体フレーム6L・6Rはそれぞれ中空の四角または丸型のパイプまたはL型やH型等の鋼材が用いられ、軽量かつ高剛性に構成される。
【0016】
本実施例においては、操作パネル11や運転ハンドル12等からなる乗用管理機101の操縦部、および運転席14を覆うキャビン45が設けられる。
キャビン45は直射日光や風雨等に加えて、乗用管理機101により圃場に散布される薬剤(薬液)から作業者を保護するものである。
キャビン45はボンネット10の後端部左右に立設された一対の前フレーム46・46、薬液タンク24の上面に立設された左右一対の後フレーム47・47、前フレーム46・46および後フレーム47・47に支持されてキャビン45の上面を形成するルーフ48、透明な強化プラスチックや強化ガラスからなりキャビン45の前面を形成するフロントガラス49、透明な可撓性の樹脂製シートからなりキャビン45の左右側面を形成する側部被覆体50・50、透明な可撓性の樹脂製シートからなりキャビン45の後面を形成する後部被覆体(図示せず)等で構成される。
【0017】
ルーフ48には外気をキャビン45の内部に送り込むためのファン51が設けられる。また、ファン51の外気吸引口には、前端部を軸支し後部が回動することにより開放可能となる蓋51aが設けられるとともに、薬液や塵埃等を除去するフィルタ53が設けられる。さらに、前記側部被覆体50・50はキャビン45の左右側面を全面に渡って被覆するのではなく、作業者の足元部を常に開放している。
外気は、薬液が到達することが少ない圃場表面から高い位置からフィルタ53により薬液等が除去された後、ファン51によりキャビン45内部に送り込まれ、下向きの気流を形成しつつ下方に移動し、キャビン45の左右側面の足元部より外部に排出される。このように構成することにより、キャビン45の内部への散布薬液の侵入を防止し、作業者を保護している。
【0018】
ブーム駆動部35は第1の昇降リンク装置であるリンク機構37およびアクチュエータ群(シリンダ38・38、シリンダ39、シリンダ43・43等)で構成される。
第1の昇降リンク装置であるリンク機構37は走行機体22の前部に配置され、作業機(本実施例の場合、ブーム40に相当する)を昇降可能に支持する。リンク機構37は平行リンクからなり、該平行リンクは上下一対のリンクが左右それぞれに配置される。該平行リンクの後部は機体フレーム6L・6Rの前側部に立設した支持フレームに支持され、平行リンクの前部はボンネット10前方で左右水平方向に配置した連結フレームで連結される。該左右両側の上側のリンクと機体フレーム6L・6Rに固定した支持フレームの間にシリンダ38・38を介装している。該シリンダ38・38を伸縮させることによりブーム40を上下昇降可能としている。
そして、前方ブーム41の左右中央部を枢支ピン44によりリンク機構37の連結フレームに対して枢支し、左右傾倒可能に支持するとともに、該前方ブーム41とリンク機構37の間にシリンダ39を介装している。該シリンダ39の伸縮により傾倒可能としてブーム40を水平制御する。
【0019】
ブーム40は薬液散布用の前方ブーム41および側方ブーム42L・42Rから構成されている。前方ブーム41はリンク機構37に取り付けられて走行機体22の正面前方に配置される。側方ブーム42L・42Rは前方ブーム41の左右両端に枢支され、後方に折畳み(回動)可能である。そして、ブーム40には薬液を散布するための複数のノズル23・23・・・が一定間隔をおいて配設されている。
前方ブーム41と側方ブーム42L・42Rの間には、それぞれシリンダ43・43が介装され、該シリンダ43・43を伸縮させることによって、側方ブーム42L・42Rを左右水平方向へ延設した作業位置と、前後方向で後ろ上がりに位置させた収納位置に回動可能としている。
【0020】
次に、乗用管理機101後部、換言すれば走行機体22後方に配設する第2の昇降リンク装置1について、図7乃至図14を参照しながら説明する。
図1に示すように、昇降リンク装置1は走行機体22後方で作業機、本実施例では3連ロータリ耕耘装置からなる中耕除草用作業機2を昇降自在に支持するものであり、乗用管理機101後部に配設される。そして後述するように、該昇降リンク装置1は、中耕除草用作業機2と一体的に乗用管理機101の走行機体22後方に着脱可能な構成となっている。
【0021】
図8に示すように、乗用管理機101の機体フレーム6L・6R後端部には、上方が開放されて側面視略U字状の取付フレーム61L・61Rが溶接等によって固設されている。
詳しくは、取付フレーム61L・61Rは、リアアクスルケース34L・34Rの幅よりも広く構成して、後垂直面を機体フレーム6L・6Rの後端に位置させて溶接により固定し、機体フレーム6L・6Rの後端下部から外側方に突出している。該取付フレーム61L・61Rの内底面にステーを立設して機体フレーム6L・6Rの外側面に溶接等で固設して、補強している。
【0022】
該取付フレーム61L・61Rの底面はボルト16・16・・・によって、リアアクスルケース34L・34R上面に一体的に構成されて上方に突設された取付座64L・64Rに固設されている。つまり、取付フレーム61L・61R及び取付座64L・64Rを介して機体フレーム6L・6Rと該リアアクスルケース34L・34Rが連結、固定されている。リアアクスルケース34L・34Rには、上面だけでなく、後下面から後下方にも取付座60L・60Rが突設されており、該取付座60L・60Rには後述するブラケット66L・66Rの下部がボルト15b・15bにより固設される。
【0023】
該取付フレーム61L・61Rの後面には、ボルト15a・15a・・・によってブラケット66L・66Rが固設されている。該ブラケット66L・66Rは平面視U字状に構成され、側面視において下部が後方に凸型となるように形成されており、該凸型部に後述する昇降リンク装置1のロアリンク81L・81R前端部がピン等で枢支される構成となっている。
つまり、ボルト15a・15aによって、取付フレーム61L(61R)後面にブラケット66L(66R)の上部が固設され、ブラケット66L(66R)の下部は、ボルト15bによって前記リアアクスルケース34L(34R)の後下面に一体的に形成されている取付座60L(60R)に固設される。従って、該ブラケット66は機体フレーム6に対して着脱自在となり、昇降リンク装置1を取り付ける場合に、動力噴霧装置仕様から容易に変更することができる。
【0024】
前記ブラケット66L・66Rの上部には、薬液タンク24の後底部を載置支持するための受プレート65L・65Rが左右方向に固設されている。
詳しくは、走行機体22に、左右の機体フレーム6L・6Rの後端部を連結する横機体フレーム5が固設されており、前記薬液タンク24は該横機体フレーム5や機体フレーム6L・6Rや受プレート65L・65Rによって支持されているものである。
【0025】
前記平面視略U字状のブラケット66L・66Rの内側上部には、平面視略U字状の支持プレート68L・68Rの前垂直面が溶接等により固設されて後方へ突設され、該支持プレート68L・68Rの後部は左右幅が狭められて、その間に左右一対の断面視方形の伸延フレーム67L・67Rが固設されて後方へ突設されている。該伸延フレーム67L・67Rは昇降リンク装置1や作業機駆動ケース70を支持するためのメインフレームとなる。なお、昇降リンク装置1のフレーム等の各構成部材は、機体フレーム6L・6Rと同様に、それぞれ中空の四角または丸型のパイプまたはL型やH型等の鋼材が用いられ、軽量かつ高剛性に構成される。
【0026】
こうして前記伸延フレーム67L・67Rは、支持プレート68L・68Rを介してブラケット66L・66R上部の内側に固設するものであり、該支持プレート68L・68Rの前部が溶接等によってブラケット66L・66R上部の内側に固設され、該支持プレート68L・68Rの前端上部でボルト15a・15a・・・・によりブラケット66L・66Rと共に機体フレーム6L・6Rに着脱できるようにしている。
支持プレート68L・68Rとブラケット66L・66Rの固設は、溶接等によって一体化させるものであり、同様に支持プレート68L・68Rと伸延フレーム67L・67Rの固設も、溶接等によって一体化させるものである。
【0027】
そして、該伸延フレーム67L・67Rの後端部上面には、左右方向に連結フレーム69が横設されて固設されており、該連結フレーム69の左右両側端部の前面と、伸延フレーム67L・67Rの後部上面との間には補強プレート72L・72Rが溶接等により固設されている。
連結フレーム69の左右両側端部の後面には、後面視略逆U字状の取付ステー71L・71Rが後方に向けて突設され、該取付ステー71L・71Rに昇降リンク装置1の昇降用シリンダ82L・82Rの前端上部をピン等で枢支するようにしている。
【0028】
そして、該昇降用シリンダ82L・82Rの後端下部は、前記ロアリンク81L・81Rの後部に連結ステー83L・83Rを介して枢支される。
該ロアリンク81L・81Rの後端部には、ワンタッチ式作業機装着装置を構成する下連結部材88L・88Rがピン等により枢支される。該ワンタッチ式作業機装着装置は主フレーム85、上連結部材86、下連結部材88L・88R等からなり、主フレーム85はパイプを後面視略逆V字状に折り曲げられている。該主フレーム85の左右中央上部に上連結部材86を固設し、該上連結部材86の前上部にトップリンク87の後端部が枢支され、該上連結部材86の後部上に側面視略V字状の切欠を設けて、中耕除草用作業機2の上部係止ピンを係止できるようにしている。また、前記下連結部材88L・88Rは略「つ」字状に構成して後方を開放した切欠を設け、中耕除草用作業機2の下部係止ピンを係止できるようにしている。
前記トップリンク87の前端部は、前記連結フレーム69の左右略中央部の後面及び上面に固設されるトップリンク支持ステー84の後部に枢支される。
以上のような構成において、3点リンク構造の昇降リンク装置1を構成している。
【0029】
次に、中耕除草用作業機2に動力を伝達し、かつ、昇降用シリンダ82L・82Rを伸縮させるための油圧源となる油圧ポンプを有した作業機駆動ケース70の固設構成について、図7乃至図14を参照しながら説明する。
前記支持プレート68L・68Rの間には、後面視略U字状の門型フレーム75が溶接して固設されている。つまり、支持プレート68L・68Rの内側に門型フレーム75が一体化されている。これにより、昇降リンク装置1は、ブラケット66L・66Rと、支持プレート68L・68Rと、伸延フレーム67L・67Rと、連結フレーム69と、門型フレーム75とが、溶接等によって固設され一体化されている。
【0030】
詳述すると、該門型フレーム75は、上方が開放された門型形状に形成されており、該門型フレーム75の下フレームは左右一側が水平とし、左右他側が傾斜した構成としている。つまり、入力側である左側が水平として、右側が右上がりの傾斜フレームとし、下フレーム上の複数箇所に作業機駆動ケース70をボルトを介して着脱自在に取付固定するための取付部材76・76を固設している。
本実施例では、門型フレーム75の2箇所に取付部材76・76を固設しているが、2箇所に限定するものではなく、作業機駆動ケース70下面の形状に応じて取付部材76・76・・・の個数や固設箇所を決定すると良い。
【0031】
後述するように、前記作業機駆動ケース70には、エンジン9からユニバーサルジョイント79・80やPTOドライブシャフト73等を介して動力が伝達される。該PTOドライブシャフト73後端部はユニバーサルジョイント80を介して作業機駆動ケース70前面より突出した入力軸90と連結されており、該作業機駆動ケース70内に配置されたクラッチ機構や変速機構等を介して減速してPTO軸77に駆動力が伝達される。また、該作業機駆動ケース70には、油圧ポンプ等よりなる昇降用シリンダ駆動装置が配設されている。
そして、本実施例では、作業機駆動ケース70の前後方向への揺れを防止するために、作業機駆動ケース70と前記連結フレーム69の間にステー78を介装している。つまり、該ステー78は側面視クランク状に折り曲げて、後上部が連結フレーム69の左右略中央前面に固設され、前下部が作業機駆動ケース70の左右中央部の上部後面にボルトにより着脱自在に固定されている。
【0032】
次に、前記昇降リンク装置1の操作について説明する。
図1に示すように、運転席下方にはPTOクラッチレバー55が配設され、該PTOクラッチレバー55にはワイヤ等が連結され、該ワイヤの他端は作業機駆動ケース70に設けたPTOクラッチアームと連結される。作業機駆動ケース70内には、後述する入力軸90上にPTOクラッチが配設されており、該PTOクラッチが前記クラッチレバー55と連結されている。このような構成にして、該PTOクラッチレバー55を操作することによって、PTO軸77への動力伝達の断接を可能とするものである。
【0033】
更に、運転席14近傍には、昇降レバー56が配設される。該昇降レバー56は昇降バルブを切り換えるもので、前記作業機駆動ケース70内の油圧ポンプと昇降用シリンダ82L・82Rまでの油路(配管)の間に昇降バルブを配置し、該昇降レバー56を操作することによって、昇降バルブを切り換えて油圧ポンプからの送油を切り換えて昇降用シリンダ82L・82Rを伸縮するものである。
【0034】
以上のように構成したことにより、ボルト15a・15a・15b・・・を外すことにより、機体フレーム6L・6Rからブラケット66L・66Rを取り外すことができ、ブラケット66L・66R以後の昇降リンク装置1全体を乗用管理機101から分離することが可能となる。
その結果、3連ロータリー耕耘装置からなる中耕除草用作業機2を昇降自在に支持する昇降リンク装置1を、ボルト15a・15a・15b・・・によって機体フレーム6L・6Rに取り付けた状態で中耕除草作業を行い、その後ボルト15a・15a・15b・・・を外して容易に中耕除草用作業機2ごと昇降リンク装置1を取り外し、昇降リンク装置1の替わりに薬剤散布装置の動力噴霧装置を取り付けて薬剤散布を行なうことができる。
【0035】
また、該薬剤散布装置の動力噴霧装置は、昇降リンク装置1の替わりに取り付けて前記PTOドライブシャフト73から動力を得ることもできるが、作業機駆動ケース70の後面に取り付けることも可能であり、この場合、PTOドライブシャフト73の後端またはPTO軸77から動力を得ることができる。
【0036】
次に、エンジン9からの駆動力をPTOドライブシャフト73を介して、前記作業機駆動ケース70へと伝達する構成について説明する。
図6に示すように、機体フレーム6L・6Rの下方には、エンジン9からの動力を走行機体22後方の作業機駆動ケース70へ伝達するためのPTOドライブシャフト73が配設されている。後述するように、PTOドライブシャフト73後部は薬液タンク24の下方で且つリアアクスルケース34Lの上方に位置するものであり、前述したように、PTOドライブシャフト73後端部は作業機駆動ケース70内へ挿入される入力軸90と連結されている。
【0037】
走行機体22の平面視略中央下部には、図示しないCVT(割プーリ式の無断変速装置)が配設されている。該CVTはCVTケース内に配設されており、エンジン9で得られた駆動力を走行用の駆動力として無段変速を行ない、乗用管理機101自体の走行用に利用されるものである。CVTによって無段変速された駆動力が、CVTケース右方後面から出力され、CVTケース後方に配設される図示しないミッションケース等を介して、前輪7・7や後輪8・8へと伝達される。
【0038】
前記CVTの入力軸62はCVTケースより後方に突出されており、図6に示すように、該CVT入力軸62の後端には上二連プーリ63が固設されている。後面視において上二連プーリ63の左下方には下二連プーリ89が配設されて、該上二連プーリ63と下二連プーリ89との間にベルトが巻回されて動力が伝達される。該下二連プーリ89は二連プーリ軸74上に固設されている。該二連プーリ軸74に伝達された駆動力は、二連プーリ軸74後端に配設されるユニバーサルジョイント79を介して、後方に配設されるPTOドライブシャフト73へと伝達される。そして、PTOドライブシャフト73に伝達された駆動力は、該PTOドライブシャフト73後端に配設されるユニバーサルジョイント80等を介して、作業機駆動ケース70の前面より突出した入力軸90に伝達され、作業機駆動ケース70内で該入力軸90からクラッチ機構や変速機構等を介して減速してPTO軸77等に駆動力が伝達される。
【0039】
薬剤散布時に使用する動力噴霧装置を駆動する駆動力は比較的小さくてすむため、該駆動力を伝達する伝動軸の軸径は比較的小さなもので足りるが、例えば本実施例のように、3連ロータリ耕耘装置からなる中耕除草用作業機2等の大きな駆動力を必要とする作業機を走行機体22の後方に配設する場合にあっては、該中耕除草用作業機2を駆動するための駆動力を伝達するPTOドライブシャフト73の軸径を、前記動力噴霧装置を使用する場合に比べて大径にする必要が生じてくる。
【0040】
以下では、機体フレーム6L・6R等の走行機体22のフレーム構造を変更することなく、昇降リンク装置1及び作業機用の動力を作業機駆動ケース70内へ伝達するための、大径のPTOドライブシャフト73を配設する方法について説明する。
図3乃至図5に示すように、デフケース(図示せず)またはミッションケースの両側に連設されるリアアクスルケース34のうち、左右一側のリアアクスルケース34(本実施例では左側のリアアクスルケース34L)の上面に、上方が開放された略U字状の凹部34Lbが形成されている。つまり、リアアクスルケース34はパイプ状のケース部34a両側にフランジ部34b・34cが形成され、内側のフランジ部34bがデフケースに固設され、外側のフランジ部34cが減速ケースまたは縦軸ケースに固設される。
【0041】
そして、凹部34Lbが機体左右方向中心側寄り、つまり、フランジ部34b側寄りのケース部34a上面に形成され、前記取付座64Lとフランジ部34bの間のケース部34a上部に凹部34Lbが形成される。該凹部34Lbの深さはリアアクスルケース34L内に配設されている車軸と干渉しない程度のものとする。また、凹部34Lbの横幅はPTOドライブシャフト73が、凹部34Lbと干渉しない程度、つまり、PTOドライブシャフト73(またはPTOドライブシャフトカバー)の半径よりも大きな曲率半径を有するものとする。
【0042】
前述したように、走行機体22には、左右の機体フレーム6L・6Rの後端部を連結する横機体フレーム5が固設されており、前記薬液タンク24は該横機体フレーム5や該機体フレーム6L・6Rや受プレート65L・65Rによって支持されているものである。
そして、前記PTOドライブシャフト73は、上方に位置する薬液タンク24や、該横機体フレーム5の下面と干渉しない下方位置に配設される。
つまり、図4乃至図6に示すように、PTOドライブシャフト73が、リアアクスルケース34Lの凹部34Lbの真上で、且つ薬液タンク24や横機体フレーム5より下方に位置する構成とするのである。
【0043】
そのため、図6に示すように、PTOドライブシャフト73とリアアクスルケース34Lの位置関係は、PTOドライブシャフト73とリアアクスルケース34Lの軸心は略直交方向に配置され、側面視において該PTOドライブシャフト73の下辺がリアアクスルケース34Lのケース部34a上面よりも下方に位置し、PTOドライブシャフト73の上面はフランジ部34b・34cよりも下方に位置するように配設される。このようにして、PTOドライブシャフト73はリアアクスルケース34Lのケース部34a上面とフランジ部34b・34c内側側面に囲まれたスペース内に配置される。こうして、PTOドライブシャフト73はリアアクスルケース34Lのケース部34a上面とフランジ部34b・34cと機体フレーム6Lに囲まれて、外側からの障害物に当接しにくい配置とすることができる。
【0044】
本実施例では、PTOドライブシャフト73が平面視において左前方から右後方へ斜めに配設される構成となっているため、左リアアクスルケース34L上に凹部34Lbを形成しているが、限定するものではなく、PTO軸77が平面視において右前方から左後方へ配設される構成となっている場合には、前述同様に右リアアクスルケース34R上に凹部を形成しても良い。
【0045】
このように、作業車両101の後部に昇降リンク装置1を着脱可能に取り付ける構成であって、昇降リンク装置1は、機体フレーム6L・6R後部と、該機体フレーム6L・6R下部に配置したリアアクスルケース34L・34Rの後部とに着脱可能に固設し、かつ、ロアリンク81L・81Rを枢支する左右一対のブラケット66L・66Rと、該左右のブラケット66L・66Rより後方に延設した連結フレーム69と、該連結フレーム69の後部両側と前記ロアリンク81L・81Rの後部間に配置する昇降用シリンダ82L・82Rと、連結フレーム69の左右中央部に枢支するトップリンク87と、ロアリンク81Lを、具備するので、
必要に応じて容易に、昇降リンク装置1を走行機体22後部に着脱することが可能となり、中耕除草用作業機2の着脱の手間が解消し、効率も良くなる。
【0046】
また、前記昇降リンク装置1を走行機体22の機体フレーム6L・6R後端部若しくはリアアクスルケース34L・34R後端部に着脱自在に取り付けるので、
強度の必要な昇降リンク装置1を、丈夫な機体フレーム6L・6Rとリアアクスルケース34L・34Rの2部材で保持することができるため、昇降リンク装置1の取り付け部において、十分な支持強度を得ることができる。
【0047】
また、前記昇降リンク装置1のフレームは、少なくとも左右一対の前後方向に延設される伸延フレーム67L・67Rを有し、該左右の伸延フレーム67L・67R間に、上方が開放された門型フレーム75を設け、該門型フレーム75に作業機駆動ケース70を支持するので、
昇降リンク装置1を走行機体22から取り外すだけで作業機駆動ケース70を取り外すことができ、該作業機駆動ケース70のメンテナンス性が向上する。
【0048】
また、走行機体22後方に昇降リンク装置1を介して作業機2を昇降可能に配設する作業車両101において、
該走行機体22の機体フレーム6Lの上端面よりも下方で、且つ、リアアクスルケース34Lの上方に、該作業機2に動力を伝達するための動力伝達機構73を配設し、
前記リアアクスルケース34Lの上面に凹部34Lbを形成し、該動力伝達機構73の少なくとも一部分が、前記凹部34Lbに位置するように構成したので、
作業車両101の最低地上高を従来に比べて低くすることなく、大径の動力伝達機構73が配設できるスペースを確保することができ、その結果作物に干渉して損傷させてしまう等のおそれを少なくすることができる。また、走行機体22の重心位置を高めることもないので、作業車両101全体の安定性も悪化しない。加えて、走行機体22のフレームを小径の動力伝達機構に対応しているフレームと同形状のものとできるため、フレームの共用化も実現でき、製造コストの上昇を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のリアアクスルケース34Lを有する乗用管理機101の実施の一形態を示す左側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】本発明のリアアクスルケース34Lを示す前上方斜視図。
【図4】本発明のリアアクスルケース34LとPTOドライブシャフト73を示す右前方斜視図。
【図5】同じく左前方斜視図。
【図6】同じく一部断面側面図。
【図7】昇降リンク装置1を示す左側面図。
【図8】同一部拡大図。
【図9】昇降リンク装置1を示す平面図。
【図10】同一部拡大図。
【図11】昇降リンク装置1を示す背面図。
【図12】同一部拡大図。
【図13】昇降用シリンダ82L・82R周辺部を示す左後方斜視図。
【図14】門型フレーム75周辺を示す左前方斜視図。
【符号の説明】
【0050】
1 昇降リンク装置
2 中耕除草用作業機
6L・6R 機体フレーム
15a・15b ボルト
34L・34R リアアクスルケース
66L・66R ブラケット
67L・67R 伸延フレーム
68L・68R 支持プレート
69 連結フレーム
70 作業機駆動ケース
75 門型フレーム
81L・81R ロアリンク
82L・82R 昇降用シリンダ
85 主フレーム
87 トップリンク
101 乗用管理機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体後方に昇降リンク装置を介して作業機を昇降可能に配設する作業車両において、
該走行機体の機体フレームの上端面よりも下方で、且つ、リアアクスルケースの上方に、該作業機に動力を伝達するための動力伝達機構を配設し、
前記リアアクスルケースの上面に凹部を形成し、該動力伝達機構の少なくとも一部分が、前記凹部に位置するように構成したことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−240356(P2006−240356A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55767(P2005−55767)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】