説明

作業車両

【課題】外気温が極端に低い場合はDPFに影響を与えるファンの駆動を停止してもDPF自体の温度が下がってしまい、DPFの再生不良が発生してしまう。
【解決手段】排気ガス中の粒状化物質PMを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ46bとディーゼルエンジンEを搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ46b内の粒状化物質PMを除去する再生制御を行う構成の作業車両において、外気温度を検出する外気温度センサ70を設け、外気温度センサ70の検出値に応じてディーゼルパティキュレートフィルタ46bの再生制御時のエンジン回転数を決定する構成とし、外気温度センサ70の検出値が予め設定したしきい値Mを基準にして外気温度が高い状態よりも低い状態の方をエンジン回転数が高くなるように構成したことを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気系に粒状化物質(PM)を除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備え、ディーゼルエンジンを搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
DPF内部に粒状化物質(PM)が溜まると排気温度を上昇させて除去(再生)する必要があるが、DPF自体の温度が低いと再生が効率良く行われず再生不良になってしまう。そこで、車両に外気温センサを備え、この外気温センサが検出した外気温度が所定温度以下のときには、DPFの温度低下に影響を与えるファンを作動させない構成である。これにより、外気温が低いときにはファンにより起風された風をDPFに当たらないようにし、DPF自体の温度低下を防止してDPFの再生を良好に行おうとする構成である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−157099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知技術においては、外気温度が低いときにはDPFに影響を与えるファン(コンデンサ)の駆動をしないことで、DPF自体の温度が低下し過ぎないようにし、DPFの再生不良を防止しようとするものである。
【0005】
しかしながら、外気温が極端に低い場合はファンの駆動を停止してもDPF自体の温度が下がってしまい、DPFの再生不良が発生してしまう。
本発明の課題は、前述のような不具合を解消するディーゼルエンジンを搭載した作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)とディーゼルエンジン(E)を搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)内の粒状化物質(PM)を除去する再生制御を行う構成の作業車両において、外気温度を検出する外気温度センサ(70)を設け、外気温度センサ(70)の検出値に応じてディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生制御時のエンジン回転数を決定する構成とし、外気温度センサ(70)の検出値が予め設定したしきい値(M)を基準にして外気温度が高い状態よりも低い状態の方をエンジン回転数が高くなるように構成したことを特徴とする作業車両としたものである。
【0007】
外気温度センサ(70)の検出値に応じてディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生制御時のエンジン回転数を決定する。そして、外気温度センサ(70)の検出値が予め設定したしきい値(M)を基準にして外気温度が高い状態よりも低い状態の方をエンジン回転数が高くなるようにする。
【0008】
請求項2記載の発明では、作業車両に湿度センサ(71)を設け、この湿度センサ(71)による検出値が所定値以下の場合は、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生制御を実行しないように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【0009】
湿度センサ(71)による検出値が所定値以下の場合は、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生制御を実行しない。
請求項3記載の発明では、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の手動再生を行う手動再生スイッチ(72)を設け、該手動再生スイッチ(72)が入り状態のときはエンジンキースイッチ(73)を切りにしてもエンジン停止を牽制するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両としたものである。
【0010】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の手動再生を行う手動再生スイッチ(72)が入り状態のときはエンジンキースイッチ(73)を切りにしてもエンジン停止を牽制する。
【0011】
請求項4記載の発明では、エンジン停止を可能とする緊急停止スイッチ(73a)を設けたことを特徴とする請求項3に記載の作業車両作業車両としたものである。
緊急の場合は緊急停止スイッチ(73a)でエンジンを停止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、外気温度が低いときにはエンジン回転数を高くすることで排気ガス温度が上昇し、これによりDPF(46b)自体の温度低下を抑制できるので、DPF(46b)の再生を良好に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、湿度センサ(71)による検出値が所定値以下の場合は、DPF(46b)の再生制御を実行しないので、排気系や排気口での火災の危険性を防止できる。
【0014】
請求項3記載の発明においては、請求項1又は請求項2の効果に加え、DPF(46b)の手動再生を行う手動再生スイッチ(72)が入り状態のときはエンジンキースイッチ(73)を切りにしてもエンジン停止を牽制するので、DPF(46b)の再生を良好に行うことができる。
【0015】
請求項4記載の発明においては、請求項3の効果に加え、緊急の場合は緊急停止スイッチ(73a)でエンジンを停止するので、不慮の自体に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクタの左側面図
【図4】トラクタの平面図
【図5】吸気系と排気系の模式図
【図6】再生のブロック図
【図7】排気管の断面図
【図8】フライホイール制御のブロック図
【図9】DPFの断面図
【図10】バーナー燃焼制御のブロック図
【図11】(a)DPFの断面図、(b)従来のDPFの断面図
【図12】トラクタのエンジンルームの断面図
【図13】トラクタのエンジンルームの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
なお、後述する各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【0018】
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。
【0019】
このように、コモンレール1は、エンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0020】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0021】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0022】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0023】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0024】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。農作業を行わず移動走行する場合に使用するものである。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。
【0025】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0026】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0027】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0028】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0029】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0030】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0031】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体の前部に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケースT内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。
【0032】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0033】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0034】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダーである。
【0035】
図5はエンジンのシリンダー5内への吸気と排気の模式図であり、4サイクルのディーゼルエンジンの実施例である。過給器TBの吸気タービン36により過給された空気は、エアクリーナー35から吸気タービン36、インタークーラー37を通過して吸気マニホールド38からシリンダー5内へ送られる構成である。39は吸気バルブであり、40はピストンである。48はカムでありロッカーアーム49を介して吸排気バルブ39、41を開閉させるものである。
【0036】
シリンダー5内で燃焼した排ガスは、排気バルブ41から排気マニホールド42を通過した後、過給器TBの排気タービン45で過給器TBを駆動して排出される構成である。
このディーゼルエンジンは、排気ガスの一部を吸気側に混入させるためのEGR(排気再循環装置)回路44を有している。EGR回路で排気ガスの一部を吸気側に混入させることで酸素量(O2)を減らして、窒素酸化物Noxの発生を低減させるように構成している。ただし、EGR率が上昇しすぎると、逆に酸素量が少なくなって不完全燃焼になるので、燃焼状態によりEGR率を調節する必要がある。この調節は、EGRバルブ43にて行う。EGR回路44は、後述する後処理装置46下流側の排気管55と過給器TBの吸気タービン36上流側の吸入管56との間を接続している。また、EGR回路44の途中にはEGRクーラ57を設ける構成としている。このEGRバルブ43の開閉具合でシリンダー5内への排気ガスの還元量が変化する。
【0037】
排気タービン45を通過後の排気ガスは、後処理装置46を通過してマフラー50から大気中に排出される。後処理装置46は、酸化触媒(DOC)46aとディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bとから構成されている。
【0038】
酸化触媒(DOC)は不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は粒状化物質(PM)を捕集するためのものである。前記EGRバルブ43と絞り弁47については、ECU100により制御される構成である。後処理装置46はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bのみで構成してもよい、酸化触媒(DOC)を設けると不燃物質が燃焼するので、よりクリーンな排気ガスとなる。
【0039】
DPF46bは、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、PMが溜まってきて能力の低下が懸念される。そこで、後処理装置46の下手側に絞り弁47を設け、この絞り弁47を絞るとDPF46b内の圧力が高く保持されるので温度も高くなる。これにより、高い温度の影響により、DPF46bの再生が可能となる。即ち、高い温度の排気ガスがDPF46bを通過すると、DPF46b内に存在しているPMが焼き飛ばされることでDPF46bが再生される。
【0040】
DPF46bを再生させるためのDPF再生運転としては、EGRバルブ43と絞り弁47の両方を絞る。そして、燃料噴射タイミングのリタード(遅角)と合わせてDPF46b内のガス温度を上昇させ、DPF46bが再生に入るようにする。これにより、燃料のアフター噴射(排気ガス温度を上昇させるため)が不要となったり、アフター噴射の回数を減らすことができるようになるので、燃料消費量を抑制できて環境にもよい。
【0041】
このようなDPF再生運転を行うための条件としては、後処理装置46の上手側に圧力センサ52を設け、後処理装置46の下手側にも圧力センサ53を設け、この圧力差が所定値以上になるとDPF46b内にPMが蓄積して抵抗となっている状態なので、DPF再生運転を行うようにする。また、圧力センサ52の替わりにDOC46aとDPF46bとの間に圧力センサ58を設ける構成としてもよい。
【0042】
また、DPF再生運転に入った状態が長時間続くと、過熱状態となってしまいDPF46bが損傷してしまう。そこで、後処理装置46の下手側に温度センサ59を設け、この温度センサ59の値が所定値を超えるとDPF再生運転を止めて通常運転に戻るようにする。
【0043】
通常の運転は、EGRバルブ43と絞り弁47を同時に制御してEGR量を適宜コントロールするようにする。特に、絞り弁47を有することで、DPF46b内のガス温度を高く保持することができるようになる。
【0044】
前述のような構成としたことで、吸気スロットルが不要となる。即ち、過給器付き機関では吸気側圧力が高いので、EGRガス量を確保するために排気絞り弁または吸気スロットルを設け、EGRバルブと連動した制御が必要となるが、このようなシステムが不要となる。
【0045】
また、DPF46b下流の排気ガスを取り出すために、過給器TBの汚れに伴う性能劣化を生じることを防止できるようになる。そして、EGRガスはEGRクーラ57で冷却されるため、NOx低減に対して効果が大きくなる。
【0046】
前述したように、DPFの再生運転を行なうDPF強制再生モードにおいては、排気絞り弁47を絞り、ON−OFF制御によってEGRバルブ43を全閉とするように構成する。したがって、排気ガスの還元が行なわれないのでNOが増加し、このNOが酸化触媒(DOC)46aによってNO2に転換され、DPF46bの再生が促進されるようになる。
【0047】
また、DPF46bの強制再生中において、エンジン回転がローアイドルに移行した場合は、前記EGRバルブ43を全開とする。DPF46bの下流側には温度センサ59を設けているので、この温度センサ59による検出値が所定値以上に上昇したことも条件に加えるようにしてもよい。
【0048】
前記絞り弁47を絞ってDPF46bの強制再生を行なう場合において、エンジン回転数を低い回転数にして供給酸素量を増加させるとともに、排気ガス流速が減少することで温度を上昇しやすくしていた。ところが、再生中にエンジン回転数がローアイドルまたはその近傍に変更された場合、供給酸素量の増加と流速の減少により、煤が急速に燃焼してしまう。その結果、温度が急速に上昇してDPF46bが損傷してしまう可能性がある。そこで、最高温度が許容温度を超えないようにする煤を管理する必要がある。
【0049】
このために、温度センサ59が所定値を超えると、エンジン回転数を中速域まで上昇させるように構成する。これにより、排気ガスの流速が速くなるので最高温度が下がり、DPF46bの損傷を防止できるようになる。また、前記温度センサ59の所定値の値を限界値近傍で制御すると、DPF46bの再生を効率よく行なうことができるようになる。
【0050】
前記エンジン回転数を中速域まで上昇させるにあたり、一旦最高回転数まで上昇させ、その後中速域まで減速させるように構成してもよい、これにより、一旦排気ガスが最高速度で流れるので、予熱などでDPF46bが加熱されてしまって閾値の温度を超えてしまうことを防止できるようになる。
【0051】
また、DPF46bの強制再生中において、前述のようにエンジン回転数をローアイドルに移行するときにおいて、ポスト噴射を中断し、その後エンジン回転数を最高回転数まで上昇させ、中速域に移行する段階でポスト噴射を再開する構成とする。これにより、排気ガス温度の急激な上昇が抑制できるので、DPF46bの損傷を防止できるようになる。
【0052】
DPF46b前後の差圧が所定値以上になった場合、作業後に運転者がDPF46bの再生モードを選択スイッチ67で選択することで、自動でDPF46bの再生を行い、DPF46b再生後は自動でエンジンを停止するように構成する。DPF46b前後の差圧を圧力センサ58、53で監視する。エンジン停止直前のDPF46b前後差圧が所定値以上であると、警告ランプやアラームで報知し、運転者は自らDPF46bの再生を行なうスイッチ(図示せず)を操作する。
【0053】
そして、エンジンキーが切りの位置になっても、前記再生モードを選択していることで、エンジンはアイドリング状態で回転を維持し、DPF46bの再生を実行する。DPF46b前後の差圧が所定値以下になると、エンジンを自動で停止する。
【0054】
これにより、作業終了後であっても自動でDPF46bの再生、エンジン停止が可能となるために、運転者は本機から離れて他の作業ができるようになる。
DPF46bの再生を行なうときには、図5に示すように、吸気側の空気を管路61からDPF46bの上流側に送るように構成してもよい。即ち、DPF46bの再生を行なうときには、バルブ60を開いて酸素量の多い過給器TB上流側の吸気側の空気をDPF46bの上流側に送るように構成してもよい。これにより、再生効率が向上するようになる。
【0055】
また、DPF46bの温度を温度センサ62、59で監視し、3段階のステップで再生時の昇温を確認するようにしてもよい。まず、吸気の絞り(図示せず)を行い、この吸気の絞り状態での昇温確認を行う。次に、第一ポスト噴射を行って昇温を確認する。この時点で、DPF46bの前後温度が250度に達していなければ第二ポスト噴射を行っても更なる温度上昇は見込めないので、一旦再生を中断するようにする。もちろん、250度以上であれば第二ポスト噴射を行ってDPF46bの再生を行なうようにする。
【0056】
図5に示しているように、DPF46bの下流側には空燃比センサ63を設けている。ポスト噴射を行なってDPF46bの再生を行なう場合、燃料噴射量が多くなりすぎると燃費が悪化し、少ないと温度が上昇しなくて再生ができなくなる。そこで、空燃比センサ63の値をECU100にフィードバックして噴射量を決める構成とする。これにより、適切な燃費となるとともに、DPF46bの再生の可能となる。また、前記空燃比センサ63の替わりに吸気マニホールド内の圧力値をフィードバックするように構成してもよい。
【0057】
前述のようなDPF46bの再生を行なうにあたり、複数気筒の場合、一部の気筒の燃焼を停止するように構成してもよい。このように、一部気筒の燃焼を停止することで、エンジンのフリクションは同一でもシリンダーあたりの負荷を増やして排気温度を上昇させるようにしてもよい。
【0058】
前述のように、DPF46bの再生を行なう場合、外気温度により再生時のエンジン回転数を変更する構成とする。具体的には、外気温度センサ(70)の検出値が予め設定したしきい値(M)を基準にして外気温度が高い状態よりも低い状態の方をエンジン回転数が高くなるように構成する。
【0059】
しきい値Mが摂氏15度の場合、摂氏15度を越える常温域ではエンジン回転数を1100rpm程度とする。しきい値Mが摂氏0度〜15度の場合、エンジン回転数を1200rpm程度とする。しきい値Mが摂氏0度〜−20度程度の場合、エンジン回転数を1500rpm前後とする。しきい値Mが摂氏−20度以下の場合、エンジン回転数を2000rpm程度とする。
【0060】
DPF46bの再生を行う場合、通常は外部負荷が要求されるが、外部負荷が無ければ再生時に排気温度が不足して、白煙や刺激臭が問題となる。このような問題を防止するために、むやみに回転数を上げると騒音が高くなってしまう。
【0061】
そこで、外気温度に応じて再生時のエンジン回転数を変更する構成とする。外気温度センサ70は、前記ECU100に接続してもよいし、車両(トラクタ)側の制御装置(CPU)200に接続してもよい。ECU100とCPU200はCAN通信で接続されており、情報のやりとりを行っている。外気温度センサ70からの情報により、高圧ポンプ4を制御して燃料噴射ノズル6に送る燃料量を制御してエンジン回転数を変更する構成とする(図1)。
【0062】
これにより、低温時に排気温度が上昇するので、再生が滞りなく実行される。また、常温時にはエンジン回転数を抑えることで、騒音も抑制可能となる。
71は湿度センサであるが、この湿度センサ71の検出値が所定値以下(40%程度)の乾燥状態の場合は、DPF46bの再生は行わない構成とする。即ち、再生の要求があっても、ポスト噴射等の再生に関わる内容を行わない構成とする。特に、トラクタやコンバイン等の農業機械においては、排気系や排気管の近くに藁屑があると燃え易くなるが、このような不具合を防止することが可能となる。また、スイッチ等を入り操作して意図的にDPF46bの再生を行う場合においては、再生を行わないことをランプの点灯やブザー等で報知する構成としている。
【0063】
前記湿度センサ71の代わりに通信機能で気象データを取得可能に構成し、外気が乾燥状態にある場合には、DPF46bの再生を禁止するように構成してもよい。
ECU100にはDPF46bの手動再生スイッチ72とエンジンキースイッチ73が接続している(図6)。一旦手動再生スイッチ72を入り状態にして再生に入っている場合は、エンジンキースイッチ73を切りにしてエンジンを停止しようとしてもエンジン停止を牽制する構成とする。即ち、エンジンキースイッチ73が切り位置でもエンジンを停止せずにDPF46bの再生を継続する構成とする。そして、再生が完了することで自動的にエンジンを停止する構成とする。
【0064】
この場合、エンジンキーをエンジンキースイッチ73から抜いても、エンジンを停止せずに再生を継続し、再生が完了したら自動的にエンジンを停止する構成とする。また、このような状態をランプの点灯やブザー等で報知する構成とする。
【0065】
DPF46bの手動再生中にエンジン停止すると、DPF46b内に煤が残った状態になり、異常燃焼が発生してDPF46bが溶損してしまうことがある、このような不具合を未然に防止できるようになる。
【0066】
ただし、緊急の場合は再生中であってもエンジンを停止する必要があるので、緊急停止スイッチ73aを設け、この緊急停止スイッチ73aを押すとエンジンを停止する構成とする。これにより、不慮の自体に対応可能となる。
【0067】
また、DPF46bの手動再生中は、左右のウインカランプ74L,74Rを同時に点滅させ、再生が完了すると点滅を停止してホーン75を一度鳴らす構成とする。これにより、DPF46bが再生中であること、及び再生が完了したことを認識できる。
【0068】
DPF46bを効率良く再生するためには、排気温度を上昇させる必要がある。このため、エンジンに負荷を掛ける必要がある。図7はその一例であり、排気管55の出口にバルブ76を設け、前記手動再生スイッチ72が入り状態になると、ECU100からの信号でモータ77を駆動して、バルブ76で排気管55の出口の一部を塞ぐ構成とする。これにより、エンジン負荷が上昇してDPF46bの再生が効率良く実施可能となる。
【0069】
また、ロータリ等の作業機21を下げて地面に押し付けることで、昇降シリンダ78作動の油圧ポンプ駆動のためにエンジン負荷が上昇するので、このような方法を用いてもよい。
【0070】
また、エアコンスイッチ79を強制的に入り状態としてエアコン用コンプレッサーを作動させてエンジンに負荷をかけるように構成してもよい。
また、図8に示すように、エンジンのフライホイール部81に磁性体82を設ける構成とする。そして、フライホイール部81の外周をハウジング83で覆い、ハウジング83の内側にコイル84を設ける構成とする。
【0071】
前記手動再生スイッチ72が入り状態になると、前記コイル84に電流を流してフライホイール部81に逆トルクを掛ける構成とする。
これにより、エンジンに負荷を与えることができるので、DPF46bの再生が効率良くできるようになる。
【0072】
DPF46bの再生時においては、DPF46b内の温度を早めに上昇させる必要がある。そこで、DPF46bから出てきた排気ガスの一部を排気管55から大気中に放出し、一部をバルブ86を介してDPF46bの上流側に戻す構成とする(図9)。DPF46b内には温度センサ62を設けているので、この温度センサ62の検出値が最適値となるように前記バルブ86を制御する構成とする。
【0073】
これにより、DPF46b内の温度を早めに上昇させることができ、さらにDPF46b内の温度を最適に保持できるので、再生が効率良くできて再生時間も短くなる。
また、図10に示すように、手動再生スイッチ72を入り状態にすると、バーナ88を点火してDPF46b内の噴射ノズル89から火炎を放射する構成とする。これにより、一気にDPF46b内の温度が上昇するので、相対的にアフター噴射やポスト噴射を行うよりも燃料の使用量を少なくすることが可能となる。また、この場合においても、DPF46b内の温度センサ62の検出値が最適となるようにすることで、効率の良い再生が可能となる。
【0074】
図11(a)は後処理装置46の断面図を示している。前述のごとく、上流側が酸化触媒(DOC)46aで、下流側がDPF46bである。エンジンからの排気ガスはDOC46aの上流側に投入されるが、排気導入パイプ90で投入される。この排気導入パイプ90の従来の構成は、図11(b)に示すように、後処理装置46の外側部分の直径をK2とすると、後処理装置46内の直径もK2で同じ構成としていた。
【0075】
これに対して、図11(a)では、後処理装置46の外側部分の直径をK2とすると、後処理装置46内の直径はK1であり、K1<K2の関係としている。これにより、後処理装置46の長手方向の長さを短く構成できるので、トラクタやコンバイン等の車両に搭載するときに有利となる。
【0076】
図12はトラクタに後処理装置46を搭載する構成を示している。後処理装置46の長手方向が機体の前後方向となるように配置している。エンジンEとボンネット91との間の空間部Sの後方に後処理装置46を搭載する構成である。このように狭い空間部に後処理装置46を搭載する場合において、後処理装置46をコンパクトにすることが有効である。後処理装置46は、DOC46aとDPF46bの両方の構成でもよいし、DPF46bのみの構成でもよい。
【0077】
また、図12においては、エンジンEと後処理装置46との間に遮熱板92を設ける構成としている。DPF46bは熱を持つので、仮に燃料系統が破損してDPF46bに飛散すると、引火してしまう可能性がある。そこで、遮熱板92を設けることで、前述のような不具合を防止できる。また、DPF46bは温度が低い状態では再生が良好に行われない。特に、冷却ファン93からの風が常時当たると問題がある。そこで、遮熱板92で冷却ファン93からの風が当たるのを防止できるようになる。
【0078】
図13に示す図面にはボンネットは省略しているが、前述した図12と同じ空間部Sに後処理装置46を配置している。後処理装置46の長手方向が機体の左右方向となるように配置している。この場合も、遮熱板94を設ける構成としている。そして、後処理装置46に接続している排気管55は、ステップ95の下方を通過し、タイヤカバー96の内側を通過して機体後部に配管している。DPF46bが再生中においては、排気ガス温度が高くなるが、前述のように排気管55を機体後部まで配管することにより、排気管55の長さが長くるので、排気管55から排出される排気ガス温度を低くすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
PM 粒状化物質
E ディーゼルエンジン
M しきい値
46b ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
70 外気温度センサ
71 湿度センサ
72 手動再生スイッチ
73 エンジンキースイッチ
73a 緊急停止スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)とディーゼルエンジン(E)を搭載し、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)内の粒状化物質(PM)を除去する再生制御を行う構成の作業車両において、外気温度を検出する外気温度センサ(70)を設け、外気温度センサ(70)の検出値に応じてディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生制御時のエンジン回転数を決定する構成とし、外気温度センサ(70)の検出値が予め設定したしきい値(M)を基準にして外気温度が高い状態よりも低い状態の方をエンジン回転数が高くなるように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
作業車両に湿度センサ(71)を設け、この湿度センサ(71)による検出値が所定値以下の場合は、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の再生制御を実行しないように構成したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)の手動再生を行う手動再生スイッチ(72)を設け、該手動再生スイッチ(72)が入り状態のときはエンジンキースイッチ(73)を切りにしてもエンジン停止を牽制するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
エンジン停止を可能とする緊急停止スイッチ(73a)を設けたことを特徴とする請求項3に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−137042(P2012−137042A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290468(P2010−290468)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】