説明

偏光切替素子・光束分割素子・光走査装置・画像形成装置

【課題】入射光の波長ずれや素子の設置誤差に対する許容度が大きく、光走査装置の生産性の向上に寄与できる偏光切替素子を提供する。
【解決手段】偏光切替素子10は、入射光側からλ/4板11と、電界の向きの切り替えによって液晶分子の配向方向を所定方向に切り替えられる液晶素子12とで構成される。偏光切替素子10に入射される光は図の上下方向に偏光している。直線偏光P1であった入射光はλ/4板11を通過すると右回り円偏光P2となる。液晶素子12の液晶分子が45°方位を向いているとき、さらにλ/4の位相差が加わり水平方向の偏光P3となる。次に、液晶への印加電界の向きが切り替わり、液晶分子の方位が同図(b)のように−45°方位を向いたときにはλ/4板11透過後の右回り円偏光P2は上下方向に振動する直線偏光P5となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の偏光をそのまま、または、回転させて出射させる偏光切替素子、該偏光切替素子を有する光束分割素子、該光束分割素子を用いた光走査装置(以下、「光書込み装置」ともいう)、該光走査装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、4つの光源、回転多面鏡、アナモフィック面を有する走査光学素子からなる光走査装置が開示されている。画像形成装置に用いたとき、1つの感光体に1つのレーザー光で書込みを行う場合には1つのレーザーが必要であるため、4つの感光体なら4つのレーザー光源が必要になる
特許文献2には、光束分割による1光源複数ドラム記録方式が開示されている。光源からのビーム数を2倍に分割する手段として、ハーフミラーを分割面に用いたプリズムが開示されている。この光束分割素子は入射光を常に2つの光束に分割する。この構成により、タンデム方式の画像形成装置において、光源数を減らしながらも、高速な画像出力を可能にしている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−70110号公報
【特許文献2】特開2005−92129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2記載のパッシブタイプでは、常に半分のLD光が損失する。
チルト角22.5°(コーン角45°)を有する(表面安定化)FLCと、偏光依存性光路分離素子(PBS、または、偏光依存性ホログラム)とによるアクティブ型光束分割素子は光利用効率が向上するが、波長や入射角に敏感であり組付け許容幅が小さかった。
LD光源から出射される光はほぼ直線偏光であるが、その振動面はばらつく。LDケース内に設置されるLDチップの回転ずれや、LDケースを装置(光書込み装置)に組付ける際の回転ずれが発生する。さらには、2つのLDからなるLDユニットを光源とする光書込み装置ではLDユニットの回転調整によって2つのLD光の間隔を微調整するため、この調整によって偏光振動面の回転ずれが生じる。
【0005】
多面反射鏡(ポリゴンミラー)が2段の構成を用いた光書込み装置で、LD出射光を多面反射鏡の2段に対応するように光束分割素子で2光束に分割する方式が提案されている。
また、この光束分割素子として回折光学素子(ホログラム)を用いる方式も提案されている。この回折光学素子を使った光束分割素子で、1枚目の回折光学素子に高回折効率の偏光依存性タイプが用いられる方式がある。この方式では、LDの振動面をλ/2板などによって45°回転させ、1枚目の回折光学素子の回折光と透過光の強度比を揃えることができる。しかし、上記のようにLD振動面の回転ずれが生じた場合、λ/2板によって変換された振動面は45°から外れる。このため、2つの光束強度比が1:1から外れる。
【0006】
具体例として、LD振動面が多面反射鏡によって光が偏向される平面内に垂直な場合を、回転ずれ無しとし、この状態で1枚目の回折光学素子による光束分割比が1と仮定する。
LD設置ずれにより5°回転ずれを起こすとλ/2板をさらに2.5°回転させると光束分割比1を維持できる。しかし、2つのLDからなるLDユニットの場合には2つのLD光の振動面が非平行であることが多い。λ/2板の遅相軸とそれぞれのLD振動面との角度差が22.5°から5°ずれていたとすると、光束分割比は1.19(またはその逆数の0.84)となる。
さらに、光束分割素子への入射角ずれや入射光の波長変動による波長ずれによって光束分割の光強度比が変換する問題がある。
【0007】
本発明は、入射光の波長ずれや素子の設置誤差に対する許容度が大きく、光走査装置の生産性の向上に寄与できる偏光切替素子、該偏光切替素子を有する光束分割素子、該光束分割素子を有する光走査装置、該光走査装置を有する画像形成装置の提供を、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、印加電圧の極性に応じて右回り円偏光と左回り円偏光とに切り替えが可能な液晶素子と、λ/4板と、からなり、入射光を異なる偏光方位に切り替えることを特徴とする。
請求項2記載の発明では、請求項1記載の偏光切替素子において、前記液晶素子は、一対の透明基板と、少なくとも一方の透明基板に設けられた配向膜と、前記配向膜によりホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層と、前記透明基板の法線方向に電界の向きを生じさせる電界発生手段とからなり、前記液晶層のチルト角が45°(コーン角が90°)であることを特徴とする。
ここでは特に、切替速度の高速化を目的とする。
【0009】
請求項3記載の発明では、請求項1記載の偏光切替素子において、前記液晶素子はネマチック液晶を用いた垂直配向型液晶素子が二段構成で配置され、1段目と2段目の液晶分子の透光性基板へ投影した方位θ1、θ2が、1段目に入射する偏光面に対して、
θ1=0°、θ2=45°
と、
θ1=45°、θ2=0°
とを順次繰り返すことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明では、光束分割素子において、請求項1〜3のいずれか1つに記載の偏光切替素子と、偏光分離手段とで構成されたことを特徴とする。
請求項5記載の発明では、請求項4記載の光束分割素子において、前記偏光分離手段が偏光ビームスプリッタと偏向プリズムとからなることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明では、請求項5記載の光束分割素子において、前記偏光ビームスプリッタが偏光依存性ホログラムであることを特徴とする。
請求項7記載の発明では、光走査装置において、請求項4〜6のいずれか1つに記載の光束分割素子と、多段の回転多面鏡と、少なくともfθレンズを用いた結像光学系とからなることを特徴とする。
ここでは特に、良好なホワイトバランスを得ることを目的とする。
請求項8記載の発明では、画像形成装置において、請求項7記載の光走査装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、±λ/4の位相差を与える液晶素子とλ/4板との組合せによって、入射光の波長ずれや素子の設置ずれに対する許容が広い偏光切替素子を実現でき、光走査装置の生産性の向上に寄与できる。
請求項2記載の発明によれば、上記効果に加えて、強誘電性液晶を用いるため、応答速度の速い偏光切替素子を実現できる。
請求項3記載の発明によれば、ネマチック液晶を用いることで液晶素子の作製容易化を図ることができる。
請求項4、5、6記載の発明によれば、上記の偏光切替素子と偏光分離手段とを用いることによって、入射光の波長ずれや素子の設置ずれに対する許容が広い光束分割素子を実現でき、光走査装置の生産性の向上に寄与できる。
請求項7記載の発明によれば、上記光束分割素子を搭載することによって、入射光の波長ずれや素子の設置ずれに対する許容が広く、ホワイトバランスの良好な光走査装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図を参照して説明する。
まず、図1乃至図4に基づいて第1の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係る偏光切替素子10の機能を説明するための図である。偏光切替素子10は、入射光側からλ/4板11と、図示しない電界発生手段と、該電界発生手段による印加電圧の極性(電界の向き)の切り替えによって液晶分子の配向方向を所定方向に切り替えられる液晶素子12とで構成される。
λ/4板11は遅相軸が偏光切替素子10の出口側から見て右回りに45°傾いた配置をとる。液晶素子12は一軸異方性を有する液晶(例えばネマチック液晶)が印加電界によって45°(同図(a))もしくは−45°(同図(b))の方位を向くように制御される。
また、液晶層のリタデーションはλ/4となるように、液晶の常光屈折率と異常光屈折率の差Δnと、液晶層厚さdの積は、
Δnd=λ/4(λは入射光の波長)
とする。
【0014】
偏光切替素子10に入射される光は図の上下方向に偏光している。直線偏光P1であった入射光はλ/4板11を通過すると右回り円偏光P2となる。液晶素子12の液晶分子が45°方位を向いているとき、さらにλ/4の位相差が加わり水平方向の偏光P3となる。
次に、液晶への印加電界の向きが切り替わり、液晶分子の方位が同図(b)のように−45°方位を向いたときにはλ/4板11透過後の右回り円偏光P2は上下方向に振動する直線偏光P5となる。
したがって、液晶素子12への印加電界によって入射光が90°回転したり、偏光を維持して(回転せずに)出射させることができる。
【0015】
本実施形態の効果について以下に詳しく述べる。
図2は比較のために位相差λ/2を与える液晶素子21による偏光切替素子を図示している。液晶のΔndはλ/2とする。例えば、使用する波長を650nmとし、メルク社の液晶ZLI−1840を使用する。650nmでのΔnは0.14であるため液晶層の厚さは2.32μmとすることが望ましい。
XYZ座標系を図2に示すようにとり、波長ずれや入射角が法線方向からずれた影響を調べた。偏光切替素子に対して入射光が入射角0.3°、方位角0°(もしくは45°)で入射する場合を考える。
波長は設計値に対して5nmずれた場合を想定し655nmであるとする。なお、方位角はXY面でX軸方向を0°とし、z軸に対して右回りを正とする。本実施形態(図1)の場合と比較例(図2)の場合とで、出射光を水平方向にしたいとき(a)のx方向光強度Ix、垂直方向に切り替えたときの(b)y方向光強度Iyを計算し、その結果を表1に示す。なお、入射光強度を1.0とし、液晶層を挟持するためのガラス基板は計算上、無視するが、液晶層と空気との屈折率差によるフレネル損失(反射による光量損失)は考慮した。
【0016】
【表1】

【0017】
表1から、入射光方位角度に関わらず、偏光を切り替えた時の出射光強度は比較例よりも本実施例(本実施形態)のほうが変化が小さい。すなわち、本発明のほうが従来技術(位相差λ/2を与える偏光切替素子)よりも波長変動や素子設置許容が広いことを表している。
なお、図1において、λ/4板11と液晶素子12の順番を逆に設置、すなわち、入射光が液晶素子12とλ/4板11の順に通過するように設置しても良い。
さらに、ネマチック液晶に限定されることは無く、ホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶で、チルト角が45°(すなわちコーン角が90°)のタイプを用いることができる。この場合、ネマチック液晶に比べて応答速度が速くできるため、偏光切り替えの速度を向上させることができる。
【0018】
コーン角90°キラルスメクチックC相よりなる液晶に関して、以下に示す。
図3は強誘電性液晶のスイッチングを説明する模式図である。一般にキラルスメクチックC相よりなる強誘電性液晶層はらせん構造を有しているが、そのらせんピッチより薄いセルギャップd間に挟持すると、らせん構造がほどけ、表面安定化強誘電性液晶層(SSFLC)となる。
SSFLCは図4に示すように、液晶分子がスメクチック層法線に対して傾き角−θ(ここでは、θ=45°)だけ傾いて安定する配向状態と、逆方向にθだけ傾いて安定する配向状態とが混在する状態が実現できる。
図3において、Wはスメクチック相の層法線、nは液晶分子の長軸方向(ダイレクタ)、白丸内に黒丸の記号と、白丸内に+の記号は自発分極の方向を表す。紙面に垂直な方向に電界の向きが生じるように電圧を印加することにより、液晶分子とその自発分極の向きを一様に揃えることができ、その状態を保持しておくことができる。そして、印加する電圧の極性を切り替えることによって、2つの状態間のスイッチングを行うことができる。
【0019】
すなわち、図3において−Eの電界を形成させると、スメクチック相の層法線方向Wから−θだけ傾いた配向状態1に、+Eの電界を形成させると、スメクチック相の層法線方向Wからθだけ傾いた配向状態2に安定化することができる。すなわち、θ=45°とする場合、配向状態1から90°傾いた配向状態2に安定させることができる。
液晶層の厚さ(セルギャップ)dは入射光の波長λ(例えば650nmまたは780nm)と液晶材料の650nmまたは780nmにおける屈折率異方性Δnによって決まり、Δn×d=λ/4を満たすように決定する。
ここで、入射偏光方向は液晶層における液晶分子配向の2つの配向状態の2等分角となるように調整配置する必要がある。調整法としては、位相板の配置により偏光方向を調整することが可能である。また、ラビング等の配向処理により、液晶分子の初期配向を設定する、または液晶素子自体を回転調整しても可能である。
【0020】
このような構成とすることで図3に示すように、透明電極間に−Eの電界を形成した場合、液晶分子はスメクチック相の層法線方向Wから−θだけ傾いた配向状態(配向状態1)をとり、入射偏光は、そのままの偏光方向を保持したまま出射する。一方、透明電極に+Eの電界を形成した場合、液晶分子はスメクチック相の層法線方向Wから+θだけ傾いた配向状態、(配向状態2)をとる。
この場合、ここではθ=45°としているので、入射偏光に対して、液晶分子長軸方向(ダイレクタ)は2θ=90°傾いて配向する。その結果、λ/4板条件が成立し、入射直線偏光が右回り円偏光もしくは左回り円偏光となる。
すなわち、電界制御により偏光切り替えが実現でき、強誘電性液晶を用いているため、偏光切り替えに有する応答速度は数十μsec〜数百μsecと高速応答となる。
【0021】
ここで、強誘電性液晶素子を用いた偏光切り替え手段(偏光切替素子)の作製および動作確認について説明する。
厚さ1.1mmの無アルカリガラス基板にITO電極(膜厚1500Å)を成膜した。基板電極面に配向膜(AL3046−R31 JSR社製)をスピンコートにより約800Åの厚さに形成し、その基板表面を、ラビング法により配向処理を行った。
前述したガラス基板を2枚用い、電極面を対向させて、基板間が約1μmになるようにビーズを混入した接着剤にて貼り合わせた。基板を90度に加熱した状態で2枚の基板間に液晶層として、強誘電性液晶(クラリアント製R5002 Δn=0.17、2θ=90度)を毛管法で注入し、70℃から55℃までを10V/μmの直流電圧を印加した状態で冷却後に封止し、配向状態を光学顕微鏡により観察したところ、ほぼ均一な配向状態を確認した。この液晶素子に周波数100Hz、±10V/μmの矩形波信号を入力し、クロスニコル下での明暗のスイッチング速度を測定した(液晶素子特性評価装置 大塚電子製)ところ、室温(25℃)付近における応答速度は約1msec、であり、一般的な液晶素子より1桁も高速応答性を示した。
【0022】
またここで、電界制御による偏光切り替え動作に関して、作製した液晶素子とλ/4板を用いて、直線偏光を入射させたときの出射の偏光方向を評価した。
光源は赤色LD(波長650nm)を用いた。まず、素子電極間に−10V/μmの電界を印加し入射偏光(垂直方向)が90°回転して出力されるようにλ/4板(図1の11に相当)を回転調整した。
次に、素子電極間に極性の異なる−10V/μmの電界を印加したところ、入射時と出射時の偏光方向は略平行方向となった。すなわち、電界印加の制御により液晶素子のリタデーションを+λ/4と−λ/4に切り替えることができた。
【0023】
図5及び図6に基づいて第2の実施形態を説明する。
本実施形態に係る偏光切替素子30は、第一の液晶素子31と第二の液晶素子32とλ/4板11とから構成される。
両液晶素子31、32に垂直配向型液晶素子を用いることができる。液晶素子31は2枚のITO成膜付ガラス基板にネマチック液晶を挟んだ構造をとる。液晶層とガラス基板との間には配向膜があり、ラビング処理によって所定方向に液晶を配向させる。
ラビング方位は第一の液晶素子31では45°方向に、第二の液晶素子32では−45°方向とする。両ITOへの電圧差が低いときには液晶分子はガラス基板の法線方向から傾き、かつ、ラビング処理による所定方位を向く。
電圧差を大きくとると液晶分子は法線方向を向くようになる。図6(a)に示すように、第一の状態T1では第一の液晶31は電圧差を小さく(VL)、第二の液晶32は電圧差を大きく(VH)する。
【0024】
第一の液晶素子31に直線偏光が入射されると右回り円偏光となり、第二の液晶32では位相差が発生しないため右回り円偏光のまま出射される。次のλ/4板11で水平方向の直線偏光に変換される。
一方、図6(b)に示すように、第二の状態T2では電圧差のかけ方を逆転させる。このため、第一の液晶31では入射光は直線偏光を維持し、第二の液晶32で左回り円偏光となる。次のλ/4板11でもとの垂直方向の直線偏光に戻される。
本実施形態では液晶ライトバルブに使われる液晶を流用でき、また、強誘電性液晶に比べてネマチック液晶の配向の難易度は低いため、生産性に優れる。
【0025】
図7に基づいて第3の実施形態を説明する。
図7は上述した偏光切替素子を用いた光束分割素子50を説明するための図である。
図7(a)に示すように、光束分割素子50Aは、上述の偏光切替素子10または30と、偏光分離手段51と、偏向プリズム52で構成される。
偏光分離手段51としては、偏光ビームスプリッタが利用できる。偏光切替素子からの出射光の偏光が紙面に平行ならビームは偏光ビームスプリッタ51を透過する。
一方、偏光切替素子からの出射光の偏光が紙面に垂直なら、ビームは偏光ビームスプリッタ51で反射し、偏向プリズム52で全反射して出射される。本実施形態では光束を上下に切り替えるために偏向プリズム52が用いられる。
【0026】
図7(b)に示すように、偏向プリズム52を偏光ビームスプリッタ53とした光束分割素子50Bにおいても同じ効果が得られる。
さらに、図7(c)に示すように、偏光分離手段と偏向プリズムとして、それぞれ偏光依存性ホログラム55、56を使用した光束分割素子50Cとしても良い。
偏光依存性ホログラムとしてはブレーズ化ホログラムや、深溝の表面レリーフホログラム、ホログラフィックPDLC(ポリマー分散型液晶)を用いることができる。
【0027】
図8に基づいて第4の実施形態を説明する。
図8は上述の偏光切替素子および光束分割素子を用いた光走査装置60を説明するための図である。
光源61と、光束分割素子50と、その後にシリンドリカルレンズ62、2段ポリゴンミラー(多段の回転多面鏡)63、結像光学系65a、65bとを配置することによって光走査装置60を構築できる。
光源61はLDが2つからなるLDユニットであり、光束分割素子50は上述の素子50Aまたは50Bまたは50Cを用いる。結像光学系65は少なくともfθレンズ64を用いる。図8ではfθレンズ64のほかに補正用レンズや折り返しミラーを配置している。
2つのビームをある時間帯は光走査66aのラインへ、残りの時間帯は光走査66bのラインへの光走査を行うことができる。
図示しないが、LDユニットから光束分割素子50の後のシリンドリカルレンズ62までの前段の光学系、および、fθレンズ64を含む結像光学系65のそれぞれを2セットと、2段ポリゴンミラー63を用いることによって、2ビームで4箇所の被走査面へ書き込む光書込み装置を構築できる。
4個所の被走査面は4色(シアン、イエロー、マゼンダ、黒)に対応する感光体であり、本発明を利用したカラープリンタを構築することができる。
【0028】
図9に基づいて、上述した光走査装置60を用いたタンデム型のカラー画像形成装置(第5の実施形態)を説明する。
カラー画像形成装置は、転写ベルト70の移動方向に沿って並置された4つの感光体71Y、71C、71M、71Kを有している。イエロー画像形成用の感光体71Yの周りには、その矢印で示す回転方向において順に、帯電器72Y、現像器73Y、転写手段74Y、クリーニング手段75Yが配置されている。他の色についても同様の構成を有しており、色別の欧文字(C:シアン、M:マゼンダ、K:ブラック)を付して区別し、説明は省略する。
帯電器72は、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。帯電器72と現像器73の間において感光体表面に光走査装置60によりビームが照射され、感光体71に静電潜像が形成されるようになっている。
そして、静電潜像に基づき、現像器73により感光体面上にトナー像が形成される。転写手段74により、転写ベルト70で搬送される記録媒体(転写紙)に各色の転写トナー像が順次転写され、最終的に定着手段76により重ね合わせ画像が転写紙に定着される。
【0029】
このように、タンデム方式の画像形成装置において、光源数を減らしながらも、高速な画像出力を可能にしており、かつ、本発明での偏光切替素子を用いることで、光利用効率が高くて偏光を切り替えた時の強度変化を小さくすることができる。
すなわち、各感光体への書込み強度に差異を発生させることが無いため、カラーバランスの良い画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る偏光切替素子の要部斜視図である。
【図2】比較例に係る偏光切替素子の要部斜視図である。
【図3】強誘電性液晶のスイッチングを説明するための模式図である。
【図4】表面安定化強誘電性液晶層を用いた偏光切替素子の動作を示す模式図である。
【図5】第2の実施形態に係る偏光切替素子の概要構成図である。
【図6】偏光切替素子の動作を示す図である。
【図7】第3の実施形態に係る光束分割素子の概要構成図である。
【図8】第4の実施形態に係る光走査装置の概要斜視図である。
【図9】第5の実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【符号の説明】
【0031】
10、30 偏光切替素子
11 λ/4板
12 液晶素子
50A、50B、50C 光束分割素子
51、53 偏光ビームスプリッタ
52 偏向プリズム
55、56 偏光依存性ホログラム
60 光走査装置
63 回転多面鏡
64 fθレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電圧の極性に応じて右回り円偏光と左回り円偏光とに切り替えが可能な液晶素子と、λ/4板と、からなり、入射光を異なる偏光方位に切り替えることを特徴とする偏光切替素子。
【請求項2】
請求項1記載の偏光切替素子において、
前記液晶素子は、一対の透明基板と、少なくとも一方の透明基板に設けられた配向膜と、前記配向膜によりホモジニアス配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶層と、前記透明基板の法線方向に電界の向きを生じさせる電界発生手段とからなり、前記液晶層のチルト角が45°(コーン角が90°)であることを特徴とする偏光切替素子。
【請求項3】
請求項1記載の偏光切替素子において、
前記液晶素子はネマチック液晶を用いた垂直配向型液晶素子が二段構成で配置され、1段目と2段目の液晶分子の透光性基板へ投影した方位θ1、θ2が、1段目に入射する偏光面に対して、
θ1=0°、θ2=45°
と、
θ1=45°、θ2=0°
とを順次繰り返すことを特徴とする偏光切替素子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の偏光切替素子と、偏光分離手段とで構成されたことを特徴とする光束分割素子。
【請求項5】
請求項4記載の光束分割素子において、
前記偏光分離手段が偏光ビームスプリッタと偏向プリズムとからなることを特徴とする光束分割素子。
【請求項6】
請求項5記載の光束分割素子において、
前記偏光ビームスプリッタが偏光依存性ホログラムであることを特徴とする光束分割素子。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1つに記載の光束分割素子と、多段の回転多面鏡と、少なくともfθレンズを用いた結像光学系とからなる光走査装置。
【請求項8】
請求項7記載の光走査装置を有する画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−109669(P2009−109669A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280794(P2007−280794)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】