説明

信号発生装置及び信号発生方法

【課題】遅延要素を有する信号発生装置において、遅延要素の遅延量変化に関わらず安定した信号発生を可能にする。
【解決手段】信号発生装置100の共振器1では、BPF6の出力信号が遅延要素3に入力されると、その入力された信号に遅延が与えられる。遅延要素3の出力信号は、IQ変調器16により位相が制御される。位相制御された信号は増幅器5にフィードバックされる。外部同期装置2では、ミキサ8により、BPF6の出力信号と基準信号の位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ9を介して複素VCO10に入力される。複素VCO10では、この位相差に基づいてIQ変調器16への制御信号が生成され、IQ変調器16では、複素VCO10から印加された制御信号に従って、遅延要素3により遅延された信号の位相が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号又は光信号を発生する信号発生装置及び信号発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IT(Information Technology)技術の需要は著しく、それに伴って大容量光ファイバ通信システムの必要性が高まる一方である。このような大容量の通信システムにおいては、非常に高純度な電気信号源及びレーザ光源が必要不可欠である。ここで、「高純度」とは、スペクトル幅が狭く、その結果としてある時間内における位相の変化が小さいことを表す。高純度な信号を発生させるためには、電気信号又はレーザ光のコヒーレンス時間を長くすればよい。コヒーレンス時間とは、波動が位相情報を保持する時間を表し、スペクトル幅に比例する量である。コヒーレンス時間を長くするには、時間遅延を与える要素(以下、「遅延要素」という。)を用いる必要がある。
【0003】
しかしながら、遅延要素を用いた信号発生装置では、周囲温度等の環境の変化に伴って遅延要素の遅延量が変化すると、出力信号の周波数が変化し、動作が不安定となる。そこで、長期にわたる安定動作を実現させるために、遅延量が変化しないようにフィードバック制御を行う必要がある。このようなフィードバック制御を行う信号発生装置の主要な機構は、以下の2つに大別される。
【0004】
第1の機構は、遅延要素を共振器内に配置するものである。図24に、第1の機構を有する信号発生装置700の構成を示す。信号発生装置700は、図24に示すように、基準信号発生源601、ミキサ602、ループフィルタ603、共振器604により構成される。共振器604は、増幅器605、BPF(Band Pass Filter:帯域透過フィルタ)606、遅延要素607により構成される。
【0005】
ミキサ602において、基準信号発生源601で発生した基準信号と、BPF606の出力信号との位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ603に出力される。ループフィルタ603では、遅延要素607での遅延量が一定になるように、遅延要素607への制御信号が生成される。遅延要素607では、ループフィルタ603から入力された制御信号に従ってBPF606の出力信号の遅延量が調整され、遅延された信号が増幅器605にフィードバックされる。増幅器605では、遅延要素607から出力された信号が増幅され、増幅された信号がBPF606に出力される。BPF606では、発振条件ωτ=2πN(ω:角周波数、τ:位相遅延時間、N:任意の整数)を満たす複数の周波数ωの中から、所定の周波数を有する信号のみが透過され、透過された信号が外部に出力されるとともに、遅延要素607及びミキサ602に出力される。図24に示すような第1の機構では、遅延時間を長くするほど、高純度な信号を発生することが可能となる。
【0006】
特許文献1では、第1の機構を有する信号発生装置として、発振信号を一旦光の強度変化に変換し、遅延要素として光ファイバを用い、遅延を受けた光信号を再び電気信号に変換することにより、電気信号を発振する装置が開示されている。特許文献1の技術によれば、光ファイバの広帯域性及び低損失性を活用することによって、ギガヘルツの高周波信号に対して極めて長い遅延時間を実現することができる。また、その結果として、コヒーレンス時間が長く、極めて高純度な電気信号の発生が可能となる。
【0007】
非特許文献1には、長尺ファイバを用いた光パルスレーザ中に、図24と同様の機構を導入し、再生モード同期を行うことにより、極めてジッタの少ない電気信号と光パルス列を同時に得ることが可能な信号発生装置が開示されている。非特許文献1の信号発生装置では、ピエゾアクチュエータを用いて遅延量が制御されている。
【0008】
信号発生装置の第2の機構は、遅延要素を用いて周波数弁別器を構成するものである。図25に、第2の機構を有する信号発生装置800の構成を示す。信号発生装置800は、図25に示すように、基準信号発生源601、ミキサ602、ループフィルタ603、周波数弁別器701、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)702、ループフィルタ703により構成される。周波数弁別器701は、分波器704、遅延要素705、ミキサ706により構成される。なお、図25では、図24の信号発生装置700と同一の構成要素に同一の符号を付している。
【0009】
周波数弁別器701では、分波器704により、VCO702から入力された信号が2つに分岐される。遅延要素705では、ループフィルタ603から入力された制御信号に従って、分波器704で分岐された信号の一方の遅延量が調整される。ミキサ706では、遅延要素705による遅延前後の信号の位相差を検出することにより周波数が弁別される。ループフィルタ703では、周波数弁別器701の出力信号の高周波成分が除去され、除去後の信号がVCO702に出力される。VCO702では、ループフィルタ703の出力信号に基づいて発振周波数が調整される。VCO702の出力信号は、周波数弁別器701及びミキサ602に出力されるとともに、信号発生装置800の出力信号として外部に出力される。このように、図25に示した信号発生装置800では、VCO702から出力された信号の周波数のゆらぎが検出され、このゆらぎがなくなるようにVCO702へのフィードバックが行われている。
【0010】
非特許文献2では、図25のVCO702として半導体レーザを用い、遅延要素の代替としてファブリペロー共振器中の多重反射現象を用いて周波数の弁別を行う信号発生装置が開示されている。非特許文献2の信号発生装置では、非特許文献1と同様に、ピエゾアクチュエータを用いて遅延量が制御されている。
【0011】
また、特許文献2では、図26に示すように、図25のVCO702の代替として、基準信号発生源801及び位相変調器802が用いられた信号発生装置900が開示されている。信号発生装置900では、周波数弁別器701の出力信号がループフィルタ803を介して位相変調器802にフィードバックされることにより、基準信号の位相が制御される。また、周波数弁別器701の出力信号がループフィルタ804を介して周波数弁別器701自身にフィードバックされることにより、遅延量705による信号の遅延量が調整される。図25及び図26に示した第2の機構では、遅延量が大きいほど高感度な周波数弁別が可能となり、その結果として、発振スペクトルの高純度化が可能となる。これは、遅延量が大きいほどコヒーレンス時間の増大が可能であることと等価である。
【特許文献1】特表2002−535853号公報
【特許文献2】特開平5−95228号公報
【非特許文献1】E. Yoshida and M. Nakazawa, “Measurement of the timing jitter and pulse energy fluctuation of a PLL regeneratively mode-locked fiber laser,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 11, no. 5, pp. 548-550, 1999
【非特許文献2】M. Ohtsu and S. Kotajima, “Linewidth reduction of a semiconductor laser by electrical feedback,” IEEE J. Quantum Electron., vol. QE-21, no. 12, pp. 1905-1912, 1985
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、遅延要素の遅延量の制御にピエゾアクチュエータ等の機械的機構を用いる従来の信号発生装置では、可変な遅延量には限度があったため、遅延量の変化量が限度量を超えてしまうと系を安定化させることができず、長期にわたる安定動作を実現することが困難であるという問題があった。
【0013】
本発明の課題は、遅延要素を有する信号発生装置において、遅延要素の遅延量変化に関わらず安定した信号発生を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号に時間遅延を与える遅延要素と、前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相をIQ変調器により電気的に制御する位相制御手段と、を備え、前記遅延要素により時間遅延が与えられ、前記位相制御手段により位相が制御された信号を前記出力手段にフィードバックすることを特徴としている。
【0015】
請求項2に記載の発明は、電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号の周波数を弁別する周波数弁別器を備える信号発生装置において、前記周波数弁別器は、前記出力手段により出力された信号に時間遅延を与える遅延要素と、前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相をIQ変調器により電気的に制御する位相制御手段と、前記遅延要素による遅延前後の信号の位相を比較する位相比較手段と、を備え、前記位相制御手段及び前記位相比較手段により得られた周波数の弁別結果を示す信号を前記出力手段にフィードバックし、前記出力手段は、前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記電気信号又は光信号を出力することを特徴としている。
【0016】
請求項3に記載の発明は、電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号の周波数を弁別する周波数弁別器を備える信号発生装置において、前記周波数弁別器は、前記出力手段により出力された信号に時間遅延を与える遅延要素と、前記遅延要素による遅延前後の信号の位相をIQミキサにより比較する位相比較手段と、前記位相比較手段により出力される2信号に、乗算器により三角関数的な重み付けを与えることによって、前記遅延要素の出力信号の位相を電気的に制御する処理と同等の処理を行う位相制御手段と、前記位相制御手段により重み付けが与えられた2信号を加算する加算器と、を備え、前記位相比較手段、前記位相制御手段及び前記加算器により得られた周波数の弁別結果を示す信号を前記出力手段にフィードバックし、前記出力手段は、前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記電気信号又は光信号を出力することを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の信号発生装置において、基準信号を出力する基準信号発生源と、前記基準信号発生源から出力された基準信号と、前記出力手段の出力信号との位相差を検出する検出手段と、を備え、前記位相制御手段は、前記検出手段により検出された位相差に基づいて位相制御を行うことを特徴としている。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載の信号発生装置において、前記周波数弁別器の出力信号を前記位相制御手段にフィードバックし、前記位相制御手段は、前記周波数弁別器の出力信号に基づいて位相制御を行うことを特徴としている。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の信号発生装置において、前記遅延要素として光ファイバを用い、光の強度を前記出力手段から出力された電気信号に基づいて変調することにより、当該電気信号を光信号に変換する電光変換器と、前記遅延要素により遅延された光信号を電気信号に変換する光電変換器と、を備え、前記位相制御手段は、前記光電変換器により得られた電気信号又は前記出力手段から出力された電気信号の位相を制御することを特徴としている。
【0020】
請求項7に記載の発明は、基準信号を出力する基準信号発生源と、前記基準信号の位相をIQ変調器により電気的に制御する位相制御手段と、前記位相制御手段により位相が制御された信号に時間遅延を与える遅延要素と、前記遅延要素の出力信号と前記基準信号との位相差を検出する検出手段と、を備え、前記検出手段の検出結果を示す信号を前記位相制御手段にフィードバックし、前記位相制御手段は、前記検出手段により検出された位相差に基づいて位相制御を行うことを特徴としている。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5、7の何れか一項に記載の信号発生装置において、前記位相制御手段により位相が制御された信号に同期して光パルスを出力するパルス出力手段を備え、前記遅延要素は、パルス圧縮ファイバを用いて、前記光パルス出力手段により出力されたパルスに時間遅延を与えるとともに、当該パルスの時間幅を圧縮することを特徴としている。
【0022】
請求項9に記載の発明は、電気信号又は光信号を出力し、前記出力された信号に、遅延要素により時間遅延を与え、前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相をIQ変調器により電気的に制御し、前記遅延要素により時間遅延が与えられ、位相制御された信号を、前記電気信号又は光信号を出力する出力手段にフィードバックすることを特徴としている。
【0023】
請求項10に記載の発明は、電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号の周波数を弁別する周波数弁別器を用いて信号を発生する信号発生方法において、前記周波数弁別器は、前記出力手段により出力された信号に、遅延要素により時間遅延を与え、前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相をIQ変調器により電気的に制御し、前記遅延要素による遅延前後の信号の位相を比較し、位相制御及び位相比較により得られた周波数の弁別結果を示す信号を前記出力手段にフィードバックし、前記出力手段は、前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記電気信号又は光信号を出力することを特徴としている。
【0024】
請求項11に記載の発明は、電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号の周波数を弁別する周波数弁別器を用いて信号を発生する信号発生方法において、前記周波数弁別器は、前記出力手段により出力された信号に、遅延要素により時間遅延を与え、前記遅延要素による遅延前後の信号の位相をIQミキサにより比較し、位相比較により出力される2信号に、乗算器により三角関数的な重み付けを与えることによって、前記遅延要素の出力信号の位相を電気的に制御する処理と同等の処理を行い、位相制御により重み付けが与えられた2信号を加算器により加算し、前記位相比較、前記位相制御及び前記加算器により得られた周波数の弁別結果を示す信号を前記出力手段にフィードバックし、前記出力手段は、前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記電気信号又は光信号を出力することを特徴としている。
【0025】
請求項12に記載の発明は、請求項9〜11の何れか一項に記載の信号発生方法において、基準信号発生源により基準信号を出力し、前記出力された基準信号と、前記出力手段の出力信号との位相差を検出し、前記検出された位相差に基づいて前記位相制御を行うことを特徴としている。
【0026】
請求項13に記載の発明は、請求項10又は11に記載の信号発生方法において、前記周波数弁別器の出力信号を、前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相制御を行う手段にフィードバックし、前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記位相制御を行うことを特徴としている。
【0027】
請求項14に記載の発明は、請求項9〜13の何れか一項に記載の信号発生方法において、前記遅延要素として光ファイバを用い、光の強度を前記出力手段から出力された電気信号に基づいて変調することにより、当該電気信号を光信号に変換し、前記遅延要素により遅延された光信号を電気信号に変換し、前記変換により得られた電気信号又は前記出力手段から出力された電気信号に対して前記位相制御を行うことを特徴としている。
【0028】
請求項15に記載の発明は、基準信号発生源により基準信号を出力し、前記基準信号の位相をIQ変調器により電気的に制御し、前記IQ変調器により位相制御された信号に、遅延要素により時間遅延を与え、前記遅延要素の出力信号と前記基準信号との位相差を検出し、前記位相差の検出結果を示す信号を、前記位相制御を行う手段にフィードバックし、前記検出された位相差に基づいて前記位相制御を行うことを特徴としている。
【0029】
請求項16に記載の発明は、請求項9〜13、15の何れか一項に記載の信号発生方法において、前記位相制御された信号に同期して光パルスを出力し、前記遅延要素としてパルス圧縮ファイバを用いて、前記出力されたパルスに時間遅延を与えるとともに、当該パルスの時間幅を圧縮することを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
請求項1及び9に記載の発明によれば、遅延要素の出力信号又は入力信号の位相をIQ変調器によって電気的に制御することにより、遅延要素の遅延量変化の大きさに関わらず、遅延量変化を補償することができる。また、位相制御された信号を出力手段にフィードバックすることにより、遅延量が変化しても、出力手段により出力される信号の周波数変化が小さくなり、安定した動作を実現することができる。
【0031】
請求項2及び10に記載の発明によれば、遅延要素の出力信号又は入力信号の位相をIQ変調器によって電気的に制御することにより、遅延要素の遅延量変化の大きさに関わらず、遅延量変化を補償することができる。また、周波数弁別器の出力信号を用いて出力手段の出力信号の周波数を制御することにより、当該出力信号の位相雑音が低減され、高純度な信号を出力することができる。
【0032】
請求項3及び11に記載の発明によれば、遅延要素による遅延前後の信号の位相差をIQミキサにより検出し、遅延前後の信号の位相を電気的に制御することにより、遅延量変化の大きさに関わらず遅延量変化を補償することができる。また、周波数弁別器の出力信号を用いて出力手段の出力信号の周波数を制御することにより、当該出力信号の位相雑音が低減され、高純度な信号を出力することができる。
【0033】
請求項4及び12に記載の発明によれば、位相制御手段が、検出手段により検出された、出力手段の出力信号と基準信号との位相差に基づいて位相制御を行うことにより、周波数弁別器の特性が調節され、出力手段の出力信号の周波数が制御されるため、出力手段の出力信号と基準信号との同期を実現することができる。
【0034】
請求項5及び13に記載の発明によれば、位相制御手段が、周波数弁別器の出力信号を用いて位相制御を行うことにより、外部同期機構が不要となり、信号発生装置の構成を簡素化することができる。
【0035】
請求項6及び14に記載の発明によれは、遅延要素として光ファイバを使用することにより、長い遅延時間を実現し、非常に純度の高いスペクトルを有する高周波電気信号を発生させることが可能になる。
【0036】
請求項7及び15に記載の発明によれば、遅延要素の出力信号又は入力信号の位相をIQ変調器によって電気的に制御することにより、遅延要素の遅延量変化の大きさに関わらず、遅延量変化を補償することができる。
【0037】
請求項8及び16に記載の発明によれば、遅延要素であるパルス圧縮ファイバから出力される光パルスのタイミングをIQ変調器によって電気的に制御できるため、遅延要素の遅延量変化の大きさに関わらず、遅延量変化にともなう光パルスの出射タイミングの変動を抑え、安定した動作を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照して、本発明の第1〜第6の実施の形態を詳細に説明する。
【0039】
(第1の実施の形態)
図1〜図3を参照して、本発明に係る第1の実施の形態を説明する。
まず、本第1の実施の形態における構成について説明する。図1に、本第1の実施の形態に係る信号発生装置100の構成を示す。信号発生装置100は、図1に示すように、共振器1及び外部同期装置2により構成される。なお、図1において、実線の矢印は、高周波の電気信号又はレーザ光を表し、破線の矢印は、低周波の制御信号を表す。図4〜図6、図8及び図9についても同様である。
【0040】
共振器1は、遅延要素3、IQ変調器4、増幅器5、BPF(Band Pass Filter:帯域透過フィルタ)6により構成される。
遅延要素3は、BPF6の出力信号に時間遅延を与え、遅延された信号をIQ変調器4に出力する。例えば、遅延要素3への入力信号をAcosωt(A:振幅、ω:角周波数、t:時間)、遅延要素3での位相遅延時間をτ(t)とすると、遅延要素3の出力信号は、A(t)=Acos{ω(t−τ(t))}となる。
【0041】
IQ変調器4は、複素VCO(Voltage Controlled Oscillator)10から入力された制御信号に従って、遅延要素3の出力信号の位相を制御する。IQ変調器4で位相制御された信号は増幅器5にフィードバックされる。図2に、IQ変調器4の構成を示す。IQ変調器4は、図2に示すように、90度ハイブリッド分波器40、ミキサ41、42、合波器43により構成される。
【0042】
90度ハイブリッド分波器40は、遅延要素3の出力信号を同相成分(In-phase)と直交成分(Quadrature-phase)に分け、同相成分をミキサ41に出力し、直交成分をミキサ42に出力する。
【0043】
ミキサ41は、複素VCO10からIQ変調器4のIn-phaseポートに入力された信号と、90度ハイブリッド分波器40から入力された同相成分の信号を乗算し、乗算された信号を合波器43に出力する。ミキサ42は、複素VCO10からIQ変調器4のQuadrature-phaseポートに入力された信号と、90度ハイブリッド分波器40から入力された直交成分の信号を乗算し、乗算された信号を合波器43に出力する。合波器43は、ミキサ41から入力された信号と、ミキサ42から入力された信号を合成する。
【0044】
例えば、90度ハイブリッド分波器40への入力信号をA(t)=Acos{ω(t−τ(t))}とすると、この入力信号は、同相成分のAcos{ω(t−τ(t))}と、直交成分のAsin{ω(t−τ(t))}に分けられる。このとき、In-phaseポートへの入力信号をcosΦ(t)、Quadrature-phaseポートへの入力信号をsinΦ(t)とすると、ミキサ41の出力信号はAcos{ω(t−τ(t))}・cosΦ(t)となり、ミキサ42の出力信号はAsin{ω(t−τ(t))}・sinΦ(t)となる。よって、合波器43の出力信号(即ち、IQ変調器4の出力信号)は、A’(t)=Acos{ω(t−τ(t))}・cosΦ(t)−Asin{ω(t−τ(t))}・sinΦ(t)=Acos{ω(t−τ(t))+Φ(t)}となる。
【0045】
増幅器5は、IQ変調器4の出力信号を増幅する。BPF6は、発振条件ωτ=2πN(N;任意の整数)を満たす所定の周波数の信号のみを透過させる。BPF6の出力信号は、遅延要素3、外部同期装置2のミキサ8に出力されるとともに、信号発生装置100の出力信号として外部に出力される。
【0046】
外部同期装置2は、基準信号発生源7、ミキサ8、ループフィルタ9、複素VCO10により構成される。
基準信号発生源7は、基準信号(電気信号或いは光信号)の発生源であり、この基準信号をミキサ8に出力する。ミキサ8は、共振器1のBPF6から出力された信号と、基準信号発生源7から入力された基準信号との位相差を検出し、位相差を示す信号をループフィルタ9に出力する。
【0047】
ループフィルタ9は、ミキサ8の出力信号の高周波成分を除去し、除去後の信号を複素VCO10に出力する。複素VCO10は、ループフィルタ9から入力された信号に基づいて、IQ変調器4へフィードバックする制御信号を生成する。
【0048】
図3に、複素VCO10の構成を示す。複素VCO10は、積分器101、三角関数生成器102、103により構成される。積分器101は、ループフィルタ9の出力信号を時間積分する。三角関数生成器102、103は、積分器101で得られた信号から、それぞれ、余弦波、正弦波の制御信号を生成する。ループフィルタ9の出力信号をs(t)とすると、積分器101ではs(t)が時間積分され、この積分値に所定の係数Kが乗算される。積分器101で得られた信号をΦ(t)とすると、三角関数生成器102及び103で、それぞれ、余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が生成される。余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)は、それぞれ、IQ変調器4のIn-phaseポート、Quadrature-phaseポートへ印加される。
【0049】
次に、図1の信号発生装置100の動作について説明する。
共振器1では、BPF6の出力信号が遅延要素3に入力されると、その入力された信号に時間遅延が与えられる。遅延要素3の出力信号は、IQ変調器16により位相が制御され、位相制御された信号は増幅器5にフィードバックされる。
【0050】
外部同期装置2では、ミキサ8により、BPF6の出力信号と基準信号の位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ9を介して複素VCO10に入力される。複素VCO10では、この位相差に基づいてIQ変調器16への制御信号が生成され、IQ変調器16では、複素VCO10から印加された制御信号に従って、遅延要素3により遅延された信号の位相が制御される。このように、遅延要素3の出力信号はIQ変調器16により電気的に制御される。
【0051】
例えば、遅延要素3の出力信号をA(t)=Acos{ω(t−τ(t))}とすると、位相遅延時間τ(t)が長くなると(遅延時間変化Δτ>0)、信号発生装置100の出力信号の位相が遅れる。この場合、ミキサ8の出力信号が正となり、複素VCO10で得られる位相Φ(t)が正となる。この位相Φ(t)はΦ(t)=ωτ(t)を満たしており、余弦波制御信号cosΦ(t)及び正弦波制御信号sinΦ(t)がIQ変調器4に印加されることにより、IQ変調器4の出力信号の位相がΦ(t)だけ増加し、遅延要素3における位相の遅れが補償されることになる。
【0052】
反対に、遅延要素3の出力信号の位相遅延時間τ(t)が短くなると(遅延時間変化Δτ<0)、信号発生装置100の出力信号の位相が進む。この場合、ミキサ8の出力信号が負となり、複素VCO10で得られる位相Φ(t)が負となる。この位相Φ(t)は、Φ(t)=−ωτ(t)を満たしており、余弦波制御信号cosΦ(t)及び正弦波制御信号sinΦ(t)がIQ変調器4に印加されることにより、IQ変調器4の出力信号の位相がΦ(t)だけ減少し、遅延要素3における位相の増加が補償されることになる。
【0053】
このように、複素VCO10からIQ変調器4への余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が、−1から+1までの有限の範囲内に収まっているため、位相遅延時間τ(t)の無限変化に対して追随可能である。また、複素VCO10の出力信号によってIQ変調器4を駆動することにより、信号発生装置100の発振条件が変化し、信号発生装置100の出力信号の発振周波数が調整される。これにより、基準信号と信号発生装置100の出力信号の同期が実現される。
【0054】
以上のように、本第1の実施の形態の信号発生装置100によれば、遅延要素3の出力信号の位相をIQ変調器によって電気的に制御することにより、遅延量変化の大きさに関わらず遅延量変化を補償することができる。また、位相制御された信号を増幅器5にフィードバックすることにより、遅延要素3の遅延量が変動しても、出力信号の周波数変化が小さく安定した動作を実現することができる。
【0055】
(第2の実施の形態)
図4を参照して、本発明に係る第2の実施の形態を説明する。
まず、本第2の実施の形態における構成について説明する。図4に、本第2の実施の形態に係る信号発生装置200の構成を示す。なお、図4の信号発生装置200において、第1の実施の形態における信号発生装置100と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能説明を省略する。
【0056】
信号発生装置200は、図4に示すように、周波数弁別器11、外部同期装置2、VCO12、ループフィルタ13により構成される。周波数弁別器11は、分波器14、遅延要素15、IQ変調器16、ミキサ17により構成される。
【0057】
分波器14は、VCO12の出力信号を2つに分岐し、分岐された信号の一方を遅延要素15に出力し、他方をミキサ17に出力する。遅延要素15は、分波器14の出力信号に時間遅延を与え、遅延された信号をIQ変調器16に出力する。
【0058】
IQ変調器16は、外部同期装置2の複素VCO10から入力された制御信号に従って、遅延要素15の出力信号の位相を制御し、位相制御された信号をミキサ17に出力する。IQ変調器16の構成は、図2に示したIQ変調器4と同一である。
【0059】
ミキサ17は、分波器14の出力信号(遅延を受けていない信号)と、IQ変調器16の出力信号(位相制御され遅延を受けた信号)の位相を比較することによって周波数を弁別する。以下、信号の振幅Aを1として説明する。例えば、分波器14の出力信号をcosωt、IQ変調器16の出力信号をcos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}とすると、ミキサ17の出力信号は、cosωt・cos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}=(1/2)[cos{ωτ(t)+Φ(t)}+cos{2ωt+ωτ(t)+Φ(t)}]となり、このうち、右辺第一項の低周波成分cos{ωτ(t)+Φ(t)}が周波数弁別器11の出力信号となる。
【0060】
ループフィルタ13は、周波数弁別器11の出力信号の高周波成分を除去し、除去後の信号をVCO12に出力する。VCO12は、ループフィルタ13の出力信号に基づいて発振周波数の調整を行う。VCO12により発振された信号は、周波数弁別器11の分波器14、外部同期装置2のミキサ8に出力されるとともに、信号発生装置200の出力信号として外部に出力される。
【0061】
なお、図4の周波数弁別器11では、遅延要素15により時間遅延が与えられるパスにIQ変調器16を設けた構成としているが、時間遅延が与えられないパスにIQ変調器16を設ける構成としてもよい。即ち、周波数弁別器11中の2つのパスの一方に位相変調機構を設けるようにすればよい。
【0062】
次に、図4の信号発生装置200の動作について説明する。
VCO12の出力信号の一部が周波数弁別器11に入力されると、その入力信号は分波器14において分岐され、一方の信号に遅延要素15により時間遅延が与えられ、その位相がIQ変調器16により制御される。そして、ミキサ17において、遅延前後の信号の位相が比較されることにより周波数が弁別される。周波数弁別器11の出力信号は、ループフィルタ13を介してVCO12にフィードバックされ、これにより、VCO12の発振周波数が制御される。
【0063】
外部同期装置2では、ミキサ8により、VCO12の出力信号と基準信号の位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ9を介して複素VCO10に入力される。複素VCO10では、この位相差に基づいてIQ変調器16への制御信号が生成され、IQ変調器16では、複素VCO10から印加された制御信号に従って、遅延要素15により遅延された信号の位相が制御される。
【0064】
例えば、遅延要素15の出力信号がAcos{ω(t+τ(t))}である場合、位相遅延時間τ(t)の時間変化が生じると、基準信号と信号発生装置200の出力信号の位相差が変化し、この位相差がミキサ8により検出される。そして、複素VCO10からIQ変調器16へ、Φ(t)=−ωτ(t)+π/2を満たす余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が印加されることにより、遅延された信号の位相が制御される。
【0065】
このように、複素VCO10からIQ変調器16への余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が、−1から+1までの有限の範囲内に収まっているため、位相遅延時間τ(t)の無限変化に対して追随可能である。また、複素VCO10の出力信号によってIQ変調器16を駆動することにより、周波数弁別器11の特性が調節される。周波数弁別器11の特性の変化に伴い、周波数弁別器11の出力信号の直流成分が発生し、ループフィルタ13を介してVCO12の発振周波数が制御される。これにより、基準信号と信号発生装置200の出力信号の同期が実現される。
【0066】
以上のように、本第2の実施の形態の信号発生装置200によれば、遅延要素15の出力信号の位相をIQ変調器16を用いて電気的に制御することにより、遅延量変化の大きさに関わらず遅延量変化を補償することができる。また、周波数弁別器11の出力信号を用いてVCO12の発振周波数を制御することにより、VCO12の出力信号の位相雑音が低減され、高純度な信号を出力することができる。また、信号発生装置200は、BPFが不要であるため、周波数の可変性に優れている。
【0067】
(第3の実施の形態)
図5を参照して、本発明に係る第3の実施の形態を説明する。
まず、本第3の実施の形態における構成について説明する。図5に、本第3の実施の形態に係る信号発生装置300の構成を示す。なお、図5の信号発生装置300において、第2の実施の形態における信号発生装置200と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能説明を省略する。
【0068】
信号発生装置300は、図5に示すように、周波数弁別器11、基準信号発生源18、位相変調器19、ループフィルタ20、複素VCO21、ループフィルタ22により構成される。
【0069】
基準信号発生源18は、基準信号(電気信号或いは光信号)の発生源であり、この基準信号を位相変調器19に出力する。位相変調器19は、ループフィルタ20から入力された信号に従って基準信号の位相を変調する。位相変調器19で位相変調された信号は、周波数弁別器11の分波器14に出力されるとともに、信号発生装置300の出力信号として外部に出力される。
【0070】
ループフィルタ22は、周波数弁別器11の出力信号の高周波成分を除去し、除去後の信号を複素VCO21に出力する。複素VCO21は、ループフィルタ22から入力された信号に基づいてIQ変調器16へフィードバックする制御信号を生成する。複素VCO21の構成は、図3に示した複素VCO10と同一である。
【0071】
次に、図5の信号発生装置300の動作について説明する。
基準信号発生源18で発生した基準信号は位相変調器19に入力され、ループフィルタ20から入力された信号に従って、基準信号の位相が制御される。位相変調器19の出力信号の一部は周波数弁別器11に入力される。周波数弁別器11に入力された信号は分波器14において分岐され、一方の信号に遅延要素15により時間遅延が与えられ、その位相がIQ変調器16により制御される。そして、ミキサ17において、遅延前後の信号の位相が比較されることにより周波数が弁別される。周波数弁別器11の出力信号は、ループフィルタ20を介して位相変調器19にフィードバックされ、基準信号の位相が制御される。
【0072】
複素VCO21では、周波数弁別器11からループフィルタ22を介して入力された信号に基づいてIQ変調器16への制御信号が生成され、IQ変調器16では、複素VCO21から印加された制御信号に従って、遅延要素15により遅延された信号の位相が制御される。
【0073】
例えば、遅延要素15の出力信号がAcos{ω(t+τ(t))}である場合、位相遅延時間τ(t)の時間変化が生じると、この時間変化が周波数弁別器11の直流バイアスとして検出され、複素VCO21からIQ変調器16へ、Φ(t)=−ωτ(t)+π/2を満たす余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が印加されることにより、遅延された信号が位相制御される。
【0074】
このように、複素VCO21からIQ変調器16への余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が、−1から+1までの有限の範囲内に収まっているため、位相遅延時間τ(t)の無限変化に対して追随可能である。
【0075】
以上のように、本第3の実施の形態の信号発生装置300によれば、遅延要素15の出力信号の位相をIQ変調器16を用いて電気的に制御することにより、遅延量変化の大きさに関わらず遅延量変化を補償することができる。また、周波数弁別器11の出力信号を用いて基準信号の位相を制御することにより、基準信号の位相雑音が低減され、高純度な信号を出力することができる。また、信号発生装置300は、外部同期機構が不要であるため、構成を簡素化することができる。更に、信号発生装置300は、BPFが不要であるため、周波数の可変性に優れている。
【0076】
(第4の実施の形態)
図6及び図7を参照して、本発明に係る第4の実施の形態を説明する。
まず、本第4の実施の形態における構成について説明する。図6に、本第4の実施の形態に係る信号発生装置400の構成を示す。なお、図6の信号発生装置400において、第2の実施の形態における信号発生装置200と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能説明を省略する。
【0077】
信号発生装置400は、図6に示すように、外部同期装置2、周波数弁別器23、VCO12、ループフィルタ13により構成される。周波数弁別器23は、分波器24、遅延要素25、IQミキサ26、乗算器27、28、加算器29により構成される。
【0078】
分波器24は、VCO12の出力信号を2つに分岐し、分岐された信号の一方を遅延要素25に出力し、他方をIQミキサ26に出力する。遅延要素25は、分波器24の出力信号に時間遅延を与え、遅延された信号をIQミキサ26に出力する。
【0079】
IQミキサ26は、分波器24の出力信号(遅延を受けていない信号)と、遅延要素25の出力信号の位相を比較し、比較結果を乗算器27、28に出力する。図7に、IQミキサ26の構成を示す。IQミキサ26は、図7に示すように、90度ハイブリッド分波器260、分波器261、ミキサ262、263により構成される。
【0080】
90度ハイブリッド分波器260は、遅延要素25の出力信号を同相成分(In-phase)と直交成分(Quadrature-phase)に分け、同相成分をミキサ262に出力し、直交成分をミキサ263に出力する。分波器261は、分波器24の出力信号(遅延を受けていない信号)を2つに分岐し、分岐された信号の一方をミキサ262に出力し、他方をミキサ263に出力する。
【0081】
ミキサ262は、90度ハイブリッド分波器40から入力された同相成分の信号と、分波器261の出力信号を乗算し、乗算された信号の低周波成分を乗算器27に出力する。ミキサ263は、90度ハイブリッド分波器40から入力された直交成分の信号と、分波器261の出力信号を乗算し、乗算された信号の低周波成分を乗算器28に出力する。
【0082】
例えば、分波器24の出力信号をAcosωt、遅延要素25から90度ハイブリッド分波器260への入力信号をA(t)=Acos{ω(t+τ(t))}とすると、この入力信号は、同相成分のAcos{ω(t+τ(t))}と、直交成分のAsin{ω(t+τ(t))}に分けられる。以下、信号の振幅Aを1として説明する。この場合、ミキサ262の出力信号は、cos{ω(t+τ(t))}・cosωt=(1/2)[cos{ω(2t+τ(t))}+cos{ωτ(t)}]の低周波成分cos{ωτ(t)}となる。また、ミキサ263の出力信号は、sin{ω(t+τ(t))}・cosωt=(1/2)[sin{ω(2t+τ(t))}+sin{ωτ(t)}]の低周波成分sin{ωτ(t)}となる。
【0083】
乗算器27、28は、IQミキサ26の出力信号と、複素VCO10の出力信号を乗算し、乗算結果を加算器29に出力する。加算器29は、乗算器27から入力された信号と、乗算器28から入力された信号を加算し、加算結果を示す信号を周波数弁別器23の出力信号として出力する。
【0084】
例えば、複素VCO10から乗算器27、28への入力信号を、それぞれ、正弦波制御信号sinΦ(t)、余弦波制御信号cosΦ(t)とすると、乗算器27の出力信号はcos{ωτ(t)}・sinΦ(t)、乗算器28の出力信号はsin{ωτ(t)}・cosΦ(t)となり、加算器29の出力信号は、cosωτ(t)・sinΦ(t)+sin{ωτ(t)}・cosΦ(t)=sin{ωτ(t)+Φ(t)}となる。
【0085】
次に、図6の信号発生装置400の動作について説明する。
VCO12の出力信号の一部が周波数弁別器23に入力されると、この入力信号は分波器24において分岐され、一方の信号に遅延要素25により時間遅延が与えられた後、両信号はIQミキサ26に入力される。IQミキサ26では、遅延前後の信号の位相が比較され、比較結果を示す2信号が出力され、これら2信号は、乗算器27及び28において重みが与えられた後加算され、加算後の信号が周波数弁別器23の出力信号となる。乗算器27及び28では、複素VCO10から入力された制御信号に従って重みが与えられる。周波数弁別器23の出力信号は、ループフィルタ13を介してVCO12にフィードバックされ、これにより、VCO12の発振周波数が制御される。
【0086】
外部同期装置2では、ミキサ8により、VCO12の出力信号と基準信号の位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ9を介して複素VCO10に入力される。複素VCO10では、この位相差に基づいて乗算器27及び28へ印加する制御信号が生成される。例えば、遅延要素25の出力信号がAcos{ω(t+τ(t))}である場合、位相遅延時間τ(t)の時間変化が生じると、基準信号と信号発生装置400の出力信号の位相差が変化し、この位相差がミキサ8により検出される。そして、複素VCO10から乗算器27及び28へ、それぞれ、Φ(t)=−ωτ(t)を満たす余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が印加される。
【0087】
このように、複素VCO10から乗算器27及び28への余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が、−1から+1までの有限の範囲内に収まっているため、位相遅延時間τ(t)の無限変化に対して追随可能である。また、複素VCO10から乗算器27及び28への制御信号により加算器29の入力信号を変化させることによって、周波数弁別器23の特性が調節される。周波数弁別器23の特性の変化に伴い、周波数弁別器23の出力信号の直流成分が発生し、ループフィルタ13を介してVCO12の発振周波数が制御される。これにより、基準信号と信号発生装置400の出力信号の同期が実現される。
【0088】
以上のように、本第4の実施の形態の信号発生装置400によれば、遅延要素25による遅延前後の信号の位相差をIQミキサ26により検出し、遅延前後の信号の位相を電気的に制御することにより、遅延量変化の大きさに関わらず遅延量変化を補償することができる。また、周波数弁別器23の出力信号を用いてVCO12の発振周波数を制御することにより、VCO12の出力信号の位相雑音が低減され、高純度な信号を出力することができる。また、IQ変調器を用いずに遅延前後の信号の位相を制御することにより、信号発生装置400の構成を簡素化することができる。
【0089】
(第5の実施の形態)
図8を参照して、本発明に係る第5の実施の形態を説明する。
まず、本第5の実施の形態における構成について説明する。図8に、本第5の実施の形態に係る信号発生装置500の構成を示す。なお、図8の信号発生装置500において、第3の実施の形態における信号発生装置300及び第4の実施の形態における信号発生装置400と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能説明を省略する。
【0090】
信号発生装置500は、図8に示すように、基準信号発生源18、位相変調器19、ループフィルタ20、複素VCO21、ループフィルタ22、周波数弁別器23により構成される。
【0091】
ループフィルタ22は、周波数弁別器23の出力信号の高周波成分を除去し、除去後の信号を複素VCO21に出力する。複素VCO21は、ループフィルタ22から入力された信号に基づいて、周波数弁別器23の乗算器27及び28へフィードバックする制御信号を生成する。
【0092】
次に、図8の信号発生装置500の動作について説明する。
基準信号発生源18で発生した基準信号は位相変調器19に入力され、ループフィルタ20から入力された信号に従って位相が制御され、位相変調器19の出力信号の一部は周波数弁別器23に入力される。周波数弁別器23に入力された信号は分波器14において分岐され、一方の信号に遅延要素25により時間遅延が与えられた後、両信号はIQミキサ26に入力される。IQミキサ26では、遅延前後の信号の位相が比較され、比較結果を示す2信号が出力され、これら2信号は、乗算器27及び28において重みが与えられた後、加算され、加算後の信号が周波数弁別器23の出力信号となる。乗算器27及び28では、複素VCO21から入力された制御信号に従って重みが与えられる。周波数弁別器23の出力信号は、ループフィルタ20を介して位相変調器19に入力され、基準信号の位相が制御される。
【0093】
複素VCO21では、周波数弁別器11からループフィルタ22を介して入力された信号に基づいて乗算器27及び28への制御信号が生成される。複素VCO21から乗算器27及び28への余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)は、−1から+1までの有限の範囲内に収まっているため、位相遅延時間τ(t)の無限変化に対して追随可能である。
【0094】
以上のように、本第5の実施の形態の信号発生装置500によれば、周波数弁別器23が備える乗算器27、28を用いて遅延要素25の出力信号の位相を電気的に制御することにより、遅延量変化の大きさに関わらず遅延量変化を補償することができる。また、周波数弁別器23の出力信号を用いて基準信号の位相を制御することにより、基準信号の位相雑音が低減され、高純度な信号を出力することができる。また、信号発生装置500は、外部同期機構が不要であるため、構成を簡素化することができる。更に、IQ変調器を用いずに、遅延前後の信号の位相を制御することにより、信号発生装置500の構成を簡素化することができる。
【0095】
(第6の実施の形態)
図9を参照して、本発明に係る第6の実施の形態を説明する。
まず、本第6の実施の形態における構成について説明する。図9に、本第6の実施の形態に係る信号発生装置600の構成を示す。信号発生装置600は、図9に示すように、基準信号発生源31、IQ変調器32、複素VCO33、遅延要素34、ミキサ35により構成される。
【0096】
基準信号発生源31は、基準信号の発生源であり、この基準信号をIQ変調器32及びミキサ35に出力する。IQ変調器32は、複素VCO33から入力された制御信号に従って基準信号の位相を制御し、位相制御された信号を遅延要素34に出力する。IQ変調器32の構成は、図2に示したIQ変調器4と同一である。
【0097】
遅延要素34は、IQ変調器32の出力信号に時間遅延を与え、遅延された信号をミキサ35に出力する。遅延要素34の出力信号は、更に信号発生装置600の出力信号として外部に出力される。
【0098】
ミキサ35は、遅延要素34の出力信号と基準信号との位相差を検出し、位相差を示す信号を、ループフィルタ(図示略)を介して複素VCO33に出力する。複素VCO33は、ミキサ35からループフィルタを介して入力された信号に基づいてIQ変調器32へフィードバックする制御信号を生成し、生成された制御信号をIQ変調器32に印加する。複素VCO33の構成は、図3に示した複素VCO10と同一である。
【0099】
次に、図9の信号発生装置600の動作について説明する。
基準信号発生源31で発生した基準信号はIQ変調器32及びミキサ35に入力され、IQ変調器32では、複素VCO33から印加された制御信号に従って基準信号の位相が制御される。IQ変調器32で位相制御された信号は、遅延要素34により時間遅延が与えられ、遅延された信号はミキサ35に出力されるとともに、信号発生装置600の出力信号として外部に出力される。
【0100】
ミキサ35では、遅延要素34の出力信号と基準信号との位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタを介して複素VCO33にフィードバックされる。複素VCO33では、ミキサ35からループフィルタを介して入力された信号に基づいてIQ変調器32への制御信号が生成され、その生成された制御信号がIQ変調器32に印加される。
【0101】
例えば、基準信号をcosωt、複素VCO33で生成される余弦波制御信号及び正弦波制御信号を、それぞれ、cosΦ(t)、sinΦ(t)とすると、IQ変調器32の出力信号は、cosωtcosΦ(t)+cos(ωt+π/2)sinΦ(t)=cos{ωt+Φ(t)}となる。遅延要素34で位相遅延時間τ(t)の時間遅延が与えられると、遅延要素34の出力信号は、cos{ω(t−τ(t))+Φ(t)}となる。ミキサ35では、遅延要素34の出力信号と基準信号の位相差の余弦関数cos{−ωτ(t)+Φ(t)}が検出され、複素VCO33では、当該検出信号が0(即ち、ωτ(t)=Φ(t)+(N+1/2)π)(N:任意の整数)に保たれるようにΦ(t)を変化させる。
【0102】
このように、複素VCO33からIQ変調器32へ印加される余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が、−1から+1までの有限の範囲内に収まっているため、位相遅延時間τ(t)の無限変化に対して追随可能である。
【0103】
以上のように、本第6の実施の形態の信号発生装置600によれば、遅延要素34の入力信号をIQ変調器32によって電気的に制御することにより、遅延要素34の遅延量変化の大きさに関わらず、遅延量変化を補償することができる。
【0104】
<変形例>
図9の信号発生装置600では、出力信号の位相が一定に保たれているが、同装置に対してわずかな変更を施すだけで、出力信号の位相を任意に制御することが可能となる。図10に、第6の実施の形態の変形例として、出力信号の位相を任意に制御可能な信号発生装置600Aの構成を示す。なお、図10の信号発生装置600Aにおいて、図9の信号発生装置600と同一の構成要素には同一の符号を付している。信号発生装置600Aでは、IQミキサ26(図7参照)及び逆正接演算器301を用いて、基準信号と出力信号の位相差が検出される。
【0105】
例えば、基準信号をcosωt、複素VCO33で生成される余弦波制御信号及び正弦波制御信号を、それぞれ、cosΦ(t)、sinΦ(t)とすると、IQ変調器32の出力信号は、cosωtcosΦ(t)+cos(ωt+π/2)sinΦ(t)=cos{ωt+Φ(t)}となる。遅延要素34で位相遅延時間τ(t)の時間遅延が与えられると、遅延要素34の出力信号は、cos{ω(t−τ(t))+Φ(t)}となる。IQミキサ26は、遅延要素34の出力信号と基準信号から、cos{−ωτ(t)+Φ(t)}及びsin{−ωτ(t)+Φ(t)}を検出する。逆正接演算器301は、遅延要素34の出力信号と基準信号の位相差−ωτ(t)+Φ(t)を算出する。複素VCO33では、逆正接演算器301の算出結果に対し、任意の位相ψ0を用いて、ψ0+ωτ(t)−Φ(t)が0となるようにΦ(t)を変化させる。
【0106】
このように、複素VCO33からIQ変調器32へ印加される余弦波制御信号cosΦ(t)、正弦波制御信号sinΦ(t)が、−1から+1までの有限の範囲内に収まっているため、位相遅延時間τ(t)の無限変化に対して追随可能である。また、IQミキサ26と逆正接演算器301を使用することで、基準信号と出力信号の位相差−ωτ(t)+Φ(t)を検出できるため、出力信号の位相を任意の値ψ0に制御することが可能となる。
【0107】
次に、第1〜第6の実施の形態の具体例について、実施例1〜10を挙げて説明する。
【実施例1】
【0108】
実施例1では、第1の実施の形態の信号発生装置100(図1参照)を電気信号発生装置に適用した例について説明する。図11に、実施例1に係る信号発生装置100Aの構成を示す。
【0109】
信号発生装置100Aは、図11に示すように、共振器1a、外部同期装置2aにより構成される。共振器1aは、レーザ50、光強度変調器51(電光変換器)、ファイバ遅延線52、PD(Photo Detector:光検出器)53(光電変換器)、IQ変調器54、増幅器55、BPF56により構成される。なお、IQ変調器54は、ファイバ遅延線52の入力端、出力端の何れに配置してもよい。外部同期装置2aは、基準信号発生源57、ミキサ58、ループフィルタ59、複素VCO60により構成される。
【0110】
共振器1aでは、増幅器55から出力された電気信号がBPF56に入力され、BPF56から出力された電気信号が光強度変調器51に入力される。光強度変調器51では、レーザ50から入力されたレーザ光の強度を、BPF56から入力された電気信号に従って変調することにより、電気信号がレーザ光(光信号)の強度変化に変換される。強度変調されたレーザ光は、ファイバ遅延線52に入力され、時間遅延が与えられる。ファイバ遅延線52の出力光若しくはその一部はPD53に入力され、電気信号に変換される。この電気信号の位相は、IQ変調器54によって制御され、増幅器55にフィードバック(帰還)される。これによって正帰還が発生し、発振が持続する。信号発生装置100Aの出力信号は、BPF56の出力信号を分岐することによって取り出される。
【0111】
外部同期装置2aでは、ミキサ58により、BPF56から出力された信号発生装置100Aの出力信号と基準信号の位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ59を介して複素VCO60に入力され、複素VCO60の出力信号によってIQ変調器54が駆動される。これにより、信号発生装置100Aの発振条件が変化し、発振周波数が調整される。よって、信号発生装置100Aの出力信号と基準信号との同期が実現される。
【0112】
実施例1の信号発生装置100Aによれば、遅延要素としてファイバ遅延線52を用いることにより、長い遅延時間を実現し、非常に純度の高いスペクトルを有する高周波電気信号の発生が可能となる。また、一般に光ファイバは、周囲温度の変化によりその長さが変動し、それに伴って遅延時間(伝播時間)も変動するが、本実施例1を適用することにより、動作の安定性を確保することができる。
【実施例2】
【0113】
実施例2では、第1の実施の形態の信号発生装置100(図1参照)をレーザ発振器に適用した例について説明する。図12に、実施例2に係る信号発生装置100Bの構成を示す。
【0114】
信号発生装置100Bは、図12に示すように、共振器1b、外部同期装置2bにより構成される。共振器1bは、ミラー61、光IQ変調器62、利得媒質63、光周波数選択フィルタ64により構成される。外部同期装置2bは、マスタレーザ65、PD66、ループフィルタ67、複素VCO68により構成される。
【0115】
マスタレーザ65は、基準信号となるレーザ光を出力し、PD66は、レーザ光(基準信号)と共振器1bの出力光との位相差を検出する。共振器1bは、一般的な半導体レーザと比較して、共振器1b中の光の周回時間が長く、共振器1b自体が遅延要素となっている。共振器1b中の光IQ変調器62は、図2に示したIQ変調器4と同一の原理で動作する。この光IQ変調器62については、K. Higuma, S. Oikawa, Y. Hashimoto, H. Nagata, M. Izutsu, “X-cut lithium niobate optical single-sideband modulator,” Electron. Lett., vol.37, no.8 , pp. 515-516, 2001に詳細な解説がなされている。この文献に示されたOSSBM(Optical Single-SideBand Modulator)が、本実施例の光IQ変調器62に該当する。
【0116】
共振器1bでは、ミラー61と光周波数選択フィルタ64の間で光が往復し、ミラー61に入力された光の一部が透過し、共振器1bから出力される。この共振器1bでは、利得媒質63が出力する信号が、光IQ変調器62及び光周波数選択フィルタ64を介して利得媒質63にフィードバック(帰還)されることにより、正帰還が発生し、発振が持続する。
【0117】
外部同期装置2bでは、共振器1bの出力光の一部が分岐され、PD66において、マスタレーザ65から出力されたレーザ光(基準信号)と共振器1bの出力光との位相差が検出される。この位相差を示す信号は、ループフィルタ67を介して複素VCO68に入力される。複素VCO68の出力信号によって光IQ変調器62を駆動することにより、共振器1b内の位相回転量が制御される。
【0118】
一般に、外部共振型レーザは、共振器長を長尺化することにより出力光の高純度化が可能であるが、周囲の温度等によって共振器長の変化が生じやすく、長期の安定性を得られない。本実施例2の信号発生装置100Bでは、共振器長の変化を電気的制御によって補償できるため、安定性を犠牲せずにレーザ光の純度を高めることができる。また、共振器長の変化の補償に可動部品を使用しないため、光学アライメントの安定性が向上する。
【実施例3】
【0119】
実施例3では、第2の実施の形態の信号発生装置200(図4参照)を電気信号発生装置に適用した例について説明する。図13に、実施例3に係る信号発生装置200Aの構成を示す。なお、図13の信号発生装置200Aにおいて、実施例1の信号発生装置100Aと同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0120】
信号発生装置200Aは、図13に示すように、周波数弁別器11a、外部同期装置2a、VCO12a、ループフィルタ13aにより構成される。周波数弁別器11aは、レーザ50、光強度変調器51、ファイバ遅延線52、PD53、IQ変調器54、分波器70、ミキサ71により構成される。なお、IQ変調器54は、ファイバ遅延線52の入力端、出力端の少なくとも一方に配置するようにしてもよい。例えば、図13では、PD53とミキサ71の間にIQ変調器54を配置しているが、分波器70と光強度変調器51の間にIQ変調器54を配置しても同様の動作が得られる。
【0121】
周波数弁別器11aでは、VCO12aから出力された電気信号の一部が分波器70に入力され、更にその一部が光強度変調器51に入力される。光強度変調器51では、レーザ50から入力されたレーザ光の強度を、VCO12aから入力された電気信号に従って変調することにより、入力された電気信号がレーザ光の強度変化に変換される。強度変調されたレーザ光は、ファイバ遅延線52に入力され、時間遅延が与えられる。ファイバ遅延線52の出力光若しくはその一部はPD53に入力され、電気信号に変換される。この電気信号の位相は、IQ変調器54によって制御され、位相制御された信号はミキサ71に入力される。ミキサ71では、遅延前後の信号の位相を比較することによって周波数が弁別される。周波数弁別器11aの出力信号は、ループフィルタ13aを介してVCO12aにフィードバックされる。
【0122】
外部同期装置2aでは、ミキサ58により、VCO12aの出力信号と基準信号の位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ59を介して複素VCO60に入力される。複素VCO60の出力信号によってIQ変調器54を駆動することにより、周波数弁別器11aの特性が調節される。周波数弁別器11aの特性の変化に伴い、周波数弁別器11aの出力信号の直流成分が発生し、ループフィルタ13aを介してVCO12aの入力電圧が変化することにより、VCO12aの発振周波数が変化する。このようにして、外部同期装置2aによりVCO12aの発振周波数を制御することによって、信号発生装置200Aの出力信号と基準信号との同期が実現される。
【0123】
実施例3の信号発生装置200Aによれば、周波数弁別器11aの出力信号をVCO12aにフィードバックして、VCO12aの発振周波数を制御することにより、VCO12aの出力信号の位相雑音を低減させることができる。
【実施例4】
【0124】
実施例4では、第2の実施の形態の信号発生装置200(図4参照)をレーザ発振器に適用した例について説明する。図14に、実施例4に係る信号発生装置200Bの構成を示す。なお、図14の信号発生装置200Bにおいて、実施例2の信号発生装置100Bと同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0125】
信号発生装置200Bは、図14に示すように、周波数弁別器11b、外部同期装置2b、LD(Laser Diode)12b、ループフィルタ13bにより構成される。LD12bは、光VCOとしての機能を有する。周波数弁別器11bは、分波器80、光IQ変調器81、遅延要素82a、82b、合波器83、PD84a、84b、減算器85により構成される。合波器83、PD84a、84b、減算器85は、図4のミキサ17としての機能を有する。光IQ変調器81は、図12に示した光IQ変調器62と同一の構成を有する。
【0126】
周波数弁別器11bでは、LD12bが出力するレーザ光の一部が入力されると、そのレーザ光は分波器80で分岐され、分岐されたレーザ光の一方に、遅延素子82a及び82bにより時間遅延が与えられ、その位相が光IQ変調器81により制御される。そして、遅延前後のレーザ光が合波器83で合波され、合波後のレーザ光の光強度をPD84a及び84bで検出することにより、レーザ光の周波数が弁別される。周波数弁別器11bの出力信号は、ループフィルタ13bを介してLD12bにフィードバックされる。
【0127】
PD84a、84b及び減算器85では、以下のような演算が行われる。以下、信号の振幅を1として説明する。分波器80から出力された遅延を受けていないレーザ光の電界をcosωt、位相制御され遅延を受けたレーザ光の電界をcos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}とする。合波器83では、2つの出力信号cosωt+cos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}、cosωt−cos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}が生成され、それぞれ、PD84a、84bに出力される。
【0128】
PD84a及び84bでは、光強度(電界の2乗)が算出される。即ち、PD84aの出力信号は[cosωt+cos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}]2となり、PD84bの出力信号は[cosωt−cos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}]2となる。減算器85では、PD84aの出力信号から、PD84bの出力信号が差し引かれ、得られた信号の低周波成分が周波数弁別器11bの出力信号となる。即ち、減算器85の出力信号は、下記の式(1)のようになる。
[cosωt+cos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}]2−[cosωt−cos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}]2
=4cosωt・cos{ω(t+τ(t))+Φ(t)}
=2cos{ωτ(t)+Φ(t)}+2cos{ω(2t+τ(t))+Φ(t)} (1)
式(1)の低周波成分cos{ωτ(t)+Φ(t)}が周波数弁別器11aから出力される。
【0129】
外部同期装置2bでは、PD66により、LD12bの出力光と、マスタレーザ65から出力されたレーザ光(基準信号)との位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ67を介して複素VCO68に入力される。複素VCO68の出力信号によって光IQ変調器81を駆動することにより、周波数弁別器11bの特性が調節される。周波数弁別器11bの特性の変化に伴い、周波数弁別器11bの出力信号の直流成分が発生し、ループフィルタ13bを介してLD12bの入力電圧が変化することにより、LD12bの出力光の周波数が変化する。このようにして、外部同期装置2bによりLD12bの出力光の周波数を制御することによって、LD12aの出力光とマスタレーザ65の出力光との同期が実現される。
【0130】
実施例4の信号発生装置200Bによれば、周波数弁別器11bの出力信号をLD12bにフィードバックして、LD12bの出力光の周波数を制御することにより、LD12bの出力光の位相雑音を低減させることができる。
【実施例5】
【0131】
実施例5では、第3の実施の形態の信号発生装置300(図5参照)を電気信号発生装置に適用した例について説明する。図15に、実施例5に係る信号発生装置300Aの構成を示す。なお、図15の信号発生装置300Aにおいて、実施例3の信号発生装置200Aと同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0132】
信号発生装置300Aは、図15に示すように、周波数弁別器11a、基準信号発生源18a、位相変調器19a、ループフィルタ20a、複素VCO21a、ループフィルタ22aにより構成される。
【0133】
位相変調器19aでは、基準信号の位相がループフィルタ20aの出力信号に基づいて変調され、変調後の信号の一部は周波数弁別器11aに入力される。周波数弁別器11aの出力信号は、ループフィルタ20aを介して位相変調器19aに入力される。また、周波数弁別器11aの出力信号は、ループフィルタ22aを介して複素VCO21aに入力され、複素VCO21aの出力信号が周波数弁別器11aのIQ変調器54にフィードバックされる。
【0134】
実施例5の信号発生装置300Aによれば、IQ変調器54によって周波数弁別器11aの特性の調節がなされるため、周波数弁別器11aの出力信号の位相反転が発生せず、位相変調器19aの出力信号の位相雑音を低減させることができる。
【実施例6】
【0135】
実施例6では、第3の実施の形態の信号発生装置300(図5参照)をレーザ発振器に適用した例について説明する。図16に、実施例6に係る信号発生装置300Bの構成を示す。なお、図16の信号発生装置300Bにおいて、実施例4の信号発生装置200Bと同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0136】
信号発生装置300Bは、図16に示すように、周波数弁別器11b、マスタレーザ18b、位相変調器19b、ループフィルタ20b、複素VCO21b、ループフィルタ22bにより構成される。
【0137】
位相変調器19bでは、マスタレーザ18bから出力されたレーザ光の位相がループフィルタ20bの出力信号に基づいて変調され、変調後の信号の一部は周波数弁別器11bに入力される。周波数弁別器11bの出力信号は、ループフィルタ20bを介して位相変調器19bに入力される。また、周波数弁別器11bの出力信号は、ループフィルタ22bを介して複素VCO21bに入力され、複素VCO21bの出力信号が周波数弁別器11bの光IQ変調器81にフィードバックされる。
【0138】
実施例6の信号発生装置300Bによれば、光IQ変調器81によって周波数弁別器11bの特性の調節がなされるため、周波数弁別器11bの出力信号の位相反転が発生せず、安定な動作が可能となる。
【実施例7】
【0139】
実施例7では、第4の実施の形態の信号発生装置400(図6参照)をレーザ発振器に適用した例について説明する。図17に、実施例7に係る信号発生装置400Bの構成を示す。なお、図17の信号発生装置400Bにおいて、実施例4の信号発生装置200Bと同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0140】
信号発生装置400Bは、図17に示すように、周波数弁別器23b、外部同期装置2b、LD12b、ループフィルタ13bにより構成される。周波数弁別器23bは、分波器90、遅延要素91a、91b、91c、光IQミキサ92、乗算器93、94、加算器95により構成される。
【0141】
周波数弁別器23bでは、LD12bが出力するレーザ光の一部が入力されると、そのレーザ光は分波器90で分岐され、分岐されたレーザ光の一方に、遅延素子91a、91b、91cにより時間遅延が与えられた後、両者は光IQミキサ92に入力される。そして、光IQミキサ92の出力する2信号に、複素VCO68の出力信号により重み付けが与えられた後加算され、周波数弁別器23bから出力される。周波数弁別器23bの出力信号は、ループフィルタ13bを介してLD12bにフィードバックされる。
【0142】
外部同期装置2bでは、PD66により、LD12bの出力光と、マスタレーザ65から出力されたレーザ光(基準信号)との位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ67を介して複素VCO68に入力される。複素VCO68の出力信号によって加算器95の入力信号が変化することにより、周波数弁別器23bの特性が調節される。周波数弁別器23bの特性の変化に伴い、周波数弁別器23bの出力信号の直流成分が発生し、ループフィルタ13bを介してLD12bの入力電圧が変化することにより、LD12bの出力光の周波数が変化する。このようにして、外部同期装置2bによりLD12bの出力光の周波数を制御することによって、LD12bの出力光とマスタレーザ65の出力光との同期が実現される。
【0143】
実施例7の信号発生装置400Bによれば、周波数弁別器23bの出力信号をLD12bにフィードバックすることにより、LD12bの出力光の位相雑音を低減させることができる。
【実施例8】
【0144】
実施例8では、第5の実施の形態の信号発生装置500(図8参照)をレーザ発振器に適用した例について説明する。図18に、実施例8に係る信号発生装置500Bの構成を示す。なお、図18の信号発生装置500Bにおいて、実施例6の信号発生装置300B及び実施例7の信号発生装置400Bと同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0145】
信号発生装置500Bは、図18に示すように、周波数弁別器23b、マスタレーザ18b、位相変調器19b、ループフィルタ20b、複素VCO21b、ループフィルタ22bにより構成される。
【0146】
位相変調器19bでは、マスタレーザ18bから出力されたレーザ光の位相がループフィルタ20bの出力信号に基づいて変調され、変調後の信号の一部は周波数弁別器23bに入力される。周波数弁別器23bの出力信号は、ループフィルタ20bを介して位相変調器19bにフィードバックされる。また、周波数弁別器23bの出力信号は、ループフィルタ22bを介して複素VCO21bに入力され、複素VCO21bの出力信号が周波数弁別器23bの乗算器93及び94にフィードバックされる。
【0147】
実施例8の信号発生装置500Bによれば、乗算器93及び94によって、光IQミキサ92が出力する2信号の重み付けが変化して、周波数弁別器23bの特性の調節がなされるため、周波数弁別器23bの出力信号の位相反転が発生せず、安定な動作が可能となる。
【実施例9】
【0148】
実施例9では、第6の実施の形態の信号発生装置600(図9参照)を光パルス発生器に適用した例について説明する。図19に、実施例9に係る信号発生装置600Bの構成を示す。信号発生装置600Bは、図19に示すように、基準信号発生源31a、IQ変調器32a、複素VCO33a、遅延要素としてのパルス圧縮ファイバ34a、PD38、パルス出力手段としてのレーザ36及び光強度変調器37により構成される。
【0149】
光強度変調器37では、レーザ36から入力されたレーザ光の強度を、IQ変調器32aから出力された電気信号に従って変調することにより、電気信号がレーザ光の強度変化に変換される。このとき、光強度変調器37は、レーザ36から入力されたレーザ光を、IQ変調器32aの出力信号に同期させて光パルスを出力する。光強度変調器37から出力された光パルスは、パルス圧縮ファイバ34aに入力される。パルス圧縮ファイバ34aでは、光強度変調器37から入力された光パルスに時間遅延が与えられるとともに、出力端において当該光パルスの時間幅が圧縮される。
【0150】
パルス圧縮ファイバ34aから出力された光パルスの一部はPD38に入力され、電気信号に変換される。ミキサ35aでは、PD38の出力信号と基準信号との位相差が検出され、位相差を示す信号がループフィルタ(図示略)を介して複素VCO33aに出力される。複素VCO33aでは、ミキサ35aからループフィルタを介して入力された信号に基づいてIQ変調器32aへの制御信号が生成され、その生成された制御信号がIQ変調器32aに印加される。
【0151】
なお、IQ変調器32aと光強度変調器37の間にトリガドフリップフロップ(T−FF:Triggered Flip-Flop)を挿入することによって、光強度変調器37によって出力される光パルスの時間幅をより狭く(15ps)することができる。
【0152】
図20は、信号発生装置600Bにおけるタイミング揺らぎの抑圧動作の様子を表す実験結果である。なお、信号発生装置600Bにおいて、基準信号発生源31aの出力信号周波数を10GHzとし、パルス圧縮ファイバ34aの長さを4.2kmとする。
【0153】
図20の上段は、ミキサ35aの出力信号を示し、図20の下段は、IQ変調器32aによって与えられる遅延時間(−Φ(t)/ω)を示す。図20によると、IQ変調器32aに対する制御がなされていない場合(Feedback off)、即ち、測定開始から40分間は、ミキサ35aの出力信号が変動することがわかる。これは、パルス圧縮ファイバ34aが出力する光パルスのタイミングが変動したことを表している。繰り返し周波数10GHzの信号の周期が100ピコ秒であることを考慮すれば、タイミング変動量は150ピコ秒以上に及ぶ。一方、IQ変調器32aに対する制御がなされた場合(Feedback on)、ミキサ35aの出力信号が一定値に保たれている。このようにして、IQ変調器32aによってパルス圧縮ファイバ34aの出力光パルスのタイミングを一定に保つことが可能となる。
【0154】
実施例9の信号発生装置600Bによれば、遅延要素であるパルス圧縮ファイバ34aから出力される光パルスのタイミングをIQ変調器32aによって電気的に制御することにより、遅延要素の遅延量変化の大きさに関わらず、遅延量変化にともなう光パルスの出射タイミングの変動を抑え、安定した動作を実現することができる。
【実施例10】
【0155】
次に、図21〜図23を参照して、第6の実施の形態の変形例に係る実施例10について説明する。実施例10では、出力される光パルスのタイミングの任意制御が可能なパルス光源(信号発生装置)を、超高速光信号の分離チャネルセレクタに応用した例について説明する。
【0156】
図21に、分離チャネルセレクタの実験構成を示す。チャネルセレクタは、図21に示すように、パルス光源である信号発生装置600C、光送信機501、光ゲート502、誤り率測定器503により構成される。
【0157】
図22に、信号発生装置600Cの構成を示す。図22の信号発生装置600Cにおいて、図19の信号発生装置600Bと同一の構成要素には同一の符号を付している。信号発生装置600Cは、図22に示すように、基準信号発生源31a、IQ変調器32a、複素VCO33a、パルス圧縮ファイバ34a、PD38、IQミキサ26a、逆正接演算器301a、レーザ36、光強度変調器37により構成される。信号発生装置600Cから出力される光パルスのタイミングは、IQ変調器32aとIQミキサ26aにより任意に制御され、パルス圧縮ファイバ34aの長さの揺らぎの影響を受けない。
【0158】
光送信機501は、160Gビット/秒のランダムパタンが重畳された光パルス列を光時間多重方式により生成し、送信する。
【0159】
光ゲート502は、光送信機501の出力信号と、信号発生装置600Cの出力パルスとの時間的重なりがある場合にのみ、光送信機501の出力信号を透過させる。これによって、160Gビット/秒の信号から10Gビット/秒の信号を抽出する。誤り率測定器503は、光ゲート502で抽出された信号のビット誤り率を計測する。
【0160】
本チャネルセレクタでは、信号発生装置600Cから出力される光パルスのタイミングを制御することにより、時間多重された160Gビット/秒信号のうち任意の10Gビット/秒信号を抽出することができる。
【0161】
図23に、チャネルセレクタの動作例を示す。図23では、チャネル番号をランダムに変化させながらビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定した結果を示している。図23(a)は、チャネル番号を示し、図23(b)は、パルス圧縮ファイバ34aの長さ変動に伴う伝搬時間τ(t)の変化を示す。図23(b)によると、15分間で伝播時間τ(t)が80ps以上変化していることがわかる。このように、伝播時間τ(t)が160Gビット/秒信号のビット周期(6.25ps)と比較して非常に大きいにもかかわらず、測定されたビット誤り率は、図23(c)に示すように10-9以下である。一方、タイミング制御を停止すると、図23(c)に示すように、ファイバ長の揺らぎのためにビット誤りが発生することがわかる。このようにして、タイミングの任意制御が可能なパルス光源を用いて、超高速時間多重信号の分離チャネルセレクタを実現できることが確認された。
【0162】
なお、上記各実施の形態及び各実施例における信号発生装置の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施例9に示したパルス圧縮ファイバ34aは、第1〜第5の実施の形態における遅延要素として用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明の第1の実施の形態における信号発生装置100の構成を示す図。
【図2】IQ変調器の構成を示す図。
【図3】複素VCOの構成を示す図。
【図4】本発明の第2の実施の形態における信号発生装置200の構成を示す図。
【図5】本発明の第3の実施の形態における信号発生装置300の構成を示す図。
【図6】本発明の第4の実施の形態における信号発生装置400の構成を示す図。
【図7】IQミキサの構成を示す図。
【図8】本発明の第5の実施の形態における信号発生装置500の構成を示す図。
【図9】本発明の第6の実施の形態における信号発生装置600の構成を示す図。
【図10】第6の実施の形態の変形例における信号発生装置600Aの構成を示す図。
【図11】第1の実施の形態に係る実施例1の信号発生装置100Aの構成を示す図。
【図12】第1の実施の形態に係る実施例2の信号発生装置100Bの構成を示す図。
【図13】第2の実施の形態に係る実施例3の信号発生装置200Aの構成を示す図。
【図14】第2の実施の形態に係る実施例4の信号発生装置200Bの構成を示す図。
【図15】第3の実施の形態に係る実施例5の信号発生装置300Aの構成を示す図。
【図16】第3の実施の形態に係る実施例6の信号発生装置300Bの構成を示す図。
【図17】第4の実施の形態に係る実施例7の信号発生装置400Bの構成を示す図。
【図18】第5の実施の形態に係る実施例8の信号発生装置500Bの構成を示す図。
【図19】第6の実施の形態に係る実施例9の信号発生装置600Bの構成を示す図。
【図20】実施例9の信号発生装置600Bにおけるタイミング揺らぎ抑圧動作の実験結果を示す図。
【図21】第6の実施の形態の変形例に係る実施例10における分離チャネルセレクタの実験構成を示す図。
【図22】実施例10の信号発生装置600Cの構成を示す図。
【図23】チャネルセレクタの動作例を示す図。
【図24】従来の信号発生装置700の構成を示す図。
【図25】従来の信号発生装置800の構成を示す図。
【図26】従来の信号発生装置900の構成を示す図。
【符号の説明】
【0164】
1、1a、1b 共振器
2、2a、2b 外部同期装置
3、15、25、34、82a、82b、91a、91b、91c 遅延要素
4、16、32、32a、54 IQ変調器(位相制御手段)
5、55 増幅器
6、56 BPF
7、18、18a、31、31a、57 基準信号発生源
8、35、35a、58 ミキサ(検出手段)
9、22、22a、22b、59、67 ループフィルタ
10、21、21a、21b、33、33a、60、68 複素VCO
11、11a、11b、23、23b 周波数弁別器
12、12a VCO(出力手段)
12b LD
13、13a、13b、20、20a、20b ループフィルタ
14、24、70、80、90 分波器
17、71 ミキサ(位相比較手段)
19、19a、19b 位相変調器
26 IQミキサ(位相比較手段)
27、28、93、94 乗算器
29、95 加算器
34 パルス圧縮ファイバ(遅延要素)
36 レーザ(パルス出力手段)
50 レーザ
37、51 光強度変調器(電光変換器)
52 ファイバ遅延線
38、53 PD(光電変換器)
61 ミラー
62、81 光IQ変調器
63 利得媒質
64 光周波数選択フィルタ
65、18b マスタレーザ
66、84a、84b PD
83 合波器
85 減算器
92 光IQミキサ
100、200、300、400、500、600、600A 信号発生装置
100A、200A、300A 信号発生装置(電気信号発生装置)
100B、200B、300B、400B、500B 信号発生装置(レーザ発振器)
600B、600C 信号発生装置(光パルス発生器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号又は光信号を出力する出力手段と、
前記出力手段により出力された信号に時間遅延を与える遅延要素と、
前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相をIQ変調器により電気的に制御する位相制御手段と、を備え、
前記遅延要素により時間遅延が与えられ、前記位相制御手段により位相が制御された信号を前記出力手段にフィードバックすることを特徴とする信号発生装置。
【請求項2】
電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号の周波数を弁別する周波数弁別器を備える信号発生装置において、
前記周波数弁別器は、
前記出力手段により出力された信号に時間遅延を与える遅延要素と、
前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相をIQ変調器により電気的に制御する位相制御手段と、
前記遅延要素による遅延前後の信号の位相を比較する位相比較手段と、を備え、
前記位相制御手段及び前記位相比較手段により得られた周波数の弁別結果を示す信号を前記出力手段にフィードバックし、
前記出力手段は、
前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記電気信号又は光信号を出力することを特徴とする信号発生装置。
【請求項3】
電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号の周波数を弁別する周波数弁別器を備える信号発生装置において、
前記周波数弁別器は、
前記出力手段により出力された信号に時間遅延を与える遅延要素と、
前記遅延要素による遅延前後の信号の位相をIQミキサにより比較する位相比較手段と、
前記位相比較手段により出力される2信号に、乗算器により三角関数的な重み付けを与えることによって、前記遅延要素の出力信号の位相を電気的に制御する処理と同等の処理を行う位相制御手段と、
前記位相制御手段により重み付けが与えられた2信号を加算する加算器と、を備え、
前記位相比較手段、前記位相制御手段及び前記加算器により得られた周波数の弁別結果を示す信号を前記出力手段にフィードバックし、
前記出力手段は、
前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記電気信号又は光信号を出力することを特徴とする信号発生装置。
【請求項4】
基準信号を出力する基準信号発生源と、
前記基準信号発生源から出力された基準信号と、前記出力手段の出力信号との位相差を検出する検出手段と、を備え、
前記位相制御手段は、前記検出手段により検出された位相差に基づいて位相制御を行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の信号発生装置。
【請求項5】
前記周波数弁別器の出力信号を前記位相制御手段にフィードバックし、
前記位相制御手段は、前記周波数弁別器の出力信号に基づいて位相制御を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の信号発生装置。
【請求項6】
前記遅延要素として光ファイバを用い、
光の強度を前記出力手段から出力された電気信号に基づいて変調することにより、当該電気信号を光信号に変換する電光変換器と、
前記遅延要素により遅延された光信号を電気信号に変換する光電変換器と、を備え、
前記位相制御手段は、前記光電変換器により得られた電気信号又は前記出力手段から出力された電気信号の位相を制御することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の信号発生装置。
【請求項7】
基準信号を出力する基準信号発生源と、
前記基準信号の位相をIQ変調器により電気的に制御する位相制御手段と、
前記位相制御手段により位相が制御された信号に時間遅延を与える遅延要素と、
前記遅延要素の出力信号と前記基準信号との位相差を検出する検出手段と、を備え、
前記検出手段の検出結果を示す信号を前記位相制御手段にフィードバックし、
前記位相制御手段は、前記検出手段により検出された位相差に基づいて位相制御を行うことを特徴とする信号発生装置。
【請求項8】
前記位相制御手段により位相が制御された信号に同期して光パルスを出力するパルス出力手段を備え、
前記遅延要素は、パルス圧縮ファイバを用いて、前記パルス出力手段により出力されたパルスに時間遅延を与えるとともに、当該パルスの時間幅を圧縮することを特徴とする請求項1〜5、7の何れか一項に記載の信号発生装置。
【請求項9】
電気信号又は光信号を出力し、
前記出力された信号に、遅延要素により時間遅延を与え、
前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相をIQ変調器により電気的に制御し、
前記遅延要素により時間遅延が与えられ、位相制御された信号を、前記電気信号又は光信号を出力する出力手段にフィードバックすることを特徴とする信号発生方法。
【請求項10】
電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号の周波数を弁別する周波数弁別器を用いて信号を発生する信号発生方法において、
前記周波数弁別器は、
前記出力手段により出力された信号に、遅延要素により時間遅延を与え、
前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相をIQ変調器により電気的に制御し、
前記遅延要素による遅延前後の信号の位相を比較し、
位相制御及び位相比較により得られた周波数の弁別結果を示す信号を前記出力手段にフィードバックし、
前記出力手段は、
前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記電気信号又は光信号を出力することを特徴とする信号発生方法。
【請求項11】
電気信号又は光信号を出力する出力手段と、前記出力手段により出力された信号の周波数を弁別する周波数弁別器を用いて信号を発生する信号発生方法において、
前記周波数弁別器は、
前記出力手段により出力された信号に、遅延要素により時間遅延を与え、
前記遅延要素による遅延前後の信号の位相をIQミキサにより比較し、
位相比較により出力される2信号に、乗算器により三角関数的な重み付けを与えることによって、前記遅延要素の出力信号の位相を電気的に制御する処理と同等の処理を行い、
位相制御により重み付けが与えられた2信号を加算器により加算し、
前記位相比較、前記位相制御及び前記加算器により得られた周波数の弁別結果を示す信号を前記出力手段にフィードバックし、
前記出力手段は、
前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記電気信号又は光信号を出力することを特徴とする信号発生方法。
【請求項12】
基準信号発生源により基準信号を出力し、
前記出力された基準信号と、前記出力手段の出力信号との位相差を検出し、
前記検出された位相差に基づいて前記位相制御を行うことを特徴とする請求項9〜11の何れか一項に記載の信号発生方法。
【請求項13】
前記周波数弁別器の出力信号を、前記遅延要素の入力信号又は出力信号の位相制御を行う手段にフィードバックし、
前記周波数弁別器の出力信号に基づいて前記位相制御を行うことを特徴とする請求項10又は11に記載の信号発生方法。
【請求項14】
前記遅延要素として光ファイバを用い、
光の強度を前記出力手段から出力された電気信号に基づいて変調することにより、当該電気信号を光信号に変換し、
前記遅延要素により遅延された光信号を電気信号に変換し、
前記変換により得られた電気信号又は前記出力手段から出力された電気信号に対して前記位相制御を行うことを特徴とする請求項9〜13の何れか一項に記載の信号発生方法。
【請求項15】
基準信号発生源により基準信号を出力し、
前記基準信号の位相をIQ変調器により電気的に制御し、
前記IQ変調器により位相制御された信号に、遅延要素により時間遅延を与え、
前記遅延要素の出力信号と前記基準信号との位相差を検出し、
前記位相差の検出結果を示す信号を、前記位相制御を行う手段にフィードバックし、
前記検出された位相差に基づいて前記位相制御を行うことを特徴とする信号発生方法。
【請求項16】
前記位相制御された信号に同期して光パルスを出力し、
前記遅延要素としてパルス圧縮ファイバを用いて、前記出力されたパルスに時間遅延を与えるとともに、当該パルスの時間幅を圧縮することを特徴とする請求項9〜13、15の何れか一項に記載の信号発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−157864(P2006−157864A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180315(P2005−180315)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】