偏光レンズの製造方法
【課題】 ホットプレス加工による偏光フィルムの歪みを劇的に減少させ、かつ、成形金型内に確実に位置決めすることができ、製品レンズの安定した画一性の確保することができる偏光レンズの製造方法を提供すること。
【解決手段】 偏光シート原盤20を複数のテープ状に切断して、かつ、単位長さに分割して基本切片20aを作製する一方、この基本切片20aにおいて、各長辺側縁が弓形対称曲線をなす長円アウトライン形状に型抜きして、所要のレンズカーブに適合する弯曲面形状にホットプレスすることにより圧延および熱収縮せしめてベンディングし、その両端部における曲面部および平面部の境界に沿って切断することによって前記偏光フィルム2を作製した後、
この偏光フィルム2の表面に接着層21を形成するとともに、成形樹脂Mが硬化したところで前記偏光フィルム2が接合一体化されたレンズ素型Lbを金型1から取り出すという技術的手段を採用した。
【解決手段】 偏光シート原盤20を複数のテープ状に切断して、かつ、単位長さに分割して基本切片20aを作製する一方、この基本切片20aにおいて、各長辺側縁が弓形対称曲線をなす長円アウトライン形状に型抜きして、所要のレンズカーブに適合する弯曲面形状にホットプレスすることにより圧延および熱収縮せしめてベンディングし、その両端部における曲面部および平面部の境界に沿って切断することによって前記偏光フィルム2を作製した後、
この偏光フィルム2の表面に接着層21を形成するとともに、成形樹脂Mが硬化したところで前記偏光フィルム2が接合一体化されたレンズ素型Lbを金型1から取り出すという技術的手段を採用した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線や眩輝防止に用いる偏光レンズの製造方法の改良、更に詳しくは、ホットプレス加工による偏光フィルムの歪みを劇的に減少させ、かつ、成形金型内に確実に位置決めすることができ、製品レンズの安定した画一性の確保することができる偏光レンズの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、サングラスなどに広く採用される偏光レンズは、プラスチック製レンズに偏光フィルムを一体に装着して構成されたものが主流になってきており、この偏光レンズは、偏光フィルムをレンズ金型内に配置してから、溶融したレンズ成形樹脂を所要の金型に射出成形して作製されている。
【0003】
本発明者は、このような方法で偏光レンズを製造することができる成形金型を開発した(特許文献1参照)。そして、この金型を用いて偏光レンズを製造する際には、まず、金型内に挿入すべき偏光フィルムを、金型形状に合うようにベンディング加工する必要がある。
【0004】
このベンディング加工は、図16の(a)に示すような形状のベースフィルムに分割したものに、ホットプレス加工を行っており、この際、フィルムが圧延および熱収縮されるのであるが、この変形は複雑で変化量も大きかったため、加工後に図16の(b)に示すような変形を生じてしまい、また、フィルム厚みにも不均衡が生じてしまうという問題があった。
【0005】
このような変形した偏光フィルムを金型の沈み穴に挿入すると、境界の段差部分に合致せずに間隙ができてしまい、溶融状態のレンズ成形樹脂を沈み穴に直接流入させるときに流入時のレンズ成形樹脂の流れによる抵抗力の影響によって偏光フィルムが金型内で動いてしまい、偏光軸の方向を定位置に安定させることが困難であるという問題があった。
【0006】
また、このフィルムを挿入して作製したレンズ素型にハードコーティングを施す場合には、その加工熱によって、当該フィルムがレンズ内で変形を生じ、レンズが破損して不良品となる問題もあった。
【0007】
更にまた、かかるプラスチックの射出成形において、溶融状態のレンズ成形樹脂を沈み穴に直接流入させる場合にあっては、金型の内部における圧力や硬化速度などの不均衡により、成形品の局所的な密度ムラや歪みを生じてしまい、光学的異方性などに不良を生じるおそれがあった。
【特許文献1】特開2004−322589号公報(第5−6頁、第1−10図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の偏光レンズの製造方法に上記問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ホットプレス加工による偏光フィルムの歪みを劇的に減少させ、かつ、成形金型内に確実に位置決めすることができ、製品レンズの安定した画一性の確保することができる偏光レンズの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、レンズカーブを形成するキャビティーの成形面10における、少なくとも偏光フィルム2が挿入される部分に曲線状の段差境界を有する沈み穴Hが形成される金型1を用いてプラスチック偏光レンズを製造する方法であって、
偏光シート原盤20を複数のテープ状に切断して、かつ、単位長さに分割して基本切片20aを作製する一方、この基本切片20aにおいて、各長辺側縁が弓形対称曲線をなす長円アウトライン形状に型抜きして、所要のレンズカーブに適合する弯曲面形状にホットプレスすることにより圧延および熱収縮せしめてベンディングし、その両端部における曲面部および平面部の境界に沿って切断することによって前記偏光フィルム2を作製した後、
この偏光フィルム2の表面に接着層21を設けるとともに、前記境界部分に形成した段差に偏光フィルム2の縁部を掛止させ、前記接着層21が上面側になるようにして前記金型1内の沈み穴Hの底部に偏光フィルム2を挿入して当該金型1を閉じ、
次いで、溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させながら、前記成形面10の外周縁部に形成したゲート11より前記沈み穴H側方の段差境界に向けキャビティー内に射出せしめ、当該成形樹脂Mが硬化したところで前記偏光フィルム2が接合一体化されたレンズ素型Lbを取り出すという技術的手段を採用した。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させる流入方向を、ゲート11より当該金型1のキャビティー内に射出せしめる方向と相異ならしめるという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金型1の沈み穴Hの側縁部および当該沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2の側縁部の少なくとも一部にそれぞれ直線部分を形成し、偏光フィルム2の位置ズレを防止するという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金型1のコア凸型において、偏光フィルム2の縁部を衝止可能な押さえ凸起14を突設するという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金型1の沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2に、透明の接着剤Sを塗布するという技術的手段を採用した。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、偏光フィルム2の表面に熱融着可能なフィルム材を貼設して接着層21を設けるという技術的手段を採用した。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、レンズ成形樹脂Mにフォトクロミック物質を混入して調光機能を付与するという技術的手段を採用した。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、偏光シート2をレンズの接眼側に接合するという技術的手段を採用した。
【0018】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、レンズカーブを形成するキャビティーの成形面10における、少なくとも偏光フィルム2の挿入される部分が昇降して沈み穴Hを作出可能な可動部12として構成したスプリット式の金型1を用いるという技術的手段を採用した。
【0019】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、スプリット式の金型1の裏面から可動部12にアジャスタボルト13を螺挿し、このアジャスタボルト13を回転することによって当該可動部12を昇降操作して沈み穴Hの深さ寸法を調節自在に構成するという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、偏光フィルムを予めカットしておくことによって、ホットプレス加工による偏光フィルムの歪みを劇的に減少させ、かつ、段差境界にフィットしてズレを防止し、成形金型内に確実に位置決めすることができる。
【0021】
また、溶融状態のレンズ成形樹脂を前記沈み穴側方の段差境界に向けキャビティー内に射出できるように、成形面の外周縁部にゲートを形成したことより、成形樹脂が段差上から流れ降りるので、流入圧による偏光フィルムのズレや熱影響を防ぐことができる。
【0022】
また、偏光フィルムの厚みが高い均一性を有しているので、レンズ素型の表面にハードコーティング加工などの加熱を伴う加工を施す場合であっても、フィルムの変形を防止することができる。
【0023】
更にまた、必要に応じて、溶融状態のレンズ成形樹脂を金型に連なるランナーに充満させながらゲートより当該金型のキャビティー内に射出することにより、熱および流動による偏光フィルムの変形や位置ズレを防止することもできる。
【0024】
このように、レンズ素型を均一な密度で成形することができ、歪みが殆ど無い高精度な製品を作ることができるので、偏光レンズを効率的かつ経済的に製造することができることから、その産業上の利用価値は頗る大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0026】
本発明の実施形態を図1から図12に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは金型であり、この金型1は、レンズカーブ(本実施形態では下に凸)を形成するキャビティーの成形面10において、曲線状の段差境界を有する沈み穴Hが形成されている。
【0027】
また、符号2で指示するものは偏光フィルムであり、この偏光フィルム2を作製するにあっては、まず、偏光シート原盤20を複数のテープ状に切断して、かつ、単位長さに分割して基本切片20aを作製する(図1および2参照)。
【0028】
この際、偏光シート原盤20の使用材料としては、一般的に使用されているポリビニルアルコール系フィルムやポリビニルアセタール系フィルム、ポリビニルブチラール系フィルムなどをベースとし、耐湿熱性を有する二色性染料を用いて染色し、一軸延伸または二軸延伸して製造される。
【0029】
次に、前記基本切片20aにおいて、各長辺側縁が弓形対称曲線をなす長円アウトライン形状に型抜きする(図3参照)。この際、例えば、トムソン式カッターなどを用いて切断することができる。
【0030】
また、偏光フィルム2の両面には、光学的に優れた透明性を有するセルローストリアセテートフィルムを接着剤を用いて貼り合わせて構成する。本実施形態では、厚さ0.2mmから0.4mm程度、偏光度が90.0%以上のものを採用する。このように、厚さ0.2mmから0.4mmにすることにより、材料コストに優れて経済性が良い。
【0031】
しかして、前記偏光フィルム2の表面に接着層21を設ける。この接着剤Sとしては、平均分子量が10,000以上から200,000以下のポリエステルウレタン樹脂またはポリエーテルウレタン樹脂などを主としたポリオールに架橋硬化剤としてポリイソシアネートを配合する二液硬化型接着剤を採用するとともに、本実施形態では、この接着剤Sを塗布する。
【0032】
この際、グラビアコーティング法、オフセットコーティング法など、通常用いられている塗布方法を採用し、接着層21の厚さは通常0.5〜80μmの範囲にする。0.4μm未満では結合力が低く、100μmを越えるとレンズの端面から接着剤Sがしみ出すおそれがあるからである。
【0033】
そして、所要のレンズカーブに適合する弯曲面形状にホットプレス(100℃で1分30秒)することにより圧延および熱収縮せしめてベンディングし、その両端部における曲面部および平面部の境界dに沿って、前記同様、トムソン式カッターなどを用いて切断することによって前記偏光フィルム2を作製することができる(図4参照)。
【0034】
しかして、本実施形態における製造方法の手順について以下に説明する。まず、金型1には、少なくとも偏光フィルム2が挿入される部分に曲線状の段差境界を有する沈み穴Hを形成する(図5および6参照)。
【0035】
そして、前記偏光フィルム2の表面に接着層21を設けるとともに、前記境界部分に形成した段差に偏光フィルム2の縁部を掛止させ、前記接着層21が上面側になるようにして前記金型1内の沈み穴Hの底部に偏光フィルム2を挿入して当該金型1を閉じる(図7参照)。
【0036】
次いで、溶融状態のレンズ成形樹脂M(アクリル樹脂やアクリル系共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂など;ガラス転移温度+50〜70度)を、金型1に連なるランナー11aに充満させながら、前記成形面10の外周縁部に形成したゲート11より前記沈み穴H側方の段差境界に向けキャビティー内に射出せしめる(図8参照)。
【0037】
この際、溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させる流入方向を、ゲート11より当該金型1のキャビティー内に射出せしめる方向とを相異ならしめることにより当該レンズ成形樹脂Mのキャビティー内への射出圧力を緩衝せしめることができる。そして、当該成形樹脂Mが硬化したところで前記偏光フィルム2が接合一体化されたレンズ素型Lbを取り出す。
【0038】
こうすることにより、レンズ成形樹脂Mがスプリット式の金型1内に充填される際の熱と樹脂流れによる偏光フィルム2への影響を受け難くし、前記接着剤層21が破壊して剥離したり、流れによって偏光軸が定位置からズレてしまうといった不良現象を防ぐことができ、また、成形品のレンズを均一密度で歪みが生じ難くなり、製品レンズの画一安定性の確保することができるのである。
【0039】
なお、本実施形態では、図9から図11に示すように、金型1のコア凸型において、偏光フィルム2の縁部(本実施形態では、四隅)を衝止可能な押さえ凸起14を突設することもでき、金型内における当該偏光フィルム2のズレを防止して、より確実に固定することができる。
【0040】
そして、充填したプラスチックが硬化することにより前記偏光フィルム2がレンズ素型Lbの凸球面側に一体に装着される(図12参照)。そして、このレンズ素型Lbを取り出して所要形状に型抜きすることによってレンズを完成する。
【0041】
この際、更に、レンズ素型Lbの表面にハードコート加工を施すことができ、このハードコートは、まず、密着性、耐水密着性を向上させるアクリル系やポリウレタン系のプライマーコート層を表面にコーティングした上で、シリコーン系の熱硬化型ハードコート液、または、アクリル系、エポキシ系などの活性光線硬化型ハードコート液などをコーティングする。
【0042】
更にまた、本実施形態では、必要に応じて、レンズ成形樹脂Mにフォトクロミック物質を混入して調光機能を付与することができる。このフォトクロミック物質は、スピロオキサジン系が最適であるが、ナフトピラン系、フラン系、スピロピラン系、フルギド系、クロメン系などを使用することができ、感光機能を持つためには、ハンドブレンド法や押出成形によるマスターバッチ化や練り込み法のような添加法が配合量制御の容易性から望ましい。
【0043】
『第2実施形態』
本発明の第2実施形態の製造方法を図13に基づいて説明する。本実施形態では、金型1をケース体の中に複数の可動部12・12…を収容する入れ子式に構成し、かつ、当該ケース体上縁部には溶融したレンズ成形樹脂Mをキャビティー内へ射出するためのゲート11を形成するとともに、前記可動部12・12…は上面が連接してレンズカーブを形成するキャビティーの成形面10を有している。
【0044】
そして、何れかの可動部12を昇降操作することによって隣接する可動部12との境界部分の上面において段差を生ぜしめて沈み穴Hを作出可能に構成している。本実施形態では、スプリット式の金型1の裏面から可動部12にアジャスタボルト13を螺挿し、このアジャスタボルト13を回転することによって当該可動部12を昇降操作して沈み穴Hの深さ寸法を自在に調整できる。
【0045】
本発明の実施形態は概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、金型1の成形面10に上に凸のレンズカーブを形成することができ、境界部分の上面において段差を生ぜしめて沈み穴Hを形成できるように構成することができる。
【0046】
この際、偏光シート2をレンズの接眼側に接合することができ、レンズ内部における樹脂密度の偏りによる光干渉が生じた場合であっても、この透過光に対し偏光作用を得ることができる。
【0047】
また、図14および図15に示すように、金型1の沈み穴Hの側縁部および当該沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2の側縁部の少なくとも一部にそれぞれ直線部分(好ましくは、5〜20mm程度)を形成し、偏光フィルム2の位置ズレを防止することもできる。
【0048】
更にまた、偏光フィルム2の表面に熱融着可能なフィルム材を貼設して接着層21を設けることもでき、加熱されることによってレンズと接合一体化させることもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態の偏光フィルム原盤の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のテープ状の偏光フィルム原盤の正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の基本切片の正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のベンディング加工した偏光フィルムを表わす斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に使用する金型の斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に使用する金型の上面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の製造工程を表わす説明断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の製造工程を表わす説明断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の製造工程の変形例を表わす断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の製造工程の変形例を表わす上面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の製造工程の変形例を表わす断面図である。
【図12】本発明の第1実施形態のレンズ素型を表わす斜視図である。
【図13】本発明の第2実施形態に使用する金型の説明断面図である。
【図14】本発明の実施変形例の偏光フィルムを表わす斜視図である。
【図15】本発明の実施変形例の金型を表わす上面図である。
【図16】従来の製造方法における偏光フィルムの変形状態を表わす説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 金型
10 成形面
11 ゲート
11a ランナー
12 可動部
13 アジャスタボルト
14 押さえ凸起
H 沈み穴
2 偏光フィルム
20 偏光シート原盤
20a 基本切片
21 接着層
d 境界
M レンズ成形樹脂
S 接着剤
Lb レンズ素型
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線や眩輝防止に用いる偏光レンズの製造方法の改良、更に詳しくは、ホットプレス加工による偏光フィルムの歪みを劇的に減少させ、かつ、成形金型内に確実に位置決めすることができ、製品レンズの安定した画一性の確保することができる偏光レンズの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、サングラスなどに広く採用される偏光レンズは、プラスチック製レンズに偏光フィルムを一体に装着して構成されたものが主流になってきており、この偏光レンズは、偏光フィルムをレンズ金型内に配置してから、溶融したレンズ成形樹脂を所要の金型に射出成形して作製されている。
【0003】
本発明者は、このような方法で偏光レンズを製造することができる成形金型を開発した(特許文献1参照)。そして、この金型を用いて偏光レンズを製造する際には、まず、金型内に挿入すべき偏光フィルムを、金型形状に合うようにベンディング加工する必要がある。
【0004】
このベンディング加工は、図16の(a)に示すような形状のベースフィルムに分割したものに、ホットプレス加工を行っており、この際、フィルムが圧延および熱収縮されるのであるが、この変形は複雑で変化量も大きかったため、加工後に図16の(b)に示すような変形を生じてしまい、また、フィルム厚みにも不均衡が生じてしまうという問題があった。
【0005】
このような変形した偏光フィルムを金型の沈み穴に挿入すると、境界の段差部分に合致せずに間隙ができてしまい、溶融状態のレンズ成形樹脂を沈み穴に直接流入させるときに流入時のレンズ成形樹脂の流れによる抵抗力の影響によって偏光フィルムが金型内で動いてしまい、偏光軸の方向を定位置に安定させることが困難であるという問題があった。
【0006】
また、このフィルムを挿入して作製したレンズ素型にハードコーティングを施す場合には、その加工熱によって、当該フィルムがレンズ内で変形を生じ、レンズが破損して不良品となる問題もあった。
【0007】
更にまた、かかるプラスチックの射出成形において、溶融状態のレンズ成形樹脂を沈み穴に直接流入させる場合にあっては、金型の内部における圧力や硬化速度などの不均衡により、成形品の局所的な密度ムラや歪みを生じてしまい、光学的異方性などに不良を生じるおそれがあった。
【特許文献1】特開2004−322589号公報(第5−6頁、第1−10図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の偏光レンズの製造方法に上記問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ホットプレス加工による偏光フィルムの歪みを劇的に減少させ、かつ、成形金型内に確実に位置決めすることができ、製品レンズの安定した画一性の確保することができる偏光レンズの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、レンズカーブを形成するキャビティーの成形面10における、少なくとも偏光フィルム2が挿入される部分に曲線状の段差境界を有する沈み穴Hが形成される金型1を用いてプラスチック偏光レンズを製造する方法であって、
偏光シート原盤20を複数のテープ状に切断して、かつ、単位長さに分割して基本切片20aを作製する一方、この基本切片20aにおいて、各長辺側縁が弓形対称曲線をなす長円アウトライン形状に型抜きして、所要のレンズカーブに適合する弯曲面形状にホットプレスすることにより圧延および熱収縮せしめてベンディングし、その両端部における曲面部および平面部の境界に沿って切断することによって前記偏光フィルム2を作製した後、
この偏光フィルム2の表面に接着層21を設けるとともに、前記境界部分に形成した段差に偏光フィルム2の縁部を掛止させ、前記接着層21が上面側になるようにして前記金型1内の沈み穴Hの底部に偏光フィルム2を挿入して当該金型1を閉じ、
次いで、溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させながら、前記成形面10の外周縁部に形成したゲート11より前記沈み穴H側方の段差境界に向けキャビティー内に射出せしめ、当該成形樹脂Mが硬化したところで前記偏光フィルム2が接合一体化されたレンズ素型Lbを取り出すという技術的手段を採用した。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させる流入方向を、ゲート11より当該金型1のキャビティー内に射出せしめる方向と相異ならしめるという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金型1の沈み穴Hの側縁部および当該沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2の側縁部の少なくとも一部にそれぞれ直線部分を形成し、偏光フィルム2の位置ズレを防止するという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金型1のコア凸型において、偏光フィルム2の縁部を衝止可能な押さえ凸起14を突設するという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、金型1の沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2に、透明の接着剤Sを塗布するという技術的手段を採用した。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、偏光フィルム2の表面に熱融着可能なフィルム材を貼設して接着層21を設けるという技術的手段を採用した。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、レンズ成形樹脂Mにフォトクロミック物質を混入して調光機能を付与するという技術的手段を採用した。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、偏光シート2をレンズの接眼側に接合するという技術的手段を採用した。
【0018】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、レンズカーブを形成するキャビティーの成形面10における、少なくとも偏光フィルム2の挿入される部分が昇降して沈み穴Hを作出可能な可動部12として構成したスプリット式の金型1を用いるという技術的手段を採用した。
【0019】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、スプリット式の金型1の裏面から可動部12にアジャスタボルト13を螺挿し、このアジャスタボルト13を回転することによって当該可動部12を昇降操作して沈み穴Hの深さ寸法を調節自在に構成するという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0020】
本発明にあっては、偏光フィルムを予めカットしておくことによって、ホットプレス加工による偏光フィルムの歪みを劇的に減少させ、かつ、段差境界にフィットしてズレを防止し、成形金型内に確実に位置決めすることができる。
【0021】
また、溶融状態のレンズ成形樹脂を前記沈み穴側方の段差境界に向けキャビティー内に射出できるように、成形面の外周縁部にゲートを形成したことより、成形樹脂が段差上から流れ降りるので、流入圧による偏光フィルムのズレや熱影響を防ぐことができる。
【0022】
また、偏光フィルムの厚みが高い均一性を有しているので、レンズ素型の表面にハードコーティング加工などの加熱を伴う加工を施す場合であっても、フィルムの変形を防止することができる。
【0023】
更にまた、必要に応じて、溶融状態のレンズ成形樹脂を金型に連なるランナーに充満させながらゲートより当該金型のキャビティー内に射出することにより、熱および流動による偏光フィルムの変形や位置ズレを防止することもできる。
【0024】
このように、レンズ素型を均一な密度で成形することができ、歪みが殆ど無い高精度な製品を作ることができるので、偏光レンズを効率的かつ経済的に製造することができることから、その産業上の利用価値は頗る大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0026】
本発明の実施形態を図1から図12に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは金型であり、この金型1は、レンズカーブ(本実施形態では下に凸)を形成するキャビティーの成形面10において、曲線状の段差境界を有する沈み穴Hが形成されている。
【0027】
また、符号2で指示するものは偏光フィルムであり、この偏光フィルム2を作製するにあっては、まず、偏光シート原盤20を複数のテープ状に切断して、かつ、単位長さに分割して基本切片20aを作製する(図1および2参照)。
【0028】
この際、偏光シート原盤20の使用材料としては、一般的に使用されているポリビニルアルコール系フィルムやポリビニルアセタール系フィルム、ポリビニルブチラール系フィルムなどをベースとし、耐湿熱性を有する二色性染料を用いて染色し、一軸延伸または二軸延伸して製造される。
【0029】
次に、前記基本切片20aにおいて、各長辺側縁が弓形対称曲線をなす長円アウトライン形状に型抜きする(図3参照)。この際、例えば、トムソン式カッターなどを用いて切断することができる。
【0030】
また、偏光フィルム2の両面には、光学的に優れた透明性を有するセルローストリアセテートフィルムを接着剤を用いて貼り合わせて構成する。本実施形態では、厚さ0.2mmから0.4mm程度、偏光度が90.0%以上のものを採用する。このように、厚さ0.2mmから0.4mmにすることにより、材料コストに優れて経済性が良い。
【0031】
しかして、前記偏光フィルム2の表面に接着層21を設ける。この接着剤Sとしては、平均分子量が10,000以上から200,000以下のポリエステルウレタン樹脂またはポリエーテルウレタン樹脂などを主としたポリオールに架橋硬化剤としてポリイソシアネートを配合する二液硬化型接着剤を採用するとともに、本実施形態では、この接着剤Sを塗布する。
【0032】
この際、グラビアコーティング法、オフセットコーティング法など、通常用いられている塗布方法を採用し、接着層21の厚さは通常0.5〜80μmの範囲にする。0.4μm未満では結合力が低く、100μmを越えるとレンズの端面から接着剤Sがしみ出すおそれがあるからである。
【0033】
そして、所要のレンズカーブに適合する弯曲面形状にホットプレス(100℃で1分30秒)することにより圧延および熱収縮せしめてベンディングし、その両端部における曲面部および平面部の境界dに沿って、前記同様、トムソン式カッターなどを用いて切断することによって前記偏光フィルム2を作製することができる(図4参照)。
【0034】
しかして、本実施形態における製造方法の手順について以下に説明する。まず、金型1には、少なくとも偏光フィルム2が挿入される部分に曲線状の段差境界を有する沈み穴Hを形成する(図5および6参照)。
【0035】
そして、前記偏光フィルム2の表面に接着層21を設けるとともに、前記境界部分に形成した段差に偏光フィルム2の縁部を掛止させ、前記接着層21が上面側になるようにして前記金型1内の沈み穴Hの底部に偏光フィルム2を挿入して当該金型1を閉じる(図7参照)。
【0036】
次いで、溶融状態のレンズ成形樹脂M(アクリル樹脂やアクリル系共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂など;ガラス転移温度+50〜70度)を、金型1に連なるランナー11aに充満させながら、前記成形面10の外周縁部に形成したゲート11より前記沈み穴H側方の段差境界に向けキャビティー内に射出せしめる(図8参照)。
【0037】
この際、溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させる流入方向を、ゲート11より当該金型1のキャビティー内に射出せしめる方向とを相異ならしめることにより当該レンズ成形樹脂Mのキャビティー内への射出圧力を緩衝せしめることができる。そして、当該成形樹脂Mが硬化したところで前記偏光フィルム2が接合一体化されたレンズ素型Lbを取り出す。
【0038】
こうすることにより、レンズ成形樹脂Mがスプリット式の金型1内に充填される際の熱と樹脂流れによる偏光フィルム2への影響を受け難くし、前記接着剤層21が破壊して剥離したり、流れによって偏光軸が定位置からズレてしまうといった不良現象を防ぐことができ、また、成形品のレンズを均一密度で歪みが生じ難くなり、製品レンズの画一安定性の確保することができるのである。
【0039】
なお、本実施形態では、図9から図11に示すように、金型1のコア凸型において、偏光フィルム2の縁部(本実施形態では、四隅)を衝止可能な押さえ凸起14を突設することもでき、金型内における当該偏光フィルム2のズレを防止して、より確実に固定することができる。
【0040】
そして、充填したプラスチックが硬化することにより前記偏光フィルム2がレンズ素型Lbの凸球面側に一体に装着される(図12参照)。そして、このレンズ素型Lbを取り出して所要形状に型抜きすることによってレンズを完成する。
【0041】
この際、更に、レンズ素型Lbの表面にハードコート加工を施すことができ、このハードコートは、まず、密着性、耐水密着性を向上させるアクリル系やポリウレタン系のプライマーコート層を表面にコーティングした上で、シリコーン系の熱硬化型ハードコート液、または、アクリル系、エポキシ系などの活性光線硬化型ハードコート液などをコーティングする。
【0042】
更にまた、本実施形態では、必要に応じて、レンズ成形樹脂Mにフォトクロミック物質を混入して調光機能を付与することができる。このフォトクロミック物質は、スピロオキサジン系が最適であるが、ナフトピラン系、フラン系、スピロピラン系、フルギド系、クロメン系などを使用することができ、感光機能を持つためには、ハンドブレンド法や押出成形によるマスターバッチ化や練り込み法のような添加法が配合量制御の容易性から望ましい。
【0043】
『第2実施形態』
本発明の第2実施形態の製造方法を図13に基づいて説明する。本実施形態では、金型1をケース体の中に複数の可動部12・12…を収容する入れ子式に構成し、かつ、当該ケース体上縁部には溶融したレンズ成形樹脂Mをキャビティー内へ射出するためのゲート11を形成するとともに、前記可動部12・12…は上面が連接してレンズカーブを形成するキャビティーの成形面10を有している。
【0044】
そして、何れかの可動部12を昇降操作することによって隣接する可動部12との境界部分の上面において段差を生ぜしめて沈み穴Hを作出可能に構成している。本実施形態では、スプリット式の金型1の裏面から可動部12にアジャスタボルト13を螺挿し、このアジャスタボルト13を回転することによって当該可動部12を昇降操作して沈み穴Hの深さ寸法を自在に調整できる。
【0045】
本発明の実施形態は概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、金型1の成形面10に上に凸のレンズカーブを形成することができ、境界部分の上面において段差を生ぜしめて沈み穴Hを形成できるように構成することができる。
【0046】
この際、偏光シート2をレンズの接眼側に接合することができ、レンズ内部における樹脂密度の偏りによる光干渉が生じた場合であっても、この透過光に対し偏光作用を得ることができる。
【0047】
また、図14および図15に示すように、金型1の沈み穴Hの側縁部および当該沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2の側縁部の少なくとも一部にそれぞれ直線部分(好ましくは、5〜20mm程度)を形成し、偏光フィルム2の位置ズレを防止することもできる。
【0048】
更にまた、偏光フィルム2の表面に熱融着可能なフィルム材を貼設して接着層21を設けることもでき、加熱されることによってレンズと接合一体化させることもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態の偏光フィルム原盤の正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のテープ状の偏光フィルム原盤の正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の基本切片の正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のベンディング加工した偏光フィルムを表わす斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に使用する金型の斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に使用する金型の上面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の製造工程を表わす説明断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の製造工程を表わす説明断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の製造工程の変形例を表わす断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の製造工程の変形例を表わす上面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の製造工程の変形例を表わす断面図である。
【図12】本発明の第1実施形態のレンズ素型を表わす斜視図である。
【図13】本発明の第2実施形態に使用する金型の説明断面図である。
【図14】本発明の実施変形例の偏光フィルムを表わす斜視図である。
【図15】本発明の実施変形例の金型を表わす上面図である。
【図16】従来の製造方法における偏光フィルムの変形状態を表わす説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 金型
10 成形面
11 ゲート
11a ランナー
12 可動部
13 アジャスタボルト
14 押さえ凸起
H 沈み穴
2 偏光フィルム
20 偏光シート原盤
20a 基本切片
21 接着層
d 境界
M レンズ成形樹脂
S 接着剤
Lb レンズ素型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズカーブを形成するキャビティーの成形面10における、少なくとも偏光フィルム2が挿入される部分に曲線状の段差境界を有する沈み穴Hが形成される金型1を用いてプラスチック偏光レンズを製造する方法であって、
偏光シート原盤20を複数のテープ状に切断して、かつ、単位長さに分割して基本切片20aを作製する一方、この基本切片20aにおいて、各長辺側縁が弓形対称曲線をなす長円アウトライン形状に型抜きして、所要のレンズカーブに適合する弯曲面形状にホットプレスすることにより圧延および熱収縮せしめてベンディングし、その両端部における曲面部および平面部の境界に沿って切断することによって前記偏光フィルム2を作製した後、
この偏光フィルム2の表面に接着層21を設けるとともに、前記境界部分に形成した段差に偏光フィルム2の縁部を掛止させ、前記接着層21が上面側になるようにして前記金型1内の沈み穴Hの底部に偏光フィルム2を挿入して当該金型1を閉じ、
次いで、溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させながら、前記成形面10の外周縁部に形成したゲート11より前記沈み穴H側方の段差境界に向けキャビティー内に射出せしめ、当該成形樹脂Mが硬化したところで前記偏光フィルム2が接合一体化されたレンズ素型Lbを取り出すことを特徴とする偏光レンズの製造方法。
【請求項2】
溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させる流入方向を、ゲート11より当該金型1のキャビティー内に射出せしめる方向と相異ならしめることにより当該レンズ成形樹脂Mのキャビティー内への射出圧力を緩衝せしめることを特徴とする請求項1記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項3】
金型1の沈み穴Hの側縁部および当該沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2の側縁部の少なくとも一部にそれぞれ直線部分を形成し、偏光フィルム2の位置ズレを防止することを特徴とする請求項1または2記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項4】
金型1のコア凸型において、偏光フィルム2の縁部を衝止可能な押さえ凸起14が突設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項5】
金型1の沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2に、透明の接着剤Sを塗布して接着層21を形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項6】
偏光フィルム2の表面に熱融着可能なフィルム材を貼設して接着層21を設けることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項7】
レンズ成形樹脂Mにフォトクロミック物質を混入して調光機能を付与することを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項8】
偏光シート2をレンズの接眼側に接合することを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項9】
レンズカーブを形成するキャビティーの成形面10における、少なくとも偏光フィルム2の挿入される部分が昇降して沈み穴Hを作出可能な可動部12として構成したスプリット式の金型1を用いることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項10】
スプリット式の金型1の裏面から可動部12にアジャスタボルト13を螺挿し、このアジャスタボルト13を回転することによって当該可動部12を昇降操作して沈み穴Hの深さ寸法を調節自在に構成することを特徴とする請求項9記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項1】
レンズカーブを形成するキャビティーの成形面10における、少なくとも偏光フィルム2が挿入される部分に曲線状の段差境界を有する沈み穴Hが形成される金型1を用いてプラスチック偏光レンズを製造する方法であって、
偏光シート原盤20を複数のテープ状に切断して、かつ、単位長さに分割して基本切片20aを作製する一方、この基本切片20aにおいて、各長辺側縁が弓形対称曲線をなす長円アウトライン形状に型抜きして、所要のレンズカーブに適合する弯曲面形状にホットプレスすることにより圧延および熱収縮せしめてベンディングし、その両端部における曲面部および平面部の境界に沿って切断することによって前記偏光フィルム2を作製した後、
この偏光フィルム2の表面に接着層21を設けるとともに、前記境界部分に形成した段差に偏光フィルム2の縁部を掛止させ、前記接着層21が上面側になるようにして前記金型1内の沈み穴Hの底部に偏光フィルム2を挿入して当該金型1を閉じ、
次いで、溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させながら、前記成形面10の外周縁部に形成したゲート11より前記沈み穴H側方の段差境界に向けキャビティー内に射出せしめ、当該成形樹脂Mが硬化したところで前記偏光フィルム2が接合一体化されたレンズ素型Lbを取り出すことを特徴とする偏光レンズの製造方法。
【請求項2】
溶融状態のレンズ成形樹脂Mを金型1に連なるランナー11aに充満させる流入方向を、ゲート11より当該金型1のキャビティー内に射出せしめる方向と相異ならしめることにより当該レンズ成形樹脂Mのキャビティー内への射出圧力を緩衝せしめることを特徴とする請求項1記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項3】
金型1の沈み穴Hの側縁部および当該沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2の側縁部の少なくとも一部にそれぞれ直線部分を形成し、偏光フィルム2の位置ズレを防止することを特徴とする請求項1または2記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項4】
金型1のコア凸型において、偏光フィルム2の縁部を衝止可能な押さえ凸起14が突設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項5】
金型1の沈み穴Hに挿入する偏光フィルム2に、透明の接着剤Sを塗布して接着層21を形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項6】
偏光フィルム2の表面に熱融着可能なフィルム材を貼設して接着層21を設けることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項7】
レンズ成形樹脂Mにフォトクロミック物質を混入して調光機能を付与することを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項8】
偏光シート2をレンズの接眼側に接合することを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項9】
レンズカーブを形成するキャビティーの成形面10における、少なくとも偏光フィルム2の挿入される部分が昇降して沈み穴Hを作出可能な可動部12として構成したスプリット式の金型1を用いることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の偏光レンズの製造方法。
【請求項10】
スプリット式の金型1の裏面から可動部12にアジャスタボルト13を螺挿し、このアジャスタボルト13を回転することによって当該可動部12を昇降操作して沈み穴Hの深さ寸法を調節自在に構成することを特徴とする請求項9記載の偏光レンズの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−152704(P2007−152704A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350014(P2005−350014)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(505446884)虹泰光学有限公司 (2)
【出願人】(303006455)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(505446884)虹泰光学有限公司 (2)
【出願人】(303006455)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]